【文献】
Soo Hyeon Kim,Large-scale femtoliter droplet array for digital counting of single biomolecules,Lab on a Chip,2012年12月 7日,Iss.23,PP.4986-4991
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
〔実施の形態1〕
本発明の一実施形態について
図1及び
図2に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0019】
(蛍光検査システムの構成)
本実施の形態の蛍光検査システムの構成について、
図2に基づいて説明する。
図2は、本実施の形態の蛍光検査システムの一例の構成を示す断面図である。
【0020】
本実施の形態の蛍光検査システム1は、
図2に示すように、フォトダイオード12により光を検知する光子検知部13を備えたシリコン集積回路10と、フォトダイオード12上に検査対象としての例えばタンパク質を保持する保持層30と、励起用光源23と、励起用光源23の発光動作と光子検知部13の検知動作とを同期的に制御する制御部24とを備えている。
【0021】
上記シリコン集積回路10は、シリコン回路基板11の上側に配線埋設層15が積層されてなっている。
【0022】
シリコン回路基板11には、フォトダイオード12、及びフォトダイオード12を用いて光を検知する光子検知部13からなる回路が形成されている。フォトダイオード12としては、例えば、シングル・フォトン・アバランシェ・ダイオード(SPAD)を用いることができる。
【0023】
上記配線埋設層15には、図示しない配線が埋設されている。
【0024】
また、シリコン集積回路10における配線埋設層15の上側には、保持層30が設けられており、保持層30には貫通孔としてのマイクロウェル31が設けられている。
【0025】
上記保持層30は、例えば、ポリイミド、二酸化珪素(SiO
2)、ジメチルポリシロキサン(PDMS)等の材料で形成されている。保持層30は、不透明体であることが好ましい。
【0026】
上記マイクロウェル31は、例えば水平断面が円形であると共に、縦断面は保持層30において底部が狭まった逆円錐台の形状となっている。これによって、マイクロウェル31には、数個の検査対象であるタンパク質が保持可能な容量となっている。
【0027】
次に、上記保持層30の上方には蓋としての透明板21が設けられており、その結果、保持層30と透明板21との間には流路であるマイクロ流体路22が形成されている。このマイクロ流体路22には、検査対象であるタンパク質が流されるようになっている。
【0028】
また、本実施の形態では、この透明板21は、保持層30側に移動するようになっている。
【0029】
上記透明板21の上方には、上記励起用光源23が設けられている。上記励起用光源23は、フォトダイオード12に向けて透明板21を介して励起光を照射させる。励起用光源23は、例えば、半導体発光素子(LED)や有機EL、半導体レーザ等の種々の光源を使用することができる。複数の光源を用いることも可能である。
【0030】
本実施の形態では、励起用光源23により検査対象である例えばタンパク質に励起光を照射してタンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブから蛍光を放出させる。このため、励起用光源23は、例えば紫外光、近紫外光又は可視光が使用されている。すなわち、蛍光は、紫外光、近紫外光又は可視光を吸収したタンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブの分子・イオンが励起され、次いで、その分子・イオンが中間励起状態に遷移し、そこから励起光よりも長波長の光を放出して基底状態に戻る現象である。したがって、励起用光源23によりタンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブに照射される励起光の波長は、タンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブから放出される蛍光の波長よりも低波長の成分を含むことが要求される。
【0031】
制御部24は、励起用光源23の点滅と光子検知部13の駆動とを制御する。
【0032】
ところで、従来のこの種の蛍光検査システムでは、励起光の波長と蛍光の波長とが異なることを利用して、光学的なフィルタにより両者を分離して、蛍光のみを検知していた。このため、組み込んだフィルタに適した蛍光物質しか検査に使えないということになり、蛍光の種類の適用範囲が限定されるという問題点を有していた。
【0033】
ここで、励起状態から基底状態に戻るまでの平均時間を蛍光寿命と呼ぶ。換言すれば、蛍光寿命は、蛍光強度が1/eに低下するのに要する時間である。尚、その時間を超えると蛍光が無くなるわけではない。実用的にはともかく、理論的には、励起光消光後に蛍光を検知することはいつでも可能である。実用的観点からは、励起光消光後、できるだけ早い時期に検知した方が蛍光が強いので検出し易くなる。目安としては、蛍光寿命の数倍の期間以内で検知することが望ましい。
【0034】
この結果、蛍光寿命を利用すると、励起光と蛍光とを波長により分離する光学フィルタを使わず、励起光の消光後に、放出される蛍光を観測することが可能になる。
【0035】
