(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1接触面と第2接触面とを有する伝熱部材を有する熱交換器を用いて、前記第1接触面に熱源流体を接触させると同時に、ダイヤモンドライクカーボンによるダイヤモンドライクカーボン層が形成された前記第2接触面にラテックスを接触させ、前記伝熱部材を介して熱交換させることにより前記ラテックスを加温し、
エバポレーターを用いて、加温した前記ラテックスを減圧し、前記ラテックスに含まれる溶媒成分を揮発させ、前記ラテックスを濃縮するラテックスの濃縮方法。
前記伝熱部材はプレート状であり、前記伝熱部材の一方の面に前記第1接触面が形成されており、前記伝熱部材の他方の面に前記第2接触面が形成されていることを特徴とする請求項4に記載のラテックス濃縮用熱交換器。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0017】
図6は、本発明の一実施形態に係るラテックスの製造工程及びラテックスを用いたゴム成形品の製造工程を表すフローチャートである。
図6に示すように、ラテックスは、ステップS001の重合工程、ステップS002の濃縮工程、ステップS003の調整工程を経て製造される。さらに、ステップS003で得られたラテックスを用いてステップS004のディップ成形工程、ステップS005の加熱工程、ステップS006の脱型工程を経ることにより、ゴム成形品が製造される。
【0018】
図6のステップS001に示す重合工程では、原料となる単量体を乳化重合し、重合体を含む合成ゴムラテックスを得る。ステップS001で得られる合成ゴムラテックスとしては、例えば共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体、エチレン性不飽和酸単量体と、必要に応じて添加されるこれらと共重合可能な他のエチレン性不飽和単量体と、からなる単量体混合物を乳化重合して得られるニトリル−共役ジエンゴムラテックスが挙げられるが、特に限定されない。
【0019】
共役ジエン単量体としては、特に限定されないが、共役ジエンを含有する炭素数4〜12の化合物が好ましい。このような共役ジエン単量体としては、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、2−エチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンおよびクロロプレンなどが挙げられる。なかでも、1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、特に、1,3−ブタジエンを用いることが好ましい。これらの共役ジエン単量体は単独でまたは2種以上を組み合せて用いることができる。濃縮する合成ゴムラテックス中における共役ジエン単量体単位の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、50〜89.5重量部である。共役ジエン単量体の使用量は、好ましくは55〜84重量部、より好ましくは65〜81重量部、特に好ましくは70〜80重量部である。
【0020】
エチレン性不飽和ニトリル単量体としては、特に限定されず、その具体例としては、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、フマロニトリル、α−クロロアクリロニトリル、α−シアノエチルアクリロニトリル等が挙げられる。これらのエチレン性不飽和ニトリル単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。エチレン性不飽和ニトリル単量体は、上記のうち、アクリロニトリル及びメタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましく、用いられる。エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、10〜40重量部である。エチレン性不飽和ニトリル単量体の使用量は、好ましくは15〜36重量部、より好ましくは18〜27重量部、特に好ましくは18〜24重量部である。
【0021】
エチレン性不飽和酸単量体としては、特に限定されないが、たとえば、カルボキシル基、スルホン酸基、酸無水物基等の酸性基を含有するエチレン性不飽和単量体等が挙げられる。
【0022】
カルボキシル基を含有するエチレン性不飽和単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸等のエチレン性不飽和モノカルボン酸単量体;イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸単量体;フマル酸モノブチル、マレイン酸モノブチル、マレイン酸モノ−2−ヒドロキシプロピル等のエチレン性不飽和多価カルボン酸部分エステル単量体を挙げることができる。
スルホン酸基を含有するエチレン性不飽和単量体の具体例としては、スチレンスルホン酸等を挙げることができる。
酸無水物基を含有するエチレン性不飽和単量体の具体例としては、無水マレイン酸、無水シトラコン酸等のエチレン性不飽和多価カルボン酸無水物を挙げることができる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体はアルカリ金属塩又はアンモニウム塩として用いることもできる。
これらのエチレン性不飽和酸単量体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
これらのエチレン性不飽和酸単量体の中でも、エチレン性不飽和カルボン酸単量体が好ましく、エチレン性不飽和モノカルボン酸単量体がより好ましく、メタクリル酸が特に好ましい。
エチレン性不飽和酸単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、0.5〜10重量部である。エチレン性不飽和酸単量体の使用量は、好ましくは1〜9重量部、より好ましくは1〜8重量部、特に好ましくは2〜6重量部である。
【0023】
共役ジエン単量体、エチレン性不飽和ニトリル単量体及びエチレン性不飽和酸単量体と共重合可能なエチレン性不飽和単量体の具体例は、(以下、単に「その他のエチレン性不飽和単量体」ということがある。)は、特に限定されず、その具体例としては、ビニル芳香族単量体、エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体、エチレン性不飽和アミド単量体、アルキルビニルエーテル単量体、等を挙げることができる。
【0024】
ビニル芳香族単量体の具体例としては、スチレン、アルキルスチレン、ビニルナフタレン等を挙げることができる。
エチレン性不飽和カルボン酸エステル単量体は、エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルであってもエチレン性不飽和多価カルボン酸エステルであってもよい。
