(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ペンシル洗浄工程は、前記ペンシル型洗浄具を前記基板の表面に接触させながら、前記揺動アームを前記基板の中心と前記基板の周縁との間で揺動させる工程を、複数回繰り返す、請求項7に記載の基板洗浄装置。
前記2流体ジェット洗浄工程は、前記2流体ノズルから2流体ジェットを噴射しつつ前記揺動アームを前記基板の中心と前記基板の周縁との間で揺動させる工程を、複数回繰り返す、請求項7または8に記載の基板洗浄装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の装置では、基板の周囲に設置されるカバーが固定されていた。2流体洗浄では、2流体ノズルから噴出させる液滴の速度(流速)が高速であり、サイドジェットの速度(径方向の液滴の飛散速度)も高速である(
図7参照)。例えば、一般的な2流体洗浄では、2流体ノズルから噴出させる液滴の速度Voは、250〜350m/秒であり、サイドジェットの速度Vf(径方向の液滴の飛散速度)は、300〜400m/秒である。さらに、高速2流体洗浄あるいは超高速2流体洗浄では、2流体ノズルから噴出させる液滴の速度Voは、350〜400m/秒であり、サイドジェットの速度Vf(径方向の液滴の飛散速度)は、700〜1200m/秒である。
【0006】
このように2流体洗浄では、サイドジェットの速度(径方向の液滴の飛散速度)が非常に高くなり、カバーに衝突した液滴が跳ね返って基板表面に再付着するおそれがある。特に、高速2流体洗浄あるいは超高速2流体洗浄では、基板表面に再付着するおそれが高くなる。
【0007】
本発明は、上記の課題に鑑みてなされたもので、2流体洗浄を行うときに、カバーからの液滴の跳ね返りを抑え、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことのできる基板洗浄装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の基板洗浄装置は、基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構に保持された基板を回転させる基板回転機構と、基板の表面に向けて2流体ジェットを噴出させる2流体ノズルと、基板の周囲に配置されるカバーと、カバーを回転させるカバー回転機構と、を備え、カバー回転機構は、基板と同一の回転方向にカバーを回転させる。
【0009】
この構成によれば、2流体洗浄の際に、基板の回転により発生する遠心力や2流体洗浄で発生するサイドジェットにより基板の表面の液滴が飛散してカバーに衝突しても、カバーが基板と同一の回転方向に回転しているので、カバーが回転していない場合に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。これにより、カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0010】
また、本発明の基板洗浄装置は、基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構に保持された基板を回転させる基板回転機構と、基板の表面を
揺動して洗浄する
揺動洗浄機構と、基板の周囲に配置されるカバーと、カバーを回転させるカバー回転機構と、を備え、カバー回転機構は、基板と同一の回転方向にカバーを回転させる。
【0011】
この構成によれば、揺動洗浄の際に供給される大流量のリンス水が基板の回転により発生する遠心力により基板の表面から液滴となって飛散してカバーに衝突しても、カバーが基板と同一の回転方向に回転しているので、カバーが回転していない場合に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。これにより、カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0012】
また、本発明の基板洗浄装置は、基板を保持する基板保持機構と、基板保持機構に保持された基板を回転させる基板回転機構と、基板の表面を超音波を用いて洗浄する超音波洗浄機構と、基板の周囲に配置されるカバーと、カバーを回転させるカバー回転機構と、を備え、カバー回転機構は、基板と同一の回転方向にカバーを回転させる。
【0013】
この構成によれば、超音波洗浄の際に供給される大流量のリンス水が基板の回転により発生する遠心力により基板の表面から液滴となって飛散してカバーに衝突しても、カバーが基板と同一の回転方向に回転しているので、カバーが回転していない場合に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。これにより、カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0014】
