特許第6776896号(P6776896)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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特許6776896樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776896
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/02 20060101AFI20201019BHJP
   B29C 55/20 20060101ALI20201019BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20201019BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20201019BHJP
【FI】
   B29C55/02
   B29C55/20
   C08J5/18
   B29L7:00
【請求項の数】9
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2016-556493(P2016-556493)
(86)(22)【出願日】2015年10月14日
(86)【国際出願番号】JP2015079037
(87)【国際公開番号】WO2016067920
(87)【国際公開日】20160506
【審査請求日】2018年9月25日
(31)【優先権主張番号】特願2014-219382(P2014-219382)
(32)【優先日】2014年10月28日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2014-263279(P2014-263279)
(32)【優先日】2014年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小渕 和之
(72)【発明者】
【氏名】波多野 拓
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭輔
(72)【発明者】
【氏名】眞島 啓
【審査官】 ▲高▼橋 理絵
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/029761(WO,A1)
【文献】 特開2013−010309(JP,A)
【文献】 特開2009−166325(JP,A)
【文献】 特開平05−230253(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 5/00− 5/02
C08J 5/12− 5/22
B29C 55/00−55/30
B29K 45/00
B29L 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性を有し、結晶化度が21%以上である脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
前記樹脂における前記脂環式構造含有重合体の割合が、50重量%以上であり、
耐折度が2000回以上であり、
吸水率が0.1%以下であり
熱温度が180℃以上であり、
面配向係数の絶対値が、0.01以上であり、
前記脂環式構造含有重合体が、環状オレフィン単量体の開環重合体、環状オレフィン単量体の開環重合体の水素添加物、環状オレフィン単量体の付加重合体、又は、環状オレフィン単量体の付加重合体の水素添加物である、樹脂フィルム。
【請求項2】
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
前記脂環式構造含有重合体の結晶化度が、21%以上であり、
前記樹脂における前記脂環式構造含有重合体の割合が、50重量%以上であり、
耐折度が2000回以上であり、
吸水率が0.1%以下であり、
面配向係数の絶対値が、0.01以上であり、
前記脂環式構造含有重合体が、環状オレフィン単量体の開環重合体、環状オレフィン単量体の開環重合体の水素添加物、環状オレフィン単量体の付加重合体、又は、環状オレフィン単量体の付加重合体の水素添加物であり、
平滑である、樹脂フィルム。
【請求項3】
前記脂環式構造含有重合体が、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物である、請求項1又は2記載の樹脂フィルム。
【請求項4】
前記脂環式構造含有重合体の融点が、200℃以上である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項5】
前記脂環式構造含有重合体のラセモ・ダイアッドの割合が、51%以上である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の樹脂フィルム。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法であって、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を50重量%以上含む樹脂からなる延伸前フィルムを延伸して延伸フィルムを得る第一工程と、
前記第一工程の後で、前記延伸フィルムを加熱する第二工程とを含む、樹脂フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記第一工程において、(TG−30℃)以上、(TG+60℃)以下の温度範囲において、前記延伸前フィルムを延伸し、ここでTGは前記樹脂のガラス転移温度である、請求項6記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記第二工程において、前記延伸フィルムを、前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度で加熱する、請求項6又は7記載の樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
前記第二工程において、前記延伸フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、前記延伸フィルムを加熱する、請求項6〜8のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂フィルム、及び、樹脂フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂のフィルムにおいて、当該フィルムを加熱することにより、脂環式構造含有重合体を結晶化する技術が知られている(特許文献1及び2参照)。このように結晶化した脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムは、通常、耐熱性に優れる。
【0003】
他方、樹脂フィルムには、用途によって、耐折性、低吸水性、及び耐熱性といった特性が求められる場合がある。そのため、従来から、これらの特性に優れる樹脂フィルムの開発が行われてきた(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−194067号公報
【特許文献2】特開2013−10309号公報
【特許文献3】特開2006−309266号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明者の検討によれば、脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、通常、低吸水性に優れることが判明している。また、脂環式構造含有重合体を含む樹脂の中でも、特に結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂は、前記のように、通常は耐熱性に優れる。ところが、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂によって製造された従来のフィルムは、耐折性に劣っていた。
【0006】
本発明は前記の課題に鑑みて創案されたもので、耐折性、低吸水性、及び耐熱性のいずれにも優れる樹脂フィルム及びその樹脂フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムを延伸した後で加熱することで、耐折性、低吸水性、及び耐熱性のいずれにも優れる樹脂フィルムを実現できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0008】
〔1〕 結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
耐折度が2000回以上であり、
吸水率が0.1%以下であり、且つ
耐熱温度が180℃以上である、樹脂フィルム。
〔2〕 結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなり、
前記脂環式構造含有重合体の結晶化度が、10%以上であり、
耐折度が2000回以上であり、
吸水率が0.1%以下であり、且つ、
平滑である、樹脂フィルム。
〔3〕 面配向係数の絶対値が、0.01以上である、〔1〕又は〔2〕記載の樹脂フィルム。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法であって、
結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる延伸前フィルムを延伸して延伸フィルムを得る第一工程と、
前記第一工程の後で、前記延伸フィルムを加熱する第二工程とを含む、樹脂フィルムの製造方法。
