(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
(第1実施形態)
以下、図面を参照しながら本発明の第1実施形態の一構成例である色調整システム1について説明する。
図1は、本実施形態に係る色調整システム1の構成を示す概略図である。
色調整システム1は、コントローラ10、分光放射照度計20−A、20−B、カメラ30−A、30−Bおよびリファレンスカメラ30−rを含んで構成される。以下の説明では、分光放射照度計20−A、20−B、カメラ30−A、30−Bを、それぞれ分光放射照度計20、カメラ30と総称することがある。
図1に示す例では、分光放射照度計20、カメラ30の個数は、それぞれ2個であるが、3個以上であってもよい。
【0015】
リファレンスカメラ30−rは、撮影した画像の色を基準として用いるカメラである。これは実在するカメラでも仮想的なカメラでもよい。リファレンスカメラ30−rとして、理想的な撮像特性を有する仮想的なカメラが好適である。リファレンスカメラ30−rは、被写体として予め色票Cmの画像を参照画像として撮影し、撮影した参照画像を形成する画素毎の参照信号値である参照RGB値を表す参照画像データをコントローラ10に出力する。この参照RGBデータは、実在するカメラを用いたデータであっても、仮想的なカメラを想定して計算上求めたRGB値でも構わない。RGB値は、赤、緑、青の各色信号値を要素として含むベクトル量である。リファレンス照明Lt−rは、放射する照明光を分光分布の基準として用いる照明である。リファレンス照明Lt−rは、照明光を色票Cmに照射し、色票Cmで反射した反射光が参照画像として撮影される。色票Cmは、色調整の基準とする複数の基準色を表す領域である色見本を配列した物体である。色票Cmとして、カラーチェッカーが利用可能である。カラーチェッカーは、所定の24色相の矩形の色見本が配列されてなる。
【0016】
カメラ30−A、30−Bは、撮影した画像の色の調整対象となるカメラである。カメラ30−A、30−Bの分光特性であるカメラ分光特性を示すカメラ分光特性データを予め記憶部16に記憶させておく。
図1に示すように、カメラの分光特性は個々のカメラによって異なる。
図1において、各カメラの上方に示す曲線SB−r、SG−r、SR−r等は、それぞれ青色、緑色、赤色の光を透過する当該カメラが備えるカラーフィルタの分光特性を示す。予め記憶させておく各カメラ30のカメラ分光特性データは、単波長を発するモノクロメータ(図示していない)を用いて各カメラごとに予め取得されているものとする。
【0017】
分光放射照度計20−A、20−Bは、それぞれに対応付けられた照明Lt−A、Lt−Bからの照明光の分光特性である照明分光特性を測定し、測定した照明分光特性を示す照明分光特性データをコントローラ10に出力する。
【0018】
コントローラ10は、分光放射照度計20−A、20−Bから照明分光特性データをそれぞれ取得する。コントローラ10は、色票Cmが示す所定の基準色を示す画素毎の信号値に照明分光特性、カメラ分光特性およびカメラ30−A、30−Bの調整パラメータを作用して、カメラ30−A、30−Bのそれぞれについて調整信号値を算出する。照明分光特性として、分光放射照度計20−A、20−Bからの照明分光特性データが示す照明分光特性が用いられる。カメラ分光特性として、記憶部16に記憶されたカメラ30−A、30−Bのカメラ分光特性データが示すカメラ分光特性が用いられる。カメラ30−A、30−Bの調整パラメータにはリニアマトリックスが含まれる。
【0019】
コントローラ10は、リファレンスカメラ30−rからの参照画像データが示す参照信号値と、カメラ30−A、30−Bそれぞれについて算出した調整信号値との残差を少なくするようにリニアマトリックスを算出する。コントローラ10は、カメラ30−A、30−Bのそれぞれについて算出したリニアマトリックスを、カメラ30−A、30−Bに出力する。リニアマトリックスは、カメラ30−A、30−Bが備える信号処理系が撮像された画像の信号値と乗算して出力信号値を算出するために用いられる。出力信号値を表す出力画像データは、色調整がなされた画像を示すデータであり、放送番組の映像もしくは素材として用いられる。
