特許第6776926号(P6776926)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6776926-イオン交換樹脂再生装置および再生方法 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6776926
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】イオン交換樹脂再生装置および再生方法
(51)【国際特許分類】
   B01J 49/09 20170101AFI20201019BHJP
   C02F 1/42 20060101ALI20201019BHJP
   B01J 39/04 20170101ALI20201019BHJP
   B01J 39/18 20170101ALI20201019BHJP
   B01J 41/04 20170101ALI20201019BHJP
   B01J 41/12 20170101ALI20201019BHJP
   B01J 47/04 20060101ALI20201019BHJP
   B01J 49/60 20170101ALI20201019BHJP
【FI】
   B01J49/09
   C02F1/42 A
   C02F1/42 B
   B01J39/04
   B01J39/18
   B01J41/04
   B01J41/12
   B01J47/04
   B01J49/60
【請求項の数】3
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2017-21412(P2017-21412)
(22)【出願日】2017年2月8日
(65)【公開番号】特開2018-126687(P2018-126687A)
(43)【公開日】2018年8月16日
【審査請求日】2019年11月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001063
【氏名又は名称】栗田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100086911
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】安達 恒康
(72)【発明者】
【氏名】井上 孝志
【審査官】 富永 正史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−000476(JP,A)
【文献】 特開昭55−020636(JP,A)
【文献】 特開平09−215942(JP,A)
【文献】 米国特許第5736052(US,A)
【文献】 特開2005−329275(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/168449(WO,A1)
【文献】 特開2013−233531(JP,A)
【文献】 特開2001−079424(JP,A)
【文献】 特開昭53−067682(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 39/00−49/90
C02F 1/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
復水脱塩塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、アニオン交換樹脂再生塔と、樹脂貯槽とが配管により樹脂移送可能に接続された復水脱塩用イオン交換樹脂再生装置において、
前記カチオン交換樹脂再生塔の上下方向途中に設けられたイオン交換樹脂排出口と前記アニオン交換樹脂再生塔とを接続する樹脂移送配管に開閉弁が設けられ、該樹脂移送配管のうち該開閉弁より上流側に、該樹脂移送配管に混入したイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔に戻すための戻し水供給配管が接続されていることを特徴とするイオン交換樹脂再生装置。
【請求項2】
請求項1に記載のイオン交換樹脂再生装置を用いたイオン交換樹脂再生方法であって、
復水脱塩塔内のイオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔に移送する工程と、
前記カチオン交換樹脂再生塔の下部から逆洗水を供給し、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを比重差によって分離界面が樹脂排出口より下方になるまで両樹脂を分離する第1樹脂分離工程と、
該第1樹脂分離工程の後に、前記樹脂移送配管の前記開閉弁よりも上流側に戻し水を流入させて該移送配管内のイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔へ戻す戻し工程と、
