(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775450
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ステージクリーニング方法およびステージクリーニング部材、ならびに検査システム
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20201019BHJP
H01L 21/66 20060101ALI20201019BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
H01L21/304 645Z
H01L21/66 B
H01L21/68 P
H01L21/304 644Z
【請求項の数】17
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-54215(P2017-54215)
(22)【出願日】2017年3月21日
(65)【公開番号】特開2018-157131(P2018-157131A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年10月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099944
【弁理士】
【氏名又は名称】高山 宏志
(72)【発明者】
【氏名】望月 純
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩史
【審査官】
安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−204650(JP,A)
【文献】
特開平10−144640(JP,A)
【文献】
特開2008−279328(JP,A)
【文献】
特開平11−253897(JP,A)
【文献】
特開平10−012581(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/304
H01L 21/67−687
H01L 21/02−027
H01L 21/205
H01L 21/3065
B08B 5/00−04
B08B 13/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面にガス供給口およびガス排出口を有し、基板を載置するステージにおいて、前記ステージに載置されることによって、前記ステージの表面をクリーニングするステージクリーニング部材であって、
板状をなす本体と、
前記本体に設けられ、前記ガス供給口からガスが供給され、供給されたガスを前記ガス排出口に排出する吸排気経路とを有し、
前記吸排気経路へのガス供給および前記吸排気経路からのガス排出を用いて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とするステージクリーニング部材。
【請求項2】
前記本体は、前記ステージに真空吸着されることを特徴とする請求項1に記載のステージクリーニング部材。
【請求項3】
前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステージクリーニング部材。
【請求項4】
前記吸排気経路は、前記本体の内部に形成され、前記ガス供給口から供給されたガスを拡散させるガス拡散空間と、前記ガス拡散空間から前記凹部へガスを吐出する複数のガス吐出孔とをさらに有し、前記ガス拡散空間から前記ガス吐出口を介して前記凹部に供給され、前記排出口に排出される気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とする請求項3に記載のステージクリーニング部材。
【請求項5】
前記凹部内に設けられたブラシをさらに有し、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流により前記ブラシが振動し、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着している塵埃をブラシングにより除去し、除去された塵埃を前記凹部に生じる気流に随伴して前記排出口に排出することを特徴とする請求項3に記載のステージクリーニング部材。
【請求項6】
前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記凹部内に、前記ステージの表面に対向するように吸着面を有する吸着部材とを有し、前記吸排気経路への前記ガス供給口からのガスの供給または前記ガス排出口からのガスの排出を調整して前記吸着部材を昇降させることにより、前記吸着部材により前記ステージの表面に付着する塵埃を吸着除去することを特徴とする請求項1または請求項2に記載のステージクリーニング部材。