また、本発明の基板洗浄装置では、カバー回転機構は、基板と同一の角速度でカバーを回転させてもよい。
【0015】
この構成によれば、カバーが基板と同一の角速度で回転しているので、カバーが基板と異なる角速度で回転している場合(例えば、カバーが回転していない場合)に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。
【0016】
また、本発明の基板洗浄装置では、基板の外端とカバーの先端との径方向の距離Aは、2mm〜80mmの範囲に設定され、基板とカバーの先端との高さ方向の距離Bは、3mm〜50mmの範囲に設定され、基板の外端とカバーの内周面との径方向の距離Cは、2mm〜80mmの範囲に設定されてもよい。
【0017】
この構成によれば、基板に対してカバーが適切な位置に配置されるため、カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0018】
また、本発明の基板洗浄装置では、基板の外端とカバーの先端との径方向の距離Aは、2mmに設定され、基板とカバーの先端との高さ方向の距離Bは、15mmに設定され、基板の外端とカバーの内周面との径方向の距離Cは、19mmに設定されてもよい。
【0019】
この構成によれば、基板に対してカバーが最適な位置に配置されるため、カバーからの
液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0020】
また、本発明の基板洗浄装置では、2流体ノズルは、基板の回転方向の上流側に向けて2流体ジェットを噴出するように、所定角度で傾けて設けられてもよい。
【0021】
この構成によれば、2流体ノズルから基板の回転方向の上流側に向けて(基板の回転に抗して)2流体ジェットが噴出されるので、回転する基板に対する2流体ジェットの相対速度が上昇し、洗浄性能を向上させることができる。
【0022】
また、本発明の基板洗浄装置は、基板洗浄装置を収容するケーシングと、ケーシングの壁面に設けられ、ケーシング内に気体を流入させる一対の気体流入口と、ケーシングの下部に設けられ、ケーシング内の気体を排出する気体排出口と、を備え、一対の気体流入口は、ケーシングの対向する壁面に設けられ、基板より高い位置に配置されてもよい。
【0023】
この構成によれば、ケーシングの対向する壁面に設けられた一対の気体流入口からケーシング内に気体が流入する。一対の気体流入口は基板より高い位置に配置されているので、一対の気体流入口から流入した気体は、ケーシング内の中央部において基板の上方でぶつかって、下降気流が形成され、ケーシングの下部の気体排出口から排出される。このとき。ケーシング内の液滴やミストも、下降気流にのってケーシングの下部の気体排出口から排出される。これにより、ケーシング内に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができ、液滴やミストの再付着によるディフェクト(Defect)を抑制することができる。
【0024】
また、本発明の基板洗浄装置は、基板洗浄装置の上流側および下流側には、それぞれ基板搬送エリアが隣接して設けられており、気体流入口は、基板搬送エリアの送風ユニットから送風される気体をケーシング内に導入してもよい。
【0025】
この構成によれば、基板洗浄装置に隣接する基板搬送エリアの送風ユニットを利用して、ケーシング内に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。
【0026】
また、本発明の基板洗浄装置は、気体流入口には、ケーシング内に気体を供給するための気体供給ラインが接続されてもよい。
【0027】
この構成によれば、気体供給ラインから供給される気体により、ケーシング内に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。したがって、例えば基板洗浄装置に隣接する基板搬送エリアの送風ユニットを利用できない場合であっても、ケーシング内に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。
【0028】
また、本発明の基板洗浄装置は、2流体ノズルは、導電性部材で構成されてもよい。
【0029】