【0020】
次に、本実施形態に係るコントローラ10の機能構成について説明する。
図2は、本実施形態に係る色調整システム1の機能構成を示すブロック図である。
コントローラ10は、データ入力部12、信号処理部14、操作部15、記憶部16およびデータ出力部17を含んで構成される。なお、
図2に示す例ではリファレンスカメラ30−rの図示が省略されている。リファレンスカメラ30−rから取得した参照画像データが予め記憶部16に記憶されていることを前提とする。
【0021】
データ入力部12は、分光放射照度計20−A、20−Bからそれぞれ入力される分光特性データを信号処理部14に出力する。
【0022】
信号処理部14は、分光特性取得部141、RGB値算出部142および調整パラメータ設定部143を含んで構成される。
【0023】
分光特性取得部141は、分光放射照度計20−A、20−Bからそれぞれデータ入力部12を介して入力されるカメラ分光特性データを取得し、取得したカメラ分光特性データをRGB値算出部142に出力する。
【0024】
RGB値算出部142は、記憶部16から予め記憶された色票Cmが示す所定の基準色を示す画素毎の信号値を示す色票画像データと、カメラ30−A、30−Bの分光特性を示すカメラ分光特性データを読み取る。RGB値算出部142には、RGB値算出部142は、調整パラメータ設定部143から入力される調整パラメータを示す調整パラメータデータが入力される。調整パラメータデータには、カメラ30−A、30−Bそれぞれのゲインデータとリニアマトリックスが含まれる。
【0025】
RGB値算出部142は、色票画像データが示す画素毎のRGB値に、カメラ30−A、30−Bにそれぞれ対応する照明Lt−A、Lt−Bの照明分光特性およびカメラ30−A、30−Bのカメラ分光特性データが示すカメラ分光特性をそれぞれ乗算して、調整パラメータの算出に用いるための基準信号値として基準RGB値を算出する。
RGB値算出部142は、調整パラメータ設定部143から入力されるカメラ30−A、30−Bの調整パラメータであるゲインとリニアマトリックスを基準RGB値にそれぞれ乗算して調整信号値として調整RGB値を算出する。
RGB値算出部142は、カメラ毎に算出した基準RGB値と調整RGB値を調整パラメータ設定部143に出力する。
【0026】
調整パラメータ設定部143は、ゲイン設定部144およびリニアマトリックス算出部145を含んで構成される。
ゲイン設定部144は、RGB値算出部142から入力されるカメラ毎の基準RGB値に乗算されるゲインを定める。ゲインは、各色成分の要素ゲインからなるベクトル値である。要素ゲインは、基準RGB値を構成する各色成分の色信号値であるR信号値、G信号値およびB信号値にそれぞれ乗じられるパラメータである。ゲイン設定部144は、調整RGB値が表す色のホワイトバランスを合わせるように要素ゲインを定める。ゲイン設定部144は、例えば、色票Cmのうち基準色が無彩色である領域内の画素の調整RGB値が表す色が無彩色となるように要素ゲインを定める。無彩色とは、彩度を有しない色であり、白、黒ならびに各種の濃度の灰色が含まれる。その際、ゲイン設定部144は、公知のホワイトバランスゲイン算出方法を用いてゲインを算出してもよいし、操作部15からの操作信号で指定されるゲインを採用してもよい。ゲイン設定部144は、カメラ30−A、30−B毎に定めたゲインをRGB値算出部142と、データ出力部17を介してそれぞれのカメラ30−A、30−Bに出力する。
【0027】
