特許第6776637号(P6776637)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6776637活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776637
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/101 20140101AFI20201019BHJP
   C08F 290/12 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   C09D11/101
   C08F290/12
【請求項の数】8
【全頁数】23
(21)【出願番号】特願2016-114254(P2016-114254)
(22)【出願日】2016年6月8日
(65)【公開番号】特開2017-218510(P2017-218510A)
(43)【公開日】2017年12月14日
【審査請求日】2019年3月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(72)【発明者】
【氏名】浜野 陽一
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−327031(JP,A)
【文献】 特開2013−245221(JP,A)
【文献】 特開2007−122023(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/089245(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00−13/00
C08F 290/00−290/14
C08F 6/00−246/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(2)及び式(3)で示される構造から選ばれる少なくとも1つの構造と式(1)で示される構造を含み、重合体主鎖の片末端が式(4)、式(5)及び式(6)から選ばれる1つの構造であり、重量平均分子量が1000以上20000以下の重合体(A)を含む活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【化1】
【化2】
式(1)〜式(6)の示す構造中、Rは置換又は未置換のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基のいずれかを示し、R、R21及びR22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を示し、R31及びR32はそれぞ独立に置換又は未置換のアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基のいずれかを示す。Rの置換基は、エポキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イソシアネート基、アミノ基及びカルボキシル基のいずれかであり、R31及びR32の置換基は、エポキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イソシアネート基、アミノ基及びカルボキシル基のいずれかである。また、n=0〜2である。
【請求項2】
前記重合体(A)の重量平均分子量が1000以上4900以下である、請求項1に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【請求項3】
前記重合体(A)の(メタ)アクリロイル当量が750g/eq以上である、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【請求項4】
前記重合体(A)が、式(2)の構造を含む重合体である請求項1〜3のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【請求項5】
前記重合体(A)を1〜70質量%及び重合性二重結合を有する単量体(C)を30〜99質量%を含み、光重合開始剤(B)を重合性成分100質量部に対して1〜20質量部を含む請求項1〜4のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【請求項6】
溶剤が重合性成分100質量部に対して5質量部以下である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【請求項7】
グリシジル(メタ)アクリレート単位及び/又はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体を、重合性二重結合を有する単量体(C)に溶解させ、前記重合体のエポキシ基及び/又はヒドロキシル基に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する化合物を付加させて前記重合体(A)を製造する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキの製造方法。
【請求項8】
グリシジル(メタ)アクリレート単位を含む重合体を水分散させ、前記重合体のエポキシ基に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基含有の化合物を付加させて前記重合体(A)を製造する工程を含む、請求項1〜6のいずれか1項に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体を含む活性エネルギー線重合性組成物、当該組成物の成分の重合体、当該組成物の製造方法、当該組成物からなるUVインキ、さらには当該組成物に活性エネルギー線を照射して得られる硬化物に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線重合性組成物は、紫外線などの活性エネルギー線により短時間で重合により硬化する特性を持ち、その硬化物は透明性に優れ、硬化物に強靭性、柔軟性、耐擦傷性、耐薬品性等の優れた特性を有する。
この点から、活性エネルギー線重合性組成物は、プラスチック基材へのコーティング剤、UVインキ、レンズの成型材、封止剤、接着剤等の様々な分野に用いられている。例えばUVインキでは、フラットペーパー、パッケージング、シール・ラベル等、印刷業界で幅広く適用されている。その理由としては、従来の溶剤乾燥型インキと比べて環境負荷を低減し、印刷品質と生産性を向上させた上で、瞬間硬化、高強度、低臭性、環境負荷低減、密着性に優れるといった点を持っていることが挙げられる。一方、欠点としては高価格、皮膚刺激性、平版印刷適性、露光時の電気エネルギー消費等が挙げられ、これらの改良が望まれている。
【0003】
これらの改良を目的に、UVインキの主成分として、重量平均分子量1000以上の(メタ)アクリレート基を含有する化合物、例えば、ウレタン(メタ)アクリレートやエポキシ(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体等を用いることが考えられる。特に、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体は、硬化性を高め、硬化収縮を少なくするといった改良に有利と考えられるが、懸濁重合法で製造した重合体(特許文献1)は、重量平均分子量が20000以上になり、樹脂の粘度が高くなりすぎるのでUVインキとしての取扱いが難しいという問題があった。また、溶液重合で製造した重合体(特許文献2)は、重合を高温高圧で行う必要があることや、重合後に溶剤を分離する工程が必要となることから、製造コストが高くなるという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第2012/093465号
【特許文献2】特開平10−17812号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、UVインキ等に好適な低粘度で、硬化性が良く、硬化収縮が少ない活性エネルギー線重合性組成物、当該組成物の成分に好適な重合体、当該組成物の製造方法、当該組成物からなるUVインキ、当該組成物の硬化物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は下記[1]から[9]に係る発明である。
【0007】