〔5〕 前記第一工程において、(TG−30℃)以上、(TG+60℃)以下の温度範囲において、前記延伸前フィルムを延伸し、ここでTGは前記樹脂のガラス転移温度である、〔4〕記載の樹脂フィルムの製造方法。
〔6〕 前記第二工程において、前記延伸フィルムを、前記脂環式構造含有重合体のガラス転移温度以上、前記脂環式構造含有重合体の融点以下の温度で加熱する、〔4〕又は〔5〕記載の樹脂フィルムの製造方法。
〔7〕 前記第二工程において、前記延伸フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で、前記延伸フィルムを加熱する、〔4〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の樹脂フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、耐折性、低吸水性、及び耐熱性のいずれにも優れる樹脂フィルム及びその樹脂フィルムの製造方法を提供できる。特に、本発明の樹脂フィルムは、高温及び高湿度の使用環境下に長期間置かれても、破断を生じにくい。特に、本発明の樹脂フィルム上に硬い層(導電層、ハードコート層等)を設けた場合であっても、樹脂フィルムと硬い層との熱膨張率の差による歪みにより、樹脂フィルムにクラックが発生したり、破断したりすることを抑制することができる。このような特徴は、樹脂フィルム又は樹脂フィルムを含む積層体を、折り曲げて使用する際、特に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、樹脂フィルムが平滑か否かを判定する判定方法における試験片の様子を模式的に示す断面図である。
図2図2は、樹脂フィルムが平滑か否かを判定する判定方法における試験片の様子を模式的に示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、「長尺」のフィルムとは、幅に対して、5倍以上の長さを有するフィルムをいい、好ましくは10倍若しくはそれ以上の長さを有し、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬される程度の長さを有するフィルムをいう。
【0013】
以下の説明において、要素の方向が「平行」、「垂直」及び「直交」とは、別に断らない限り、本発明の効果を損ねない範囲内、例えば±5°の範囲内での誤差を含んでいてもよい。
【0014】
[1.樹脂フィルム]
〔1.1.樹脂フィルムの概要〕
本発明の樹脂フィルムは、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなるフィルムであって、下記の要件(A)及び(B)のいずれかを満たす。
要件(A):耐折度が2000回以上であり、吸水率が0.1%以下であり、且つ、耐熱温度が180℃以上である。
要件(B):耐折度が2000回以上であり、吸水率が0.1%以下であり、脂環式構造含有重合体の結晶化度が10%以上であり、且つ、平滑である。
さらに、本発明の樹脂フィルムは、要件(A)及び要件(B)の両方を満たしていることが好ましい。
以下の説明において、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂のことを、「結晶性樹脂」ということがある。
【0015】
〔1.2.結晶性樹脂〕
結晶性樹脂は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む。ここで、脂環式構造含有重合体とは、分子内に脂環式構造を有する重合体であって、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物をいう。脂環式構造含有重合体は、通常、吸水性が低い。そのため、このような脂環式構造含有重合体を含む結晶性樹脂で形成される本発明の樹脂フィルムの吸水性を小さくできる。
脂環式構造含有重合体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0016】
脂環式構造含有重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる樹脂フィルムが得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0017】
脂環式構造含有重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。脂環式構造含有重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、脂環式構造含有重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0018】
結晶性樹脂に含まれる脂環式構造含有重合体は、結晶性を有する。ここで、「結晶性を有する脂環式構造含有重合体」とは、融点を有する〔すなわち、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる〕脂環式構造含有重合体をいう。脂環式構造含有重合体の融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点を有する脂環式構造含有重合体を用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた樹脂フィルムを得ることができる。
【0019】
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0020】
脂環式構造含有重合体の分子量分布(Mw/Mn)は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。ここで、Mnは数平均分子量を表す。このような分子量分布を有する脂環式構造含有重合体は、成形加工性に優れる。
脂環式構造含有重合体の重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0021】
脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tgは、特に限定されないが、通常は85℃以上、170℃以下の範囲である。
【0022】
前記の脂環式構造含有重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる樹脂フィルムが得られ易いことから、結晶性の脂環式構造含有重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
【0023】
具体的には、脂環式構造含有重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0024】
以下、重合体(α)及び重合体(β)の製造方法を説明する。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
【0025】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
【0026】
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン−2−イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
【0027】
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0028】
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0029】
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、脂環式構造含有重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れる樹脂フィルムが得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0030】
重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0031】
ラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体試料の13C−NMR測定を行う。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
【0032】
重合体(α)の合成には、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような重合体(α)の合成用の開環重合触媒としては、環状オレフィン単量体を開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるものが好ましい。好ましい開環重合触媒としては、下記式(1)で示される金属化合物を含むものが挙げられる。
【0033】
M(NR1)X4-a(OR2a・Lb (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH23(R3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは、0〜2の整数を示す。)
【0034】
式(1)において、Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示す。このMとしては、クロム、モリブデン及びタングステンが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0035】
