(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
(残留塩素消去剤)
本発明の残留塩素消去剤は、モモ抽出物を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0011】
<モモ抽出物>
前記モモ(Amygdalus persica L.)は、バラ科モモ属の落葉小高木であり、中国が原産である。前記モモは、食用、観賞用として世界各地において栽培されている。前記モモの種子は「トウニン(桃仁)」と呼ばれ、医薬品に用いられており、前記モモの葉は、皮膚の炎症に効果があるとされている。
【0012】
前記モモ抽出物は、植物の抽出に一般に用いられる方法を利用することによって、容易に得ることができる。なお、前記モモ抽出物には、前記モモの抽出液、該抽出液の希釈液若しくは濃縮液、該抽出液の乾燥物、又はこれらの粗精製物若しくは精製物のいずれもが含まれる。
【0013】
前記モモの抽出部位としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、果実、種子、葉、樹皮、花、根などが挙げられる。これらの中でも、葉が好ましい。
【0014】
前記モモの抽出部位の調製方法としては、各部位を乾燥させた後、そのまま又は粗砕機を用い粉砕して溶媒抽出に供することにより得ることができる。前記乾燥は、天日で行ってもよいし、通常使用されている乾燥機を用いて行ってもよい。
【0015】
前記モモを抽出する方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、室温又は還流加熱下で、任意の抽出装置を用いて抽出する方法などが挙げられ、具体例としては、抽出溶媒を満たした処理槽内に、抽出原料としてのモモを投入し、更に必要に応じて時々攪拌しながら、30分間〜2時間静置して可溶性成分を溶出した後、ろ過して固形物を除去し、得られた抽出液から抽出溶媒を留去し、乾燥することにより抽出する方法などが挙げられる。
【0016】
前記モモの抽出に用いる溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、水、親水性有機溶媒、又はこれらの混合溶媒などが挙げられる
【0017】
前記モモの抽出溶媒として使用し得る水としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、純水、水道水、井戸水、鉱泉水、鉱水、温泉水、湧水、淡水等の他、これらに各種処理を施したものが含まれる。水に施す処理としては、例えば、精製、加熱、殺菌、ろ過、イオン交換、浸透圧の調整、緩衝化等が含まれる。なお、前記抽出溶媒として使用し得る水には、精製水、熱水、イオン交換水、生理食塩水、リン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等も含まれる。
【0018】
前記モモの抽出溶媒として使用し得る親水性有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール等の炭素数1〜5の低級アルコール;アセトン、メチルエチルケトン等の低級脂肪族ケトン;1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン等の炭素数2〜5の多価アルコールなどが挙げられ、これら親水性有機溶媒と水との混合溶媒なども用いることができる。なお、前記水と前記親水性有機溶媒との混合溶媒を使用する際には、低級アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部、低級脂肪族ケトンの場合は水10質量部に対して1質量部〜40質量部を混合したものを使用することが好ましい。また、多価アルコールの場合は水10質量部に対して1質量部〜90質量部を混合したものを使用することが好ましい。
【0019】
前記モモの抽出条件としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、抽出溶媒量としては、抽出原料の5倍量〜15倍量(質量比)が好ましく、抽出溶媒として水を用いた場合には、50℃〜95℃で1時間〜4時間程度で抽出することが好ましく、抽出溶媒として水とエタノールとの混合溶媒を用いた場合には、40℃〜90℃で30分間〜4時間程度で抽出することが好ましい。
【0020】
前記モモ抽出物の精製方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、液−液分配抽出、各種クロマトグラフィー、膜分離などの精製方法が挙げられる。
【0021】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料等、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。
また、前記その他の成分の具体例としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、ヒアルロン酸、ヒアルロン酸加水分解物、コラーゲン、コラーゲン加水分解物、アスコルビン酸、アスコルビン酸誘導体、アスコルビン酸配糖体、コエンザイムQ10、プロポリス、ローヤルゼリー、ローヤルゼリー蛋白分解物、フコイダン、アロエ粉末、アロエ抽出物、ブルーベリー粉末、ブルーベリー抽出物、イソフラボン、ノニ粉末、ノニ抽出物、ニンニク粉末、ニンニク抽出物、ウコン粉末、ウコン抽出物、キトサン、グルコサミン、クロレラ粉末、クロレラ抽出物、カルニチン、マカ粉末、マカ抽出物、カシス粉末、カシス抽出物、ハナビラタケ粉末、ハナビラタケ抽出物、その他の植物の粉末及び/又は抽出物などが挙げられる。