[1] 式(2)及び式(3)で示される構造から選ばれる少なくとも1つの構造と式(1)で示される構造を含み、重合体主鎖の片末端が式(4)、式(5)及び式(6)から選ばれる1つの構造であり、重量平均分子量が1000以上20000以下の重合体(A)を含む活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0008】
【化1】
【0009】
【化2】
式(1)〜式(6)の示す構造中、Rは置換又は未置換のアルキル基、シクロアルキル基及びアリール基のいずれかを示し、R、R21及びR22はそれぞれ独立に水素又はメチル基を示し、R31及びR32はそれぞれ独立に置換又は未置換のアルキレン基、シクロアルキレン基及びアリーレン基のいずれかを示す。Rの置換基は、エポキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イソシアネート基、アミノ基及びカルボキシル基のいずれかであり、R31及びR32の置換基は、エポキシ基、ヒドロキシ基、シアノ基、イソシアネート基、アミノ基及びカルボキシル基のいずれかである。また、n=0〜2である。
【0010】
[2] 前記重合体(A)の重量平均分子量が1000以上4900以下である、前記[1]に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0011】
[3] 前記重合体(A)の(メタ)アクリロイル当量が750g/eq以上である、前記[1]又は[2]に記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0012】
[4] 前記重合体(A)が、式(2)の構造を含む重合体である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0013】
[5] 前記重合体(A)を1〜70質量%及び重合性二重結合を有する単量体(C)を30〜99質量%を含み、光重合開始剤(B)を重合性成分100質量部に対して1〜20質量部を含む前記[1]〜[4]のいずれかに記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0014】
[6] 溶剤が重合性成分100質量部に対して5質量部以下である、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキ
【0018】
] グリシジル(メタ)アクリレート単位及び/又はヒドロキシル基含有(メタ)アクリレート単位を含む重合体を、重合性二重結合を有する単量体(C)に溶解させ、前記重合体のエポキシ基及び/又はヒドロキシル基に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する化合物を付加させて前記重合体(A)を製造する工程を含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキの製造方法。
【0019】
] グリシジル(メタ)アクリレート単位を含む重合体を水分散させ、前記重合体のエポキシ基に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基含有の化合物を付加させて前記重合体(A)を製造する工程を含む、前記[1]〜[6]のいずれかに記載の活性エネルギー線重合性組成物からなるUVインキの製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明の活性エネルギー線重合性組成物(以下、本組成物ともいう。)は低粘度で、硬化性が良く、硬化収縮が少ないので、UVインキ等に好適である。本発明の重合体は本組成物の成分として好適である。また、本組成物の製造方法は、脱溶剤工程を行うことなく本組成物の主成分である(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体を製造できるので経済的である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本明細書において、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート」と「メタクリレート」の総称であり、アクリレート及びメタクリレートの一方又は両方を意味する。同様に、「(メタ)アクリロイル基」は「アクリロイル基」と「メタクリロイル基」の総称、「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸」と「メタクリル酸」の総称である。
【0024】
本組成物は、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A)を含有し、必要に応じて、光重合開始剤(B)及び重合性二重結合を有する単量体(C)を含有する。
【0025】
[(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A成分)]
(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A)(以下、A成分という)は、式(1)で示される構造を含む反応性重合体である。またA成分は式(2)及び式(3)で示される構造の少なくとも1つの構造を含む。重合体主鎖中に(メタ)アクリル系単量体単位を含ませるのは、そのことによって優れた硬化性、透明性を発揮させることが可能となるからである。さらにA成分は、その重合体主鎖の片末端が炭素−炭素二重結合を含む式(4)、式(5)及び式(6)から選ばれる1つの構造である必要がある。なお、本明細書において「主鎖」というときは、反応性重合体において最も炭素数の多い炭素鎖を意味するものとする。
【0026】
式(1)で示される構造を導入するための原料単量体の具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、i−プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、n−ペンチル(メタ)アクリレート、i−ペンチル(メタ)アクリレート、n−へキシル(メタ)アクリレート、n−オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルへキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等の水酸基含有(メタ)アクリル酸エステル;フェノキシ(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレート等の芳香族環含有(メタ)アクリル酸エステル;グリシジル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートグリシジルエーテル等のグリシジル基含有(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリルイソシアネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート等のイソシアネート基含有(メタ)アクリル酸エステル;等の(メタ)アクリル系単量体を挙げることができる。
【0027】
前記(メタ)アクリル系単量体の中でも、良好な硬化性を発揮させる点からメチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリロイルモルフォリン、イソボルニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、o−ビフェニルオキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0028】
また、A成分に含まれる式(1)の(メタ)アクリル単量体単位は、1種類であっても、2種類以上であってもよい。但し、UVインキとした際に、その塗膜の物性を精密に調整することが容易であるという理由から、2種以上の式(1)の(メタ)アクリル系単量体単位を含む共重合体であることが好ましい。
【0029】
またA成分は、式(2)及び/又は式(3)の構造を有するので、側鎖中に(メタ)アクリロイルオキシ基を有する。なお、本明細書において「側鎖」というときは、反応性重合体の主鎖(最も炭素数の多い炭素鎖)から分岐した鎖状構造を意味するものとする。
【0030】
側鎖中に(メタ)アクリロイルオキシ基を有するA成分は、紫外線硬化性を有しており、紫外線照射によってその重合体同士が架橋されるなど、本組成物の硬化性向上に寄与する。また、A成分は本組成物の硬化物の強度向上、低臭気化、密着性向上という好ましい効果についても寄与する。
【0031】