エチレン性不飽和モノカルボン酸エステルの具体例としては、アクリル酸エステル単量体及びメタクリル酸エステル単量体(以下、アクリル酸及びメタクリル酸を総称して、「(メタ)アクリル酸」ということがある。)等を挙げることができる。
(メタ)アクリル酸エステル単量体の代表的なものとしては、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル等を挙げることができる。
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルや(メタ)アクリル酸アリールエステルは、アルキル基やアリール基の水素原子が、ハロゲン原子、水酸基、エポキシ基、アミノ基、シアノ基、アルコキシ基等で置換されたものであってもよい。
【0025】
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの具体例としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル;(メタ)アクリル酸トリフルオロエチル、(メタ)アクリル酸テトラフルオロプロピル;ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル;(メタ)アクリル酸グリシジル;(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル;(メタ)アクリル酸シアノメチル、(メタ)アクリル酸2−シアノエチル、(メタ)アクリル酸1−シアノプロピル、(メタ)アクリル酸2−エチル−6−シアノヘキシル、(メタ)アクリル酸3−シアノプロピル;(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸メトキシエトキシエチル;等を挙げることができる。
【0026】
エチレン性不飽和多価カルボン酸エステルの具体例としては、エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステル、エチレン性不飽和トリカルボン酸トリエステル等を挙げることができる。
エチレン性不飽和ジカルボン酸ジエステルの具体例としては、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジブチル等のマレイン酸ジエステル;フマル酸ジエチル、フマル酸ジブチル等のフマル酸ジエステル;イタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル等のイタコン酸ジエステル;等を挙げることができる。
【0027】
アルキルビニルエーテル単量体の具体例としては、メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテル、フルオロエチルビニルエーテル、2,2,2−トリフルオロエチルビニルエーテル、2,2,3,3,3−ペンタフルオロプロピルビニルエーテル等を挙げることができる。
【0028】
エチレン性不飽和アミド単量体の具体例としては、(メタ)アクリル酸のアミド誘導体を挙げることができ、その代表例としては、(メタ)アクリルアミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−プロポキシメチル(メタ)アクリルアミド等を挙げることができる。
【0029】
また、その他のエチレン性不飽和単量体は、その分子中に架橋性部位を有するものであってもよい。
そのような単量体の具体例としては、ジビニルベンゼン等のポリビニル芳香族単量体;ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート等のポリアクリレート単量体;等を挙げることができる。
【0030】
これらの「その他のエチレン性不飽和単量体」は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
その他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、重合に用いる全単量体100重量部に対して、19.5重量部以下である。その他のエチレン性不飽和単量体の使用量は、好ましくは14重量部以下、より好ましくは9重量部以下である。
【0031】
ステップS001で実施する重合工程では、上記の各単量体の混合物を乳化重合する。乳化重合方法としては、従来公知の乳化重合法を採用すればよい。一例について説明すると、上記単量体を共重合するに当たり、まず、使用する全単量体の40〜60重量%からなる単量体であって重合に使用するエチレン性不飽和酸単量体全量の40〜60重量%を含有する初期重合単量体を重合反応器に仕込み、好ましくは水及び乳化剤の存在下に、第一段階の重合を開始する。重合温度は、特に限定されないが、通常、0〜95℃、好ましくは5〜70℃である。
【0032】
また、重合工程およびその前後の工程では、必要に応じて、分子量調整剤、粒径調整剤、キレート化剤、酸素捕捉剤等の、乳化重合において通常使用される重合副資材を使用することができる。
【0033】
重合に使用する水の使用量は、全単量体100重量部に対して、80〜500重量部、好ましくは100〜300重量部である。これらのうち、初期重合単量体の重合(第一段階の重合)に際し、使用する水の量は、通常、60〜400重量部、好ましくは、70〜200重量部である。
【0034】
初期重合単量体は、重合に使用する全単量体の40〜60重量%からなることが必要である。この初期重合単量体の量は、好ましくは、43〜57重量%、より好ましくは、45〜55重量%である。この量が多すぎると、重合時の安定性が悪く凝集物が発生し、逆に少なすぎると、ディップ成形した際に所望の引張強度が得られない。
【0035】
また、初期重合単量体は、重合に使用するエチレン性不飽和酸単量体全量の40〜60重量%を含有することが必要である。このエチレン性不飽和酸単量体の量は、好ましくは、43〜57重量%、より好ましくは、45〜55重量%である。この量が多すぎると、ディップ成形用にラテックスのpHを調整した後に、ラテックス粘度が上昇してディップ成形性が悪くなり、逆に少なすぎると、ディップ成形した際に所望の引張強度が得られない。
【0036】
重合開始剤としては、特に限定されないが、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物;ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジ−α−クミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等の有機過酸化物;アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物;等を挙げることができる。
これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
上記重合開始剤のうち、無機過酸化物開始剤は、ラテックスを安定して製造することができ、しかも、機械的強度が高く、風合いが柔らかなディップ成形物が得られるので好ましく用いられる。
重合開始剤の使用量は、特に限定されないが、重合に使用する全単量体100重量部に対して、0.01〜1.0重量部であることが好ましい。
【0037】
また、過酸化物開始剤は、還元剤と組み合わせて、レドックス系重合開始剤として使用することができる。この還元剤としては、特に限定されないが、硫酸第一鉄、ナフテン酸第一銅等の還元状態にある金属イオンを含有する化合物;メタンスルホン酸ナトリウム等のスルホン酸化合物;ジメチルアニリン等のアミン化合物;等が挙げられる。
これらの還元剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
還元剤の使用量は、特に限定されないが、過酸化物開始剤1重量部に対して0.03〜10重量部であることが好ましい。
【0038】
重合工程に用いる乳化剤としては、アニオン性乳化剤、非イオン性乳化剤、カチオン性乳化剤及び両性乳化剤を用いることができる。また、これらの乳化剤は、重合性基を有するいわゆる共重合性乳化剤であってもよい。
アニオン性乳化剤の具体例としては、ミリスチン酸、パルミチン酸、オレイン酸、リノレン酸の如き脂肪酸の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩;アルキルスルホコハク酸塩;等を挙げることができる。これらのアニオン性乳化剤における塩としては、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩を挙げることができる。
非イオン性乳化剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレンソルビタンアルキルエステル等を挙げることができる。
【0039】
カチオン性乳化剤の具体例としては、アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ジアルキルアンモニウムクロライド、ベンジルアンモニウムクロライド等を挙げることができる。
共重合性乳化剤の具体例としては、α,β−不飽和カルボン酸のスルホエステル、α,β−不飽和カルボン酸のサルフェートエステル、スルホアルキルアリールエーテル等を挙げることができる。
【0040】
これらの乳化剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
乳化剤としては、上記のうち、アニオン性乳化剤が特に好適に用いられる。
初期単量体重合時における乳化剤の使用量は、初期重合単量体100重量部に対して、通常、0.2〜8重量部、好ましくは0.3〜6重量部、より好ましくは0.5〜4重量部である。
【0041】
次に、前記初期重合単量体の重合転化率が40〜70重量%の範囲にあるときに、重合に使用する全単量体重量に対して0.1〜5重量%の追加乳化剤を重合系に添加する。
この追加乳化剤の添加の時期は、初期重合単量体の重合転化率が40〜70重量%の範囲にあるときであることが必須であり、好ましくは45〜65重量%、より好ましくは50〜60重量%の範囲にあるときである。添加の時期が早すぎると、ラテックス粘度が上昇してディップ成形性が悪くなり、逆に添加の時期が遅すぎると、重合時の安定性が悪く、凝集物が発生する。
【0042】
この追加乳化剤の添加量は、重合に使用する全単量体重量に対して0.1〜5重量%の範囲にあることが必須であり、好ましくは0.2〜3重量%、より好ましくは0.5〜2重量%の範囲である。添加量が多すぎると、ラテックスの発泡によりディップ成形時に不具合を生じ、逆に添加量が少なすぎると、重合時の安定性が悪く、凝集物が発生する。
【0043】
ここで、添加すべき追加乳化剤の種類は、特に限定されないが、初期重合単量体の重合に用いたものを用いることが好ましい。
追加乳化剤の添加方法は、特に限定されないが、水溶液として添加することが、操作上、簡便である。
また、追加乳化剤は、全量を一度に添加してもよく、一定時間に亘って、添加してもよい。
【0044】
上記追加乳化剤の添加が終了した後、残余の単量体(重合に使用する全単量体から、初期重合単量体を除いたものをいう。)を逐次添加して第二段階の重合を行なう。
ここで、逐次添加とは、絶え間なく単量体を添加する連続添加及び単量体を間欠的に添加する間欠添加の双方を含む概念である。
残余の単量体を逐次添加するに際して、単量体の組成は、逐次添加全時間帯に亘って同一でも、時間によって変化させてもよい。
【0045】
残余の単量体の逐次添加に際しては、単量体のみを添加してもよいが、単量体を乳化剤でエマルジョンとして添加するのが操作上及び重合安定性を好適に保つ上で好ましい。
このとき、エマルジョンは、通常、単量体100重量部に対して、水10〜200重量部及び乳化剤0.3〜3重量部を用いて調製すればよい。
このエマルジョンの調製に用いる乳化剤は、特に限定されないが、初期重合単量体の重合に用いたものを用いることが好ましい。
【0046】
残余の単量体の添加終了後、所定の重合転化率が得られるまで重合を継続した後、重合を終了する。
重合反応を停止する際の重合転化率は、好ましくは90重量%以上、より好ましくは93重量%以上である。
重合終了の方法は、重合停止剤の添加によってもよく、高温重合の場合は、重合系の温度を低下させることによってもよい。
【0047】
重合停止剤は、通常、乳化重合において使用されているものであれば、特に限定されない。
その具体例としては、ヒドロキシルアミン、ヒドロキシアミン硫酸塩、ジエチルヒドロキシアミン、ヒドロキシアミンスルホン酸及びそのアルカリ金属塩等のヒドロキシアミン化合物;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム;ハイドロキノン誘導体;カテコール誘導体;ヒドロキシジメチルベンゼンチオカルボン酸、ヒドロキシジエチルベンゼンジチオカルボン酸、ヒドロキシジブチルベンゼンジチオカルボン酸等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸及びこれらのアルカリ金属塩等の芳香族ヒドロキシジチオカルボン酸化合物;等が挙げられる。
重合停止剤の使用量は、特に限定されないが、通常、全単量体100重量部に対して、0.1〜2重量部である。
重合反応を停止した後、必要に応じて、未反応の単量体を除去する。
【0048】
図6に示すステップS002では、ステップS001で得られた合成ゴムラテックスを濃縮する濃縮工程を実施する。
図1は、濃縮工程で用いる装置の概略構成の一例を表したものである。
【0049】
濃縮工程では、