【0022】
<剤型>
本発明の残留塩素消去剤の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤などが挙げられる。
【0023】
<用途>
本発明の残留塩素消去剤は、優れた残留塩素消去作用を有するため、例えば、皮膚化粧料、浴用剤組成物、シャワーヘッドの充填剤、飲料用浄水器に使用される充填剤などとして使用することができ、これらの中でも、浴用剤組成物、及び皮膚化粧料が好ましい。
【0024】
(浴用剤組成物)
本発明の浴用剤組成物は、本発明の前記残留塩素消去剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
【0025】
<残留塩素消去剤>
前記残留塩素消去剤としては、上述した本発明の残留塩素消去剤を用いることができる。
前記残留塩素消去剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0026】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、浴用剤組成物に通常用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、無機酸類、有機酸類、油性成分、生薬や薬用植物及びこれらの抽出物、色素類、ビタミン類、水溶性ポリマー、界面活性剤、タンパク分解酵素、保湿剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記無機酸類としては、例えば、塩化ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、ホウ砂、硫酸ナトリウム、硫化ナトリウム、セスキ炭酸ナトリウム、硝酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、ポリリン酸ナトリウム、リン酸ナトリウム、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、塩化カリウム、硫化カリウム等の無機塩類、ホウ酸、メタケイ酸、無水ケイ酸などが挙げられる。
前記有機酸類としては、例えば、コハク酸、フマル酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸などが挙げられる。
【0028】
前記油性成分は、保温効果を高めるために含有される。
前記油性成分としては、例えば、大豆油、米ヌカ油、米胚芽油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ脂、ゴマ油、ヒマシ油、ヤシ油、ミンク油、牛脂、豚脂等の天然油脂;前記天然油脂を水素添加して得られる硬化油;ミリスチン酸グリセリド、2−エチルヘキサン酸グリセリンなどの合成トリグリセリド等の油脂類;カルナウバロウ、鯨ロウ、ミツロウ、ラノリン等のロウ類;流動パラフィン、ワセリン、パラフィン、セレシン、スクワラン等の炭化水素類;ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、ラノリン酸、イソステアリン酸等の高級脂肪酸類;ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、ラノリンアルコール、コレステロール等の高級アルコール類;オクタン酸セチル、乳酸ミリスチル、乳酸セチル、ミリスチン酸イソプロピル、ミリスチン酸ミリスチル、パルミチン酸イソプロピル、アジピン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、オレイン酸デシル等のエステル類;ハッカ油、ジャスミン油、樟脳油、ヒノキ油、トウヒ油、ケイヒ油、ベルガモット油、ミカン油、ショウブ油、パイン油、ラベンダー油、クローブ油、ヒバ油、バラ油、ユーカリ油、レモン油、タイム油、ペパーミント油、ローズ油、セージ油、メントール、シネオール、オイゲノール、シトロネラール、リナロール、ゲラニオール、カンファー、チモール、ピネン、リモネン等の精油類などが挙げられる。
【0029】
前記生薬や薬用植物及びこれらの抽出物としては、例えば、ウイキョウ、オウバク、桂皮、紅花、シャクヤク、ショウキョウ、菖蒲、陳皮、ソウジュツ、カノコソウ、ビャクシ、トウヒ、ハッカ、ブクリョウなどが挙げられる。
前記色素類としては、例えば、黄色4号、青色1号、黄色202号の(1)等厚生省令により定められたタール色素別表1及び2等の合成色素;クロロフィル、リボフラビン、クロシン、紅花、アントラキノン類の食品添加物として認められる天然色素等などが挙げられる。
前記ビタミン類としては、例えば、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンD、ビタミンEなどの各種ビタミン及びこれらの誘導体などが挙げられる。
前記水溶性ポリマーとしては、例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル、アラビアガム、キサンタンガム、ペクチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、乳タンパク質、大豆タンパク質、ゼラチン、卵タンパク質、カゼインナトリウムなどが挙げられる。
【0030】
前記界面活性剤は、前記油性成分の乳化剤として作用する。
前記界面活性剤としては、例えば、アニオン性界面活性剤、非イオン性界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、皮膚刺激の少なさの点から、非イオン性界面活性剤が好ましい。また、前記界面活性剤としては、例えば、天然の界面活性剤、合成の界面活性剤などが挙げられる。これらの中でも、皮膚刺激の少なさの点から、天然の界面活性剤が好ましい。
