(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明について詳細に説明する。
本明細書において、「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0021】
本明細書において、置換基群Aは下記の置換基を含むものとする。
【0022】
(置換基群A)
置換基群Aに含まれる置換基を以下に示す。
ハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキル基で、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、ドデシル基、ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、1−ノルボルニル基、1−アダマンチル基)、アルケニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜18のアルケニル基で、例えば、ビニル基、アリル基、3−ブテン−1−イル基)、アリール基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリール基で、例えば、フェニル基、ナフチル基)、ヘテロ環基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環基で、例えば、2−チエニル基、4−ピリジル基、2−フリル基、2−ピリミジニル基、1−ピリジル基、2−ベンゾチアゾリル基、1−イミダゾリル基、1−ピラゾリル基、ベンゾトリアゾール−1−イル基)、シリル基(好ましくは炭素数3〜38、より好ましくは炭素数3〜18のシリル基で、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリブチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基、t−ヘキシルジメチルシリル基)、ヒドロキシル基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシ基で、例えば、メトキシ基、エトキシ基、1−ブトキシ基、2−ブトキシ基、イソプロポキシ基、t−ブトキシ基、ドデシルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基)、アリールオキシ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールオキシ基で、例えば、フェノキシ基、1−ナフトキシ基)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環オキシ基で、例えば、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ基、2−テトラヒドロピラニルオキシ基)、シリルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のシリルオキシ基で、例えば、トリメチルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、ジフェニルメチルシリルオキシ基)、アシルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24のアシルオキシ基で、例えば、アセトキシ基、ピバロイルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、ドデカノイルオキシ基)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシカルボニルオキシ基で、例えば、エトキシカルボニルオキシ基、t−ブトキシカルボニルオキシ基、シクロヘキシルオキシカルボニルオキシ基)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルオキシ基で、例えば、フェノキシカルボニルオキシ基)、カルバモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜48、よりこの好ましくは炭素数1〜24のカルバモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ基、N−ブチルカルバモイルオキシ基、N−フェニルカルバモイルオキシ基、N−エチル−N−フェニルカルバモイルオキシ基)、スルファモイルオキシ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルオキシ基で、例えば、N,N−ジエチルスルファモイルオキシ基、N−プロピルスルファモイルオキシ基)、アルキルスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数1〜38、より好ましくは炭素数1〜24のアルキルスルホニルオキシ基で、例えば、メチルスルホニルオキシ基、ヘキサデシルスルホニルオキシ基、シクロヘキシルスルホニルオキシ基)、アリールスルホニルオキシ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニルオキシ基で、例えば、フェニルスルホニルオキシ基)、アシル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアシル基で、例えば、ホルミル基、アセチル基、ピバロイル基、ベンゾイル基、テトラデカノイル基、シクロヘキサノイル基)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシカルボニル基で、例えば、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、オクタデシルオキシカルボニル基、シクロヘキシルオキシカルボニル基、2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルシクロヘキシルオキシカルボニル基)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニル基で、例えば、フェノキシカルボニル基)、カルバモイル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のカルバモイル基で、例えば、カルバモイル基、N,N−ジエチルカルバモイル基、N−エチル−N−オクチルカルバモイル基、N,N−ジブチルカルバモイル基、N−プロピルカルバモイル基、N−フェニルカルバモイル基、N−メチルN−フェニルカルバモイル基、N,N−ジシクロへキシルカルバモイル基)、アミノ基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のアミノ基で、例えば、アミノ基、メチルアミノ基、N,N−ジブチルアミノ基、テトラデシルアミノ基、2−エチルへキシルアミノ基、シクロヘキシルアミノ基)、アニリノ基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは6〜24のアニリノ基で、例えば、アニリノ基、N−メチルアニリノ基)、ヘテロ環アミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは1〜18のヘテロ環アミノ基で、例えば、4−ピリジルアミノ基)、カルボンアミド基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは2〜24のカルボンアミド基で、例えば、アセトアミド基、ベンズアミド基、テトラデカンアミド基、ピバロイルアミド基、シクロヘキサンアミド基)、ウレイド基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のウレイド基で、例えば、ウレイド基、N,N−ジメチルウレイド基、N−フェニルウレイド基)、イミド基(好ましくは炭素数36以下、より好ましくは炭素数24以下のイミド基で、例えば、N−スクシンイミド基、N−フタルイミド基)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2〜48、より好ましくは炭素数2〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルコキシカルボニルアミノ基で、例えば、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、t−ブトキシカルボニルアミノ基、オクタデシルオキシカルボニルアミノ基、シクロヘキシルオキシカルボニルアミノ基)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数7〜32、より好ましくは炭素数7〜24のアリールオキシカルボニルアミノ基で、例えば、フェノキシカルボニルアミノ基)、スルホンアミド基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルホンアミド基で、例えば、メタンスルホンアミド基、ブタンスルホンアミド基、ベンゼンスルホンアミド基、ヘキサデカンスルホンアミド基、シクロヘキサンスルホンアミド基)、スルファモイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24のスルファモイルアミノ基で、例えば、N,N−ジプロピルスルファモイルアミノ基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイルアミノ基)、アゾ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のアゾ基で、例えば、フェニルアゾ基、3−ピラゾリルアゾ基)、アルキルチオ基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキルチオ基で、例えば、メチルチオ基、エチルチオ基、オクチルチオ基、シクロヘキシルチオ基)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールチオ基で、例えば、フェニルチオ基)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜18のヘテロ環チオ基で、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ基、2−ピリジルチオ基、