【請求項7】
前記吸着部材は、昇降板と、前記昇降板の下面に設けられた粘着フィルムとを有し、前記粘着フィルムにより前記ステージの表面に付着した塵埃を吸着除去することを特徴とする請求項6に記載のステージクリーニング部材。
【請求項8】
前記昇降板は、板バネにより前記本体に連結され、前記板バネを介して昇降されることを特徴とする請求項7に記載のステージクリーニング部材。
【請求項9】
表面にガス供給口およびガス排出口を有し、基板を載置するステージの表面をクリーニングするステージクリーニング方法であって、
前記ステージの上に、板状をなす本体と、前記本体に設けられ、前記ガス供給口からガスが供給され、供給されたガスを前記ガス排出口に排出する吸排気経路とを有するステージクリーニング部材を載置し、
前記吸排気経路へのガス供給および前記吸排気経路からのガス排出を用いて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とするステージクリーニング方法。
【請求項10】
前記ステージクリーニング部材の前記本体を前記ステージに真空吸着させて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とする請求項9に記載のステージクリーニング方法。
【請求項11】
前記ステージクリーニング部材の前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のステージクリーニング方法。
【請求項12】
前記ステージクリーニング部材の前記吸排気経路は、前記本体の内部に形成され、前記ガス供給口から供給されたガスを拡散させるガス拡散空間と、前記ガス拡散空間から前記凹部へガスを吐出する複数のガス吐出孔とをさらに有し、前記ガス拡散空間から前記ガス吐出口を介して前記凹部に供給され、前記排出口に排出される気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とする請求項11に記載のステージクリーニング方法。
【請求項13】
前記凹部内にブラシを設け、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流により前記ブラシを振動させ、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着している塵埃をブラシングにより除去し、除去された塵埃を前記凹部に生じる気流に随伴して前記排出口に排出することを特徴とする請求項11に記載のステージクリーニング方法。
【請求項14】
前記ステージクリーニング部材の前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記凹部内に、前記ステージの表面に対向するように吸着面を有する吸着部材を設け、前記吸排気経路への前記ガス供給口からのガスの供給または前記ガス排出口からのガスの排出を調整して前記吸着部材を昇降させることにより、前記吸着部材により前記ステージの表面に付着する塵埃を吸着除去することを特徴とする請求項9または請求項10に記載のステージクリーニング方法。
【請求項15】
前記吸着部材は、昇降板と、前記昇降板の下面に設けられた粘着フィルムとを有し、前記粘着フィルムにより前記ステージの表面に付着した塵埃を吸着除去することを特徴とする請求項14に記載のステージクリーニング方法。
【請求項16】
前記昇降板は、板バネにより前記本体に連結され、前記板バネを介して昇降されることを特徴とする請求項15に記載のステージクリーニング方法。
【請求項17】
基板を載置するステージを有し、前記ステージ上の基板の検査を行う検査装置と、
基板を収容する基板収容部と、
前記ステージ上に基板および前記ステージをクリーニングするステージクリーニング部材を収容するステージクリーニング部材収容部と、
前記基板収容部に収容された基板および前記ステージクリーニング部材収容部に収容されたステージクリーニング部材を前記ステージ上に搬送する搬送装置と
を有し、
前記ステージは、表面にガス供給口およびガス排出口を有し、
前記ステージクリーニング部材として、請求項1から請求項8のいずれか1項のクリーニング部材が用いられ、
前記ステージ表面をクリーニングする際に、前記搬送装置により前記ステージクリーニング部材を前記ステージ上に搬送することを特徴とする検査システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板を載置するステージをクリーニングするステージクリーニング方法およびステージクリーニング部
