特許第6776492号(P6776492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776492欠陥を検出するための方法及び関連する装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776492
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】欠陥を検出するための方法及び関連する装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/956 20060101AFI20201019BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G01N21/956 A
   H01L21/66 J
【請求項の数】11
【外国語出願】
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-229308(P2016-229308)
(22)【出願日】2016年11月25日
(65)【公開番号】特開2017-129569(P2017-129569A)
(43)【公開日】2017年7月27日
【審査請求日】2019年8月27日
(31)【優先権主張番号】1562233
(32)【優先日】2015年12月11日
(33)【優先権主張国】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】598054968
【氏名又は名称】ソイテック
【氏名又は名称原語表記】Soitec
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】プファースドーフ オリヴィエ
【審査官】 小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−501944(JP,A)
【文献】 特開2003−98111(JP,A)
【文献】 特開平11−237226(JP,A)
【文献】 特開2013−117490(JP,A)
【文献】 特開平4−326743(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2013/0039471(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 − G01N 21/958
H01L 21/66
G01B 11/00 − G01B 11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置された最上層を含んでいる構造(4)の最上面のボイド型欠陥のサイズを決定するための方法であって、前記欠陥は前記最上層に位置し、前記方法は、
a)前記最上面によって散乱された光線(1”)から、欠陥に関係する第1の信号及び粗さに関係する第2の信号を発生させるために、反射型暗視野顕微装置の中に前記構造(4)を導入するステップと、
b)複数のピクセルを用いて、前記粗さに関係する第2の信号の強度を取り込むステップと、
を含む方法において、
c)各ピクセルによって取り込まれた前記強度を隣接するピクセルによって取り込まれた前記強度と比較し、前記ピクセルが異常ゾーンに含まれているかどうかを明らかにするための処理ステップと、
d)前記異常ゾーンの前記ピクセルによって取り込まれた前記強度値の前記標準偏差を求めるステップと、
e)前記求めた標準偏差から前記異常ゾーンに関係する前記ボイド型欠陥の前記サイズを決定するステップと、
をさらに含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記散乱された光線(1”)が、前記面に平行な平面(P)に対して斜めの方向の入射光線(1)の、前記構造(4)の前記最上面からの反射によって発生する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記構造が、前記取り込むステップb)を可能にするために、前記入射光線(1)の下で少なくとも1つの並進軸に沿って及び/又は少なくとも1つの回転軸の周りを動かされる、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