リニアマトリックス算出部145は、記憶部16に予め記憶させた参照画像データを読み取る。リニアマトリックス算出部145は、RGB値算出部142から入力されたカメラ30−A、30−B毎の調整RGB値と、読み取った参照画像データが示す参照RGB値との残差が少なくなるように、調整RGB値の算出に用いるリニアマトリックスを算出する。リニアマトリックス算出部145は、例えば、最小二乗法を用いてリニアマトリックスを再帰的に算出する。リニアマトリックス算出部145は、算出したリニアマトリックスをRGB値算出部142に出力する。リニアマトリックス算出部145は、残差が所定の残差の閾値よりも小さくなったときリニアマトリックスを算出する処理を停止し、最終的に算出したカメラ30−A、30−B毎のリニアマトリックスをカメラ30−A、30−Bのそれぞれにデータ出力部17を介して出力する。
【0028】
操作部15は、ユーザの操作に応じて操作信号を生成し、生成した操作信号を信号処理部14に出力する。操作部15は、ユーザの操作を受け付ける部材として、ボタン、つまみなどの物理的な部材を含んで構成される。操作部15は、タッチセンサなどのポインティングデバイスと所定の制御プログラムで指示される動作を実行する制御デバイスを含んで構成されたユーザインタフェースであってもよい。制御デバイスは、例えば、CPU(Central Processing Unit)である。制御プログラムで指示される処理には、所定の案内画像を表示部に表示させる処理と、タッチセンサなどのポインティングデバイスで指定された座標に対応する情報や機能を示す操作信号を生成する処理が含まれる。
【0029】
記憶部16は、信号処理部14において処理に用いられるデータ、信号処理部14が生成したデータを記憶する。記憶部16は、ROM(Read−only Memory)、RAM(Random Access Memory)などの記憶媒体を含んで構成される。
データ出力部17は、信号処理部14から入力されるデータとしてカメラ30−A、30−B毎の調整パラメータであるゲインとリニアマトリックスを、カメラ30−A、30−Bのそれぞれに出力する。データ出力部17は、データ入力部12と一体化した単一のデータ入出力インタフェースとして構成されてもよい。
【0030】
(調整RGB値の成分)
次に、RGB値算出部142において算出される調整RGB値の成分について説明する。
図3は、本実施形態に係るカメラ撮像を表す模式図である。
照明Ltからの照明光が色票Cmで反射した反射光が、カメラ30に入射される。従って、反射光の分光特性は、色票分光反射率ρ(λ)に照明分光分布P(λ)を乗じて得られる分光特性となる。色票分光反射率ρ(λ)で表される色票Cmの基準色は、上述の色票画像データが示す画素毎のRGB値で表される。照明分光分布P(λ)は、上述の照明分光特性に相当する。
【0031】
カメラ30は、光学系31、IRカットフィルタ32、カラーフィルタ33、イメージセンサ34および信号処理系35を備える。
カメラ30に入射される反射光は、光学系31、IRカットフィルタ32およびカラーフィルタ33を透過し、イメージセンサ34において色票Cmの画像として撮影される。光学系31には、レンズが含まれる。従って、カメラの分光特性は、レンズ透過特性T(λ)、IRカットフィルタ透過特性C(λ)、カラーフィルタ透過特性F(λ)およびセンサ分光感度S(λ)を乗じて得られる分光特性に相当する。カラーフィルタ透過特性F(λ)は、赤、緑、青の各色信号値に対応するカラーフィルタ透過特性F
R(λ)、F
G(λ)、F
B(λ)を要素とするベクトル量である。イメージセンサ34は、撮影した画像を表す画素毎のRGB値を示す画像データを生成する。
【0032】
信号処理系35は、イメージセンサ34が生成した画像データが示すRGB値にゲインGとリニアマトリックスMを乗じて出力RGB値を算出する。信号処理系35は、算出した出力RGB値を示す出力画像データを出力する。
【0033】
コントローラ10のRGB値算出部142は、上述した処理によりカメラ30−A、30−Bが撮影した画像を表す調整RGB値をシミュレートする。