該戻し工程の後にさらに前記カチオン交換樹脂再生塔の下部から逆洗水を供給してカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを比重差で分離する第2樹脂分離工程と、
該第2樹脂分離工程の後に、該カチオン交換樹脂再生塔内からアニオン交換樹脂を樹脂移送配管を通じてアニオン交換樹脂再生塔へ移送するアニオン交換樹脂排出工程と、
前記カチオン交換樹脂再生塔でカチオン交換樹脂を再生し、前記アニオン交換樹脂再生塔でアニオン交換樹脂を再生する再生工程と、
再生されたカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を前記樹脂貯槽に移送する工程と、
を有することを特徴とするイオン交換樹脂再生方法。
【請求項3】
請求項2において、前記第2樹脂分離工程の後に、該カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂層の上側に存在するアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混在層を前記樹脂貯槽に移送する混在層移送工程を有することを特徴とするイオン交換樹脂再生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、復水脱塩装置のイオン交換樹脂再生装置に係り、特に火力発電所、原子力発電所等における復水脱塩装置用のイオン交換樹脂再生装置に関する。また、本発明は、このイオン交換装置を用いたイオン交換方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通常、復水脱塩は、イオン交換樹脂再生のためにカチオン交換樹脂再生塔、アニオン交換樹脂再生塔および樹脂貯槽が設置されており、薬液再生は硫酸および苛性ソーダで行なわれる(例えば特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載のイオン交換再生装置及び再生方法について図2を参照して説明する。この再生装置は、復水脱塩塔1、カチオン交換樹脂再生塔3、アニオン交換樹脂再生塔5、樹脂貯槽8及びこれらを接続して樹脂移送を可能にする配管2,4,6,7,9を有する塔外再生方式を用いた復水脱塩装置におけるイオン交換樹脂再生装置である。復水脱塩塔1には、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とが混合状態で充填されている。
【0004】
通常運転時には、配管2,4,6,7,9は、各配管に設けられた弁(図示略)が閉とされることにより通液停止している。配管10a、10bのみを介して復水脱塩塔1に復水を通水することにより、脱塩処理を行う。この再生装置によるイオン交換樹脂再生は次の樹脂抜き・分離工程、逆洗再生工程及び樹脂混合・返送工程によって行われる。
<樹脂抜き・分離工程>
(i) 配管10a、10bの通液を停止し、復水脱塩塔1を主系統から切り離す。
(ii) 復水脱塩塔1内のイオン交換樹脂を、配管2を通じてカチオン交換樹脂再生塔3に移送する。
(iii) カチオン交換樹脂再生塔3内でイオン交換樹脂を水に浸漬した状態で下部より空気を吹き込み(エアスクラビング)、樹脂に付着した腐食生成物(クラッド等)を脱離する。
(iv) カチオン交換樹脂再生塔3に逆洗水を上向流にて通水することにより、混合状態のイオン交換樹脂を比重差でアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の上下2層に分離する。
(v) 配管4を通じてアニオン交換樹脂を選択的に引き抜き、アニオン交換樹脂再生塔5に移送する。
<逆洗再生工程>
(vi) カチオン交換樹脂はカチオン交換樹脂再生塔3、アニオン交換樹脂はアニオン交換樹脂再生塔5において、それぞれ酸、アルカリを注入して薬液再生を行う。
<樹脂混合・返送工程>
(vii) 薬液再生が終了した後、再生したカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を、それぞれ配管6と配管7を通じて樹脂貯槽8に移送する。
(viii) 樹脂貯槽8において洗浄および混合操作を行う。
(ix) 樹脂貯槽8内のイオン交換樹脂を混合状態のまま配管9を通じて復水脱塩塔1に返送する。
(x) 配管9を通液停止し、復水脱塩塔1を予備塔として待機状態とする。
【0005】
これにより、再生が終了するので、配管10a、10bを介して復水通水を再開し、脱塩処理運転に戻る。
【0006】