各ピクセルが、辺の長さで20ミクロン〜1000ミクロンの間の寸法であり得る、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記決定するステップが、前記標準偏差と前記ボイド型欠陥のサイズとを関係付ける相関曲線を適用することによって実行される、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記ボイド型欠陥のサイズが走査型電子顕微法によって構造(4)内で測定されて、前記相関曲線を確立する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記相関曲線は、サイズが5〜500ミクロンの間に含まれるボイド型欠陥に適用可能である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記処理するステップは、所与のピクセルによって取り込まれた前記強度と、少なくとも1つの隣接するピクセルによって取り込まれた前記強度との比が予め設定した係数よりも大きいときに、前記所与のピクセルが前記異常ゾーンに含まれていることを明らかにする、請求項1〜7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記所与のピクセルに隣接する前記ピクセルが、前記ピクセルに対して周辺にあり且つ環状の形状を有するゾーンに含まれる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記環状の形状が、600ミクロンの内径及び2500ミクロンの外径を有する、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
基板上に配置された最上層を含んでいる構造(4)の最上面のボイド型欠陥を検出するための装置であって、前記欠陥は前記最上層に位置し、前記装置は、
前記構造(4)の前記最上面の方向に入射光線(1)を投射するように、且つ前記最上面によって散乱された光線(1”)を集めるように構成された反射型暗視野顕微装置と、
前記散乱された光線(1”)から、欠陥に関係する第1の信号及び粗さに関係する第2の信号を発生させるように、且つ複数のピクセルを用いて、前記粗さに関係する第2の信号の強度を取り込むように構成された検出ユニット(6)と、
を備える装置において、
前記検出ユニットに接続され、各ピクセルによって取り込まれた前記強度を隣接するピクセルによって取り込まれた前記強度と比較するように、且つ前記ピクセルが異常ゾーンに含まれているかどうかを明らかにするように構成された第1の処理ユニット(8)と、
前記異常ゾーンの前記ピクセルによって取り込まれた前記強度の値の前記標準偏差を求めるように構成されている第2の処理ユニット(9)と、
前記求めた標準偏差から前記異常ゾーンに関係する前記ボイド型欠陥の前記サイズを決定するための相関曲線と、
を備えることを特徴とする、装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の表面に位置する欠陥の検査の分野に関する。特に、基板上に配置された薄層のボイド型欠陥を検出し、そのサイズを決定するための方法及び関連する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明による方法及び装置は、基板の表面上の目に見える欠陥を識別するための本技術分野でよく知られている技術を使用している。それは、反射型暗視野顕微法の問題であり、この顕微法の原理が、図1に例として模式的に示されている。
【0003】
この技術は、観察しようとする基板の表面に平行な平面Pに対して、例えば角度βで斜めに基板4の表面上に入射光線1を投射することからなる。先行技術の実施形態によれば、基板4の表面に垂直に光線1を投射することも可能である(垂直モードとも呼ばれる)。入射光線1は、例えば、入射光線が基板4の表面に集光されることを可能にする平面鏡及び/又は凹面鏡2、3を使用して、基板4の表面の方向にそのようにして導かれる。これゆえ、観察しようとする基板の表面が欠陥のない平面鏡であった場合には、入射光線1は、同じ角度βで基板4の表面によって完全に反射されるはずである(これは「β」反射光と呼ばれ、図1では参照番号1’により参照されている)。このように、このケースでは、入射光線1が散逸しないので、光は、端部に(光電子増倍管などの)検出ユニット6が設置されている集光用光路(collecting channel)5の方向には散乱されず、検出ユニット6は、基板4の表面によって散乱された(すなわち、「β」反射光1’の経路を外れて反射された)光線の光強度を検出する。このようなケースでは、検出装置は、一様な暗い画像を取り込むことになる。
【0004】
観察しようとする基板4の表面が欠陥を含むケースでは、基板4の表面を照明している入射光線1の一部が、集光用光路5の方向へ欠陥によって散乱される。したがって、検出ユニット6は、散乱された光線の光強度を取り込み、光強度がディジタルデータに変換され、次いで例えば、スクリーン7上に表示されるためにデータ処理手段へ伝送される。得られる画像は、基板4の表面に位置する欠陥が暗い背景上に明るく見える表現である。
