特許第6775632号(P6775632)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6775632-芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法 図000013
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6775632
(24)【登録日】2020年10月8日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 65/40 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   C08G65/40
【請求項の数】12
【外国語出願】
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2019-87508(P2019-87508)
(22)【出願日】2019年5月7日
(62)【分割の表示】特願2015-529064(P2015-529064)の分割
【原出願日】2013年9月3日
(65)【公開番号】特開2019-143159(P2019-143159A)
(43)【公開日】2019年8月29日
【審査請求日】2019年6月6日
(31)【優先権主張番号】12182763.8
(32)【優先日】2012年9月3日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ファイサル−アリ エル−トウファイリ
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム シュタマー
(72)【発明者】
【氏名】ズィーモン グラムリヒ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲラ ウルツヘーファー
【審査官】 西山 義之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許第04200727(US,A)
【文献】 特開昭55−089334(JP,A)
【文献】 特開2004−263154(JP,A)
【文献】 特開平08−073545(JP,A)
【文献】 米国特許第05147135(US,A)
【文献】 特開2008−138200(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 65/00−67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノマーとしてのジクロロジフェニルスルホン成分とビスフェノール成分とを、アルカリ金属炭酸塩の存在下に、溶融状態で、溶剤又は希釈剤の不在下に反応させることによる芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法において、該反応は連続的に実施され、そして該反応を、10〜100-1の範囲内の剪断速度で運転される混合混練機中で実施し、その際、該混合混練機の充填度が0.2〜0.38の範囲内であり、当該混合混練機は、モノマーの融点を上回るまでの加熱が可能であり、かつガス状の縮合生成物の排出が可能であることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
前記混合混練機の剪断速度が25〜100s-1の範囲内であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
【請求項3】
前記混合混練機が、少なくとも2つの軸平行に回転する軸を有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記混合混練機が、少なくとも2つの軸平行に回転する軸を有しており、そのうち主軸はディスク面を有しており、前記ディスク面はその周囲に配置された混練バーを有していることを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記混合混練機が、1分当たり5〜50回転の範囲内の回転数で運転されるロータを有していることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記アルカリ金属炭酸塩が無水であることを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記混合混練機が、蒸発するモノマーの凝縮のための還流冷却器を具備しており、かつ、凝縮されたモノマーを該混合混練機に返送することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
250〜350℃の範囲内の温度で実施することを特徴とする、請求項1からまでのいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記混合混練機中の反応時間が、1.5〜3時間であることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記混合混練機での反応が、大気圧下で行われることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記アルカリ金属炭酸塩を、前記モノマーのうち少なくとも1種と予備混合して使用することを特徴とする、請求項1から10までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記芳香族ポリエーテルスルホンが、以下の構造単位:
