【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成26年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「SIP(戦略的イノベーション創造プログラム)/次世代パワーエレクトロニクス」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第一線分を引き得る主表面上に、下記条件(C1)および(D1)の少なくとも一方を充たす長さ40mmの仮想的な線分である第二線分を少なくともひとつ引き得る、請求項1〜4のいずれか1項に記載のGaN単結晶:
(C1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射の
XRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が40arcsec未満である;
(D1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の総延長の50%以上の部分が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、請求項1〜8のいずれか1項に記載のGaN単結晶。
前記斜方格子パターンが長手方向の互いに異なる第一帯状転位群および第二帯状転位群から構成されており、該第一帯状転位群間のピッチと該第二帯状転位群間のピッチが異なる、請求項12に記載のGaN単結晶。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の主たる目的は、改善された品質を有する新規なGaN単結晶を提供すること、および、改善された品質を有するGaN単結晶を製造するための新規なGaN単結晶製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施形態には以下が含まれる。
[1]一方側の主表面であるガリウム極性面と反対側の主表面である窒素極性面とを有し、少なくともいずれかの主表面上に、下記条件(A1)および(B1)の少なくとも一方を充たす長さ40mmの仮想的な線分である第一線分を少なくともひとつ引き得るGaN単結晶:
(A1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が40arcsec未満である;
(B1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
[2]前記第一線分が前記条件(A1)を充たす、前記[1]に記載のGaN単結晶。
[3]前記第一線分が前記条件(A1)に加え更に下記条件(A2)を充たす、前記[2]に記載のGaN単結晶;(A2)前記条件(A1)にいうXRC測定における第一線分上の全測定点の98%以上でXRCのFWHMが30arcsec未満である。
[4]前記第一線分が前記条件(B1)を充たす、前記[1]〜[3]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[5]前記第一線分を引き得る主表面上に、下記条件(C1)および(D1)の少なくとも一方を充たす長さ40mmの仮想的な線分である第二線分を少なくともひとつ引き得る、前記[1]〜[4]のいずれかに記載のGaN単結晶:
(C1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が40arcsec未満である;
(D1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
[6]前記第二線分が前記条件(C1)を充たす、前記[5]に記載のGaN単結晶。
[7]前記第二線分が前記条件(C1)に加え更に下記条件(C2)を充たす、前記[6
]に記載のGaN単結晶:(C2)前記条件(C1)にいうXRC測定における第二線分上の全測定点の98%以上でXRCのFWHMが30arcsec未満である。
[8]前記第二線分が前記条件(D1)を充たす、前記[5]〜[7]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[9]前記ガリウム極性面上に、帯状転位群で構成された周期的格子パターンを有する、前記[1]〜[8]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[10]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の少なくとも一部は、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[9]に記載のGaN単結晶。
[11]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の総延長の50%以上の部分が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[9]に記載のGaN単結晶。
[12]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の全ての部分が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[9]に記載のGaN単結晶。
[13]前記ガリウム極性面上の、前記周期的格子パターンとは重ならない位置に、転位アレイを有する、前記[9]〜[12]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[14]前記周期的格子パターンが斜方格子パターンである、前記[9]〜[13]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[15]前記斜方格子パターンが長手方向の互いに異なる第一帯状転位群および第二帯状転位群から構成されており、該第一帯状転位群間のピッチと該第二帯状転位群間のピッチが異なる、前記[14]に記載のGaN単結晶。
[16]前記第一帯状転位群間のピッチおよび第二帯状転位群間のピッチは、一方が他方の1.5倍以上である、前記[15]に記載のGaN単結晶。
[17]一方側の主表面であるガリウム極性面と反対側の主表面である窒素極性面とを有し、前記ガリウム極性面上に、帯状転位群で構成された周期的格子パターンを有するGaN単結晶。
[18]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の少なくとも一部が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[17]に記載のGaN単結晶。
[19]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の総延長の50%以上の部分が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[17]に記載のGaN単結晶。
[20]前記周期的格子パターンを構成する帯状転位群の全ての部分が、前記ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[17]に記載のGaN単結晶。