そこで、本実施の形態の制御部24は、保持層30のマイクロウェル31に保持された検査対象としてのタンパク質に対して励起用光源23に励起光を照射するように制御する。そして、その後、励起用光源23の点灯を停止させる。次いで、光子検知部13を駆動させて、検査対象としてのタンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブから放出される蛍光を測定させる。
【0036】
詳細には、制御部24は励起用光源23がパルス的に励起光を照射するように制御する。この励起光のパルスの消灯期間中に光子検知部13を駆動させるように予め設定されている。この結果、光子検知部13が駆動される期間は、検査対象であるタンパク質又はタンパク質に付加された蛍光
プローブからの蛍光のみが放出されるので、光学フィルタを使わず、光子検知部13は励起光消光後の蛍光を検知するものとなる。
【0037】
(蛍光検査システムの測定動作)
上記構成の蛍光検査システム1を用いて検査対象を測定する場合の具体的動作について、
図1及び
図2に基づいて説明する。
図1は、本実施の形態における蛍光検査システム1において、シリコン集積回路10上のマイクロ流体路22を検査対象であるタンパク質、及びタンパク質に付加された蛍光プローブを含む溶液が流れ、タンパク質及び蛍光プローブが、マイクロウェル31に保持された状態を示す断面図である。尚、本実施の形態では、検査対象が、例えば、蛍光
プローブが付着した特定のタンパク質であるとして説明する。
【0038】
図2に示すように、配線埋設層15とその上方に設けられた透明板21との間のマイクロ流体路22に検査対象である蛍光
プローブが付加されたタンパク質を供給する。これによって、蛍光
プローブが付加されたタンパク質が保持層30のマイクロウェル31に保持される。
【0039】
この状態から、
図1に示すように、透明板21を押し下げてマイクロウェル31に蓋をしたチャンバーを形成する。これによって、蛍光
プローブが付加された複数のタンパク質が保持層30のマイクロウェル31に充填された状態となる。
【0040】
次に、制御部24は、励起用光源23を点灯させ、一定期間後に消灯させ、その後、減衰しながら発光が継続している蛍光を検知するよう、光子検知部13を駆動する。具体的には、励起用光源23はマイクロウェル31に向けて励起光L1をパルス的にオンオフして照射する。そして、励起用光源23のオン期間において、測定対象である特定のタンパク質に付加された蛍光プローブは励起用光源23からの励起光L1を吸収する。これにより、蛍光プローブは蛍光を放出する。このとき、励起光L1も照射されている。そこで、本実施の形態では、励起用光源23は、パルス的に励起光L1を照射しているので、励起光L1が消光するときがある。これにより、励起光L1が消光しているときであって蛍光が継続している期間中に光子検知部13が駆動され、光子検知部13には蛍光のみが受光され、この蛍光のみを検出することができる。
【0041】
このように、本実施の形態の蛍光検査システム1では、検査対象である蛍光
プローブが付加されたタンパク質に励起光L1を照射する励起用光源23と、フォトダイオード12により光を検知する光子検知部13を備えたシリコン集積回路10と、フォトダイオード12上に設けられて蛍光
プローブが付加されたタンパク質を保持する貫通孔としてのマイクロウェル31を備えた保持層30と、保持された蛍光
プローブが付加されたタンパク質に励起用光源23にて励起光L1を照射させ、蛍光
プローブが付加されたタンパク質から放出される蛍光を励起光L1の消光後に、光子検知部13にて検知させる制御部24とを備えている。
【0042】
この結果、励起光L1の消光後では、蛍光のみが光子検知部13にて検知される。したがって、励起光L1と蛍光とを光学的なフィルタにより分離することなく蛍光
プローブ付加されたタンパク質から放出された蛍光のみを測定することができる。したがって、蛍光の種類に対応する光学的フィルタを使用する必要がなくなるので、蛍光検査システム1が複雑化するのを防止することができる。
【0043】
また、本実施の形態の蛍光検査システム1では、フォトダイオード12による光子検知部13をシリコン集積回路10に集積し、フォトダイオード12上に微小なマイクロウェル31からなるチャンバーを構成し、チャンバーに保持した蛍光
プローブが付加されたタンパク質からの蛍光信号の検出を自動化することができる。
【0044】
この結果、蛍光検査システム1を大型化及び複雑化させる蛍光顕微鏡や観察した蛍光像からの検出数の数え上げのための画像処理が不要になり、所望検査対象のカウント等のデジタル計測が容易にできるようになる。
【0045】
したがって、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システム1を提供することができる。
【0046】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施の形態について
図3及び
図4に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0047】
本実施の形態の蛍光検査システム2は、前記実施の形態1の蛍光検査システム1の構成に加えて、複数の第1光子検知部13a及び第2光子検知部13bを備えている点と、透明板42が蓋部42aと隔壁部42bとからなっている点と、保持層40の一部が二酸化珪素(SiO
2)で形成されている点が異なっている。
【0048】
(蛍光検査システムの構成)
本実施の形態の蛍光検査システム2の構成について、