【0005】
反射型暗視野照明は表面の調査のために特に推奨されることが思い出されるであろう。反射型暗視野顕微法は、直接伝送された光の量が最小にされること、及び基板4の表面に位置する欠陥によって散逸又は散乱された光だけが集められることを可能にする。したがって、これは、欠陥を表している画像のコントラストをかなり大きくすることを可能にし、一方で比較的少ない機器及び基板4の簡単な準備で済むようになる。しかしながら、この技術は、集められる光強度が弱いことに悩まされ、常に解像限界の影響を受ける。
【0006】
このタイプの技術の用途の重要な分野は、マイクロエレクトロニクスの分野である。具体的には、半導体産業では、反射型暗視野顕微法は、基板の表面を検査するために、特に様々な汚染源により発生された粒子を検出するために使用されている。絶えず進歩しているこの産業は、ますます高い製品品質レベルを必要としている。多くの計測機器において使用されている暗視野照明のおかげで、特にシリコン基板上の0.1ミクロンよりも小さいサイズの粒子を検出することが可能になっている。
【0007】
完全空乏型シリコンオンインシュレータ(FDSOI)構造が、構成部品の製造のための基板としてますます多く使用されている。表面粒子に加えて、他のタイプの欠陥が、SOI構造の有用な層を形成しているシリコン最上層にあることがあり、ボイド型欠陥、すなわち、上記の有用な最上層がないゾーンに対応する欠陥が、特に最上層に存在することがある。SOI構造の品質レベルを保証するために、サイズが500ミクロンよりも小さいこのタイプの欠陥を識別し分類することが可能であることが必須である(500ミクロンよりも大きいサイズの欠陥は、他の視覚的検査技術によって識別可能である)。さらにその上、要求される品質レベルが高くなり続けるので、250ミクロンの直径、又はそれどころか100ミクロンの直径よりも小さい欠陥の分類が、近い将来に必要になることさえあり得る。SOI構造に特有のこれらの欠陥は、粒子のものとは異なる散乱光線の点で識別特性を有している。
【0008】
文献米国特許出願公開第2004/0235206号は、ベア基板又は基板に堆積した膜積層体に適用される、試料検査のための装置及び方法を開示している。この方法は、(欠陥検出のための)対象の信号と雑音との間の確実な分離を可能にしている。それにも拘らず、この方法は、特定のボイド型欠陥のサイズの分類が可能ではない。
【0009】
一般的に言って、先行技術の解決手法は、ボイド型欠陥をサイズによって分類することが可能ではない。粒子を測定し計数することを目的とする多くの計測機器のおかげで得られる現在の測定値は、非常に不正確な分類結果をもたらし、以てSOI構造の品質レベルを特定するために、SOI構造がそのような「ボイド」欠陥のサイズによって信頼性高く仕分けられることを妨げている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の1つの目的は、先行技術の欠点を取り除いた検出する方法を提供することである。本発明の1つの目的は、特に、有用な最上層に位置しているボイド型欠陥が検出され、サイズによって分類されることを可能にする、SOI構造を検査するための方法及び装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、基板上に配置された最上層を含んでいる構造の最上面のボイド型欠陥のサイズを決定するための方法に関し、上記の欠陥が最上層に位置し、方法は、
a)最上面によって散乱された光線から、欠陥に関係する第1の信号及び粗さに関係する第2の信号を発生させるために、反射型暗視野顕微装置の中に構造を導入するステップと、
b)複数のピクセルを用いて、粗さに関係する第2の信号の強度を取り込むステップと
を含む。
【0012】
方法は、
c)各ピクセルによって取り込まれた強度を隣接するピクセルによって取り込まれた強度と比較し、上記のピクセルが異常ゾーンに含まれているかどうかを明らかにするための処理ステップと、
d)異常ゾーンのピクセルによって取り込まれた強度値の標準偏差を求めるステップと、
e)求めた標準偏差から異常ゾーンに関係するボイド型欠陥のサイズを決定するステップと
をさらに含むことが注目されるべきである。
【0013】
本発明による方法は、このように、異常ゾーンの特定の属性(上記の異常ゾーンに含まれているピクセルによって取り込まれた強度値の標準偏差)から、ボイド型欠陥のサイズが決定されることを可能にしている。
【0014】
本発明の有利な特徴によれば、この特徴は、単独でも又は組み合わせても実装されることが可能であり、
