【実施例】
【0016】
(実施例1)
図1は、本発明が適用される検体搬送システムの概略構成図である。
【0017】
図1において、検体搬送システムは、オペレーションコンソール部106と、検体前処理部101と、検体搬送システム部102と、少なくとも1台以上のキャリア移載機103(103a、103b、103c)とを備え、それぞれのキャリア移載機103から自動分析装置104(104a、104b)、105へと検体を搬送する。
【0018】
検体前処理部101は、親検体内の血液を遠心分離し、検体を検体容器へ分注する作業をするものであり、自動分析装置104a、104b、105へ検体容器を搬送する準備をする。
【0019】
また、検体前処理部101は、検体容器を一時保管できる検体収納モジュールを有する。
【0020】
検体容器ホルダは、1本の検体容器を保持するものであり、検体前処理部101において、検体容器ホルダが1本の検体容器を保有して移動し、上記処理が行われる。キャリア移載機103a〜103cは、検体容器ホルダに保持された1本の検体容器を5本の検体容器を保持する検体容器キャリアに移し替え、自動分析装置104(104a、104b)、105投入するものであり、検体前処理部101から検体搬送システム部102へ搬送された1本の検体容器を保有した検体容器ホルダは、キャリア移載機103a〜103cのいずれかへ搬送され
、5本搭載できる検体容器キャリアへ検体容器のみが移し替えられる。検体容器が移された5本搭載できる検体容器キャリアは、自動分析装置104a、104b、104c、105のうちの対応する自動分析装置へ搬送される。
【0021】
図2は、本発明の実施例1に係る検体搬送システムと自動分析装置間通信回路の構成説明図である。
【0022】
図2において、オペレーションコンソール106には、予め検体バーコード情報301と各自動分析装置情報302が登録される。また、キャリア移載機103(103a、103b、103c)は、制御ユニット1031と、入出力部1032と、データ送受信部1033とを備える。また、自動分析装置(104a、104b、105)は、入出力部1041と、データ送受信部1042とを備える。
【0023】
キャリア移載機103(103a、103b、103c)は、I/O通信ケーブル310を介して、入出力部1032と1041とにより、自動分析装置(104a、104b、105)における自動分析装置状態監視311のステータス(該当する自動分析装置に検体を投入してもよいか否か等の一般的な情報)を得ることができる。
【0024】
また、キャリア移載機103(103a、103b、103c)は、シリアル通信ケーブル320を介して自動分析装置(104a、104b、105)の搭載試薬の有無等を示す自動分析装置状態情報321を得る。自動分析装置状態情報321は、搭載試薬の有無を示す。
【0025】
検体前処理部101に投入された検体容器は、検体搬送システム部102を通りキャリア移載機103(103a、103b、103c)まで搬送される。キャリア移載機103aを例として説明する。このキャリア移載機103aに運ばれた検体容器の情報を確認すると、自動分析装置104aに自動分析装置104aの搭載試薬の有無情報を送信するように要求する。搭載試薬の有無情報が要求された自動分析装置104aは、自動分析装置状態情報321により、自動分析装置104aの搭載試薬の有無情報等をキャリア移載機103aに通知する。
【0026】
キャリア移載機103aは、オペレーションコンソール部106から、イーサネット(登録商標)通信303を介して、互いに情報通信を行うことができ、自動分析装置104aの搭載試薬有無情報を元に検査可能項目を判断した情報を前もって取得し、自動分析装置104aで分析可能か否かを判断する。自動分析装置104aで分析可能であれば、検体容器ホルダに保持されている1本の検体容器を、5本搭載できる検体容器キャリアへ移し替える。
【0027】
自動分析装置104aが分析不可能な場合は、キャリア移載機103aは、検体容器ホルダから検体容器を5本搭載できる検体容器キャリアへ移し替えずに検体搬送システム部102に戻す。検体搬送システム部102に戻された検体容器ホルダは、検体搬送システム部102により、検体処理部101の収納モジュールに搬送される。
【0028】
キャリア移載機103aと自動分析装置104aを例にして説明したが、キャリア移載機103bと自動分析装置104b、キャリア移載機103cと自動分析装置105も、キャリア移載機103aと自動分析装置104aと同様に、それぞれの組み合わせで互いに通信を行う。
【0029】
図3は、本発明の実施例1における、キャリア移載機の検体容器の移載可否判断のフローチャートである。
【0030】
キャリア移動移載機103aと、自動分析装置104aを例にして説明する。
【0031】
図3のステップ501において、検体搬送システム部102からキャリア移載機103aに検体容器ホルダに保持された1本の検体容器が投入される。次に、ステップ502において、キャリア移載機103aは、投入された検体の情報を、イーサネット(登録商標)通信303を介してオペレーションコンソール部106に確認する。
【0032】
次に、ステップ503において、キャリア移載機103aは、自動分析装置104aに搭載している試薬の有無を確認する。そして、ステップ504において、キャリア移載機103aは、ステップ502で確認した検体情報とステップ503で確認した搭載試薬の有無情報とを比較する。
【0033】
次に、ステップ505において、キャリア移載機103aに投入された検体は、自動分析装置104aで分析可能か否かを判断する。つまり、キャリア移載機103aに投入された検体を分析するための試薬が自動分析装置104にあるか否かを判断する。ステップ505において、分析可能と判断すると、ステップ506に進み、キャリア移載機103aは検体容器を、5本搭載できる検体容器キャリアに移載する(移し替える)。そして、ステップ507において、検体容器を移載した検体容器キャリアを自動分析装置104aに投入する(搬送する)。