A成分は、本発明の効果を阻害しない限りにおいて、式(1)、式(2)及び式(3)以外の単量体単位(以下、その他の単量体単位という。)を含むものであってもよい。
【0032】
その他の単量体単位の原料単量体は特に制限されないが、このような原料単量体としては、具体的には、スチレン、α−メチルスチレン等の芳香族ビニル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のカルボン酸ビニル、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸等の不飽和ジカルボン酸;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム等のN−ビニルラクタム;アクリル酸、メタクリル酸;(メタ)アクリル酸アンモニウム、(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリル酸カリウム等の(メタ)アクリル酸塩;(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリロイルモルフォリン、ジメチル(メタ)アクリルアミド、ジエチル(メタ)アクリルアミド、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド、イソプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド;(メタ)アクリロニトリル等の(メタ)アクリロニトリル;等を挙げることができる。
【0033】
A成分の(メタ)アクリル単量体単位の含有率は、反応性重合体の主鎖を構成する単量体単位の合計を100質量%とした場合に、50質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが更に好ましく、100質量%であることが特に好ましい。即ち、主鎖の全てが(メタ)アクリル単量体単位によって構成されていることが特に好ましい。(メタ)アクリル単量体単位の含有率は多いほど硬化性が高くなる傾向がある。
【0034】
A成分の(メタ)アクリロイル当量は、主鎖の構造、重量平均分子量等によっても異なるが、100〜10000g/molの範囲内が好ましく、400〜8000g/molの範囲内であることがより好ましく、750〜5000g/molの範囲内であることが更に好ましい。(メタ)アクリロイル当量は、多いほど硬化時に発生する収縮応力が小さくなり、密着性が向上する。また、(メタ)アクリロイル当量は、少ないほど硬化性が向上する。
【0035】
A成分の重量平均分子量(Mw)は1000以上20000以下である必要がある。重量平均分子量をこの範囲内とすることによって、希釈剤との混和性が良好となり本組成物の調製が容易となる。さらにUVインキとして用いた場合に硬化性が高く、硬化物が高強度、低臭気、高密着という好ましい効果を奏する。
【0036】
A成分の重量平均分子量は、1000以上10000以下が好ましく、1000以上7000以下がより好ましく、1000以上4900以下が更に好ましい。重量平均分子量は大きいほどUV硬化時に発生する収縮応力が小さくなるので密着性が向上する傾向がある。一方、重量平均分子量は小さいほど樹脂粘度が下がるので塗工作業性が向上する傾向がある。
【0037】
A成分の重量平均分子量は、原料単量体を重合する際の重合条件、例えば、重合開始剤の種類及び量、溶媒の種類及び量、反応温度、反応時間等を適切に制御することによって、上記の範囲内に調整することができる。なお、本明細書において「重量平均分子量」というときは、GPC−LS法(GelPermeation Chromatography−Light Scattering Method:GPC−光散乱法)で測定されたポリスチレン換算の重量平均分子量を意味するものとする。
【0038】
A成分に式(2)及び/又は式(3)の構造を導入する方法については、特に限定されないが、例えば、基本骨格となる(メタ)アクリル系重合体に対して、化学修飾によって(メタ)アクリロイル系官能基を導入する方法(化学修飾法)によって製造することができる。
【0039】
式(2)で示される構造を導入する方法としては、例えば、エポキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーのエポキシ基に、(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する化合物のカルボキシル基を反応させる方法を挙げることができる。
【0040】
エポキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体は、例えば、メタクリル酸グリシジル(商品名:アクリエステルG、三菱レイヨン社製)を単独重合、または他の単量体と共重合させることにより製造できる。「(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する化合物」としては、例えば、アクリル酸(商品名:アクリル酸、三菱化学社製)やメタクリル酸(商品名:メタクリル酸、三菱レイヨン社製)、β-カルボキシエチルアクリレート(商品名:β―CEA、ダイセル・オルネクス社製)等の化合物を挙げることができる。
【0041】
また、式(3)で示される構造を導入する方法としては、例えば、イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系重合体をベースポリマーとし、このベースポリマーのイソシアネート基に、(メタ)アクリロイル基及び水酸基を含有する化合物の水酸基を反応させる方法を挙げることができる。
【0042】
イソシアネート基を有する(メタ)アクリル系重合体は、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズMOI、昭和電工社製)や2−アクリロイルオキシエチルイソシアネート(商品名:カレンズAOI、昭和電工社製)等のイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを単独重合、または他の単量体と共重合させることにより製造できる。「(メタ)アクリロイル基及び水酸基を含有する化合物」としては、例えば、2−ヒドロキシエチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを挙げることができる。
【0043】
また、重合体主鎖の片末端に炭素−炭素二重結合を含む式(4)で示される構造を導入する方法としては、例えば、国際公開第2013/089245号に記載されている連鎖移動剤である遷移金属キレート錯体の存在下に、前記式(1)で示される構造を導入するための原料単量体として例示した(メタ)アクリル単量体をラジカル重合して製造することができる。このような連鎖移動剤の具体例としては、酢酸コバルト(II)四水和物と、ジフェニルグリオキシムを反応させたものが挙げられる。
【0044】
式(5)で示される構造を導入する方法としては、例えば、上記の国際公開第2013/089245号に記載されている手法でメタクリル酸グリシジルを(共)重合して末端にエポキシ基を有する(メタ)アクリル系重合体のベースポリマーを製造し、このベースポリマーの末端のエポキシ基に(メタ)アクリロイル基及びカルボキシル基を含有する化合物のカルボキシル基を反応させる方法を挙げることができる。
【0045】
式(6)で示される構造を導入する方法としては、例えば、上記の国際公開第2013/089245号に記載されている手法でイソシアネート基含有(メタ)アクリレートを(共)重合して末端にイソシアネート基を有する(メタ)アクリル系重合体のベースポリマーを製造し、このベースポリマーの末端のイソシアネート基に(メタ)アクリロイル基及び水酸基を含有する化合物の水酸基を反応させる方法を挙げることができる。
【0046】
式(4)〜式(6)で示される末端構造の確認方法としては、例えば、核磁気共鳴装置によるH−NMR分析が挙げられる。A成分を重クロロホルムに溶解し、Varian社製UNITY INOVA 500 超伝導FT−NMR(商品名)で測定した場合、5.5及び6.2ppm付近に式(4)〜(6)の末端二重結合に由来するピークが、確認される。
【0047】
本成物におけるA成分の含有量は、A成分の構造、その他単量体単位の構造、被着体の種類、要求される硬化膜特性等によっても異なるが、全ての重合性成分の合計を100質量%とした場合に、1〜70質量%の範囲内であることが好ましく、5〜50質量%の範囲であることが更に好ましい。この含有量は多いほど硬化性が向上し、また硬化収縮が少なくなる。またこの含有率は少ないほど粘度が低下して塗工作業性が向上する。