[21]前記ガリウム極性面上の、前記周期的格子パターンとは重ならない位置に、転位アレイを有する、前記[17]〜[20]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[22]前記周期的格子パターンが、長手方向の互いに異なる第一帯状転位群および第二帯状転位群から構成された斜方格子パターンである、前記[17]〜[21]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[23]前記第一帯状転位群間のピッチおよび前記第二帯状転位群間のピッチがいずれも1mm以上である、前記[22]に記載のGaN単結晶。
[24]前記第一帯状転位群間のピッチおよび前記第二帯状転位群間のピッチが異なる、前記[22]または[23]に記載のGaN単結晶。
[25]前記第一帯状転位群間のピッチおよび第二帯状転位群間のピッチは、一方が他方の1.5倍以上である、前記[24]に記載のGaN単結晶。
[26]Li、Na、K、MgおよびCaの濃度が1×10
16atoms/cm
3未満である、[1]〜[25]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[27]Fを含有する、[1]〜[26]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[28]FおよびIを含有する、[1]〜[27]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[29]10
17atoms/cm
3台またはそれより高い濃度のHを含有する、[1]〜[28]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[30]赤外吸収スペクトルの3100〜3500cm
-1にガリウム空孔‐水素複合体に帰属するピークを有する、[1]〜[29]のいずれかに記載のGaN単結晶。
[31]前記[1]〜[29]のいずれかに記載のGaN単結晶を準備するステップと、該準備したGaN単結晶上に一種以上の窒化物半導体をエピタキシャル成長させるステップと、を含む窒化物半導体デバイスの製造方法。
[32]前記[1]〜[29]のいずれかに記載のGaN単結晶を準備するステップと、該準備したGaN単結晶上に一種以上の窒化物半導体をエピタキシャル成長させるステップと、を含むエピタキシャルウエハの製造方法。
[33]前記[1]〜[29]のいずれかに記載のGaN単結晶を準備するステップと、該準備したGaN単結晶上に窒化物半導体をエピタキシャル成長させるステップと、を含む窒化物半導体結晶の製造方法。
[34]前記[1]〜[29]のいずれかに記載のGaN単結晶を異組成基板に接合させるステップを含む、GaN層接合基板の製造方法。
【0010】
[35]GaNの窒素極性面を有するシードを準備する第一ステップと;該第一ステップで準備したシードの該窒素極性面上に、周期的格子パターンを構成する直線状開口を有するパターンマスクを配置する第二ステップと;該第一ステップで準備したシードの該窒素極性面上に、該第二ステップで配置したパターンマスクを通して、GaN結晶をアモノサーマル的に成長させるステップであって、該GaN結晶と該パターンマスクとの間にはギャップが形成される第三ステップとを含む、GaN単結晶製造方法。
[36]前記第二ステップで配置されたパターンマスクにおいては、前記周期的格子パターンを構成する直線状開口の少なくとも一部が、前記窒素極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[35]に記載の製造方法。
[37]前記第二ステップで配置されたパターンマスクにおいては、前記周期的格子パターンを構成する直線状開口の総延長の50%以上の部分が、前記窒素極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[35]に記載の製造方法。
[38]前記第二ステップで配置されたパターンマスクにおいては、前記周期的格子パターンを構成する直線状開口の全ての部分が、前記窒素極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸している、前記[35]に記載の製造方法。
[39]前記周期的格子パターンが、長手方向の互いに異なる第一直線状開口および第二直線状開口から構成された斜方格子パターンである、前記[35]〜[38]のいずれかに記載の製造方法。
[40]前記第一線状開口間のピッチおよび前記第二線状開口間のピッチがいずれも1mm以上である、前記[39]に記載の製造方法。
[41]前記第一直線状開口間のピッチおよび前記第二直線状開口間のピッチが異なる、前記[39]または[40]に記載の製造方法。
[42]前記第一直線状開口間のピッチおよび第二直線状開口間のピッチは、一方が他方の1.5倍以上である、前記[41]に記載の製造方法。
[43]前記第三ステップでは、前記GaN結晶と前記パターンマスクの間にボイドが形成される、前記[35]〜[42]のいずれかに記載の製造方法。
[44]更に、前記第三ステップで成長させたGaN結晶をC面に平行または略平行にスライスするステップを含む、前記[35]〜[43]のいずれかに記載の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
一実施形態によれば、改善された品質を有する新規なGaN単結晶が提供される。他の一実施形態によれば、改善された品質を有するGaN単結晶を製造するための、新規なG
aN単結晶製造方法が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0013】
GaN結晶では、[0001]に平行な結晶軸がc軸、<10−10>に平行な結晶軸がm軸、<11−20>に平行な結晶軸がa軸と呼ばれる。c軸に直交する結晶面はC面(C-plane)、m軸に直交する結晶面はM面(M-plane)、a軸に直交する結晶面はA面(A-plane)と呼ばれる。
以下において、結晶軸、結晶面、結晶方位等に言及する場合には、特に断らない限り、GaN結晶の結晶軸、結晶面、結晶方位等を意味するものとする。
以下、適宜図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0014】
1.第一実施形態
本発明の第一実施形態は、GaN単結晶に関する。
1.1.GaN単結晶
(1)外形およびサイズ
第一実施形態に係るGaN単結晶は、一方側の主表面とその反対側の主表面とを備える板の形状を有しており、その厚さ方向はc軸に平行または略平行である。該2つの主表面の一方はガリウム極性面であり、他方は窒素極性面である。主表面の形状に特に限定はない。
図1は、第一実施形態に係るGaN単結晶が有し得る形状を例示する図面であり、
図1(a)は斜視図、
図1(b)は側面図である。
図1を参照すると、GaN単結晶10は円盤であり、[0001]側の主表面であるガリウム極性面11と、[000−1]側の主表面である窒素極性面12の形状は円形である。ガリウム極性面11と窒素極性面12とは、側面13を介してつながっている。
【0015】
図2(a)〜(c)は、それぞれ、第一実施形態に係るGaN単結晶が有し得る他の形状を例示する斜視図である。
図2においては、
図1に示された構成と対応する構成に、
図1と同じ符号を付している(他の図面においても同様である)。
図2(a)〜(c)において、GaN単結晶10が有するガリウム極性面11および窒素極性面12の形状は、それぞれ、四角形、六角形、および八角形である。
第一実施形態に係るGaN単結晶の主表面は、10mm×10mmの正方形を内包するサイズを有し、好ましくは4cm
2以上、より好ましくは5cm
2以上、より好ましくは15cm
2以上の面積を有する。該主表面の面積は、18cm