この再生方法にあっては、工程(vii)においてカチオン交換樹脂再生塔3が空の状態となり配管4内も水が殆んど抜けている状態になるため、配管4の弁を閉じていても、次ターンの再生工程の工程(ii)において、配管4内にイオン交換樹脂が入り込み易い。すなわち、復水脱塩塔1からカチオン交換樹脂再生塔3にイオン交換樹脂を受け入れた際、配管4の弁が閉まっていても、イオン交換樹脂受入時における水流による樹脂の激しい流動によって、樹脂排出ヘッド部内や移送配管4内にイオン交換樹脂が入り込みやすい。この状態で工程(iv)を行うと、配管4に混入していたイオン交換樹脂中のカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とは分離されない。このため、工程(v)において配管4内のカチオン交換樹脂を含んだイオン交換樹脂がアニオン交換樹脂再生塔5に混入し、該カチオン交換樹脂が工程(vi)において逆再生される。これによりカチオン交換樹脂の利用効率が下がってしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開昭55−051445号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、アニオン交換樹脂再生塔にカチオン交換樹脂が混入することを防止することにより、カチオン交換樹脂の逆再生を防ぎ、イオン交換樹脂の利用効率を向上させる復水脱塩装置におけるイオン交換樹脂再生装置およびこの再生装置を用いたイオン交換再生方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明のイオン交換樹脂再生装置は、復水脱塩塔と、カチオン交換樹脂再生塔と、アニオン交換樹脂再生塔と、樹脂貯槽とが配管により樹脂移送可能に接続された復水脱塩用イオン交換樹脂再生装置において、前記カチオン交換樹脂再生塔の上下方向途中に設けられたイオン交換樹脂排出口と前記アニオン交換樹脂再生塔とを接続する樹脂移送配管に開閉弁が設けられ、該樹脂移送配管のうち該開閉弁より上流側に、該樹脂移送配管に混入したイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔に戻すための戻し水供給配管が接続されていることを特徴とする。
【0010】
本発明のイオン交換樹脂再生方法は、本発明のイオン交換樹脂再生装置を用いたイオン交換樹脂再生方法であって、復水脱塩塔内のイオン交換樹脂を前記カチオン交換樹脂再生塔に移送する工程と、前記カチオン交換樹脂再生塔の下部から逆洗水を供給し、カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを比重差によって分離界面が樹脂排出口より下方になるまで両樹脂を分離する第1樹脂分離工程と、該第1樹脂分離工程の後に、前記樹脂移送配管の前記開閉弁よりも上流側に戻し水を流入させて該移送配管内のイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔へ戻す戻し工程と、該戻し工程の後にさらに前記カチオン交換樹脂再生塔の下部から逆洗水を供給してカチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂とを比重差で分離する第2樹脂分離工程と、該第2樹脂分離工程の後に、該カチオン交換樹脂再生塔内からアニオン交換樹脂を樹脂移送配管を通じてアニオン交換樹脂再生塔へ移送するアニオン交換樹脂排出工程と、前記カチオン交換樹脂再生塔でカチオン交換樹脂を再生し、前記アニオン交換樹脂再生塔でアニオン交換樹脂を再生する再生工程と、再生されたカチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂を前記樹脂貯槽に移送する工程と、を有する。
【0011】
本発明のイオン交換樹脂再生方法の一態様は、前記第2樹脂分離工程の後に、該カチオン交換樹脂再生塔内のカチオン交換樹脂層の上側に存在するアニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混在層を前記樹脂貯槽に移送する混在層移送工程を有する。
【発明の効果】
【0012】
本発明では、復水脱塩塔からのカチオン交換樹脂再生塔へのイオン交換樹脂移送及びその後の第1分離工程でアニオン交換樹脂移送配管にイオン交換樹脂が入り込んでおり、このイオン交換樹脂にはカチオン交換樹脂が混入している。そこで、アニオン交換樹脂移送配管内に水を供給してイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔に戻す。その後、第2分離工程を行う。そうすると、アニオン交換樹脂移送配管には実質的にアニオン交換樹脂のみが入り込む。そのため、この後にカチオン交換樹脂再生塔内のアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂再生塔へ移送すると、この移送されるアニオン交換樹脂にはカチオン交換樹脂が殆ど混入しないものとなる。これにより、カチオン交換樹脂がアニオン交換樹脂再生塔へ混入することを防止することができる。
【0013】
カチオン交換樹脂再生塔からアニオン交換樹脂を移送した後、カチオン交換樹脂再生塔のカチオン交換樹脂層の上側の混在層(カチオン交換樹脂とアニオン交換樹脂との混合物層)を樹脂貯槽へ移送することにより、該混在層中のアニオン交換樹脂がカチオン交換樹脂再生塔内で逆再生されることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施の形態に係るイオン交換樹脂再生装置の系統図である。
