【文献】
高橋亮治、佐藤智司、袖澤利昭、冨田由美子,二元細孔シリカ及びシリカージルコニアの熱的特性,Journal of the Ceramic Society of Japan,the Ceramic Society of Japan,2005年,113,1,92-96
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
非水溶性ポリマーの可溶化処理において導入される水溶性を示す官能基の数の割合が、該ポリマー構造中の非水溶性を示す官能基の数に対して50%以上、90%以下である請求項1または2に記載の二元細孔酸化物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本明細書でいう二元細孔を有する酸化物もしくは二元細孔酸化物は、後述する測定法にて測定した孔径が1nm〜50nmの範囲の細孔(本明細書では「ナノ細孔」という。)と、孔径が0.1〜100μmの範囲にある細孔(本明細書では「マクロ細孔」という。)を同時に有している酸化物である。
【0013】
(原料)
本発明では、原料として少なくとも非水溶性ポリマー、シリカ源および酸触媒を用いる。
【0014】
・シリカ源
本発明においてシリカ源、すなわちシリカの原料は特に限定されず、例えば水ガラス(ケイ酸ナトリウム)やTEOS(テトラエトキシシラン)、TMOS(テトラメトキシシラン)の如き、ケイ素アルコキシドが用いられる。
【0015】
・酸触媒
酸触媒は加水分解反応の触媒として働き、ゲル化を促進するために添加されるものであり、通常硫酸、塩酸、硝酸等の鉱酸または有機酸が使用される。
【0016】
・非水溶性ポリマー
また、非水溶性ポリマーは、可溶化処理を施さなければ、水と混合した際に均一に溶解することができないポリマーをいう。非水溶性ポリマーを例示すれば、ポリメタクリル酸エステルであるポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸エチル、ポリメタクリル酸n−ブチル、ポリメタクリル酸tert−ブチル、ポリメタクリル酸iso−ブチル等が挙げられる。
【0017】
また、非水溶性ポリマーは、単独のモノマーからなるポリマーでも良いし、二種以上のモノマーからなる共重合体でも良い。共重合体を例示すれば、メタクリル酸メチルとメタクリル酸エチルの共重合体、メタクリル酸メチルとメタクリル酸ブチルの共重合体等が挙げられる。
【0018】
また、非水溶性ポリマーの重量平均分子量は5千〜100万が好ましく、分子量1万〜10万が相分離の制御が容易であるため、より好ましい。
【0019】
・金属塩
本発明において、二元細孔酸化物に耐アルカリ性、耐シンタリング性を付与するために、ゾル液に金属塩を添加することもできる。ゾル液に添加する金属塩はゾル液に溶解する金属塩であれば特に限定されないが、金属硫酸塩、金属硝酸塩等が好ましい。かかる金属塩を具体的に例示すれば、硫酸ジルコニウム、硝酸ジルコニル、硫酸アルミニウム、硝酸アルミニウム等が挙げられる。
・尿素
本発明において、ゾル液に尿素を添加することもできる。ゾル液への尿素の添加は、ゾル−ゲル法による多孔質体製造の分野で公知であり、ナノ細孔径の平均細孔径を調節するためである。
【0020】
(非水溶性ポリマーの可溶化処理)
本発明の二元細孔酸化物の製造方法においては、非水溶性ポリマーを可溶化処理して可溶化処理したポリマーを得る工程が必須となる。非水溶性ポリマーの可溶化処理の方法としては、非水溶性ポリマーの構造中に水溶性を示す官能基を導入し、非水溶性ポリマーを水含有溶液に溶解可能とすることができれば、加水分解や熱処理等、特に制限されるものではないが、加水分解が操作の容易さ等の観点から好適に用いられる。非水溶性ポリマーの可溶化処理の方法及び時間は使用する非水溶性ポリマーやその分子量に主として依存して変化する。
【0021】
可溶化処理において導入される水溶性を示す官能基の割合がポリマー構造中の非水溶性を示す官能基に対して50%以上、90%以下が好ましい。導入される水溶性を示す官能基の割合が、ポリマー構造中の非水溶性を示す官能基に対して50%以上、90%以下であれば、均一なゾル溶液を容易に調製することができる。なお、ここでいう「割合」は、次式で示される割合を意味する。
{非水溶性ポリマーに導入された、水溶性を示す官能基の数}÷{可溶化処理前の非水溶性ポリマー中の、非水溶性を示す官能基の数}