【0048】
[光重合開始剤(B成分)]
本発明の組成物は、必要に応じ、硬化性向上を目的として、光重合開始剤(以下、B成分という。)を含んでもよい。B成分は、重合系に添加しておくと、光照射によって重合反応を惹起する触媒作用を有する添加剤を意味する。本発明においては、その種類に特に制限はなく、従来公知の光重合開始剤を用いることができる。
【0049】
B成分としては、例えば、ベンゾフェノン、α−ヒドロキシアセトフェノン(商品名:イルガキュア184、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、α−アミノアセトフェノン、ベンゾイン系化合物及びアシルフォスフィンオキサイド系化合物(例えば、イルガキュア819(商品名、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)、LucirinTPO(商品名、BASF社製)等の光重合開始剤が挙げられる。中でも、反応性が高いという理由から、ベンゾフェノン、アシルフォスフィンオキサイド系化合物が好ましい。
【0050】
B成分の含有量は、全重合性成分の合計を100質量部とした場合に、1〜20質量部の範囲内であることが好ましく、1〜10質量部の範囲であることが更に好ましい。含有量は少なすぎると、硬化性が悪化し、UVインキに適さない場合がある。また、多すぎると、塗膜の耐溶剤性が低下する場合がある。
【0051】
[重合性二重結合を有する単量体(C成分)]
本組成物は、必要に応じ、耐摩耗性向上等を目的として、A成分以外のビニル基を有するその他重合性成分(以下「C成分」という)を含んでもよい。C成分としては、(メタ)アクリロイル基含有単量体が好ましい。(メタ)アクリロイル基含有単量体としては、単官能(メタ)アクリレート、2官能(メタ)アクリレート、3官能(メタ)アクリレート、4官能以上の(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0052】
単官能(メタ)アクリレートの具体例としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、クレゾール(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、7−アミノ−3,7−ジメチルオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、エチルジエチレングリコール(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ポリウレタンモノ(メタ)アクリレート、ポリエポキシモノ(メタ)アクリレート、ポリエステルモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0053】
2官能(メタ)アクリレートの具体例としては、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロール1,3−ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールヒドロキシピバレートジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジイルジメチレンジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、水添ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカーボネートジ(メタ)アクリレート、又はこれらの単量体のポリアルキレンオキサイド付加物、ポリカプロラクトン付加物、ポリカーボネート付加物、ポリウレタンジ(メタ)アクリレート、ポリエポキシジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0054】
3官能(メタ)アクリレートの具体例としては、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ポリウレタントリ(メタ)アクリレート、ポリエポキシトリ(メタ)アクリレート、ポリエステルトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0055】
4官能以上の(メタ)アクリレートの具体例としては、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ポリエポキシテトラ(メタ)アクリレート、ポリエステルテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等のペンタ(メタ)アクリレート;、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート;、トリペンタエリスリトールヘプタ(メタ)アクリレート等のヘプタ(メタ)アクリレート;、トリペンタエリスリトールオクタ(メタ)アクリレート等のオクタ(メタ)アクリレート;4官能以上のポリウレタンポリ(メタ)アクリレート;4官能以上のポリエポキシポリ(メタ)アクリレート;4官能以上のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。更に、それらの4官能以上の(メタ)アクリレート単量体のポリアルキレンオキサイド変性品付加物、ポリカプロラクトン変性品付加物、及びポリカーボネート変性品付加物等の変性品、4官能以上のポリウレタンポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエポキシポリ(メタ)アクリレート、4官能以上のポリエステルポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0056】
(メタ)アクリルアミドの具体例としては、(メタ)アクリルアミド、イソブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、t−オクチル(メタ)アクリルアミド、ジアセトン(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0057】
C成分は一種を用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
C成分は、ビニル基を有する重合性成分の総量100質量部に対して、30〜99質量部が好ましく、50〜95質量部がより好ましい。C成分の含有量は多い程、粘度が下がるので塗工作業性が良好となる。また、C成分の含有量は少ない程、得られる硬化被膜の硬化性が良好となる。
【0058】
本組成物にC成分を配合する方法としては、例えばA成分の化学修飾(カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系化合物をエポキシ基と結合させる等)の際、希釈成分として事前に配合してもよいし、化学修飾後に配合してもよい。
【0059】
[UVインキ]
本組成物をUVインキとして用いる場合は、顔料や染料を含むことができる。
顔料の具体例としては、カーミン6B、レーキレッドC、パーマネントレッド2B、ジスアゾイエロー、ピラゾロンオレンジ、カーミンFB、クロモフタルイエロー、クロモフタルレッド、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジオキサジンバイオレット、キナクリドンマゼンダ、キナクリドンレッド、インダストロンブルー、ピリミジンイエロー、チオインジオボルドー、チオインジゴマゼンタ、ペリレンレッド、ペリノンオレンジ、イソインドリノンイエロー、アニリンブラック、昼光蛍光顔料等の有機顔料や、カーボンブラック、アルミニウム粉、ブロンズ粉、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、カドミウムレッド、群青、紺藍、ベンガラ、黄色酸化鉄、鉄黒、酸化チタン、酸化亜鉛等の無機顔料が挙げられる。
【0060】
染料の具体例としては、タートラジンレーキ、ローダリン6Gレーキ、ビクトリアピュアブルーレーキ、アルカリブルーGトーナー、ブリリアントグリーンレーキ等が挙げられる。
【0061】
顔料や染料は、ビニル基を有する重合性成分の総量100質量部に対して、1〜50重量部の範囲で配合することが好ましく、5〜30重量部とすることが更に好ましい。顔料や染料の含有量は多い程、粘度が下がるので塗工作業性が良好となる。また、顔料や染料の含有量は少ない程、得られる硬化被膜の硬化性が良好となる。