式(1)において、R1は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH23で表される基を示す。
1の、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、R1において、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0036】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;等が挙げられる。
【0037】
1の、−CH23で表される基において、R3は、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
3の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
3の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0038】
3の、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
3の、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0039】
これらの中でも、R3で表される基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0040】
式(1)において、R2は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。R2の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0041】
式(1)において、Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示す。
Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、R3の、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
Xのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のXを有する場合、それらのXは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のXが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0042】
式(1)において、Lは、電子供与性の中性配位子を示す。
Lの電子供与性の中性配位子としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0043】
式(1)で示される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)において、Mがタングステン原子であり、且つ、R1がフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0044】
式(1)で示される金属化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5−345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。
【0045】
前記の製造方法では、式(1)で示される金属化合物は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。金属化合物の製造後、前記の反応液をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。また、結晶化等の精製処理により、金属化合物を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物を開環重合反応に供してもよい。
【0046】
開環重合触媒は、式(1)で示される金属化合物を単独で用いてもよく、式(1)で示される金属化合物を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、式(1)で示される金属化合物と有機金属還元剤とを組み合わせて用いることで、重合活性を向上させることができる。
【0047】
有機金属還元剤としては、例えば、炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。このような有機金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム;ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等の有機アルミニウム;テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ;等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム又は有機スズが好ましい。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0048】
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、開環重合体及びその水素添加物を、所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、かつ、開環重合反応及び水素化反応を阻害しないものを用いうる。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素類;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素類;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素類;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素類;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素類、脂肪族炭化水素類、脂環族炭化水素類、エーテル類が好ましい。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0049】
開環重合反応は、例えば、環状オレフィン単量体と、式(1)で示される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより、開始させることができる。これらの成分を混合する順序は、特に限定されない。例えば、環状オレフィン単量体を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物及び有機金属還元剤を含む溶液を混合してもよい。また、有機金属還元剤を含む溶液に、環状オレフィン単量体及び式(1)で示される金属化合物を含む溶液を混合してもよい。さらに、環状オレフィン単量体及び有機金属還元剤を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物の溶液を混合してもよい。各成分を混合する際は、それぞれの成分の全量を一度に混合してもよいし、複数回に分けて混合してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0050】
開環重合反応の開始時における反応液中の環状オレフィン単量体の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。環状オレフィン単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0051】
開環重合反応に用いる式(1)で示される金属化合物の量は、「金属化合物:環状オレフィン単量体」のモル比が、所定の範囲の収まるように設定することが望ましい。具体的には、前記のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000、より好ましくは1:500〜1,000,000、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。金属化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な重合活性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、反応後に金属化合物を容易に除去できる。
【0052】
有機金属還元剤の量は、式(1)で示される金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下、特に好ましくは20モル以下である。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0053】
重合体(α)の重合反応系は、活性調整剤を含んでいてもよい。活性調整剤を用いることで、開環重合触媒を安定化したり、開環重合反応の反応速度を調整したり、重合体の分子量分布を調整したりできる。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含リン有機化合物等が挙げられる。
【0054】
含酸素化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
【0055】
活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)の重合反応系における活性調整剤の量は、式(1)で示される金属化合物100モル%に対して、好ましくは0.01モル%〜100モル%である。