図3に基づいて説明する。
図3は、本実施の形態における蛍光検査システム2の構成を示す断面図である。尚、
図3においては、励起用光源23及び制御部24を省略している。
【0049】
本実施の形態の蛍光検査システム2は、
図3に示すように、前記前記実施の形態1の蛍光検査システム1の構成に加えて、複数の第1光子検知部13a及び第2光子検知部13bをそれぞれ備えている。これにより、保持層40には、第1光子検知部13a及び第2光子検知部13bの上方にそれぞれマイクロウェル41・41が形成されている。これにより、複数箇所の第1光子検知部13a及び第2光子検知部13bにて検査対象を同時に検査することが可能となる。尚、本実施の形態では、第1光子検知部13a及び第2光子検知部13bは2つとなっているが、必ずしもこれに限らず、より多くの複数とすることが可能である。
【0050】
また、保持層40は、本実施の形態では、その一部が二酸化珪素(SiO
2)からなっている。具体的には、保持層40はフォトダイオード12の近傍が二酸化珪素(SiO
2)からなっている。これにより、保持層40は蛍光以外の外光等の迷光を遮断して該迷光がフォトダイオード12に入射するのを防止すると共に、二酸化珪素(SiO
2)は自家蛍光が少ないので、検査対象から放射される以外の蛍光がフォトダイオード12に入射するのを防止することができる。
【0051】
また、本実施の形態では、保持層40の上方に設けられた蓋としての透明板42は、蓋部42aと隔壁部42bとからなっている。この結果、蓋部42aと隔壁部42bとによって、凹部としての窪み42cが形成されている。そして、本実施の形態では、透明板42は保持層40に向けて移動可能となっている。この結果、後述する
図4に示すように、透明板42を移動して隔壁部42bを保持層40に接触させることによって、窪み42cと保持層40のマイクロウェル41とによって検査対象を隔離する隔離室としてのマイクロチャンバー43が形成されるようになっている。
【0052】
(蛍光検査システムの測定動作)
上記構成の蛍光検査システム2における測定動作について、
図3及び
図4に基づいて説明する。
図4は、蛍光検査システム2用いて検査対象を測定する状態を示すものであって、透明板42が保持層40側に移動して検査対象を隔離するマイクロチャンバー43が形成された状態を示す断面図である。尚、
図4においては、励起用光源23及び制御部24を省略している。
【0053】
上記構成の蛍光検査システム2では、
図3に示すように、配線埋設層15とその上方に設けられた透明板42との間のマイクロ流体路22に図示しない検査対象である蛍光
プローブが付加されたタンパク質を供給する。そして、この状態において、
図4に示すように、透明板42を押し下げて、隔壁部42bの底面を、マイクロウェル41が形成された2酸化珪素(SiO2)からなる保持層40に密着させる。これによって、窪み42cとマイクロウェル41とによって、マイクロチャンバー43が形成される。この結果、マイクロチャンバー43の内部に図示しない蛍光
プローブが付加されたタンパク質が充填される。
【0054】
ここで、二酸化珪素(SiO
2)からなる保持層40は、蛍光を発しないため、タンパク質に付加された蛍光プローブからの蛍光と混同する虞れがなく、蛍光検出の精度の向上が見込まれる。また、二酸化珪素(SiO
2)からなる保持層40に深いマイクロウェル41を形成するのは困難であるが、透明板42の方に形成した窪み42cと合わせて、マイクロチャンバー43の深さを大きくすることが可能になる。
【0055】
このように、本実施の形態における蛍光検査システム2は、保持層40の少なくとも一部は、二酸化珪素(SiO
2)を用いて形成されている。
【0056】
例えば、保持層40が蛍光を発する物質で形成されている場合には、検査対象からの蛍光と保持層40からの蛍光との両方がフォトダイオード12に入射するので、検査対象からの蛍光の正確な検出ができなくなる。
【0057】
この点、二酸化珪素(SiO
2)は蛍光を発しないため、検査対象に含まれる蛍光からの蛍光と混同する虞れがなく、蛍光検出の精度の向上を図ることができる。
【0058】
また、本実施の形態における蛍光検査システム2は、隔壁部42bを有する蓋としての透明板42保持層40の方向に向かって移動可能に設けられていると共に、透明板42を移動して隔壁部42bの底面を保持層40に接触させることによって、隔壁部42bを有する透明板42によって形成される窪み42c、及び保持層40のマイクロウェル41にて検査対象を隔離する隔離室としてのマイクロチャンバー43が形成される。
【0059】
これにより、二酸化珪素(SiO
2)からなる保持層40に深いマイクロウェル41を形成するのは困難であるが、保持層40に対向する、隔壁部42bを有する透明板42によって形成される窪み42cと合わせて、隔離室であるチャンバーとしてのマイクロチャンバー43の深さを大きくすることが可能になる。
【0060】
〔実施の形態3〕
本発明のさらに他の実施の形態について
図5に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1・2と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1・2の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0061】
本実施の形態の蛍光検査システム3では、前記実施の形態1・2の構成に加えて、シリコン集積回路10には、ヒーター52と温度センサ53とが設けられている点が異なっている。