材、ならびに検査システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造プロセスにおいては、半導体ウエハ(以下単にウエハと記す)における全てのプロセスが終了した段階で、ウエハに形成されている複数の半導体デバイス(以下単にデバイスと記す)の電気的検査が行われ、このような検査を行う検査装置としてプローバが用いられている。プローバはウエハと対向するプローブカードを備え、プローブカードは板状の基部と、基部においてウエハの半導体デバイスにおける各電極と対向するように配置される複数の柱状接触端子であるコンタクトプローブ(プローブ針)とを備える。
【0003】
プローバにおいては、ウエハを吸着保持するステージ(チャック)を用いてプローブカードへウエハを押圧させることにより、プローブカードの各コンタクトプローブをデバイスの電極と接触させ、各コンタクトプローブから各電極に電気を流すことによってデバイスの導通状態等の電気的特性を検査する。
【0004】
プローバのような検査装置において、ウエハを吸着保持するステージは、パーティクル等の塵埃が付着するとウエハを汚染するおそれがあるため、従来は定期的に装置を止めて、オペレータが「手拭き」や「エアブロー」により塵埃を除去している。
【0005】
一方、検査装置に関する技術ではないが、装置を止めることなく、自動搬送によりドットパターン(凹凸)を有するクリーニングウエハをウエハ載置台に載せ、ウエハ載置台のバキューム孔から吸引することによりクリーニングウエハをずらし擦過することにより、ウエハ載置台上の異物をクリーニングウエハの凹部に入れ、異物を擦り取る技術が提案されている(特許文献1参照)。
【0006】
また、ステージの上にプレートを載せ、プレートとステージとの間にガスを供給することによりパーティクル除去を行う技術も提案されている(特許文献2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−141384号公報
【特許文献2】特開2010−204650号公報
【特許文献3】特開2016−50349号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1の技術では、クリーニングウエハの凹凸を利用して異物(塵埃)を擦り取るが、異物(塵埃)を十分に除去できないおそれがある。また、上記特許文献2、3の技術では、ガスを供給することにより塵埃が飛散して再付着するおそれがある。
【0009】
したがって、本発明は、装置を止めることなく、ステージに付着した塵埃を飛散させることなく有効に除去することができる技術を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の第1の観点は、表面にガス供給口およびガス排出口を有し、基板を載置するステージにおいて、前記ステージに載置されることによって、前記ステージの表面をクリーニングするクリーニング部材であって、板状をなす本体と、前記本体に設けられ、前記ガス供給口からガスが供給され、供給されたガスを前記ガス排出口に排出する吸排気経路とを有し、前記吸排気経路へのガス供給および前記吸排気経路からのガス排出を用いて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とするステージクリーニング部材を提供する。
【0011】
前記第1の観点において、前記本体は、前記ステージに真空吸着されることが好ましい。
【0012】
前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去するものとすることができる。
【0013】
この場合に、前記吸排気経路は、前記本体の内部に形成され、前記ガス供給口から供給されたガスを拡散させるガス拡散空間と、前記ガス拡散空間から前記凹部へガスを吐出する複数のガス吐出孔とをさらに有し、前記ガス拡散空間から前記ガス吐出口を介して前記凹部に供給され、前記排出口に排出される気流に随伴して、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着する塵埃を除去するものとすることができる。また、前記凹部内に設けられたブラシをさらに有し、前記ガス供給口から前記凹部に供給され、前記凹部から前記ガス排出口に排出される際に、前記凹部に生じる気流により前記ブラシが振動し、前記凹部に対応する前記ステージの表面に付着している塵埃をブラシングにより除去し、除去された塵埃を前記凹部に生じる気流に随伴して前記排出口に排出するものとすることができる。
【0014】