【化1】
【化2】
のうち少なくとも1つを有することを特徴とする、請求項1から11までのいずれか1項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法及び該方法で得られるポリエーテルスルホンに関する。
【0002】
芳香族ポリエーテルスルホンは、通常は、アルカリ金属炭酸塩の存在下でのモノマーとしてのジクロロジフェニルスルホン成分とビスフェノール成分との縮合により製造される。通常は、この重縮合は、例えばN−メチルピロリドン(NMP)などの溶剤中で行われる。このような方法は、毒性の溶剤を取り扱わねばならず、この溶剤を反応後に生成物から分離し、場合により精製して反応に返送しなければならないという欠点がある。
【0003】
DE-A-2749645は、ポリエーテルの製造方法に関し、その際、実質的に等量のビスフェノールとジハロゲンベンゼン化合物とが、溶剤又は希釈剤の不在下でかつ無水アルカリ金属炭酸塩の存在下に縮合される。装置としては、揮発性成分の除去のための設備を有するポリマーにとって通常の混練機又は押出機が挙げられている。実施例では、使用されている装置の詳細な特徴は示されていない。
【0004】
本発明の課題は、モノマーとしてのジクロロジフェニルスルホン成分とビスフェノール成分とを、アルカリ金属炭酸塩の存在下に、溶融状態で、溶剤又は希釈剤の不在下に反応させることによる芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法を提供することであり、その際、高い分子量が得られることが望ましく、また、該芳香族ポリエーテルスルホンの変色が可能な限りわずかであることが望ましい。
【0005】
前期課題は、本発明によれば、モノマーとしてのジクロロジフェニルスルホン成分とビスフェノール成分とを、アルカリ金属炭酸塩の存在下に、溶融状態で、溶剤又は希釈剤の不在下に反応させることによる芳香族ポリエーテルスルホンの製造方法であって、該反応を、5〜500s-1の範囲内の剪断速度で運転される混合混練機中で実施する前記方法により解決される。
【0006】
前記混合混練機の充填度は、本発明によれば、好ましくは0.2〜0.8、好ましくは0.22〜0.7、特に0.3〜0.7、殊に0.35〜0.64の範囲内である。
【0007】
「充填度」という概念は、モノマーを充填できかつ完全混合が可能である混練機中の自由体積のうち、出発モノマーが占める割合を意味する。充填度が0.2〜0.8の範囲内であるとは、モノマーの充填及びその完全混合が可能な自由体積の20〜80%が、前記方法において、モノマー及びアルカリ金属炭酸塩の充填に利用されることを意味する。
【0008】
剪断速度とは、回転する混練バーと壁部との間の間隙中の混練材料における速度勾配s=2n・π・drot/(di−drot)として定義され、ここで、回転数n[s-1]、ロータ直径drot[m]及び装置内径di[m]である。この剪断速度は、混練機中の混合エレメントによる剪断、典型的にはロータと外壁との間、若しくはバーとステータとの間の剪断の程度を示す。
【0009】
剪断速度は、5〜500s-1、好ましくは10〜250s-1、特に20〜100s-1の範囲内である。
【0010】
s/2のs値が使用される場合、剪断速度は5〜500s-1、好ましくは25〜100s-1、特に35〜70s-1の範囲内である。
【0011】
混合混練機としては、モノマーの融点を上回るまでの加熱が可能であり、かつガス状の縮合生成物の排出が可能である、公知の適したいずれの混合混練機を使用してもよい。
【0012】
適した混合混練機は、通常は1つ又は好ましくは少なくとも2つの軸平行に回転する軸を有しており、そのうち主軸はディスク面を有していてよく、このディスク面はその周囲に配置された混練バーを有している。適した混合混練機は、例えばDE-A-4118884及びDE-A-19940521に記載されている。
【0013】
好ましくは、混合混練機はロータを有しており、このロータは、1分当たり5〜50回転、特に好ましくは1分当たり7.5〜40回転、特に1分当たり10〜30回転の範囲内の回転数で運転される。
【0014】
本発明により使用される混合混練機は、押出機よりも滞留時間がはるかに長くてもよいという利点を有している。さらに、ガス排出がはるかに容易でかつ十分に行うことができるため、ガス状の重縮合生成物を容易に排出することができる。さらに、本発明による剪断速度は、混合混練機においてより容易に調整することができる。
【0015】
本発明による方法は、バッチ法としても連続法としても実施可能である。好ましくは該方法は連続的に実施され、その際、好ましくは、例えばLIST TCFやBUSS SMSとして入手可能な連続的運転式二軸混合混練機が使用される。
【0016】