この構成によれば、2流体ノズルの先端部が、導電性部材で構成されるので、2流体ノズルから噴出される液滴の帯電量を抑えることができる。これにより、2流体洗浄による基板表面の帯電量を抑制でき、帯電したパーティクルが基板に付着することによるディフェクト(Defect)を抑制することができる。
【0030】
また、本発明の基板洗浄装置は、導電性を有する薬液を基板に供給する薬液供給ノズルを備えてもよい。
【0031】
この構成によれば、薬液供給ノズルから導電性を有する薬液が供給されるので、基板表面の帯電量を抑えることができる。これにより、2流体洗浄による基板表面の帯電量を抑
制でき、帯電したパーティクルが基板に付着することによるディフェクト(Defect)を抑制することができる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、2流体洗浄を行うときに、カバーからの液滴の跳ね返りを抑え、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)を備えた基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
【
図2】本発明の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す斜視図である。
【
図3】本発明の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す平面図である。
【
図4】本発明の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す側面図である。
【
図5】本発明の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す説明図である。
【
図6】本発明の実施の形態の基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)における2流体洗浄の液滴の衝突速度の説明図である。
【
図7】2流体洗浄のサイドジェットの速度の説明図である。
【
図8】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す斜視図である。
【
図9】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す斜視図である。
【
図10】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す斜視図である。
【
図11】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成を示す斜視図である。
【
図12】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す平面図である。
【
図13】他の実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す側面図である。
【
図14】気流改善機能を備えた基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す側面図である。
【
図15】気流改善機能を備えた基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す側面図である。
【
図16】気流改善機能を備えた基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の他の例の要部を示す側面図である。
【
図17】気流改善機能を備えた基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の他の例の要部を示す側面図である。
【
図18】帯電抑制機能を備えた基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態の基板洗浄装置について、図面を用いて説明する。本実施の形態では、半導体ウェハの洗浄等に用いられる基板洗浄装置の場合を例示する。
【0035】
図1は、本実施の形態の基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)を備えた基板処理装置の全体構成を示す平面図である。
図1に示すように、基板処理装置は、略矩形状のハウジング
10と、多数の半導体ウェハ等の基板をストックする基板カセットが載置されるロードポート12を備えている。ロードポート12は、ハウジング10に隣接して配置されている。ロードポート12には、オープンカセット、SMIF(Standard Manufacturing Interface)ポッド、またはFOUP(Front Opening Unified Pod)を搭載することができる