1−フェニルテトラゾリルチオ基)、アルキルスルフィニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキルスルフィニル基で、例えば、ドデカンスルフィニル基)、アリールスルフィニル基(好ましくは炭素数6〜32、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルフィニル基で、例えば、フェニルスルフィニル基)、アルキルスルホニル基(好ましくは炭素数1〜48、より好ましくは炭素数1〜24の、直鎖、分岐、又は環状のアルキルスルホニル基で、例えば、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基、プロピルスルホニル基、ブチルスルホニル基、イソプロピルスルホニル基、2−エチルヘキシルスルホニル基、ヘキサデシルスルホニル基、オクチルスルホニル基、シクロヘキシルスルホニル基)、アリールスルホニル基(好ましくは炭素数6〜48、より好ましくは炭素数6〜24のアリールスルホニル基で、例えば、フェニルスルホニル基、1−ナフチルスルホニル基)、スルファモイル基(好ましくは炭素数32以下、より好ましくは炭素数24以下のスルファモイル基で、例えば、スルファモイル基、N,N−ジプロピルスルファモイル基、N−エチル−N−ドデシルスルファモイル基、N−エチル−N−フェニルスルファモイル基、N−シクロヘキシルスルファモイル基)、スルホ基、ホスホニル基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスホニル基で、例えば、フェノキシホスホニル基、オクチルオキシホスホニル基、フェニルホスホニル)、ホスフィノイルアミノ基(好ましくは炭素数1〜32、より好ましくは炭素数1〜24のホスフィノイルアミノ基で、例えば、ジエトキシホスフィノイルアミノ基、ジオクチルオキシホスフィノイルアミノ基)。
【0023】
<キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有する染料ポリマー>
本発明に用いられる、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を含む染料ポリマー(単に「染料ポリマー」ともいう)は、分子内にキサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有するポリマーであれば特に制限はなく、線状のポリマーであってもよいし、網目状のポリマーであってもよい。
染料ポリマーは、好ましくはキサンテン骨格を有する染料に由来する構造を繰り返し単位として含む色素多量体である。
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造とは、キサンテン骨格を有する染料として用いられる化合物から任意の水素原子を1個以上取り除いてなる基(染料残基)である。
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造は、例えば、カラーインデックス(略称は「C.I.」)で分類されているような染料に由来する構造、又はその構造に本発明の効果を奏する範囲内で任意の置換基を置換させた構造、若しくはその構造から本発明の効果を奏する範囲内で任意の置換基を取り除いた構造などが挙げられる。
染料としては、水に溶解する染料であってもよいし、水に不溶な染料であってもよいが、染料ポリマーの耐水性及び耐洗濯性の観点から、水に不溶な染料であることが好ましい。また、カルボキシル基、スルホ基、リン酸基、及びこれらの塩、アンモニウム基などのイオン性基を有さない染料であることが好ましい。このような染料としては、特に限定されないが、例えば分散染料など水に不溶な染料を用いてもよいし、水に可溶な染料からイオン性基を除いたものを用いてもよい。
染料ポリマーとしては、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を主鎖又は側鎖に有するポリマーが好ましく用いられる。キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を側鎖に有するポリマーにおける主鎖を構成するポリマーとしては特に限定されないが、アクリルポリマー、ウレタンポリマー、又はスチレンポリマーが好ましく、アクリルポリマー又はウレタンポリマーがより好ましく、ウレタンポリマーが特に好ましく用いられる。キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を主鎖に有するポリマーにおける主鎖を構成するポリマーとしては特に限定されないが、ウレタンポリマーが好ましく用いられる。
【0024】
染料ポリマーにおいて、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を導入する方法は任意であり、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有する単量体を重合、又は共重合させて多量体を得てもよく、ポリマーを形成した後に、高分子反応などによりキサンテン骨格を有する染料に由来する構造を導入してもよい。
【0025】
[キサンテン骨格を有する染料に由来する構造し、主鎖構造がアクリルポリマーである染料ポリマー]
本発明におけるアクリルポリマーとは、(メタ)アクリル酸に由来する繰り返し単位及び(メタ)アクリル酸エステルに由来する繰り返し単位からなる群のうち、少なくとも1種の繰り返し単位を有するポリマーである。なお、「(メタ)アクリル酸」はアクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種を表し、「(メタ)アクリル酸エステル」はアクリル酸エステル及びメタクリル酸エステルの少なくとも1種を表す。
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造し、主鎖構造がアクリルポリマーである染料ポリマーとしては、下記ポリマー等が好ましい。L
1中の*1はポリマー主鎖の炭素原子との結合位置を、*2はDyeとの結合位置をそれぞれ表し、Dye中の*3はL
1との結合位置を表す。
【0027】
[キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、かつウレタン結合を有する染料ポリマー]
本発明におけるウレタンポリマー(「ポリウレタン」ともいう)とは、ウレタン結合を有するポリマーのことであり、ヒドロキシル基を2個以上有するポリオール化合物とイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物の反応により形成される。
本発明に用いられる染料ポリマーは、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、かつウレタン結合を有する染料ポリマー(「ウレタン結合を有する染料ポリマー」ともいう)であることが好ましい。
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、一般的にTg(ガラス転移点)が低く、柔らかいので、布帛に対して高い追随性を有する。このため、ウレタン結合を有する染料ポリマーを用いることにより、捺染後の着色布の耐摩擦性及び風合いを向上させることができると考えられる。
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、主鎖にウレタン結合を有する線状のポリマーであってもよいし、ウレタン結合を有する網目状のポリマーであってもよい。
ウレタン結合を有する染料ポリマーの好ましい例としては、下記一般式(1−2)で表される繰り返し単位を有する染料ポリマー又は下記一般式(1−3)で表される繰り返し単位を有する染料ポリマーが挙げられる。
【0029】
一般式(1−2)中、L
2及びL
3は各々独立に連結基を表し、D
1はキサンテン骨格を有する染料から任意の水素原子を1個取り除いた染料残基を表す。
【0031】
一般式(1−3)中、L
3は連結基を表し、L
4及びL
5は各々独立に単結合又は連結基を表し、D
2はキサンテン骨格を有する染料から任意の水素原子を2個取り除いた染料残基を表す。
【0032】
一般式(1−2)中、L
2及びL
3は各々独立に連結基を表し、連結基としては、本発明の効果を奏しうる範囲であれば何ら限定されないが、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の直鎖、分岐又は環状の脂肪族炭化水素基(飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい)、炭素数6〜30の置換若しくは無置換の芳香族基(芳香族炭化水素基であっても、芳香族複素環基であってもよい)、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が好ましい。また、これらの連結基中には、−O−、−S−、−NR−(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。)、−C(=O)−、−SO−、−SO
2−などを有していてもよい。
L
2は、3価の連結基であることが好ましい。L
2は、脂肪族炭化水素基であることが好ましく、炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基であることがより好ましい。
L
3は、2価の連結基であることが好ましい。L
3は、アルキレン基、アリーレン基またはその組み合わせであることが好ましく、アルキレン基がより好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基であることが更に好ましい。
L
2及びL
3が表す連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては置換基群Aから選択される置換基が挙げられる。
【0033】
一般式(1−2)中、D
1はキサンテン骨格を有する染料から任意の水素原子を1個取り除いた染料残基であれば限定されないが、D
1は下記一般式(M1)で表される染料から任意の水素原子を1個取り除いた染料残基を表すことが好ましく、一般式(M1)中のR
203、R
204、R
207、R
208又はR
211から水素原子を1個取り除いた染料残基を表すことがより好ましい。
【0035】
一般式(M1)中、R