2以上、38cm
2以上、71cm
2以上、165cm
2以上、299cm
2以上または683cm
2以上であり得る。
【0016】
第一実施形態のGaN単結晶において、ガリウム極性面は(0001)と平行であってもよく、また、(0001)から僅かに傾斜していてもよい。ガリウム極性面の(0001)からの傾斜は、通常10°以下であり、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下であり、1°以下であってもよい。
第一実施形態のGaN単結晶において、窒素極性面は(000−1)と平行であってもよく、また、(000−1)から僅かに傾斜していてもよい。窒素極性面の(000−1)からの傾斜は、通常10°以下であり、好ましくは5°以下、より好ましくは2°以下であり、1°以下であってもよい。
限定するものではないが、好ましくは、ガリウム極性面と窒素極性面は互いに平行である。
【0017】
第一実施形態のGaN単結晶は、インゴットまたはウエハ(C面GaNウエハ)であり得る。
第一実施形態のGaN単結晶が円盤形状のインゴットまたはウエハである場合、その直径は通常20mm以上、305mm以下である。該直径は、典型的には、25mm(約1インチ)、45〜55mm(約2インチ)、95〜105mm(約4インチ)、145〜155mm(約6インチ)、195〜205mm(約8インチ)、295〜305mm(約12インチ)等である。
第一実施形態のGaN単結晶が矩形の主表面を有するインゴットまたはウエハである場合、該矩形の各辺の長さは、通常2cm以上、好ましくは3cm以上であり、また、通常15cm以下である。
第一実施形態のGaN単結晶がC面GaNウエハである場合、ハンドリングに不都合が生じない程度の強度が求められることから、その厚さは、好ましくは250μm以上、より好ましくは300μm以上である。主表面のサイズに応じて、更に厚くすることもできる。
【0018】
C面GaNウエハでは、ガリウム極性面と側面との境界を滑らかにするための面取りは、必要に応じて適宜行うことができる。窒素極性面と側面との境界についても同じである。
第一実施形態のGaN単結晶の側面には、結晶の方位を表示するフラット部であるオリエンテーション・フラットを設けることができる他、ガリウム極性面と窒素極性面の識別を容易にするためのフラット部であるインデックス・フラットを設けることができる。その他、第一実施形態のGaN単結晶には、必要に応じて様々なマーキングを施すことができる。
【0019】
(2)不純物
GaN結晶に不純物として含有されるアルカリ金属、アルカリ土類金属およびハロゲンの濃度は、SIMS(Secondary Ion Mass Spectrometry)で測定するのが一般的である。以下で言及するアルカリ金属、アルカリ土類金属およびハロゲンの濃度は、SIMSで測定される、表面からの深さが1μm以上の部分における値である。
第一実施形態のGaN単結晶においては、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)のようなアルカリ金属の濃度が、好ましくは1×10
16atoms/cm
3未満、より好ましくは1×10
15atoms/cm
3未満である。
第一実施形態のGaN単結晶においては、マグネシウム(Mg)およびカルシウム(Ca)のようなアルカリ土類金属の濃度が、好ましくは1×10
16atoms/cm
3未満、より好ましくは1×10
15atoms/cm
3未満である。
第一実施形態のGaN単結晶は、アモノサーマル法で成長されたGaN結晶を含み得るところ、塩化アンモニウム(NH
4Cl)、ヨウ化アンモニウム(NH
4I)、臭化アンモニウム(NH
4Br)、フッ化アンモニウム(NH
4F)等のハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いて、白金(Pt)製のカプセル内でアモノサーマル的に成長させたGaN結晶における、アルカリ金属およびアルカリ土類金属の濃度は、通常、1×10
16atoms/cm
3未満である。
【0020】
ハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いてアモノサーマル法で成長されたGaN結晶におけるハロゲンの濃度は、鉱化剤に含まれるハロゲン種を除き、通常5×10
15atoms/cm
3未満(検出下限未満)である。
ハロゲン化アンモニウムを鉱化剤に用いてアモノサーマル法で成長されたGaN結晶は、通常、10
17atoms/cm
3台またはそれより高い濃度の水素(H)を含有する。かかるGaN単結晶における水素濃度は、典型的には5×10
17atoms/cm
3以上であり、更には1×10
18atoms/cm
3以上であり得る。第一実施形態のGaN単結晶における水素濃度は、通常10
21atoms/cm
3台以下であり、5×10
20atoms/cm
3以下、1×10
20atoms/cm
3以下、5×10
19atoms/cm
3以下等であり得る。
アモノサーマル法で成長されたGaN結晶は、赤外吸収スペクトルの3100〜3500cm
-1に、ガリウム空孔‐水素複合体(gallium vacancy‐hydrogen complex)に帰属するピークを有する。HVPE法やNaフラックス法で成長されたGaN結晶においてかかる赤外吸収ピークが観測されることはない。
【0021】
一例において、第一実施形態のGaN単結晶は、酸素(O)、ケイ素(Si)、ゲルマニウム(Ge)、硫黄(S)等で意図的にドープすることにより、n型導電性とすることができる。
一例において、第一実施形態のGaN単結晶は、鉄(Fe)、マンガン(Mn)、コバルト(Co)、ニッケル(Ni)、銅(Cu)、マグネシウム(マグネシウム)等で意図的にドープすることにより、半絶縁性とすることができる。
【0022】
(3)帯状転位群
第一実施形態に係るGaN単結晶は、帯状転位群で構成された周期的格子パターンを、そのガリウム極性面上に有するものであり得る。
GaN単結晶がガリウム極性面上に有する転位は、当該GaN単結晶をエッチングすることにより、可視化することができる。適切な条件でエッチングすることにより、転位が存在する場所には光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)等で観察可能なエッチピットが形成されるからである。
本発明者等が確認しているところでは、270℃に加熱した89%硫酸をエッチャントに用いて1時間以上のエッチングを行うと、GaN結晶のガリウム極性面に存在する全ての種類の貫通転位(刃状転位、螺旋転位および混合転位)に対応したエッチピットが確実に形成される。
【0023】
第一実施形態に係るGaN単結晶がガリウム極性面上に有し得る、帯状転位群からなる周期的格子パターンのいくつかの例を
図3および
図4に示す。
図3および
図4に含まれる各図面は、第一実施形態に係る円盤形のGaN単結晶10のガリウム極性面11側を示す平面図である。いずれの図面においても、破線で示す帯状転位群14が、ガリウム極性面11上で周期的格子パターンを構成している。
図3(a)において帯状転位群14が形成するのは、斜方格子パターンである。
図3(b)において帯状転位群14が形成するのは、傾斜したレンガ格子パターンである。
図3(c)において帯状転位群14が形成するのは、ヘリンボーン格子パターンである。
図3(d)において帯状転位群14が形成するのは、斜方格子パターンと傾斜したレンガ格子パターンの折衷パターンである。
【0024】