。SMIF、FOUPは、内部に基板カセットを収納し、隔壁で覆うことにより、外部空間とは独立した環境を保つことができる密閉容器である。
【0036】
ハウジング10の内部には、複数(
図1の例では4つ)の研磨ユニット14a〜14dと、研磨後の基板を洗浄する第1洗浄ユニット16及び第2洗浄ユニット18と、洗浄後の基板を乾燥させる乾燥ユニット20が収容されている。研磨ユニット14a〜14dは、基板処理装置の長手方向に沿って配列され、洗浄ユニット16,18及び乾燥ユニット20も基板処理装置の長手方向に沿って配列されている。本発明の基板洗浄装置は、第2洗浄ユニット18に適用されている。
【0037】
図1に示すように、ロートポート12、該ロートポート12側に位置する研磨ユニット14a及び乾燥ユニット20に囲まれた領域には、第1基板搬送ロボット22が配置されている。また、研磨ユニット14a〜14dと平行に、基板搬送ユニット24が配置されている。第1基板搬送ロボット22は、研磨前の基板をロートポート12から受け取って基板搬送ユニット24に受け渡すとともに、乾燥後の基板を乾燥ユニット20から受け取ってロートポート12に戻す。基板搬送ユニット24は、第1基板搬送ロボット22から受け取った基板を搬送して、各研磨ユニット14a〜14dとの間で基板の受け渡しを行う。
【0038】
第1洗浄ユニット16と第2洗浄ユニット18の間には、これらの各ユニット16,18との間で基板の受け渡しを行う第2基板搬送ロボット26が配置されている。また、第2洗浄ユニット18と乾燥ユニット20との間には、これらの各ユニット18,20との間で基板の受け渡しを行う第3基板搬送ロボット28が配置されている。
【0039】
更に、ハウジング10の内部には、基板処理装置の各機器の動きを制御する制御部30が配置されている。この制御部30は、第2洗浄ユニット(基板洗浄装置)18の動きを制御する機能も備えている。
【0040】
本実施の形態では、第1洗浄ユニット16として、洗浄液の存在下で、基板の表裏両面にロール状に延びるロール洗浄部材を擦り付けて基板を洗浄するロール洗浄ユニットが使用されている。この第1洗浄ユニット(ロール洗浄ユニット)16は、洗浄液に1MHz付近の超音波を加え、洗浄液の振動加速度による作用力を基板表面に付着した微粒子に作用させるメガソニック洗浄を併用するように構成されている。
【0041】
また、第2洗浄ユニット18として、本発明の基板洗浄装置が使用されている。また、乾燥ユニット20として、基板を保持し、移動するノズルからIPA蒸気を噴出して基板を乾燥させ、更に高速で回転させ遠心力によって基板を乾燥させるスピン乾燥ユニットが使用されている。なお、洗浄部は、洗浄ユニット16,18を上下2段に配置した上下2段構造としてもよい。この場合、洗浄部は、上下2段の基板処理ユニットを有する。
【0042】
図2は、本実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の斜視図であり、
図3は、本実施の形態における基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の平面図である。
【0043】
図2及び
図3に示すように、本実施の形態の基板洗浄装置(第2洗浄ユニット)18は、基板Wの周囲を囲繞する洗浄槽40と、この処理槽40の側方に立設した回転自在な支持軸42と、この支持軸42の上端に基部を連結した水平方向に延びる揺動アーム44を
備えている。洗浄槽40において、基板Wは、チャック等で保持され、チャック等の回転により回転するように構成されている。揺動アーム44の自由端(先端)には、流体ノズル(2流体ノズル)46が上下動自在に取り付けられている。
【0044】
流体ノズル46には、N
2ガス等のキャリアガスを供給するキャリアガス供給ライン5
0と、純水またはCO
2ガス溶解水等の洗浄液を供給する洗浄液供給ライン52が接続さ
れており、流体ノズル46の内部に供給されたN
2ガス等のキャリアガスと純水またはC
O
2ガス溶解水等の洗浄液を流体ノズル46から高速で噴出させることで、キャリアガス
中に洗浄液が微小液滴(ミスト)として存在する2流体ジェット流が生成される。この流体ノズル46で生成される2流体ジェット流を回転中の基板Wの表面に向けて噴出させて衝突させることで、微小液滴の基板表面への衝突で発生した衝撃波を利用した基板表面のパーティクル等を除去(洗浄)を行うことができる。
【0045】
支持軸42は、支持軸42を回転させることで該支持軸42を中心に揺動アーム44を揺動させる駆動機構としてのモータ54に連結されている。