前記吸排気経路は、前記本体の前記ステージに載置される際の底面に形成された凹部を有し、前記凹部内に、前記ステージの表面に対向するように吸着面を有する吸着部材とを有し、前記吸排気経路への前記ガス供給口からのガスの供給または前記ガス排出口からのガスの排出を調整して前記吸着部材を昇降させることにより、前記吸着部材により前記ステージの表面に付着する塵埃を吸着除去するものとすることができる。
【0015】
この場合に、前記吸着部材は、昇降板と、前記昇降板の下面に設けられた粘着フィルムとを有し、前記粘着フィルムにより前記ステージの表面に付着した塵埃を吸着除去する構成とすることができる。また、前記昇降板は、板バネにより前記本体に連結され、前記板バネを介して昇降されるように構成することができる。
【0016】
本発明の第2の観点は、表面にガス供給口およびガス排出口を有し、基板を載置するステージの表面をクリーニングするクリーニング方法であって、前記ステージの上に、板状をなす本体と、前記本体に設けられ、前記ガス供給口からガスが供給され、供給されたガスを前記ガス排出口に排出する吸排気経路とを有するクリーニング部材を載置し、前記吸排気経路へのガス供給および前記吸排気経路からのガス排出を用いて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去することを特徴とするステージクリーニング方法を提供する。
【0018】
本発明の第4の観点は、基板を載置するステージを有し、前記ステージ上の基板の検査を行う検査装置と、基板を収容する基板収容部と、前記ステージ上に基板および前記ステージをクリーニングするステージクリーニング部材を収容するステージクリーニング部材収容部と、前記基板収容部に収容された基板および前記クリーニング部材収容部に収容されたステージクリーニング部材を前記ステージ上に搬送する搬送装置とを有し、前記ステージは、表面にガス供給口およびガス排出口を有し、前記ステージクリーニング部材として、上記第1の観点のステージクリーニング部材が用いられ、前記ステージ表面をクリーニングする際に、前記搬送装置により前記ステージクリーニング部材を前記ステージ上に搬送することを特徴とする検査システムを提供する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、板状をなす本体と、本体に設けられ、ステージ表面に形成されたガス供給口からガスが供給され、供給されたガスをステージ表面に形成されたガス排出口に排出する吸排気経路とを有し、前記吸排気経路へのガス供給および前記吸排気経路からのガス排出を用いて前記ステージの表面に付着する塵埃を除去するステージクリーニング部材を用いるので、装置を止めることなく、ステージに付着した塵埃を飛散させることなく有効に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】検査システムの一例の構成を概略的に示す水平断面図である。
【
図3】第1の実施形態に係るクリーニングウエハがチャックトップ上に載置された状態を示す断面図である。
【
図4】第2の実施形態に係るクリーニングウエハがチャックトップ上に載置された状態を示す断面図である。
【
図5】第3の実施形態に係るクリーニングウエハがチャックトップ上に載置された状態を示す断面図である。
【
図6】第4の実施形態に係るクリーニングウエハがチャックトップ上に載置された状態を示す断面図である。
【
図7】第4の実施形態のクリーニングウエハに用いられる昇降部材の構成を説明するための分解斜視図である。
【
図8】第4の実施形態のクリーニングウエハのクリーニング動作を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。
【0022】
<検査システム>
まず、本発明のステージクリーニング方法が適用される検査システムの全体構成の一例について説明する。
図1は、検査システムの一例の構成を概略的に示す水平断面図である。
【0023】
図1において、検査システム10は筐体11を有し、筐体11内には、ウエハWの半導体デバイスの電気的特性の検査を行う検査領域12と、検査領域12に対するウエハW等の搬出入を行う搬入出領域13と、検査領域12及び搬出入領域13の間に設けられた搬送領域14とを有する。
【0024】
検査領域12は、X方向に沿って複数(本例では6つ)の検査室12aを有しており、各検査室12aには検査装置(プローバ)30が配置されている。
【0025】