前記非イオン性界面活性剤としては、例えば、グリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビット、ポリオキシエチレンプロピレングリコール、ポリオキシエチレンヒマシ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
【0031】
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記残留塩素消去剤100質量部に対して、0質量部〜200質量部が好ましい。
前記浴用剤組成物としては、例えば、臭いや色付けを主目的とする化粧用浴用剤、温浴効果を主目的とする、医薬品、医薬部外品としての浴用剤などが挙げられ、いずれにも適用可能である。
前記浴用剤組成物の剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、粉末状、錠剤、顆粒状、バスオイル、バブルバスなどが挙げられる。
前記浴用剤組成物の使用量は、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、約200Lのお湯に対して、20g〜30gの割合で用いることが好ましい。
【0032】
(皮膚化粧料)
本発明の皮膚化粧料は、本発明の前記残留塩素消去剤を含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有してもよい。
前記残留塩素消去剤としては、上述した本発明の残留塩素消去剤を用いることができる。
前記残留塩素消去剤の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、皮膚化粧料に通常用いられるものであれば、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択でき、例えば、収斂剤、殺菌剤、抗菌剤、紫外線吸収剤、保湿剤、細胞賦活剤、油脂類、ロウ類、炭化水素類、脂肪酸類、アルコール類、エステル類、界面活性剤、香料などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0035】
<残留塩素濃度の測定>
残留塩素濃度は、ジエチル−p−フェニレンジアミン(DPD)により測定した。DPDは、塩素と反応すると桃〜桃赤色に呈色する。呈色の度合は、波長510nmにおける吸光度を測定することで、測定することができる。
本発明の実施例では、前記DPDとしては、ラピッドDPD試薬(関東化学株式会社製)を精製水により100mg/Lとなるように希釈した溶液を用いた(以下、「DPD溶液」と称することがある)。
【0036】
−検量線の作成−
891mg/mLの過マンガン酸カリウム溶液を、精製水により900倍に希釈した。前記希釈した過マンガン酸カリウム溶液は、塩素濃度換算において1.11mg/Lに相当する。更にこの溶液を精製水で2倍、4倍、8倍、16倍、32倍に希釈した溶液を調製した。
調製した各希釈液を試験管に900μL入れ、前記DPD溶液を100μL入れ、よく混合した後、速やかに510nmの吸光度を測定し、初期濃度1mg/Lとなる検量線を作成した。結果を
図1に示した。
【0037】
(実施例1)
残留塩素消去剤として、モモ抽出液(モモ抽出液BG−J、丸善製薬株式会社製、固形分1.9質量%)を用いた。前記残留塩素消去剤の濃度が0.1質量%となるように精製水により希釈した。試験管に水道水を890μL、前記残留塩素消去剤を10μL、前記DPD溶液100μLを加え、混合した後、混合溶液の510nmにおける吸光度を測定し、
図1の検量線に基づき、残留塩素濃度の値を算出した。実施例1における残留塩素消去剤の終濃度は、0.001質量%であった。結果を表1に示した。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、残留塩素消去剤の濃度を0.1質量%から1質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして、混合溶液の吸光度を測定し、
図1の検量線に基づき、残留塩素濃度を算出した。実施例2における残留塩素消去剤の終濃度は、0.01質量%であった。結果を表1に示した。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、残留塩素消去剤の濃度を0.1質量%から10質量%に変えた以外は、実施例1と同様にして、混合溶液の吸光度を測定し、
図1の検量線に基づき、残留塩素濃度を算出した。実施例3における残留塩素消去剤の終濃度は、0.1質量%であった。結果を表1に示した。
【0040】
(比較例1)
実施例1において、残留塩素消去剤を精製水に代えた以外は、実施例1と同様にして、混合溶液の吸光度を測定し、残留塩素濃度を算出した。比較例1における残留塩素消去剤の終濃度は、0質量%であった。結果を表1に示した。
【0041】
<残留塩素の消去率>
次に、実施例1〜3、及び比較例1の吸光度の値から、下記式により残留塩素の消去率(%)を算出した。結果を表1に示した。
消去率(%)=(C−A)/C×100
C:比較例1の510nmにおける吸光度
A:実施例1〜3の510nmにおける吸光度
【0042】
【表1】
【0043】
表1の結果から、実施例1〜3のモモ抽出物は、比較例1に比べて残留塩素濃度が低かった。したがって、本発明の残留塩素消去剤は、高い残留塩素消去作用を示すことがわかった。