【0062】
(その他成分)
本組成物は、必要に応じて、増感剤、分散剤、ワックス、光安定剤、酸化防止剤、表面調整剤、消泡剤、熱安定剤、帯電防止剤、防曇剤、樹脂、微粒子、チクソトロピック剤、カップリング剤、並びに有機溶剤等のその他成分を含むことができる。
【0063】
増感剤の具体例としては、ベンゾインイソプロピルエーテル及びチオキサントン等が挙げられる。
【0064】
分散剤の具体例としては、BYK Chemie社製のAnti−Terra−U、Anti−Terra−203/204、Disperbyk−101、107、110、111、130、161、162、163、164、165、166、170、400、Bykumen、BYK−P104、P105、P104S、240S、Lactimon(以上、いずれも商品名)が挙げられる。
【0065】
ワックスの具体例としては、ポリアミドワックス、酸化ポリエチレンワックス等が挙げられる。
【0066】
光安定剤の具体例としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1−オクチロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート等のヒンダードアミンが挙げられる。
【0067】
酸化防止剤の具体例としては、ヒンダードフェノール化合物、有機ホスファイト化合物及び有機ホスフォナイト化合物が挙げられる。
【0068】
表面調整剤、消泡剤の具体例としては、ポリシロキサン等の非シリコーン系消泡剤、フッ素変性ポリシロキサン等のポリシロキサン系消泡剤、アルキルメタクリレートとポリアクリレートとアクリル酸との共重合物等のアクリル酸系消泡剤、ブタジエン共重合物系消泡剤及びミネラルオイル系消泡剤が挙げられる。
【0069】
熱安定剤の具体例としては、トリフェニルホスファイト、トリス(2,6−ジメチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(モノ−ノニルフェニル)ホスファイト及びトリス(ジ−ノニルフェニル)ホスファイトの混合物、ジメチルベンゼンホスホネート並びにトリメチルホスフェートが挙げられる。
【0070】
帯電防止剤の具体例としては、グリセロールモノステアレート、ステアリルスルホン酸ナトリウム及びドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウムが挙げられる。
【0071】
防曇剤の具体例としては、グリセロール−1−メタクリロイルオキシエチルウレタン及びグリセロール−1−メタクリロイルオキシプロピルウレタンが挙げられる。
【0072】
樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、アクリロニトリル系樹脂、ブタジエン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂及びフェノール系樹脂が挙げられる。
【0073】
微粒子の具体例としては、アクリルビーズ、ウレタンビーズ等の有機フィラー、シリカ、チタン等の無機フィラー及びシランカップリング剤等で表面有機化処理された無機フィラーが挙げられる。これらを本組成物に配合する方法としては、例えば、予め分散された状態のものを配合する方法及び本組成物に微粒子を配合した後に三本ロールやダイノーミル等を用いて分散させる方法が挙げられる。また、分散性を向上させるために、カルボン酸系、ポリカルボン酸系、ポリアクリル酸系等の分散剤を用いることができる。
【0074】
チクソトロピック剤の具体例としては、アマイド系、酸化ポリエチレン系、水素添加ひまし油系等の有機系チクソトロピック剤、シリカ、ベントナイト、及びそれらの有機シランカップリング処理物、表面処理炭酸カルシウム等の無機系チクソトロピック剤が挙げられる。
【0075】
カップリング剤の具体例としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、ビニル基、エポキシ基、アミノ基等の官能基が付加されたシランカップリング剤及びチタンカップリング剤が挙げられる。
【0076】
有機溶剤の具体例としては、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オクタン、シクロヘキサン、シクロペンタン等の炭化水素系、トルエン、キシレン、エチルベンゼン等の芳香族系溶剤、メタノール、エタノール、n−ブタノール、エチレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のアルコール系溶剤、酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸n−アミル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル系溶剤、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルn−アミルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系溶剤、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル等のエチレングリコール系溶剤、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶剤、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶剤及びエチレンカーボネート等のカーボネート系溶剤が挙げられる。溶剤の含有量は、ビニル基を有する重合性成分の総量100質量部に対して、30質量部以下が好ましく、5質量部以下がより好ましい溶剤の含有量は多い程、樹脂組成物の粘度が低くなり、塗装作業性やレベリング性が向上する。また、溶剤の含有量は少ない程、VOC排出量が低減される。
【0077】
[基材]
本組成物は、基材である紙や各種樹脂成形品の表面の加飾に使用できる。樹脂成形品の具体例としては、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリエステルカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂、ポリアリルジグリコールカーボネート樹脂等が挙げられる。特に、ポリメチルメタクリレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリメタクリルイミド樹脂は、透明性に優れかつ耐摩耗性改良要求も強いため、本組成物を適用することが非常に有効である。なお、樹脂成形品とは、これらの樹脂からなるシート状成形品、フィルム状成形品、各種射出成形品等の各種形状の成形品である。
基材の厚みは、剛性の観点から0.001〜10mmが好ましく、0.01〜5mmがより好ましい。
【0078】
[塗装方法]
本組成物を、基材の表面に塗布し、得られた塗膜に活性エネルギー線を照射することにより、耐摩耗性、耐候性に優れた硬化被膜を基材の表面に形成することができる。本組成物を基材に塗布するには、例えば、ハケ塗り、スプレーコート、ディップコート、スピンコート、カーテンコート、バーコート等の方法を用いることができる。また、粘度を調整するために本組成物を加温したり、亜臨界流体で希釈したりしてから塗装してもよい。本組成物の塗膜の厚みは、本組成物の硬化性、及びの耐摩耗性の観点から、0.001mm以上0.05mm以下であることが好ましく、0.002mm以上0.03mm以下がより好ましく、0.004mm以上0.02mm以下が更に好ましい。
【0079】
[硬化方法]
本組成物の塗膜に活性エネルギー線を照射すると硬化して硬化被膜となる。用いられる活性エネルギー線としては、例えば、α線、β線、γ線、紫外線が挙げられる。汎用性の観点から、活性エネルギー線としては紫外線が好ましい。紫外線発生源としては、例えば、低圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、超高圧水銀ランプ、キセノンランプ、メタルハライドランプ、マグネトロンを利用した無電極UVランプ、LEDが挙げられる。
【0080】
塗膜を硬化させる際の雰囲気としては、空気、窒素、アルゴン等の不活性ガスが挙げられる。実用性及び経済性の観点から、雰囲気としては空気が好ましい。活性エネルギー線として紫外線を使用する場合の好ましい硬化条件としては、例えば、高圧水銀灯を用いて波長340〜380nmの積算光量が10〜3000mJ/cmとなるように照射することが好ましい。