散乱された光線は、上記の面に平行な平面に対して斜めの方向の入射光線の、構造の最上面からの反射によって発生し、
構造は、取り込むステップb)を可能にするために、入射光線の下で少なくとも1つの並進軸に沿って及び/又は少なくとも1つの回転軸の周りを動かされ、
各ピクセルは、辺の長さで20ミクロン〜1000ミクロンの間の寸法であり得、
決定するステップは、標準偏差とボイド型欠陥のサイズとを関係付ける相関曲線を適用することによって実行される、
ボイド型欠陥のサイズが走査型電子顕微法によって構造内で測定されて、相関曲線を確立し、
相関曲線は、欠陥のサイズが5〜500ミクロンの間に含まれるボイド型欠陥に適用可能であり、
処理するステップは、所与のピクセルによって取り込まれた強度と、少なくとも1つの隣接するピクセルによって取り込まれた強度との比が予め設定した係数よりも大きいときに、その所与のピクセルが異常ゾーンに含まれていることを明らかにし、
所与のピクセルに隣接するピクセルは、上記のピクセルに対して周辺にあり且つ環状の形状を有するゾーンに含まれており、
環状の形状は、600ミクロンの内径及び2500ミクロンの外径を有している。
【0015】
本発明は、基板上に配置された最上層を含んでいる構造の最上面のボイド型欠陥を検出するための装置にもやはり関係し、上記の欠陥は最上層に位置し、装置は、
構造の最上面の方向に入射光線を投射するように、且つ最上面によって散乱された光線を集めるように構成された反射型暗視野顕微装置と、
散乱された光線から、欠陥に関係する第1の信号及び粗さに関係する第2の信号を発生させるように、且つ複数のピクセルを用いて、粗さに関係する第2の信号の強度を取り込むように構成された検出ユニットと
を備える。
【0016】
上記装置は、
検出ユニットに接続され、各ピクセルによって取り込まれた強度を隣接するピクセルによって取り込まれた強度と比較するように、且つ上記のピクセルが異常ゾーンに含まれているかどうかを明らかにするように構成された第1の処理ユニットと、
異常ゾーンのピクセルによって取り込まれた強度の値の標準偏差を求めるように構成されている第2の処理ユニットと、
求めた標準偏差から異常ゾーンに関係するボイド型欠陥のサイズを決定するための相関曲線と
を備えることが注目されるべきである。
【0017】
本発明の他の特徴及び利点は、添付した図を参照して与えられている次の発明の詳細な説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】知られている先行技術の反射型暗視野顕微装置の模式図である。
図2】本発明による欠陥を検出するための装置の模式図である。
図3】本発明による装置により、そして方法を使用して検出した欠陥の例の図である。
図4】本発明による装置により、そして方法を使用して検出した欠陥のもう1つの例の図である。
図5】欠陥サイズと、異常ゾーンに含まれているピクセルによって取り込まれた強度の値の標準偏差との間の相関曲線の図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
反射型暗視野顕微装置を使用する、知られている先行技術の欠陥検査技術は、特にSOI構造の最上層に存在するボイド型欠陥(より詳細には、直径で500μmよりも小さいボイド型欠陥)のサイズが正確に決定されることが可能ではない。SOI構造がキャリア基板上に配置された最上層を含み、検出されようとしている欠陥がこの最上層のボイドであることが、思い出されるであろう。
【0020】
非限定的に、本発明にしたがって欠陥を検出するため及び前述の問題点を軽減することを可能にするための装置及び方法の可能な実施形態が、それぞれ、図2図5を参照して次いで説明される。
【0021】
上に説明したように、反射型暗視野顕微法は、図2に図示されたような、観察しようとする構造4の最上面に平行な平面Pに対して所定の角度βで導かれる少なくとも1つの入射光線1を使用して構造4の最上面を照明することからなっている。角度βは、0〜90°の間に含まれている。実施形態によれば、入射光線1は、構造4の最上面を部分的に又は完全に走査するように構成されてもよい。構造4は、構造の最上面のすべて又は一部が検査されることを可能にするために、入射光線1の下で少なくとも1つの並進軸に沿って、及び/又は少なくとも1つの回転軸の周りを動かされることが有利である。光線1は、入射光線1が解析しようとする表面に方向付けられそして集光されることを可能にする、例えば、1つ又は複数の平面鏡及び/又は凹面鏡2、3の第1の系列を使用して最上面の方向に、上記のように導かれる。非限定的に、光線1は、例えば、レーザビームであってもよい。
【0022】