図4(e)において帯状転位群14が形成するのは、三角格子パターンである。
図4(f)において帯状転位群14が形成するのは、扁平六角格子パターンである。
図4(g)において帯状転位群14が形成するのは、毘沙門亀甲格子パターンである。
一例に係るGaN単結晶では、ガリウム極性面上で周期的格子パターンを構成する帯状転位群の少なくとも一部が、ガリウム極性面とM面[(1−100)面、(10−10)面または(01−10)面]との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していてもよい。
一例に係るGaN単結晶では、ガリウム極性面上で周期的格子パターンを構成する帯状転位群の総延長の50%以上の部分が、ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していてもよい。
一例に係るGaN単結晶では、ガリウム極性面上で周期的格子パターンを構成する帯状転位群の全ての部分が、ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していてもよい。
【0025】
第一実施形態に係るGaN単結晶がガリウム極性面上に有してもよい帯状転位群は、当該GaN単結晶が製造される過程で、パターンマスクを用いたSAG(Selective Area Growth)技法が使用されたことを示す痕跡である。ここでいう「当該GaN単結晶が製造される過程」には、「当該GaN単結晶」を成長させるために使用されたシードの製造過程も含まれる。
例えば、GaNの窒素極性面上に、直線状開口からなる六角格子パターンを有するパターンマスクを配置し、該パターンマスクを通して該窒素極性面上に成長させたGaN単結晶のガリウム極性面には、シードから引き継がれた貫通転位群からなる六角格子パターンが現れる。この六角格子パターンの形状、サイズ、方位等は、該パターンマスクに設けられた、直線状開口からなる六角格子パターンのそれを反映している。
このGaN単結晶のガリウム極性面または窒素極性面上に更にGaN結晶を成長させると、該六角格子パターンは成長したGaN結晶にも引き継がれる。
【0026】
図5は、第一実施形態に係るGaN単結晶の主表面の一部を模式的に示す平面図である。
図5を参照すると、GaN単結晶10がガリウム極性面11上に有する帯状転位群14は2種類、すなわち、長手方向が互いに異なる第一帯状転位群141および第二帯状転位群142である。複数の該第一帯状転位群141と複数の該第二帯状転位群142とによって四角格子パターンが構成されている。
帯状転位群14を構成する貫通転位は、GaN単結晶10の成長時に用いたシードから引き継がれたもので、該帯状転位群14が構成する斜方格子パターンは、GaN単結晶10を該シードの表面上に成長させる際に、該表上に設置されたパターンマスクが有していた開口のパターンを反映している。
【0027】
第帯状転位群141と第二帯状転位群142は、少なくとも一方が、ガリウム極性面11とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していることが好ましい。
第一帯状転位群141の総延長が第二帯状転位群142の総延長と同等以上であるときは、少なくとも第一帯状転位群が、ガリウム極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していることが好ましい。換言すれば、帯状転位群141の総延長の50%以上の部分が、該方向に延伸していることが好ましい。
より好ましいのは、第帯状転位群141と第二帯状転位群142の両方が、ガリウム極性面11とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していることである。
【0028】
第一帯状転位群141間のピッチと第二帯状転位群142間のピッチは、それぞれ、好ましくは1mm以上であり、より好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上、より好ましくは4mm以上であり、また、通常20mm以下である。
ここでいうピッチは、隣り合う2つの帯状転位群間の、中心線間距離である。
図5では、第一帯状転位群141間のピッチよりも第二帯状転位群142間のピッチの方が大きいが、両者は同じであってもよい。好適例においては、第一帯状転位群141間のピッチと第二帯状転位群142間のピッチのうち、一方が他方の1.5倍以上、更には2倍以上であってもよい。
【0029】
GaN単結晶10のガリウム極性面11には、斜方格子パターンを成す帯状転位群14に加え、該斜方格子パターンとは重ならない位置に転位アレイ15を有している。この転位アレイ15は、GaN単結晶10の成長過程において生じたコアレスに起因して形成されたものである。
GaN単結晶10のガリウム極性面11における転位密度は、GaN単結晶10を成長させるときに用いられたシードの品質によって変化する。好適例では、100μm×100μmの正方形領域内に存在する転位の数が、帯状転位群14上および転位アレイ15上を除いて、平均的に1個以下(転位密度1×10
4cm
-2以下)である。帯状転位群14上においては、100μm×100μmの正方形領域内の転位の数が、多い場所では100個を超え得るが、通常は100個未満(転位密度1×10
6cm
-2未満)である。
【0030】
(4)結晶性
第一実施形態に係るGaN単結晶においては、その少なくとも一方の主表面上に、下記条件(A1)および(B1)の少なくとも一方、好ましくは両方を充たす、長さ40mmの線分である第一線分を、少なくともひとつ引き得ることが望ましい。
(A1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が40arcsec未満である。
(B1)当該第一線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第一線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
XRCとは、X線ロッキングカーブ(またはX線回折ロッキングカーブ)のことで、そのFWHM(Full Width at Half Maximum)は、結晶の品質評価に一般的に用いられている指標である。
上記条件(B1)にいうXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は、簡単にいえば、当該GaN単結晶におけるc軸の方向が第一線分上でどのくらい変動しているかを表している。
【0031】
前記第一線分は、前記条件(A1)に加え、更に下記条件(A2)を充たすことが好ま
しい。
(A2)前記条件(A1)にいうXRC測定における第一線分上の全測定点の98%以上でXRCのFWHMが30arcsec未満である。
第一実施形態のGaN単結晶において、上記第一線分は、ガリウム極性面と窒素極性面の少なくともいずれかに引くことができればよい。場合によっては主表面の片方が粗面仕上げされていて、XRC測定に適さないことがあり得る。両主表面がXRC測定可能に仕上げられたGaN単結晶の場合、一方の主表面に第一線分を引くことができれば、他方の主表面にも第一線分を引き得ることが多い。
第一実施形態に係るGaN単結晶の主表面上に引き得る上記第一線分のうち、少なくともひとつは、該主表面の中心(重心)を通ることが望ましいが、限定されるものではない。
【0032】