図1に示すタンク10に貯蔵される合成ゴムラテックスを、ポンプ12及びポンプ14を用いて、タンク10とエバポレーター16の間を循環させることにより実施される。濃縮工程の開始前において、タンク10には、先述の重合工程(ステップS001)で製造された合成ゴムラテックスが貯蔵されている。濃縮工程が開始されると、タンク10内の合成ゴムラテックスは、ポンプ12によってエバポレーター16に向かって送り出される。
【0050】
ラテックス濃縮用熱交換器20(以下、単に「熱交換器20」という。)は、合成ゴムラテックスがタンク10からエバポレーター16に送り出される経路の中間に配置されている。合成ゴムラテックスは、熱交換器20によって加温された後、エバポレーター16に流入する。熱交換器20によって合成ゴムラテックスを加温する条件は、特に限定されないが、例えば熱交換器20から流出する合成ゴムラテックスの温度が85〜55℃、好ましくは75〜65℃となるように加温する。熱交換器20によって加温することにより、エバポレーター16において合成ゴムラテックスを効率的に濃縮することが可能となる。なお、熱交換器20の構成については、後ほど詳述する。
【0051】
熱交換器20で加温された合成ゴムラテックスは、エバポレーター16に流入する。エバポレーター16は、熱交換器20で加温された合成ゴムラテックスを減圧し、合成ゴムラテックスに含まれる溶媒成分を揮発させることで、合成ゴムラテックスを濃縮する。エバポレーター16としては、特に限定されないが、例えば薄膜式エバポレーター等を採用することができる。エバポレーター16の減圧条件も特に限定されないが、たとえばー100〜−90kPa、好ましくは−93〜−99kPaとすることができる。
【0052】
エバポレーター16で揮発した溶媒成分は、コンデンサー17およびコンプレッサー18へ送られ、回収された後に再利用される。また、エバポレーター16を通過した合成ゴムラテックスは、ポンプ14によって再度タンク10に戻される。タンク10とエバポレーター16の間で合成ゴムラテックスを循環させて濃縮する工程は、タンク10の合成ゴムラテックスの固形分濃度が所定の値になるまで継続される。濃縮工程(ステップS002)後における合成ゴムラテックスの固形分濃度は特に限定されないが、たとえばディップ成形用の合成ゴムラテックスの場合、40〜50%、好ましくは42〜46%である。
【0053】
図2(a)は、
図1に示すラテックスの濃縮で用いられる熱交換器20の側面図であり、
図2(b)は熱交換器20の正面図である。熱交換器20は、プレート状の伝熱部材を、プレートの厚さ方向(X軸方向)に積層した構造を有している。すなわち、熱交換器20は、
図2(b)に示すように、伝熱部材を積層して構成される中央部25と、中央部25の両側に配置される第1端部プレート22および第2端部プレート24と、各プレートを固定するフレーム21を有している。
【0054】
図2(a)に示すように、第1端部プレート22は上下方向(Z軸方向)が長辺方向となる矩形平板形状を有しており、伝熱部材で構成される中央部25へ連通する4つの孔が形成されている。第1端部プレート22に形成される4つの孔は、第1端部プレート22の4つの角部付近に配置されている。すなわち、第1端部プレート22の上部には、熱源流体としての温水を中央部25へ導入する温水流入口孔22aと、合成ゴムラテックスを中央部25から導出するラテックス出口孔22bとが形成されている。また、第1端部プレート22の下部には、熱源流体としての温水を中央部25から導出する温水出口孔22cと、合成ゴムラテックスを中央部25へ導入するラテックス入口孔22dとが形成されている。
【0055】
第1端部プレート22の温水流入口孔22a、ラテックス入口孔22dには、図示しない配管が接続されており、これらの配管を介して、熱交換器20の中央部25に温水および合成ゴムラテックスが流入する。また、ラテックス出口孔22b、温水出口孔22cにも、図示しない配管が接続されており、熱交換後の温水および合成ゴムラテックスは、これらの配管へ流出する。
【0056】
図3は、熱交換器20の中央部25における温水の流れと合成ゴムラテックスの流れとを表す模式図である。熱交換器20の中央部25には、流路の配置が異なる2種類の熱伝導部材であるAプレート30とBプレート40とが交互に配置されている。Aプレート30とBプレート40とは、いずれも矩形平板状であり、Aプレート30とBプレート40との間には、温水が流れる温水流路26と合成ゴムラテックスが流れるラテックス流路28とが交互に形成される。すなわち、Aプレート30の前方(X軸負方向側)およびBプレート40の後方(X軸正方向側)には温水流路26が形成される。一方で、Aプレート30の後方(X軸負方向側)およびBプレート40の前方にはラテックス流路28が形成される。
【0057】
図4(a)は、Aプレート30の一方の面であるAプレート前面30aを表す平面図であり、
図4(b)は、Aプレート30の他方の面であるAプレート後面30bを表す平面図である。熱交換器20においてAプレート30は、Aプレート前面30aがX軸負方向側を向き、Aプレート後面30bがX軸正方向を向くように配置される。
【0058】
図4(a)及び
図4(b)に示すように、Aプレート30の4つの角部には、第1端部プレート22と同様に4つの孔が形成されている。Aプレート30の上部には、X軸正方向側に向かって温水が通過する温水流入口孔32aと、X軸負方向側に向かってラテックスが通過するラテックス出口孔32bが形成されている。また、Aプレート30の下部には、X軸負方向側に向かって温水が通過する温水出口孔32cと、X軸正方向側に向かってラテックスが通過するラテックス入口孔32dが形成されている。
【0059】
また、
図4(a)に示すように、Aプレート前面30aには、合成ゴムラテックス及び温水を封止するシール部材38が配置されている。シール部材38は、温水流入口孔32aおよび温水出口孔32cを取り囲み、かつ、ラテックス出口孔32bとラテックス入口孔32dとを温水流入口孔32aおよび温水出口孔32cとは区別して個別に取り囲むように配置されている。Aプレート前面30aが
図4(d)に示すBプレート後面40bに押し付けられることにより、Aプレート前面30aとBプレート後面40bの間には、シール部材38に封止された温水流路26が形成される。Aプレート前面30aとBプレート後面40bには、それぞれ温水が接触するA側第1接触面34とB側第1接触面44が形成される。
【0060】
なお、Aプレート30の温水流入口孔32aとBプレート40の温水流入口孔42aとは互いに連通しており、第1端部プレート22の温水流入口孔22aから供給された温水は、温水流入口孔32a、42aを介して第2端部プレート24側(X軸正方向側)へ流入する(
図3参照)。また、Aプレート30の温水出口孔32cとBプレート40の温水出口孔42cとは互いに連通しており、A側第1接触面34とB側第1接触面44との間を通過した温水は、温水出口孔32c、42cを介して第1端部プレート22側(X軸負方向側)へ流出する(