【0056】
重合体(α)の重合反応系は、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を含んでいてもよい。分子量調整剤としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
【0057】
分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)を重合するための重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、環状オレフィン単量体に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%の範囲である。
【0058】
重合温度は、好ましくは−78℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、好ましくは+200℃以下、より好ましくは+180℃以下である。
重合時間は、反応規模に依存しうる。具体的な重合時間は、好ましくは1分間から1000時間の範囲である。
【0059】
上述した製造方法により、重合体(α)が得られる。この重合体(α)を水素化することにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素化は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することによって行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0060】
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化触媒として公知の均一系触媒及び不均一触媒を用いうる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、前記金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0061】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素類;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素類;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素類;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素化反応を行ってもよい。
【0062】
水素化反応の反応条件は、通常、用いる水素化触媒によって異なる。
水素化反応の反応温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、好ましくは+250℃以下、より好ましくは+220℃以下、特に好ましくは+200℃以下である。反応温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
【0063】
水素圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。水素圧力を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
【0064】
水素化反応の反応時間は、所望の水素添加率が達成される任意の時間に設定してもよく、好ましくは0.1時間〜10時間である。
水素化反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0065】
水素化反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、脂環式構造含有重合体の耐熱性を良好にできる。
ここで、重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、145℃で、1H−NMR測定により測定しうる。
【0066】
次に、重合体(γ)及び重合体(δ)の製造方法を説明する。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0068】
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70〜99:1、より好ましくは50:50〜97:3、特に好ましくは70:30〜95:5である。
【0069】
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0070】
重合体(γ)の合成には、通常、付加重合触媒を用いる。このような付加重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒、チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒等が挙げられる。また、付加重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0071】
付加重合触媒の量は、単量体1モルに対して、好ましくは0.000001モル以上、より好ましくは0.00001モル以上であり、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下である。
【0072】
環状オレフィン単量体の付加重合は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、環状オレフィン単量体の開環重合に用いうる有機溶媒として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0073】
重合体(γ)を製造するための重合における重合温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、重合時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0074】
上述した製造方法により、重合体(γ)が得られる。この重合体(γ)を水素化することにより、重合体(δ)を製造することができる。
重合体(γ)の水素化は、重合体(α)を水素化する方法として先に示したものと同様の方法により、行いうる。
【0075】
結晶性樹脂において、結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。結晶性を有する脂環式構造含有重合体の割合を前記範囲の下限値以上にすることにより、本発明の樹脂フィルムの耐熱性を高めることができる。
【0076】
結晶性樹脂は、結晶性を有する脂環式構造含有重合体に加えて、任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤等の酸化防止剤;ヒンダードアミン系光安定剤等の光安定剤;石油系ワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリアルキレンワックス等のワックス;ソルビトール系化合物、有機リン酸の金属塩、有機カルボン酸の金属塩、カオリン及びタルク等の核剤;ジアミノスチルベン誘導体、クマリン誘導体、アゾール系誘導体(例えば、ベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾトリアゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、及びベンゾチアソール誘導体)、カルバゾール誘導体、ピリジン誘導体、ナフタル酸誘導体、及びイミダゾロン誘導体等の蛍光増白剤;ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤等の紫外線吸収剤;タルク、シリカ、炭酸カルシウム、ガラス繊維等の無機充填材;着色剤;難燃剤;難燃助剤;帯電防止剤;可塑剤;近赤外線吸収剤;滑剤;フィラー、及び、軟質重合体等の、結晶性を有する脂環式構造含有重合体以外の任意の重合体;などが挙げられる。また、任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0077】
〔1.3.樹脂フィルムの物性〕
本発明の樹脂フィルムは、耐折性に優れる。本発明の樹脂フィルムの耐折性は、具体的には、耐折度で表しうる。本発明の樹脂フィルムの耐折度は、通常2000回以上、好ましくは2200回以上、より好ましくは2400回以上である。耐折度は高いほど好ましいため、耐折度の上限に制限は無いが、耐折度は通常は100000回以下である。
樹脂フィルムの耐折度は、JISP8115「紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法」に準拠したMIT耐折試験により、下記の方法で測定しうる。
試料としての樹脂フィルムから、幅15mm±0.1mm、長さ約110mmの試験片を切り出す。この際、樹脂フィルムがより強く延伸された方向が試験片の約110mmの辺と平行になるように試験片を作製する。そして、MIT耐折度試験機(安田精機製作所製「No.307」)を用いて、荷重9.8N、屈曲部の曲率0.38±0.02mm、折り曲げ角度135°±2°、折り曲げ速度175回/分の条件で、試験片の幅方向に折れ目が現れるように前記の試験片を折り曲げる。この折り曲げを継続し、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定する。
10枚の試験片を作製して、前記の方法により、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を10回測定する。こうして測定された10回の測定値の平均を、当該樹脂フィルムの耐折度(MIT耐折回数)とする。