【0062】
(蛍光検査システムの構成)
本実施の形態の蛍光検査システム3の構成ついて、
図5に基づいて説明する。
図5は、本実施の形態の蛍光検査システム3の構成を示す断面図である。尚、
図5においては、励起用光源23及び制御部24を省略している。
【0063】
本実施の形態の蛍光検査システム3は、
図5に示すように、シリコン集積回路10にヒーター52と温度センサ53とが内蔵されている。
【0064】
すなわち、マイクロチャンバー51においてPCR(polymerase chain reaction:ポリメラーゼ連鎖反応)法を用いてDNA(deoxy ribo nucleic acid:デオキシリボ核酸)を増幅するためのPCRサイクルは、マイクロチャンバー51内の溶液を94℃程度、60℃程度、及び72℃程度に設定する3つのサイクルが必要になる。
【0065】
そこで、本実施の形態の蛍光検査システム3では、シリコン集積回路10内にヒーター52と温度センサ53とを組み込むことによって、マイクロチャンバー51に含まれる試料溶液を含む限定された領域の温度制御を行うようになっている。この結果、従来のデバイスを含む環境温度を制御する場合と比較して、より高速に、正確な制御が可能になる。
【0066】
上記ヒーター52は、例えば、抵抗素子に周期的に電圧を印加し、そのデューティを変更することによって、発熱量を制御するようになっている。
【0067】
(蛍光検査システムの測定動作)
本実施の形態の蛍光検査システム3による測定動作について、
図5に基づいて説明する。
【0068】
まず、検査対象、ポリメラーゼ、プライマー、蛍光プローブを混釈した溶液をマイクロ流体路22に流し、透明板21にて蓋をして、マイクロチャンバー51に蛍光プローブを付加した検査対象を保持する。この状態にて、PCR法によるDNAの増幅を行う。
【0070】
(1)(熱変性)温度センサ53にて温度をモニターしながらヒーター52で加熱を行い、マイクロチャンバー51内の溶液が94℃程度になるように温度を制御する。これによって、DNA二本鎖の熱変性が起こり、一本鎖に解離する。
【0071】
(2)(アニーリング)ヒーター52の発熱量を下げて、マイクロチャンバー51内の溶液温度を60℃程度に下げる。これにより、プライマーが一本鎖DNAに結合する。
【0072】
(3)(伸長反応)ヒーター52の発熱量を増やし、マイクロチャンバー51内の溶液温度を72℃程度に変更する。これにより、ポリメラーゼにより元のDNAの塩基配列を基にして相補鎖が合成される。
【0073】
上記の(1)(2)(3)の一連の過程を繰り返すことによって、DNAが倍に増幅される。この一連の過程を一回のPCR増幅過程と呼ぶ。
【0074】
一回のPCR増幅過程を行う度に、実施の形態1の場合と同様に、蛍光検査を行い、それぞれのマイクロチャンバー51の蛍光量が、予め定めた閾値を超えるまでに要した
PCR増幅過程の数を計測する。
【0075】
一方、段階希釈したスタンダートサンプルに対して、PCR増幅過程を繰り返し、一回毎の蛍光反応の強度を計測する。
【0076】
これにより、蛍光出力が閾値を超えるまでに要したPCR増幅過程数と初期DNA数との関係が推定できる。
【0077】
最後まで反応がネガティブなマイクロチャンバー51が、例えば1%以上存在するときは、ネガティブなマイクロチャンバー51の割合をnとして、
λ=−ln(n)
として、初期DNA数λを推定する。
【0078】
全てのマイクロチャンバー51がポジティブの場合、各マイクロチャンバー51で推定された初期DNA数の平均として初期DNA数を推定する。
【0079】
通常のリアルタイムPCR法と比較して、本実施の形態の蛍光検査システム3では、多数のマイクロチャンバー51での計測値を平均化するため、高精度に初期DNA数を推定することが可能である。また、従来のデジタルPCR法と比較して、ネガティブチャンバーが無くても初期DNA数の推定が可能であり、検査対応できるDNA濃度のレンジ(ダイナミックレンジ)を拡大することができる。
【0080】
このように、本実施の形態における分子検査方法は、蛍光検査システム1・2を用いて、複数のマイクロチャンバー51にて並列的にポリメラーゼ連鎖反応等の遺伝子増幅反応を行う。
【0081】
この結果、通常の ポリメラーゼ連鎖反応等の遺伝子増幅反応を用いた特定の遺伝子を増幅する遺伝子増幅反応と比較して、多数のチャンバーでの計測値を平均化するため、初期DNA数の推定を高精度に行うことが可能である。
【0082】
また、従来のデジタルPCR法と比較して、ネガティブチャンバーが無くても初期DNA数の推定が可能である。この結果、検査対応できるDNA濃度のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0083】
したがって、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システムを用いた分子検査方法を提供することができる。
【0084】
〔実施の形態4〕
本発明のさらに他の実施の形態について
図6に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態1と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態1の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0085】