非水溶性を示す官能基とは水及び水含有混合溶液に溶解しない官能基を意味し、例えば、メチルエステル基やエチルエステル基が挙げられる。水溶性を示す官能基は水または水含有混合溶液に溶解する官能基を意味し、例えば、カルボキシル基、水酸基及びアミノ基からなる群から選ばれる一種以上の基である。
【0022】
非水溶性ポリマーの可溶化処理の手順は特に限定されないが、具体的に例示すれば、次に示す手順が挙げられる。
(1)非水溶性ポリマーを硫酸に添加し、数日間静置する。
(2)上記(1)で得られた溶液に水を加え、沈殿物を得る。
(3)沈殿物を濾別し、その沈殿物を乾燥させる。
(4)沈殿物を溶媒(特にはエタノール)に溶解させ、非水溶性ポリマーを可溶化処理したポリマーを含有する溶液(特にはエタノール溶液)を得る。
【0023】
なお、以下において、上記手順(4)で得られる「非水溶性ポリマーを可溶化処理したポリマー」を「可溶化処理ポリマー」と呼ぶことがあり、上記手順(4)で得られる「非水溶性ポリマーを可溶化処理したポリマーを含有する溶液」を「可溶化処理ポリマー溶液」と呼ぶことがある。
【0024】
(ゾル液調製法)
本発明において、ゾル液は、水を溶媒とし、これにシリカ源、酸触媒及び可溶化処理ポリマー溶液を含有せしめること、さらに場合により金属塩も含有せしめることによって調製されることが好ましい。
【0025】
本発明においては、ゾル液調製時の手順は特に限定されないが、ゾル液調製の最終段階として、可溶化処理ポリマー溶液と、シリカ源及び酸触媒を含む液と、を混合することが均一なゾル液を得る上で好ましい。
【0026】
例えば、水に金属塩及び酸触媒を混合した後、得られた混合液とシリカ源及び可溶化処理ポリマー溶液を混合する方法、あるいは、水に金属塩、酸触媒及びシリカ源を混合した後、得られた混合液と可溶化処理ポリマー溶液を混合する方法が挙げられる。
【0027】
一般に、混合時の不均一なシリカ成分もしくは可溶化処理ポリマーの沈殿を防ぐため、次の手順により行うことが最も好ましい。
(1)酸触媒さらに場合により金属塩を水に溶かし、混合液を調製する。
(2)シリカ源と(1)の混合液を混合する。
(3)(2)で得られた水溶液に、可溶化処理ポリマー溶液を加え、攪拌混合し均一なゾル液を得る。
【0028】
(原料の組成)
本発明において、ゾル液のSiO
2含有率は2〜20質量%とするのが好ましい。これにより、ゾル液を調製する際に、均一な溶液を得ることが容易になる。ゾル液中の可溶化処理ポリマーの含有量は1〜20質量%が好ましい。また、酸の濃度は、ゾル液1リットルあたり、0.1〜5モルの範囲であることが好ましい。
【0029】
また、ゾル液のpHは、4以下とすることが好ましく、特に1以下または3から4とするのが好ましい。ゾル液のpHが1以下または3から4であるとゲル化速度を容易に制御することができる。
【0030】
(ゲル化)
本発明において、上記ゾル液をゲル化させる際には、ゲル化させながら相分離させる方法が好ましい。その方法は、ゾル液を密閉容器などに入れ、0〜90℃で、好ましくは10〜60℃で、10分〜1週間、さらに好ましくは1時間〜24時間静置することにより行うことができる。
【0031】
ここで、相分離は、前記組成のゾル液を静置することによって徐々に進行し、静置温度を調整してゲル化時間を制御することによって、相分離が完全に起こる前の状態、即ち、相分離の途中でゲル化を完了させることによりその構造を固定させることが好ましい。
【0032】
かかる相分離の途中においては、酸化物の骨格とポリマーを含む溶媒相との相分離を伴う絡み合い構造状態が混在しており、この状態でゲル化を完了させることにより、溶媒相によってマクロ細孔が酸化物の骨格中に形成された構造を有するゲル体が形成される。
【0033】
(細孔径制御)
本発明において、上記方法によって得られるゲル体は、乾燥後のナノ細孔の平均細孔径が1〜50nm、マクロ細孔の平均細孔径が0.1〜100μmの細孔構造を形成するように、その製造時の条件を公知の方法に準じて制御すればよい。
【0034】
例えば、マクロ細孔の細孔径は、ゾル液の原料組成(酸触媒、金属塩、非水溶性ポリマーの分子量等)、ゾル液調製温度、ゲル化温度等の影響を大きく受けるため、所望のマクロ細孔の細孔径を得るためには、予め実験により、これらの条件を精密に決定すればよい。
【0035】
また、酸化物の用途によって、圧力損失あるいは機械的強度の観点から、好適なマクロ細孔の細孔径は異なるため、一概に制限することはできないが、マクロ細孔の細孔径は一般に、1〜50μmの範囲とすることが好ましい。
