特許第6776486号(P6776486)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社トクヤマの特許一覧

特許6776486搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法
<>
  • 特許6776486-搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法 図000002
  • 特許6776486-搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法 図000003
  • 特許6776486-搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法 図000004
  • 特許6776486-搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法 図000005
  • 特許6776486-搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法 図000006
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6776486
(24)【登録日】2020年10月9日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 33/035 20060101AFI20201019BHJP
【FI】
   C01B33/035
【請求項の数】8
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2020-544882(P2020-544882)
(86)(22)【出願日】2020年4月15日
(86)【国際出願番号】JP2020016505
【審査請求日】2020年8月25日
(31)【優先権主張番号】特願2019-95158(P2019-95158)
(32)【優先日】2019年5月21日
(33)【優先権主張国】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003182
【氏名又は名称】株式会社トクヤマ
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】阪井 純也
(72)【発明者】
【氏名】川口 一博
【審査官】 森坂 英昭
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2013/114858(WO,A1)
【文献】 特開2013−043734(JP,A)
【文献】 中国実用新案第202764059(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 33/00 − 33/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために吊り上げられ、前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する支持部と、
前記支持部と接続され、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在し、かつ、前記支持部を吊り上げるための第1紐と、
前記第1紐に接続され、前記シリコンロッドに対して巻き付くことにより前記シリコンロッドを保持する第2紐と、を備えることを特徴とする搬出治具。
【請求項2】
搬出される前記シリコンロッドは、2か所の前記直胴部が上部で結合したU字形状を有し、
前記支持部には、前記シリコンロッドにおけるU字形状の2つの前記先端部が前記支持部によって挟み込まれた状態となることにより、2つの前記先端部のそれぞれが嵌合する2つの開口部が形成され、
前記2つの開口部は、それぞれ、2つの前記先端部が並ぶ方向と同一の方向を長手方向とする形状を有することを特徴とする請求項1に記載の搬出治具。
【請求項3】
前記開口部は、前記支持部における前記シリコンロッドを支持する側の第1表面から前記第1表面とは反対側の第2表面に向かうにつれて先細りする形状となる部分を少なくとも有するように、前記支持部に形成されることを特徴とする請求項2に記載の搬出治具。
【請求項4】
前記支持部は、前記先端部を挟み込む2枚の板部から構成され、
前記2枚の板部の間の距離を固定する固定部材をさらに備えることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の搬出治具。
【請求項5】