図3参照)。
【0061】
図4(c)は、Bプレート40の一方の面であるBプレート前面40aを表す平面図であり、
図4(d)は、Bプレート40の他方の面であるBプレート後面40bを表す平面図である。熱交換器20においてBプレート40は、Bプレート前面40aがX軸負方向側を向き、Bプレート後面40bがX軸正方向を向くように配置される。
【0062】
図4(c)及び
図4(d)に示すように、Bプレート40の4つの角部には、Aプレート30と同様に、X軸正方向側に向かって温水が通過する温水流入口孔42aと、X軸負方向側に向かってラテックスが通過するラテックス出口孔42bと、X軸負方向側に向かって温水が通過する温水出口孔42cと、X軸正方向側に向かってラテックスが通過するラテックス入口孔42dが形成されている。
【0063】
また、
図4(c)に示すように、Bプレート40の一方の面であるBプレート前面40aには、合成ゴムラテックス及び温水を封止するシール部材48が配置されている。シール部材48は、ラテックス入口孔42dおよびラテックス出口孔42bを取り囲み、かつ、温水流入口孔42aと温水出口孔42cとをラテックス入口孔42dおよびラテックス出口孔42bとは区別して個別に取り囲むように配置されている。Bプレート前面40aは、
図4(b)に示すAプレート後面30bに押し付けられることにより、Bプレート前面40aとAプレート後面30bとの間には、シール部材48に封止されたラテックス流路28が形成される。Bプレート前面40aとAプレート後面30bには、それぞれ合成ゴムラテックスが接触するB側第2接触面46とA側第2接触面36が形成される。
【0064】
なお、Aプレート30のラテックス入口孔32dとBプレート40のラテックス入口孔42dとは互いに連通しており、第1端部プレート22のラテックス入口孔22dから供給された合成ゴムラテックスは、ラテックス入口孔32d、42dを介して第2端部プレート24側(X軸正方向側)へ流入する(
図3参照)。また、Aプレート30のラテックス出口孔32bとBプレート40のラテックス出口孔42bとは互いに連通しており、A側第2接触面36とB側第2接触面46との間を通過した合成ゴムラテックスは、ラテックス出口孔32b、42bを介して第1端部プレート22側(X軸負方向側)へ流出する(
図3参照)。
【0065】
図4(b)及び
図4(c)に示すように、合成ゴムラテックスが接触するA側第2接触面36およびB側第2接触面46には、ダイヤモンドライクカーボンによるダイヤモンドライクカーボン層が形成されている。Aプレート30の断面図である
図5に示すように、Aプレート30は、金属を含む金属基材部37を有しており、A側第2接触面36に形成されているダイヤモンドライクカーボン層39は、金属基材部37の上に形成されている。Bプレート40のB側第2接触面46についても、A側第2接触面36と同様である。これに対して、温水が接触するA側第1接触面34およびB側第1接触面44には、ダイヤモンドライクカーボン層39が形成されておらず、金属基材部37が露出している。
【0066】
金属基材部37の材質としては、特に限定されないが、ステンレス鋼、硬質クロムメッキ処理された鋼材などが挙げられ、ダイヤモンドライクカーボン層39に対する密着性が良好であることから、ステンレス鋼(たとえば、SUS304)が特に好ましい。なお、Aプレート30およびBプレート40の基材は、熱伝導率の高い金属で構成されることが好ましいが、金属以外の材料で構成されていてもよい。
【0067】
ダイヤモンドライクカーボン層39は、炭素原子から構成されたアモルファス(非晶質)構造を有する層であり、炭素原子の結合状態はタイヤモンド構造(sp3構造:sp3混成軌道による共有結合)とグラファイト構造(sp2構造:sp2混成軌道による共有結合)との両方を有する。ダイヤモンドライクカーボン層39の厚みは、特に限定されないが、好ましくは0.05〜5.0μm、より好ましくは0.1〜3.0μm、さらに好ましくは0.5〜1.5μmである。ダイヤモンドライクカーボン層39の厚みが薄すぎると、ダイヤモンドライクカーボン層39が不連続となり金属基材部37を十分に被覆できなくなる場合がある。一方、ダイヤモンドライクカーボン層39の厚みが厚すぎると、ダイヤモンドライクカーボン層39が衝撃等により破損しやすくなる問題がある。
【0068】
ダイヤモンドライクカーボン層39は、その表面の算術平均粗さ(Ra)が、好ましくは3.0μm以下、より好ましくは0.0001〜1.0μm、さらに好ましくは0.0003〜0.01μmである。ダイヤモンドライクカーボン層39の算術平均粗さ(Ra)を所定の範囲とすることにより、A側第2接触面36およびB側第2接触面46での凝集物の発生および付着を防止することができる。
【0069】
ダイヤモンドライクカーボン層39のビッカース硬さ(Hv)は、特に限定されないが、好ましくは1000〜5000、さらに好ましくは2000〜4000である。ダイヤモンドライクカーボン層39のビッカース硬さ(Hv)が低すぎると、ダイヤモンドライクカーボン層39が、使用によって基材との密着性が低下する場合がある。ビッカース硬さ(Hv)が高すぎると、ダイヤモンドに限りなく近づくことであり、製造工程が複雑になるおそれがある。
【0070】
ダイヤモンドライクカーボン層39における、sp3構造成分とsp2構造成分との比率は、特に限定されないが、sp3構造成分の含有割合が、好ましくは10〜60重量%、より好ましくは20〜50重量%、さらに好ましくは30〜45重量%である。sp3構造成分の含有割合を上記範囲とすることにより、金属基材部37に対する密着性とダイヤモンドライクカーボン層39の平滑性とを好適にバランスさせることができる。
なお、ダイヤモンドライクカーボン層39は、炭素以外の他の元素、例えばドーピング元素等を含んでいてもよいが、炭素を100〜50重量%含有することが好ましく、炭素を100〜80重量%含有することが特に好ましい。また、ダイヤモンドライクカーボン層39は水素を含有していてもよく、水素の含有量は0〜50重量%であることが好ましく、0〜20重量%であることが特に好ましい。
【0071】
金属基材部37上に、ダイヤモンドライクカーボン層39を形成する方法としては、特に限定されず、物理的気相蒸着法(PVD法)、化学的気相蒸着法(CVD法)、レーザーアブレーション等いずれの手法も採用可能である。さらには、上記方法を複数組み合わせて薄膜を形成してもよい。なお、ダイヤモンドライクカーボン層39を形成する際の前処理として、金属基材部37へ精密ショットピーニング法による表面改質(硬化処理)を行なってもよい。
【0072】