【0036】
一方、ナノ細孔径の細孔径は、前記方法によって得られたゲル体を、ゾル−ゲル法による多孔質体製造の分野で公知の方法により調整可能である。例えば、ゾル液の原料組成(酸触媒、尿素の添加量等)、塩基性溶媒に含浸漬させて行う熟成、水熱処理、焼成等の後処理によって調整することが可能である。
【0037】
(乾燥)
調製したゲルは、例えば30〜80℃で数時間〜数十時間静置して乾燥を行う。乾燥後、用途に応じてそのまま使用しても良いし、焼成して使用しても良い。
【0038】
焼成は、有機物を除去し、かつマクロ細孔構造を維持するために行う。焼成温度は、500〜1,100℃が好ましいが、500℃以下としてもよい。
【0039】
(形状)
二元細孔酸化物の形状は、特に限定されるものではなく、用途に応じて粉状、顆粒状、粒状、構造体等の所望の形状にすれば良い。上記形状は、製造工程におけるゲルの形成条件や必要に応じて実施される粉砕操作等によって達成することができる。
【0040】
(細孔のキャラクタリゼーション)
マクロ細孔は、水銀圧入法測定により平均細孔径が確認できる。また、電子顕微鏡により、直接観察することができる。またナノ細孔の平均細孔径は窒素吸着法により確認することができる。
【0041】
更に、二元細孔酸化物にガス流体を通過させたときに発生する圧力損失が、その特性が直管と同等であることが確認されれば、マクロ細孔は閉鎖孔ではなく貫通孔であることが確認できる。
【0042】
本発明によれば、非水溶性ポリマーを可溶化処理することで、これまで使用できなかった非水溶性ポリマーを使用して、スピノーダル分解を利用した二元細孔酸化物の製造が可能となる。即ち、使用可能なポリマーの選択幅を拡大することができ、所望のポリマー原料から二元細孔を有する酸化物を製造することが可能となる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0044】
(非水溶性ポリマーの可溶化処理後の水溶性を示す官能基割合の算出方法)
非水溶性ポリマーを可溶化処理した後の試料をジメチルスルホキシドに溶解させ、1H−NMR測定(Bruker製、商品名:AVIII500)のピークの積分値から算出した。後述する実施例1を具体的に説明すると、主鎖のメチル基のH+のピーク強度に対し、エステルの末端のメチル基を示すピーク強度の変化から水溶性を示す官能基の割合を出した。
【0045】
(ナノ細孔の平均細孔径の測定)
予め120℃、12時間乾燥させた測定用試料を、窒素吸着法(Quantachrome製、商品名:AUTOSORB−1MP)によりナノ細孔の平均細孔径を測定した。−196℃で窒素の吸着−脱離等温線を測定し、吸着等温線(脱離側)を用いて細孔径分布を求めた。吸着等温線からナノ細孔の平均細孔径を算出した。
【0046】
(マクロ細孔の細孔径の測定)
予め120℃、12時間乾燥させた測定用試料を、細孔径分布測定装置(Quantachrome製、商品名:POREMASTER33P)を用いて、水銀圧入法によりマクロ細孔の細孔径を測定した。測定で得られた細孔径分布において、マイクロメートル領域に現れる最大ピークの細孔径をマクロ細孔の平均細孔径とした。
【0047】
〔実施例1〕
・非水溶性ポリマーの可溶化処理
重量平均分子量が6万である非水溶性ポリマーのポリメタクリル酸メチル(PMMA)5g(三菱レイヨン製)と98質量%硫酸30ml(和光純薬製 特級)を混合し、PMMAが溶解した後、水を1g加えて1週間静置した。得られた硫酸溶液に水を加え、沈殿物と硫酸溶液を濾別した。得られた沈殿物を50℃で乾燥させ、その後、乾燥後の試料の含有量が20質量%となるようにエタノール(和光純薬製 特級)に溶解させ、ポリマー20質量%エタノール溶液を調製した。
【0048】
上記非水溶性ポリマーの可溶化処理で得られた沈殿物に関して、導入された水溶性を示す官能基とポリマー構造中の非水溶性を示す官能基の割合は90%であった。このときの水溶性を示す官能基はカルボキシル基であり、非水溶性を示す官能基はメチルエステル基である。この割合は上記に示した方法(非水溶性ポリマーの可溶化処理後の水溶性を示す官能基割合の算出方法)により算出した。
【0049】
なお、上記割合(90%)は、表1には「加水分解度」と表記される。表1における「添加元素(有/無)」は、例えば実施例2における硝酸ジルコニルを意味し、実施例1においては添加元素は無い。表1における「添加元素(モル%)」はシリカ原料に対する添加元素のモル比(%)である。