前記シリコンロッドよりも上側に配置され、複数の前記第1紐が前記直胴部の長軸方向に対してそれぞれ平行になるように、前記複数の第1紐が接続された第1紐接続部をさらに備えることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の搬出治具。
【請求項6】
前記第2紐が複数存在し、少なくとも1つの前記第2紐が保護部材を介して前記シリコンロッドを保持する請求項1から5のいずれか1項に記載の搬出治具。
【請求項7】
直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、
前記支持部を吊り上げる工程と、
前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、
前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含むことを特徴とする搬出方法。
【請求項8】
少なくとも1対の電極が設けられ、シリコン析出用の原料ガスが供給された反応器内において、両端が前記電極に接続されているシリコン芯線に通電することにより、前記シリコン芯線にシリコンを析出させて、直胴部を有するシリコンロッドを取得する工程と、
前記反応器から前記シリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、
前記支持部を吊り上げる工程と、
前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、
前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含むことを特徴とするシリコンロッドの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬出治具、搬出方法及びシリコンロッドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコンロッドを反応器の外部に搬出するための搬出治具が従来技術として知られている。例えば、特許文献1には、シリコンロッドを内部に収容するための筒状部材と、筒状部材内に設けられ、シリコンロッドの側面を押圧することにより筒状部材内にシリコンロッドをホールドするエアバッグと、を備える搬出治具が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】日本国公開特許公報「特開2013−159504号公報(2013年8月19日公開)」
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示されている搬出治具では、筒状部材及びエアバッグによるシリコンロッドへの接触が多くなる。このため、シリコンロッドを反応器の外部に搬出するとき、筒状部材が揺れることによってシリコンロッドが損傷する虞があるという問題がある。また、シリコンロッドへの接触が多くなると、多結晶シリコンロッドが汚染されるという問題もある。本発明の一態様は、シリコンロッドへの接触を十分に少なくし、シリコンロッドの損傷を低減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記の課題を解決するために、本発明の一態様に係る搬出治具は、直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために吊り上げられ、前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する支持部と、前記支持部と接続され、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在し、かつ、前記支持部を吊り上げるための第1紐と、前記第1紐に接続され、前記シリコンロッドに対して巻き付くことにより前記シリコンロッドを保持する第2紐と、を備える。
【0006】
本発明の一態様に係る搬出方法は、直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、前記支持部を吊り上げる工程と、前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含む。
【0007】
本発明の一態様に係るシリコンロッドの製造方法は、少なくとも1対の電極が設けられ、シリコン析出用の原料ガスが供給された反応器内において、両端が前記電極に接続されているシリコン芯線に通電することにより、前記シリコン芯線にシリコンを析出させて、直胴部を有するシリコンロッドを取得する工程と、前記反応器から前記シリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、前記支持部を吊り上げる工程と、前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様によれば、シリコンロッドへの接触を十分に少なくすることができ、シリコンロッドの損傷を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の実施形態1に係る搬出治具の構成を示す図である。