201〜R
215は各々独立に水素原子又は置換基を表し、X
201は一価の陰イオンを表し、n201は0又は1を表す。
【0036】
一般式(M1)中のR
201〜R
215が置換基を表す場合の置換基としては、例えば置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられる。
一般式(M1)中のR
201〜R
215が置換基を表す場合、その置換基は、さらに置換可能な基である場合には、置換基をさらに有していてもよく、その置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、2個以上の置換基を有している場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。また、一般式(M1)中のR
201〜R
215が置換基を表す場合、その置換基のうち少なくとも2つは、互いに結合して5員、6員、又は7員の飽和環、又は不飽和環を形成していてもよい。形成される5員、6員、及び7員の環が、さらに置換可能な基である場合には、置換基をさらに有していてもよく、その置換基としては上記置換基群Aから選ばれる置換基が挙げられ、2個以上の置換基で置換されている場合には、それらの置換基は同一であっても異なっていてもよい。
【0037】
一般式(M1)におけるR
201、R
205、R
206、及びR
210として、好ましくは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基であり、より好ましくは水素原子である。
一般式(M1)におけるR
202、及びR
209として、好ましくは各々独立に、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、スルホ基であり、より好ましくは、水素原子、スルホ基であり、特に好ましくは水素原子である。
一般式(M1)におけるR
203、R
204、R
207、及びR
208として、好ましくは各々独立に水素原子、置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜18のアリール基であり、より好ましくは水素原子、置換または無置換の炭素数1〜18のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基であり、特に好ましくは、水素原子、置換または無置換の炭素数2〜12のアルキル基、置換または無置換の炭素数6〜10のアリール基である。
一般式(M1)におけるR
211として、好ましくはカルボキシレート基(−CO
2−)、スルホネート基(−SO
3−)、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基であり、より好ましくは、スルホネート基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、置換または無置換のスルファモイル基であり、特に好ましくはスルホネート基、アルコキシカルボニル基である。
一般式(M1)におけるR
212、R
213、R
214、及びR
215として、好ましくは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換または無置換のアルキル基、置換または無置換のアリール基、カルボキシル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、スルホ基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基であり、より好ましくは各々独立に水素原子、ハロゲン原子、カルボキシル基、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、スルホ基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基であり、特に好ましくは各々独立に水素原子、置換または無置換のアルコキシカルボニル基、置換または無置換のカルバモイル基、スルホ基、置換または無置換のスルファモイル基、置換または無置換のアミノ基である。
一般式(M1)におけるR
214とR
215は、互いに結合して環を形成することも好ましい。
一般式(M1)におけるX
201として、好ましくは塩素イオン、アセテートイオン、トリフラートイオン、テトラフルオロボレートイオン、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、パークロレートイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンであり、より好ましくは、テトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレートイオン、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオンである。
一般式(M1)におけるn201は0又は1を表し、好ましくは0である。
【0038】
一般式(1−3)中、L
4及びL
5は各々独立に単結合又は連結基を表す。連結基としては、本発明の効果を奏しうる範囲であれば何ら限定されないが、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の直鎖、分岐又は環状アルキレン基(例えば、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロピレン基、ブチレン基など)、炭素数6〜30の置換若しくは無置換のアリーレン基(例えば、フェニレン基、ナフタレン基等)、置換若しくは無置換のヘテロ環基、−CH=CH−、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が好ましい。また、これらの連結基中には、−O−、−S−、−NR−(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。)、−C(=O)−、−SO−、−SO
2−などを有していてもよい。
L
4及びL
5は、2価の連結基であることが好ましい。L
4及びL
5はアルキレン基であることが好ましく、炭素数1〜10のアルキレン基であることがより好ましく、炭素数1〜6のアルキレン基であることが更に好ましい。
L
3は、上記一般式(1−2)中のL
3と同様である。
L
3、L
4、及びL
5が連結基を表す場合、連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては置換基群Aから選択される置換基が挙げられる。
【0039】
一般式(1−3)中、D
2はキサンテン骨格を有する染料から任意の水素原子を2個取り除いた染料残基を表し、特に限定されないが、上記一般式(M1)で表される染料から任意の水素原子を2個取り除いた染料残基を表すことが好ましく、一般式(M1)中のR
203、R
204、R
207、及びR
208から選ばれる2つからそれぞれ水素原子を1個ずつ合計2個取り除いた染料残基を表すことがより好ましい。い。一般式(M1)に関する説明は前述したとおりである。
【0040】
ウレタン結合を有する染料ポリマーの重量平均分子量(Mw)は2,000〜2,000,000であることが好ましく、2,000〜1,000,000であることがより好ましく、3,000〜80,000であることが更に好ましく、3,000〜60,000であることが特に好ましく、5,000〜30,000であることが最も好ましい。
ウレタン結合を有する染料ポリマーの分散度(Mw/Mn)は好ましくは、1.0〜20.0であり、より好ましくは1.0〜10.0であり、更に好ましくは1.0〜5.0であり、特に好ましくは1.0〜3.0である。Mnは数平均分子量を表す。
ウレタン結合を有する染料ポリマーの重量平均分子量はゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定から算出できる。本明細書において、GPCは、特に断らない限り、HLC−8220GPC(東ソー(株)製)を用い、カラムをTSKgel SuperAW4000、TSKgel SuperAW3000、TSKgel SuperAW2500(東ソー社製)で測定し、数平均分子量はポリメチルメタクリレート換算により算出した。キャリアは適宜選定すればよいが、溶解可能であるかぎり、5mmol/Lトリフルオロ酢酸ナトリウムのトリフルオロエタノール溶液を用いた。
【0041】
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、上記一般式(1−2)又は(1−3)で表される繰り返し単位を、全繰り返し単位に対して34〜96質量%含有することが好ましく、24〜91質量%含有することがより好ましく、57〜91質量%含有することが更に好ましい。
【0042】
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、その他の繰り返し単位を有していてもよい。その他の繰り返し単位として、酸性基を含む繰り返し単位を有することが好ましく、酸性基としては、特に、−COOM(Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す)であることが好ましい。−COOMは、カルボキシル基(Mが水素原子を表す場合)又はその塩(Mがカウンターカチオンを表す場合)を表す。Mがカウンターカチオンを表す場合、アンモニウムイオン、アルカリ金属イオン(例、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン)及び有機カチオン(例、テトラメチルアンモニウムイオン、テトラメチルグアニジウムイオン、テトラメチルホスホニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン)が挙げられ、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、アンモニウムイオンが好ましく、リチウムイオン又はナトリウムイオンがより好ましい。
【0043】
−COOMを有する繰り返し単位としては、下記一般式(Z)で表される繰り返し単位であることが好ましい。
【0045】
一般式(Z)中、L
6は連結基を表す。Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。