【0050】
・ゾル液調製、ゲル化、乾燥
TEOS4.0g(信越化学製)と尿素0.5g(和光純薬製 特級)を水2.5gに溶解させた後、60質量%濃硝酸0.25g(和光純薬製 特級)を加え混合した。得られた混合液に上記の可溶化処理を施したポリマーを含む20質量%エタノール溶液を1.8g加え、室温下で攪拌して均一溶液とし、このゾル液を密閉容器にて50℃で静置し24時間ゲル化させた。ゲル化した試料をオートクレーブに入れ80℃で三日間熟成させた後、50℃で乾燥させ、二元細孔酸化物を得た。
【0051】
この二元細孔酸化物には、平均細孔径0.5μmの揃ったマクロ細孔が連続貫通孔で存在していることを電子顕微鏡(
図1)及び水銀圧入法(
図2)により確認した。また、窒素吸着法によりナノ細孔の平均細孔径が8nmであることを確認した。
【0052】
〔実施例2〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.10g(和光純薬製 特級)添加し、ゲル化した試料をオートクレーブに入れ90℃で三日間熟成させた点以外は、実施例1と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径0.7μmのマクロ細孔(
図2参照)及び平均細孔径が5nmのナノ細孔を有することを確認した。表1に調製条件、
図3に電子顕微鏡写真を示す。
【0053】
〔実施例3〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.25g添加した点以外は、実施例2と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径5μmのマクロ細孔及び平均細孔径が2nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
図4に電子顕微鏡写真を示す。
【0054】
〔実施例4〕
・非水溶性ポリマーの可溶化処理
重量平均分子量が6万である非水溶性ポリマーのポリメタクリル酸メチル(PMMA)5gと98質量%硫酸30mlを混合し、PMMAが溶解した後、水を1g加えて二日間静置した。得られた硫酸溶液に大量の水を加え、沈殿物と硫酸溶液を濾別した。得られた沈殿物を50℃で乾燥させ、その後、乾燥後の試料の含有量が20質量%となるようにエタノールに溶解させ、可溶化処理したポリマーを含む20質量%エタノール溶液を調製した。
【0055】
上記非水溶性ポリマーの可溶化処理で得られた沈殿物に関して、導入された水溶性を示す官能基とポリマー構造中の非水溶性を示す官能基の割合は65%であった。このときの水溶性を示す官能基はカルボキシル基であり、非水溶性を示す官能基はメチルエステル基である。
【0056】
・ゾル液調製、ゲル化、乾燥
TEOS4.0gと尿素0.5gを水2.5gに溶解させた後、濃硝酸0.25gを加え混合した。次いでこの混合液に上記の可溶化処理を施したポリマーを含む20質量%エタノール溶液を1.8g加え、室温下で攪拌して均一溶液とし、このゾル液を密閉容器にて50℃で静置し24時間ゲル化させた。ゲル化した試料をオートクレーブに入れ90℃で三日間熟成させた後、50℃で乾燥させ、二元細孔酸化物を得た。この二元細孔酸化物は平均細孔径0.5μmのマクロ細孔及び平均細孔径が8nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0057】
〔実施例5〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.10g添加した点以外は、実施例4と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径1μmのマクロ細孔及び平均細孔径が5nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0058】
〔実施例6〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.25g添加した点以外は、実施例4と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径5μmのマクロ細孔及び平均細孔径が2nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0059】