図2図1に示す搬出治具が備える支持部の詳細な構成を示す図である。
図3図1に示す搬出治具において、第2紐が保護部材を介してシリコンロッドを保持する様子を示す図である。
図4】本発明の実施形態2に係る搬出治具の構成を示す図である。
図5図4に示す搬出治具とは別の搬出治具の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔実施形態1〕
(搬出治具1の構成)
搬出治具1の構成、シリコンロッド10の搬出方法及びシリコンロッド10の製造方法について、図1及び図2に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る搬出治具1の構成を示す図である。図2は、図1に示す搬出治具1が備える支持部20の詳細な構成を示す図である。なお、反応器90は、シリコンロッド10が配置される底部と、前記底部に対して着脱可能な蓋部と、から構成されているが、図1は、反応器90の底部を示し、反応器90の蓋部を省略している。図3から図5は、反応器90を省略している。
【0011】
また、図1においては、シリコンロッド10の直胴部11が並ぶ方向をX方向、支持部20の2枚の板部21,22が並ぶ方向をY方向、支持部20からシリコンロッド10に向かう方向をZ方向とする。Z方向を上方向とする。X方向、Y方向及びZ方向は、互いに垂直となっている。図2から図5に示すX方向、Y方向及びZ方向は、それぞれ、図1に示すX方向、Y方向及びZ方向と同様の方向である。
【0012】
搬出治具1は、反応器90からシリコンロッド10を搬出するときに用いられるものである。搬出治具1は、図1に示すように、支持部20と、第1紐30と、第2紐40と、固定部材50と、第1紐接続部60と、第3紐70と、を備えている。反応器90から搬出されるシリコンロッド10は、2か所の直胴部11が上部で結合したU字形状を有する。具体的には、2か所の直胴部11の上端は、橋架け部12を介して互いに結合している。
【0013】
反応器90には、少なくとも1対の電極80が設けられている。反応器90の底部に反応器90の蓋部が装着された状態で、反応器90内には、シリコン析出用の原料ガスが供給される。この場合において、両端が電極80に接続されているシリコン芯線14に通電することにより、シリコン芯線14にシリコンを析出させて、直胴部11及び橋架け部12を有するシリコンロッド10を取得する(シリコンロッドを取得する工程)。
【0014】
反応器90内に供給されるシリコン析出用の原料ガスとしては、例えば、トリクロロシランやモノシラン等のシラン化合物のガスが使用される。シリコン芯線14の前記両端は、カーボン製の芯線保持部材13から構成されている。本発明は、シリコン芯線14に析出されるシリコンが多結晶シリコンである場合に適用範囲が限定されるものではなく、シリコン芯線14に析出されるシリコンが単結晶シリコンである場合にも適用されるものである。
【0015】
(支持部20の構成)
支持部20は、シリコンロッド10を搬出するために吊り上げられ、シリコンロッド10の先端部15を挟み込むことによりシリコンロッド10を支持する(シリコンロッドを支持する工程)。支持部20は、シリコンロッド10を支持するために用いられる。支持部20は、例えば、樹脂製である。当該樹脂は、特に制限されるものではないが、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリオレフィン樹脂等が使用できる。図2において、点線L1で囲まれた図は、支持部20の平面図であり、点線L2で囲まれた図は、支持部20の正面図である。
【0016】
支持部20には、図2のうち点線L1で囲まれた図に示すように、シリコンロッド10におけるU字形状の2つの先端部15が支持部20によって挟み込まれた状態となることにより、2つの先端部15のそれぞれが嵌合する2つの開口部23が形成される。2つの開口部23は、それぞれ、2つの先端部15が並ぶ方向と同一の方向(X方向)を長手方向とする形状を有する。
【0017】