物理的気相蒸着法による製法においては、原料として、主に固体の材料が使われる。物理的気相蒸着法のなかでも、グラファイト・ターゲットを用いてアルゴン/水素混合ガス雰囲気下で行うスパッタリング法が好適に用いられる。スパッタリング法においては、アルゴン等の不活性ガスが存在する程度の0.5〜2.0Paの真空中で、グロー放電などにより加速されたAr+などの陽イオンをターゲットに衝突させ、ターゲット材料を飛ばすことにより、金属基材部37上にダイヤモンドライクカーボン層39を形成させる。なお、スパッタリング法以外の物理的気相蒸着法の具体例としては、イオンプレーティング法、カソーディックアーク法等が挙げられる。
【0073】
化学的気相蒸着法としては、RFプラズマCVD、マイクロ波CVD、ECRプラズマCVD、イオンビーム、熱フィラメントCVDなどが挙げられる。これらの方法においては、原料として炭化水素系ガスの混合ガスを導入し、ガスをプラズマもしくは熱により分解することにより、金属基材部37上にダイヤモンドライクカーボン層39を形成する。ここで、炭化水素ガスとしては、メタン、エタン、トルエン、プロパン、アセチレン、ブタン等を用いることができる。また、炭化水素ガスは単独で用いてもよいが、H2ガスや、ヘリウムガス(He)、ネオンガス(Ne)、アルゴンガス(Ar)、クリプトンガス(Kr)等の不活性ガスと共に用いてもよい。
【0074】
シール部材38、48の材質としては、ゴム材料(エラストマー)や軟質の樹脂等が挙げられ、特に限定されないが、フッ素ゴム、ニトリルゴム、ポリテトラフルオロエチレンなどが、シール性および耐久性の観点から好ましい。
【0075】
図3および
図4に示すように、熱交換器20のAプレート30およびBプレート40は、温水に接触するA側第1接触面34またはB側第1接触面44と、合成ゴムラテックスに接触するA側第2接触面36またはB側第2接触面46とを有している。濃縮工程では、熱交換器20を用いて、A側第1接触面34およびB側第1接触面44に温水を接触させると同時に、A側第2接触面36およびB側第2接触面46に合成ゴムラテックスを接触させ、Aプレート30およびBプレート40を介して熱交換させることにより、合成ゴムラテックスを加温する。
【0076】
図4に示すように、A側第1接触面34、A側第2接触面36、B側第1接触面44およびB側第2接触面46には、多数の凹凸が形成されていてもよい。このような凹凸が形成されていることにより、Aプレート30およびBプレート40に対する温水および合成ゴムラテックスの接触面積が広がり、効率の良い熱交換を実現できる。
【0077】
また、ダイヤモンドライクカーボン層39が形成されたA側第2接触面36およびB側第2接触面46は、低摩擦係数で化学的にも不活性であるため、熱交換の際にラテックスが接触しても、凝集物が形成されたり、形成された凝集物が熱交換器内に付着されたりする問題を防止できる。また、熱交換器20では、
図3に示すラテックス流路28に合成ゴムラテックスの固形成分等による凝集物が付着することが防止されるため目詰まりが生じ難く、洗浄の頻度及び洗浄に伴う装置の停止頻度を低下させることができる。
【0078】
なお、ステップS002に示す濃縮工程では、合成ゴムラテックスから凝集物等を除去するためのろ過や、合成ゴムラテックスのpHの調整が行われてもよい。合成ゴムラテックスのpHは、たとえば7〜9の範囲に調整されることが好ましく、さらに好ましくは7.5〜8.7の範囲に調整される。pHを上記範囲としておくことにより、ラテックスの分散安定性を向上させることができる。一方、pHが低すぎると、ラテックスが凝集しやすくなり、濃縮安定性に劣る傾向にある。
【0079】
図6に示すステップS003では、合成ゴムラテックスに以下に例示する配合剤等を添加する調整工程が実施される。
【0080】
調整工程では、濃縮工程で得られた合成ゴムラテックスに、必要に応じて老化防止剤、防腐剤、分散剤等を適宜添加し、pH調製、固形分濃度調製を実施する。調整工程後における合成ゴムラテックスのpHは、通常、8.5〜12、好ましくは9〜11の範囲である。
さらに、上述の工程で得られた合成ゴムラテックスに加えて、天然ゴムラテックス、イソプレンゴムラテックス等のその他のラテックスを併用することもできる。
【0081】
また、ディップ成形に用いる合成ゴムラテックスの製造では、調整工程において、加硫剤及び加硫促進剤を配合することが好ましく、更に所望により、酸化亜鉛を配合してもよい。
加硫剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用できる。その具体例としては、粉末硫黄、硫黄華、沈降硫黄、コロイド硫黄、表面処理硫黄、不溶性硫黄等の硫黄;ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン等のポリアミン類;等が挙げられる。なかでも、硫黄が好ましい。
加硫剤の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましく0.3〜3重量部、特に好ましくは0.5〜2重量部である。
【0082】
加硫促進剤としては、ディップ成形において通常用いられるものが使用できる。
その具体例としては、ジエチルジチオカルバミン酸、ジブチルジチオカルバミン酸、ジ−2−エチルヘキシルジチオカルバミン酸、ジシクロヘキシルジチオカルバミン酸、ジフェニルジチオカルバミン酸、ジベンジルジチオカルバミン酸等のジチオカルバミン酸類及びそれらの亜鉛塩;2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛、2−メルカプトチアゾリン、ジベンゾチアジル・ジスルフィド、2−(2,4−ジニトロフェニルチオ)ベンゾチアゾール、2−(N,N−ジエチルチオ・カルバイルチオ)ベンゾチアゾール、2−(2,6−ジメチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、2−(4′−モルホリノ・ジチオ)ベンゾチアゾール、4−モルホニリル−2−ベンゾチアジル・ジスルフィド、1,3−ビス(2−ベンゾチアジル・メルカプトメチル)ユリア等が挙げられる。なかでも、ジブチルジチオカルバミン酸亜鉛、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛が好ましい。
これらの加硫促進剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
加硫促進剤の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは0.1〜5重量部、より好ましくは0.3〜3重量部、特に好ましくは0.5〜2重量部である。
【0083】
酸化亜鉛の使用量は、ラテックス固形分100重量部に対して、好ましくは5重量部以下、より好ましくは4重量部以下、特に好ましくは3重量部以下である。
【0084】
図6に示すステップS001〜ステップS003の製造工程により製造される合成ゴムラテックスの固形分濃度は、これをディップ成形によるゴム成形品の製造に用いる場合、好ましくは20〜40重量%、より好ましくは25〜35重量%である。