【実施例】
【0081】
以下、本発明について実施例を用いて説明する。尚、以下の記載において「部」は質量部を意味する。
【0082】
[製造例1]分散剤Aの製造
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に脱イオン水900質量部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部及びメタクリル酸メチル12質量部を入れて撹拌し、フラスコ内を窒素置換しながら50℃に昇温した。次いで、フラスコ中に重合開始剤として2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を添加し、更に60℃に昇温した。昇温後、滴下ポンプを使用して、メタクリル酸メチル18質量部を0.24質量部/分の速度で連続的に滴下した。得られた反応溶液を60℃で6時間保持した後、室温に冷却して、透明な水溶液である固形分10質量%の分散剤(以下、分散剤Aという)を得た。
【0083】
[製造例2]連鎖移動剤Aの製造
撹拌装置を備えたフラスコ中に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物1.00g、ジフェニルグリオキシム1.93g及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル80mlを入れ、室温で30分間攪拌した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体10mlを加え、更に6時間攪拌した。得られた反応物を濾過し、固形分をジエチルエーテルで洗浄し、15時間真空乾燥して、赤褐色固体の連鎖移動剤(以下、連鎖移動剤Aという)2.12gを得た。
【0084】
[製造例3]アクリル重合体(P1)の製造
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤A0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次いで、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)79.95部、エチルアクリレート(三菱化学(株)製、商品名:アクリル酸エチル)0.05部、グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルG)20部、連鎖移動剤A0.005部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーオクタO)1.33部の単量体混合物を加え、水性懸濁液とした。この後、フラスコ内を窒素置換し、80℃に昇温して3時間反応させ、更に重合率を上げるため、93℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、水性重合体懸濁液を得た。この水性重合体懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥し、アクリル重合体(以下、P1という)を得た。P1のGPC(Gel Permeation Chromatography)による重量平均分子量(以下、Mwという)を、GPCシステム(東ソー(株)製、商品名:HLC−8220GPC)を用いて以下の条件にて測定した。その結果、Mwは3100であった。
【0085】
(GPC測定条件)
カラム:「TSK−gel superHZM−M」、「TSK−gel HZM−M」、「TSK−gel HZ2000」;
溶離液:THF;
流量:0.35ml/min;
注入量:10μl;
カラム温度:40℃;
検出器:UV−8020。
【0086】
また、P1は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0087】
[製造例4]アクリル重合体(P2)の製造
連鎖移動剤Aを0.0023部、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートを0.8部とした以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P2という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは7100であった。また、P2は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0088】
[製造例5]アクリル重合体(P3)の製造
連鎖移動剤Aを0.0035部とした以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P3という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは4300であった。また、P3は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0089】
[製造例6]アクリル重合体(P4)の製造
メチルメタクリレートを59.95部、グリシジルメタクリレートを40部とした以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P4という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは3800であった。また、P4は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0090】
[製造例7]アクリル重合体(P5)の製造
メチルメタクリレートを97.95部、グリシジルメタクリレートを2部とした以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P5という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは2900であった。また、P5は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0091】
[製造例8]アクリル重合体(P6)の製造
メチルメタクリレートを89.95部、グリシジルメタクリレートを0部、連鎖移動剤Aを0.0035部とし、2−ヒドロキシエチルメタクリレート10部を追加した以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P6という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは3500であった。また、P6は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRが2−ヒドロキシルエチル基でRがメチル基である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又は2−ヒドロキシルエチル基である構造を有し、式(2)、(3)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0092】
[製造例9]アクリル重合体(P7)の製造
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、メチルイソブチルケトン(以下、MIBKという)30部、酢酸ブチル26.7部を入れて撹拌し、均一な溶媒とした。次いで、フラスコ内を窒素置換し110℃に昇温してスチレン(新日鉄住金化学(株)製、商品名:スチレンモノマー)20部、2−エチルヘキシルアクリレート(三菱化学(株)製、商品名:アクリル酸2−エチルヘキシル)21部、2−エチルヘキシルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルEH)23.2部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルHO)34.8部、メタクリル酸(三菱レイヨン(株)製、商品名:メタクリル酸)1部、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)(大塚化学(株)製、商品名:AMBN)2.5部、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーオクタO)2.4部の混合溶液を3時間かけて滴下した。更に1時間後、重合率を上げるため、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)0.2部、MIBK10部の混合液を投入し、2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却し、MIBK、酢酸ブチルを揮発させて、アクリル重合体(以下、P7という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは9000であった。また、P7は、式(1)において、Rが2−エチルヘキシル基でRが水素、Rが2−エチルヘキシル基でRがメチル基、及びRが2−ヒドロキシルエチル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0093】