【0046】
一般式(Z)中、L
6が表す連結基としては、炭素数1〜30の置換若しくは無置換の直鎖、分岐又は環状の脂肪族炭化水素基(飽和脂肪族炭化水素基であっても不飽和脂肪族炭化水素基であってもよい)、炭素数6〜30の置換若しくは無置換の芳香族基(芳香族炭化水素基であっても、芳香族複素環基であってもよい)、及びこれらを2個以上連結して形成される連結基が好ましい。また、これらの連結基中には、−O−、−S−、−NR−(Rは、水素原子、アルキル基、アリール基、又はヘテロ環基を表す。)、−C(=O)−、−SO−、−SO
2−などを有していてもよい。
L
6は、3価の連結基であることが好ましい。L
6は、脂肪族炭化水素基又は脂肪族炭化水素基と−O−とを組み合わせてなる連結基であることが好ましい。脂肪族炭化水素基としては炭素数1〜10の脂肪族炭化水素基が好ましく、炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基がより好ましい。
L
6が表す連結基は置換基を有していてもよく、置換基としては置換基群Aから選択される置換基が挙げられる。
【0047】
染料ポリマーにおける酸性基を含む繰り返し単位の全繰り返し単位に対する含有率は、好ましくは1〜29質量%であり、より好ましくは2〜24質量%であり、特に好ましくは2〜19質量%である。酸性基(好ましくは−COOM)を含む繰り返し単位の含有率が1質量%以上であれば、インク中での染料ポリマーの分散性を向上させることができる。また、29質量%以下であると、平均粒子径を制御しやすい。
【0048】
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、ヒドロキシル基を有していてもよく、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造にヒドロキシル基を有していてもよい。
【0049】
〔ウレタン結合を有する染料ポリマーの製造方法〕
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、好ましくは、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物(単量体)と、2個以上のイソシアネート基(−NCO)を有する化合物(単量体)との重付加反応により製造することができる。
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物としては、ヒドロキシル基を2〜4個有する化合物であることが好ましい。すなわち、ウレタン結合を有する染料ポリマーは、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2〜4個のヒドロキシル基を有する化合物に由来する構造を含むことが好ましい。
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の例としては、下記一般式(M10)、(M12)又は一般式(M13)で表される化合物が好ましい。
【0051】
一般式(M10)中、R
201〜R
215は各々独立に水素原子又は置換基を表し、X
201は一価の陰イオンを表し、n201は0又は1を表す。L
10は連結基を表す。ただし、R
201〜R
215のいずれかk個に−L
10−OHが置換している。kは3又は4を表す。
【0052】
一般式(M10)中のR
201〜R
215は上記一般式(M1)中のR
201〜R
215と同様である。
一般式(M10)中のL
10は上記一般式(1−3)中のL
4と同様である。
【0054】
一般式(M12)中、R
201〜R
215は各々独立に水素原子又は置換基を表し、X
201は一価の陰イオンを表し、n201は0又は1を表す。L
2は連結基を表す。ただし、R
201〜R
215のいずれか1つに−L
2−(OH)
jが置換している。jは2以上の整数を表す。
【0055】
一般式(M12)中のR
201〜R
215は上記一般式(M1)中のR
201〜R
215と同様である。
一般式(M12)中のL
2は上記一般式(1−2)中のL
2と同様である。
【0057】
一般式(M13)中、R
201〜R
215は各々独立に水素原子又は置換基を表し、X
201は一価の陰イオンを表し、n201は0又は1を表す。L
4及びL
5は各々独立に単結合又は連結基を表す。ただし、R
201〜R
215のいずれか1つに−L
4−OHが置換し、R
201〜R
215のいずれか別の1つに−L
5−OHが置換している。
【0058】
一般式(M13)中のR
201〜R
215は上記一般式(M1)中のR
201〜R
215と同様である。
一般式(M13)中のL
4及びL
5は上記一般式(1−3)中のL
4及びL
5と同様である。
【0059】
一般式(M10)、(M12)又は一般式(M13)で表される化合物(単量体)は、例えば、US2014/176653A1,2014;Journal of the American Chemical Society,1924,vol.46,p.1899;Journal of the Chemical Society,1922,vol.121,p.2390を参照して合成することができる。
【0060】
キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物の具体例を以下に示すが、これらに限定されない。
【0063】
(2個以上のイソシアネート基を有する化合物)
2個以上のイソシアネート基(−NCO)を有する化合物としては、下記一般式(J)で表される化合物が好ましい。
【化15】
【0064】
一般式(J)中、L
3は連結基を表す。
【0065】
一般式(J)中のL
3は、上記一般式(1−2)及び(1−3)中のL
3と同様である。
【0066】
また、前述の一般式(Z)で表される繰り返し単位を導入するために、下記一般式(MZ)で表される化合物(単量体)をウレタン結合を有する染料ポリマー製造のための原料として加えて、2個以上のイソシアネート基を有する化合物(単量体)と重付加反応させることができる。
【0068】
一般式(MZ)中、L
6は連結基を表す。Mは水素原子又はカウンターカチオンを表す。
【0069】
一般式(MZ)中のL
6及びMは上記一般式(Z)中のL
6及びMと同様である。
【0070】
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有し、2個以上のヒドロキシル基を有する化合物に由来する構造単位を全構造単位に対して27〜77質量%含有することが好ましく、36〜73質量%含有することがより好ましく、44〜73質量%含有することが更に好ましい。
ウレタン結合を有する染料ポリマーは、2個以上のイソシアネート基を有する化合物に由来する構造単位を全構造単位に対して23〜44質量%含有することが好ましく、24〜40質量%含有することがより好ましく、24〜37質量%含有することが更に好ましい。
【0071】
ウレタン結合を有する染料ポリマーの好ましい具体例を以下に示すが、これらに限定されない。なお、下記具体例では、ウレタン結合を有する染料ポリマーを単量体の構造を用いて示しているが、各単量体に由来する構造単位を各比率で有するポリマーを示す。
【0077】
<染料ポリマーの水分散体>
染料ポリマーの水分散体は、少なくとも、水、及び(A)染料ポリマーを含んでおり、好ましくは(B)水性有機溶剤を含有する。また、染料ポリマーの水分散体の製造方法によっては、(C)低分子型界面活性剤又は高分子型分散剤を併用する場合と、併用しない場合(いわゆる自己分散)のいずれの形態であってもよい。
【0078】
(A)染料ポリマー
本発明では、上述の染料ポリマーを、水に溶解した状態ではなく、水に分散した状態(水分散体)として用いる。
染料ポリマーが水に分散した状態では、水に溶解した状態とは異なり、実質的に水に溶けないポリマーになっているので、耐洗濯性、耐汗性などの耐水性の面で優れる。本発明では、印捺後に、水で洗い流す工程が不要であるため、染料ポリマーは実質的に水に溶けないポリマーである。本発明の水分散体は、水に溶けないポリマーは粒子として分散しており、粒径が30〜500nmであることが好ましい。ポリマーが水に溶けている場合にはポリマーは水中で粒子として存在しない。
染料ポリマーは1種のみ用いることもできるし、2種以上を任意の割合で混合して用いることもできる。
水としては超純水を用いることが好ましい。
【0079】
(1−1)分散性
染料ポリマーは、水分散時において、染料ポリマー自体の性質として、又は併用する低分子型界面活性剤若しくは高分子型分散剤との吸着により、水となじみやすく(濡れやすく)、静電反発(斥力)や立体反発により染料ポリマーの微粒子の再凝集を防止し、沈降生成の抑制の機能を有する。
【0080】
(1−2)平均粒子径
染料ポリマーは水分散体中で粒子状になっている。染料ポリマーの水分散体における粒子状の染料ポリマーの平均粒子径は30〜500nmであることが好ましく、30〜400nmであることがより好ましく、30〜200nmであることが更に好ましく、40〜100nmであることが特に好ましい。この範囲内であると、インクジェット法により布帛に直接印捺することができる。
本明細書における平均粒子径は、粒度分布測定装置(ナノトラックUPA EX150、日機装株式会社製、商品名)を用いて測定した値を用いた。
【0081】
水分散体中の染料ポリマーの含有量として、好ましくは0.1〜40質量%であり、より好ましくは1〜30質量%であり、特に好ましくは3〜25質量%である。この範囲であるとインクジェットインクとしての貯蔵安定性を確保しつつ、印刷において高濃度の染色布を得ることができる。
水分散体中の水の含有量として、好ましくは50〜95質量%であり、より好ましくは55〜90質量%であり、特に好ましくは60〜90質量%である。この範囲であると、水分散体の安定性と、インクジェットインクとしての吐出安定性を付与することができる。なお、水分散体の安定性とは沈降などが起こりにくいことを示す。
【0082】
(B)水性有機溶剤
水性有機溶剤としては、25℃における水溶解度として10g/100g−H
2O以上であるものが好ましく、20g/100g−H