前記構成によれば、2つの先端部15の間の距離が異なる様々なシリコンロッド10において、シリコンロッド10の2つの先端部15を、それぞれ、2つの開口部23に容易に嵌合させることができる。よって、2つの開口部23の間の距離が異なる複数の搬出治具を用意する必要がなく、シリコンロッド10の搬出の作業性を向上させることができる。なお、2つの開口部23の大きさは、それぞれ、2つの先端部15の間の距離が異なる様々なシリコンロッド10に対応できるように、2つの先端部15の間の距離を許容する程度の大きさであればよい。
【0018】
支持部20は、2つの先端部15を挟み込む2枚の板部21,22から構成される。2枚の板部21,22が2つの先端部15を挟み込んだ状態で、2枚の板部21,22の一端側に対してX方向から固定部材50を嵌め込み、2枚の板部21,22の他端側に対してX方向とは反対方向から別の固定部材50を嵌め込む。
【0019】
これにより、2つの固定部材50は、2枚の板部21,22に対して外側から囲むように配置され、2枚の板部21,22の間の距離を固定する。前記構成によれば、固定部材50によって2枚の板部21,22の間の距離が固定されるため、シリコンロッド10を支持部20に固定することができる。
【0020】
また、固定部材50によって2枚の板部21,22の間の距離が固定されることにより、板部21に形成された凹部と板部22に形成された凹部とが対向するように配置される。これらの凹部によって開口部23が形成される。2枚の板部21,22には、それぞれ、第1紐30を通すための2つの穴26が形成されている。つまり、支持部20には、4つの穴26が形成されている。
【0021】
開口部23は、図2のうち点線L1で囲まれた図に示すように、Z方向とは反対方向から見て、線SLで示す部分に対応する直線と、線SCで示す部分に対応する半円と、から形成されている。つまり、2つの開口部23は、それぞれ、2つの直線と、2つの半円と、から形成されている。なお、2つの開口部23は、X方向を長手方向とする楕円から形成されていてもよい。シリコンロッド10を吊り上げる際、シリコンロッド10に対してZ方向の力を加える箇所を2つの先端部15とする。
【0022】
2つの開口部23は、それぞれ、支持部20におけるシリコンロッド10を支持する側の第1表面24から第1表面24とは反対側の第2表面25に向かうにつれて先細りする形状となる部分を少なくとも有するように、支持部20に形成される。例えば、2つの開口部23は、第1表面24から第2表面25に向かうにつれて先細りする形状となる部分として、傾斜面231を有する。図2のうち点線L2で囲まれた図では、開口部23は、傾斜面231のみで形成されているが、開口部23の一部が、第1表面24から第2表面25に向かうにつれて先細りする形状で形成されてもよい。
【0023】
前記構成において、シリコンロッド10の2つの先端部15は、曲面となっているため、支持部20にシリコンロッド10を嵌合させ易くなる。よって、支持部20に対してシリコンロッド10を強固に支持させることができる。また、例えば、支持部20が樹脂製である場合、先細りする形状の傾斜部分が形成されることにより、シリコンロッド10と支持部20とが接触する部分を低減することができる。このため、支持部20が削れる量等を低減することができる。その結果、シリコンへの不純物の混入を抑制することができる。
【0024】
搬出されるシリコンロッド10について直胴部11の直径が小さい程、第2表面25に対する傾斜面231の傾斜角度θが大きい支持部20を準備してもよい。これにより、支持部20に対してシリコンロッド10をより強固に支持させることができる。なお、開口部23は、第1表面24から第2表面25に向かうにつれて先細りする形状となる部分として、傾斜面231に代えて曲面を有してもよい。
【0025】
(第1紐30の構成)
第1紐30は、支持部20を吊り上げるためのものである。第1紐30は、支持部20及び第1紐接続部60と接続されており、シリコンロッド10の本数と少なくとも同じ本数以上存在する。例えば、搬出されるシリコンロッド10の本数が1本である場合、第1紐30は1本以上存在する。特に、シリコンロッド10を構成する直胴部11の数以上の第1紐30が存在することが好ましい。例えば、直胴部を2箇所有するU字型のシリコンロッドの場合、第1紐は、少なくとも1本以上存在する必要があり、2本以上存在することが好ましい。
【0026】
第1紐30の本数の上限値は、作業の効率、作業の安定性及び接触部分の低減という観点から、当該直胴部11の数の4倍であることが好ましく、当該直胴部11の2倍であることがより好ましく、当該直胴部11と同じ数であることがさらに好ましい。
【0027】
第1紐30、第2紐40及び第3紐70は、それぞれ、樹脂製であることが好ましい。当該樹脂は、特に制限されるものではないが、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂、及びポリオレフィン樹脂等が使用できる。