本実施の形態では、前記実施の形態1に示した蛍光検査システム1を用いて、特定タンパク質の検出及び定量を、従来のELISA法と比較して、より高感度、高精度に実施する分子検査方法について説明する。
【0086】
本実施の形態の分子検査方法について、
図6に基づいて説明する。
図6は、本実施の形態の分子検査方法を説明するための蛍光検査システム1の断面図である。
【0087】
本実施の形態の分子検査方法は、
図6に示すように、実施の形態1に示した蛍光検査システム1を用いる。
【0088】
具体的には、捕捉抗体を付けたマイクロビーズと検出抗体とを混釈し、捕捉されたターゲット分子にさらに検出抗体を結合させる。検出抗体は、例えばアルカリホスファターゼ(AP:Alkaline Phosphatase)、西洋わさびペルオキシダーゼ(HRP:peroxidase)、βガラクトシダーゼ等の酵素標識で予め標識されている。
【0089】
この溶液をマイクロ流体路22に流し、次に、マイクロ流体路22に図示しない蛍光基質を流すと、酵素標識と反応して図示しない蛍光物質が生成される。次に、マイクロ流体路にオイルを流すと、マイクロウェル31がオイル層により蓋をされ、各マイクロウェル31が独立したマイクロチャンバーを形成する。その結果、ターゲット分子を捕捉しているマイクロビーズが捕捉されているマイクロチャンバー下部のフォトダイオード12からは蛍光が検知され、蛍光検知されたフォトダイオードでの光量数から、ターゲット分子の数が推定される。
【0090】
蛍光物質の生成がマイクロチャンバーの限られた領域で行われるため、蛍光がフォトダイオード12の上に集中して発生し、数少ないターゲット分子でも検出が可能になる。
【0091】
従来、このような分子検査方法は、蛍光顕微鏡を用いて行われていたが、本実施の形態によれば、蛍光顕微鏡及びその撮像画像を画像処理する必要がない。そのため、蛍光基質と酵素標識との反応により、蛍光物質が生成されていく過程において、蛍光が増加していく様子をリアルタイムで観測することもでき、蛍光検知されたフォトダイオード12の数だけでなく、蛍光量が予め定めた閾値を超えた時刻を計測することができる。これにより、各マイクロチャンバーに捕捉されたターゲット分子の量が推定でき、ターゲット分子の濃度のより正確な推定が可能となる。
【0092】
このように、本実施の形態における分子検査方法は、捕捉抗体を付けたマイクロビーズと検出抗体とを混釈し、捕捉されたターゲット分子にさらに検出抗体を結合させ、そのマイクロビーズを含む溶液を蛍光検査システム1に設けられたマイクロ流体路22に流す第1工程と、マイクロ流体路22に蛍光基質を流す第2工程と、マイクロ流体路にオイルを流す第3工程と、蛍光基質が酵素標識と反応して生成された蛍光物質を、蛍光検査システム1により検出する第4工程とを含む。
【0093】
この結果、特定タンパク質の検出及び定量を、従来のELISA法と比較して、より高感度、高精度に実施する分子検査方法を提供することができる。さらに、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システムを用いた分子検査方法を提供することができる。
【0094】
〔実施の形態5〕
本発明のさらに他の実施の形態について
図7に基づいて説明すれば、以下のとおりである。尚、本実施の形態において説明すること以外の構成は、前記実施の形態4と同じである。また、説明の便宜上、前記の実施の形態4の図面に示した部材と同一の機能を有する部材については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0095】
本実施の形態の蛍光検査システム4及び蛍光検査方法は、前記実施の形態1〜4の蛍光検査システム1〜3と同様に、励起光の消光後に蛍光を検知するという構成及び工程を備えている。その上で、本実施の形態の蛍光検査システム4及び蛍光検査方法は、さらに、新たに、励起光の照射中にフォトダイオード12に入射する励起光の光子を検知する構成及び工程を備えている点が異なっている。
【0096】
本実施の形態の蛍光検査システム4について、
図7の(a)(b)に基づいて説明する。
図7の(a)は、本実施の形態の蛍光検査システム4を示すものであって、保持層60を省略した蛍光検査システム4の構成を示す平面図である。
図7の(b)は、蛍光検査システム4の構成を示すものであって、マイクロウェル61の直下部を除く領域に遮光用メタル62を配したシリコン回路基板11を示す断面図である。
【0097】
本実施の形態の蛍光検査システム4は、
図7の(a)(b)に示すように、各フォトダイオード12の上に複数のマイクロウェル61が形成される。マイクロウェル61のサイズは、実施の形態4で説明したマイクロビーズが、一個は捕捉され得るが、複数個が捕捉されることは困難であるようなサイズとなっている。
【0098】
また、本実施の形態の蛍光検査システム4では、フォトダイオード12の上に、貫通孔としてのマイクロウェル61の直下部を除いて、遮光用の金属層としての遮光用メタル62が形成されている。
【0099】
本実施の形態における蛍光検査システム4及びそれを用いた蛍光検査方法は、励起光の消光後に蛍光を検知するという構成及び工程に加えて、新たに、励起光の照射中にフォトダイオード12に入射する励起光の光子を検知する光子検知工程を有している。
【0100】