搬入出領域13は複数のポートに区画され、複数のウエハWを収容する容器、例えば、FOUP17を収容するウエハ搬入出ポート16a、プローブカード23が搬入されかつ搬出されるローダ41を収容するローダポート16b、クリーニングウエハ(ステージクリーニング部材)CWを載置するクリーニングウエハ載置ポート16c、検査システム10の各構成要素の動作を制御する制御部42を収容する制御部収容ポート16dを有する。クリーニングウエハ載置ポート16cには、あらかじめ一つまたは複数のクリーニングウエハCWを収容しておいてもよいし、クリーニングのタイミングで外部からクリーニングウエハCWがクリーニングウエハ載置ポート16cに挿入されるようにしてもよい。
【0026】
搬送領域14には移動自在な搬送ロボット19が配置される。搬送ロボット19は、搬入出領域13のウエハ搬入出ポート16aからウエハWを受け取って各検査装置30においてウエハを吸着保持するチャックトップ(ステージ)へ搬送し、デバイスの電気的特性の検査が終了したウエハWを対応する検査装置30のチャックトップからウエハ搬入出ポート16aへ搬送する。また、搬送ロボット19は、チャックトップのクリーニングを行う際には、搬入出領域13のクリーニングウエハ載置ポート16cからクリーニングウエハCWを受け取って各検査装置30のチャックトップへ搬送し、クリーニング後はチャックトップからクリーニングウエハ載置ポート16cへ搬送する。さらに、搬送ロボット19は各検査装置30からメンテナンスを必要とするプローブカード18をローダポート16bのローダ41へ搬送し、また、新規やメンテナンス済みのプローブカード23を各検査装置30へ搬送する。
【0027】
制御部42は、検査システム10を構成する各構成部、例えば、各検査装置30の各部や搬送装置19等を制御する、CPU(コンピュータ)を有する主制御部と、入力装置(キーボード、マウス等)、出力装置(プリンタ等)、表示装置(ディスプレイ等)、記憶装置(記憶媒体)を有している。制御部42の主制御部は、例えば、記憶装置に内蔵された記憶媒体、または記憶装置にセットされた記憶媒体に記憶された処理レシピに基づいて、検査システム10に所定の動作を実行させる。
【0028】
検査装置30は、
図2に示すように、ウエハWを真空吸着により吸着支持するチャックトップ(ステージ)21と、X−Yテーブル機構、Z方向移動機構およびθ方向移動機構(いずれも図示せず)によりチャックトップ21をX、Y、Z、θ方向に移動して、ウエハWを所定位置へ位置決めするアライナー22と、チャックトップ21と対向して設けられたプローブカード23と、プローブカード23を支持する支持プレート24、支持プレート24の上に設けられたテスタマザーボード25と、テスタマザーボード25とプローブカード23とを接続するコンタクトブロック26と、テスタマザーボード25の上に設けられたテストヘッド27とを有している。テスタマザーボード25とテストヘッド27により、テスタ28が構成される。また、プローブカード23は、ウエハWに形成された複数のデバイスの電極に接触する複数のプローブ23aを有している。また、コンタクトブロック26の上面および下面には、プローブカード23とテスタマザーボード25とを電気的に接続する多数のポゴピン26aが設けられている。
【0029】
そして、テストヘッド27に内蔵されたテスタモジュールボード(図示せず)からテスタマザーボード25、プローブカード23のプローブ23aを介してウエハWのデバイスに電気的信号を送り、テスタモジュールボードに戻った信号から電気特性の検査を行う。
【0030】
なお、プローブ23aをウエハWに形成されたデバイスの電極に接触させて検査を行っている際に、支持プレート24とチャックトップ21との間の検査空間をシールやベローズで密閉し、その空間を減圧状態としてチャックトップ21を支持プレート24に吸着させてもよく、その場合は、1つのアライナー22を、複数の検査装置30に対して共通に用いることができる。また、検査室12aに検査装置30を多段に設けてもよい。この場合は、各段に搬送領域14および搬送ロボット19が配置される。
【0031】
このように構成される検査システム10においては、ウエハ搬入出ポート16aから搬送ロボット19によりウエハWを各検査装置30に搬送し、電気的検査が行われ検査後のウエハWは搬送ロボット19によりウエハ搬入出ポート16aに戻されるという動作を同時並行的に連続して行われる。
【0032】
そして、所定のタイミングで、クリーニングウエハ載置ポート16cから搬送ロボット19によりクリーニングウエハCWを検査装置30のチャックトップ21の上に搬送し、チャックトップ21上面のクリーニングを行う。クリーニング後、クリーニングウエハCWは搬送ロボットによりクリーニングウエハ載置ポート16cに戻される。このとき、特定の検査装置30のチャックトップ21をクリーニングしてもよいし、全ての検査装置30のチャックトップ21を連続してクリーニングしてもよい。