混合混練機、充填度及び剪断速度からの組合せにより、本発明により、生成物が変色により損傷されることなく芳香族ポリエーテルスルホンの高い分子量を達成することができる。
【0017】
本発明による方法において、多数の種々の芳香族ポリエーテルスルホンを製造することができ、その際、モノマーとして1種以上のジクロロジフェニルスルホン成分と1種以上のビスフェノール成分とを反応させる。
【0018】
アリーレン基とも称されるポリエーテルスルホンの芳香族基は、同じであっても異なっていてもよく、かつ互いに無関係に、6〜18個のC原子を有する芳香族基を表すことができる。
【0019】
適したアリーレン基の例は、フェニレン、ビスフェニレン、テルフェニレン、1,5−ナフチレン、1,6−ナフチレン、1,5−アントリレン、9,10−アントリレン又は2,6−アントリレンである。そのうち、1,4−フェニレン及び4,4’−ビフェニレンが好ましい。好ましくは、これらの芳香族基は非置換である。しかしながら、これらの芳香族基は1つ以上の置換基を有していてもよい。適した置換基は、例えばアルキル基、アリールアルキル基、アリール基、ニトロ基、シアノ基又はアルコキシ基、並びに複素芳香族化合物、例えばピリジン及びハロゲン原子である。好ましい置換基には、10個までの炭素原子を有するアルキル基、例えばメチル、エチル、i−プロピル、n−ヘキシル、i−ヘキシル、C1〜C10−アルコキシ基、例えばメトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、n−ブトキシ、20個までの炭素原子を有するアリール基、例えばフェニル又はナフチル、並びにフッ素及び塩素が包含される。さらに、ポリアリーレンエーテルスルホンと、C−C二重結合若しくはC−C三重結合の他に1つ以上のカルボニル基、カルボン酸基、カルボキシレート基、酸無水物基、酸アミド基、酸イミド基、カルボン酸エステル基、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、オキサゾリン基、ウレタン基、尿素基、ラクタム基又はハロゲンベンジル基を含む反応性化合物との反応により得られる置換基が好ましい。ポリアリーレンエーテルのアリーレン基は、−SO2−の他に、例えば−O−、−S−、−SO−、−CO−、−N=N−、−COO−を介して、所望の場合には置換されていてよいアルキレン基、又は化学結合と、互いに結合していてよい。
【0020】
本発明によれば、有用なポリアリーレンエーテルスルホンは、式Iの繰返し単位から構成されていてよい:
【化1】
ここで、
t及びqは、互いに無関係に、0、1、2又は3を表し、
Q、T及びZは、互いに無関係にそれぞれ、化学結合、又は、−O−、−S−、−SO2−、S=O、C=O、−N=N−、−RaC=CRb−及び−CRcd−から選択された基を表し、その際、
a及びRbは、互いに無関係にそれぞれ、水素原子、又はC1〜C12−アルキル基を表し、かつ、
c及びRdは、互いに無関係にそれぞれ、水素原子、又はC1〜C12−アルキル基、C1〜C12−アルコキシ基、又はC6〜C18−アリール基を表し、
その際、
c及びRdは、任意に互いに無関係に、フッ素原子及び/又は塩素原子で置換されているか、又は、任意に、これらRc及びRdに結合しているC原子と一緒に、任意に1つ以上のC1〜C6−アルキル基で置換されているC3〜C12−シクロアルキル基を形成しているが、但し、基T、Q及びZのうち少なくとも1つは−SO2−を表し、かつ、t及びqが0を表す場合には、Zは−SO2−を表すものとし、
Ar及びAr1は、互いに無関係に、C6〜C18−アリーレン基を表し、その際、この基は任意に、C1〜C12−アルキル基、C6〜C18−アリール基、C1〜C12−アルコキシ基又はヘテロ原子で置換されているものとする。
【0021】
好ましくは、芳香族ポリエーテルスルホンは、以下の構造単位:
【化2】
【0022】
【化3】
のうち少なくとも1つを有する。
【0023】
その際、モノマーとして使用されるジクロロジフェニルスルホン成分及びビスフェノール成分は、これらの構造から誘導されたものである。例えば、ポリエーテルスルホンの製造のために、ジクロロジフェニルスルホン及びジヒドロキシジフェニルスルホンが使用される。このような生成物は、例えばUltrason(R) Eの名称でBASF SE社より入手可能である。
【0024】
ジクロロジフェニルスルホンと4,4’−ビフェノールとの反応によりポリフェニレンスルホンが得られ、これはUltrason(R) Pの名称でBASF SE社より入手可能である。
【0025】
他の適したモノマーは、例えばDE-A-2749645、WO 01/83618及びWO 2010/146052に記載されている。
【0026】
反応の際には、等モル量のジクロロジフェニルスルホン成分及びビスフェノール成分を使用してもよいし、成分のうちの1つ、典型的にはより揮発性の高いものを過剰に使用してもよい。
【0027】
混合混練機が、蒸発するモノマーの凝縮のための還流冷却器を具備しており、かつ凝縮されたモノマーが混合混練機に返送される場合には、双方のモノマー成分の等モル量で作業してもよいし、これからわずかに逸脱して作業してもよい。
【0028】