2Oであるものがより好ましく、水と任意の割合で混和するものが特に好ましい。水性有機溶剤としては、アルコール系溶剤、アミド系溶剤、ニトリル系溶剤が挙げられる。例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール、n−ブタノール、イソブタノール、tert−ブタノール、トリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオ−ル、チオグルコール、ヘキシレングリコール、グリセリン、ジグリセリン、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオ−ル、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、アセトニトリルなどが挙げられる。好ましくはトリメチロールプロパン、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、エチレングリコールモノブチルエーテルであり、より好ましくは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、2−ピロリドン、エチレングリコールモノブチルエーテルであり、特に好ましくはエチレングリコール、グリセリン、2−ピロリドンである。
水分散体中の水性有機溶剤の含有量として、好ましくは5〜50質量%であり、より好ましくは5〜40質量%であり、特に好ましくは、10〜30質量%である。この範囲であると、水分散体の安定性と、インクジェットインクとしての吐出安定性を付与することができる。
【0083】
(C)低分子界面活性剤又は高分子型分散剤
低分子界面活性剤又は高分子型分散剤としては、好ましくは、疎水基とイオン性基を有する低分子界面活性剤又は高分子型分散剤であり、以下の特性を有することが好ましい。
【0084】
(2−1)分散性
低分子界面活性剤又は高分子型分散剤は、染料ポリマーを分散させる際に添加されることで、低分子界面活性剤又は高分子型分散剤が染料ポリマー表面に吸着し水となじませ(濡れさせる)、機械的作用により摩砕させた染料ポリマー微粒子を静電反発(斥力)や立体反発により微粒子の再凝集を防止し、沈降生成の抑制の機能を有する。
【0085】
(2−2)分子量
高分子型分散剤の場合には、染料ポリマーに対して、分散効果の最適な分子量があり、その分子量を超えて大きくなると染料ポリマーと染料ポリマーの間での橋渡しを引き起こし染料ポリマーの凝集を招く。一方、最適な分子量よりも小さいと染料ポリマーからの脱着が起こりやすく分散剤としての効果が小さくなる。また、分子量が小さくなると架橋させた後の固着剤としての効果が弱くなる。従って、高分子型分散剤としては、重量平均分子量が2,000〜50,000のものを用いるのがよい。高分子型分散剤の重量平均分子量は染料ポリマーの重量平均分子量と同様の方法で測定される。
【0086】
(2−3)構造及び形態
低分子型界面活性剤又は高分子型分散剤は、疎水基(電気的に中性の非極性基で水と親和性が低い基)とイオン性基(電気的にイオン性の極性基で、水との親和性が高い基)を有することが好ましい。その構造は、直鎖又は分岐したものいずれでもよい。高分子型界面活性剤の場合はランダム、交互、周期、ブロックのいずれの構造でもよく、幹と枝の構造がデザインされたグラフトポリマーであってもよい。
低分子界面活性剤、及び高分子型分散剤は、水又は水性有機溶剤に配合した状態が、水溶液、ディスパージョン、エマルジョンのいずれの形態でも用いることができる。
【0087】
(2−4)形成法及び入手方法
低分子界面活性剤は例えば以下のようなものを用いることができる。
陽イオン性界面活性剤として、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、及びイミダゾリニウム塩等が挙げられる。陰イオン性界面活性剤として、例えば、脂肪酸石鹸(たとえばオレイン酸ナトリウムなど)、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、及びアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤として、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、及びイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型も好適な例として挙げられる。
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びアセチレングリコール等が挙げられる。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるSURFYNOLS(AirProducts&Chemicals社)も好適な例として挙げられる。その他、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)において界面活性剤として挙げられているものも用いることができる。
低分子界面活性剤の含有量は、水分散体の全質量に対して、0.001質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、かかる範囲で水分散体の表面張力を任意に調整することが好ましい。
【0088】
高分子型分散剤は、疎水基含有単量体とイオン性基含有単量体とを共重合させることにより製造できる。なお、それぞれの単量体は一種類のみでも、又は二種類以上用いてもよい。上記の疎水基含有単量体及びイオン性基含有単量体としては、前述の染料ポリマーの共重合成分の単量体と同じである。高分子型分散剤として、ビックケミー・ジャパン社製のDISPERBYK−194N(商品名)などを用いることもできる。
高分子型分散剤の含有量は、水分散体の全質量に対して、0.001質量%〜50質量%の範囲であることが好ましく、かかる範囲で水分散体の表面張力を任意に調整することが好ましい。
【0089】
染料ポリマーの水分散体の製造方法は、(A)染料ポリマーの粉体又はペースト、及び必要に応じて低分子型界面活性剤又は高分子型分散剤を、水又は水性有機溶剤中で混合した後に、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ、チタニアビーズ、又はステンレス球などとともにアトライターやミル機で微分散する方法、又は、(B)水又は水性有機溶剤と、水又は水性有機溶剤に難溶な重合性染料モノマーと必要に応じて共重合モノマー、及び乳化剤(界面活性剤)を混合し、そこに水又は水性有機溶剤に溶解可能な重合開始剤(通常ラジカル発生剤)を加えて行う乳化重合を用いる方法があり、これらを好適に用いることができる。
また、これらの分散体には、必要に応じ湿潤剤としてのグリコール溶剤、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、グリセリン、ポリエチレングリコールなど、及び、尿素、ヒアルロン酸、ショ糖などを添加することができる。その他に、分散助剤として、上述の非イオン性界面活性剤や陰イオン界面活性剤を添加することができるが、これらの界面活性剤は、分散安定性としての性能を低下させないように、少量配合することが好ましい。
【0090】
<着色組成物>
本発明は、染料ポリマーの水分散体を含む着色組成物にも関する。染料ポリマーの水分散体を含む着色組成物は、上述の染料ポリマーの水分散体を含有し、好ましくは、水又は水性有機溶剤を更に含有する。また、必要に応じて、その他の着色剤、有機溶媒、界面活性剤、及び各種添加剤等の成分を含有していてもよい。
本発明の着色組成物は、水を含む液体中に染料ポリマーが分散した分散液である。なお、着色組成物中で染料ポリマーは粒子状になっており、粒子状の染料ポリマーの好ましい平均粒子径は前述したものと同様である。
本発明の染料ポリマーの水分散体を含有する着色組成物は、優れた耐光性を有しているので、繊維染色用途のみならず、紙媒体染色、プラスチック染色、塗料、塗膜、建材として用いることができる。
【0091】
本発明の着色組成物は、染料ポリマー以外の他の着色剤(染料や顔料等)をさらに含んでもよい。他の着色剤を含む場合、染料ポリマーの含有量は、染料ポリマーを含めた着色剤の全質量に対して、50質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましく、さらには100質量%、すなわち染料ポリマーのみを含有することが好ましい。
着色剤(染料ポリマー、及びこれ以外の着色剤を含む)の着色組成物中の含有量としては、良好な染色濃度が得られ、着色組成物の保存安定性を考慮すると、着色組成物の全質量に対して、0.1質量%〜20質量%が好ましく、1質量%〜15質量%がより好ましく、3質量%〜12質量%がさらに好ましい。
着色組成物中の染料ポリマーの含有量は、0.1質量%〜20質量%であることが好ましく、1質量%〜15質量%であることがより好ましい。
着色組成物中の水の含有量は、40質量%〜90質量%であることが好ましく、50質量%〜85質量%であることがより好ましく、50質量%〜80質量%であることが更に好ましい。
着色組成物の調製方法は特に限定されないが、たとえば、染料ポリマーの水分散体と、必要に応じて水又はその他の成分とを混合することで調製することができる。
【0092】
<有機溶媒>
本発明の着色組成物が含有し得る有機溶媒の例としては、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、グリセリン、2−エチル−2−(ヒドロキシメチル)−1,3−プロパンジオール、テトラエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、1,2,4−ブタントリオール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ブチレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,2−ペンタンジオール、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ブタンジオール、及び2−メチル−1,3−プロパンジオール等)、アミン類(例えば、エタノールアミン、及び2−(ジメチルアミノ)エタノール等)、一価アルコール類(例えばメタノール、エタノール、及びブタノール等)、多価アルコールのアルキルエーテル類(例えば、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、及びジプロピレングリコールモノメチルエーテル等)、2,2′−チオジエタノール、アミド類(例えばN,N−ジメチルホルムアミド等)、スルホラン、ジメチルスルホキシド、3−スルホレン等の含硫黄化合物、複素環類(2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びN−エチルモルホリン等)、及びアセトニトリル等が挙げられる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明の着色組成物が含有し得る有機溶媒は、前述の水性有機溶剤であることが好ましい。