【0033】
このように、適当なタイミングで、クリーニングウエハCWを用いることにより、オペレータの「手拭き」や「エアブロー」によらず、オンラインでチャックトップ21のクリーニングを行うことができる。
【0034】
<クリーニングウエハ>
次に、クリーニングウエハCWについて説明する。
【0035】
[クリーニングウエハの第1の実施形態]
最初に、クリーニングウエハCWの第1の実施形態について説明する。
図3は、第1の実施形態に係るクリーニングウエハCWがチャックトップ21上に載置された状態を示す断面図である。
【0036】
チャックトップ21の周縁部には上下に貫通するようにガス供給路41が設けられており、チャックトップ21の周縁部のガス供給路41が設けられている部分と反対側には上下に貫通するようにガス排出路42が設けられている。チャックトップ21の表面には、ガス供給路41が開口するガス供給口と、ガス排出路42が開口するガス排出口が形成されている。ガス供給路41にはガス供給配管43が接続され、ガス排出路42にはガス排出配管44が接続されている。ガス供給配管43には電磁バルブ45と供給側規制用のフィルタ46が設けられている。また、ガス排出配管44には電磁バルブ47と排気側キャッチ用のフィルタ48が設けられている。また、チャックトップ21には、上下に貫通するように、クリーニングウエハCWを真空吸着するための排気流路51が形成されており、排気流路51には排気配管52が接続されている。ガス排出配管43および排気配管52には真空ポンプ(図示せず)が接続されている。
【0037】
なお、ガス排出流路42および排気流路51は、ウエハWの検査の際は、いずれも所定の径のウエハWを吸着のための真空排気ラインとして用いられる。また、ガスとしてはエア(空気)が好適であるが、窒素ガス等の他のガスであってもよい。また、チャックトップ21は、従来用いられているチャックトップにガス供給路41を形成して工場のエア配管等を接続すればよい。
【0038】
本実施形態のクリーニングウエハCWは、板状をなす本体61を有し、本体61の中央には円板状をなすガス拡散空間62が設けられている。本体61の周縁部には、チャックトップ21表面におけるガス供給路41のガス供給口に接続されるガス導入路63が底面から上方に向けて延び、ガス拡散空間62に繋がっている。また、本体61の底面の中央部には、チャックトップ21表面におけるガス排出路42のガス排気口を含む領域に円柱溝状の凹部64が設けられており、ガス拡散空間62には凹部64に達する複数のガス吐出孔65が設けられている。ガス拡散空間62、ガス導入路63、凹部64、ガス吐出孔65は吸排気経路を構成する。
【0039】
クリーニングウエハCWは、ウエハWと同様の円板状を有することが好ましい。ウエハWと同様の形状にすることにより、搬送ロボット19による搬送を行いやすくなる。ただし、クリーニングウエハCWの形状は円板状に限るものではない。また、クリーニングウエハCWの厚さは、内部にガス流路が形成される関係上、被検査体であるウエハWよりも厚くてよく、搬送ロボット19により搬送可能な程度の厚さであればよい。
【0040】
クリーニングウエハCWがチャックトップ21に載置された際には、本体61の底部の凹部64よりも外周部分は、チャックトップ21に真空吸着され、凹部64は密閉空間となる。
【0041】
このため、ガス供給配管43からガス供給路41を経て、クリーニングウエハCW内のガス導入路63に導入されたガスは、ガス拡散空間62で拡散され、ガス吐出孔65から凹部64を経てチャックトップ21の表面に均一に供給され、凹部64からガス排出路42およびガス排出配管44を通って排出される。
【0042】
このように、ガス供給路41からガス導入路63に導入されたガスが、チャックトップ21に臨む凹部64に供給されることによりチャックトップ21の表面に供給され、凹部64からガス排出路42を経て排出されることにより、凹部64内に排気路42に向かう気流が形成され、この気流に随伴して凹部64に面するチャックトップ21表面の塵埃を有効に除去することができる。また、本体61の内部が複数のガス吐出孔65からシャワー状に均一にチャックトップ21の表面に供給されるため、チャックトップ21の表面の全体を均一にクリーニングすることができる。さらに、気流はクリーニングウエハCW内のみで生じるので、塵埃が飛散するおそれがない。
【0043】
[クリーニングウエハの第2の実施形態]
次に、クリーニングウエハCWの第2の実施形態について説明する。
図4は、第2の実施形態に係るクリーニングウエハCWがチャックトップ21上に載置された状態を示す断面図である。