【0046】
この例では、揺動アーム44の先端に、例えばPVAスポンジから成るペンシル型洗浄具60が上下動自在かつ回転自在に取り付けられている。更に、洗浄槽40の側上方に位置して、チャック等で保持されて回転中の基板Wの表面に、リンス液を供給するリンス液供給ノズル62と、薬液を供給する薬液供給ノズル64が配置されている。ペンシル型洗浄具60の下端を、回転中の基板Wの表面に所定の押圧力で接触させながら、揺動アーム44の揺動によってペンシル型洗浄具60を移動させ、同時に、基板Wの表面にリンス液または薬液を供給することで、基板Wの表面の接触洗浄が行われるようになっている。なお、上記基板Wの表面の接触洗浄は、必要に応じて行われる処理であり、必ずしも必要ではない。
【0047】
図3に示すように、流体ノズル46は、揺動アーム44の揺動に伴って、オフセット位置Aから、基板Wの中心Oの上方位置及び該中心Oから所定間隔離間した変位点Bの上方位置を通って、基板Wの外周部外方の洗浄終了位置Cに、円弧状の移動軌跡に沿って移動することで、基板Wの表面の洗浄を行う。この洗浄時に、回転中の基板Wの表面に向けて、キャリアガス中に洗浄液が微小液滴(ミスト)として存在する2流体ジェット流を流体ノズル46から噴出させる。なお、
図3は、流体ノズル46が変位点Bの上方位置に位置している状態を示している。
【0048】
ここで、基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の構成について、図面を参照しながら、より詳細に説明する。
図4は、基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の側面図である。
【0049】
図4に示すように、基板洗浄装置は、基板Wを水平に保持する基板保持機構1と、基板保持機構1を介して基板Wをその中心軸周りに回転させるモータ(回転機構)2と、基板Wの周囲に配置される回転カバー3を備えている。
【0050】
基板保持機構1は、基板Wの周縁部を把持する複数のチャック70と、これらチャック70が固定される円形の台座71と、この台座71を支持するステージ72と、このステージ72を支持する中空状の支持軸73を有している。この場合、台座71、ステージ72、支持軸73は、同軸上に配置されている。回転カバー3は、ステージ72の端部に固定され、ステージ72と回転カバーも同軸上に配置されている。また、チャック70に保持された基板Wと回転カバー3とは同軸上に位置している。
【0051】
支持軸73の外周面にはモータ2が連結されている。モータ2のトルクは、支持軸73に伝達され、これによりチャック70に保持された基板Wが回転する。この場合、基板W
と回転カバーが一体に回転し、両者の相対速度は0となる。なお、基板Wと回転カバー3との間に若干の速度差があってもよい。
【0052】
このように、基板Wと回転カバー3を、同一の回転機構(モータ2)により回転させることができる。この場合、基板Wと回転カバー3を、同一の速度で回転させることができる。基板Wと回転カバー3とを同一の速度で回転させるとは、基板Wと回転カバー3とを同一の方向に同一の角速度で回転させることをいい、互いに逆方向に回転させることを含まない。この回転機構(モータ2)が、本発明の基板回転機構およびカバー回転機構に相当する。なお、基板Wと回転カバー3は、それぞれ別々の回転機構により回転させてもよい。
【0053】
また、
図4に示すように、ステージ72には、複数の排出孔74が形成されている。排出孔74は、例えば、回転カバー3の周方向に延びる長孔である。流体ノズル46から供給された洗浄液は、キャリアガスや周囲雰囲気(通常は空気)とともにこの排出孔74を通じて排出される。本実施の形態では、排気量が1〜3m
3/分の範囲で制御されている
。そして、給気量を排気量より低く制御することにより、基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)内の雰囲気を適切に排気される。これにより、液滴を気流に乗せて適切に排出することができ、液滴が基板上に飛散するのを抑制することができる。さらに、回転カバー3の外側には、固定カバー75が設けられている。この固定カバー75は、回転しない構成とされている。
【0054】
図5は、基板洗浄装置(基板洗浄ユニット)の要部の説明図である。本実施の形態では、基板の外端と回転カバーの先端との径方向の距離Aは、2mm〜80mmの範囲に設定され、基板と回転カバーの先端との高さ方向の距離Bは、3mm〜50mmの範囲に設定され、基板の外端と回転カバーの内周面との径方向の距離Cは、2mm〜80mmの範囲に設定されることが望ましい。例えば、基板の外端と回転カバーの先端との径方向の距離Aは、2mmに設定され、基板と回転カバーの先端との高さ方向の距離Bは、15mmに設定され、基板の外端と回転カバーの内周面との径方向の距離Cは、19mmに設定されている。