図2】従来例に係るイオン交換樹脂再生装置の系統図である。
図3】実施の形態におけるカチオン交換樹脂再生塔内の樹脂分離工程の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。図1は、実施の形態に係るイオン交換樹脂再生装置を示すものであり、前記図2のイオン交換樹脂再生装置と共通する部材については同一符号が付されている。
【0016】
カチオン交換樹脂再生塔3の底部には、弁11aを有した逆洗水供給配管11が接続され、頂部には、弁12aを有した逆洗排水の排水配管12が接続されている。図3に模式的に示す通り、該カチオン交換樹脂再生塔3内の上下方向の途中にアニオン交換樹脂排出口4aが設置されており、樹脂移送配管4の上流端が該アニオン交換樹脂排出口4aに接続されている。
【0017】
樹脂移送配管4の途中には弁15が設けられている。該樹脂移送配管4の該弁15よりも上流側(カチオン交換樹脂再生塔3側)に、該配管4内のイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂)をカチオン交換樹脂再生塔3に流し出すための戻し水供給配管14が接続されている。該配管14に弁14aが設けられている。
【0018】
該樹脂移送配管4のうち水供給配管14の接続部分と弁15との間から、樹脂移送配管17が分岐しており、該樹脂移送配管17の末端(下流端)は樹脂貯槽8の上部に接続されている。該樹脂移送配管17に弁17aが設けられている。弁17aは、配管17の上流端の直近に位置する。
【0019】
このアニオン交換樹脂装置のその他の構成は、図3のイオン交換樹脂再生装置と同一である。
【0020】
このイオン交換樹脂再生装置は、次の樹脂抜き・分離工程、再生工程及び樹脂混合・返送工程によって運転される。
【0021】
<樹脂抜き・分離工程>
(1) 配管10a、10bの通液を停止し、復水脱塩塔1を主系統から切り離す。
(2) 配管2に設けられた弁(図示略)を開とすると共に、復水脱塩塔1内にイオン交換用水を供給し、復水脱塩塔1内のイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂)を、配管2を通じてカチオン交換樹脂再生塔3に移送する(図3(a))。
【0022】
(3) 第1分離工程:弁11a,12aを開とし、弁14a,15,17aを閉とし、カチオン交換樹脂再生塔3内に逆洗水を好ましくはLV5〜15m/hrで5分以上上向流通水することにより、該再生塔3内の混合状態のイオン交換樹脂を、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂の上下2層に比重差で分離する。この工程は少なくとも樹脂分離界面がアニオン交換樹脂排出口4aより低くなるまで行う(図3(b))。
なお、この工程(3)において、樹脂分離界面が樹脂排出口4aより低くなったことを樹脂センサーによって検知してもよいが、通常の樹脂排出口の高さを有するカチオン交換樹脂再生塔であれば、小さめのLV(例えば5〜15m/hr)での逆洗通水を5分以上行うことにより樹脂分離界面が樹脂排出口4aより低くなるので、この通水条件で通水することで検知・判定を省略することも可能である。
【0023】
(4) 戻し工程:弁12a,14aを開とし、弁15,17aを閉とし、配管14から樹脂移送配管4内に戻し水を供給し、該配管4内やアニオン交換樹脂排出口4aに入り込んでいたイオン交換樹脂(カチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂)をカチオン交換樹脂再生塔3に戻す。この戻し工程は10秒以上行うのが好ましい。なお、この戻し工程では、弁11aは開、閉のいずれでもよい。
【0024】
(5) 第2分離工程:弁11a,12aを開、弁14a,15,17aを閉とし、カチオン交換樹脂再生塔3内に逆洗水を好ましくはLV5〜15m/hrで10分以上上向流通水し、カチオン交換樹脂再生塔3内で再度アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との比重差分離を行う。この第2分離工程の間にアニオン交換樹脂排出口4aから配管4に入り込む樹脂はアニオン交換樹脂である。この第2分離工程は、樹脂界面がほぼ一定となるまで行う。
【0025】
(6) アニオン交換樹脂抜出工程:弁11a,15を開とし、弁12a,14a,17aを閉とし、カチオン交換樹脂再生塔3内の上層側のアニオン交換樹脂をアニオン交換樹脂排出口4a及び樹脂移送配管4を介して引き抜き、アニオン交換樹脂再生塔5に移送する(図3(c))。前記の通り、配管4内には実質的にアニオン交換樹脂のみが残留しているので、このアニオン交換樹脂再生塔5に移送されるアニオン交換樹脂には、カチオン交換樹脂は殆ど混入していない。このため、後の再生工程において、該アニオン交換樹脂再生塔5内でカチオン交換樹脂が逆再生されることが防止される。
【0026】