構造4の表面は、1つ又は複数の滑らかで欠陥のない平坦なゾーン及び少なくとも1つの欠陥(粒子、ボイド型欠陥、粗さ、等)を含んでいる1つ又は複数のゾーンを含むことができる。
【0023】
光線1が滑らかで平坦なゾーンに導かれるケースでは、光線は、平面Pに対する入射光線1の向きによって規定される角度と同じ角度βで完全に反射される。したがって、光線1は、その光路から散逸せずに、平面鏡及び/又は凹面鏡2、3の第2の系列を使用して装置から取り除かれる(反射光線1’)。
【0024】
光線1が少なくとも1つの欠陥を含んでいるゾーン又は粗いゾーンに当たるケースでは、光線1のうちの少なくとも一部は、集光用光路5の方向へ欠陥によって反射される(光線1”)。このような反射は、入射光線1が多くの方向に反射されるという理由で、本質的に拡散である。本明細書の残りでは、構造4の表面の中の/上の欠陥によって反射された光線は、散乱光線1”と呼ぶ。
【0025】
光電子増倍管などの検出ユニット6が、集光用光路5の端部に設置されており、そのユニットが、散乱光線1”の強度を検出する。非限定的に、観察用光路5は、本発明による検出装置の用途の必要条件に応じて、光電子増倍管6に向けて散乱光線1”を方向付ける、集光する、又はフィルタリングするための1つ又は複数の光学フィルタ及び/又はレンズを含むことができる。
【0026】
先行技術において知られている、光電子増倍管6のもう1つの機能は、取り込んだ散乱光線1”を、欠陥に関係する第1の信号と粗さに関係する第2の信号の2つの信号に分解することにある。第1の信号は、タイプA欠陥(すなわち、例えば、粒子又は基板の表面から突き出している他の欠陥)が検出されることを特に可能にする。粗さに関係する第2の信号は、タイプB欠陥(例えば、構造4の表面の粗さレベル、等)が検出されることを特に可能にし、通例「ヘイズ」信号と呼ばれている。欠陥に関係する第1の信号及び粗さに関係する第2の信号への散乱光線1”の強度の分解は、タイプA欠陥のサイズ及び/又は測定することが望まれている粗さレベル、(存在する場合は)使用する光学フィルタ、並びに構造4の最上層が作られる材料に応じて規定される感度しきい値に依存する。
【0027】
光電子増倍管6は、複数ピクセルのアレイ(図示せず)に関係付けられている。非限定的に、従来は正方形形状であるピクセルは、辺の長さで20μm〜1000μmの間の寸法であってもよい。本実施形態では、そして例として、各ピクセルは、200μm×200μmの寸法である。
【0028】
本発明によれば、これは、タイプA欠陥の第1の信号ではなく、対象のボイド型欠陥をさらに特徴付けるために使用される粗さに関係する第2の信号である。
【0029】
このように、(粗さに関係する)第2の信号の強度は、上記の強度の数値データ特性に変換するために、光電子増倍管6の各ピクセルによって取り込まれることがある。このように、複数のピクセルから、Bタイプ欠陥(粗さ又は「ヘイズ」)の画像を得ることが可能であり、Bタイプ欠陥の画像は、例えば、スクリーン上に上記の欠陥を表示するために、表示用装置7に直接伝送される。
【0030】
本発明による装置の光電子増倍管6は、粗さに関係する第2の信号を第1の処理ユニット8に伝送する。この第1のユニット8の役割は、上記のピクセルが異常ゾーンの一部を形成するかどうかを明らかにするために、各ピクセルによって取り込まれた第2の信号の強度を隣接するピクセルによって取り込まれた強度と比較することである。
【0031】
第1の処理ユニット8は、少なくとも1つの隣接するピクセルによって取り込まれた強度に対して所与のピクセルによって取り込まれた強度の比率が予め設定した係数よりも大きいときに、その所与のピクセルが異常ゾーンに含まれていることを明らかにする。所与のピクセルの隣接ピクセルは、その所与のピクセルを中心とする環状の形状を有する周辺のゾーン内に含まれるすべてのピクセルである。環状の形状の内径は、600ミクロンであり、外径は2500ミクロンであることが有利である。予め設定した係数は、例えば、1〜20の間で、有利には2〜10の間で変動してもよい。例として、係数は4に等しく、このケースでは異常ゾーンは、隣接するピクセルのうちの1つよりも4倍強い光強度を取り込んでいる少なくとも1つのピクセルを含んでいる。
【0032】
ボイド型欠陥が存在すると、取り込んだ粗さに関係する第2の信号の強度は、ピクセルごとに変わる。特に、このタイプの欠陥の境界は、最上層の表面と下にある基板の表面との間のステップ又は複数のステップレベルから構成されるので、この場所で散乱された光線に関係する第2の信号の強度は、最上層の平坦な隣接するゾーンにおいて散乱された光線に関係する第2の信号の強度よりも大きくなる。同様に、ボイド型欠陥の中央部分はボイド型欠陥の境界よりも深いので、この場所で散乱された光線に関係する第2の信号の強度は、境界の箇所の強度よりも大きくなる。異常ゾーンが画定されることを可能にするのは、隣接するピクセル間のこのような強度差である。