【0028】
図1の場合、搬出されるシリコンロッド10の本数は1本であり、当該シリコンロッド10を構成する直胴部11は2箇所存在し、第1紐30の本数は2本である。シリコンロッド10を反応器90から搬出する際には、第1紐30を支持部20に接続する(第1紐を支持部に接続する工程)。第1紐30は、シリコンロッド10の直胴部11が並ぶ方向において、シリコンロッド10より外側に配置されている。また、第1紐30は、Z方向と平行な方向に延伸する。
【0029】
ここで、第1紐接続部60には、第1穴、第2穴、第3穴及び第4穴(いずれも図示せず)の4つの穴が形成されているものとする。一方の第1紐30について、その第1端は、前記第1穴に通されるとともに、第1紐30のうち支持部20と第1紐接続部60との間の部分に結び付けられて接続される。これにより、第1紐30の前記第1端は、第1紐接続部60に接続される。
【0030】
また、第1紐30における前記第1端とは反対側の第2端は、板部21に形成された1つの穴26に通され、板部22に形成された1つの穴26に通される。前記第2端は、前記第2穴に通され、第1紐30のうち支持部20と第1紐接続部60との間の部分に結び付けられて接続される。これにより、第1紐30は、支持部20及び第1紐接続部60に接続される。
【0031】
他方の第1紐30も、一方の第1紐30と同様に、前記第3穴及び前記第4穴に通されるとともに、板部21に形成された1つの穴26及び板部22に形成された1つの穴26に通されることにより、支持部20及び第1紐接続部60に接続される。よって、シリコンロッド10の本数が1本(直胴部11は2箇所)であり、第1紐30が2本存在している場合、2本の第1紐30は、前記のように、支持部20及び第1紐接続部60に接続される。
【0032】
その他の例として、図5に示すように、シリコンロッド10の本数が1本であり、当該シリコンロッド10を構成する直胴部11は2箇所存在し、第1紐30が4本存在している場合を考える。ここで、第1紐30と第1紐接続部60との接続は、前記で説明した接続と同様であるものとする。この場合、4本の第1紐30のそれぞれについて、その第1端は、第1紐接続部60に接続される。また、第1紐30における当該第1端とは反対側の第2端は、板部21,22のいずれかの穴26に通されるとともに、第1紐30のうち支持部20と第1紐接続部60との間の部分に接続されてもよい。これにより、4本の第1紐30は、前記のように、支持部20及び第1紐接続部60に接続される。
【0033】
第1紐30が支持部20及び第1紐接続部60に接続される形態は、前記に説明した形態には限定されない。つまり、第1紐30の本数、第1紐30と支持部20との接続方法や第1紐30と第1紐接続部60との接続方法は、シリコンロッド10の搬出を行うことが可能であれば、適宜変更してもよい。第3紐70が第1紐接続部60に接続される形態でも同様である。
【0034】
さらに、反応器90内でシリコンロッド10が析出中であるときに、シリコンロッド10の橋架け部12が割れた場合を考える。この場合、シリコンロッドは、直胴部11から構成されるI字形状を有する。つまり、シリコンロッドの本数は1本であり、直胴部も1箇所となる。このとき、搬出治具1において、第1紐30は、1本存在していればよく、搬出治具1を用いてI字形状を有する1本のシリコンロッドを搬出することができる。
【0035】
(第2紐40の構成)
第2紐40は、第1紐30に接続され、シリコンロッド10に対して巻き付くことによりシリコンロッド10を保持する。第2紐40は、複数存在していてもよく、第1紐30に結び付けられて接続され、シリコンロッド10の直胴部11を取り囲んで巻き付いている。シリコンロッド10を反応器90から搬出する際には、第2紐40をシリコンロッド10に巻き付けることによりシリコンロッド10を保持する(シリコンロッドを保持する工程)。
【0036】
(第1紐接続部60の構成)
第1紐接続部60は、シリコンロッド10よりも上側に配置され、複数の第1紐30が直胴部11の長軸方向に対してそれぞれ平行になるように、複数の第1紐30が接続されている。換言すると、第1紐接続部60は、シリコンロッド10に対してZ方向側に配置される。また、複数の第1紐30は、第1紐接続部60に接続されることにより、直胴部11の長軸方向であるZ方向に対してそれぞれ平行になる。
【0037】
前記構成によれば、搬出治具1が第1紐接続部60を備えることにより、シリコンロッド10を安定して運搬することができる。また、第2紐40等を結びやすくなるため、作業がし易くなる。具体的には、シリコンロッド10をクレーン(図示せず)で吊った状態で移動させることが考えられるため、搬出治具1が第1紐接続部60を備えることにより、シリコンロッド10を安定して運搬することができる。また、搬出治具1が第1紐接続部60を備えることにより、第1紐30や第2紐40同士が絡むことを防止することもできる。その結果、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。