調整RGB値の算出に用いられるパラメータのうち色票画像データが示す色票分光反射率ρ(λ)は不変であってよい。照明分光分布P(λ)は、撮影現場の照明Ltの種類や配置に応じて異なる。そのため、コントローラ10の分光特性取得部141は、色調整の都度、分光放射照度計20が測定した照明分光分布P(λ)を照明分光特性として取得する。レンズ透過特性T(λ)、IRカットフィルタ透過特性C(λ)、カラーフィルタ透過特性F(λ)およびセンサ分光感度S(λ)は、カメラ30に依存するパラメータである。コントローラ10の信号処理部14は、カメラ30毎にこれらのパラメータをカメラ分光特性として予め取得し、取得した分光特性を記憶部16に記憶しておけばよい。RGB値算出部142により算出される基準RGB値[R’,G’,B’]
T(Tは、ベクトルまたは行列の転置を示す記号)は、上述のパラメータと式(1)で表される関係を有する。
【0035】
式(1)において、λ
r、λ
vは、それぞれ可視光線の波長の上限(約760nm)、下限(約380nm)を示す。
【0036】
RGB値算出部142は、式(2)に示すように基準RGB値[R’,G’,B’]
Tの各要素である色信号値R’,G’,B’に要素ゲインG
R、G
G、G
Bをそれぞれ乗算して調整RGB値[R,G,B]
Tを算出する。
【0038】
(リニアマトリックスの算出方法)
次に、リニアマトリックスの算出方法について、より詳細に説明する。リニアマトリックス算出部145は、リニアマトリックスを算出する際、カメラ30毎の調整RGB値と参照RGB値との残差を算出する。残差を算出する際、リニアマトリックス算出部145は、画素毎の調整RGB値[R,G,B]
TをL*a*b*色空間値[L
*,a
*,b
*]
Tに変換する。L*a*b*色空間値は、国際照明委員会(CIE:Commission internationale de l’eclairage)が規定した色空間値である。L*a*b*色空間値は、人間が知覚する色を網羅的に定量化するパラメータである。L*a*b*色空間値のうち、L
*は、明度を示す値である。a
*、b
*の組は、色度を示す値である。a
*とb
*は、互いに補色の関係にある次元の値である。
【0039】
ここで、リニアマトリックス算出部145は、調整RGB値[R,G,B]
Tに変換マトリックスM
RGB−XYZを用いてXYZ値[X,Y,Z]
Tに変換する。XYZ値は、CIEが規定したXYZ表色系による色空間値である。
図4に例示される変換マトリックスM
RGB−XYZは、標準光源としてD65が用いられるときに反射光が表す画像のRGB値をXYZ値に線形変換するための行列である。リニアマトリックス算出部は、算出したXYZ値[X,Y,Z]
Tについて式(3)を用いてL*a*b*色空間値[L
*,a
*,b
*]
Tに変換する。
【0041】
式(3)において、Xn、Yn、Znは、それぞれ基準となるホワイトポイントのXYZ値を示す。f(…)は、式(4)により表される関数である。
【0043】
リニアマトリックス算出部145は、画素毎の参照RGB値[R
r,G
r,B
r]
Tについても同様にしてL*a*b*色空間値[L
r*,a
r*,b
r*]
Tに変換する。
そして、リニアマトリックス算出部145は、式(5)に示すように、調整RGB値[R,G,B]
Tに基づくL*a*b*色空間値[L
*,a
*,b
*]
Tと参照RGB値[R
r,G
r,B
r]
Tに基づくL*a*b*色空間値[L
r*,a
r*,b
r*]
Tの差分の二乗値の画素間での総和を二乗残差ε
cとしてカメラ毎に算出する。
【0045】
式(5)において、i、cは、それぞれ画素、カメラを示すインデックスである。総和を求める際にリニアマトリックス算出部145が参照する画素は、色票Cmの各基準色を表す領域内に少なくとも1画素ずつ含まれていればよい。二乗残差ε
cは、調整RGB値に基づく色空間値と参照RGB値[R
r,G
r,B
r]に基づく色空間値との差の大きさを定量的に表す指標値として算出される。
【0046】
リニアマトリックス算出部145は、二乗残差ε
