特許第6777176号(P6777176)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日本ゼオン株式会社の特許一覧
特許6777176光学積層体及びその製造方法、偏光板及び表示装置
<>
  • 特許6777176-光学積層体及びその製造方法、偏光板及び表示装置 図000009
  • 特許6777176-光学積層体及びその製造方法、偏光板及び表示装置 図000010
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6777176
(24)【登録日】2020年10月12日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】光学積層体及びその製造方法、偏光板及び表示装置
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20201019BHJP
   B32B 7/023 20190101ALI20201019BHJP
   B32B 27/00 20060101ALI20201019BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20201019BHJP
【FI】
   G02B5/30
   B32B7/023
   B32B27/00 A
   G02F1/1335 510
【請求項の数】19
【全頁数】43
(21)【出願番号】特願2019-20629(P2019-20629)
(22)【出願日】2019年2月7日
(62)【分割の表示】特願2017-559192(P2017-559192)の分割
【原出願日】2016年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-86792(P2019-86792A)
(43)【公開日】2019年6月6日
【審査請求日】2019年2月7日
(31)【優先権主張番号】特願2015-257119(P2015-257119)
(32)【優先日】2015年12月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】井上 恭輔
【審査官】 菅原 奈津子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−245788(JP,A)
【文献】 特開2015−143842(JP,A)
【文献】 特開2008−020895(JP,A)
【文献】 特開2013−202919(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/026733(WO,A1)
【文献】 特開平05−064865(JP,A)
【文献】 特開平09−234786(JP,A)
【文献】 特開2007−245551(JP,A)
【文献】 特開2014−123059(JP,A)
【文献】 特開2004−126546(JP,A)
【文献】 特開2014−119539(JP,A)
【文献】 特開2009−265302(JP,A)
【文献】 特開2009−265636(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
B32B 1/00−43/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる基材層と、非晶性の重合体Bを含む樹脂からなる第一表面層とを備え、
前記結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TgA+65℃≧TgB>TgAを満たし、
前記結晶性の重合体Aの結晶化温度TcA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TcA−10℃≧TgB≧TcA−60℃を満たし、
前記第一表面層の面配向係数Pが、0.0005≦P≦0.01を満たし、
光学積層体の総厚みに対する、前記基材層の厚みの割合が、25%以上である、光学積層体。
【請求項2】
前記第一表面層の面配向係数Pが、P≦0.005を満たす、請求項1に記載の光学積層体。
【請求項3】
前記光学積層体の引張弾性率が、3000MPa以上5000MPa以下である、請求項1又は2に記載の光学積層体。
【請求項4】
前記光学積層体の測定波長550nmにおける面内レターデーションが、400nm以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項5】
前記光学積層体の水蒸気透過率が、10g/(m・24h)以下である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項6】
波長380nmにおける前記光学積層体の透過率が、10%以下である、請求項1〜5のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項7】
前記基材層と、前記第一表面層とが、直接に接している、請求項1〜6のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項8】
前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TcA−20℃≧TgB≧TcA−60℃を満たす、請求項1〜7のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項9】
前記光学積層体の総厚みに対する、前記基材層の厚みの割合が、50%以上である、請求項1〜8のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項10】
前記第一表面層の厚みが、0.1μm以上、10.0μm以下である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項11】
前記結晶性の重合体Aが、脂環式構造を含有する結晶性の重合体であり、
前記非晶性の重合体Bが、脂環式構造を含有する非晶性の重合体である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項12】
前記脂環式構造を含有する結晶性の重合体が、
環状オレフィン単量体の開環重合体であって結晶性を有するもの、
環状オレフィン単量体の開環重合体であって結晶性を有するものの水素添加物であって、結晶性を有するもの、
環状オレフィン単量体の付加重合体であって結晶性を有するもの、及び、
環状オレフィン単量体の付加重合体であって結晶性を有するものの水素添加物であって、結晶性を有するもの
からなる群より選ばれる、請求項11に記載の光学積層体。
【請求項13】
前記脂環式構造を含有する結晶性の重合体が、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するもの、からなる群より選ばれる、請求項11又は12に記載の光学積層体。
【請求項14】
前記脂環式構造を含有する非結晶性の重合体が、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物からなる群より選ばれる、請求項11〜13のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項15】
前記ノルボルネン系重合体が、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物からなる群より選ばれる、請求項14に記載の光学積層体。
【請求項16】
前記ビニル脂環式炭化水素重合体が、芳香族ビニル化合物を重合し不飽和結合を水素化して得られる構造を有する芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)、及び、ジエン化合物を重合し不飽和結合を水素化して得られる構造を有するジエン化合物水素化物単位(b)、を有する重合体である、請求項14又は15に記載の光学積層体。
【請求項17】
前記基材層の前記第一表面層とは反対側に、非晶性の重合体B’を含む樹脂からなる第二表面層を備える、請求項1〜16のいずれか一項に記載の光学積層体。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の光学積層体と、偏光子と、を備える偏光板であって、
前記光学積層体の第一表面層が、前記偏光板の最外層となっている、偏光板。
【請求項19】
請求項18記載の偏光板を備える、表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体、光学積層体の製造方法、並びに、前記の光学積層体を備えた偏光板及び表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、表示装置には、複数の光学フィルムが設けられる。これら複数の光学フィルムは、通常は貼り合わせた状態で表示装置に設けられている。
他方、光学フィルムの材料として、近年、結晶性を有する重合体を含む樹脂が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013−010309号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、表示装置の大画面化が進んでおり、この大画面化に伴って、光学フィルムには大面積化が求められている。しかし、光学フィルムは、一般に、大面積化すると撓み等の変形が生じ易く、特に、厚みが薄いと容易に変形が生じる傾向があった。このように変形が生じやすい光学フィルムは、取り扱いが難しい。
【0005】
そこで、前記の変形を生じ難くするために、光学フィルムの剛性を高めることが求められる。このように剛性を高めるため、本発明者は、結晶性の重合体を含む樹脂を用いることを検討した。結晶性の重合体は、高い弾性率を有する。そのため、結晶性の重合体を含む樹脂フィルムによって、剛性が高い光学フィルムが実現できると見込まれる。
【0006】
ところが、結晶性の重合体を含む樹脂フィルムは、他の光学フィルムと貼り合わせた場合、デラミネーションを生じやすい。ここで、デラミネーションとは、他の部材と接着しているフィルムが、当該フィルムの表面近傍部分が破壊されることによって、剥離する現象をいう。このデラミネーションを生じ難くするために、本発明者は、結晶性の重合体を含む樹脂からなる層に、非晶性の重合体を含む樹脂からなる層を組み合わせた積層体を、光学フィルムとして用いることを試みた。本発明者の検討によれば、非晶性の重合体を含む樹脂はデラミネーションを生じ難いので、前記の積層体により、剛性が高く、且つ、デラミネーションを生じ難い光学フィルムが実現できると見込まれた。
【0007】
しかしながら、前記のように結晶性の重合体を含む樹脂からなる層と非晶性の重合体を含む樹脂からなる層とを組み合わせた積層体は、延伸適性が低かった。そのため、延伸工程を含む製造方法によって光学フィルムを製造しようとしても、シワ及び破損等の欠陥が生じ、安定した製造が難しかった。
【0008】
本発明は、前記の課題に鑑みて創案されたもので、結晶性の重合体を含む樹脂からなる層を備え、デラミネーションを生じ難く、且つ、延伸工程を含む製造方法によって容易に製造できる光学積層体及びその製造方法;並びに、前記の光学積層体を備えた偏光板及び表示装置;を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、前記の課題を解決するべく鋭意検討した結果、結晶性の重合体を含む樹脂からなる基材層と、非晶性の重合体を含む樹脂からなる第一表面層とを備える光学積層体において、結晶性の重合体のガラス転移温度と非晶性の重合体のガラス転移温度との関係、結晶性の重合体の結晶化温度と非晶性の重合体のガラス転移温度との関係、第一表面層の面配向係数P、及び、光学積層体の総厚みに対する基材層の厚みの割合、を適切に制御することにより、デラミネーションを生じ難く、且つ、延伸工程を含む製造方法によって容易に製造できる光学積層体を実現できることを見い出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、下記の通りである。
【0010】
〔1〕 結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる基材層と、非晶性の重合体Bを含む樹脂からなる第一表面層とを備え、
前記結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TgB>TgAを満たし、
前記結晶性の重合体Aの結晶化温度TcA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TcA−10℃≧TgB≧TcA−60℃を満たし、
前記第一表面層の面配向係数Pが、P≦0.01を満たし、
光学積層体の総厚みに対する、前記基材層の厚みの割合が、25%以上である、光学積層体。
〔2〕 前記光学積層体の引張弾性率が、3000MPa以上である、〔1〕記載の光学積層体。
〔3〕 前記光学積層体のレターデーションが、400nm以下である、〔1〕又は〔2〕記載の光学積層体。
〔4〕 前記光学積層体の水蒸気透過率が、10g/(m・24h)以下である、〔1〕〜〔3〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
〔5〕 波長380nmにおける前記光学積層体の透過率が、10%以下である、〔1〕〜〔4〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
〔6〕 前記基材層と、前記第一表面層とが、直接に接している、〔1〕〜〔5〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