第一実施形態のGaN単結晶においては、上記第一線分を引き得る主表面上に、下記条件(C1)および(D1)の少なくとも一方、好ましくは両方を充たす、長さ40mmの仮想的な線分である第二線分を、少なくともひとつ引き得ることが望ましい。
(C1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのFWHMの最大値が40arcsec未満である。
(D1)第二線分は前記第一線分の少なくともひとつと直交し、かつ、当該第二線分上において、各ωスキャンの際のX線入射面を当該第二線分と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全測定点間でのXRCのピーク角度の最大値と最小値との差が0.2°未満である。
【0033】
前記第二線分は、前記条件(C1)に加え、更に下記条件(C2)を充たすことが好ましい。
(C2)前記条件(C1)にいうXRC測定における第二線分上の全測定点の98%以上でXRCのFWHMが30arcsec未満である。
第一実施形態に係るGaN単結晶の主表面上に引き得る上記第二線分のうち、少なくともひとつは、該主表面の中心(重心)を通ることが望ましいが、限定されるものではない。
【0034】
第一線分に該当する仮想的な線分および第二線分に該当する仮想的な線分を主表面上に引くことのできるGaN単結晶の一例を
図6に示す。
図6に示すGaN単結晶10は、(0001)面に平行または略平行なガリウム極性面11を有するGaNウエハまたはGaNインゴットであり、そのガリウム極性面11には、第一線分に該当する仮想的な線分LS1と、第二線分に該当する仮想的な線分LS2を引くことができる。
線分LS1はm軸に平行であってもよく、その場合、線分LS1に直交する線分LS2はa軸に平行である。
線分LS1および線分LS2は、長さがいずれも40mmであり、かつ、いずれもガリウム極性面11の略中心を通過している。
【0035】
線分LS1上において、各ωスキャンの際のX線入射面を線分LS1と平行にして(002)反射のXRCを0.2mm間隔で測定したとき、全部で200個の測定点間における、XRCのFWHMの最大値は40arcsec未満である。好ましくは、該200個の測定点のうち98%以上で、XRCのFWHMが30arcsec未満である。
更に、該200個の測定点間におけるXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は0.2°未満であってもよく、好ましくは0.15°未満、より好ましくは0.1°未満である。
【0036】
線分LS2上において、各ωスキャンの際のX線入射面を線分LS2と平行にして(002)反射のXRC−FWHMを0.2mm間隔で測定したとき、全部で200個の測定点間における、XRCのFWHMの最大値は40arcsec未満である。好ましくは該200個の測定点のうち98%以上で、XRCのFWHMが30arcsec未満である。
更に、該200個の測定点間におけるXRCのピーク角度の最大値と最小値との差は0.2°未満であってもよく、好ましくは0.15°未満、より好ましくは0.1°未満である。
【0037】
1.2.GaN単結晶の用途
(1)シード
第一実施形態に係るGaN単結晶は、気相法、液相法およびアモノサーマル法を含む各種の方法で窒化物半導体結晶を成長させる際に、シードとして用いることができる。
例えば、第一実施形態に係るC面GaNウエハ上に、任意の方法でGaNをエピタキシャル成長させて、バルクGaN単結晶を得ることができる。
他の一例では、第一実施形態に係るGaN単結晶をシードに用いて第一のバルクGaN単結晶を成長させ、その後、その第一のGaN単結晶の一部または全部をシードに用いて、第二のバルクGaN単結晶を成長させることができる。
【0038】
(2)窒化物半導体デバイス
第一実施形態に係るGaN単結晶がC面GaNウエハである場合、そのC面GaNウエハを用いて、窒化物半導体デバイスを製造することができる。
通常は、C面GaNウエハ上に一種以上の窒化物半導体をエピタキシャル成長させて、窒化物半導体デバイス構造を備えたエピタキシャルウエハを形成する。エピタキシャル成長法として、薄膜の形成に適したMOCVD法、MBE法、パルス蒸着法などを好ましく用いることができる。窒化物半導体デバイス構造は、C面GaNウエハのガリウム極性面上または窒素極性面上のいずれに形成することも可能である。
エッチング加工がなされたり、電極や保護膜など必要な構造が付与されたりした後、エピタキシャルウエハは分断されて窒化物半導体デバイスチップとなる。
【0039】
窒化物半導体デバイスの具体例としては、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High
Electron Mobility Transistor)などの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、太陽電池等が挙げられる。
その他、第一実施形態に係るC面GaNウエハは、SAW(Surface Acoustic Wave)デバイス、振動子、共振子、発振器、MEMS(Micro Electro Mechanical System)部品、電圧アクチュエータ、人工光合成デバイス用電極等の用途にも適用可能である。
【0040】
(3)GaN層接合基板
一例では、第一実施形態のGaN単結晶を用いて、GaN層接合基板を製造することができる。
GaN層接合基板とは、GaNとは異なる化学組成を有する異組成基板にGaN層が接合した構造を有する複合基板であり、発光デバイスその他の半導体デバイスの製造に使用することができる。異組成基板としては、サファイア基板、AlN基板、SiC基板、ZnSe基板、Si基板、ZnO基板、ZnS基板、石英基板、スピネル基板、カーボン基板、ダイヤモンド基板、Ga
2O
3基板、ZrB
2基板、Mo基板、W基板、セラミックス基板などが例示される。
GaN層接合基板の構造、製造方法、用途等の詳細については、特開2006−210660号公報、特開2011−44665号公報等を参照することができる。
【0041】
GaN層接合基板は、典型的には、GaN単結晶の主表面近傍にイオンを注入する工程と、そのGaN単結晶の該主表面側を異組成基板に接合させる工程と、イオン注入された領域を境として該GaN単結晶を2つの部分に切り離すことによって、異組成基板に接合したGaN層を形成する工程とを、この順に実行することによって製造される。
イオン注入を行わないやり方として、GaN単結晶を異組成基板に接合させた後、該GaN単結晶を機械的に切断して、異組成基板に接合したGaN層を形成する方法も開発されている。
いずれの方法で製造するにせよ、第一実施形態のGaN単結晶を材料に用いた場合には、第一実施形態のGaN単結晶から分離されたGaN層が、異組成基板に接合された構造のGaN層接合基板が得られる。
【0042】
2.第二実施形態
本発明の第二実施形態は、GaN単結晶製造方法に関する。
第二実施形態に係るGaN単結晶製造方法は、例えば、前述の第一実施形態に係るGaN単結晶を製造するために使用することができる。
2.1.GaN単結晶製造方法
第二実施形態に係るGaN単結晶製造方法のフローチャートを
図7に示す。この方法は、順次実行される下記ステップS1〜S3を含む。
S1:GaNの窒素極性面を有するシードを準備するステップ。
S2:ステップS1で準備したシードが有するGaNの窒素極性面上にパターンマスクを配置するステップ。
S3:ステップS1で準備したシードが有するGaNの窒素極性面上に、ステップS2で配置したパターンマスクを通して、GaN結晶を成長させるステップ。