cがより小さくなるようにカメラ30毎にリニアマトリックスMを算出する。リニアマトリックス算出部145は、リニアマトリックスMを算出する際、公知の最適化アルゴリズム、例えば、ニュートン法、準ニュートン法などの手法を用いてもよい。従って、リファレンスカメラ30−rで撮影された参照画像の参照信号値と、調整対象のカメラ30で撮影された画像に基づく調整信号値との間で、人間が知覚する色の感覚を表すL*a*b*色空間値を本位として、残差が少なくなるようにリニアマトリックスMが算出される。そのため、算出されたリニアマトリックスMを用いることで調整対象のカメラ30がそれぞれ撮影した画像の色が、リファレンスカメラ30−rで撮影された参照画像の色に色覚上近似される。
【0047】
以上に説明したように、本実施形態の一構成例であるコントローラ10は、分光放射照度計20が測定した照明光の分光特性を取得する分光特性取得部141を備える。コントローラ10は、所定の基準色を表すRGB値に、照明光の分光特性、色調整の対象である画像を撮影するカメラ30の分光特性および調整パラメータが表す分光特性を作用して調整RGB値を算出するRGB値算出部142を備える。また、コントローラ10は、色調整において参照する画像を撮影するリファレンスカメラ30−rからの基準色の参照信号値と調整RGB値との残差を少なくするように調整パラメータを算出する調整パラメータ設定部143を備える。
この構成によれば、カメラ30が撮影した画像の色調整に用いる調整パラメータが、測定された照明光の分光特性に基づいて得られる調整RGB値が参照RGB値に近似するように算出される。そのため、算出した調整パラメータを用いることで複数のカメラ30のそれぞれの撮影環境に応じて異なる照明光の分光特性に関わらず撮影した画像の色が互いに近似されるように調整することができる。
【0048】
また、調整パラメータ設定部143は、基準色の参照RGB値と調整RGB値との残差として、調整RGB値に基づく色空間値と調整RGB値に基づく色空間値との差を算出することを特徴とする。
この構成によれば、複数のカメラ30のそれぞれが撮影した画像について、人間が知覚する色を定量的に表す色空間の領域において、画像の色を互いに近似させることができる調整パラメータを算出することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。第1実施形態と同一の構成については、同一の符号を付してその説明を援用する。
図5は、本実施形態に係る色調整システム1の機能構成を示すブロック図である。
本実施形態の一構成例である色調整システム1では、カメラ30−A、30−Bの記憶部(図示せず)には、それぞれを特定する識別情報として互いに異なる機器ID(Identifier)が設定させておく。
【0050】
コントローラ10の記憶部16には、予め機器IDと、当該機器IDにより特定されるカメラ30のカメラ分光特性を示すカメラ分光特性データとを対応付けて記憶させておく。
コントローラ10は、さらに機器検出部18を含んで構成される。機器検出部18は、データ入力部12とデータ出力部17に有線または無線で接続されたカメラ30−A、30−Bを検出する。機器検出部18は、例えば、データ入力部12に接続された機器としてカメラ30−A、30−Bに接続確認信号を送信する。カメラ30−A、30−Bが備える制御部(図示せず)は、コントローラ10から接続確認信号を受信するとき、その応答として自機の機器IDを含む応答信号をコントローラ10に出力する。機器検出部18は、接続確認信号の送信から所定時間(例えば、1秒)以内に受信する応答信号に含まれる機器IDが示すカメラ30を特定する。機器検出部18は、特定したカメラ30の機器IDをRGB値算出部142に出力する。
【0051】
RGB値算出部142は、機器検出部18から入力された機器IDに対応するカメラ分光特性データを記憶部16から読み取り、読み取ったカメラ分光特性データが示すカメラ分光特性を当該機器IDが示すカメラ30に係る基準RGB値ひいては調整RGB値の算出に用いる。従って、リニアマトリックス算出部145は、読み取ったカメラ分光特性データが示すカメラ分光特性を用いて算出した調整RGB値と参照RGB値との残差が小さくなるようにリニアマトリックスを算出する。