【0078】
また、本発明の樹脂フィルムは、低吸水性に優れる。本発明の樹脂フィルムの低吸水性は、具体的には、吸水率で表しうる。本発明の樹脂フィルムの吸水率は、通常0.1%以下、好ましくは0.08%以下、より好ましくは0.05%以下である。
樹脂フィルムの吸水率は、下記の方法で測定しうる。
試料としての樹脂フィルムから、試験片を切り出し、試験片の質量を測定する。その後、この試験片を、23℃の水中に24時間浸漬して、浸漬後の試験片の質量を測定する。そして、浸漬前の試験片の質量に対する、浸漬によって増加した試験片の質量の割合を、吸水率(%)として算出しうる。
【0079】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、耐熱温度が180℃以上であるか、または、脂環式構造含有重合体の結晶化度が10%以上である。このような樹脂フィルムは、耐熱性に優れる。本発明の樹脂フィルムは、耐熱温度が180℃以上であってもよく;脂環式構造含有重合体の結晶化度が10%以上であってもよく;耐熱温度が180℃以上であり、且つ、脂環式構造含有重合体の結晶化度が10%以上であってもよい。
【0080】
本発明の樹脂フィルムの耐熱温度は、通常180℃以上、好ましくは200℃以上、より好ましくは220℃以上である。耐熱温度は高いほど好ましいため、耐熱温度の上限に制限は無いが、耐熱温度は通常は脂環式構造含有重合体の融点Tm以下である。
樹脂フィルムの耐熱温度が前記の範囲にあることは、下記の方法で確認しうる。
試料としての樹脂フィルムに張力を掛けない状態で、その樹脂フィルムをある温度Txの雰囲気下で10分放置する。その後、目視で樹脂フィルムの面状を確認する。樹脂フィルムの表面の形状に凹凸が確認できなかった場合、その樹脂フィルムの耐熱温度が前記の温度Tx以上であることが分かる。
【0081】
本発明の樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度は、好ましくは10%以上、より好ましくは15%以上、特に好ましくは20%以上であり、好ましくは70%以下、より好ましくは60%以下、特に好ましくは50%以下である。樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度が前記範囲の下限値以上であることにより、樹脂フィルムの耐熱性を高めることができ、また、上限値以下であることにより、フィルムの透明性を良好にできる。
樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定しうる。
【0082】
前記のように、本発明の樹脂フィルムは、低吸水性、耐熱性及び耐折性のいずれにも優れる。前記の優れた低吸水性は、吸水性が低い重合体である脂環式構造含有重合体を用いることで得られうるものと推察される。また、前記の優れた耐熱性は、耐熱性に優れた重合体である脂環式構造含有重合体を用いたことに加え、更にその脂環式構造含有重合体を結晶化させて熱に対する耐性を高めることにより得られうるものと推察される。さらに、前記の優れた耐折性は、延伸により脂環式構造含有重合体の分子を配向させることにより、脂環式構造含有重合体が結晶化しても脆化を抑制できるようにすることにより得られうるものと推察される。ただし、本発明は、前記の推察に制限されるものでは無い。
【0083】
さらに、本発明の樹脂フィルムは、通常、平滑である。樹脂フィルムが平滑であることにより、樹脂フィルムの取り扱い性を良好にしたり、樹脂フィルムの光学特性等の特性を良好にしたりできる。
【0084】
ここで、樹脂フィルムが平滑であるか否かは、下記の(i)〜(viii)のステップを含む判定方法により判定しうる。図1は、樹脂フィルムが平滑か否かを判定する判定方法における試験片の様子を模式的に示す断面図である。また、図2は、樹脂フィルムが平滑か否かを判定する判定方法における試験片の様子を模式的に示す平面図である。
(i)資料としての樹脂フィルムから、150mm×150mmの正方形の試験片を5枚切り出す。この際、試験片の正方形の辺は、樹脂フィルムが最も強く延伸された方向に平行又は垂直となるようにする。
(ii)図1及び図2に示すように、水平な平面状の支持面110Uを有する定盤110の前記支持面110Uに、試験片120を載せる。
(iii)試験片120のカールを防ぐため、樹脂フィルムが最も強く延伸された方向Xにおける試験片120の両端部10mmに、重り130及び140を載せる。
(iv)この状態で、試験片120を三次元形状測定機(ニコン社製「多関節形三次元測定機 MCAx20」)を用いてスキャンすることにより、試験片120の立体形状を測定する。
(v)測定された立体形状より、定盤110の支持面110Uから、この支持面110Uから最も離れた試験片120上の点P120までの距離Lを求める。
(vi)試験片を裏返して、前記(ii)〜(v)のステップを行い、距離Lを求める。
(vii)残りの4枚の試験片についても、それぞれ前記(ii)〜(vi)のステップを行い、距離Lを求める。
(viii)5枚の試験片で測定した距離Lがいずれも2mm未満である場合、その樹脂フィルムを「平滑」と判定する。また、5枚の試験片で測定した距離Lのうち、一つでも2mmを超える場合は、その樹脂フィルムを平滑でないと判定する。
【0085】
本発明の樹脂フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体は、配向していることが好ましい。そのため、樹脂フィルムは、所定範囲の絶対値の面配向係数Δneを有することが好ましい。
本発明の樹脂フィルムが有しうる前記の所定範囲の面配向係数の絶対値|Δne|は、好ましくは0.010以上、より好ましくは0.012以上、特に好ましくは0.014以上であり、好ましくは0.100以下、より好ましくは0.090以下、特に好ましくは0.080以下である。
【0086】
ここで、樹脂フィルムの面配向係数の絶対値|Δne|とは、「Δne=(nx+ny)/2−nz」で表される値Δneの絶対値である。nxは、樹脂フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、樹脂フィルムの前記面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。nzは、樹脂フィルムの厚み方向の屈折率を表す。別に断らない限り、前記の屈折率nx、ny及びnzの測定波長は550nmである。
【0087】
本発明の樹脂フィルムは、透明性に優れることが好ましい。具体的には、本発明の樹脂フィルムの全光線透過率は、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、特に好ましくは90%以上である。
樹脂フィルムの全光線透過率は、紫外・可視分光計を用いて、波長400nm〜700nmの範囲で測定しうる。
【0088】
本発明の樹脂フィルムは、ヘイズが小さいことが好ましい。具体的には、本発明の樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。
樹脂フィルムのヘイズは、当該樹脂フィルムを選択した任意の部位で50mm×50mmの正方形の薄膜サンプルに切り出し、その後、薄膜サンプルについて、ヘイズメーターを用いて測定しうる。
【0089】
本発明の樹脂フィルムは、用途に応じて、レターデーションを有していてもよい。例えば、本発明の樹脂フィルムを位相差フィルム、光学補償フィルム等の光学フィルムとして用いる場合には、樹脂フィルムはレターデーションを有することが好ましい。
【0090】
〔1.4.樹脂フィルムの厚み〕
本発明の樹脂フィルムの厚みは、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上、特に好ましくは5μm以上であり、好ましくは400μm以下、より好ましくは200μm以下、特に好ましくは100μm以下である。
【0091】
〔1.5.樹脂フィルムの用途〕
本発明の樹脂フィルムは、任意の用途に用いうる。中でも、本発明の樹脂フィルムは、例えば、光学等方性フィルム及び位相差フィルム等の光学フィルム、電気電子用フィルム、バリアフィルム用の基材フィルム、並びに、導電性フィルム用の基材フィルムとして好適である。前記の光学フィルムとしては、例えば、液晶表示装置用の位相差フィルム、偏光板保護フィルム、有機EL表示装置の円偏光板用の位相差フィルム、等が挙げられる。電気電子用フィルムとしては、例えば、フレキシブル配線基板、フィルムコンデンサー用絶縁材料、などが挙げられる。バリアフィルムとしては、例えば、有機EL素子用の基板、封止フィルム、太陽電池の封止フィルム、などが挙げられる。導電性フィルムとしては、例えば、有機EL素子や太陽電池のフレキシブル電極、タッチパネル部材、などが挙げられる。
【0092】
[2.樹脂フィルムの製造方法]
本発明の樹脂フィルムは、例えば、結晶性を有する脂環式構造含有重合体を含む樹脂からなる延伸前フィルムを延伸して、延伸フィルムを得る第一工程と;前記第一工程の後で、前記延伸フィルムを加熱する第二工程とを含む、本発明の樹脂フィルムの製造方法によって製造しうる。以下、この製造方法について説明する。
【0093】
〔2.1.延伸前フィルムの用意〕
本発明の樹脂フィルムの製造方法では、延伸前フィルムを用意する工程を行う。延伸前フィルムは、結晶性樹脂からなるフィルムである。
【0094】
結晶性樹脂からなる延伸前フィルムを製造する方法としては、例えば、射出成形法、押出成形法、プレス成形法、インフレーション成形法、ブロー成形法、カレンダー成形法、注型成形法、圧縮成形法等の樹脂成型法が挙げられる。これらの中でも、厚みの制御が容易であることから、押出成形法が好ましい。