本発明の着色組成物中の有機溶媒の含有量は、着色組成物の全質量に対して、1質量%〜60質量%であることが好ましく、2質量%〜50質量%であることがより好ましい。
【0093】
<界面活性剤>
本発明の着色組成物は、保存安定性、吐出安定性、及び吐出精度などを高める観点から、各種界面活性剤をさらに用いることができる。界面活性剤としては、陽イオン性、陰イオン性、両性、及び非イオン性のいずれの界面活性剤も用いることができる。
【0094】
陽イオン性界面活性剤として、例えば、脂肪族アミン塩、脂肪族4級アンモニウム塩、ベンザルコニウム塩、塩化ベンゼトニウム、ピリジニウム塩、及びイミダゾリニウム塩等が挙げられる。
【0095】
陰イオン性界面活性剤として、例えば、脂肪酸石鹸、N−アシルグルタミン酸塩、アルキルスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、硫酸化油、高級アルコール硫酸エステル塩、及びアルキルリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0096】
両性界面活性剤として、例えば、カルボキシベタイン型、スルホベタイン型、アミノカルボン酸塩、及びイミダゾリニウムベタイン等が挙げられる。また、N,N−ジメチル−N−アルキルアミンオキシドのようなアミンオキシド型も好適な例として挙げられる。
【0097】
非イオン性界面活性剤として、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、及びアセチレングリコール等が挙げられる。また、アセチレン系ポリオキシエチレンオキシド界面活性剤であるサーフィノール(エアプロダクツ社製、商品名)も好適な例として挙げられる。
その他、特開昭59−157,636号の第(37)〜(38)頁、リサーチ・ディスクロージャーNo.308119(1989年)において界面活性剤として挙げられているものも用いることができる。
【0098】
これらの各界面活性剤を使用する場合、界面活性剤は1種を単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
本発明の着色組成物中の界面活性剤の含有量は、着色組成物の全質量に対して、0.001質量%〜5.0質量%の範囲であることが好ましく、かかる範囲で着色組成物の表面張力を任意に調整することが好ましい。
【0099】
<各種添加剤>
本発明の着色組成物は、その他に従来公知の各種添加剤を含有していてもよい。添加剤として、例えば、酸塩基や緩衝液等のpH調整剤、蛍光増白剤、表面張力調整剤、消泡剤、乾燥防止剤、潤滑剤、増粘剤、紫外線吸収剤、退色防止剤、帯電防止剤、マット剤、酸化防止剤、比抵抗調整剤、防錆剤、無機顔料、還元防止剤、防腐剤、防黴剤、キレート剤、及び架橋剤等が挙げられる。
【0100】
(紫外線吸収剤)
紫外線吸収剤として、特開昭58−185677号公報、特開昭61−190537号公報、特開平2−782号公報、特開平5−197075号公報、特開平9−34057号公報等に記載されたベンゾトリアゾール系化合物、特開昭46−2784号公報、特開平5−194483号公報、米国特許第3214463号明細書等に記載されたベンゾフェノン系化合物、特公昭48−30492号公報、特公昭56−21141号公報、特開平10−88106号公報等に記載された桂皮酸系化合物、特開平4−298503号公報、特開平8−53427号公報、特開平8−239368号公報、特開平10−182621号公報、特表平8−501291号公報等に記載されたトリアジン系化合物、リサーチ・ディスクロージャーNo.24239号に記載された化合物やスチルベン系、ベンズオキサゾール系化合物に代表される紫外線を吸収して蛍光を発する化合物、いわゆる蛍光増白剤も用いることができる。着色組成物が、紫外線吸収剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
【0101】
(退色防止剤)
退色防止剤として、各種の有機系及び金属錯体系の退色防止剤を使用することができる。有機系の退色防止剤として、例えば、ハイドロキノン類、アルコキシフェノール類、ジアルコキシフェノール類、フェノール類、アニリン類、アミン類、インダン類、クロマン類、アルコキシアニリン類、及びヘテロ環類等が挙げられる。金属錯体として、例えば、ニッケル錯体、及び亜鉛錯体等が挙げられる。より具体的にはリサーチ・ディスクロージャーNo.17643の第VIIのI項及びJ項、同No.15162、同No.18716の650頁左欄、同No.36544の527頁、同No.307105の872頁、同No.15162に引用された特許に記載された化合物や特開昭62−215272号公報の127頁〜137頁、及び米国特許第5356443号明細書に記載された代表的化合物の一般式及び化合物例に含まれる化合物を使用することができる。着色組成物が、退色防止剤を含有することで、画像の保存性を向上させることができる。
【0102】
(防腐剤及び防黴剤)
本発明の着色組成物は、着色組成物の長期保存安定性を保つため、防腐剤及び防黴剤の少なくとも一方を含有していてもよい。着色組成物が、防腐剤や防黴剤を含有することで、長期での保存安定性を高めることができる。防腐剤及び防黴剤として、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、プリベントールCMK;ランクセス社製、商品名)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、プロキセルGXL;アーチケミカルズ社製、商品名)、デヒドロ酢酸ナトリウム、安息香酸ナトリウム、ナトリウムピリジンチオン−1−オキシド、p−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン、及びその塩等が挙げられる。
防腐剤及び防黴剤は、一種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。着色組成物が防腐剤及び防黴剤を含有する場合、防腐剤及び防黴剤の含有量は、着色組成物の全質量に対して、0.02質量%〜1.00質量%が好ましい。
【0103】
(乾燥防止剤)
乾燥防止剤としては、水より蒸気圧の低い水性有機溶剤を好適に用いることができる。着色組成物に乾燥防止剤が含有されることで、インクジェット記録用途に使用する場合、着色組成物を吐出する吐出ヘッドのノズルの噴射口において、着色組成物が乾燥することによる目詰まりを防止することができる。乾燥防止剤の具体的な例として、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、チオジグリコール、ジチオジグリコール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、アセチレングリコール誘導体、グリセリン、及びトリメチロールプロパン等に代表される多価アルコール類、エチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、ジエチレングリコールモノメチル(又は、エチル)エーテル、トリエチレングリコールモノエチル(又は、ブチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、及びN−エチルモルホリン等の複素環類、スルホラン、ジメチルスルホキシド、及び3−スルホレン等の含硫黄化合物、ジアセトンアルコール、及びジエタノールアミン等の多官能化合物、並びに尿素誘導体が挙げられる。これらのうち、グリセリン、及びジエチレングリコール等の多価アルコールがより好ましい。
また、乾燥防止剤は、一種を単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。上記の着色組成物が乾燥防止剤を含有する場合、乾燥防止剤の含有量は、着色組成物の全質量の全質量に対して、10質量%〜50質量%が好ましい。
【0104】
(pH調整剤)
pH調整剤として、例えば、有機塩基、及び無機アルカリ等の中和剤を用いることができる。着色組成物をインクジェット記録に使用する場合、着色組成物にpH調整剤が含有されることで、着色組成物の保存安定性を向上させることができる。pH調整剤は、着色組成物のpHが5〜12になるように添加することが好ましく、pHが5〜9になるように添加することがより好ましい。
【0105】
(表面張力調整剤及び消泡剤)
表面張力調整剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、及びアニオン系界面活性剤等の各種界面活性剤が挙げられる。界面活性剤の好ましい例は、既述の界面活性剤の欄にて例示したものと同じである。
消泡剤としては、フッ素系、及びシリコーン系化合物が好ましい。
【0106】
本発明の着色組成物をインクジェット用(インクジェットインク)として用いる場合には、着色組成物の表面張力を、20mN/m〜70mN/mに調整することが好ましく、25mN/m〜60mN/mに調整することがより好ましい。また、着色組成物をインクジェット用として用いる場合には、着色組成物の粘度を、40mPa・s以下に調整することが好ましく、30mPa・s以下に調整することがより好ましく、20mPa・s以下に調整することが特に好ましい。
表面張力及び粘度は、種々の添加剤、例えば、粘度調整剤、表面張力調整剤、比抵抗調整剤、皮膜調整剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、退色防止剤、防黴剤、防錆剤、分散剤、及び界面活性剤等を添加することによって、調整することができる。
【0107】
(キレート剤)