〔7〕 前記結晶性の重合体Aが、脂環式構造を含有する結晶性の重合体であり、
前記非晶性の重合体Bが、脂環式構造を含有する非晶性の重合体である、〔1〕〜〔6〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
〔8〕 前記基材層の前記第一表面層とは反対側に、非晶性の重合体B’を含む樹脂からなる第二表面層を備える、〔1〕〜〔7〕のいずれか一項に記載の光学積層体。
〔9〕 〔1〕〜〔8〕のいずれか一項に記載の光学積層体と、偏光子と、を備える偏光板であって、
前記光学積層体の第一表面層が、前記偏光板の最外層となっている、偏光板。
〔10〕 〔9〕記載の偏光板を備える、表示装置。
〔11〕 結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる基材層と、非晶性の重合体Bを含む樹脂からなる第一表面層とを備える光学積層体の製造方法であって、
前記結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TgB>TgAを満たし、
前記結晶性の重合体の結晶化温度TcA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、TcA−10℃≧TgB≧TcA−60℃を満たし、
前記光学積層体の総厚みに対する、前記基材層の厚みの割合が、25%以上であり、
前記製造方法が、
前記結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる層と、前記非晶性の重合体Bを含む樹脂からなる層と、を備える延伸前積層体を用意する第一工程と、
前記延伸前積層体を、TgA以上TgA+60℃以下の温度で延伸して、延伸積層体を得る第二工程と、
前記延伸積層体を、TcA−20℃以上TcA+20℃以下の温度に調整する第三工程と、を含む、光学積層体の製造方法。
〔12〕 前記第一工程が、前記結晶性の重合体Aを含む樹脂、及び、前記非晶性の重合体Bを含む樹脂を、共押出又は共延伸する工程を含む、〔11〕記載の光学積層体の製造方法。
〔13〕 前記第一工程が、
前記結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる層上に、前記非晶性の重合体Bを含む樹脂の層を形成する工程、又は、
前記非晶性の重合体Bを含む樹脂の層上に、前記結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる層を形成する工程、を含む、〔11〕記載の光学積層体の製造方法。
〔14〕 前記基材層と、前記第一表面層とが、直接に接している、〔11〕〜〔13〕のいずれか一項に記載の光学積層体の製造方法。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、結晶性の重合体を含む樹脂からなる層を備え、デラミネーションを生じ難く、且つ、延伸工程を含む製造方法によって容易に製造できる光学積層体及びその製造方法;並びに、前記の光学積層体を備えた偏光板及び表示装置;を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明の一例に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
図2図2は、本発明の一例に係る光学積層体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものでは無く、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0014】
以下の説明において、「結晶性の重合体」とは、別に断らない限り、融点を有する重合体をいう。すなわち、「結晶性の重合体」とは、別に断らない限り、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができる重合体をいう。また、「非晶性の重合体」とは、別に断らない限り、融点を有さない重合体をいう。すなわち、「非晶性の重合体」とは、別に断らない限り、示差走査熱量計(DSC)で融点を観測することができない重合体をいう。
【0015】
以下の説明において、レターデーションとは、別に断らない限り、面内レターデーションを表す。また、あるフィルムの面内レターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx−ny)×dで表される値である。ここで、nxは、前記フィルムの厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、前記フィルムの面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表す。dは、前記フィルムの厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0016】
以下の説明において、長尺のフィルムとは、幅に対して、通常5倍以上、好ましくは10倍以上の長さを有するフィルムをいい、具体的にはロール状に巻き取られて保管又は運搬されうる程度の長さを有するフィルムをいう。
【0017】
以下の説明において、「偏光板」とは、別に断らない限り、剛直な部材だけでなく、例えば樹脂製のフィルムのように可撓性を有する部材も含む。
【0018】
[1.光学積層体の概要]
図1及び図2は、それぞれ、本発明の一例に係る光学積層体100及び200を模式的に示す断面図である。
図1及び図2に示す例のように、光学積層体100及び200は、基材層110及び第一表面層120を備える。
【0019】
基材層110は、結晶性の重合体Aを含む樹脂からなる層である。以下の説明において、結晶性の重合体Aを含む樹脂を、適宜「結晶性樹脂」ということがある。結晶性の重合体Aは、通常、剛性が高い。そのため、結晶性樹脂からなる基材層110を備えることにより、光学積層体100及び200は、高い剛性を有することができる。
【0020】
第一表面層120は、非晶性の重合体Bを含む樹脂からなる層である。以下の説明において、非晶性の重合体Bを含む樹脂を、適宜「非晶性樹脂」ということがある。また、第一表面層120は、光学積層体100及び200の最外層となっていて、当該第一表面層120の表面120Uは露出している。結晶性樹脂からなる基材層110は、デラミネーションを生じやすい傾向があるが、非晶性樹脂からなる第一表面層120は、デラミネーションを生じ難い。よって、このようにデラミネーションを生じ難い第一表面層120を最外層として備える光学積層体100及び200は、最表面である第一表面層120の表面120Uにおいて任意の部材(図示せず。)に貼り合わせた場合に、デラミネーションの発生を抑制することができる。
【0021】
さらに、光学積層体100及び200は、下記の要件(i)〜(iv)を満たす。要件(iii)を満たすことにより、デラミネーションの発生を特に効果的に抑制できる。また、要件(i)、(ii)及び(iv)を満たすことにより、デラミネーションの発生を抑制しながら、光学積層体100及び200の延伸適性を改善することができる。
(i)結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgA、及び、前記非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、所定の関係を満たす。
(ii)記結晶性の重合体Aの結晶化温度TcA、及び、非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、所定の関係を満たす。
(iii)第一表面層120の面配向係数Pが、所定範囲に収まる。
(iv)光学積層体100又は200の総厚みに対する、基材層110の厚みの割合が、所定範囲に収まる。
【0022】
図1に示すように、光学積層体100は、基材層110の第一表面層120とは反対側に層を備えず、基材層110の表面110Dが露出していてもよい。ただし、図2に示すように、光学積層体200は、基材層110の第一表面層120とは反対側に、非晶性の重合体B’を含む樹脂からなる第二表面層230を備えることが好ましい。この場合、光学積層体200は、第一表面層120、基材層110及び第二表面層230を、この順に備える。第二表面層230は、光学積層体200の最外層となっていて、当該第二表面層230の表面230Dは露出している。よって、第二表面層230を備えることにより、光学積層体200は、両方の表面120U及び230Dにおいて、デラミネーションの発生を抑制することができる。
【0023】
[2.基材層]
基材層は、結晶性の重合体Aを含む結晶性樹脂からなる層である。結晶性樹脂は、結晶性の重合体Aを含み、必要に応じて更に任意の成分を含む。このような結晶性樹脂は、通常、熱可塑性樹脂である。
【0024】
結晶性の重合体Aとしては、光学積層体に求められる特性に応じて、様々な重合体を用いうる。また、結晶性の重合体Aは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、結晶性の重合体Aとしては、脂環式構造を含有する結晶性の重合体が好ましい。以下の説明において、「脂環式構造を含有する結晶性の重合体」を、適宜、「結晶性脂環構造重合体」ということがある。
【0025】
結晶性脂環構造重合体は、分子内に脂環式構造を有する結晶性の重合体であり、例えば、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体又はその水素添加物が挙げられる。結晶性脂環構造重合体は、透湿性が低く、耐熱性及び耐薬品性に優れる。
【0026】
結晶性脂環構造重合体が有する脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が挙げられる。これらの中でも、熱安定性などの特性に優れる光学積層体が得られ易いことから、シクロアルカン構造が好ましい。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数は、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下である。1つの脂環式構造に含まれる炭素原子の数が上記範囲内にあることで、機械的強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0027】
結晶性脂環構造重合体において、全ての構造単位に対する脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは30重量%以上、より好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上である。結晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合を前記のように多くすることにより、耐熱性を高めることができる。
また、結晶性脂環構造重合体において、脂環式構造を有する構造単位以外の残部は、格別な限定はなく、使用目的に応じて適宜選択しうる。
【0028】
前記の結晶性脂環構造重合体としては、例えば、下記の重合体(α)〜重合体(δ)が挙げられる。これらの中でも、耐熱性に優れる光学積層体が得られ易いことから、結晶性脂環構造重合体としては、重合体(β)が好ましい。
重合体(α):環状オレフィン単量体の開環重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(β):重合体(α)の水素添加物であって、結晶性を有するもの。
重合体(γ):環状オレフィン単量体の付加重合体であって、結晶性を有するもの。
重合体(δ):重合体(γ)の水素添加物等であって、結晶性を有するもの。
【0029】
具体的には、結晶性脂環構造重合体としては、ジシクロペンタジエンの開環重合体であって結晶性を有するもの、及び、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものがより好ましく、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物であって結晶性を有するものが特に好ましい。ここで、ジシクロペンタジエンの開環重合体とは、全構造単位に対するジシクロペンタジエン由来の構造単位の割合が、通常50重量%以上、好ましくは70重量%以上、より好ましくは90重量%以上、さらに好ましくは100重量%の重合体をいう。
【0030】
以下、重合体(α)及び重合体(β)の製造方法を説明する。
重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体は、炭素原子で形成された環構造を有し、該環中に炭素−炭素二重結合を有する化合物である。環状オレフィン単量体の例としては、ノルボルネン系単量体等が挙げられる。また、重合体(α)が共重合体である場合には、環状オレフィン単量体として、単環の環状オレフィンを用いてもよい。
【0031】
ノルボルネン系単量体は、ノルボルネン環を含む単量体である。ノルボルネン系単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、5−エチリデン−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:エチリデンノルボルネン)及びその誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)等の、2環式単量体;トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)及びその誘導体等の、3環式単量体;7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン:1,4−メタノ−1,4,4a,9a−テトラヒドロフルオレンともいう)及びその誘導体、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン及びその誘導体等の、4環式単量体;などが挙げられる。