【0052】
図6は、本実施形態に係る分光特性テーブルの一例を示す図である。
図6に示す例では、分光特性テーブルは、機器IDとカメラ分光特性データとが対応付けて記憶部16に記憶されるデータテーブルである。分光特性テーブルには、複数の機器IDのそれぞれとカメラ分光特性データが対応付けられる。
図6の第2行に示す例では、機器ID「00011」とカメラ分光特性データを格納したデータファイル「Spec_Cm_A」とが対応付けられている。
【0053】
(色調整処理)
次に、本実施形態に係る色調整処理について説明する。
図7は、本実施形態に係る色調整処理を示すフローチャートである。
(ステップS101)機器検出部18は、データ入力部12に接続された機器であるカメラ30から受信した応答信号に含まれる機器IDを検出する。その後、ステップS102の処理に進む。
(ステップS102)RGB値算出部142は、検出した機器IDに対応するカメラ分光特性データを記憶部16から取得する。その後、ステップS103の処理に進む。
(ステップS103)リニアマトリックス算出部145は、取得したカメラ分光特性データを用いて算出された調整RGB値と参照RGB値との残差の大きさが小さくなるようにリニアマトリックスを算出する。その後、
図7に示す処理を終了する。
【0054】
図7に示す処理によれば、カメラ30が交換される場合でも、それぞれのカメラ30が撮影した画像の色がリファレンスカメラ30−rが撮影した画像の色に近似するように調整される。このことは、撮影現場において一度に複数のカメラ30が用いられる場合や、カメラ30を交換する際に好適である。
【0055】
(変形例)
次に、本実施形態の変形例について説明する。
本変形例では、記憶部16において、カメラ30に装着されうる付属機器、例えば、レンズ、フィルタなどを識別する機器IDと、付属機器の分光特性を示す分光特性データをさらに対応付けて記憶させておいてもよい。その場合、カメラ分光特性データが示すカメラ分光特性として、レンズやフィルタなど着脱される付属機器の分光特性が含まれないカメラ30の基本的な分光特性を示すカメラ分光特性データを記憶部16に記憶しておく。
【0056】
図8は、本変形例に係る分光特性テーブルの一例を示す図である。
図8に示す例では、分光特性テーブルには、カメラ30−A、30−Bの機器IDとして「00011」、「00012」、の他、レンズの機器IDとして「00021」、「00022」、フィルタの機器IDとして「00031」、「00032」が含まれる。機器ID「00011」、「00012」、「00021」、「00022」、「00031」、「00032」には、それぞれの機器IDが示す機器の分光特性データ「Spec_Cm_A」、「Spec_Cm_B」、「Spec_Ln_A」、「Spec_Ln_B」、「Spec_Fl_A」、「Spec_Fl_B」が対応付けられている。
【0057】
カメラ30は、制御部(図示せず)と付属機器が装着される装着部を備える。制御部は装着部への付属機器の装着の有無を検出する。付属機器が装着されている場合には、制御部は装着されている付属機器を特定する。例えば、装着部は導体からなる接点を備え、接点は付属機器が装着されるとき当該付属機器と電気的に接続される。制御部は、装着部に装着された付属機器を検出する。制御部は、付属機器を検出する際、接点を介して付属機器に電気信号である装着確認信号を送信する。付属機器は、制御部から装着確認信号を受信するとき、その応答として電気信号である装着応答信号を制御部に送信する。装着応答信号には当該付属機器の機器IDが搬送される。制御部は、装着確認信号の送信後、所定時間以内に装着応答信号を受信するとき、受信した装着応答信号から機器IDを検出する。
【0058】