本発明による方法は、モノマーが溶融状態で存在する限り、適した任意の温度で実施されてよい。好ましくは、反応は250〜350℃の範囲内の温度で実施される。
【0029】
混合混練機中で、反応は好ましくは加圧なしで行われ、その際、重縮合の際に生じる低分子量縮合生成物はガス状で排出される。
【0030】
反応の際に、好ましくは炭酸カリウムであるアルカリ金属炭酸塩を、別の成分として、混合混練機中に導入することができる。しかしながら、アルカリ金属炭酸塩を、モノマーのうち少なくとも1種と予備混合して使用することもできる。ビスフェノールとジハロゲンベンゼン化合物との縮合の際には、まずビスフェノールとアルカリ金属炭酸塩とを反応させることができ、それから、この生成物を混合混練機中でジハロゲンベンゼン化合物と重縮合させる。ジハロゲンベンゼン化合物への混入も可能である。
【0031】
連続運転式混合混練機中で、モノマー及びアルカリ金属炭酸塩のための種々の供給系を使用することができる。液体計量供給を使用することができ、その際、溶融モノマーが計量供給される。好ましくは、記載されている通り、アルカリ金属炭酸塩は、モノマー成分のうちの少なくとも1種の中に、好ましくは、フェノール基とのその反応性や塩形成に基づきハロゲン含有モノマーの中に、予備分散される。
【0032】
計量供給は、重量式計量供給により、又は側方供給スクリュにより、固体の形態で行われてもよい。混合混練機のケーシングを通じて導入する場合には、固形物による閉塞が生じないことを保証しなければならない。ケーシングの最小直径は150mmであることが好ましく、また、混練バーに対して垂直な固体粉末の短い注入路が好ましい。さらに、モノマーを、その流動性を適合させるために造粒することができる。側方供給スクリュを使用する場合には、モノマーとアルカリ金属炭酸塩とを粉末形でこの側方供給スクリュに導入し、かつこの側方供給スクリュを通じて混合混練機に導入しなければならない。
【0033】
混合混練機中の充填度は、排出スクリュの運転により制御可能であり、この排出スクリュでは、混合混練機への導入に相応して生成物が取り出される。
【0034】
混合混練機中の反応時間は、芳香族ポリエーテルスルホンの所望の分子量に応じて自由に選択可能である。好ましくは、混合混練機中の反応時間は、1〜3.5時間、特に好ましくは1.5〜3時間である。
【0035】
還流冷却器なしで運転される場合には、典型的には、ジクロロジフェニルスルホンの使用量を約4〜6モル%だけ高めることが望ましく、それというのも、この化合物は約100mbarであるその蒸気圧のために、300℃の温度で、ジヒドロキシジフェニルスルホン成分よりも蒸発し易いためである。
【0036】
本発明は、上記方法により得られた芳香族ポリエーテルスルホンにも関する。このような芳香族ポリエーテルスルホンは、好ましくは10000を上回る数平均分子量を有し、その際、数平均分子量は、好ましくは10000〜26000の範囲内である。その際、多分散度は好ましくは2〜7.5であり、ビフェノールをベースとする生成物については、特に好ましくは2.4〜3.2であり、DHDPSをベースとする生成物については、特に好ましくは3〜7.5である。
【0037】
本発明を以下の実施例により詳説する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明による装置の模式図である。
【実施例】
【0039】
包括的な作業規定
ポリエーテルスルホン(PESU)の製造を、塩基としての炭酸カリウムの存在下でのジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)とジヒドロキシジフェニルスルホン(DHDPS)との反応により行う。縮合副生成物として、粒状塩としての塩化カリウム、水及び二酸化炭素が生じる。DHDPSの247℃の融点に基づき、反応を典型的には約300℃の温度で行う。
【0040】
同様に、ジクロロジフェニルスルホン(DCDPS)及び4,4’−ビフェノール(BPhOH)からポリフェニレンスルホン(PPSU)への反応を行う。この反応を、混練バーとフック形状のカウンタエレメントとからなるセルフクリーニング系を有する単軸混合混練機である混合混練機LIST DTB中で行う。実験室試験において、この混合混練機の空容積は約770mlであった。
【0041】
この混合混練機をサーモスタットを用いて加熱するが、その際、外壁の加熱のみが可能である。3種の出発物質をこの反応器中に固体粉末として導入する。アルゴンでのパージの後に、この反応器を反応温度に加熱し、必要な反応時間にわたってこの温度で保持し、次いで冷却する。反応の間に、この混合混練機のモータを典型的には1分当たり約20回転の回転数で稼動する。冷却時に、反応器中の温度はポリマーのガラス転移温度未満に低下し、かつロータを止めなければならない。冷却後、ポリマーを機械により取り出した。反応器を周囲圧力で運転する。
【0042】
反応の間に、縮合生成物である水及び二酸化炭素を留去し、反応器から10L/hのアルゴン流と共に排出する。還流冷却器を使用しない場合には、モノマーDCDPSが、その高い蒸気圧に基づき部分的に一緒に排出される。還流冷却器を使用しない場合には、高い分子量を得るために、約4モル%のDCDPSの過剰で運転する必要がある。