【0038】
第1紐接続部60には、第3紐70が接続されている。シリコンロッド10を反応器90から搬出する際に、シリコンロッド10が支持部20によって支持された状態で、第3紐70をクレーンで吊り上げることにより支持部20を吊り上げる(支持部を吊り上げる工程)。なお、搬出治具1は、第3紐70を備えていなくてもよい。この場合、第1紐30は、第1紐接続部60に接続されるとともに、第1紐接続部60より上側において、第1紐30をクレーンで吊り上げることにより支持部20を吊り上げる。
【0039】
第2紐の本数は、シリコンロッド10の大きさに応じて、適宜最適な数を決定すればよい。中でも、作業の効率、作業の安定性及び接触部分の低減という観点から、第2紐の本数は、第1紐の本数以上、第1紐の本数の10倍以下であることが好ましく、第1紐の本数以上、第1紐の本数の5倍以下であることがより好ましい。
【0040】
以上により、シリコンロッド10が接触するものは、支持部20及び第2紐40であり、支持部20は、材料として用いられる部分が少ないシリコンロッド10の先端部15と接触する。このため、シリコンロッド10への接触を十分に少なくすることができる。また、第2紐40によってシリコンロッド10を保持することにより、支持部20を吊り上げるときのシリコンロッド10の揺れを低減することができる。よって、シリコンロッド10の損傷を低減することができる。また、シリコンロッド10の搬出作業を安全、かつ、短時間で行うことができる。
【0041】
(保護部材16の構成)
シリコンロッド10を反応器90から搬出する際、図3に示すように、シリコンロッド10を保護するための保護部材16を用いることが好ましい。つまり、第2紐40が複数存在し、少なくとも1つの第2紐40が保護部材16を介してシリコンロッド10を保持することが好ましい。図3は、図1に示す搬出治具1において、第2紐40が保護部材16を介してシリコンロッド10を保持する様子を示す図である。具体的に以下に説明する。
【0042】
シリコンロッド10と第2紐40との間に保護部材16を設けることにより、第2紐40に集中する力を分散させることができ、シリコンロッド10の割れを低減することができる。特に、他の第2紐40と比べて最も高い位置でシリコンロッド10を保持する第2紐40が、保護部材16を介してシリコンロッド10を保持することが好ましい。最も高い位置にある第2紐40の場所は、一番重さや力がかかる場所であり、この場所においては、保護部材16によってシリコンロッド10の割れを効果的に低減することができる。
【0043】
保護部材16は、布状のものであればよく、網目状であり、かつ、布状のものであってもよい。保護部材16の材質は、有機高分子材料(樹脂製)が好ましい。保護部材16が網目状のものであれば、保護部材16の材質が金属材料であっても、シリコンロッド10と保護部材16との接触部分を低減することができるため、保護部材16を使用することができる。
【0044】
保護部材16の材質が有機高分子材料(樹脂製)であれば、シリコンロッド10が保護部材16と接触しても、シリコンロッド10への金属不純物の付着が極めて少ない。当該有機高分子材料(樹脂製)としては、特に制限されるものではないが、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、メタアクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリカーボネート樹脂及びポリオレフィン樹脂等が使用できる。
【0045】
〔実施形態2〕
本発明の実施形態2について、図4及び図5に基づいて説明する。なお、説明の便宜上、実施形態1にて説明した部材と同じ機能を有する部材については、同じ符号を付記し、その説明を繰り返さない。図4は、本発明の実施形態2に係る搬出治具1Aの構成を示す図である。図5は、図4に示す搬出治具1Aとは別の搬出治具1Bの構成を示す図である。
【0046】
搬出治具1Aは、図4に示すように、搬出治具1と比べて、第1紐接続部60及び第3紐70を備えていない点と、第1紐30における他の部材との関係性と、が異なる。一方の第1紐30について、その第1端は、クレーン(図示せず)で吊り上げられる。当該第1端とは反対側の第2端は、板部21に形成された1つの穴26に通され、板部22に形成された1つの穴26に通されるとともに、前記第1端と接続される。これにより、第1紐30は、支持部20に接続される。