【0032】
前記の単量体において置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;ビニル基等のアルケニル基;プロパン−2−イリデン等のアルキリデン基;フェニル基等のアリール基;ヒドロキシ基;酸無水物基;カルボキシル基;メトキシカルボニル基等のアルコキシカルボニル基;などが挙げられる。また、前記の置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。
【0033】
単環の環状オレフィンとしては、例えば、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等の環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエン、フェニルシクロオクタジエン等の環状ジオレフィン;等が挙げられる。
【0034】
環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、重合体(α)は、ブロック共重合体であってもよいし、ランダム共重合体であってもよい。
【0035】
環状オレフィン単量体には、エンド体及びエキソ体の立体異性体が存在するものがありうる。環状オレフィン単量体としては、エンド体及びエキソ体のいずれを用いてもよい。また、エンド体及びエキソ体のうち一方の異性体のみを単独で用いてもよく、エンド体及びエキソ体を任意の割合で含む異性体混合物を用いてもよい。中でも、結晶性脂環構造重合体の結晶性が高まり、耐熱性により優れる光学積層体が得られ易くなることから、一方の立体異性体の割合を高くすることが好ましい。例えば、エンド体又はエキソ体の割合が、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。また、合成が容易であることから、エンド体の割合が高いことが好ましい。
【0036】
重合体(α)及び重合体(β)は、通常、そのシンジオタクチック立体規則性の度合い(ラセモ・ダイアッドの割合)を高めることで、結晶性を高くすることができる。重合体(α)及び重合体(β)の立体規則性の程度を高くする観点から、重合体(α)及び重合体(β)の構造単位についてのラセモ・ダイアッドの割合は、好ましくは51%以上、より好ましくは60%以上、特に好ましくは70%以上である。
【0037】
ラセモ・ダイアッドの割合は、13C−NMRスペクトル分析により、測定しうる。具体的には、下記の方法により測定しうる。
オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、200℃で、inverse−gated decoupling法を適用して、重合体試料の13C−NMR測定を行う。この13C−NMR測定の結果から、オルトジクロロベンゼン−dの127.5ppmのピークを基準シフトとして、メソ・ダイアッド由来の43.35ppmのシグナルと、ラセモ・ダイアッド由来の43.43ppmのシグナルの強度比に基づいて、重合体試料のラセモ・ダイアッドの割合を求めうる。
【0038】
重合体(α)の合成には、通常、開環重合触媒を用いる。開環重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。このような重合体(α)の合成用の開環重合触媒としては、環状オレフィン単量体を開環重合させ、シンジオタクチック立体規則性を有する開環重合体を生成させうるものが好ましい。好ましい開環重合触媒としては、下記式(1)で示される金属化合物を含むものが挙げられる。
【0039】
M(NR)X4−a(OR・L (1)
(式(1)において、
Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示し、
は、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CH(Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。)で表される基を示し、
は、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示し、
Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示し、
Lは、電子供与性の中性配位子を示し、
aは、0又は1の数を示し、
bは、0〜2の整数を示す。)
【0040】
式(1)において、Mは、周期律表第6族の遷移金属原子からなる群より選択される金属原子を示す。このMとしては、クロム、モリブデン及びタングステンが好ましく、モリブデン及びタングステンがより好ましく、タングステンが特に好ましい。
【0041】
式(1)において、Rは、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基、又は、−CHで表される基を示す。
の、3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。また、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;などが挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で有していてもよく、2種類以上を任意の比率で有していてもよい。さらに、Rにおいて、3位、4位及び5位の少なくとも2つの位置に存在する置換基が互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0042】
3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニル基としては、例えば、無置換フェニル基;4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、3−メトキシフェニル基、4−シクロヘキシルフェニル基、4−メトキシフェニル基等の一置換フェニル基;3,5−ジメチルフェニル基、3,5−ジクロロフェニル基、3,4−ジメチルフェニル基、3,5−ジメトキシフェニル基等の二置換フェニル基;3,4,5−トリメチルフェニル基、3,4,5−トリクロロフェニル基等の三置換フェニル基;2−ナフチル基、3−メチル−2−ナフチル基、4−メチル−2−ナフチル基等の置換基を有していてもよい2−ナフチル基;等が挙げられる。
【0043】
の、−CHで表される基において、Rは、水素原子、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。
の、置換基を有していてもよいアルキル基の炭素原子数は、好ましくは1〜20、より好ましくは1〜10である。このアルキル基は、直鎖状であってもよく、分岐状であってもよい。さらに、前記置換基としては、例えば、フェニル基、4−メチルフェニル基等の置換基を有していてもよいフェニル基;メトキシ基、エトキシ基等のアルコキシル基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
の、置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ベンジル基、ネオフィル基等が挙げられる。
【0044】
の、置換基を有していてもよいアリール基の炭素原子数は、好ましくは6〜20、より好ましくは6〜15である。さらに、前記置換基としては、例えば、メチル基、エチル基等のアルキル基;フッ素原子、塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基等のアルコキシ基;等が挙げられる。これらの置換基は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
の、置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基、4−メチルフェニル基、2,6−ジメチルフェニル基等が挙げられる。
【0045】
これらの中でも、Rで表される基としては、炭素原子数が1〜20のアルキル基が好ましい。
【0046】
式(1)において、Rは、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基からなる群より選択される基を示す。Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
【0047】
式(1)において、Xは、ハロゲン原子、置換基を有していてもよいアルキル基、置換基を有していてもよいアリール基、及び、アルキルシリル基からなる群より選択される基を示す。
Xのハロゲン原子としては、例えば、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
Xの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基としては、それぞれ、Rの、置換基を有していてもよいアルキル基、及び、置換基を有していてもよいアリール基として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。
Xのアルキルシリル基としては、例えば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、t−ブチルジメチルシリル基等が挙げられる。
式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のXを有する場合、それらのXは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。さらに、2以上のXが互いに結合し、環構造を形成していてもよい。
【0048】
式(1)において、Lは、電子供与性の中性配位子を示す。
Lの電子供与性の中性配位子としては、例えば、周期律表第14族又は第15族の原子を含有する電子供与性化合物が挙げられる。その具体例としては、トリメチルホスフィン、トリイソプロピルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;トリメチルアミン、トリエチルアミン、ピリジン、ルチジン等のアミン類;等が挙げられる。これらの中でも、エーテル類が好ましい。また、式(1)で示される金属化合物が1分子中に2以上のLを有する場合、それらのLは、互いに同じでもよく、異なっていてもよい。
【0049】
式(1)で示される金属化合物としては、フェニルイミド基を有するタングステン化合物が好ましい。即ち、式(1)において、Mがタングステン原子であり、且つ、Rがフェニル基である化合物が好ましい。さらに、その中でも、テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体がより好ましい。
【0050】
式(1)で示される金属化合物の製造方法は、特に限定されない。例えば、特開平5−345817号公報に記載されるように、第6族遷移金属のオキシハロゲン化物;3位、4位及び5位の少なくとも1つの位置に置換基を有していてもよいフェニルイソシアナート類又は一置換メチルイソシアナート類;電子供与性の中性配位子(L);並びに、必要に応じて、アルコール類、金属アルコキシド及び金属アリールオキシド;を混合することにより、式(1)で示される金属化合物を製造することができる。
【0051】
前記の製造方法では、式(1)で示される金属化合物は、通常、反応液に含まれた状態で得られる。金属化合物の製造後、前記の反応液をそのまま開環重合反応の触媒液として用いてもよい。また、結晶化等の精製処理により、金属化合物を反応液から単離及び精製した後、得られた金属化合物を開環重合反応に供してもよい。
【0052】
開環重合触媒は、式(1)で示される金属化合物を単独で用いてもよく、式(1)で示される金属化合物を他の成分と組み合わせて用いてもよい。例えば、式(1)で示される金属化合物と有機金属還元剤とを組み合わせて用いることで、重合活性を向上させることができる。
【0053】
有機金属還元剤としては、例えば、炭素原子数1〜20の炭化水素基を有する周期律表第1族、第2族、第12族、第13族又は14族の有機金属化合物が挙げられる。このような有機金属化合物としては、例えば、メチルリチウム、n−ブチルリチウム、フェニルリチウム等の有機リチウム;ブチルエチルマグネシウム、ブチルオクチルマグネシウム、ジヘキシルマグネシウム、エチルマグネシウムクロリド、n−ブチルマグネシウムクロリド、アリルマグネシウムブロミド等の有機マグネシウム;ジメチル亜鉛、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛等の有機亜鉛;トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムジクロリド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジイソブチルアルミニウムイソブトキシド、エチルアルミニウムジエトキシド、イソブチルアルミニウムジイソブトキシド等の有機アルミニウム;テトラメチルスズ、テトラ(n−ブチル)スズ、テトラフェニルスズ等の有機スズ;等が挙げられる。これらの中でも、有機アルミニウム又は有機スズが好ましい。また、有機金属還元剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0054】
