【実施例】
【0020】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。
1.製パン用組成物の調製
表1〜7に示した各実施例、比較例、参考例(対照)の配合で、各材料を混合し、各製パン用組成物を調製した。なお、グルテン、ペクチン、増粘多糖類、カルシウム成分の含有量は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対する質量部を示す。
【0021】
2.パンの製造試験
1斤タイプホームベーカリー(SD−BMS106(パナソニック株式会社製))を用いてパンの製造試験を行なった。参考例(対照)の組成物は、上記機器の取扱説明書に記載された食パンの配合を基本配合としており、表1に示した製パン用組成物、ドライイースト(日清スーパーカメリヤドライイースト(日清フーズ株式会社製))3g、水180mlを1斤タイプホームベーカリーに投入し、早焼き食パンコースにてパンを焼成した。実施例及び比較例については、表2〜7に示した各製パン用組成物290g、ドライイースト3g、水200mlを1斤タイプホームベーカリーに投入し、早焼き食パンコースにてパンを焼成した。
【0022】
3.パンの評価
焼成したパンについて、以下の項目を評価した。
(1)体積
焼成された各パンの体積を、超高速レーザー体積計測機(Selnac−WinVM2100(株式会社アステックス製)を用いて測定し、参考例(対照)(小麦粉を原料穀粉とした組成物)のパンの体積を100%としたときの、各パンの体積の百分率を算出した。結果を表2〜7に示す。
(2)膨らみ
焼成された各パンの膨らみ方について、10名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:全体が均一に非常に良く膨らんでいる。
4:全体が均一に良く膨らんでいる。
3:やや均一性に欠けるが、膨らんでおり、許容できる範囲である。
2:やや膨らみに欠け、均一に膨らんでいない。
1:膨らんでいない。
(3)外観(表面)
焼成された各パンの表面の外観について、10名のパネラーで、以下の評価基準で目視評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:シワや凹凸がほぼ無く、外観が非常に良い。
4:シワや凹凸が少なく、外観が良い。
3:多少のシワや凹凸があるが、外観は許容できる範囲である。
2:シワがやや多く、天面の一部に凹凸があるため、外観が悪い。
1:シワが多く、天面の全体に凹凸があるため、外観が非常に悪い。
(4)食感
焼成された各パンの食感について、10名のパネラーで、以下の評価基準で評価した。パネラーの評価点の平均値を評価結果として表2〜7に示す。なお、評価点は小数点第1位を四捨五入して示した。
5:ふんわりとし、ソフトな食感があり、非常に良い。
4:ややふんわりとし、ソフトな食感があり、良い。
3:ソフトな食感がややある。
2:やや口溶けが悪く、パンとして好ましくない食感である。
1:口溶けが悪く、パンとして好ましくない食感である。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】
【0025】
表2に示した通り、小麦粉以外の穀粉として、大麦粉を選択し、原料穀粉に基づいて70質量%含有する製パン用組成物を用いてパンを焼成した場合、グルテン、ペクチン、増粘多糖類のいずれも含まない比較例1では、参考例(対照)と比較した体積が50%と非常に低く、各評価も1であるのに対し、大麦粉100質量部に対して、グルテンを14.3〜35.7質量部、ペクチンを1.14質量部、増粘多糖類としてキサンタンガムを0.21質量部含有する
参考例1〜3の組成物を用いたパンは、参考例(対照)と比較した体積が88%以上で、遜色ないものであり、膨らみ、外観(表面)、食感の評価も3以上であった。一方、グルテンのみを含む比較例2、グルテン及びペクチンのみを含む比較例3は、比較例1と比較すると、体積がやや向上しているものの、不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、本発明の効果には、グルテン、ペクチン、及び増粘多糖類が必須であることが示唆された。また、グルテンの含有量が、大麦粉100質量部に対して8.6質量部の比較例4は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、グルテンの含有量が、大麦粉100質量部に対して42.9質量部の比較例5は、体積は向上しているものの、口溶けが悪く、重い食感となり、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮するグルテンの含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して10〜40質量部であることが示唆された。
【0026】
【表3】
【0027】
表3においては、本発明の組成物におけるペクチンの含有量の影響を調べるため、上記
参考例2におけるペクチンの含有量を変えて評価した結果を示した。ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.71質量部の