【0043】
全ての試験において、DHDPSに対する炭酸カリウムのモル比を1.06に調整する。
【0044】
実施例1
第1表に、ポリエーテルスルホンの製造についての実験条件及び結果を示す。反応温度、ロータ回転数、モノマー量及びモル比の他に、バッチサイクル時間tcを示す。
【0045】
反応後に、生成物を機械により混合混練機から排出し、約2mmの粒子サイズに粉砕し、かつ、80℃で3時間にわたって水で2回洗浄する。これにより、副生成物として形成された塩化カリウムの約80質量%を除去することができた。残る塩化カリウムの含分に基づき、所定の粘度数VNは純粋なポリマーよりも低い。分子量をGPC法により測定した。
【0046】
【表1】
【0047】
混合混練機の充填度は、これらの実施例において0.22であった。1分当たり20回転の回転速度は、100s-1の剪断速度に相当する。
【0048】
第1表の結果から、温度の上昇に伴って、また滞留時間の増加に伴って、粘度数が増加することが明らかである。モル比が化学量論から逸脱すればするほど粘度数は低くなる。
【0049】
比較試験V50及びV51ではミキサの回転速度を変更したが、その際、ロータの停止状態のみならず、高い回転速度も、分子量の低下を招いた。十分な回転が行われないと、気相と溶融物との間に新たな界面が形成されないため、縮合生成物である水及び二酸化炭素を十分に排出することができない。回転速度が高すぎる場合、溶融物の剪断荷重は10倍だけ高くなった。生成物の色は、実施例5よりもはるかに暗かった。さらに、ゲル粒子の形成が生じた。
【0050】
実施例2
もう一つの試験において、混合混練機の充填度を変更した。DHDPSに対する炭酸カリウムのモル比を低下させたため、若干減少したVNも認められた。結果を以下の第2表に示す。
【0051】
【表2】
【0052】
1分当たり約20回転の撹拌機速度は、100s-1の剪断速度に相当する。
【0053】
これらの結果から、高すぎる及び低すぎる充填度の場合、明らかに低下した分子量が得有られることが明らかである。
【0054】
実施例3
同様の試験を、DCDPSと4,4’−ビフェノールとの反応について実施した。結果を以下の第3表にまとめた。
【0055】
【表3】
【0056】
実施及び後処理を、第1表の試験の場合と同様に行った。撹拌機速度は1分当たり20回転であり、剪断速度は100s-1であり、充填度は0.22であった。
【0057】
さらに、反応時間の延長に伴って粘度数が低下することが認められた。長すぎる滞留時間は分解を招くものと考えられる。従って、混合混練機中での反応時間は、好ましくは最大で3時間である。
【0058】
実施例4
混合混練機の使用と押出機の使用との比較を可能にするため、3.2Lの自由容積及びモノマーのための還流系を有する二軸スクリュ混練機(LIST TCP)を使用した。炭酸カリウムを6モル%の過剰で使用した。撹拌機速度は1分当たり20回転であり、充填度は0.22であり、剪断速度は30s-1であった。比較試験のために、実験室用押出機を重縮合に使用した。押出機は30分間を上回る反応時間を許容しないため、この試験では反応時間を等しく30分間に定めた。結果を以下の第4表にまとめた。
【0059】
【表4】
【0060】
これらの結果から、混合混練機の使用がはるかに高い分子量をもたらすことが明らかである。そのようにして得られた生成物は明らかにより明るい固有色をも示すのに対して、押出機からの生成物は褐色に変色していた。これにより、本発明による混合混練機の使用が好ましいことが明らかとなった。
【0061】
実施例5
モノマーDCDPS、DHDPS及びK2CO3を、図1に模式的に示した装置において、第5表に示したモル組成で予備混合し、かつ重量式計量供給スクリュ(重量式フィーダ)の初充填物容器(固体フィード)中に装入する。重量式計量供給により、使用物質は設定された流量に従って連続的に供給スクリュ(フィーダスクリュ)へ搬送され、そこから混練機(ニーダ)へ達する。供給スクリュは冷却されており、それによって使用物質はなおも固体形で存在する。混練機中では使用物質DCDPS及びDHDPSが溶融され、炭酸カリウムと反応し始める。その際、ポリマーと、副生成物であるH2O、CO2並びにKClが形成される。ガス状の成分であるH2O及びCO2は脱気され(オフガス)、排ガス導管を通じて反応室を去る。モノマーDCDPSの一部は気相へと昇華して一緒に排出され、かつ還流冷却器(冷却器)により凝縮され(凝縮物)かつプロセス室へ返送される。
【0062】
使用物質は、回転する混合混練機(ニーダ)により軸方向に輸送される間に、このニーダにより混合され、重合される。ニーダの出口には搬出スクリュ(排出スクリュ)が存在しており、このスクリュは、なおもKClを含む当該ポリマー溶融物(生成物)を混合混練機から搬出する。場合により、この排出スクリュの後に溶融ポンプが接続されていてよく、このポンプによって、排出された量を供給することができ、そして、ストランドペレタイザー若しくは水中ペレタイザーが続いてよい。
【0063】
回転数(min-1)は、以下の剪断速度(s-1)に相当する:
5 −7.4
15 −22.2
30 −44.2
50 −74
【0064】
【表5】
【0065】
【表6】
図1