【0034】
ステップ505において、キャリア移載機103aが、その検体は自動分析装置104aで分析不可能と判断すると、ステップ508、509に進み、検体容器キャリアに移載することなく、検体が収容された検体容器を保持するホルダを検体搬送システム部102に搬出する。検体搬送システム部102に搬出されたホルダは検体処理部101の収納モジュールに収納される。
【0035】
以上のように、本発明の実施例1によれば、キャリア移載機103(103a、103b、103c)は、検体搬送システム部102から搬送された検体の検体情報と、自動分析装置(104a、104b、105)の搭載試薬の有無情報とから、その検体が自動分析装置(104a、104b、105)で分析可能か否かを判断し、分析不可能と判断した場合は、検体容器を検体容器キャリアに移載することなく、検体容器ホルダを検体搬送システム部102に搬出する。
【0036】
これによって、その検体が分析不可能となった自動分析装置に投入してしまうということが回避され、自動分析装置に投入された検体をそのまま退避させる、或いは、自動分析装置から検体容器キャリアを取り出して、取り出した検体容器キャリアから検体容器を検体容器ホルダに移載し、検体搬送システムに搬送しなければならないという事態を回避することができ、不要な動作及び時間を省略することができる。
【0037】
したがって、その自動分析装置では分析不可能と判断された検体が再分析されるまでの時間を短縮することができ、分析処理の遅延を回避することができる。
【0038】
(実施例2)
次に、本発明の実施例2について説明する。実施例2における検体搬送システムの概略構成は実施例1と同様であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0039】
実施例1と実施例2との相違点は、自動分析装置(104a、104b、105)に検体を投入するか否かの判断基準である。
【0040】
実施例1においては、自動分析装置(104a、104b、105)に、検体を分析するために必要な試薬の有無により、検体を自動分析装置に投入するか否かを判断するものであるが、実施例2においては、検体を分析する分析項目がその自動分析装置で実行可能か否かにより、検体を自動分析装置に投入するか否かを判断する。
【0041】
検体を分析するための試薬が自動分析装置に存在していた場合であっても、例えば、試薬分注機構に異常が発生し、分析項目の実行ができない場合があり得る。
【0042】
実施例2は、そのような場合であっても対応可能とする例である。
【0043】
自動分析装置(104a、104b、105)に検体を投入するか否かの判断基準以外は、実施例1と実施例2とは共通するため、その他の詳細な説明は省略する。
【0044】
ただし、自動分析装置情報321は、分析項目の可/不可情報(その自動分析装置が実行可能な分析項目情報)を含むものである。また、
図3において、ステップ503は「自動分析装置の分析項目の可能不可能情報の確認」となり、ステップ504は「検体情報と分析項目の可能不可能情報を比較」となる。
【0045】
実施例2においても、実施例1と同様な効果が得られる他、上述したように、検体を分析するための試薬が自動分析装置に存在していた場合であって、分析項目の実行ができない場合にも対応可能である。
【0046】
(実施例3)
次に、本発明の実施例3について説明する。実施例3における検体搬送システムの概略構成は実施例1と同様であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0047】
実施例1と実施例3との相違点は、自動分析装置(104a、104b、105)に検体を投入するか否かの判断基準である。
【0048】
実施例3においては、その自動分析装置における分析項目の可能分析数により、検体を自動分析装置に投入するか否かを判断する。
【0049】
キャリア移載機103(103a、103b、103c)は、検体容器を5本収容する検体容器キャリアに移載し、その5本の検体容器を自動分析装置に投入する。自動分析装置に試薬が有り、かつ、分析項目も実行可能であっても、5本未満であれば可能であるが、5本分の検体容器の検体は分析できない場合もあり得る。
【0050】
実施例3は、そのような場合であっても対応可能とする例である。
【0051】
自動分析装置(104a、104b、105)に検体を投入するか否かの判断基準以外は、実施例1と実施例3とは共通するため、その他の詳細な説明は省略する。
【0052】
ただし、自動分析装置情報321は、分析項目の可能分析数の情報を含むものである。また、
図3において、ステップ503は「自動分析装置の分析項目の可能分析数の確認」となり、ステップ504は「分析項目の可能分析数と予定分析数を比較」となる。
【0053】
実施例3においても、実施例1と同様な効果が得られる他、上述したように、検体を分析するための試薬が自動分析装置に存在していた場合であって、分析項目の可能分析数が5本未満である場合にも対応可能である。
【0054】
(実施例4)
次に、本発明の実施例4について説明する。実施例4における検体搬送システムの概略構成は実施例1と同様であるので、図示及び詳細な説明は省略する。
【0055】
実施例1と実施例4との相違点は、自動分析装置(104a、104b、105)に検体を投入するか否かの判断を、キャリア移載機103(103a、103b、103c)ではなく、オペレーションコンソール部106が行う点である。
【0056】
以下、実施例4について説明する。自動分析装置104a、キャリア移載機103aを例として説明する。
【0057】