【0095】
押出成形法によって延伸前フィルムを製造する場合、その押出成形法における製造条件は、好ましくは下記の通りである。シリンダー温度(溶融樹脂温度)は、好ましくはTm以上、より好ましくは(Tm+20℃)以上であり、好ましくは(Tm+100℃)以下、より好ましくは(Tm+50℃)以下である。また、キャストロール温度は、好ましくは(Tg−50℃)以上であり、好ましくは(Tg+70℃)以下、より好ましくは(Tg+40℃)以下である。このような条件で延伸前フィルムを製造することにより、所望の厚みの延伸前フィルムを容易に製造できる。ここで「Tm」は脂環式構造含有重合体の融点を表し、「Tg」は脂環式構造含有重合体のガラス転移温度を表す。
【0096】
延伸前フィルムの厚みは、製造しようとする樹脂フィルムの厚みに応じて任意に設定しうるものであり、好ましくは5μm以上、より好ましくは20μm以上、特に好ましくは40μm以上であり、好ましくは400μm以下、より好ましくは300μm以下、特に好ましくは200μm以下である。
【0097】
〔2.2.第一工程:延伸工程〕
延伸前フィルムを用意した後で、その延伸前フィルムを延伸して延伸フィルムを得る第一工程を行う。
【0098】
延伸前フィルムの延伸方法に格別な制限は無く、任意の延伸方法を用いうる。例えば、延伸前フィルムを長手方向に一軸延伸する方法(縦一軸延伸法)、延伸前フィルムを幅方向に一軸延伸する方法(横一軸延伸法)等の、一軸延伸法;延伸前フィルムを長手方向に延伸すると同時に幅方向に延伸する同時二軸延伸法、延伸前フィルムを長手方向及び幅方向の一方に延伸した後で他方に延伸する逐次二軸延伸法等の、二軸延伸法;延伸前フィルムを幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸する方法(斜め延伸法);などが挙げられる。
【0099】
前記の縦一軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用した延伸方法などが挙げられる。
また、前記の横一軸延伸法としては、例えば、テンター延伸機を用いた延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の同時二軸延伸法としては、例えば、ガイドレールに沿って移動可能に設けられ且つ延伸前フィルムを保持しうる複数のクリップを備えたテンター延伸機を用いて、クリップの間隔を開いて延伸前フィルムを長手方向に延伸すると同時に、ガイドレールの広がり角度により延伸前フィルムを幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
また、前記の逐次二軸延伸法としては、例えば、ロール間の周速の差を利用して延伸前フィルムを長手方向に延伸した後で、その延伸前フィルムの両端部をクリップで保持してテンター延伸機により幅方向に延伸する延伸方法などが挙げられる。
さらに、前記の斜め延伸法としては、例えば、延伸前フィルムに対して長手方向又は幅方向に左右異なる速度の送り力、引張り力又は引取り力を付加しうるテンター延伸機を用いて延伸前フィルムを斜め方向に連続的に延伸する延伸方法などが挙げられる。
【0100】
第一工程において延伸前フィルムを延伸する場合の延伸温度は、好ましくは(TG−30℃)以上、より好ましくは(TG−10℃)以上であり、好ましくは(TG+60℃)以下、より好ましくは(TG+50℃)以下である。ここで、「TG」とは、結晶性樹脂のガラス転移温度を表す。このような温度範囲で延伸を行うことにより、延伸前フィルムに含まれる重合体分子を適切に配向させることができるので、樹脂フィルムの耐折性を効果的に向上させることができる。
【0101】
延伸前フィルムを延伸する場合の延伸倍率は、好ましくは1.2倍以上、より好ましくは1.5倍以上であり、通常は20倍以下、好ましくは15倍以下、より好ましくは10倍以下である。ここで、第一工程において例えば二軸延伸のように異なる複数の方向に延伸を行う場合、各延伸方向における延伸倍率の積で表される総延伸倍率が、前記の範囲に収まることが好ましい。延伸倍率を前記の範囲に収めることにより、延伸前フィルムに含まれる重合体分子を適切に配向させることができるので、樹脂フィルムの耐折性を効果的に向上させることができる。
【0102】
前記のような延伸を延伸前フィルムに施すことにより、延伸フィルムを得ることができる。この延伸フィルムでは、当該延伸フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の分子が配向している。そのため、第二工程での加熱によって脂環式構造含有重合体が結晶化した場合での樹脂フィルムの脆化を抑制でき、樹脂フィルムの耐折性を高めることができる。さらに、延伸前フィルムを延伸することにより、第二工程での加熱による大きな結晶粒の発生を抑制できる。そのため、結晶粒に起因する白化を抑制できるので、樹脂フィルムの透明性を高めることができる。
【0103】
延伸フィルムの厚みは、製造しようとする樹脂フィルムの厚みに応じて任意に設定しうるものであり、好ましくは1μm以上、より好ましくは3μm以上であり、好ましくは500μm以下、より好ましくは200μm以下である。
【0104】
〔2.3.第二工程:加熱工程〕
前記第一工程で延伸フィルムを得た後で、その延伸フィルムを加熱する第二工程を行う。第二工程で加熱された延伸フィルムにおいては、通常、脂環式構造含有重合体がその配向状態を維持したまま、脂環式構造含有重合体の結晶化が進行する。そのため、前記の第二工程により、配向状態を維持したまま結晶化した脂環式構造含有重合体を含む樹脂フィルムが得られる。
【0105】
第二工程における延伸フィルムの加熱温度は、延伸フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体のガラス転移温度Tg以上、脂環式構造含有重合体の融点Tm以下という特定の温度範囲にすることが好ましい。これにより、脂環式構造含有重合体の結晶化を効果的に進行させることができる。さらに、前記の特定の温度範囲の中でも、結晶化の速度が大きくなるような温度に設定することが好ましい。例えば、脂環式構造含有重合体としてジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を用いる場合、第二工程における延伸フィルムの加熱温度は、好ましくは110℃以上、より好ましくは120℃以上であり、好ましくは240℃以下、より好ましくは220℃以下である。
【0106】
延伸フィルムを加熱するための加熱装置としては、加熱装置と延伸フィルムとの接触が不要であることから、延伸フィルムの雰囲気温度を上昇させうる加熱装置が好ましい。好適な加熱装置の具体例を挙げると、オーブン及び加熱炉が挙げられる。
【0107】
さらに、第二工程において、延伸フィルムの加熱は、延伸フィルムの少なくとも二辺を保持して緊張させた状態で行うことが好ましい。ここで、延伸フィルムを緊張させた状態とは、延伸フィルムに張力がかかった状態をいう。ただし、この延伸フィルムを緊張させた状態には、延伸フィルムが実質的に延伸される状態を含まない。また、実質的に延伸されるとは、延伸フィルムのいずれかの方向への延伸倍率が通常1.1倍以上になることをいう。
【0108】
延伸フィルムの少なくとも二辺を保持されて緊張した状態において加熱を行うことにより、保持された辺の間の領域において延伸フィルムの熱収縮による変形を妨げることができる。この際、延伸フィルムの広い面積において変形を妨げるためには、対向する二辺を含む辺を保持して、その保持された辺の間の領域を緊張した状態にすることが好ましい。例えば、矩形の枚葉の延伸フィルムでは、対向する二辺(例えば、長辺同士、又は、短辺同士)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その枚葉の延伸フィルムの全面において変形を妨げることが好ましい。また、長尺の延伸フィルムでは、幅方向の端部にある二辺(即ち、長辺)を保持して前記二辺の間の領域を緊張した状態にすることで、その長尺の延伸フィルムの全面において変形を妨げることが好ましい。このように変形を妨げられた延伸フィルムは、熱収縮によってフィルム内に応力が生じても、シワ等の変形の発生が抑制される。そのため、加熱によって樹脂フィルムの平滑性が損なわれることを抑制できるので、波打ち及びシワの少ない平滑な樹脂フィルムを得ることができる。
【0109】
さらに、加熱時の変形をより確実に抑制するためには、より多くの辺を保持することが好ましい。よって、例えば、枚葉の延伸フィルムでは、その全ての辺を保持することが好ましい。具体例を挙げると、矩形の枚葉の延伸フィルムでは、四辺を保持することが好ましい。
【0110】
延伸フィルムを保持する場合、適切な保持具によって延伸フィルムの辺を保持しうる。保持具は、延伸フィルムの辺の全長を連続的に保持しうるものでもよく、間隔を空けて間欠的に保持しうるものでもよい。例えば、所定の間隔で配列された保持具によって延伸フィルムの辺を間欠的に保持してもよい。
【0111】
また、保持具としては、延伸フィルムの辺以外の部分では延伸フィルムと接触しないものが好ましい。このような保持具を用いることにより、より平滑性に優れる樹脂フィルムを得ることができる。
【0112】
さらに、保持具としては、保持具同士の相対的な位置を第二工程においては固定しうるものが好ましい。このような保持具は、第二工程において保持具同士の位置が相対的に移動しないので、加熱時における延伸フィルムの実質的な延伸を抑制しやすい。
【0113】