開環重合反応は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒は、開環重合体及びその水素添加物を、所定の条件で溶解もしくは分散させることが可能であり、かつ、開環重合反応及び水素化反応を阻害しないものを用いうる。このような有機溶媒としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ジメチルシクロヘキサン、トリメチルシクロヘキサン、エチルシクロヘキサン、ジエチルシクロヘキサン、デカヒドロナフタレン、ビシクロヘプタン、トリシクロデカン、ヘキサヒドロインデン、シクロオクタン等の脂環族炭化水素溶媒;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒;ジクロロメタン、クロロホルム、1,2−ジクロロエタン等のハロゲン系脂肪族炭化水素溶媒;クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等のハロゲン系芳香族炭化水素溶媒;ニトロメタン、ニトロベンゼン、アセトニトリル等の含窒素炭化水素溶媒;ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル溶媒;これらを組み合わせた混合溶媒;等が挙げられる。これらの中でも、有機溶媒としては、芳香族炭化水素溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂環族炭化水素溶媒、エーテル溶媒が好ましい。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0055】
開環重合反応は、例えば、環状オレフィン単量体と、式(1)で示される金属化合物と、必要に応じて有機金属還元剤とを混合することにより、開始させることができる。これらの成分を混合する順序は、特に限定されない。例えば、環状オレフィン単量体を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物及び有機金属還元剤を含む溶液を混合してもよい。また、有機金属還元剤を含む溶液に、環状オレフィン単量体及び式(1)で示される金属化合物を含む溶液を混合してもよい。さらに、環状オレフィン単量体及び有機金属還元剤を含む溶液に、式(1)で示される金属化合物の溶液を混合してもよい。各成分を混合する際は、それぞれの成分の全量を一度に混合してもよいし、複数回に分けて混合してもよい。また、比較的に長い時間(例えば1分間以上)にわたって連続的に混合してもよい。
【0056】
開環重合反応の開始時における反応液中の環状オレフィン単量体の濃度は、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、特に好ましくは3重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは45重量%以下、特に好ましくは40重量%以下である。環状オレフィン単量体の濃度を前記範囲の下限値以上にすることにより、生産性を高くできる。また、上限値以下にすることにより、開環重合反応後の反応液の粘度を低くできるので、その後の水素化反応を容易に行うことができる。
【0057】
開環重合反応に用いる式(1)で示される金属化合物の量は、「金属化合物:環状オレフィン単量体」のモル比が、所定の範囲の収まるように設定することが望ましい。具体的には、前記のモル比は、好ましくは1:100〜1:2,000,000、より好ましくは1:500〜1,000,000、特に好ましくは1:1,000〜1:500,000である。金属化合物の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、十分な重合活性を得ることができる。また、上限値以下にすることにより、反応後に金属化合物を容易に除去できる。
【0058】
有機金属還元剤の量は、式(1)で示される金属化合物1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.2モル以上、特に好ましくは0.5モル以上であり、好ましくは100モル以下、より好ましくは50モル以下、特に好ましくは20モル以下である。有機金属還元剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合活性を十分に高くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制することができる。
【0059】
重合体(α)の重合反応系は、活性調整剤を含んでいてもよい。活性調整剤を用いることで、開環重合触媒を安定化したり、開環重合反応の反応速度を調整したり、重合体の分子量分布を調整したりできる。
活性調整剤としては、官能基を有する有機化合物を用いうる。このような活性調整剤としては、例えば、含酸素化合物、含窒素化合物、含リン有機化合物等が挙げられる。
【0060】
含酸素化合物としては、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、アニソール、フラン、テトラヒドロフラン等のエーテル類;アセトン、ベンゾフェノン、シクロヘキサノンなどのケトン類;エチルアセテート等のエステル類;等が挙げられる。
含窒素化合物としては、例えば、アセトニトリル、ベンゾニトリル等のニトリル類;トリエチルアミン、トリイソプロピルアミン、キヌクリジン、N,N−ジエチルアニリン等のアミン類;ピリジン、2,4−ルチジン、2,6−ルチジン、2−t−ブチルピリジン等のピリジン類;等が挙げられる。
含リン化合物としては、例えば、トリフェニルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、トリフェニルホスフェート、トリメチルホスフェート等のホスフィン類;トリフェニルホスフィンオキシド等のホスフィンオキシド類;等が挙げられる。
【0061】
活性調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)の重合反応系における活性調整剤の量は、式(1)で示される金属化合物100モル%に対して、好ましくは0.01モル%〜100モル%である。
【0062】
重合体(α)の重合反応系は、重合体(α)の分子量を調整するために、分子量調整剤を含んでいてもよい。分子量調整剤としては、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン等のα−オレフィン類;スチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;エチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル、アリルグリシジルエーテル、酢酸アリル、アリルアルコール、グリシジルメタクリレート等の酸素含有ビニル化合物;アリルクロライド等のハロゲン含有ビニル化合物;アクリルアミド等の窒素含有ビニル化合物;1,4−ペンタジエン、1,4−ヘキサジエン、1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、2−メチル−1,4−ペンタジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン等の非共役ジエン;1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等の共役ジエン;等が挙げられる。
【0063】
分子量調整剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
重合体(α)を重合するための重合反応系における分子量調整剤の量は、目的とする分子量に応じて適切に決定しうる。分子量調整剤の具体的な量は、環状オレフィン単量体100モル%に対して、好ましくは0.1モル%〜50モル%の範囲である。
【0064】
重合温度は、好ましくは−78℃以上、より好ましくは−30℃以上であり、好ましくは+200℃以下、より好ましくは+180℃以下である。
重合時間は、反応規模に依存しうる。具体的な重合時間は、好ましくは1分間から1000時間の範囲である。
【0065】
上述した製造方法により、重合体(α)が得られる。この重合体(α)を水素化することにより、重合体(β)を製造することができる。
重合体(α)の水素化は、例えば、常法に従って水素化触媒の存在下で、重合体(α)を含む反応系内に水素を供給することによって行うことができる。この水素化反応において、反応条件を適切に設定すれば、通常、水素化反応により水素添加物のタクチシチーが変化することはない。
【0066】
水素化触媒としては、オレフィン化合物の水素化触媒として公知の均一系触媒及び不均一触媒を用いうる。
均一系触媒としては、例えば、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、チタノセンジクロリド/n−ブチルリチウム、ジルコノセンジクロリド/sec−ブチルリチウム、テトラブトキシチタネート/ジメチルマグネシウム等の、遷移金属化合物とアルカリ金属化合物の組み合わせからなる触媒;ジクロロビス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドリドカルボニルビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリジンルテニウム(IV)ジクロリド、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム等の貴金属錯体触媒;等が挙げられる。
不均一触媒としては、例えば、ニッケル、パラジウム、白金、ロジウム、ルテニウム等の金属触媒;ニッケル/シリカ、ニッケル/ケイソウ土、ニッケル/アルミナ、パラジウム/カーボン、パラジウム/シリカ、パラジウム/ケイソウ土、パラジウム/アルミナ等の、前記金属をカーボン、シリカ、ケイソウ土、アルミナ、酸化チタンなどの担体に担持させてなる固体触媒が挙げられる。
水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0067】
水素化反応は、通常、不活性有機溶媒中で行われる。不活性有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン等の芳香族炭化水素溶媒;ペンタン、ヘキサン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロヘキサン、デカヒドロナフタレンなどの脂環族炭化水素溶媒;テトラヒドロフラン、エチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル溶媒;等が挙げられる。不活性有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。また、不活性有機溶媒は、開環重合反応に用いた有機溶媒と同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。さらに、開環重合反応の反応液に水素化触媒を混合して、水素化反応を行ってもよい。
【0068】
水素化反応の反応条件は、通常、用いる水素化触媒によって異なる。
水素化反応の反応温度は、好ましくは−20℃以上、より好ましくは−10℃以上、特に好ましくは0℃以上であり、好ましくは+250℃以下、より好ましくは+220℃以下、特に好ましくは+200℃以下である。反応温度を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、副反応の発生を抑制できる。
【0069】
水素圧力は、好ましくは0.01MPa以上、より好ましくは0.05MPa以上、特に好ましくは0.1MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは15MPa以下、特に好ましくは10MPa以下である。水素圧力を前記範囲の下限値以上にすることにより、反応速度を速くできる。また、上限値以下にすることにより、高耐圧反応装置等の特別な装置が不要となり、設備コストを抑制できる。
【0070】
水素化反応の反応時間は、所望の水素添加率が達成される任意の時間に設定してもよく、好ましくは0.1時間〜10時間である。
水素化反応後は、通常、常法に従って、重合体(α)の水素添加物である重合体(β)を回収する。
【0071】
水素化反応における水素添加率(水素化された主鎖二重結合の割合)は、好ましくは98%以上、より好ましくは99%以上である。水素添加率が高くなるほど、結晶性脂環構造重合体の耐熱性を良好にできる。
ここで、重合体の水素添加率は、オルトジクロロベンゼン−dを溶媒として、145℃で、H−NMR測定により測定しうる。
【0072】
次に、重合体(γ)及び重合体(δ)の製造方法を説明する。
重合体(γ)及び(δ)の製造に用いる環状オレフィン単量体としては、重合体(α)及び重合体(β)の製造に用いうる環状オレフィン単量体として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、環状オレフィン単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0073】
重合体(γ)の製造においては、単量体として、環状オレフィン単量体に組み合わせて、環状オレフィン単量体と共重合可能な任意の単量体を用いうる。任意の単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン;スチレン、α−メチルスチレン等の芳香環ビニル化合物;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、1,7−オクタジエン等の非共役ジエン;等が挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、任意の単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0074】