参考例4、2.14質量部の
参考例5、及び2.43質量部の
参考例6は、
参考例2とほぼ同程度の評価が得られた。一方、ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.43質量部の比較例6は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、ペクチンの含有量が、大麦粉100質量部に対して2.86質量部の比較例7は、体積は向上しているものの、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮するペクチンの含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.5〜2.5質量部であることが示唆された。
【0028】
【表4】
【0029】
表4においては、本発明の組成物における増粘多糖類の種類、及び含有量の影響を調べるため、上記
参考例2における増粘多糖類(キサンタンガム)の種類、及び含有量を変えて評価した結果を示した。増粘多糖類(キサンタンガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.11質量部の
参考例7は、膨らみ、外観(表面)の評価が4で、食感の評価も3と良好であった。また、増粘多糖類としてグアガムを用いて、その含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.17質量部の
参考例8、キサンタンガムとグアガムとを併用して、その合計の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.17質量部の
参考例9、及びキサンタンガムとローカストビーンガムとを併用して、その合計の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.24質量部の
参考例10は、評価にやや差があるものの
参考例2と同程度の評価が得られた。一方、増粘多糖類(キサンタンガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して、0.07質量部の比較例8は、体積の向上が不十分であり、膨らみ、外観の評価も低く、増粘多糖類(グアガム)の含有量が、大麦粉100質量部に対して0.54質量部の比較例9は、体積は向上しているものの、食感の評価が低かった。したがって、本発明の効果を発揮する増粘多糖類の含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.1〜0.5質量部であることが示唆された。また、本発明の組成物において、増粘多糖類は、特に制限なく用いることができるが、
参考例2、8、及び9を比較すると、キサンタンガムを含むことが好ましいことが示唆された。
【0030】
【表5】
【0031】
表5においては、本発明の組成物において、グルテン、ペクチン、増粘多糖類に加えて、さらにカルシウム成分を含有させた場合の効果を調べるため、上記参考例2、又は参考例4の配合に、さらにカルシウム成分として炭酸カルシウムを含有させた組成物を評価した。その結果、炭酸カルシウムの含有量が大麦粉100質量部に対して0.57質量部〜1.86質量部の実施例1〜4において、参考例2又は4より体積がより大きくなり、食感の評価も向上した。炭酸カルシウムの含有量が大麦粉100質量部に対して2.29質量部の参考例11では、参考例2と同程度であった。したがって、本発明の組成物は、さらに
炭酸カルシウムを含有することが好ましく、さらに、その含有量の範囲は、小麦粉以外の穀粉100質量部に対して0.5〜2.0質量部が好ましいことが示唆された。
【0032】
【表6】
【0033】
表6においては、本発明の組成物において、原料穀粉中の、小麦
粉以外の穀粉の含有量の影響を調べるため、大麦粉の含有量を変えた組成物を評価した。その結果、大麦粉の含有量が55質量%〜100質量%の実施例
5〜
7で、十分な体積を有し、各評価3以上のパンを製造することが可能であった。したがって、本発明の組成物は、小麦粉以外の穀粉を多く含む(例えば60質量%以上含む)場合も、対応できる製パン用組成物であることが示唆された。
【0034】
【表7】
【0035】
表7においては、本発明の組成物において、小麦
粉以外の穀粉の種類の影響を調べるため、種々の穀粉を用いた組成物を評価した。その結果、ライ麦粉、トウモロコシ粉、大豆粉を用いた実施例
8〜
11で、十分な体積を有し、各評価3以上のパンを製造することが可能であった。したがって、本発明の組成物は、小麦粉以外の任意の穀粉を主体とした場合でも対応できる汎用性の高い製パン用組成物であることが示唆された。
【0036】
以上の実施例の結果により、本発明の製パン用組成物によって、小麦粉以外の任意の穀粉を主体として用いた場合であっても、パンの体積が十分にあり、良好な食感を有するパンを製造することができることが示唆された。
【0037】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。