すなわち、本実施の形態では、一個のマイクロビーズを捕捉するマイクロウェル61が複数形成されており、マイクロウェル61以外は、遮光用メタル62にて遮光されている。このため、フォトダイオード12の上に存在する複数のマイクロウェル61の一部にマイクロビーズが捕捉されていれば、その一部のマイクロウェル61では、励起光がマイクロビーズにより遮光される。
【0101】
その結果、励起光の照射中に、光子検知部13で励起光の光子を検知すると、マイクロビーズが捕捉されるマイクロウェル61が増加することによって、フォトダイオード12に入射する光子数が少なくなる。
【0102】
ここで、本実施の形態では、マイクロウェル61の直下以外の部分を遮光しているので、フォトダイオード12への入射光は全て、マイクロウェル61を通過してフォトダイオード12に入ることになる。そして、複数のマイクロウェル61のうち、マイクロビーズを捕捉しているマイクロウェル61の占める割合と入射光の光子数とは強い相関がある。この結果、励起光の入射光量を測定することによって、各フォトダイオード12上のマイクロウェル61のうち、マイクロビーズを捕捉しているマイクロウェル61の割合を推定することができる。
【0103】
前記実施の形態4で説明したターゲット分子推定方法においては、検知され得る最小のターゲット濃度は、分子検査システムにおいて検査できる総マイクロビーズ数で決まる。
【0104】
すなわち、前記実施の形態4で説明したターゲット分子推定方法においては、
図6に示すように、マイクロウェル31のマイクロチャンバー内に、ターゲット分子を捕捉しているマイクロビーズ及びターゲット分子を捕捉していないマイクロビーズが捕捉される。そして、蛍光検知されたフォトダイオードでの光量数から、ターゲット分子の数が推定される。したがって、マイクロチャンバーに捕捉されたマイクロビーズの数が多いほど、検知され得る最小のターゲット濃度は、小さくなる。つまり、小さい濃度のターゲット分子を測定することが可能となる。
【0105】
例えば、検査可能な総ビーズ数が1万個であれば、1万個のうちの一つのマイクロビーズで捕捉されたターゲット分子が検知され得る。一方、総ビーズ数が10万個であれば、10万個のうちの一つのマイクロビーズで捕捉されたターゲット分子が検知され得る。したがって、小さい濃度のターゲット分子を測定することが可能となる。
【0106】
ここで、検知されたターゲット分子の濃度の定量化のためには、実際に検査したマイクロビーズの総数を算出することが必要になる。例えば、検査可能な総マイクロビーズ数が1万個であっても、実際に捕捉されていたマイクロビーズ数が1000個であり、そのうち1個のマイクロビーズを捕捉したマイクロチャンバーから蛍光が検出される場合がある。その場合には、マイクロビーズ1000個のうち、一つがターゲット分子を捕捉したことを示す濃度となる。しかし、その濃度は、1万個のマイクロビーズのうちの一つがターゲット分子を捕捉したことを示す濃度とは異なる。
【0107】
本実施の形態においては、マイクロウェル61の大きさをマイクロビーズが一つだけ捕捉されるように最適化すると共に、フォトダイオード12に入射する励起光の光量を測定している。そして、この構成によって、フォトダイオード12上のマイクロウェル61のうち、マイクロビーズを捕捉しているマイクロウェル61の割合を推定できるようにしている。これにより、各フォトダイオード12上に捕捉されているマイクロビーズの数を推定し、検査している総マイクロビーズの数を推定することができる。これにより、検査の定量化を高めることが可能となる。
【0108】
また、本実施の形態においては、各フォトダイオード12上に複数のマイクロウェル61を形成することによって、検査可能な総マイクロビーズの数を増やすことができる。このことは、検出可能なターゲット分子濃度を低くすることにつながる。
【0109】
このように、本実施の形態における蛍光検査システム4では、貫通孔としてのマイクロウェル61は、フォトダイオード12の上に、複数個設けられている。尚、各マイクロウェル61は、1個の検査対象を保持ずる大きさを有することが好ましい。
【0110】
これにより、マイクロウェル61に保持する検査対象の個数を増加することができ、検出可能なターゲット濃度を低くすることが可能となる。特に、各マイクロウェル61が1個の検査対象を保持ずる大きさを有することによって、正確な検査対象の濃度を求めることが可能となる。
【0111】
また、本実施の形態における蛍光検査システム4は、フォトダイオード12の上に、マイクロウェル61の直下部を除いて、遮光用の金属層としての遮光用メタル62が形成されている。
【0112】
これにより、フォトダイオード12への入射光を、マイクロウェル61を通過した励起光L1のみとすることが可能となる。この結果、外部からの迷光がフォトダイオード12に入射されるのを防止することができる。
【0113】
また、本実施の形態雄における蛍光検査方法は、本実施の形態の蛍光検査システム4を用いた蛍光検査方法であって、励起光L1の照射中にフォトダイオード12に入射する励起光L1の光子を検知する光子検知工程と、励起光L1を照射した後、検査対象から放射される蛍光を励起光L1の消光後に検知する蛍光検知工程とを含む。
【0114】
これにより、蛍光検知工程によって、励起光L1と蛍光とを光学的なフィルタにより分離することなく検査対象から放出された蛍光のみを測定することができる。
【0115】