好適な保持具としては、例えば、矩形の延伸フィルム用の保持具として、型枠に所定間隔で設けられ延伸フィルムの辺を把持しうるクリップ等の把持子が挙げられる。また、例えば、長尺の延伸フィルムの幅方向の端部にある二辺を保持するための保持具としては、テンター延伸機に設けられ延伸フィルムの辺を把持しうる把持子が挙げられる。
【0114】
長尺の延伸フィルムを用いる場合、その延伸フィルムの長手方向の端部にある辺(即ち、短辺)を保持してもよいが、前記の辺を保持する代わりに延伸フィルムの特定の温度範囲に加熱される領域の長手方向の両側を保持してもよい。例えば、延伸フィルムの特定の温度範囲に加熱される領域の長手方向の両側に、延伸フィルムを熱収縮しないように保持して緊張させた状態にしうる保持装置を設けてもよい。このような保持装置としては、例えば、2つのロールの組み合わせ、などが挙げられる。これらの組み合わせによって延伸フィルムに搬送張力等の張力を加えることで、特定の温度範囲に加熱される領域において当該延伸フィルムの熱収縮を抑制できる。そのため、前記の組み合わせを保持装置として用いれば、延伸フィルムを長手方向に搬送しながら当該延伸フィルムを保持できるので、樹脂フィルムの効率的な製造ができる。
【0115】
第二工程において、延伸フィルムを前記の特定の温度範囲に維持する処理時間は、好ましくは5秒以上、より好ましくは10秒以上であり、好ましくは1時間以下である。これにより、脂環式構造含有重合体の結晶化を十分に進行させることができるので、樹脂フィルムの耐熱性を特に高めることができる。
【0116】
〔2.4.任意の工程〕
本発明の樹脂フィルムの製造方法は、上述した工程に組み合わせて、任意の工程を含みうる。
例えば、本発明の樹脂フィルムの製造方法は、樹脂フィルムに任意の表面処理を施す工程を行ってもよい。
【実施例】
【0117】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0118】
[評価方法]
〔重量平均分子量及び数平均分子量の測定方法〕
重合体の重量平均分子量及び数平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)システム(東ソー社製「HLC−8320」)を用いて、ポリスチレン換算値として測定した。測定の際、カラムとしてはHタイプカラム(東ソー社製)を用い、溶媒としてはテトラヒドロフランを用いた。また、測定時の温度は、40℃であった。
【0119】
〔融点Tmの測定方法〕
窒素雰囲気下で300℃に加熱した試料を液体窒素で急冷し、示差操作熱量計(DSC)を用いて、10℃/分で昇温して試料の融点を求めた。
【0120】
〔重合体の水素添加率の測定方法〕
重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、145℃で、1H−NMR測定により測定した。
【0121】
〔重合体のラセモ・ダイアッドの割合の測定方法〕
オルトジクロロベンゼン−d4を溶媒として、150℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体の13C−NMR測定を行った。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−d4の127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルとの強度比に基づいて、重合体のラセモ・ダイアッドの割合を求めた。
【0122】
〔重合体の結晶化度の測定方法〕
フィルムに含まれる重合体の結晶化度は、X線回折法によって測定した。
【0123】
〔耐折度の評価方法〕
フィルムの耐折度は、JISP8115「紙及び板紙−耐折強さ試験方法−MIT試験機法」に準拠したMIT耐折試験により、下記の手順で測定した。
試料としてのフィルムから、幅15mm±0.1mm、長さ約110mmの試験片を切り出した。この際、前記のフィルムが延伸処理を経て製造されたフィルムである場合は、より強く延伸された方向が試験片の約110mmの辺と平行になるように試験片を作製した。
MIT耐折度試験機(安田精機製作所製「No.307」)を用いて、荷重9.8N、屈曲部の曲率0.38±0.02mm、折り曲げ角度135°±2°、折り曲げ速度175回/分の条件で、試験片の幅方向に折れ目が現れるように前記の試験片を折り曲げた。この折り曲げを継続し、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を測定した。
10枚の試験片を作製して、前記の方法により、試験片が破断するまでの往復折り曲げ回数を10回測定した。こうして測定された10回の測定値の平均を、当該フィルムの耐折度(MIT耐折回数)とした。
耐折度が2000回以上であれば「良」、耐折度が2000回未満であれば「不良」と判定した。
【0124】
〔吸水率の評価方法〕
試料としてのフィルムから、幅100mm、長さ100mmで試験片を切り出し、試験片の質量を測定した。その後、この試験片を、23℃の水中に24時間浸漬して、浸漬後の試験片の質量を測定した。そして、浸漬前の試験片の質量に対する、浸漬によって増加した試験片の質量の割合を、吸水率(%)として算出した。
吸水率の値が0.1%以下であれば「良」、吸水率の値が0.1%より大きければ「不良」と判定した。
【0125】
〔耐熱温度の評価方法〕
試料としてのフィルムに張力を掛けない状態で、その樹脂フィルムを180℃の雰囲気下で10分放置した。その後、目視でフィルムの面状を確認した。
フィルムの表面の形状に凹凸が確認できた場合は、耐熱温度が180℃未満であるとして「不良」と判定した。また、フィルムの表面の形状に凹凸が確認できなかった場合は、耐熱温度が180℃以上であるとして「良」と判定した。
【0126】
〔平滑性の評価方法〕
樹脂フィルムの平滑性を、下記のステップ(i)〜(viii)をこの順に行って、評価した。
(i)試料としての樹脂フィルムを幅方向に5等分して5枚の分割フィルムを得た。こうして得た分割フィルムそれぞれの中央部分から、150mm×150mmの正方形の試験片を切り出して、5枚の試験片を得た。この際、試験片の正方形の辺は、樹脂フィルムが最も強く延伸された方向に平行又は垂直となるようにした。
(ii)図1及び図2に示すように、水平な平面状の支持面110Uを有する定盤110の前記支持面110Uに、試験片120を載せた。
(iii)試験片120のカールを防ぐため、樹脂フィルムが最も強く延伸された方向Xにおける試験片120の両端部10mmに、重り130及び140を載せた。
(iv)この状態で、試験片120を三次元形状測定機(ニコン社製「多関節形三次元測定機 MCAx20」)を用いてスキャンすることにより、試験片120の立体形状を測定した。
(v)測定された立体形状より、定盤110の支持面110Uから、この支持面110Uから最も離れた試験片120上の点P120までの距離Lを求めた。
(vi)試験片を裏返して、前記(ii)〜(v)のステップを行い、距離Lを求めた。
(vii)残りの4枚の試験片についても、それぞれ前記(ii)〜(vi)のステップを行い、距離Lを求めた。
(viii)5枚の試験片で測定した距離Lがいずれも2mm未満である場合、その樹脂フィルムが平滑であると判定し、平滑性を「良」とした。また、5枚の試験片で測定した距離Lのうち、一つでも2mmを超える場合は、その樹脂フィルムが平滑でないと判定し、平滑性を「不良」とした。
【0127】
[製造例1.ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0128】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0129】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。
【0130】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素添加物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0131】
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性を有するジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物28.5部を得た。この水素添加物の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度(Tg)は95℃、融点(Tm)は262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0132】
[実施例1]
(1−1.延伸前フィルムの製造)
製造例1で得たジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物100部に、酸化防止剤(テトラキス〔メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン;BASFジャパン社製「イルガノックス(登録商標)1010」)1.1部を混合して、フィルムの材料となる樹脂を得た。
【0133】
前記の樹脂を、内径3mmΦのダイ穴を4つ備えた二軸押出機(東芝機械社製「TEM−37B」)に投入した。前記の二軸押出機によって、樹脂を熱溶融押出成形によりストランド状の成形体に成形した。この成形体をストランドカッターにて細断して、樹脂のペレットを得た。前記の二軸押出機の運転条件を、以下に示す。
・バレル設定温度:270℃〜280℃
・ダイ設定温度:250℃
・スクリュー回転数:145rpm
・フィーダー回転数:50rpm
【0134】