環状オレフィン単量体と任意の単量体との量の割合は、重量比(環状オレフィン単量体:任意の単量体)で、好ましくは30:70〜99:1、より好ましくは50:50〜97:3、特に好ましくは70:30〜95:5である。
【0075】
環状オレフィン単量体を2種以上用いる場合、及び、環状オレフィン単量体と任意の単量体を組み合わせて用いる場合は、重合体(γ)は、ブロック共重合体であってもよく、ランダム共重合体であってもよい。
【0076】
重合体(γ)の合成には、通常、付加重合触媒を用いる。このような付加重合触媒としては、例えば、バナジウム化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるバナジウム系触媒、チタン化合物及び有機アルミニウム化合物から形成されるチタン系触媒、ジルコニウム錯体及びアルミノオキサンから形成されるジルコニウム系触媒等が挙げられる。また、付加重合触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0077】
付加重合触媒の量は、単量体1モルに対して、好ましくは0.000001モル以上、より好ましくは0.00001モル以上であり、好ましくは0.1モル以下、より好ましくは0.01モル以下である。
【0078】
環状オレフィン単量体の付加重合は、通常、有機溶媒中で行われる。有機溶媒としては、環状オレフィン単量体の開環重合に用いうる有機溶媒として示した範囲から選択されるものを任意に用いうる。また、有機溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0079】
重合体(γ)を製造するための重合における重合温度は、好ましくは−50℃以上、より好ましくは−30℃以上、特に好ましくは−20℃以上であり、好ましくは250℃以下、より好ましくは200℃以下、特に好ましくは150℃以下である。また、重合時間は、好ましくは30分以上、より好ましくは1時間以上であり、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下である。
【0080】
上述した製造方法により、重合体(γ)が得られる。この重合体(γ)を水素化することにより、重合体(δ)を製造することができる。
重合体(γ)の水素化は、重合体(α)を水素化する方法として先に示したものと同様の方法により、行いうる。
【0081】
結晶性の重合体Aの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは1,000以上、より好ましくは2,000以上であり、好ましくは1,000,000以下、より好ましくは500,000以下である。このような重量平均分子量を有する重合体Aは、成形加工性と耐熱性とのバランスに優れる。
【0082】
結晶性の重合体Aの分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.0以上、より好ましくは1.5以上であり、好ましくは4.0以下、より好ましくは3.5以下である。このような分子量分布を有する重合体Aは、成形加工性に優れる。
結晶性の重合体Aの重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、テトラヒドロフランを展開溶媒とするゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、ポリスチレン換算値として測定しうる。
【0083】
結晶性の重合体Aは、結晶性を有するので、融点を有する。結晶性の重合体Aの融点は、好ましくは200℃以上、より好ましくは230℃以上であり、好ましくは290℃以下である。このような融点を有する結晶性の重合体Aを用いることによって、成形性と耐熱性とのバランスに更に優れた光学積層体を得ることができる。
【0084】
結晶性の重合体Aは、結晶性を有するので、所定の温度においては、結晶化が進行する。この際、結晶化速度が最も速い温度を、「結晶化温度」という。結晶性の重合体Aの結晶化温度TcAは、好ましくは100℃以上、より好ましくは130℃以上、特に好ましくは160℃以上であり、好ましくは230℃以下、より好ましくは210℃以下、特に好ましくは190℃以下である。結晶性の重合体Aの結晶化温度TcAが、前記範囲の下限値以上であることにより、結晶化工程において第一表面層の非晶性の重合体の配向緩和を進行させることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、結晶化工程において第一表面層が過剰に柔軟になることを抑制できるので、クリップへの第一表面層の付着を抑制できる。
結晶化温度TcAは、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定しうる。
【0085】
結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgAは、特に限定されないが、通常は85℃以上、170℃以下の範囲である。
【0086】
基材層において、結晶性樹脂における結晶性の重合体Aの量は、好ましくは80.0重量%以上、より好ましくは85.0重量%以上、特に好ましくは90.0重量%以上であり、好ましくは99.0重量%以下、より好ましくは97.0重量%以下、特に好ましくは95.0重量%以下である。結晶性の重合体Aの量を前記範囲にすることにより、効果的に、光学積層体の剛性を高めることができる。
【0087】
基材層は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。したがって、基材層に含まれる結晶性樹脂は、紫外線吸収剤を含むことが好ましい。基材層が紫外線吸収剤を含むことにより、光学積層体は、紫外線を遮断する能力を有することができる。よって、光学積層体を任意の部材と貼り合わせた場合に、その部材を紫外線から保護することができる。例えば、光学積層体を備える偏光板において、当該偏光板に含まれる有機成分の紫外線による劣化を抑制できるので、偏光板の耐久性を向上させることができる。さらに、その偏光板を備えた液晶表示装置において、液晶パネルの紫外線による劣化を抑制できる。具体的には、光学積層体により、外光に含まれる紫外線による液晶パネルの劣化を抑制できる。また、液晶表示装置の製造方法が、紫外線硬化性の接着剤で任意の部材を接着する工程を含む場合に、光学積層体により、接着剤を硬化させるための紫外線による液晶パネルの劣化を抑制することができる。
【0088】
紫外線吸収剤としては、紫外線を吸収しうる化合物を用いうる。紫外線球種剤の例としては、トリアジン系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、アクリロニトリル系紫外線吸収剤等の有機紫外線吸収剤が挙げられる。
【0089】
トリアジン系紫外線吸収剤としては、例えば、1,3,5−トリアジン環を有する化合物を好ましく用いうる。トリアジン系紫外線吸収剤の具体例としては、2−(4,6−ジフェニル−1,3,5−トリアジン−2−イル)−5−[(へキシル)オキシ]−フェノール、2,4−ビス(2−ヒドロキシ−4−ブトキシフェニル)−6−(2,4−ジブトキシフェニル)−1,3,5−トリアジン等が挙げられる。
【0090】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2,2’−メチレンビス[4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール]、2−(3,5−ジ−tert−ブチル−2−ヒドロキシフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−p−クレゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ビス(1−メチル−1−フェニルエチル)フェノール、2−ベンゾトリアゾール−2−イル−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−[5−クロロ(2H)−ベンゾトリアゾール−2−イル]−4−メチル−6−(tert−ブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4,6−ジ−tert−ブチルフェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−4−メチル−6−(3,4,5,6−テトラヒドロフタルイミジルメチル)フェノール、メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート/ポリエチレングリコール300の反応生成物、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖および側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール等が挙げられる。
【0091】
紫外線吸収剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0092】
結晶性樹脂における紫外線吸収剤の量は、好ましくは1.0重量%以上、より好ましくは3.0重量%以上、特に好ましくは5.0重量%以上であり、好ましくは20.0重量%以下、より好ましくは15.0重量%以下、特に好ましくは10.0重量%以下である。紫外線吸収剤の量が、前記範囲の下限値以上であることにより、光学積層体を備える偏光板の紫外線等の光に対する耐久性を効果的に高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、光学積層体を備える偏光板の光線透過率を高めることができる。光学積層体の波長380nmにおける透過率を適切な範囲にするために、紫外線吸収剤の量を、基材層の厚みに応じて適宜調整してもよい。
【0093】
紫外線吸収剤を含む結晶性樹脂の製造方法は、任意であり、例えば、溶融押出法による積層体の製造時より前に紫外線吸収剤を結晶性の重合体Aに配合する方法;紫外線吸収剤を高濃度に含むマスターバッチを用いる方法;溶融押出法による積層体の製造時に紫外線吸収剤を結晶性の重合体Aに配合する方法、などが挙げられる。
【0094】
結晶性樹脂は、結晶性の重合体A及び紫外線吸収剤に加えて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;帯電防止剤;酸化防止剤;界面活性剤等の配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0095】
基材層の厚みは、光学積層体の総厚みに応じて、所定の範囲に設定される。具体的には、光学積層体の総厚みに対する、基材層の厚みの割合は、通常25%以上、好ましくは30%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは80%以下、より好ましくは75%以下、特に好ましくは70%以下である。基材層の厚みの割合が、前記範囲の下限値以上であることにより、光学積層体が延伸工程を含む製造方法で製造される場合に、シワ及び破損等の欠陥の発生を抑制しながら、延伸を適切に行うことができる。例えば、結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgA付近の温度での延伸では、通常、第一表面層に含まれる非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBよりも低温で、延伸が行われる。この際、第一表面層が過度に厚いと、非晶性樹脂を延伸するために大きな力を要し、安定した延伸が困難になる可能性がある。しかし、基材層が前記のように厚いと、相対的に第一表面層を薄くできるので、第一表面層を得るために非晶性樹脂を延伸する力を小さくでき、その結果、安定した延伸が可能となる。したがって、基材層の厚みの割合が前記範囲の下限値以上であることにより、光学積層体の延伸適性を向上させることができる。また、基材層の厚みの割合が前記範囲の下限値以上であることのより、基材層に含まれる結晶性樹脂の特性を効果的に発揮させられるので、光学積層体の剛性を効果的に高めることができる。他方、基材層の厚みの割合が、前記範囲の上限値以下であることにより、表面層の厚みを厚くして、デラミネーションを効果的に抑制できる。
【0096】
基材層の具体的な厚みは、好ましくは1.0μm以上、より好ましくは5.0μm以上、特に好ましくは7.0μm以上であり、好ましくは45μm以下、より好ましくは35μm以下、特に好ましくは30μm以下である。
【0097】
ここで、光学積層体に含まれる基材層及び表面層(第一表面層及び第二表面層)等の各層の厚みは、次の方法で測定しうる。
光学積層体をエポキシ樹脂で包埋して、試料片を用意する。この試料片を、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスする。その後、スライスにより現れた断面を顕微鏡を用いて観察することで、光学積層体に含まれる各層の厚みを測定しうる。
【0098】
[3.第一表面層]
第一表面層は、非晶性の重合体Bを含む非晶性樹脂からなる層である。非晶性樹脂は、非晶性の重合体Bを含み、必要に応じて更に任意の成分を含む。このような非晶性樹脂は、通常、熱可塑性樹脂である。
【0099】
非晶性の重合体Bとしては、光学積層体に求められる特性に応じて、様々な重合体を用いうる。また、非晶性の重合体Bは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。中でも、非晶性の重合体Bとしては、脂環式構造を含有する非晶性の重合体が好ましい。以下の説明において、「脂環式構造を含有する非晶性の重合体」を、適宜、「非晶性脂環構造重合体」ということがある。