【0055】
以上のように構成された基板洗浄装置について、その動作を説明する。
【0056】
基板処理装置では、ロードポート12内の基板カセットから取り出した基板の表面を、研磨ユニット14a〜14dのいずれかに搬送して研磨する。そして、研磨後の基板表面を第1洗浄ユニット(ロール洗浄ユニット)16で洗浄した後、2流体ジェット流を使用した第2洗浄ユニット(基板洗浄ユニット)18で更に洗浄する。この第2洗浄ユニット(基板洗浄ユニット)18で基板表面を洗浄する時、流体ノズル46の移動速度を制御しながら、2流体ジェット流を回転中の基板Wの表面に向けて噴出させる。
【0057】
本実施の形態では、第1洗浄ユニット16でロール洗浄して第2洗浄ユニット18に搬入した基板を回転させながら、基板表面に、リンス液供給ノズル62から数秒(例えば3秒)リンス液を供給して基板表面のリンス洗浄を行い、薬液供給ノズル64から薬液を基板表面に噴射しながら、ペンシル型洗浄具60を所定回数(例えば2〜3回)でスキャンさせて基板表面をペンシル洗浄した後、同じ第2洗浄ユニット18内で、直ちに2流体ジェット流を使用した洗浄を開始するようにしている。
【0058】
2流体ジェット流を使用した基板表面の洗浄は、揺動アーム44を所定回数(例えば1〜4回)で揺動させて、2流体ジェット流を噴出している流体ノズル46を回転中の基板の上方を移動させることで行われる。揺動アーム44の角速度、つまり流体ノズル46の移動速度は、処理許容な時間および回数から算出される。なお、2流体ジェット流を使用
して基板表面を洗浄しているときの基板の回転速度とペンシル型洗浄具60使用して基板表面を洗浄しているときの基板の回転速度とを必ずしも一致させる必要はない。
【0059】
そして、洗浄後の基板を第2洗浄ユニット18から取り出し、乾燥ユニット20に搬入してスピン乾燥させ、しかる後、乾燥後の基板をロードポート12の基板カセット内に戻す。
【0060】
本実施の形態の基板洗浄装置によれば、2流体洗浄の際に、基板の回転により発生する遠心力や2流体洗浄で発生するサイドジェットにより基板の表面の液滴が飛散して回転カバーに衝突しても、回転カバーが基板と同一の回転方向に回転しているので、カバーが回転していない場合に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。これにより、回転カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0061】
この場合、回転カバーが基板と同一の角速度で回転しているので、回転カバーが基板と異なる角速度で回転している場合(例えば、カバーが回転していない場合)に比べて液滴の衝突速度を低減させることができる。
【0062】
例えば、
図6に示すように、固定カバーの場合(カバーが回転していない場合)には、液滴の衝突速度Vは、V
1(=r
1ω)となり、液滴(大きな相対速度でカバーに衝突した液滴)が気流に逆らって基板上に飛散する場合があるのに対して、回転カバーの場合(特に、回転カバーが基板と同一の角速度で回転している場合)には、液滴の衝突速度Vは、V
1−V
2(=r
1ω−r
2ω≒0)となり、液滴の衝突速度を低減することができる。この場合、液滴(小さな相対速度でカバーに衝突した液滴)は気流に乗って下部から導き出すことができる。なお、ここで、r
1は、基板Wの半径であり、r
2は、回転カバーの内周面の半径である。また、ωは、基板Wと回転カバーの角速度である。
【0063】
また、本実施の形態では、
図5に示すように、基板Wに対して回転カバーが最適な位置に配置されるため、回転カバーからの液滴の跳ね返りを抑えることができ、液滴が基板の表面に再付着するのを防ぐことができる。
【0064】
以上、本発明の実施の形態を例示により説明したが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではなく、請求項に記載された範囲内において目的に応じて変更・変形することが可能である。
【0065】
例えば、以上の説明では、
揺動アーム44の先端に流体ノズル(2流体ノズル)46とペンシル型洗浄具60の両方が設けられた例について説明したが、
図8に示すように、
揺動アーム44の先端に流体ノズル(2流体ノズル)46のみが設けられていてもよい。また、
図9に示すように、