なお、接続部が付属機器を検出するために、接点が付属機器と相互に嵌合する形状を有し、その形状が当該付属機器の種別に応じて異なっていてもよい。制御部は、接点の電気抵抗または押圧力を測定し、測定した電気抵抗または押圧力が、所定の電気抵抗または押圧力の閾値から有意に変化した接点を特定する。そして、制御部は、特定した接点に対応する付属機器の機器IDを特定する。付属機器は、カメラ30と必ずしも電気的に接続されなくてもよく、無線で接続されてもよい。
制御部は、コントローラ10からの接続確認信号を受信するとき、検出した付属機器の機器IDをさらに含む応答信号をコントローラ10に送信する。
【0059】
機器検出部18は、カメラ30の制御部から入力される応答信号にさらに含まれる機器IDが示す付属機器を特定する。よって、機器検出部18は、接続されたカメラ30の他、そのカメラ30に装着されたレンズ、フィルタなどの付属機器を検出することができる。
機器検出部18は、接続されたカメラの機器IDの他、検出した付属機器の機器IDをRGB値算出部142に出力する。
【0060】
RGB値算出部142は、機器検出部18から入力された付属機器の機器IDに対応する分光特性データを記憶部16から読み取る。RGB値算出部142は、読み取った分光特性データをさらに用いて当該付属機器が装着されたカメラ30に係る基準RGB値ひいては調整RGB値を算出する。リニアマトリックス算出部145は、読み取った付属機器の分光特性データが示す分光特性を用いて算出された調整RGB値と参照RGB値との残差の大きさが小さくなるようにリニアマトリックスを算出する。
【0061】
(色調整処理)
次に、本変形例に係る色調整処理について説明する。次に説明する例では、付属機器がレンズとフィルタである場合を例にする。
図9は、本変形例に係る色調整処理を示すフローチャートである。
図9に示す色調整処理は、ステップS111〜S117の処理を有する。ステップS111、S112の処理は、
図7に示すステップS101、S102の処理と同様であるため、説明を省略する。但し、ステップS112の処理の終了後、ステップS113の処理に進む。
【0062】
(ステップS113)機器検出部18は、カメラ30から受信した応答信号からレンズの機器IDを検出できるか否かを判定する。検出できると判定された場合(ステップS113 YES)、ステップS114の処理に進む。検出できないと判定された場合(ステップS113 NO)、ステップS115の処理に進む。
(ステップS114)RGB値算出部142は、検出したレンズの機器IDに対応する分光特性データを記憶部16から取得する。その後、ステップS115の処理に進む。
【0063】
(ステップS115)機器検出部18は、カメラ30から受信した応答信号からフィルタの機器IDを検出できるか否かを判定する。検出できると判定された場合(ステップS115 YES)、ステップS116の処理に進む。検出できないと判定された場合(ステップS115 NO)、ステップS117の処理に進む。
(ステップS116)RGB値算出部142は、検出したレンズの機器IDに対応する分光特性データを記憶部16から取得する。その後、ステップS117の処理に進む。
【0064】
(ステップS117)リニアマトリックス算出部145は、取得した分光特性データを用いて算出された調整RGB値と参照RGB値との残差の大きさが小さくなるようにリニアマトリックスを算出する。RGB値算出部142は、調整RGB値を算出する際、色票画像データが示す画素毎のRGB値に、検出したカメラに対応する照明の照明分光特性と当該カメラのカメラ分光特性データが示すカメラ分光特性の他、検出したレンズの分光特性データが示す分光特性と検出したフィルタの分光特性データが示す分光特性を乗算して調整RGB値を算出する。従って、レンズ、フィルタが検出されない場合には、RGB値算出部142は、検出されないレンズ、フィルタの分光特性を乗算せずに調整RGB値を算出する。その後、
図9に示す処理を終了する。
【0065】
図9に示す処理によれば、カメラ30へのレンズやフィルタの着脱や交換に応じて撮影される画像の色が変化する場合でも、変化した色がリファレンスカメラ30−rで撮像される画像の色に近似するように調整される。このことは、撮影現場において撮影に用いるカメラ30においてレンズやフィルタを着脱する場合や、他のレンズやフィルタに交換する場合に好都合である。