【0100】
非晶性脂環構造重合体は、その重合体の構造単位が脂環式構造を含有する非晶性の重合体である。非晶性脂環構造重合体は、通常、耐湿熱性に優れる。そのため、非晶性脂環構造重合体を用いることにより、光学積層体の耐湿熱性を良好にできる。
【0101】
非晶性脂環構造重合体は、主鎖に脂環式構造を有していてもよく、側鎖に脂環式構造を有していてもよい。中でも、機械的強度及び耐熱性の観点から、主鎖に脂環式構造を含有する重合体が好ましい。
【0102】
脂環式構造としては、例えば、飽和脂環式炭化水素(シクロアルカン)構造、不飽和脂環式炭化水素(シクロアルケン、シクロアルキン)構造などが挙げられる。中でも、機械強度及び耐熱性の観点から、シクロアルカン構造及びシクロアルケン構造が好ましく、中でもシクロアルカン構造が特に好ましい。
【0103】
脂環式構造を構成する炭素原子数は、一つの脂環式構造あたり、好ましくは4個以上、より好ましくは5個以上であり、好ましくは30個以下、より好ましくは20個以下、特に好ましくは15個以下の範囲である。脂環式構造を構成する炭素原子数をこの範囲にすることにより、非晶性樹脂の機械強度、耐熱性、及び成形性が高度にバランスされる。
【0104】
非晶性脂環構造重合体において、脂環式構造を有する構造単位の割合は、使用目的に応じて適宜選択しうる。非晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合は、好ましくは55重量%以上、さらに好ましくは70重量%以上、特に好ましくは90重量%以上である。非晶性脂環構造重合体における脂環式構造を有する構造単位の割合がこの範囲にあると、非晶性脂環構造重合体を含む非晶性樹脂の透明性及び耐熱性が良好となる。
【0105】
非晶性脂環構造重合体としては、例えば、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素添加物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性が良好であるので、ノルボルネン系重合体がより好ましい。
【0106】
ノルボルネン系重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体及びその水素添加物;ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体及びその水素添加物が挙げられる。また、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の開環単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の開環共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との開環共重合体が挙げられる。さらに、ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体の例としては、ノルボルネン構造を有する1種類の単量体の付加単独重合体、ノルボルネン構造を有する2種類以上の単量体の付加共重合体、並びに、ノルボルネン構造を有する単量体及びこれと共重合しうる任意の単量体との付加共重合体が挙げられる。これらの中で、ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体の水素添加物は、成形性、耐熱性、低吸湿性、寸法安定性、軽量性などの観点から、特に好適である。
【0107】
ノルボルネン構造を有する単量体としては、例えば、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(慣用名:ノルボルネン)、トリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3,7−ジエン(慣用名:ジシクロペンタジエン)、7,8−ベンゾトリシクロ[4.3.0.12,5]デカ−3−エン(慣用名:メタノテトラヒドロフルオレン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]ドデカ−3−エン(慣用名:テトラシクロドデセン)、およびこれらの化合物の誘導体(例えば、環に置換基を有するもの)などを挙げることができる。ここで、置換基としては、例えばアルキル基、アルキレン基、極性基などを挙げることができる。これらの置換基は、同一または相異なって、複数個が環に結合していてもよい。ノルボルネン構造を有する単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0108】
極性基の種類としては、例えば、ヘテロ原子、またはヘテロ原子を有する原子団などが挙げられる。ヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子、ハロゲン原子などが挙げられる。極性基の具体例としては、カルボキシル基、カルボニルオキシカルボニル基、エポキシ基、ヒドロキシル基、オキシ基、エステル基、シラノール基、シリル基、アミノ基、ニトリル基、スルホン酸基などが挙げられる。
【0109】
ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体としては、例えば、シクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテン等のモノ環状オレフィン類及びその誘導体;シクロヘキサジエン、シクロヘプタジエン等の環状共役ジエン及びその誘導体;などが挙げられる。ノルボルネン構造を有する単量体と開環共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0110】
ノルボルネン構造を有する単量体の開環重合体は、例えば、単量体を開環重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0111】
ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン等の炭素原子数2〜20のα−オレフィン及びこれらの誘導体;シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン等のシクロオレフィン及びこれらの誘導体;1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン等の非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、α−オレフィンが好ましく、エチレンがより好ましい。また、ノルボルネン構造を有する単量体と付加共重合可能な単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0112】
ノルボルネン構造を有する単量体の付加重合体は、例えば、単量体を付加重合触媒の存在下に重合又は共重合することにより製造しうる。
【0113】
上述した開環重合体及び付加重合体の水素添加物は、例えば、開環重合体及び付加重合体の溶液において、ニッケル、パラジウム等の遷移金属を含む水素添加触媒の存在下で、炭素−炭素不飽和結合を、好ましくは90%以上水素添加することによって製造しうる。
【0114】
ノルボルネン系重合体の中でも、構造単位として、X:ビシクロ[3.3.0]オクタン−2,4−ジイル−エチレン構造と、Y:トリシクロ[4.3.0.12,5]デカン−7,9−ジイル−エチレン構造とを有し、これらの構造単位の量が、ノルボルネン系重合体の構造単位全体に対して90重量%以上であり、かつ、Xの割合とYの割合との比が、X:Yの重量比で100:0〜40:60であるものが好ましい。このような重合体を用いることにより、当該ノルボルネン系重合体を含む第一表面層を、長期的に寸法変化がなく、光学特性の安定性に優れるものにできる。
【0115】
ノルボルネン系重合体の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは10,000以上、より好ましくは15,000以上、特に好ましくは20,000以上であり、好ましくは100,000以下、より好ましくは80,000以下、特に好ましくは50,000以下である。重量平均分子量がこのような範囲にあるときに、第一表面層の機械的強度および成型加工性が高度にバランスされる。
【0116】
ノルボルネン系重合体の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは1.2以上、より好ましくは1.5以上、特に好ましくは1.8以上であり、好ましくは3.5以下、より好ましくは3.0以下、特に好ましくは2.7以下である。分子量分布を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合体の生産性を高め、製造コストを抑制できる。また、上限値以下にすることにより、低分子成分の量が小さくなるので、高温曝露時の緩和を抑制して、第一表面層の安定性を高めることができる。
【0117】
前記の重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、溶媒としてシクロヘキサンを用いたゲル・パーミエーション・クロマトグラフィーにより、ポリイソプレンまたはポリスチレン換算の重量平均分子量として測定しうる。但し、試料がシクロヘキサンに溶解しない場合には、溶媒としてトルエンを用いてもよい。
【0118】
また、非晶性脂環構造重合体としては、ビニル脂環式炭化水素重合体が好ましく、特に、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及びジエン化合物水素化物単位(b)を有する重合体が、好ましい。以下、「芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及びジエン化合物水素化物単位(b)を有する重合体」を、適宜、「重合体(X)」ということがある。重合体(X)を用いることにより、耐熱性及び機械的強度に優れ、透湿性が低く、且つ、レターデーションの小さい第一表面層を容易に実現できる。
【0119】
芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)は、芳香族ビニル化合物を重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位である。ただし、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
同様に、本願においては、例えばスチレンを重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位を、スチレン水素化物単位と呼ぶことがある。スチレン水素化物単位も、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)の例としては、下記の式(X1)で表される構造単位が挙げられる。
【0120】
【化1】
【0121】
式(X1)において、Rxcは脂環式炭化水素基を表す。Rxcの例を挙げると、シクロヘキシル基等のシクロヘキシル基類;デカヒドロナフチル基類等が挙げられる。
【0122】
式(X1)において、Rx1、Rx2及びRx3は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもRx1、Rx2及びRx3としては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から、水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基が好ましい。鎖状炭化水素基としては、飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0123】
芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)のより具体的な例としては、下記式(X1−1)で表される構造単位が挙げられる。式(X1−1)で表される構造単位は、スチレン水素化物単位である。
【0124】
【化2】
【0125】
芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)の例示物において、立体異性体を有するものは、そのいずれの立体異性体も使用しうる。芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)は、1種類だけも用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0126】
ジエン化合物水素化物単位(b)は、ジエン化合物を重合し、その得られた重合物が不飽和結合を有していればその不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位である。但し、ジエン化合物水素化物単位(b)は、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
同様に、本願においては、例えばイソプレンを重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有する構造単位を、イソプレン水素化物単位と呼ぶことがある。イソプレン水素化物単位も、当該構造を有する限りにおいて、どのような製造方法で得られた単位をも含む。
【0127】
ジエン化合物水素化物単位(b)は、直鎖共役ジエン化合物等の共役ジエン化合物を重合し、その不飽和結合を水素化して得られる構造を有することが好ましい。その例としては、以下の式(X2)で表される構造単位、及び式(X3)で表される構造単位が挙げられる。
【0128】
【化3】
【0129】