[製造例10]アクリル重合体(P8)の製造
連鎖移動剤を0部とした以外は製造例3と同様にアクリル重合体(以下、P8という)を製造した。製造例3と同様に測定したMwは23000であった。また、P8は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0094】
[製造例11](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A1)の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた5リットルの4つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON製、商品名:ミラマーM200)100部を入れ70℃まで1時間で昇温した。続いて、製造例3で合成したアクリル重合体P1を90.79部、アクリル酸(三菱化学(株)製、商品名:アクリル酸)9.21部、トリフェニルホスフィン(和光純薬(株)製)0.33部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、商品名:MQ)0.1部を入れた。この混合物を97℃まで3時間で昇温した後、10時間保持し、1,6−ヘキサンジオールジアクリレートに溶解した(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A1)を得た。A1のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、3500であった。また、A1は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0095】
[製造例12](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A2)の合成
アクリル重合体P1をアクリル重合体P2とした以外は製造例11と同様にアクリル重合体(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A2)を製造した。A2のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、7800であった。また、A2は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0096】
[製造例13](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A3)の合成
アクリル重合体P1をアクリル重合体P3とした以外は製造例11と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A3)を製造した。A3のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、4800であった。また、A3は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0097】
[製造例14](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A4)の合成
90.79部のアクリル重合体P1を83.14部のアクリル重合体P4とし、アクリル酸の量を16.86部とした以外は製造例11と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A4)を製造した。A4のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、4600であった。また、A4は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0098】
[製造例15](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A5)の合成
90.79部のアクリル重合体P1を99.00部のアクリル重合体P5とし、アクリル酸の量を1.00部とした以外は製造例11と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A5)を製造した。A5のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、3000であった。また、A5は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0099】
[製造例16](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A6)の合成
90.79部のアクリル重合体P1を90.22部のアクリル重合体P6とし、アクリル酸9.21部をアクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工(株)製、商品名:カレンズAOI)9.78部とした以外は製造例11と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A6)を製造した。A6のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、4100であった。また、A6は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRが2−ヒドロキシルエチル基でRがメチル基である構造を有し、式(3)において、R31がエチレン基でR32がエチレン基でRが水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又は2−ヒドロキシルエチル基である構造を有し、式(6)において、R31がエチレン基でR32がエチレン基でRが水素である構造を有し、式(2)及び(4)の構造は有していない。
【0100】
[製造例17](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A7)の合成
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートをジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(MIWON製、商品名:ミラマーM600)とした以外は製造例11と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A7)を製造した。A7のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、3500であった。また、A7は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0101】
[製造例18](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A8)の合成
1,6−ヘキサンジオールジアクリレートをジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(MIWON製、商品名:ミラマーM600)とした以外は製造例12と同様に(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(A8)を製造した。A8のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、7800であった。また、A8は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=0、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0102】