(7) 混在層抜出工程:アニオン交換樹脂がアニオン交換樹脂排出口4aのレベルまで排出・移送されると、図3(c)の通り、アニオン交換樹脂排出口4aとカチオン交換樹脂層上面との間には、アニオン交換樹脂とカチオン交換樹脂との混在層が残存する。
そこで、弁11a,12aを開とし、弁14a,15,17aを閉とし、逆洗水をLVを速めて上向流通水する逆洗を行い(例えばLV10〜20m/hr)、混在層とカチオン交換樹脂層との界面を押し上げると共に混在層においてさらなる樹脂分離を促進し(図3(d))、この界面がアニオン交換樹脂排出口4a付近まで下がるように弁11aの開度を調整し(図3(e))、次いで弁12aを閉とし、弁17aを開とし、混在層を構成するアニオン交換樹脂及びカチオン交換樹脂の混合樹脂を、アニオン交換樹脂排出口4a、配管4(配管17の分岐部よりも上流側)及び配管17を介して樹脂貯槽8に移送する(図3(f))。
【0027】
これにより、カチオン交換樹脂再生塔3内のカチオン交換樹脂中にアニオン交換樹脂が残留することが防止される。このため、次の再生工程において、該カチオン交換樹脂再生塔3内でアニオン交換樹脂が逆再生されることが防止される。
【0028】
<再生工程>
(8) カチオン交換樹脂再生塔3、アニオン交換樹脂再生塔5のそれぞれにおいて、樹脂を水に浸漬した状態で下部より空気を吹き込み(エアスクラビング)、樹脂に付着した腐食生成物(クラッド等)を脱離する。
(9) カチオン交換樹脂再生塔3に配管13より酸を注入してカチオン交換樹脂を再生する。また、アニオン交換樹脂再生塔5に配管16よりアルカリを注入してアニオン交換樹脂を再生する。
【0029】
<樹脂混合・返送工程>
(10) カチオン交換樹脂及びアニオン交換樹脂の再生が終了した後、再生したカチオン交換樹脂およびアニオン交換樹脂を、それぞれ配管6,7を通じて樹脂貯槽8に移送する。
(11) 樹脂貯槽8において洗浄および混合操作を行う。
(12) 樹脂貯槽8内のイオン交換樹脂を混合状態のまま配管9を通じて復水脱塩塔1に返送する。
(13) 配管9を通液停止し、配管10a、10bの復水通水を再開して通常の脱塩処理運転に戻る。
【0030】
上記説明は本発明の一例であり、本発明は上記以外の形態とされてもよい。例えば、(6)のアニオン交換樹脂抜出工程の後、第3分離工程を行い、次いで必要に応じてアニオン交換樹脂を抜き出し、その後、(7)の混在層抜出工程を行ってもよい。また、エアスクラビングを図2の従来例と同様のタイミングで行ってもよい。
【実施例】
【0031】
[実施例1]
図1の構成を有するイオン交換樹脂再生装置において、カチオン交換樹脂再生塔(内径1700mm、塔高4100mm)3内の下部集水板から高さ1600mmの位置にアニオン交換樹脂排出口4aを配置した。イオン交換樹脂としては以下のものを用いた。
【0032】
カチオン交換樹脂:ダイヤイオンUBk14HK
アニオン交換樹脂:ダイヤイオンPA312LOH
【0033】
上記カチオン交換樹脂2800Lとアニオン交換樹脂1300Lとを混合状態でカチオン交換樹脂再生塔3内に収容した。その後、上記工程(1)〜(13)のうち工程(3)〜(7)を次の条件で行った。そして、カチオン交換樹脂再生塔から分離して抜き出したアニオン交換樹脂に混入したカチオン交換樹脂の量をカチオン交換樹脂混入率(体積%)として算出して効果検証を行った。結果を表1に示す。
【0034】
(3)第1分離工程:LV10m/hr×8分
(4)戻し工程:戻し水量335L/min×2分(LV10m/hr)
(5)第2分離工程:LV10m/hr×35分
(6)アニオン交換樹脂抜出工程:LV10m/hr×10分
(7)混在層抜出工程:LV15m/hr×(逆洗25分+抜出20分)
【0035】
また、前記(7)の混在層抜出工程により抜き出された混在層の厚みを測定し、表1に示した。
【0036】
[実施例2,3]
前記工程(7)の混在層抜出工程により抜き出された混在層厚みが100mm(実施例2)又は50mm(実施例3)となるように混在層抜出工程を行ったこと以外は実施例1と同一の操作を行った。カチオン交換樹脂混入率及び抜き出された混在層厚みの測定結果を表1に示す。
【0037】
[比較例1]
前記(4)の戻し工程を行わなかったこと以外は実施例1と同一の操作を行った。カチオン交換樹脂混入率及び抜き出された混在層厚みの測定結果を表1に示す。
【0038】
【表1】
【0039】
表1より、アニオン交換樹脂移送配管に入り込んだイオン交換樹脂をカチオン交換樹脂再生塔に戻す戻し工程を行うことにより、比較例1よりカチオン交換樹脂混入率が低い値となることが認められた。
【0040】
また、実施例1,2の通り、混在層抜出厚みを100mm以上とすることにより、実施例3よりカチオン交換樹脂混入率が低い値となることが認められた。
【符号の説明】
【0041】
1 復水脱塩塔
3 カチオン交換樹脂再生塔
4 アニオン交換樹脂移送配管
4a アニオン交換樹脂排出口(排出ヘッド)
5 アニオン交換樹脂再生塔
8 樹脂貯槽
14 戻し水供給配管
図1
図2
図3