式(X2)において、Rx4〜Rx9は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもRx4〜Rx9としては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基であることが好ましい。鎖状炭化水素基としては飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0130】
【化4】
【0131】
式(X3)において、Rx10〜Rx15は、それぞれ独立に、水素原子、鎖状炭化水素基、ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、シリル基、又は、極性基(ハロゲン原子、アルコキシ基、ヒドロキシル基、エステル基、シアノ基、アミド基、イミド基、又はシリル基)で置換された鎖状炭化水素基を表す。中でもRx10〜Rx15としては、耐熱性、低複屈折性及び機械強度等の観点から水素原子及び炭素原子数1〜6個の鎖状炭化水素基であることが好ましい。鎖状炭化水素基としては飽和炭化水素基が好ましく、アルキル基がより好ましい。
【0132】
ジエン化合物水素化物単位(b)のより具体的な例としては、下記式(X2−1)〜(X2−3)で表される構造単位が挙げられる。式(X2−1)〜(X2−3)で表される構造単位は、イソプレン水素化物単位である。
【0133】
【化5】
【0134】
ジエン化合物水素化物単位(b)の例示物において立体異性体を有するものは、そのいずれの立体異性体も使用することができる。ジエン化合物水素化物単位(b)は、1種類だけも用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0135】
重合体(X)は、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)を有するブロックAと、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及びジエン化合物水素化物単位(b)を有する共重合ブロックBとを含むことが好ましい。さらに、重合体(X)は、1分子あたり1つの共重合ブロックBと、その両端に連結された1分子当たり2つのブロックAとを有するトリブロック分子構造を有することが好ましい。
【0136】
トリブロック分子構造を有する重合体(X)は、特に、1分子当たり2つのブロックAとしてブロックA1及びブロックA2を有し、ブロックA1とブロックA2との重量比A1/A2が、特定の範囲内であることが好ましい。重量比A1/A2は、好ましくは40/5〜70/5、より好ましくは50/5〜60/5である。重合体(X)がトリブロック分子構造を有し、且つ重量比A1/A2がかかる範囲内であることにより、耐熱性及び機械的強度に優れ、透湿性が低く、且つ、レターデーションの小さい第一表面層を容易に実現でき、中でも耐熱性に優れた第一表面層を特に容易に得ることができる。
【0137】
重合体(X)において、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)と、ジエン化合物水素化物単位(b)との重量比(a)/(b)が、特定の範囲内であることが好ましい。重量比(a)/(b)は、好ましくは70/30〜85/15、より好ましくは75/25〜80/20である。重量比(a)/(b)がかかる範囲内であることにより、耐熱性及び機械的強度に優れ、透湿性が低く、且つ、レターデーションの小さい第一表面層を容易に得ることができる。また、重量比(a)/(b)がかかる範囲内であることにより、引裂き強度及び衝撃強度が高く、且つレターデーションの発現性が低い光学積層体を容易に得ることができる。
【0138】
重合体(X)の重量平均分子量は、好ましくは80,000以上、より好ましくは90,000以上であり、好ましくは150,000以下、より好ましくは130,000以下である。重量平均分子量がかかる範囲内、特に前記下限以上の値であることにより、耐熱性及び機械的強度に優れ、透湿性が低く、且つ、レターデーションの小さい第一表面層を容易に実現でき、中でも耐熱性に優れた第一表面層を特に容易に得ることができる。ここで、重合体(X)の重量平均分子量は、テトラヒドロフランを溶媒としたGPCにより、ポリスチレン換算の値として測定しうる。
【0139】
重合体(X)の分子量分布(重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn))は、好ましくは2以下、より好ましくは1.5以下、さらにより好ましくは1.2以下である。分子量分布の下限は1.0以上としうる。これにより、重合体粘度を低めて成形性を高めることができる。
【0140】
ブロックAは、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)のみからなることが好ましいが、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)以外に任意の単位を含みうる。任意の構造単位の例としては、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)以外のビニル化合物に基づく構造単位が挙げられる。ブロックAにおける任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0141】
共重合ブロックBは、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及びジエン化合物水素化物単位(b)のみからなることが好ましいが、これら以外に任意の単位を含みうる。任意の構造単位の例としては、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)以外のビニル化合物に基づく構造単位が挙げられる。ブロックBにおける任意の構造単位の含有率は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、特に好ましくは1重量%以下である。
【0142】
重合体(X)の製造方法は、特に限定されず、任意の製造方法を採用しうる。重合体(X)は、例えば、芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)及びジエン化合物水素化物単位(b)に対応する単量体を用意し、これらを重合させ、得られた重合体を水素化することにより製造しうる。
【0143】
芳香族ビニル化合物水素化物単位(a)に対応する単量体としては、芳香族ビニル化合物を用いうる。その例としては、スチレン、α−メチルスチレン、α−エチルスチレン、α−プロピルスチレン、α−イソプロピルスチレン、α−t−ブチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、モノクロロスチレン、ジクロロスチレン、モノフルオロスチレン、及び4−フェニルスチレン等のスチレン類;ビニルシクロヘキサン、及び3−メチルイソプロペニルシクロヘキサン等のビニルシクロヘキサン類;並びに4−ビニルシクロヘキセン、4−イソプロペニルシクロヘキセン、1−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、1−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン、2−メチル−4−ビニルシクロヘキセン、及び2−メチル−4−イソプロペニルシクロヘキセン等のビニルシクロヘキセン類が挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0144】
ジエン化合物水素化物単位(b)に対応する単量体の例としては、ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、及び1,3−ヘキサジエン等の鎖状共役ジエン類挙げられる。これらの単量体は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0145】
重合の反応様式としては、通常、アニオン重合を採用しうる。また、重合は、塊状重合、溶液重合等のいずれで行ってもよい。中でも、重合反応と水素化反応とを連続して行うためには、溶液重合が好ましい。
【0146】
重合の反応溶媒の例としては、n−ブタン、n−ペンタン、イソペンタン、n−ヘキサン、n−ヘプタン、及びイソオクタン等の脂肪族炭化水素溶媒;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、メチルシクロヘキサン、及びデカリン等の脂環式炭化水素溶媒;並びにベンゼン及びトルエン等の芳香族炭化水素溶媒が挙げられる。中でも脂肪族炭化水素溶媒及び脂環式炭化水素溶媒を用いると、水素化反応にも不活性な溶媒としてそのまま使用することができ、好ましい。
反応溶媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
反応溶媒の量は、通常、全単量体100重量部に対して、200重量部〜10,000重量部である。
【0147】
重合の際、通常は、重合開始剤を使用する。重合開始剤の例としては、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、及びフェニルリチウム等のモノ有機リチウム;並びにジリチオメタン、1,4−ジオブタン、及び1,4−ジリチオー2−エチルシクロヘキサン等の多官能性有機リチウム化合物が挙げられる。重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0148】
重合体(X)として、ブロックA1及びA2並びに共重合ブロックBを含むトリブロック共重合体を製造する場合の製造方法の例としては、下記の工程(I)〜工程(III)を含む製造方法が挙げられる。ここで、「モノマー組成物」と称する材料は、2種類以上の物質の混合物のみならず、単一の物質からなる材料をも包含する。
【0149】
工程(I):芳香族ビニル化合物を含有するモノマー組成物(a1)を重合させてブロックAを形成する工程。
工程(II):かかるブロックAの一端において、芳香族ビニル化合物及びジエン化合物を含有するモノマー組成物を重合させて共重合ブロックBを形成し、A−Bのジブロックの重合体を形成する工程。
工程(III):かかるジブロックの重合体の、共重合ブロックB側の末端において、芳香族ビニル化合物を含有するモノマー組成物(a2)を重合させて、ブロック共重合体を得る工程。ただし、モノマー組成物(a1)とモノマー組成物(a2)とは、同一でも異なっていてもよい。
【0150】
それぞれの重合体ブロックを重合する際には、各ブロック内で、ある1成分の連鎖が過度に長くなることを防止するために、重合促進剤及びランダマイザーを使用しうる。例えば重合をアニオン重合により行う場合には、ルイス塩基化合物をランダマイザーとして使用しうる。ルイス塩基化合物の具体例としては、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジフェニルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、及びエチレングリコールメチルフェニルエーテル等のエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、及びピリジン等の第3級アミン化合物;カリウム−t−アミルオキシド、及びカリウム−t−ブチルオキシド等のアルカリ金属アルコキシド化合物;並びにトリフェニルホスフィン等のホスフィン化合物が挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0151】
重合温度は、重合が進行する限り制限は無いが、好ましくは0℃以上、より好ましくは20℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは100℃以下、特に好ましくは80℃以下である。
【0152】
重合後は、必要であれば、任意の方法により反応混合物から重合体を回収しうる。回収方法の例としては、スチームストリッピング法、直接脱溶媒法、及びアルコール凝固法が挙げられる。また、重合時に水素化反応に不活性な溶媒を反応溶媒として用いた場合は、重合溶液から重合体を回収せず、そのまま水素化工程に供することができる。
【0153】
重合体の水素化方法に制限は無く、任意の方法を採用しうる。水素化は、例えば、適切な水素化触媒を用いて行いうる。より具体的には、有機溶媒中で、ニッケル、コバルト、鉄、ロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウムからなる群より選ばれる少なくとも1つの金属を含む水素化触媒を用いて、水素化を行いうる。水素化触媒は、不均一系触媒であってもよく、均一系触媒であってもよい。水素化触媒は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0154】
不均一系触媒は、金属または金属化合物のままで用いてもよく、適切な担体に担持させて用いてもよい。担体の例としては、活性炭、シリカ、アルミナ、炭化カルシウム、チタニア、マグネシア、ジルコニア、ケイソウ土、及び炭化珪素が挙げられる。担体における触媒の担持量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.05重量%以上であり、好ましくは80重量%以下、より好ましくは60重量%以下である。