オペレーションコンソール部106と検体前処理部101と検体搬送システム部102の電源が投入され、自動分析装置104aの電源が投入される。電源の投入順序は逆でも良い。電源投入後、キャリア移載機103aと自動分析装置104aとがお互い稼働状態であることを、キャリア移載機103aが自動分析装置状態監視311で確認すると、キャリア移載機103aから自動分析装置情報321により、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報を自動分析装置104aに要求する。
【0058】
搭載試薬の有無の全情報を要求された自動分析装置104aは、自動分析装置情報321により、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をキャリア移載機103(a)に通知する。
【0059】
なお、キャリア移載機103aと自動分析装置104aがお互い稼働状態であることを自動分析装置状態監視311で確認したら、キャリア移載機103aからの要求が無くとも自動分析装置104aから、自動分析装置情報321により、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をキャリア移載機103aに通知しても良い。
【0060】
キャリア移載機103aは、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をオペレーションコンソール106にイーサネット(登録商標)303により通知する。これによって、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をオペレーションコンソール部106が把握する。
【0061】
オペレーションコンソール部106は、キャリア移載機103aに搬送した検体の検体情報と自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報とを比較し、自動分析装置104aで分析可能か否かを判断する。そして、オペレーションコンソール部106は、判断結果をキャリア移載機103aに通知する。
【0062】
キャリア移載機103aは、オペレーションコンソール部106から通知された判断結果に従って、検体容器をキャリアに移載し、自動分析装置104aに投入するか、検体容器を検体容器キャリアには移載しないで、検体搬送システム部102に搬出する。
【0063】
自動分析装置104aで使用している試薬が無くなった場合は、無くなったタイミングで自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をキャリア移載機103aに自動分析装置情報321により通知する。キャリア移載機103aは、自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報をオペレーションコンソール部106に送り、新たに検査可能項目を判断した情報を入手する。
【0064】
また、自動分析装置104aから、キャリア移載機103aに通知するタイミングは、1秒以下で定期的に通知するように構成することもできる。このように構成することで、通信異常による情報誤信や遅延を防止することができる。
【0065】
また、自動分析装置104aで使用している試薬が無くなった場合に通知する情報は、無くなった搭載試薬のみの情報でも良い。
【0066】
本発明の実施例4においても、実施例1と同様な効果が得られる他、オペレーションコンソール部106が、検体情報と自動分析装置104aの搭載試薬の有無の全情報とを比較し、自動分析装置104aで分析可能か否かを判断することにより、キャリア移載機103aにおける処理を簡素化でき、短時間で判断処理が可能になる。
【0067】
また、検体前処理部101における、自動分析装置104a〜104c、105への検体の振分を計画的に進めることができる。
【0068】
(実施例5)
次に、本発明の実施例5について説明する。
【0069】
図4は、本発明の実施例5による検体搬送システムの概略構成図である。
【0070】
図4において、検体搬送システムは、オペレーションコンソール部206と、検体前処理部201と、検体搬送システム部202とを備え、検体前処理部201は、検体搬送システム部202との接続部にキャリア移載機203を備え、1台、または複数の自動分析装置204a、204b、205へと検体を搬送する。
【0071】
実施例5と実施例1との相違点は、実施例5においては、キャリア移載機203が自動分析装置204a、204b、205に共通となっている点である。キャリア移搭載203は、自動分析装置204a、204b、205のそれぞれから搭載試薬の有無情報等を得ることができる。
【0072】
このように、1台のキャリア移載機203から1台、または複数の自動分析装置204a、204b、205へ検体を搬送しても良い。
【0073】
キャリア移載機203のデータ処理等は、実施例1〜4のいずれかを適用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0074】
なお、実施例5の変形例としては、
図1のように、複数のキャリア移載機を備え、かつ、複数のキャリア移載機のうちのいずれかまたは全てに複数の自動分析装置を接続する構成がある。
【0075】
本発明の実施例5においても、実施例1〜4と同様な効果を得ることができる。
【0076】
以上のように、本発明によれば、検体前処理システムから検体が搬送されてしまった後に、自動分析装置の処理不可能が検出されたときであっても、その自動分析装置への検体投入を回避可能な検体搬送システムを実現することができる。
【0077】
なお、上述した実施例において、シリアル通信で自動分析装置とキャリア移載機との情報通信を行う場合、搭載試薬の有無と分析項目の可/不可はビット通信方式で行い分析項目の可能分析数はバイト通信方式で行うことが可能である。
【0078】
また、上記検体容器キャリアは、検体容器を5本保持可能な例であるが、5本に限らず、2、3、4本等の複数本の検体容器を保持可能な例にも適用可能である。