尚、ステップS002の濃縮工程においては、例えば、合成ゴムラテックスの重合に用いる前記単量体の中で、重合されずに未反応のまま残留する成分を除去するために、上記固形分濃度よりも高濃度まで濃縮する場合があるが、その場合には、S003の調整工程において、前述したように、ラテックスを希釈等して固形分濃度を上記範囲に調整することができる。
【0085】
図6に示すステップS004では、ステップS003で得られた合成ゴムラテックスを用いてディップ成形を行う。ディップ成形法としては、通常の方法を採用すればよく、例えば、直接浸漬法、アノード凝着浸漬法、ティーグ凝着浸漬法等が挙げられる。なかでも、均一な厚みを有するディップ成形物が得られやすい点で、アノード凝着浸漬法が好ましい。
【0086】
アノード凝着浸漬法の場合、例えば、ディップ成形用型を凝固剤溶液に浸漬して、該型表面に凝固剤を付着させた後、それをディップ成形用組成物に浸漬して、該型表面にディップ成形層を形成する。
【0087】
凝固剤としては、例えば、塩化バリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化亜鉛、塩化アルミニウム等のハロゲン化金属;硝酸バリウム、硝酸カルシウム、硝酸亜鉛等の硝酸塩;酢酸バリウム、酢酸カルシウム、酢酸亜鉛等の酢酸塩;硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム等の硫酸塩;等が挙げられる。なかでも、塩化カルシウム及び硝酸カルシウムが好ましい。
凝固剤は、通常、水、アルコール、又はそれらの混合物の溶液として使用する。凝固剤濃度は、通常、5〜50重量%、好ましくは10〜30重量%である。
【0088】
図6に示すステップS005では、ディップ成形用型に形成されたディップ成形層を加熱し、加硫する。ステップS005では、加熱処理を施す前に、水、好ましくは30〜70℃の温水、に、1〜60分程度浸漬し、水溶性不純物(例えば、余剰の乳化剤や凝固剤等)を除去してもよい。この操作は、ディップ成形層を加熱処理した後に行なってもよいが、より効率的に水溶性不純物を除去できる点から、熱処理前に行なうのが好ましい。
水溶性不純物を除去した後、ディップ成形層に対して、100〜150℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行い、加硫する。加熱の方法としては、赤外線や熱空気による外部加熱又は高周波による内部加熱による方法が採用できる。なかでも、熱空気による加熱が好ましい。
【0089】
図6に示すステップS006では、脱型工程を実施する。脱型工程では、加硫したディップ成形層をディップ成形用型から脱着することによって、ディップ成形物が得られる。脱着方法としては、手で成形用型から剥したり、水圧や圧縮空気の圧力により剥したりする方法を採用することができる。なお、脱着後、更に60〜120℃の温度で、10〜120分の加熱処理を行なってもよい。
【0090】
以上のように、実施形態を挙げて本発明に係る熱交換器20およびこれを用いたラテックスの濃縮工程、およびラテックスの製造方法を説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、多くの他の実施形態を含むことは言うまでもない。たとえば、濃縮の対象となるラテックスは、合成ゴムラテックスに限定されず、天然ゴムラテックスであってもよい。
【0091】
また、熱交換器20のAプレート30およびBプレート40では、そのA側第2接触面36とB側第2接触面46だけでなく、A側第1接触面34とB側第1接触面44にも、ダイヤモンドライクカーボン層が形成されていてもよい(
図4(a)〜
図4(d)参照)。このような熱交換器では、Aプレート30とBプレート40とを同一の形状にできる。すなわち、そのプレートをフレーム21に固定する際の姿勢を変えるだけで、同一の形状を有するプレートを、Aプレート30として機能させることもできるし、Bプレート40として機能させることも可能である。したがって、このような熱交換器は組み立てが容易であり、メンテナンス性に優れている。また、板状のAプレート30とBプレート40とを組みあわせた構成を有する熱交換器20は、目詰まり時の分解および洗浄が容易であり、メンテナンス性に優れているが、熱交換器の伝熱部材としては、プレート状のものに限定されない。
【0092】
以下、より具体的な実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の技術的範囲はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0093】
1.濃縮工程における連続運転時間評価
表1においてNo.1〜No.5で示す合計5水準の熱交換器を準備し、各熱交換器を用いて、
図1に示すような装置構成で合成ゴムラテックス濃縮工程を実施し、それぞれの熱交換器が目詰まりを起こさず、連続して運転できる連続運転時間を調査した。
【0094】
<熱交換器>
No.1〜No.3の熱交換器20は、
図4(b)及び
図4(c)に示すように、A側第2接触面36及びB側第2接触面46にダイヤモンドライクカーボン層(
図4及び
図5参照)が形成されたAプレート30およびBプレート40を用いて構成した。No.1〜No.3では、ダイヤモンドライクカーボン層(DLC層)が形成されたA側第2接触面36及びB側第2接触面46の表面粗さが異なり、No.1は0.0001μm、No.2は0.002μm、No.3は4μmのAプレート30およびBプレート40をそれぞれ用いた。
【0095】
No.4、No.5の熱交換器は、A側第2接触面36及びB側第2接触面46にダイヤモンドライクカーボン層が形成されていないAプレートおよびBプレートを用いて構成した。すなわち、No.4、No.5の熱交換器は、合成ゴムラテックスに接触するA側第2接触面およびB側第2接触面も、温水に接触するA側第1接触面34及びB側第1接触面44と同様に、ステンレス(SUS)の金属基材部37が表面に露出している。No.4とNo.5では、合成ゴムラテックスが接触するA側第2接触面及びB側第2接触面の表面粗さが異なり、No.4は0.03μm、No.5は3μmのAプレート30およびBプレートをそれぞれ用いた。No.4、No.5の熱交換器は、合成ゴムラテックスとの接触面にダイヤモンドライクカーボン層が形成されていない点を除き、No.1〜No.3の熱交換器20と同様である。
【0096】
<濃縮前の合成ゴムラテックス>
図1に示すタンク10に貯蔵される濃縮前の合成ゴムラテックスは、以下のようにして製造した。すなわち、窒素置換した耐圧重合反応器に、初期重合単量体としてアクリロニトリル13.5部、1,3−ブタジエン33.75部及びメタクリル酸2.75部の合計50部、分子量調整剤としてt−ドデシルメルカプタン(tDM)0.5部、脱イオン水95部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(DBS)1.0部、重合開始剤として過硫酸カリウム0.2部、及び還元剤としてエチレンジアミン四酢酸ナトリウム(EDTA)0.1部を仕込んだ。重合系内の温度を35℃に上昇させて重合反応を開始した。