【0047】
他方の第1紐30も、一方の第1紐30と同様に、支持部20に接続され、クレーンで吊り上げられる。この場合、第1紐30と支持部20との接続箇所CN1は、シリコンロッド10の直胴部11が並ぶ方向において、シリコンロッド10より外側に配置されている。第1紐30におけるシリコンロッド10より上側の接続箇所CN2は、Z方向とは反対方向から見て、シリコンロッド10の中央位置MPと略一致する。
【0048】
よって、搬出治具1Aでは、図4に示すように、第1紐30の延伸方向は、Z方向と平行な方向にはならず、Z方向と平行な方向に対して傾斜する方向となる。つまり、シリコンロッド10の本数が1本であり、第1紐30が2本存在している場合、2本の第1紐30は、前記のように、支持部20に接続されるとともに、クレーンで吊り上げられる。
【0049】
一方、搬出治具1Bは、図5に示すように、搬出治具1と比べて、第1紐接続部60及び第3紐70を備えていない点と、第1紐30の本数と、支持部20が支持部20Bに変更されている点と、が異なる。支持部20Bは、支持部20と同様に、2枚の板部21B,22Bから構成される。
【0050】
2枚の板部21B,22Bには、それぞれ、第1紐30を通すための4つの穴26が形成されている。つまり、支持部20Bには、8つの穴26が形成されている。1本の第1紐30について、その第1端は、クレーン(図示せず)で吊り上げられる。当該第1端とは反対側の第2端は、板部21Bに形成された1つの穴26に通され、板部22Bに形成された1つの穴26に通されるとともに、前記第1端と接続される。これにより、第1紐30は、支持部20Bに接続される。
【0051】
他の3本の第1紐30も、前記1本の第1紐30と同様に、支持部20Bに接続され、クレーンで吊り上げられる。この場合、外側の2本の第1紐30は、シリコンロッド10の直胴部11が並ぶ方向において、シリコンロッド10より外側に配置されている。内側の2本の第1紐30は、シリコンロッド10の直胴部11が並ぶ方向において、シリコンロッド10より内側に配置されている。つまり、シリコンロッド10の本数が1本であり、第1紐30が4本存在している場合、4本の第1紐30は、前記のように、支持部20Bに接続されるとともに、クレーンで吊り上げられる。
【0052】
〔まとめ〕
本発明の一態様に係る搬出治具は、直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために吊り上げられ、前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する支持部と、前記支持部と接続され、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在し、かつ、前記支持部を吊り上げるための第1紐と、前記第1紐に接続され、前記シリコンロッドに対して巻き付くことにより前記シリコンロッドを保持する第2紐と、を備える。
【0053】
前記構成によれば、シリコンロッドが接触するものは、支持部及び第2紐であり、支持部は、材料として用いられる部分が少ないシリコンロッドの先端部と接触する。このため、シリコンロッドへの接触を十分に少なくすることができる。また、第2紐によってシリコンロッドを保持することにより、支持部を吊り上げるときのシリコンロッドの揺れを低減することができる。よって、シリコンロッドの損傷を低減することができる。
【0054】
搬出される前記シリコンロッドは、2か所の前記直胴部が上部で結合したU字形状を有し、前記支持部には、前記シリコンロッドにおけるU字形状の2つの前記先端部が前記支持部によって挟み込まれた状態となることにより、2つの前記先端部のそれぞれが嵌合する2つの開口部が形成され、前記2つの開口部は、それぞれ、2つの前記先端部が並ぶ方向と同一の方向を長手方向とする形状を有してもよい。
【0055】
前記構成によれば、2つの先端部の間の距離が異なる様々なシリコンロッドにおいて、シリコンロッドの2つの先端部を、それぞれ、2つの開口部に容易に嵌合させることができる。よって、2つの開口部の間の距離が異なる複数の搬出治具を用意する必要がなく、シリコンロッドの搬出の作業性を向上させることができる。
【0056】
前記開口部は、前記支持部における前記シリコンロッドを支持する側の第1表面から前記第1表面とは反対側の第2表面に向かうにつれて先細りする形状となる部分を少なくとも有するように、前記支持部に形成されてもよい。
【0057】