〔実施例7〕
・非水溶性ポリマーの可溶化処理
重量平均分子量が6万である非水溶性ポリマーのポリメタクリル酸メチル(PMMA)5gと98質量%硫酸30mlを混合し、PMMAが溶解した後、水を1g加えて三日間静置した。得られた硫酸溶液に大量の水を加え、沈殿物と硫酸溶液を濾別した。得られた沈殿物を50℃で乾燥させ、その後、乾燥後の試料の含有量が20質量%となるようにエタノールに溶解させ、可溶化処理したポリマーを含む20質量%エタノール溶液を調製した。
【0060】
上記非水溶性ポリマーの可溶化処理で得られた沈殿物に関して、導入された水溶性を示す官能基と該ポリマー構造中の非水溶性を示す官能基の割合は75%であった。このときの水溶性を示す官能基はカルボキシル基であり、非水溶性を示す官能基はメチルエステル基である。
【0061】
・ゾル液調製、ゲル化、乾燥
TEOS4.0gと尿素0.5gを水2.5gに溶解させた後、濃硝酸0.25gを加え混合した。次いでこの混合液に上記の可溶化処理を施したポリマーを含む20質量%エタノール溶液を1.8g加え、室温下で攪拌して均一溶液とし、このゾル液を密閉容器にて50℃で静置し24時間ゲル化させた。ゲル化した試料をオートクレーブに入れ90℃で三日間熟成させた後、50℃で乾燥させ、二元細孔酸化物を得た。この二元細孔酸化物は平均細孔径0.5μmのマクロ細孔及び平均細孔径が8nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0062】
〔実施例8〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.10g添加した点以外は、実施例7と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径1μmのマクロ細孔及び平均細孔径が5nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0063】
〔実施例9〕
ゾル液を調製する際、濃硝酸を添加する直前に硝酸ジルコニルを0.25g添加した点以外は、実施例7と同様にして調製を行った。この二元細孔酸化物は平均細孔径5μmのマクロ細孔及び平均細孔径が2nmのナノ細孔を有することを確認した。調製条件を表1に示す。
【0064】
〔実施例10〕
・非水溶性ポリマーの可溶化処理
重量平均分子量48万の非水溶性ポリマーのポリメタクリル酸メチル(PMMA)5g(三菱レイヨン製)と98質量%硫酸30mlを混合し、PMMAが溶解した後、水を1g加えて一週間静置した。得られた硫酸溶液に大量の水を加え、沈殿物と硫酸溶液を濾別した。得られた沈殿物を50℃で乾燥させ、その後、乾燥後の試料の含有量が10質量%となるようにエタノールに溶解させ、可溶化処理したポリマーを含む10質量%エタノール溶液を調製した。
【0065】
上記非水溶性ポリマーの可溶化処理で得られた沈殿物に関して、導入された水溶性を示す官能基(カルボキシル基)とポリマー構造中の非水溶性を示す官能基(メチルエステル基)の割合は90%であった。
【0066】
・ゾル液調製、ゲル化、乾燥
TEOS6.0gと水4.0gに溶解させた後、濃硝酸0.1gを加え混合した。次いでこの混合液に上記の可溶化処理を施した10質量%エタノール溶液を3.0g加え、室温下で攪拌して均一溶液とし、このゾル液を密閉容器にて50℃で静置し24時間ゲル化させた。ゲル化した試料を50℃で乾燥させ、二元細孔酸化物を得た。
【0067】
この二元細孔酸化物には、平均細孔径0.5μmの揃ったマクロ細孔が連続貫通孔で存在していることを電子顕微鏡(
図5)により確認した。また、窒素吸着法によりナノ細孔の平均細孔径が10nmであることを確認した。
【0068】
〔比較例1〕
「可溶化処理を施したポリマーを含む20質量%エタノール溶液」に替えて、エタノールにPMMAを混合した混合液(混合液中のPMMA含有量は20質量%)を用いること以外は、実施例1と同様にして二元細孔酸化物を作成しようとした。
【0069】
PMMAをエタノールと混合した際に均一な非水溶性ポリマー含有溶液を調製することができず、目的の二元細孔酸化物は得られなかった。
【0070】
表1において、実施例1から10に関しては所望の二元細孔酸化物を得ることができた。一方、比較例1は非水溶性ポリマーに可溶化処理を施さない場合の例であり、本比較例では均一な混合液を調製することができず、目的の二元細孔酸化物は得られなかった。
【0071】
【表1】