【0043】
各ステップの詳細は以下の通りである。
(1)ステップS1
ステップS1では、GaNの窒素極性面を有するシードを準備する。好ましいGaNシードは、HVPE法または酸性アモノサーマル法で成長させたバルクGaN結晶を加工して得られるC面GaN基板であり、本2.1.項で説明する方法で成長させたバルクGaN結晶から作られるものであってもよい。
シード用のGaN結晶をHVPE法で製造する場合、DEEP(epitaxial-growth with inverse-pyramidal pits)[K. Motoki et al., Journal of Crystal Growth 237-239 (2002) 912]、VAS(Void-Assisted Separation)[Y. Oshima et al., Japanese Journal of Applied Physics 42 (2003) L1]、Advanced−DEEP[K. Motoki et
al., Journal of Crystal Growth 305 (2007) 377]等の技法を適宜使用することができる。
【0044】
シードを作製するうえで必要とされるGaN結晶のスライス、切断面の平坦化、切断面からのダメージ層除去等に必要な技法の詳細は当業者によく知られているので、特に説明を要さない。窒素極性面は、好ましくはCMP(Chemical Mechanical Polishing)仕上げすることによって、平坦化とダメージ層の除去を行う。
シードの窒素極性面は、(000−1)と平行であってもよく、また、(000−1)から僅かに傾斜していてもよい。該窒素極性面の(000−1)からの傾斜は、好ましくは2°以下、より好ましくは1°以下である。
【0045】
(2)ステップS2
ステップS2では、ステップS1で準備したシードが有するGaNの窒素極性面上に、GaNの成長が可能な領域を制限するためのパターンマスクを配置する。
パターンマスクの表面を形成する材料は、好ましくは白金族金属、すなわちルテニウム
(Ru)、ロジウム(Rh)、パラジウム(Pd)、オスミウム(Os)、イリジウム(Ir)および白金(Pt)から選ばれる金属であり、であり、特に好ましくは白金である。パターンマスクは、白金族金属またはその合金からなる単層膜であってもよいが、好ましくは、白金族金属よりもGaN結晶との密着性の良い金属からなる下地層の上に表層として白金族金属層を積層してなる多層膜である。該下地層の材料として、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、チタン(Ti)およびこれらから選ばれる1種以上を含む合金が例示されるが、限定するものではない。
【0046】
パターンマスクには、周期的格子パターンが構成されるように直線状開口を設ける。一例を、
図8および
図9を参照して説明する。
図8(a)は、シードの一例を示す斜視図である。シード20は、円盤形のC面GaNウエハであり、ガリウム極性面21、窒素極性面22および側面23を有している。
図8(b)は、
図8(a)のシード20の窒素極性面22上に、直線状開口31からなる斜方格子パターンを有するパターンマスク30を配置したところを示す斜視図である。
図9は、該パターンマスク30のみを抜き出して示す平面図である。
【0047】
図9を参照すると、パターンマスク30は、互いに延伸方向の異なる第一直線状開口311および第二直線状開口312から構成された斜方格子パターンを有している。
第一直線状開口311間のピッチP
1および第二直線状開口312間のピッチP
2は、それぞれ一定である。ここでいうピッチは、互いに平行な隣り合う2つの直線状開口間の、中心線間距離である。
第一直線状開口311の線幅W
1および第二直線状開口の線幅W
2は、通常5μm以上、好ましくは10μm以上、より好ましくは20μm以上であり、また、通常500μm以下、好ましくは200μm以下、より好ましくは100μm以下である。
【0048】
第一直線状開口311間のピッチP
1および第二直線状開口312間のピッチP
2は、それぞれ、通常1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、より好ましくは4mm以上であり、また、通常20mm以下である。
図9では、第一直線状開口311間のピッチP
1よりも第二直線状開口312間のピッチP
2の方が大きいが、両者は同じであってもよい。ピッチP
1とピッチP
2が異なっている方が、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴が閉塞し易い傾向があるので、第一直線状開口311間のピッチP
1と第二直線状開口312間のピッチP
2は、一方が他方の1.5倍以上であることが好ましく、2倍以上であることがより好ましい。
【0049】
第一直線状開口311と第二線状開口312の延伸方向は、窒素極性面22とM面との交線の方向のひとつを第一基準方向、他のひとつを第二基準方向として表すと便利である。
例えば、第一基準方向が窒素極性面22と(1−100)面との交線の方向であるとき、第二基準方向は、(10−10)面または(01−10)面と窒素極性面22との交線の方向である。
限定するものではないが、一例では、第一直線状開口311の延伸方向が第一基準方向と成す角度θ
1と、第二直線状開口312の延伸方向が該二基準方向と成す角度θ
2の、少なくとも一方を、12°±5°とすることができる。
第一線状開口311の総延長が第二線状開口312の総延長と同等以上であるときは、少なくとも角度θ
1が12°±5°であることが好ましい。換言すれば、線状開口31の総延長の50%以上の部分が、GaNシードの窒素極性面とM面との交線との間で12°±5°の角度をなす方向に延伸していることが好ましい。
より好ましいのは、角度θ
1および角度θ
2の両方が12±5°、すなわち、線状開口31の全ての部分が、GaNシードの窒素極性面とM面との交線との間で12±5°の角
度をなす方向に延伸していることである。
角度θ
1およびθ
2は、12±3°、12±2°、12±1°等であってもよい。
直線状開口をこのように配向させることは、後のステップS3でGaN結晶を成長させたときに、パターンマスクの非開口部の上方に生じる貫通穴の閉塞を促進するうえで有利である。
第一線状開口311と第線状開口312とがなす角度θ
12は、限定するものではないが、60°±10°、60°±5°、60°±3°、60°±1°等であり得る。
【0050】
パターンマスクに設けることのできる、各種の周期的格子パターンを、
図10および
図11に例示する。
図10および
図11に含まれる各図面は、GaNの窒素極性面を有するシードの該窒素極性面上に、パターンマスクを配置したところを示す平面図である。いずれの図面に示す例においても、パターンマスクには直線状開口で構成された周期的格子パターンが設けられている。
図10(a)において直線状開口31が形成するのは、斜方格子パターンである。
図10(b)において直線状開口31が形成するのは、傾斜したレンガ格子パターンである。
図10(c)において直線状開口31が形成するのは、ヘリンボーン格子パターンである。
図10(d)において直線状開口31が形成するのは、斜方格子パターンと傾斜したレンガ格子パターンの折衷パターンである。
図11(e)において直線状開口31が形成するのは、三角格子パターンである。
図11(f)において直線状開口31が形成するのは、六角格子パターンである。
図11(g)において直線状開口31が形成するのは、毘沙門亀甲格子パターンである。