キレート剤は、着色組成物中における沈殿物等の析出物の発生を防止する目的、また、保存安定性や目詰まり回復性を改良する目的で好適に使用される。着色組成物の着色剤として染料を用いると、着色組成物中に含まれる金属(Ca、Mg、Si、及びFe等)が析出物の発生や目詰まり回復性の低下の原因となり得るため、金属イオンを一定量以下に管理する必要があることが知られている。また、銅錯体染料を用いた場合には、金属イオンの量を管理しても、遊離の銅イオンの量も管理しなければ、析出物の発生や目詰まり回復性の低下が認められることが知られている(特開2000-355665号、及び特開2005−126725号公報等参照)。
キレート剤として、例えば、エチレンジアミンテトラ酢酸(EDTA)、ニトリロトリ酢酸、ヒドロオキシエチルエチレンジアミントリ酢酸、ウラミルジ酢酸、及びそれらの金属塩(例えば、ナトリウム塩)が挙げられる。
【0108】
(架橋剤)
着色布の耐摩擦性や洗濯堅牢度を向上させる目的で、着色組成物は架橋剤を含有してもよい。架橋剤としては、ブロックイソシアネート架橋剤(例えば、メイカネートCX、同TP−10、同DM−35HC、SU−268Aなど、いずれも明成工業株式会社製、商品名)や、多官能エポキシ架橋剤(例えば、デナコールEX−313、同314、同322、411など、いずれもナガセケムテクス株式会社製、商品名)が挙げられる。
【0109】
本発明の着色組成物は、布帛上への着色剤供給量に制約があるインクジェットインクとして好適に用いることができる。
【0110】
<インクジェットインク>
本発明は、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有する染料ポリマーの水分散体を含むインクジェットインクにも関する。インクジェットインクは捺染用であることが好ましい。インクジェットインクに含まれる成分としては上述の本発明の着色組成物において示したものと同様である。
インクジェットインク中の染料ポリマー、及びその他の成分の含有量は、上述の本発明の着色組成物において示した含有量の範囲とすることができる。
本発明の染料ポリマーの水分散体を含むインクジェットインクは、捺染糊の下塗りのない布帛にもにじまずに直接印画することができるため、作業性の観点で特に有用である。
【0111】
<インクカートリッジ>
本発明のインクカートリッジは、上記本発明のインクジェットインクを充填したインクカートリッジである。
【0112】
<インクジェット捺染方法>
本発明のインクジェット捺染方法は、少なくとも、キサンテン骨格を有する染料に由来する構造を有する染料ポリマーの水分散体を含むインクジェットインクを、インクジェット方式で布帛に直接印捺する工程を有するインクジェット捺染方法である。
本発明のインクジェット捺染方法は、廃水や転写紙などの廃材を出さず、簡便な作業性で、様々な種類の布帛ににじまずに直接捺染することができる、という効果を奏する。
さらには加熱工程を加えることにより、繊維に対して染料ポリマーが融着することで、繊維とより一体化し、風合いを損ねることなく、耐摩擦性などを更に付与できるという利点がある。
【0113】
<熱処理工程>
本発明のインクジェット捺染方法は、更に、熱処理工程を含むことが好ましい。特に、布帛に印捺した後に、熱処理工程を行うことで、染料ポリマー粒子を溶融(もしくは軟化)させ、繊維との密着性を高めることができる(すなわち、熱処理することにより、溶融染着させることができる)。着色布は乾燥後、上記溶融染着させることを目的として熱処理を行うことが好ましく、通常100〜250℃で行うことが好ましく、より好ましくは100℃〜200℃であり、特に好ましくは120℃〜200℃である。熱処理時間としては、30秒〜3分間の熱処理を行うことが好ましい。また、この熱処理工程において、染料ポリマーに導入した反応性基(例えばブロックイソシアネート基)、又は添加剤として併用した架橋剤(例えばブロックイソシアネート架橋剤や多官能エポキシ架橋剤)を用いて、架橋反応させることが耐摩擦性の観点で好ましい。
熱処理工程は上記の温度で行うことが好ましいため、染料ポリマーは200℃以下で溶融することが好ましく、180℃以下で溶融することがより好ましい。
染料ポリマーが特定の温度で溶融するかは、融点測定機により染料ポリマーを10℃/minで特定温度まで昇温し、染料ポリマーの状態を目視することで確認できる。
【0114】
<後処理>
本発明の染料ポリマーの水分散体を含むインクジェットインクにより着色した布帛は、にじみ難く、風合いの柔軟性や堅牢性(耐摩擦性)に優れるが、必要に応じて、着色布に後処理剤を全面にパディング処理することで、風合いの柔軟性や堅牢性(特に耐摩擦性)が、更に向上した着色布を得ることができる。柔軟化を目的とした後処理剤としては、カチオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、非イオン系界面活性剤、ジメチルシリコーンオイル、アミノシリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ヒドロキシ変性シリコーンオイル、脂肪酸、脂肪酸アマイド、鉱物油、植物油、動物油、可塑剤などが挙げられる。
また、着色布表面のスベリ性を向上させる目的の後処理剤としては、金属石鹸、パラフィンワックス、カルナバワックス、マイクロスタリンワックス、ジメチルシリコーンオイル、アミノシリコーンオイル、カルボキシ変性シリコーンオイル、ヒドロキシ変性シリコーンオイルなどが挙げられる。
パディング処理は、これらの後処理剤を水溶媒にミキサー攪拌により乳化、熱乳化、又は分散したものに、着色布を浸漬しマングル等で絞り乾燥、熱処理を加えて処理する。
また、後処理剤中に固着剤として樹脂エマルジョンを少量配合することにより、着色布の耐摩擦性を向上させることができる。後処理剤に対しての配合量は5%未満が好ましく、これにより着色布の風合いの柔らかさが損なわれにくいため好ましい。
後処理剤に固着剤として配合する樹脂エマルジョンとしては、特に限定するものではないが、アクリル酸エステル樹脂エマルジョン、ウレタン樹脂エマルジョン、エチレン・酢酸ビニル共重合樹脂(EVA樹脂)エマルジョン、シリコーン/アクリル樹脂エマルジョン、ポリエステル樹脂エマルジョンなどを用いることができ、着色布の風合いを柔らかくするために、これ等の樹脂エマルジョンのガラス転移点が0℃以下であることが好ましい。
【0115】
<布帛>
本発明のインクジェット捺染方法を適用し得る布帛としては、以下のものがある。生地布帛(繊維種)としては、ナイロン、ポリエステル、アクリロニトリル等の合成繊維、アセテート、レーヨン等の半合成繊維、綿、絹、毛等の天然繊維、及びこれらの混合繊維、織物、編み物、不織布等が挙げられる。
衣料品としては、Tシャツ、トレーナー、ジャージ、パンツ、スウェットスーツ、ワンピース、ブラウスなどが挙げられる。また、寝具、ハンカチなどにも好適である。
【0116】
本発明のインクジェット捺染方法で製造した着色繊維製品は、風合い、洗濯堅牢性、摩擦堅牢性、捺染作業性の何れの特性においても、優れた効果を奏するので、本発明のインクジェット捺染方法、着色組成物、及びインクジェットインクには高い価値がある。
【実施例】
【0117】
(合成例1)
〔染料ポリマー(D−1−5)の合成〕
例示化合物(D−1−5)は以下のスキームにより合成した。
【0118】
【化22】
【0119】
200mL三ツ口フラスコにD−1を5.0g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を1.05g、N−メチルピロリドン(NMP)を61.2g加え、内温を90℃に昇温した。ここへ、ネオスタンU−600(日東化成製、商品名)を164mg、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート4.96gを添加した。滴下終了後、90℃で4時間反応させた。反応液を20℃まで放冷し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液600mLに注ぎ入れた後、1mol/L塩酸水を660mLを加え、ろ過した。得られた残渣を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液600mLに加え10分攪拌後、1mol/L塩酸水を加え、pH5.2に調整し、ろ過した。得られた残渣を水600mLに注ぎ入れ、10分攪拌後、ろ過した。得られた残渣を60℃の減圧乾燥機で3時間乾燥させ、例示化合物(D−1−5)を得た。収量10.1g。例示化合物(D−1−5)のメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は559nmであった。また、GPC測定での重量平均分子量(Mw)は12,500(ポリメチルメタクリレート換算)であった。
【0120】
〔染料ポリマー(D−2−5)の合成〕
例示化合物(D−1−5)は以下のスキームにより合成した。
【0121】
【化23】
【0122】
200mL三ツ口フラスコにD−2を5.0g、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸を0.79g、N−メチルピロリドン(NMP)を45.8g加え、内温を90℃に昇温した。ここへ、ネオスタンU−600(日東化成製、商品名)を81mg、及び1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート2.46gを添加した。滴下終了後、90℃で4時間反応させた。反応液を20℃まで放冷し、0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1Lに注ぎ入れた後、1mol/L塩酸水を110mLを加え、ろ過した。得られた残渣を0.1mol/Lの水酸化ナトリウム水溶液1lに加え10分攪拌後、1mol/L塩酸水を加え、pH5.2に調整し、ろ過した。得られた残渣を水500mLに注ぎ入れ、10分攪拌後、ろ過した。得られた残渣を60℃の減圧乾燥機で3時間乾燥させ、例示化合物(D−2−5)を得た。収量21.7g。例示化合物(D−2−5)のメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は554nmであった。また、GPC測定での重量平均分子量(Mw)は12,700(ポリメチルメタクリレート換算)であった。
【0123】
〔染料ポリマー(D−2−1)〜(D−2−4)、(D−2−6)〜(D−2−9)の合成〕