[製造例19](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(A9)の合成
撹拌機、冷却管及び温度計を備えたフラスコ中に、脱イオン水145部、硫酸ナトリウム0.1部及び分散剤A0.25部を入れて撹拌し、均一な水溶液とした。次いで、メチルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルM)79.95部、エチルアクリレート(三菱化学(株)製、商品名:アクリル酸エチル)0.05部、グリシジルメタクリレート(三菱レイヨン(株)製、商品名:アクリエステルG)20部、連鎖移動剤A0.005部及び1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーオクタO)1.33部の単量体混合物を加え、水性懸濁液とした。この後、フラスコ内を窒素置換し、80℃に昇温して3時間反応させ、更に重合率を上げるため、93℃に昇温して1時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、フラスコ内を窒素から空気へ置換し、β―カルボキシエチルアクリレート(ダイセル・オルネクス(株)製、商品名:β―CEA)20.26部、トリエチルアンモニウムクロライド(和光純薬(株)製)2.5部、ハイドロキノンモノメチルエーテル(川口化学工業(株)製、商品名:MQ)0.1部を入れた。この混合物を95℃まで1時間で昇温した後、10時間保持し、水性重合体懸濁液を得た。この水性重合体懸濁液を目開き45μmのナイロン製濾過布で濾過し、濾物を脱イオン水で洗浄し、脱水し、40℃で16時間乾燥し、(メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(以下、A9という)を得た。A9のMwを、分子量1000以下の成分を除いて算出したところ、3300であった。また、A9は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=1、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(4)において、Rがメチル基又はグリシジル基である構造を有し、式(5)において、n=1、Rが水素である構造を有し、式(3)及び(6)の構造は有していない。
【0103】
[製造例20](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(X1)の合成
撹拌機、冷却管、温度計及び水分離器を備えたフラスコに、アクリル重合体P7を83.84部、アクリル酸を16.16部、トルエン100部、p−トルエンスルホン酸2部及びハイドロキノン0.05部を仕込み、加熱攪拌してトルエン還流し、水の生成が見られなくなるまで反応を続け、トルエンを揮発させ、(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(X1)を製造した。X1のMwは、11000であった。また、X1は、式(1)において、Rが2−エチルヘキシル基でRが水素、Rが2−エチルヘキシル基でRがメチル基、及びRが2−ヒドロキシルエチル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)、(3)、(4)、(5)及び(6)の構造は有していない。
【0104】
[製造例21](メタ)アクリロイル基を側鎖に有する重合体(X2)の合成
アクリル重合体をP8とした以外は製造例11と同様にアクリル重合体(メタ)アクリロイル基を持つ重合体(X2)を製造した。X2のMwを、分子量1000以下の成分をカットして算出したところ、25000であった。また、X2は、式(1)において、Rがメチル基でRがメチル基、Rがエチル基でRが水素、及びRがグリシジル基でRがメチル基である構造を有し、式(2)において、n=0、R21がメチル基でR22が水素である構造を有し、式(3)、(4)、(5)、(6)の構造は有していない。
【0105】
製造例1〜21で製造した各重合体について、含まれる式(1)〜(6)で示される構造の有無と重量平均分子量を表1に示した。
【表1】
【0106】
[実施例1]
(1)活性エネルギー線重合性組成物の調製とE型粘度
表2に示す配合比で調製した活性エネルギー線重合性組成物を、東機産業(株)製の粘度計(商品名:VISCOMETER TVE−20H)を用い、樹脂組成物の50℃E型粘度を測定した。その評価結果を表2に示す。
【0107】
(E型粘度の評価基準)
A:E型粘度が50000mPa・s未満
F:E型粘度が50000mPa・s以上
【0108】
(2)活性エネルギー線重合性組成物の塗装方法
表2に示す配合比で調製した活性エネルギー線重合性組成物を、厚さ2mmのガラス板に、硬化被膜の厚みが10μmになるようにバーコート塗装した。
【0109】
(3)塗膜の硬化性の評価
(2)で得られた乾燥した塗膜に、空気中で高圧水銀ランプを用いて、波長300nm〜400nmのピーク照度が80mW/cm、積算光量が100mJ/cmの紫外線を照射し、指先で軽く触れ、タックフリーか否かを確認した。タックフリーでない場合は、この紫外線照射工程をタックフリーになるまで繰り返し行った。必要な積算光量により以下の基準で硬化性を評価した。その評価結果を表2に示す。
【0110】
(硬化性の評価基準)
A:必要な積算光量が2700mJ/cm未満
B:必要な積算光量が2700mJ/cm以上3700mJ/cm未満
F:必要な積算光量が3700mJ/cm以上
【0111】
(4)硬化被膜の硬化収縮率の評価
表2に示す配合比で調製した樹脂組成物の液比重、及び空気中で高圧水銀ランプを用いて、波長300nm〜400nmのピーク照度が80mW/cm、積算光量が5000mJ/cmの紫外線を照射して硬化させたものの比重の比から、以下の式を用いて、硬化収縮率を算出した。
硬化収縮率(%)=(硬化物比重−液比重)/硬化物比重×100
(硬化収縮率の評価基準)
A:硬化収縮率が7%未満
B:硬化収縮率が7%以上8%未満
F:硬化収縮率が8%以上
【0112】
[実施例2〜8及び比較例1〜4]
活性エネルギー線重合性組成物の組成を表2に示す配合に変更した以外は、実施例1と同様に活性エネルギー線重合性組成物を調製し、これを用いて硬化被膜付の樹脂成形品を作製し、評価を行った。その評価結果を表2に示す。
【表2】
表2の略号は以下の通りである
・「P1」:製造例3で合成した重合体(P1)
・「P2」:製造例4で合成した重合体(P2)
・「P3」:製造例5で合成した重合体(P3)
・「P4」:製造例6で合成した重合体(P4)
・「P5」:製造例7で合成した重合体(P5)
・「P6」:製造例8で合成した重合体(P6)
・「P7」:製造例9で合成した重合体(P7)
・「P8」:製造例10で合成した重合体(P8)
・「A1」:製造例11で合成した重合体(A1)
・「A2」:製造例12で合成した重合体(A2)
・「A3」:製造例13で合成した重合体(A3)
・「A4」:製造例14で合成した重合体(A4)
・「A5」:製造例15で合成した重合体(A5)
・「A6」:製造例16で合成した重合体(A6)
・「A7」:製造例17で合成した重合体(A7)
・「A8」:製造例18で合成した重合体(A8)
・「A9」:製造例19で合成した重合体(A9)
・「X1」:製造例20で合成した重合体(X1)
・「X2」:製造例21で合成した重合体(X2)
・「BNP」:ベンゾフェノン(大同化成工業(株)製、商品名:BENZOPHENONE)
・「TPO」:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド(BASF社製、商品名:ルシリンTPO)
・「HDDA」: 1,6−ヘキサンジオールジアクリレート(MIWON製、商品名:ミラマーM200)
・「DPHA」:ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(MIWON製、商品名:ミラマーM600)
・「TiO」: 酸化チタン(石原産業(株)製、商品名:CR−97)
【0113】
製造例1〜6、及び製造例11〜19では、脱溶剤工程を含まないことから、安価にA成分を製造できた。また、表2に示す評価結果より、そのA成分を含む実施例の活性エネルギー線重合性組成物は、低粘度で、硬化性が優れ、硬化収縮の少ない良好な組成物であることが分かった。
【0114】
一方、A成分を含まない比較例1〜4の活性エネルギー線重合性組成物は、硬化収縮、粘度、硬化性の全てを満足するものではなかった。