【0066】
以上に説明したように、本実施形態に係るコントローラ10は、カメラ30の分光特性が記憶された記憶部16と、カメラ30の接続を検出する機器検出部18と、を備える。RGB値算出部142は、カメラ30の分光特性として機器検出部18が検出したカメラ30の分光特性を用いて調整RGB値を算出する。
この構成により、カメラ30が交換されるとき、それぞれのカメラ30が撮影した画像の色がリファレンスカメラ30−rが撮影した画像の色に近似するように調整される。そのため、算出される調整パラメータを用いることで、カメラ30の交換の有無に関わらず、撮影した画像の色が複数のカメラ30間で互いに近似するように色調整を行うことができる。また、カメラ30の分光特性の設定に係るユーザの操作を回避することができる。
【0067】
また、本実施形態に係るコントローラ10において、記憶部16には、カメラ30に装着される付属機器の分光特性が記憶される。機器検出部18は、カメラ30に装着される付属機器の装着を検出する。RGB値算出部142は、機器検出部18が装着を検出した付属機器の分光特性をさらに作用して調整RGB値を算出することを特徴とする。
この構成により、カメラ30へのレンズやフィルタなどの付属機器の着脱もしくは交換の状態に応じて、カメラ30が撮影した画像の色がリファレンスカメラ30−rで撮影される画像の色に近似するように調整される。そのため、算出される調整パラメータを用いることで、カメラ30において付属機器の着脱もしくは交換の有無の状態や、これらの状態が互いに異なる複数のカメラ30間で、撮影した画像の色が互いに近似するように色調整を行うことができる。また、カメラ30に装着した付属機器の分光特性の設定に係るユーザの操作を回避することができる。
【0068】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態について説明してきたが、具体的な構成は上述のものに限られることはなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲内において様々な設計変更等をすることが可能である。
【0069】
上述した実施形態では各種の画像データで表される画素毎の信号値がRGB表色系に基づくRGB値であることを例にしたが、これには限られない。信号値は、他の表色系、例えば、YCrCb表色系に基づくYCrCb値であってもよい。
上述した実施形態では、調整信号値と参照信号値の差の大きさの指標値として、調整信号値を変換したL*a*b*色空間値と参照信号値を変換したL*a*b*色空間値との差の画素間の平方和である二乗残差ε
cを例にしたがこれには限らない。当該指標値は、調整信号値と参照信号値の差の画素間の平方和であってもよい。
また、カメラ30間で色調整に共通に用いる画像として色票Cmが表す画像を用いることを例にしたが、これには限られない。色調整に用いる画像は、複数個の基準色を表す領域を含み、人間が知覚可能な色域全体に複数個の基準色が分布する画像であればよい。
【0070】
コントローラ10が定めた調整パラメータは、必ずしも調整対象のカメラ30に出力されなくともよい。コントローラ10は、調整対象のカメラ30が撮影した画像の画像データを処理する機器に定めた調整パラメータを出力すればよい。その場合には、カメラ30において信号処理系35が省略されてもよい。
コントローラ10は、いずれかのカメラ30と一体化した単一の色調整装置として構成されてもよい。
【0071】
また、コントローラ10の機能は、コンピュータにおいて実現されてもよい。その場合、コントローラ10の機能を実現するコンピュータは、CPUなどの制御デバイスを含んで構成される。制御デバイスは、インストールした制御プログラムで指示される処理を実行することによってデータ入力部12、信号処理部14、操作部15、記憶部16およびデータ出力部17のいずれか、またはそれらの任意の組み合わせとして機能する。