【0044】
本実施形態のクリーニングウエハCWは、ウエハと同様の円板状をなす本体61を有し、本体61の底面の中央部には円柱溝状をなす凹部66が設けられており、第1の実施形態と同様のガス導入路63が凹部66に繋がっている。一方、本体61のガス排出流路42に対応する部分には凹部66から本体61の底面に繋がるガス流路67が設けられている。本体61の底部の凹部64よりも外周部分は、チャックトップ21に真空吸着され、凹部66は密閉空間となる。ガス導入路63、凹部66、ガス流路67は、吸排気経路を構成する。
【0045】
このため、ガス供給配管43からガス供給路41を経て、クリーニングウエハCW内のガス導入路63に導入されたガスは、凹部66に至りチャックトップ21の表面に供給され、凹部66からガス流路67を経てガス排出路42に至り、ガス排出路42およびガス排出配管44を通って排出される。
【0046】
このように、ガス供給路41からガス導入路63に導入されたガスが、チャックトップ21に臨む凹部66に供給されることによりチャックトップ21の表面に供給され、凹部66からガス流路67およびガス排出路42を経て排出されることにより、凹部66内に排気路42に向かう気流が形成され、この気流に随伴して凹部66に面するチャックトップ21表面に付着した塵埃を有効に除去することができる。また、気流はクリーニングウエハCW内のみで生じるので塵埃が飛散するおそれがない。ただし、本実施形態では単純に凹部66にガスを流すだけであるから、クリーニングの均一性は第1の実施形態よりも多少劣る。
【0047】
[クリーニングウエハの第3の実施形態]
次に、クリーニングウエハCWの第3の実施形態について説明する。
図5図は、第3の実施形態に係るクリーニングウエハCWがチャックトップ21上に載置された状態を示す断面図である。
【0048】
本実施形態のクリーニングウエハCWは、第2の実施形態のクリーニングウエハCWの本体61に形成された円柱溝状の凹部66にブラシ70を装着したものである。ブラシ70としては、動物の毛、樹脂繊維、ナノカーボンブラシ等を用いることができる。ブラシ70は支持部材71に支持されており、支持部材71は、本体61の凹部66の上面に貼り付けてもよいし、ラッチ機構等により嵌め込んでもよい。
【0049】
このため、ガス供給配管43からガス供給路41を経て、クリーニングウエハCW内のガス導入路63に導入されたガスは、凹部66に至りブラシ70に当たりながら凹部66内を流れた後、ガス流路67を経てガス排出路42に至り、ガス排出路42およびガス排出配管44を通って排出される。
【0050】
このように、ガス供給路41からガス導入路63に導入されたガスが、チャックトップ21に臨む凹部66に供給され、凹部66からガス流路67およびガス排出路42を経て排出されることにより、凹部66内に排気路42に向かう気流が形成される。この気流によりブラシ70が振動し、凹部66に面するチャックトップ21表面に付着している塵埃をブラシングにより除去し、除去された塵埃を気流に随伴して排出することができる。これにより、強く付着している塵埃も除去することができ、塵埃をより確実に除去することができる。また、気流はクリーニングウエハCW内のみで生じるので塵埃が飛散するおそれがない。
【0051】
[クリーニングウエハの第4の実施形態]
次に、クリーニングウエハCWの第4の実施形態について説明する。
図6は、第4の実施形態に係るクリーニングウエハCWがチャックトップ21上に載置された状態を示す断面図である。
【0052】
本実施形態のクリーニングウエハCWは、ウエハと同様の円板状をなす本体61を有し、本体61の底面の中央部には円柱溝状をなす凹部73がガス供給路41およびガス排出路42を含む領域に形成されている。凹部73の下部には、凹部73よりも小さい直径の円板状をなす昇降板74を有し、昇降板74の下面には、タックフィルムのような粘着フィルム75が、その粘着面がチャックトップ21表面に対向するように設けられている。昇降板74と粘着フィルムにより塵埃を吸着する吸着部材を構成する。昇降板74の下面の周縁にはリング状の突出部77が設けられている。昇降板74は板バネ76を介して本体に連結されている。板バネ76は例えば4箇所に設けられており、本体61と一体となっている。具体的には、
図7に示すように、昇降板74は異なる方向に板バネ76を有する4枚の薄板74a,74b,74c,74dを重ねて後述するように拡散接合して構成されている。なお、クリーニングウエハCWがチャックトップ21に吸着保持された状態では、凹部73により形成される空間は、昇降板74により、昇降板74上部の第1空間73aと、昇降板74の下部の第2空間73bに分かれており、第1空間73aのほうが第2空間73bよりも広くなっている。凹部73は吸排気経路を構成する。