【0051】
(3)ステップS3
ステップS3では、ステップS1で準備したシードが有するGaNの窒素極性面上に、ステップS2で配置したパターンマスクを通して、GaN結晶をアモノサーマル的に成長させる。
GaNの窒素極性面上にパターンマスクが配置されたシード上でGaN結晶が成長する過程を、
図12を参照しつつ説明する。
図12(a)は、GaN結晶の成長が始まる前の状態を示す。シード20の窒素極性面22上には、直線状開口31を備えたパターンマスク30が形成されている。
図12(b)は、パターンマスク30の開口31の内側でGaN結晶40が成長し始めたところを示す。
パターンマスク30を通り抜けると、GaN結晶40は、
図12(c)に示すように、[000−1]方向だけではなく、ラテラル方向(窒素極性面22に平行な方向)にも成長するが、GaN結晶40とパターンマスク30の上面との間にはギャップGが形成される。その結果、パターンマスク30との接触により起こり得るGaN結晶40の配向乱れが抑制される。
【0052】
図12(c)に示す成長段階では、GaN結晶40は、パターンマスク30の非開口部の上方に貫通穴Tを有している。
GaN結晶40が更に成長することにより、ギャップGは徐々に埋まるが、完全に埋まることはなく、
図12(d)に示すように、ボイドVを残した状態で貫通穴Tの上部が塞がる。
貫通穴Tが塞がった後、
図12(e)に示すように、GaN結晶40を[000−1]方向に更に成長させる。GaNシード20とGaN結晶40と間に発生する応力が、ボイドVによって緩和され、ひいては、GaN結晶40の歪が低減されると考えられる。
貫通穴Tが塞がった後の、GaN結晶40の[000−1]方向の成長量は、通常1mm以上、好ましくは2mm以上、より好ましくは3mm以上であり、特に上限は無い。
注記すると、ステップS3において、GaN結晶はGaNシード20のガリウム極性面21上でも成長するが、
図12では図示を省略している。
図12(d)の段階で貫通穴Tが閉じるときに、コアレス面で転位が発生するか、あるいは、コアレス面で転位が一斉に[000−1]方向に曲げられるかの、いずれかまたは両方の理由により、
図12(e)の段階で形成されるGaN結晶から切り出されるC面GaN基板の主表面には、転位アレイが現れる。該転位アレイの形状は、該コアレス面を[000−1]方向に延長した延長面と、該C面基板の主表面とが形成する交線の形状である。
【0053】
一例では、ステップS3において、貫通穴Tの全部または一部が塞がれずに残った状態で、GaN結晶40の成長を終了させてもよいが、そうした場合、成長させたGaN結晶40をどの位置でスライスしても、主表面間に貫通穴があるC面GaNウエハしか得られない。この主表面に貫通穴を有するC面GaNウエハは、半導体デバイス用の基板としての使用には適さないが、フッ素を含有する酸性鉱化剤を用いてバルクGaN結晶をアモノサーマル的に成長させるときに、シードとして使用することが可能である。酸性鉱化剤がFを含有すると、シードに貫通穴があっても、それを塞ぐようにGaN結晶が成長するからである。
【0054】
ステップS3におけるGaN結晶のアモノサーマル成長は、
図13に示すタイプの結晶成長装置を用いて行うことができる。
図13を参照すると、結晶成長装置100は、筒形のオートクレーブ101と、その中に設置される筒形の成長容器102を備えている。
成長容器102は好ましくは白金製で、バッフル103で相互に区画された原料溶解ゾーン102aおよび結晶成長ゾーン102bを内部に有する。原料溶解ゾーン102aにはフィードストックFが置かれる。結晶成長ゾーン102bには、白金ワイヤー104で吊されたシードSが設置される。
真空ポンプ105、アンモニアボンベ106および窒素ボンベ107が接続されたガスラインが、バルブ108を介してオートクレーブ101および成長容器102と接続される。成長容器102にアンモニアを入れる際には、アンモニアボンベ106から供給されるアンモニアの量をマスフローメーター109で確認することが可能となっている。
【0055】
フィードストックには、加熱下で金属ガリウムに塩化水素ガスを接触させて得られる塩化ガリウムガスと、アンモニアガスとを反応させる方法で製造した多結晶GaNを、好ましく用いることができる。
フィードストックの溶解を促進するための鉱化剤には、塩化アンモニウム(NH
4Cl)、臭化アンモニウム(NH
4Br)およびヨウ化アンモニウム(NH
4I)から選ばれる一種以上のハロゲン化アンモニウムと、フッ化アンモニウム(NH
4F)とを組合せて用いることが好ましい。特に好ましくは、フッ化アンモニウムとヨウ化アンモニウムを併用する。
【0056】
例えば成長温度を650℃以下とする場合、鉱化剤にフッ化アンモニウム以外のハロゲン化アンモニウムのみを用いることは推奨されない。なぜなら、GaN結晶の成長方向が実質的に[000−1]方向のみとなり、ラテラル方向成長が起こらないからである。
一方、フッ化アンモニウムを単独で用いた場合はラテラル成長が強く促進されるので、
図12に示す態様でGaN結晶を成長させること、すなわち、パターンマスクとの間にギャップが形成されるようにGaN結晶を成長させることが難しい。
【0057】
シードS上にGaN結晶を成長させる際には、オートクレーブ101と成長容器102
の間の空間にもアンモニアを入れたうえで、オートクレーブ101の外側からヒーター(図示せず)で加熱して、成長容器102内を超臨界状態または亜臨界状態とする。
フィードストックFが十分に溶解して溶媒が飽和状態に達するまでの間は、シードSの表面でもエッチングが生じる。必要な場合には、成長開始前に、シードSのエッチバックを促進させる目的のために、原料溶解ゾーン102aと結晶成長ゾーン102bの間の温度勾配を結晶成長時とは逆にする温度反転期間を設けることもできる。
成長温度は、好ましくは550℃以上である。1000℃以上の成長温度を使用することは妨げられないが、700℃以下であっても十分に品質の高いGaN結晶を成長させることが可能である。
成長圧力は、例えば、100〜250MPaの範囲内で設定することができるが、限定するものではない。
【0058】
一例として、鉱化剤としてフッ化アンモニウムとヨウ化アンモニウムを、アンモニアに対するモル比でそれぞれ0.5%および4.0%となるように使用し、かつ、圧力が約220MPa、原料溶解ゾーンの温度Tsと結晶成長ゾーンの温度Tgの平均値が約600℃、これら2つのゾーン間の温度差Ts−Tgが約5℃(Ts>Tg)という条件で、GaN結晶を成長させることができる。
原料溶解ゾーンと結晶成長ゾーンの温度差を大きくすることによって、GaN結晶の成長レートを高くすることが可能であるが、成長レートが高過ぎる場合には、GaN結晶の成長が
図12(c)の段階から
図12(d)の段階に進み難くなる、すなわち、GaN結晶の貫通穴が閉じ難くなるという問題が生じ得る。
ステップS3では、フィードストックが使い尽くされる度に成長容器を交換し、GaN結晶の再成長を繰り返すことができる。
【0059】
成長させたGaN結晶は、様々な位置でスライスすることができる。例えば、
図14(a)に破線で示す位置でGaN結晶40をスライスすると、得られるC面GaNウエハは貫通穴を有さないので、半導体デバイス用の基板その他の用途に好適に使用可能である。一方、
図14(b)に破線で示す位置でGaN結晶40をスライスした場合、得られるC面GaNウエハは主表面に貫通穴を有するため、半導体デバイス用の基板としての使用には適さないが、フッ素を含有する酸性鉱化剤を用いてバルクGaN結晶をアモノサーマル的に成長させるときに、シードとして使用可能である。