揺動アーム44の先端にペンシル型洗浄具60のみが設けられていてもよい。さらに、
図10に示すように、基板洗浄装置18には、基板Wの表面を超音波を用いて洗浄する超音波洗浄機90が設けられていてもよい。
【0066】
また、
図11に示すように、流体ノズル(2流体ノズル)46は、基板の外周位置(エッジ位置)に設けられていてもよい。この流体ノズル(2流体ノズル)46により、基板外周(エッジ)の表面を洗浄することができる。この場合、流体ノズル(2流体ノズル)46の近傍に局所排気機構80が設けられていてもよい。この局所排気機構80により、基板の外周位置(エッジ位置)の排気を強化することができ、液滴の飛散を抑制することができる。なお、局所排気機構80は必ずしも必要ではない。すなわち、局所排気機構80は設けなくてもよい。
【0067】
また、2流体ノズル46は、基板Wの回転方向の上流側に向けて2流体ジェットを噴出するように、所定角度で傾けて設けられてもよい
。2流体ノズル46は、平面視で、基板Wの回転方向の上流側に向けて、回転方向(接線方向)とのなす角0°〜90°の範囲
で設けることができる。
図12(a)の例では、2流体ノズル46が、基板Wの回転方向の上流側に向けて、回転方向(接線方向)とのなす角0°で設けられている。これにより、回転する基板に対する2流体ジェットの相対速度が上昇し、洗浄性能を向上させることができる。
図12(b)の例では、2流体ノズル46が、基板Wの回転方向(接線方向)とのなす角90°で設けられている。この場合、回転する基板に対する2流体ジェットの相対速度が低下せず、洗浄性能を(低下させずに)維持することができる。
【0068】
また、2流体ノズル46は、側面視で、基板Wの回転方向の上流側に向けて、回転方向とのなす角45°〜90°の範囲で傾けて設けることができる。この場合、2流体ノズル46は、側面視で、基板Wの回転方向の上流側に向けて、基板面とのなす角45°〜90°の範囲で傾けて設けることができるともいえる。
図13(a)の例では、2流体ノズル46が、基板Wの回転方向の上流側に向けて、回転方向(基板面)とのなす角45°で設けられている。これにより、回転する基板に対する2流体ジェットの相対速度が上昇し、洗浄性能を向上させることができる。
図13(b)の例では、2流体ノズル46が、基板Wの回転方向(基板面)とのなす角90°で設けられている。この場合、回転する基板に対する2流体ジェットの相対速度が低下せず、洗浄性能を(低下させずに)維持することができる。
【0069】
図14および
図15には、気流改善機能を備えた基板洗浄装置が示される。この基板洗浄装置18は、ケーシング80に収容されており、ケーシング80の壁面の上部には、一対の通気プレート81が設けられている。この場合、通気プレート81は、基板Wより高い位置(
図14において上側)に配置されている。基板洗浄装置18の上流側(
図14における左側)には、第2基板搬送ロボット26の基板搬送エリア82が隣接して設けられており、基板洗浄装置18の下流側(
図14における右側)には、第3基板搬送ロボット28の基板搬送エリア83が隣接して設けられている。各基板搬送エリア82、83の上部には、それぞれ送風ユニット84が設けられており、通気プレート81には、送風ユニット84から送風される気体をケーシング80の内部に導入する気体流入口85が設けられている。送風ユニット84としては、例えば、ファンで空気を吸い込んでフィルターで清浄化するFFU(ファン・フィルタ・ユニット)を採用してもよい。この送風ユニット84を備えることにより、基板を搬送するための基板搬送エリア82、83内で、垂直方向上方から下方へと清浄な空気をそれぞれ送風することができるため、下方からの粒子等の舞い上がりを防止し、基板搬送エリア82、83内で搬送中の基板の汚染を防止することができる。ケーシング80の下部には、ケーシング80の内部の気体を外部に排出する気体排出口86が設けられている。この気体排出口86は、上述の排出孔74であってもよい。
【0070】
このような基板洗浄装置18によれば、ケーシング80の対向する壁面に設けられた一対の気体流入口85からケーシング80の内部に気体が流入する。一対の気体流入口85は基板Wより高い位置に配置されているので、一対の気体流入口85から流入した気体は、ケーシング80の中央部において基板Wの上方でぶつかって、下降気流が形成され、ケーシング80の下部の気体排出口86から外部に排出される。このとき、ケーシング80の内部の液滴やミストも、下降気流にのってケーシング80の下部の気体排出口86から外部に排出される。これにより、ケーシング80の内部に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができ、液滴やミストの再付着による汚染、ディフェクト(Defect)を抑制することができる。この場合、基板洗浄装置18に隣接する基板搬送エリア82、83の送風ユニット84を利用して、ケーシング80の内部に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。