前記構成において、シリコンロッドの2つの先端部は、曲面となっているため、支持部にシリコンロッドを嵌合させ易くなる。よって、支持部に対してシリコンロッドを強固に支持させることができる。また、例えば、支持部が樹脂製である場合、先細りする形状の傾斜部分が形成されることにより、シリコンロッドと支持部とが接触する部分を低減することができる。このため、前記支持部が削れる量等を低減することができる。その結果、シリコンへの不純物の混入を抑制することができる。
【0058】
前記支持部は、前記先端部を挟み込む2枚の板部から構成され、前記搬出治具は、前記2枚の板部の間の距離を固定する固定部材をさらに備えてもよい。前記構成によれば、固定部材によって2枚の板部の間の距離が固定されるため、シリコンロッドを支持部に固定することができる。
【0059】
前記搬出治具は、前記シリコンロッドよりも上側に配置され、複数の前記第1紐が前記直胴部の長軸方向に対してそれぞれ平行になるように、前記複数の第1紐が接続された第1紐接続部をさらに備えてもよい。
【0060】
前記構成によれば、搬出治具が第1紐接続部を備えることにより、シリコンロッドを安定して運搬することができる。また、第2紐等を結びやすくなるため、作業がし易くなる。具体的には、シリコンロッドをクレーンで吊った状態で移動させることが考えられるため、搬出治具が第1紐接続部を備えることにより、シリコンロッドを安定して運搬することができる。また、搬出治具が第1紐接続部を備えることにより、第1紐や第2紐同士が絡むことを防止することもできる。その結果、作業効率を向上させ、作業時間を短縮することができる。
【0061】
前記第2紐が複数存在し、少なくとも1つの前記第2紐が保護部材を介して前記シリコンロッドを保持してもよい。
【0062】
前記構成によれば、シリコンロッドと第2紐との間に保護部材を設けることにより、第2紐に集中する力を分散させることができ、シリコンロッドの割れを低減することができる。特に、他の第2紐と比べて最も高い位置でシリコンロッドを保持する第2紐が、保護部材を介してシリコンロッドを保持することが好ましい。最も高い位置にある第2紐の場所は、一番重さや力がかかる場所であり、この場所においては、保護部材によってシリコンロッドの割れを効果的に低減することができる。
【0063】
保護部材は、布状のものであればよく、網目状であり、かつ、布状のものであってもよい。保護部材の材質は、有機高分子材料(樹脂製)が好ましい。保護部材が網目状のものであれば、保護部材の材質が金属材料であっても、シリコンロッドと保護部材との接触部分を低減することができるため、保護部材を使用することができる。保護部材の材質が有機高分子材料であれば、シリコンロッドが保護部材と接触しても、シリコンロッドへの金属不純物の付着が極めて少ない。
【0064】
本発明の一態様に係る搬出方法は、直胴部を有するシリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、前記支持部を吊り上げる工程と、前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含む。
【0065】
本発明の一態様に係るシリコンロッドの製造方法は、少なくとも1対の電極が設けられ、シリコン析出用の原料ガスが供給された反応器内において、両端が前記電極に接続されているシリコン芯線に通電することにより、前記シリコン芯線にシリコンを析出させて、直胴部を有するシリコンロッドを取得する工程と、前記反応器から前記シリコンロッドを搬出するために、前記シリコンロッドを支持するために用いられる支持部を吊り上げるためのものであり、前記シリコンロッドの本数と少なくとも同じ本数以上存在する第1紐を前記支持部に接続する工程と、前記支持部を吊り上げる工程と、前記支持部によって前記シリコンロッドの先端部を挟み込むことにより前記シリコンロッドを支持する工程と、前記第1紐に接続された第2紐を前記シリコンロッドに巻き付けることにより前記シリコンロッドを保持する工程と、を含む。
【0066】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0067】
1、1A、1B 搬出治具
10 シリコンロッド
11 直胴部
15 先端部
16 保護部材
20、20B 支持部
21、21B、22、22B 板部
23 開口部
24 第1表面
25 第2表面
30 第1紐
50 固定部材
60 第1紐接続部
80 電極
90 反応器
【要約】
搬出治具(1)は、シリコンロッド(10)を搬出するために吊り上げられ、シリコンロッド(10)の先端部(15)を挟み込むことによりシリコンロッド(10)を支持する支持部(20)と、シリコンロッド(10)の本数と少なくとも同じ本数以上存在し、かつ、支持部(20)を吊り上げるための第1紐(30)と、シリコンロッド(10)に対して巻き付くことによりシリコンロッド(10)を保持する第2紐(40)と、を備える。
図1
図2
図3
図4
図5