【0053】
このように構成された本実施形態のクリーニングウエハCWにおいては、チャックトップ21に吸着保持された後、ガス供給路41からガス排出路42に向けて凹部73内にガスを流すと、第1空間73aのほうが第2空間73bよりも広く、コンダクタンスが大きいので、
図8(a)のように、ガス圧により昇降板74が下降してリング状の突出部77および粘着フィルム75がチャックトップ21の表面に当接し、第2空間73bが略密閉空間となる。この状態で、ガス供給路41からのガス供給を継続しつつガスの排出を停止すると、第1空間73aの圧力が上昇し、昇降板74を介して粘着フィルム75がチャックトップ21の表面に押圧される。これにより、チャックトップ21表面に付着した塵埃が、粘着フィルム75に吸着され除去される。その後、
図8(b)のように、ガス供給路41からのガス供給を停止し、ガス排出路42からの排出を開始またはガス排出量を増加させて第1空間73aを減圧することにより、板バネ76の付勢力により昇降板74が上昇して元の位置に戻る。この操作を1回または複数回行う。
【0054】
このように、本実施形態のクリーニングウエハCWでは、内部に凹部73を設け、凹部をガス供給路41から供給されたガスをガス排出路42へ排出する吸排気経路として用い、凹部73内に、下面に粘着フィルム75が形成された昇降板74を本体61に板バネ76を介して接続し、昇降可能としたので、凹部73内の圧力調整によって昇降板74を下降させることにより、粘着フィルム75によりチャックトップ21表面に付着した塵埃を有効に吸着除去することができる。また、気流はクリーニングウエハCW内のみで生じるので塵埃が飛散するおそれがない。
【0055】
[クリーニングウエハの製造方法]
以上のような第1実施形態から第4実施形態のクリーニングウエハCWは、金属製であり、内部に複雑な構造を有するため、バルク材を加工して製造するとコストが著しく高くなる。このため、薄板を複数枚積層し、加熱・加圧し、原子の拡散を利用して接合する拡散接合により製造することが好ましい。
【0056】
材料としては、拡散接合で接合できるものであればよく、同種の金属でも異種の金属でも構わない。例えば、ステンレス鋼、アルミニウム、貴金属等を用いることができる。また、金属以外でも、ガラスや、金属めっきを施した樹脂系材料等も用いることができる。第4の実施形態では、板バネ76を用いるので、板バネに適した材料を用いることが好ましい。拡散接合でクリーニングウエハCWを製造する場合は、例えば、積層して上記第1の実施形態から第4の実施形態の形状になるように、各薄板をパンチング等により所定形状に打ち抜いた後、所定枚数の薄板を拡散接合する。薄板の厚さは0.005〜5mm程度の厚さである。
【0057】
このように拡散接合することにより、バルク材を加工する場合のような複雑な加工が不要であり、また、接着剤を用いて接着する場合のような接着材のはみ出し等がなく高精度でクリーニングウエハを製造することができる。
【0058】
なお、以上のように、クリーニングウエハは金属系材料等を拡散接合することにより製造されることが好適であるが、金属系材料以外、例えばゴム等の樹脂系材料を接着剤を用いて接合することにより製造してもよいことは言うまでもない。
【0059】
<他の適用>
以上、本発明のいくつかの実施の形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変形可能である。
【0060】
例えば、上記実施形態では、複数の検査装置を有する検査システムに本発明を適用した場合について説明したが、これに限らず、検査装置単体の装置に本発明のステージクリーニング部材(クリーニングウエハ)を適用してもよい。
【0061】
また、上記実施形態では、ウエハの検査装置に本発明を適用した場合について説明したが、基板を吸着するステージを有するものであれば、検査装置に限らず適用することが可能である。処理対象の基板も半導体ウエハに限らず種々のものが適用可能である。
【符号の説明】
【0062】
10;検査システム
21;チャックトップ
23;プローブカード
23a;プローブ
30;検査装置
41;ガス供給路
42;ガス排出路
51;排気路
61;本体
62;ガス拡散空間
63;ガス導入路
64,66,73;凹部
65;ガス吐出孔
67;ガス流路
70;ブラシ
73a;第1空間
73b;第2空間
74;昇降板
75;粘着フィルム
76;板バネ
77;突出部
CW;クリーニングウエハ(ステージクリーニング部材)
W;半導体ウエハ(基板)