引き続き、得られたペレットを、Tダイを備える熱溶融押出しフィルム成形機に供給した。このフィルム成形機を用いて、前記の樹脂からなる長尺の延伸前フィルム(厚み100μm)を、2m/分の引き取り速度でロールに巻き取る方法にて製造した。前記のフィルム成形機の運転条件を、以下に示す。
・バレル温度設定:280℃〜290℃
・ダイ温度:270℃
・スクリュー回転数:30rpm
【0135】
(1−2.延伸フィルムの製造)
長尺の延伸前フィルムの幅方向の端部の二辺を把持しうるクリップを備えたテンター延伸機を用意した。長尺の延伸前フィルムを前記のテンター延伸機に供給し、クリップで延伸前フィルムの幅方向の端部の二辺を保持して幅方向に引っ張ることにより、延伸前フィルムに一軸延伸処理を施した。この際の延伸条件は、延伸温度100℃、延伸倍率2.0倍であった。これにより、延伸フィルムを得た。
【0136】
(1−3.加熱処理)
テンター装置のクリップで延伸フィルムの幅方向の端部の二辺を保持して緊張させた状態で延伸フィルムを搬送しながら、延伸フィルムに加熱処理を施した。この際の加熱条件は、処理温度200℃、処理時間20分であった。これにより、延伸フィルムに含まれる脂環式構造含有重合体の結晶化が進行して、厚み50μmの長尺の樹脂フィルムが得られた。
こうして得られた樹脂フィルムからクリップに把持されていた端部を切り除き、残った部分について上述した方法で、重合体の結晶化度、面配向係数Δne、耐折度、吸水率、耐熱温度及び平滑性を評価した。
【0137】
[実施例2]
前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの樹脂フィルムが得られるように調整した。
また、前記工程(1−2)において、延伸前フィルムに幅方向だけでなく長手方向にも延伸する同時二軸延伸処理を施すことにより、延伸フィルムを製造した。この際の延伸条件は、延伸温度100℃、幅方向の延伸倍率2.0倍、長手方向の延伸倍率2.0倍であった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
【0138】
[比較例1]
前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの延伸フィルムが得られるように調整した。
また、前記工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、加熱処理を施していない延伸フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0139】
[比較例2]
前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの延伸フィルムが得られるように調整した。
また、前記工程(1−2)において、延伸前フィルムに幅方向だけでなく長手方向にも延伸する同時二軸延伸処理を施すことにより、延伸フィルムを製造した。この際の延伸条件は、延伸温度100℃、幅方向の延伸倍率2.0倍、長手方向の延伸倍率2.0倍であった。
さらに、前記工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、加熱処理を施していない延伸フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0140】
[比較例3]
前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを50μmに調整した。
また、前記工程(1−2)及び工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸処理及び加熱処理を施していない延伸前フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0141】
[比較例4]
前記工程(1−1)において、押出条件をそのままにして、引き取り速度を2倍にした。また、前記工程(1−2)及び工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸処理及び加熱処理を施していない延伸前フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0142】
[比較例5]
前記工程(1−1)において、フィルムの材料となる樹脂として、ポリエチレンテレフタレート樹脂を用いた。
また、前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの樹脂フィルムが得られるように調整した。
さらに、前記工程(1−2)において、延伸前フィルムに幅方向だけでなく長手方向にも延伸する同時二軸延伸処理を施すことにより、延伸フィルムを製造した。この際の延伸条件は、延伸温度120℃、幅方向の延伸倍率2.0倍、長手方向の延伸倍率2.0倍であった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
【0143】
[比較例6]
前記工程(1−1)において、フィルムの材料となる樹脂として、結晶性を有さない環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度120℃)を用いた。
また、前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを50μmに調整した。
さらに、前記工程(1−2)及び工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸処理及び加熱処理を施していない延伸前フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0144】
[比較例7]
前記工程(1−1)において、フィルムの材料となる樹脂として、結晶性を有さない環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ゼオノア」、ガラス転移温度120℃)を用いた。
また、前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの延伸フィルムが得られるように調整した。
さらに、前記工程(1−2)において、延伸前フィルムに幅方向だけでなく長手方向にも延伸する同時二軸延伸処理を施すことにより、延伸フィルムを製造した。この際の延伸条件は、延伸温度120℃、幅方向の延伸倍率2.0倍、長手方向の延伸倍率2.0倍であった。
また、前記工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、加熱処理を施していない延伸フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0145】
[比較例8]
前記工程(1−1)において、フィルムの材料となる樹脂として、結晶性を有さないエチレン―ノルボルネン付加共重合体樹脂を用いた。
また、前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを50μmに調整した。
さらに、前記工程(1−2)及び工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸処理及び加熱処理を施していない延伸前フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0146】
[比較例9]
前記工程(1−1)において、フィルムの材料となる樹脂として、ポリカーボネート樹脂(旭化成社製「ワンダーライトPC−115」、ガラス転移温度145℃)を用いた。
また、前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの延伸フィルムが得られるように調整した。
さらに、前記工程(1−2)において、延伸前フィルムに幅方向だけでなく長手方向にも延伸する同時二軸延伸処理を施すことにより、延伸フィルムを製造した。この際の延伸条件は、延伸温度150℃、幅方向の延伸倍率2.0倍、長手方向の延伸倍率2.0倍であった。
また、前記工程(1−3)を行わなかった。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、加熱処理を施していない延伸フィルムを樹脂フィルムとして製造及び評価を行った。
【0147】
[比較例10]
前記工程(1−1)において、延伸前フィルムの厚みを、厚み50μmの樹脂フィルムが得られるように調整した。
また、前記工程(1−2)を行わなかった。したがって、前記工程(1−3)において、延伸フィルムの代わりに延伸前フィルムを用いた。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、延伸処理を施していない樹脂フィルムの製造及び評価を行った。
【0148】
[結果]
前述の実施例及び比較例の操作概要を表1に示し、結果を表2に示す。下記の表において、略称の意味は、以下の通りである。
PDCPD:ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物
PET:ポリエチレンテレフタレート
COP:環状オレフィンポリマー
COC:環状オレフィンコポリマー
PC:ポリカーボネート
Δne:面配向係数
【0149】
【表1】
【0150】
【表2】
【0151】
[検討]
表1及び表2から分かるように、実施例1及び2においては、耐折度、吸水率及び耐熱温度のいずれにおいても良好な結果が得られている。このことから、本発明により、耐折性、低吸水性、及び耐熱性のいずれにも優れる樹脂フィルムを実現できることが確認された。
【符号の説明】
【0152】
110 定盤
110U 支持面
120 試験片
130 重り
140 重り
図1
図2