また、本実施の形態では、マイクロウェル61は、フォトダイオード12の上に、複数個設けられている。このため、マイクロウェル61に検査対象が保持されている場合には、励起光L1の光子は検査対象によって遮蔽される一方、マイクロウェル61に検査対象が保持されていない場合には、励起光L1の光子がフォトダイオード12に入射される。この結果、励起光L1の照射中にフォトダイオード12に入射する励起光L1の光子を検知する光子検知工程を設けることによって、検査対象の個数を推定することが可能となる。
【0116】
また、本実施の形態における蛍光検査方法は、検査対象である生体又は非生体の微粒子を含む液体を蛍光検査システム4の上に形成されたマイクロ流体路22に流す流液工程と、光子検知工程で検知された励起光L1の光子の情報に基づいて、フォトダイオード12の上に形成されているマイクロウェル61のうち、何個のマイクロウェル61に微粒子が捕捉されているかを推定する推定工程とを含んでいる。
【0117】
これにより、推定工程によって、光子検知工程で検知された励起光L1の光子の情報に基づいて、フォトダイオード12の上に形成されているマイクロウェル61のうち、何個のマイクロウェル61に微粒子が捕捉されているかを推定することが可能となる。
【0118】
したがって、検査対象の正確な濃度を求めることが可能となる。
【0119】
〔まとめ〕
本発明の態様1における蛍光検査システム1〜4は、検査対象に励起光L1を照射する励起用光源23と、フォトダイオード12により光を検知する光子検知部13を備えたシリコン集積回路10と、上記フォトダイオード12上に設けられて上記検査対象を保持する貫通孔(マイクロウェル31・41・61)を備えた保持層30・40・60と、保持された上記検査対象に上記励起用光源23にて励起光L1を照射させ、上記検査対象から放出される蛍光を上記励起光L1の消光後に、上記光子検知部13にて検知させる制御部24とを備えていることを特徴としている。
【0120】
上記発明の態様によれば、蛍光検査システムは、検査対象に励起光を照射する励起用光源と、フォトダイオードにより光を検知する光子検知部を備えたシリコン集積回路と、上記フォトダイオード上に設けられて上記検査対象を保持する貫通孔を備えた保持層とを備えている。
【0121】
従来のこの種の蛍光検査システムでは、励起光の波長と蛍光の波長とが異なることを利用して、光学的なフィルタにより両者を分離して、蛍光のみを検知していた。このため、組み込んだフィルタに適した蛍光物質しか検査に使えないということになり、蛍光の種類の適用範囲が限定される欠点があった。
【0122】
ここで、蛍光とは、紫外光又は可視光等を吸収した分子・イオンが励起され、その後、中間励起状態に遷移し、そこから励起光よりも長波長の光を放出して基底状態に戻る現象であり、励起状態から基底状態に戻るまでの平均時間を蛍光寿命と呼ぶ。このため、蛍光寿命を利用すると、励起光と蛍光とを波長により分離する光学フィルタを使わず、励起光の消光後に、放出される蛍光を観測することが可能になる。
【0123】
そこで、本発明では、蛍光を発する検査対象を検出する場合には、検査対象に励起用光源にて励起光を照射させ、検査対象から放出される蛍光を励起光の消光後に、光子検知部にて検知させる。
【0124】
この結果、励起光の消光後では、蛍光のみが光子検知部にて検知される。したがって、励起光と蛍光とを光学的なフィルタにより分離することなく検査対象から放出された蛍光のみを測定することができる。したがって、蛍光の種類に対応する光学的フィルタを使用する必要がなくなるので、蛍光検査システムが複雑化するのを防止することができる。
【0125】
また、本発明の態様の蛍光検査システムでは、フォトダイオードによる
光子検知部をシリコン集積回路に集積し、フォトダイオード上に微小な貫通孔からなるチャンバーを構成し、各チャンバーに保持した検査対象からの蛍光信号の検出を自動化することができる。
【0126】
この結果、蛍光検査システムを大型化及び複雑化させる蛍光顕微鏡や観察した蛍光像からの検出数の数え上げのための画像処理が不要になり、所望検査対象のカウント等のデジタル計測が容易にできるようになる。
【0127】
したがって、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システムを提供することができる。
【0128】
本発明の態様2における蛍光検査システム2は、態様1における蛍光検査システムにおいて、前記保持層40の少なくとも一部は、二酸化珪素(SiO
2)を用いて形成されている。尚、少なくとも一部とは、保持層におけるフォトダイオード近傍の部分をいう。
【0129】
例えば、保持層が蛍光を発する物質で形成されている場合には、検査対象からの蛍光と保持層からの蛍光との両方がフォトダイオードに入射するので、検査対象からの蛍光の正確な検出ができなくなる。
【0130】
この点、二酸化珪素(SiO
2)は蛍光を発しないため、検査対象に含まれる蛍光からの蛍光と混同する虞れがなく、蛍光検出の精度の向上を図ることができる。
【0131】
本発明の態様3における蛍光検査システム2は、態様1又は2における蛍光検査システムにおいて、隔壁部42bを有する蓋(透明板42)が上記保持層40の方向に向かって移動可能に設けられていると共に、上記蓋(透明板42)を移動して上記隔壁部42bを上記保持層40に接触させることによって、上記隔壁部42bを有する蓋(透明板42)によって形成される凹部(窪み42c)、及び上記保持層40の貫通孔(マイクロウェル41)にて前記検査対象を隔離する隔離室(マイクロチャンバー43)が形成されることが好ましい。
【0132】
これにより、二酸化珪素(SiO
2)からなる保持層に深い貫通孔を形成するのは困難であるが、保持層に対向する隔壁部を有する蓋によって形成される窪みと合わせて、隔離室であるチャンバーの深さを大きくすることが可能になる。