試薬の使用量を変更した以外は(D−2−5)と同様にして合成した。なお、NMPの使用量はD−2、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの合計質量が18質量%となるように調整した。また、ネオスタンU−600の使用量は1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートの使用量の3.3質量%となるようにした。いずれの例示化合物もメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は554nmであった。
【0124】
〔染料ポリマー(D−2−10)〜(D−2−17)の合成〕
反応時間を変更した以外は(D−2−5)と同様にして合成した。いずれの例示化合物もメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は554nmであった。
【0125】
〔染料ポリマー(D−2−18)の合成〕
1mol/L塩酸水を加えた後のpHを5.2から7.0に変更した以外は(D−2−5)と同様にして合成した。例示化合物(D−2−18)はメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は556nmであった。
【0126】
〔染料ポリマー(D−2−19)の合成〕
0.1mol/L水酸化ナトリウム水溶液を0.1mol/L水酸化カリウム水溶液に変更した以外は(D−2−18)と同様にして合成した。例示化合物(D−2−19)はメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は556nmであった。
【0127】
〔染料ポリマー(D−3−2)の合成〕
例示化合物(D−3−2)は以下のスキームに従い、D−2をD−3に、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネートをイソホロンジイソシアネートに変更したこと以外は例示化合物(D−2−5)と同様にして合成した。例示化合物(D−3−2)はメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は555nmであった。
【0128】
【化24】
【0129】
〔染料ポリマー(D−5−1)の合成〕
例示化合物(D−5−1)は以下のスキームに従い、D−2をD−5に変更したこと以外は例示化合物(D−2−5)と同様にして合成した。例示化合物(D−5−1)はメタノール/クロロホルム=1/1の希薄溶液での紫外可視吸収スペクトルの吸収極大波長は554nmであった。
【0130】
【化25】
【0131】
(実施例1)
〔染料ポリマー水分散体(1)の作成〕
例示化合物(D−2−1)1.0g、ジルコニアビーズ(ニッカトー製、商品名YTZボール、直径0.1μm)10g、オレイン酸ナトリウム0.2g、及び超純水3.8gを加え、遊星型微粒粉砕機(フリッチュ製Pulverlsette7)を用いて、回転数400rpm(revolution per minute)で、10時間分散させた。得られた分散液から、ろ布を用いてジルコニアビーズを除き、染料ポリマー水分散体(1)を得た。使用した染料ポリマーの重量平均分子量、得られた染料ポリマー水分散体中の粒子状の染料ポリマーの平均粒子径は、表1及び2に記載の通りであった。
【0132】
(実施例2〜23)
染料ポリマー、及び、低分子界面活性剤又は高分子型分散剤をそれぞれ下記表1及び2に記載の種類、量に変更した以外は同様にして、染料ポリマー水分散体(2)〜(23)を作成した。デモールNLは花王株式会社製である。
【0133】
【表1】
【0134】
【表2】
【0135】
(実施例A1)
〔インクジェット捺染用インク(A1)の作成〕
以下の成分を、20℃で混合し、15分間撹拌したのちに、メンブランフィルター(平均孔径0.8μm)でろ過して、インクジェット捺染用インク(A1)を調製した。
染料ポリマー水分散体(1) 3.0g
トリメチロールプロパン 0.056g
超純水 0.913g
1,2−ヘキサンジオール 0.112g
グリセリン 0.560g
トリエチレングリコールモノブチルエーテル 0.112g
2−ピロリドン 0.168g
プロピレングリコール 0.028g
サーフィノール465(日信化学工業製、商品名) 0.056g
【0136】
〔インクジェット捺染方法〕
インクジェット捺染用インク(A1)を、インクカートリッジに装填し、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン株式会社製カラリオPX−045A、商品名)を用いて、ポリエステル布帛(製品名 ポリエステルトロピカル(帝人製)、販売先 色染社、商品コード A02−01019)、コットン布帛(綿ブロードシル付、色染社製、商品コード A02−01002)、及びポリエステル65%コットン35%混紡(混紡ポリエステル65/綿35ブロード、色染社製、商品コード A02−01030)にそれぞれ画像を印捺し、20℃で12時間乾燥させた。乾燥後、ヒートプレス(アサヒ繊維機械株式会社製、商品名:卓上自動平プレス機AF−54TEN型)を用いて、温度120℃、圧力0.20N/cm
2、時間60秒間、熱処理を行うことで、にじみのない鮮明な画像を得た。
【0137】
(実施例A2〜A23)
実施例A1における染料ポリマー水分散体(1)を、染料ポリマー水分散体(2)〜(23)に変えた以外は、インクジェット捺染用インク(A1)と同様にしてインクジェット捺染用インク(A2)〜(A23)を調製した。
使用するインクジェット捺染用インクを下記表3に記載のインクジェット捺染用インクに替えた以外は、実施例A1と同様にインクジェット捺染を行った。
【0138】
(比較例1)昇華転写捺染
昇華転写捺染プリンタSureColor F6000(セイコーエプソン株式会社製、商品名)を用いて、転写紙に画像を印刷した後に、ポリエステル布帛(製品名 ポリエステルトロピカル(帝人製)、販売先 色染社、商品コード A02−01019)、コットン布帛(綿ブロードシル付、色染社製、商品コード A02−01002)、及びポリエステル65%コットン35%混紡(混紡ポリエステル65/綿35ブロード、色染社製、商品コード A02−01030)にそれぞれ画像を印捺し、20℃で12時間乾燥させた。乾燥後、ヒートプレス(アサヒ繊維機械株式会社製、商品名:卓上自動平プレス機AF−54TEN型)を用いて、温度200℃、圧力0.20N/cm
2、時間60秒間、熱処理を行うことで、転写された画像を得た。ポリエステル布帛に関しては鮮明な画像が得られたが、ポリエステル65%コットン35%混紡においては、鮮明ではあるものの染色濃度の低い画像が得られ、またコットン布帛においては、非常にぼやけた画像が得られた。
【0139】
(比較例2)顔料を用いたインクジェット方式の着色
(顔料分散液の調製)
スチレン−アクリル酸共重合体(ジョンクリル678、BASF製、商品名)3g、ジメチルアミノエタノール1.3g、イオン交換水80.7gを70℃で撹拌し混合した。次いで、C.I.ピグメントブルー15:3を15g、粒径0.5mmのジルコニアビーズを体積率で50%充填し、サンドグラインダーミルを用いて分散し、シアン顔料の含有量が15%の顔料分散液を得た。
【0140】
(水性バインダーの調製)
2−ブタノン50gを三ツ口フラスコに入れ、内温を75℃に加温し、そこへn−ブチルメタクリレート80g、アクリル酸20g、2−ブタノン50g、アゾイソブチロニトリル0.5gの混合物を3時間かけて滴下した。滴下後、5時間加熱還流し、20℃まで冷却し、減圧加熱することで重合物の残渣を得た。ここへイオン交換水350mL、モノマーとして添加したアクリル酸の1.05倍モルの水酸化ナトリウムを加えて溶解させた。全量が500gとなるようにイオン交換水で希釈し、水性バインダーの20%水溶液を得た。
【0141】
(顔料インクの調製、及びインクジェット方式の着色)
上記顔料分散液46.6g、上記水性バインダー15g、PDX−7664A(BASF社製、商品名)2.9g、トリエチレングリコールモノブチルエーテル10g、1,2−ヘキサンジオール5g、ジエチレングリコール11.2g、オルフィン465(日信化学工業製、商品名)0.6gを混合し、ここへイオン交換水を加えて全量を100gに調製し、0.8μmのフィルターでろ過して比較用の顔料インクを得た。
得られた顔料インクを、インクカートリッジに装填し、インクジェットプリンタ(セイコーエプソン株式会社製カラリオPX−045A、商品名)を用いて、ポリエステル布帛(製品名 ポリエステルトロピカル(帝人製)、販売先 色染社、商品コード A02−01019)、コットン布帛(綿ブロードシル付、色染社製、商品コード A02−01002)、及びポリエステル65%コットン35%混紡(混紡ポリエステル65/綿35ブロード、色染社製、商品コード A02−01030)にそれぞれ画像を印捺し、20℃で12時間乾燥させた。乾燥後、ヒートプレス(アサヒ繊維機械株式会社製、商品名:卓上自動平プレス機AF−54TEN型)を用いて、温度100℃、圧力0.20N/cm
2、時間60秒間、熱処理を行うことで、顔料インクで印刷した着色布を得た。
【0142】
上記実施例A1〜A23、比較例1及び2の評価結果を表3に併せて示す。なお着色布の評価は以下の方法で実施した結果である。風合い及び乾摩擦堅牢度の評価では、3種類の布帛のうち、コットン布帛を使用した。
・画像鮮明性:目視による官能評価を行った。3種類の布帛とも鮮明な場合をA、2種類で鮮明な場合をB、1種類のみ鮮明な場合をC、鮮明な画像なしをDの4段階で評価した。
・風合い:染色前の未処理布と、染色後の着色布とを手で触り、着色布の風合いを官能評価した。着色布の風合いが未処理布に近い優れたものを10点、それ以外を0点とし、この評価を10人で行い、その総点の数値を下記表3に記載した。数値が大きい方が未処理布(100(点))に近い優れた風合いであることを示す。
・乾摩擦堅牢度:「JISハンドブック 31 繊維」日本規格協会編集、2015年発行、に従い、JIS L−0849 学振型摩擦試験に基づいて評価した。
乾摩擦堅牢度の評価結果は数値が大きい方が堅牢性に優れることを示す。
【0143】
【表3】
【0144】
上記結果から明らかなように、実施例のインクジェット捺染方法により、生地汎用性(各種生地で鮮明な画像を与える)を有し、かつ良好な風合い、乾摩擦堅牢性を有する染色布を与えることがわかる。また、実施例のインクジェット捺染方法では捺染糊を付与する工程が不要で、かつ廃水、廃材が出ないため環境負荷に優れ、作業性に問題がない。