【0071】
また、
図16および
図17には、気流改善機能を備えた基板洗浄装置の変形例が示される。この例では、通気プレート81に気体供給ライン87の気体供給ポート88が接続されており、気体供給ライン87から供給された気体(例えばN
2ガス)が気体流入口85
からケーシング80の内部に供給される。なお、気体供給ライン87にはバルブ89が設けられており、気体の供給をオン/オフ制御することができる。例えば、基板Wがケーシング80の内部に搬送されたタイミングで、気体の供給をオン(開始)にし、基板Wの洗浄後、基板Wをケーシングから外部へ搬送したタイミングで、気体の供給をオフ(停止)にする。
【0072】
この変形例によっても、気体供給ライン87から供給される気体により、ケーシング80の内部に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。この場合には、例えば基板洗浄装置18に隣接する基板搬送エリア82、83の送風ユニット84を利用できない状況であっても、ケーシング80の内部に液滴やミストが蔓延するのを抑制することができる。
【0073】
図18には、帯電抑制を備えた基板洗浄装置が示される。この基板洗浄装置18は、導電性を有する薬液を基板Wに供給する薬液供給ノズル64と、リンス液(例えば純水)を基板Wに供給するリンス供給ノズル62を備えている。この基板洗浄装置18では、まず基板Wが搬入されると、薬液供給ノズル64から基板Wの表面に導電性を有する薬液が供給され(
図18(a)参照)、その後、2流体ノズル46から2流体ジェットを噴出させて、基板Wの2流体洗浄が行われる(
図18(b)参照)。2流体洗浄を行う間、薬液供給ノズル64から導電性を有する薬液を供給し続けることが望ましい。そして、2流体洗浄が終了した後、リンス供給ノズル62からリンス液が基板Wの表面に供給されて、薬液が洗い流される(
図18(c)参照)。
【0074】
このような基板洗浄装置18によれば、薬液供給ノズル64から導電性を有する薬液が供給されるので、基板Wの表面の帯電量を抑えることができる。これにより、2流体洗浄による基板表面の帯電量を抑制でき、帯電したパーティクルが基板Wに付着することによる汚染、ディフェクト(Defect)を抑制することができる。
【0075】
なお、2流体ノズル46は、導電性部材(例えば、導電性PEEKなど)で構成されてもよい。このような構成によっても、2流体ノズル46から噴出される液滴の帯電量を抑えることができる。したがって、2流体洗浄による基板表面の帯電量を抑制でき、帯電したパーティクルが基板Wに付着することによる、汚染、ディフェクト(Defect)を抑制することができる。
【0076】
また、CO
2ガス溶解水等の洗浄液に比べてキャリアガス(N
2ガス等)のほうが流速が大きく、したがって、洗浄液供給ライン52に比べて、キャリアガス(N
2ガス等)のキ
ャリアガス供給ライン50のほうが帯電しやすい。そこで、2流体ノズル46だけでなく、2流体ノズル46に接続されたキャリアガス供給ライン50を形成する部材にも導電性部材を用い、キャリアガス供給ライン50がケーシング80から出たポイントで、接地(アース)するように導線101をキャリアガス供給ライン50と接続させることで、さらに、帯電を有効に防止できる(
図18(a)参照)。このように構成した場合、帯電したパーティクルが基板Wに付着することを抑制できるため、薬液供給ノズル64は、必ずしも設けなくてもよい(このときには、リンス供給ノズル62を設けないようにすることもできる)。また、基板洗浄装置18より下流に、リンス液で基板Wを洗浄する洗浄ユニットが設けられている場合には、薬液供給ノズル64は設けるようにするものの、リンス供給ノズル62は、必ずしも設けなくてもよい。
【0077】
なお、本発明の基板洗浄装置が有する、上述の気流改善機能(
図14〜
図17を参照)については、2流体ノズルを用いた基板洗浄装置だけでなく、ペンシル型洗浄具などの揺動洗浄機構や超音波洗浄機構を用いた基板洗浄装置にも適用できる。また、上述したような、導電性部材で構成される2流体ノズルおよびキャリアガス供給ラインは、本実施例に記載した回転可能なカバーを有する基板洗浄装置だけでなく、固定されたカバーを有する基板洗浄装置にも適用することができる。