【0060】
スライスの方向は、切断面の方位が[0001]または[000−1]から10°以内であればよく、目的または要求に応じて適宜定めることができる。スライスには、例えば、ワイヤソーを用いることができる。切断面の平坦化は、グラインディングとラッピングのいずれかまたは両方によって行うことができる。切断面からのダメージ層除去は、CMPとエッチングのいずれかまたは両方によって行うことができる。
スライス厚は、目的に応じて適宜定めることができるが、通常は100μm以上であり、かつ、20mm以下である。
【0061】
2.2.GaN単結晶の用途
第二実施形態のGaN単結晶製造方法を用いて製造されるGaN単結晶は、窒化物半導体デバイスの製造、および、GaN層接合基板の製造に、好ましく使用することができる。
窒化物半導体デバイスの具体例としては、発光ダイオード、レーザダイオードなどの発光デバイス、整流器、バイポーラトランジスタ、電界効果トランジスタ、HEMT(High
Electron Mobility Transistor)などの電子デバイス、温度センサ、圧力センサ、放射線センサ、可視−紫外光検出器などの半導体センサ、太陽電池等が挙げられる。
【0062】
第二実施形態のGaN単結晶製造方法を用いて製造されるGaN単結晶は、様々な結晶
成長方法でバルクGaN結晶を成長させるためのシードとして使用することもできる。
第二実施形態のGaN単結晶製造方法を用いて製造されるGaN単結晶の窒素極性面上には、パターンマスクを設けることなく、酸性アモノサーマル法でGaN単結晶を成長させることが可能である。
その場合も、成長装置には
図13に示すタイプのものを好ましく用いることができる。フィードストックには、加熱下で単体GaにHClガスを接触させて得られる気体GaClと、NH
3ガスとを反応させる方法で製造した多結晶GaNを、好ましく用いることができる。
鉱化剤には、NH
4Fを好ましく用いることができる。NH
4Cl、NH
4BrおよびNH
4Iから選ばれる一種以上のハロゲン化アンモニウムをNH
4Fと併用してもよく、例えば、NH
4FとNH
4Iを併用してよい。
NH
4Fの濃度は、NH
3に対するモル比で0.1〜1%とすることができる。NH
4F以外のハロゲン化アンモニウムの濃度は、NH
3に対するモル比で1〜5%とすることができる。
圧力および温度については、例えば、100〜250MPaの範囲内および550〜650℃の範囲内でそれぞれ設定することができるが、限定するものではない。
【0063】
3.実験結果
(1)シードの準備
シードとして、HVPE法で成長されたGaN結晶から作製された直径2インチの円盤形のC面GaNウエハを準備した。該シードの窒素極性面とガリウム極性面は、両方がCMP仕上げされた。窒素極性面の方位は[000−1]から1°以内であった。
【0064】
(2)パターンマスクの形成
準備したシードの窒素極性面上に、100nm厚のTiW層上に100nm厚のPt層を有する積層膜からなるパターンマスクを、リフトオフ法で形成した。
パターンマスクには、互いに異なる延伸方向を有する第一直線状開口および第二直線状開口から構成された斜方格子パターンを設けた。
第一直線状開口の延伸方向は、シードにおける窒素極性面とM面との交線のひとつから12°傾けた。第一直線状開口の延伸方向と第二直線状開口の延伸方向とがなす角度は60°とした。従って、第二直線状開口の延伸方向は、シードにおける窒素極性面とM面との交線の他のひとつから12°傾斜した方向となった。
第一直線状開口および第二直線状開口の線幅は、いずれも50μmとした。第一直線状開口間のピッチは4mmとし、第二直線状開口間のピッチは12mmとした。
【0065】
(3)アモノサーマル法によるGaN結晶の成長
上記シードの窒素極性面上に、上記パターンマスクを通して、GaN結晶をアモノサーマル的に成長させた。
フィードストックには、アンモニアと塩化ガリウム(GaCl)を気相反応させる方法で製造した多結晶GaNを用い、鉱化剤にはフッ化アンモニウムおよびヨウ化アンモニウムを用いた。
フッ化アンモニウムおよびヨウ化アンモニウムの量は、成長容器内に入れるアンモニアに対するモル比で、それぞれ0.5%および4.0%とした。ヨウ化アンモニウムは、アンモニアを入れた後の成長容器内にヨウ化水素(HI)を導入することにより生成させた。
【0066】
成長条件は、結晶成長ゾーンの温度Tgと原料溶解ゾーンの温度Tsの平均値を598℃、結晶成長ゾーンと原料溶解ゾーンの温度差を5℃(Ts>Tg)、圧力を220MPaとした。成長時間は35日間とした。
GaN結晶は、35日間で[000−1]方向に2.9mm成長した。よって、成長レ
ートは82μm/dayであった。成長フロントは平坦化しており、パターンマスクの非開口部の上方に生じた貫通穴の殆どは閉じていた。成長した結晶を観察した結果から、GaN結晶が[000−1]方向に1〜1.5mm成長した時点で該貫通穴の閉塞が始まったと推定された。
【0067】
(4)ウエハへの加工
アモノサーマル法により成長させた上記のGaN結晶をC面に平行にスライスしてブランクウエハを得た後、その両方の主表面に研磨およびCMP仕上げを施して、略正六角形の主表面を有する厚さ350μmのC面GaNウエハを得た。
【0068】
(5)XRC測定
X線源にCuKαを用いたX線回折装置[スペクトリス(株)製 パナリティカル X’Pert Pro MRD]を用いて、上記作製したC面GaNウエハにおける(002)反射のXRCを測定した。X線回折装置の入射光学系には、Ge(220)2結晶モノクロメータを用いた。試料表面におけるX線のビームサイズは、X線の入射角が90°の場合に0.2mm×3mmとなるように設定した。測定時には、該ビームサイズが3mmとなる方向とX線入射面とが直交するようにした。
図15に示す、それぞれガリウム極性面の略中心を通る、m軸に平行な線分Xとa軸に平行な線分Yの上で、0.2mm間隔で測定を行った。
線分X上の各測定点でのωスキャンにおけるX線入射面は線分Xと平行とし、線分Y上の各測定点でのωスキャンにおけるX線入射面は線分Yと平行とした。
【0069】
m軸に平行な線分X上で45mmにわたり測定した結果、226個の測定点の全てでXRCのFWHMは40arcsecを下回った。
XRCのFWHMが30arcsec以上だった測定点は226点中3点であり、全測定点の99%にあたる223点でXRCのFWHMは30arcsecを下回った。
226個の測定点間における、XRCのピーク角度の最大値と最小値との差は0.012°であった。
【0070】
a軸に平行な線分Y上で53.8mmにわたり測定した結果、270個の測定点の全てでXRC−FWHMは40arcsecを下回った。
XRCのFWHMが30arcsec以上だった測定点は270点中1点であり、全測定点の略100%にあたる269点でXRCのFWHMは30arcsecを下回った。
線分Yには、測定点の全てでXRCのFWHMが30arcsecを下回る、長さ46.6mmの区間が含まれていた。
270個の測定点間における、XRCのピーク角度の最大値と最小値との差は0.031°であった。
【0071】
以上、本発明を具体的な実施形態に即して説明したが、各実施形態は例として提示されたものであり、本発明の範囲を限定するものではない。本明細書に記載された各実施形態は、発明の趣旨を逸脱しない範囲内で、様々に変形することができ、かつ、実施可能な範囲内で、他の実施形態により説明された特徴と組み合わせることができる。