【0033】
図3及び図4は、構造4の最上面において識別された異常ゾーン20の説明図を示している。異常ゾーン20は、外形線20’の内側のすべての領域を含んでいる。
【0034】
各異常ゾーン20は、構造4の最上面に位置するボイド型欠陥の存在を示している。異常ゾーン20の面積を求めることもできるが、それにも拘わらず、この値は、欠陥の実際のサイズとの相関が悪く、このサイズは外形線21によって画定される。
【0035】
図3及び図4では、異常ゾーン20内で集められた各値は、1つのピクセルによって取り込まれた散乱光線1”の粗さに関係する第2の信号の強度の指標である。例として、異常ゾーン20の中央部分22のピクセルは、13ppmの(正規化)値を有し、欠陥の境界(図3に図示された外形線22と外形線21との間)は、強度の緩やかな減少(例えば、0.4〜5ppmの間の(正規化)値)を示し、欠陥の深さの変動を示している。欠陥の周辺の部分において、異常ゾーン20(図3に図示された外形線21の外側)では、(正規化)値は、0.4ppmよりも小さい。
【0036】
出願人は、多数の識別された異常ゾーン20から上記の値の標準偏差を求め、関係するボイド型欠陥の実際のサイズとの良好な相関を実証しており、さらにその上、上記の欠陥の実際のサイズは、信頼できる測定技術(例えば、走査型電子顕微法)によって測定されている。初めには明らかでなかったこの相関は、異常ゾーン20では、強度値が大きいピクセルの数が、ボイド型欠陥のサイズとともに増加するという事実のためである。このように、異常ゾーン内の強度値の分布の標準偏差は、ボイド型欠陥のサイズが大きくなるにつれて増大し、標準偏差は、分布の形状の幅を広くする傾向がある大きな値の数に影響される。
【0037】
図5は、散乱光線1”の第2の信号の強度値の標準偏差とボイド型欠陥のサイズとの間の相関曲線を示している。図3及び図4の異常ゾーン20において集められた(散乱光線の第2の信号の強度を表している)正規化した値の標準偏差(それぞれ、5.34ppm及び1.84ppm)を求めることにより、ボイド型欠陥のサイズ(それぞれ、1260ミクロン及び250ミクロン)を相関曲線から決定することが可能になった。
【0038】
図5の例では、200×200ミクロンのピクセルが使用されたが、相関限界が約50ミクロン以下の欠陥のサイズに対応するものであることに気付かれよう。より小さいピクセルサイズが使用された場合には(例えば、20ミクロン)、相関曲線は、おそらくは約5ミクロンの欠陥サイズまでの良好な相関を実証するはずである。また、標準偏差とボイド型欠陥のサイズとの間のより精細な相関も実証するはずである。
【0039】
本発明のボイド型欠陥を検出するための装置及びそのサイズを決定するための方法を使用して、約5μmよりも大きいサイズの欠陥について約±15%の精度のレベルでボイド型欠陥のサイズを明らかにすることが可能である。
【0040】
したがって、本発明による装置は、第1の処理ユニットに接続され、異常ゾーン20に含まれているピクセルによって取り込まれた強度値の標準偏差を求めることを可能にする第2の処理ユニット9を含むことが有利である。これらの値は、次いで、相関曲線又は相関表の適用により識別された異常ゾーン20に関係するボイド型欠陥の実際のサイズに相関付けられることがある。構造4の最上面に位置するボイド型欠陥に対応する異常ゾーン20の画像を表示するためのユニット7も含むことができ、欠陥は、例えば暗い背景上に明るく見える。
【0041】
本発明による装置は、(構造4において識別された各異常ゾーンの強度の標準偏差から決定される)ボイド型欠陥のサイズに基づいて、上記の構造4の品質レベルを確立する自動仕分け装置に接続されてもよいことが有利である。
【0042】
本発明による装置及び方法は、構造4の表面仕上げが検査されること、最上層のボイド型欠陥のサイズが決定されること、したがってこれらの欠陥のサイズに関する品質レベルが規定されることを可能にしている。
【0043】
本発明が、説明した実施形態に限定されず、変形実施形態が、特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲から乖離せずに実装され得ることは、当然のことである。
【符号の説明】
【0044】
1 入射光線
1’ 反射光線
1” 散乱光線
2 平面鏡
3 凹面鏡
4 構造
5 集光用光路
6 検出ユニット
7 表示するためのユニット
8 第1の処理ユニット
9 第2の処理ユニット
20 異常ゾーン
20’ 外形線
21 外形線
22 中央部分
P 平面
図1
図2
図3
図4
図5