重合転化率が50%になった時点で、追加乳化剤として、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.0部を10%水溶液で一括添加した。
追加乳化剤ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムの添加終了後、アクリロニトリル13.5部、1,3−ブタジエン33.75部及びメタクリル酸2.75部の合計50部(残余の単量体)並びにt−ドデシルメルカプタン0.4部を脱イオン水15.0部及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.5部で乳化して得たエマルジョンを270分間に亘って、重合系に連続添加した。この連続添加終了時の重合転化率は60%であった。
その後、全単量体の重合転化率が97%になるまで重合を継続し、その後、ジエチルヒドロキシルアミン0.1部を添加して重合反応を停止した。
さらに、得られた共重合体ラテックスから未反応単量体を除去することにより、濃縮前の合成ゴムラテックスを準備した。濃縮前の合成ゴムラテックスの固形分濃度は40%であった。
なお、特に断りのない限り、「部」及び「%」は、それぞれ、重量基準である。
【0097】
<濃縮工程>
濃縮工程は、
図1に示すように、ポンプ12及びポンプ14を用いて、タンク10とエバポレーター16の間で合成ゴムラテックスを循環させることにより実施した。熱交換器に流入する合成ゴムラテックスの温度は40〜55℃であり、熱源流体として70〜85℃の温水を用いて熱交換器内で熱交換させることにより、合成ゴムラテックスを加温した。加温した合成ゴムラテックスは、エバポレーター16を用いて溶媒成分を揮発させ、固形分濃度が45%になるまで濃縮した。エバポレーター16としては、薄膜式エバポレーターを使用し、減圧条件は−95〜−85kPaとした。
熱交換器を流れる合成ゴムラテックスの流量は9〜30m
3/hrの範囲とした。連続運転時間の試験では、合成ゴムラテックスが付着していない、洗浄直後の熱交換器に合成ゴムラテックスの流入を開始してから、凝集物の目詰まりにより、ポンプ12、14の出力を維持していても合成ゴムラテックスの流量が9m
3/hrを下回る状態となるまでの時間を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
表1に示すように、ラテックスとの接触面にダイヤモンドライクカーボン層が形成されたNo.1〜No.3の熱交換器を用いた試験では、ダイヤモンドライクカーボン層が形成されていない熱交換器を用いた試験より、連続運転時間が延びていることが確認できた。これは、ダイヤモンドライクカーボン層の形成により、熱交換器内における凝集物の付着が抑制された結果であると考えられる。ダイヤモンドライクカーボン層が形成されている熱交換器同士を比較した場合、第2接触面表面粗さが細かいものほど、連続運転時間が延びるという結果が得られた。第2接触面の表面粗さが細かいものほど、熱交換器内における凝集物の付着を抑制する効果が大きいと考えられる。
【0100】
2.合成ゴムラテックス中の凝集物含有率
上述した実施例に係る濃縮工程で得られた合成ゴムラテックスについて、合成ゴムラテックス濃縮後の合成ゴムラテックスに含まれる凝集物の量を調査した。以下に示すように、試料ラテックスの正確な固形分濃度を測定し、その試料ラテックス約100gを精秤した後、重量既知の200メッシュのSUS製金網でろ過し、金網上の凝集物を数回水洗して、ラテックスを除去する。これを、105℃で60分間、乾燥した後、その乾燥重量を測定する。
凝集物含有率は、下記(1)式から求められる。
凝集物含有率(%)={(A−B)/(C×D)}×10000 (1)
ここで、
A: 乾燥後の、金網及び乾燥凝集物の重量
B: 金網の重量
C: 試料ラテックスの重量
D: 試料ラテックスの全固形分(%)
である。
【0101】
3.成形品の引張強度
上述した実施例に係る濃縮工程で得られた合成ゴムラテックスを用いて、ディップ成形品による試験片を作製し、濃縮工程の違いによるディップ成形品の差異を、試験片の引張強度を測定することにより調査した。
【0102】
<ディップ成型用の合成ゴムラテックスの調整>
濃縮工程で得られた合成ゴムラテックスを、固形分濃度40%に調整し、その250部(固形分100部に相当)に、硫黄1部、酸化亜鉛1.5部、ジエチルカルバミン酸亜鉛0.5部、水酸化カリウム0.03部及び水5.63部を混合して調製した加硫剤分散液8.66部を混合した後、適量の5%水酸化カリウム水溶液、脱イオン水を加えて、固形分濃度30%、pH9.8のディップ成形用合成ゴムラテックスを得た。
<ディップ成形、加熱および脱型>
硝酸カルシウム20部、非イオン性乳化剤のポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル0.05部及び水80部を混合して調製した凝固剤水溶液に手袋型を1分間浸漬し、引き上げた後、50℃で3分間乾燥して、凝固剤を手袋型に付着させた。次に、凝固剤の付着した手袋型を上記のディップ成形用合成ゴムラテックスに6分間浸漬し、引き上げた後、そのディップ成形層が形成された手袋型を25℃で3分間乾燥し、次いで40℃の温水に3分間浸漬して、水溶性不純物を溶出させた。次いで、その手袋型を80℃で20分間乾燥し、引続き、120℃で25分間熱処理してディップ成形層を加硫した。最後に、加硫したディップ成形層を手袋型から剥して、手袋形状のディップ成形品を得た。
<試験片>
ASTM D412に準じて、ゴム手袋状のディップ成形品をダンベル(Die−C)で打ち抜いて、試験片とした。
<引張強度>
試験片を、テンシロン万能試験機を用いて、引張速度500mm/分で引っ張り、破断直前の引張強度を測定した。結果を表2に示す。
【0104】
表2に示すように、ラテックスとの接触面にダイヤモンドライクカーボン層が形成されたNo.1〜No.3の熱交換器を用いた測定では、同水準の表面粗さを有しておりダイヤモンドライクカーボン層が形成されていない熱交換器を用いた測定より、凝集物量が減少し、ディップ成形品による試験片の引張強度が向上していることが確認できた。これは、ダイヤモンドライクカーボン層の形成により、熱交換器内における凝集物の発生が抑制された結果であると考えられる。ダイヤモンドライクカーボン層が形成されている熱交換器同士を比較した場合、第2接触面表面粗さが細かいものほど、凝集物量が減少し、成形品の引張強度が向上するという結果が得られた。第2接触面表面粗さが細かいものほど、熱交換器内における凝集物の発生を抑制する効果が大きいと考えられる。