【0133】
本発明の態様4における蛍光検査システム3は、態様1、2又は3における蛍光検査システムにおいて、前記シリコン集積回路10は、ヒーター52と温度センサ53とを内蔵していることが好ましい。
【0134】
これにより、チャンバーに含まれる検査対象を含む限定された領域の温度制御が可能となる。この結果、従来のデバイスを含む環境温度を制御する場合と比較して、より高速に、正確な温度制御が可能になる。
【0135】
本発明の態様5における分子検査方法は、前記記載の蛍光検査システムを用いて、複数の隔離室にて並列的に遺伝子増幅反応を行うことを特徴としている。
【0136】
上記の発明の形態によれば、通常の遺伝子増幅反応を用いた特定の遺伝子を増幅する遺伝子増幅反応と比較して、多数のチャンバーでの計測値を平均化するため、初期DNA数の推定を高精度に行うことが可能である。
【0137】
また、従来のデジタルPCR法と比較して、ネガティブチャンバーが無くても初期DNA数の推定が可能である。この結果、検査対応できるDNA濃度のダイナミックレンジを拡大することができる。
【0138】
したがって、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システムを用いた分子検査方法を提供することができる。
【0139】
本発明の態様6における分子検査方法は、態様1における蛍光検査システム1を用いた分子検査方法であって、捕捉抗体を付けたマイクロビーズと検出抗体を混釈し、捕捉されたターゲット分子にさらに上記検出抗体を結合させ、そのマイクロビーズを含む溶液を態様1における蛍光検査システム1に設けられたマイクロ流体路22に流す第1工程と、上記マイクロ流体路22に蛍光基質を流す第2工程と、上記マイクロ流体路22にオイルを流す第3工程と、上記蛍光基質が酵素標識と反応して生成された蛍光物質を上記蛍光検査システム1により検出する第4工程とを含む。
【0140】
これにより、特定タンパク質の検出及び定量を、従来のELISA法と比較して、より高感度、高精度に実施する分子検査方法を提供することができる。また、大型化及び複雑化を回避し得る蛍光検査システム1を用いた分子検査方法を提供することができる。
【0141】
本発明の態様7における蛍光検査システム4では、前記貫通孔(マイクロウェル61)は、前記フォトダイオード12の上に、複数個設けられている。尚、各貫通孔は、1個の検査対象を保持ずる大きさを有することが好ましい。
【0142】
これにより、貫通孔に保持する検査対象の個数を増加することができ、検出可能なターゲット濃度を低くすることが可能となる。特に、各貫通孔が1個の検査対象を保持ずる大きさを有することによって、正確な検査対象の濃度を求めることが可能となる。
【0143】
本発明の態様8における蛍光検査システム4は、前記フォトダイオード12の上に、前記貫通孔(マイクロウェル61)の直下部を除いて、遮光用の金属層(遮光用メタル62)が形成されている。
【0144】
これにより、フォトダイオードへの入射光を、貫通孔を通過した励起光のみとすることが可能となる。この結果、外部からの迷光がフォトダイオードに入射されるのを防止することができる。
【0145】
本発明の態様9における蛍光検査方法は、前記記載の蛍光検査システム4を用いた蛍光検査方法であって、励起光L1の照射中にフォトダイオード12に入射する該励起光L1の光子を検知する光子検知工程と、上記励起光L1を照射した後、前記検査対象から放射される蛍光を上記励起光L1の消光後に検知する蛍光検知工程とを含むことを特徴としている。
【0146】
これにより、蛍光検知工程によって、励起光と蛍光とを光学的なフィルタにより分離することなく検査対象から放出された蛍光のみを測定することができる。
【0147】
また、本発明の一態様では、貫通孔は、フォトダイオードの上に、複数個設けられている。このため、貫通孔に検査対象が保持されている場合には、励起光の光子は検査対象によって遮蔽される一方、貫通孔に検査対象が保持されていない場合には、励起光の光子がフォトダイオードに入射される。この結果、励起光の照射中にフォトダイオードに入射する該励起光の光子を検知する光子検知工程を設けることによって、検査対象の個数を推定することが可能となる。
【0148】
本発明の態様
10における蛍光検査方法は、前記記載の蛍光検査方法において、検査対象である生体又は非生体の微粒子を含む液体を前記蛍光検査システム4の上に形成されたマイクロ流体路22に流す流液工程と、前記光子検知工程で検知された励起光L1の光子の情報に基づいて、フォトダイオード12の上に形成されている貫通孔(マイクロウェル61)のうち、何個の貫通孔(マイクロウェル61)に前記微粒子が捕捉されているかを推定する推定工程とを含んでいることが好ましい。
【0149】
これにより、推定工程によって、光子検知工程で検知された励起光の光子の情報に基づいて、フォトダイオードの上に形成されている貫通孔のうち、何個の貫通孔に微粒子が捕捉されているかを推定することが可能となる。
【0150】
したがって、検査対象の正確な濃度を求めることが可能となる。
【0151】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。さらに、各実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を組み合わせることにより、新しい技術的特徴を形成することができる。