均一系触媒の例としては、ニッケル、コバルト、又は鉄の化合物と有機金属化合物(例えば、有機アルミニウム化合物、有機リチウム化合物)とを組み合わせた触媒;並びにロジウム、パラジウム、白金、ルテニウム、及びレニウム等の有機金属錯体触媒が挙げられる。ニッケル、コバルト、又は鉄の化合物の例としては、これらの金属のアセチルアセトン塩、ナフテン酸塩、シクロペンタジエニル化合物、及びシクロペンタジエニルジクロロ化合物が挙げられる。有機アルミニウム化合物の例としては、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム等のアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムクロリド、エチルアルミニウムジクロリド等のハロゲン化アルミニウム;並びにジイソブチルアルミニウムハイドライド等の水素化アルキルアルミニウムが挙げられる。
有機金属錯体触媒の例としては、例えば、上記各金属のγ−ジクロロ−π−ベンゼン錯体、ジクロロ−トリス(トリフェニルホスフィン)錯体、ヒドリド−クロロ−トリフェニルホスフィン)錯体等の金属錯体が挙げられる。
水素化触媒の使用量は、重合体100重量部に対して、好ましくは0.01重量部以上、より好ましくは0.05重量部以上、特に好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは100重量部以下、より好ましくは50重量部以下、特に好ましくは30重量部以下である。
【0155】
水素化反応の際の反応温度は、通常10℃〜250℃であるが、水素化率を高くでき、且つ、重合体鎖切断反応を小さくできるという理由から、好ましくは50℃以上、より好ましくは80℃以上であり、好ましくは200℃以下、より好ましくは180℃以下である。また、反応時の圧力は、通常0.1MPa〜30MPaであるが、上記理由に加え、操作性の観点から、好ましくは1MPa以上、より好ましくは2MPa以上であり、好ましくは20MPa以下、より好ましくは10MPa以下である。
水素化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは95%以上、特に好ましくは97%以上である。水素化率を高くすることにより、重合体(X)の低複屈折性及び熱安定性等を高めることができる。水素化率はH−NMRにより測定できる。
【0156】
非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBは、TgB>TgAを満たす。ここで、TgAは、基材層に含まれる結晶性の重合体Aのガラス転移温度を表す。詳細には、非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBは、通常TgAより大きく、好ましくはTgA+10℃以上、より好ましくはTgA+20℃以上である。第一表面層に含まれる非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、結晶性の重合体Aのガラス転移温度TgAより高いことにより、光学積層体が延伸工程を含む製造方法で製造される場合に、シワ及び破損等の欠陥の発生を抑制しながら、延伸を適切に行うことができる。したがって、非晶性の重合体Bが前記範囲のガラス転移温度TgBを有することにより、光学積層体の延伸適性を向上させることができる。また、光学積層体の最外層である第一表面層の耐熱性を高くできるので、光学積層体自体の耐熱性を向上させることができる。
【0157】
また、非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBは、TcA−10℃≧TgB≧TcA−60℃を満たす。ここで、TcAは、結晶性の重合体Aの結晶化温度を表す。詳細には、非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBは、通常TcA−60℃以上、好ましくはTcA−50℃以上、より好ましくはTcA−40℃以上であり、通常TcA−10℃以下、好ましくはTcA−15℃以下、より好ましくはTcA−20℃以下である。非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、前記範囲の下限値以上であることにより、光学積層体の製造方法において基材層に含まれる結晶性の重合体Aを結晶化させる際に、第一表面層の熱変形を抑制できる。また、非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、上限値以下であることにより、基材層に含まれる結晶性の重合体Aを結晶化させる際に、第一表面層の配向を緩和させて、所望の面配向係数Pを容易に達成することができる。
【0158】
非晶性の重合体Bの具体的なガラス転移温度TgBは、好ましくは100℃以上、より好ましくは110℃以上、特に好ましくは120℃以上であり、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、特に好ましくは160℃以下である。非晶性の重合体Bのガラス転移温度TgBが、前記範囲の下限値以上であることにより、高温環境下における光学積層体の耐久性を高めることができ、また、前記範囲の上限値以下であることにより、光学積層体の延伸処理を容易に行える。
【0159】
非晶性の重合体Bの飽和吸水率は、好ましくは0.03重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下、特に好ましくは0.01重量%以下である。飽和吸水率が前記範囲であると、非晶性の重合体Bを含む第一表面層のレターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。また、光学積層体を備える偏光板及び表示装置の劣化を抑制でき、長期的に表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。
【0160】
飽和吸水率は、試料を一定温度の水中に一定時間浸漬して増加した質量を、浸漬前の試験片の質量に対する百分率で表した値である。通常は、23℃の水中に24時間、浸漬して測定される。重合体の飽和吸水率は、例えば、重合体中の極性基の量を減少させることにより、前記の範囲に調節することができる。よって、飽和吸水率をより低くする観点から、非晶性の重合体Bは、極性基を有さないことが好ましい。
【0161】
第一表面層において、非晶性樹脂における非晶性の重合体Bの量は、好ましくは90.0重量%〜100重量%、より好ましくは95.0重量%〜100重量%である。非晶性の重合体Bの量を前記範囲にすることにより、光学積層体のデラミネーションを効果的に抑制でき、また、非晶性の重合体Bの特性を十分に発揮できる。
【0162】
非晶性樹脂は、非晶性の重合体Bに加えて、更に任意の成分を含みうる。任意の成分としては、例えば、顔料、染料等の着色剤;核剤;可塑剤;蛍光増白剤;分散剤;熱安定剤;光安定剤;帯電防止剤;酸化防止剤;界面活性剤等の配合剤が挙げられる。任意の成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0163】
第一表面層の面配向係数Pは、通常0.01以下、好ましくは0.008以下、より好ましくは0.005以下である。このように低い面配向係数Pを第一表面層が有することは、第一表面層に含まれる重合体Bの面内方向の配向の程度が低いことを表す。第一表面層の面配向係数Pが前記のように低いことにより、デラミネーションを効果的に抑制でき、更に通常は、光学積層体のレターデーションを小さくできる。第一表面層の面配向係数Pの下限は、第一表面層の形成が容易であることから、好ましくは0.0005以上である。
【0164】
ここで、ある層の面配向係数Pは、P={(nx+ny)/2}−nzで表される値である。また、nxは、前記の層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表し、nyは、前記層の面内方向であってnxの方向に垂直な方向の屈折率を表し、nzは、前記層の厚み方向の屈折率を表す。測定波長は、別に断らない限り、550nmである。
【0165】
第一表面層の厚みは、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは0.2μm以上、特に好ましくは0.3μm以上であり、好ましくは20.0μm以下、より好ましくは15.0μm以下、特に好ましくは10.0μm以下である。第一表面層の厚みを前記範囲の下限値以上にすることにより、光学積層体のデラミネーションを効果的に抑制できる。また、第一表面層の厚みを前記範囲の上限値以下にすることにより、光学積層体を薄くできる。また、上限値以下にすることにより、基材層を相対的に厚くできるので、総厚みに比して光学積層体の引張弾性率を高くできる。
【0166】
[4.第二表面層]
第二表面層は、非晶性の重合体B’を含む樹脂からなる層である。第一表面層に組み合わせて第二表面層を備えることにより、光学積層体は、当該光学積層体の両面においてデラミネーションを効果的に抑制できる。
【0167】
非晶性の重合体B’としては、非晶性の重合体Bとして説明した範囲のものを、任意に用いうる。また、第二表面層に含まれる樹脂としては、第一表面層に含まれる非晶性樹脂として説明した範囲のものを、任意に用いうる。これにより、第二表面層において、第一表面層と同様の効果を得ることができる。非晶性の重合体Bと非晶性の重合体B’とは、同じでもよく、異なっていてもよい。また、第二表面層に含まれる樹脂と第一表面層に含まれる非晶性樹脂とは、同じでもよく、異なっていてもよい。ただし、光学積層体の製造コストの抑制及びカールの抑制の観点から、第二表面層に含まれる樹脂と第一表面層に含まれる非晶性樹脂とは、同じであることが好ましい。
【0168】
第二表面層の面配向係数P等の特性は、第一表面層の特性として説明した範囲に、任意に設定しうる。これにより、第二表面層において、第一表面層と同様の効果を得ることができる。第二表面層の特性と第一表面層の特性とは、異なっていてもよく、同じであってもよい。
【0169】
第二表面層の厚みは、第一表面層の厚みとして説明した範囲の厚みに、任意に設定しうる。これにより、第二表面層において、第一表面層と同様の効果を得ることができる。第二表面層の厚みと第一表面層の厚みとは、異なっていてもよいが、光学積層体のカールを抑制する観点から、同じであることが好ましい。
【0170】
[5.任意の層]
光学積層体は、必要に応じて、上述した基材層、第一表面層及び第二表面層に組み合わせて、任意の層を備えうる。例えば、光学積層体は、基材層と第一表面層との間に任意の樹脂層を備えていてもよく、基材層と第二表面層との間に任意の樹脂層を備えていてもよい。ただし、光学積層体を薄くする観点から、光学積層体は任意の層を備えないことが好ましい。したがって、光学積層体は、基材層と第一表面層とが、それらの間に任意の層を備えることなく直接に接していることが好ましく、また、基材層と第二表面層とが、それらの間に任意の層を備えることなく直接に接していることが好ましい。よって、光学積層体は、基材層及び第一表面層を備える2層構造のフィルムであるか、第一表面層、基材層及び第二表面層をこの順に備える3層構造のフィルムであることが好ましい。
【0171】
[6.光学積層体の物性]
光学積層体は、最外層として第一表面層を備えるので、この第一表面層の表面で任意の部材と貼り合わせた時に、デラミネーションを生じ難い。また、第二表面層を備える光学積層体では、第二表面層の表面で任意の部材と貼り合わせた時も、デラミネーションを生じ難い。したがって、光学積層体は、強い接着力で任意の部材と接着することが可能である。
【0172】
前記の接着力は、剥離強度によって評価しうる。この剥離強度は、光学積層体をある部材に接着した後で、光学積層体を剥離するために要する力の大きさを表す。例えば、光学積層体を任意のフィルムと接着した場合に、前記フィルムを接着面に垂直な方向に引っ張って剥離するのに要する剥離強度は、光学積層体の幅15mm当たり、通常2.0N以上である。このように、幅15mm当たり2.0Nの力で引っ張られても、光学積層体の第一表面層は破損し難いので、デラミネーションを生じ難い。
【0173】
光学積層体は、結晶性樹脂からなる基材層を備えるので、大きい剛性を有することができる。光学積層体の具体的な剛性は、弾性率によって表しうる。光学積層体の引張弾性率は、好ましくは3000MPa以上、より好ましくは3300MPa以上、特に好ましくは3500MPa以上である。このように大きい引張弾性率を有することにより、光学積層体は、大面積化しても撓み等の変形を生じ難く、また、機械的な耐久性に優れる。引張弾性率の上限は、脆性を小さくして光学積層体の機械的強度を高める観点から、好ましくは5000MPa以下、より好ましくは4800MPa以下、特に好ましくは4500MPa以下である。
【0174】
光学積層体の引張弾性率は、下記の方法によって測定しうる。
光学積層体から、矩形の試験片(幅10mm×長さ250mm)を切り出す。この試験片を長辺方向に引っ張って歪ませる際の応力を、JIS K7113に基づき、引張試験機を用いて、温度23℃、湿度60±5%RH、チャック間距離115mm、引張速度100mm/minの条件で、測定する。このような測定を、3回行う。そして、測定された応力とその応力に対応した歪みの測定データから、試験片の歪が0.6%〜1.2%の範囲で0.2%毎に測定データを選択する。即ち、歪みが0.6%、0.8%、1.0%及び1.2%の時の測定データを選択する。この選択された3回分の測定データから最小二乗法を用いて光学積層体の引張弾性率を計算する。
【0175】
光学積層体は、透湿性が低いことが好ましい。具体的には、光学積層体の水蒸気透過率は、好ましくは10g/(m・24h)以下、より好ましくは8g/(m・24h)以下、特に好ましくは5g/(m・24h)以下である。このように低い水蒸気透過率は、結晶性の重合体Aとして結晶性脂環構造重合体を採用する方法、非晶性の重合体B又はB’として非晶性脂環構造重合体を採用する方法、によって達成しうる。光学積層体の水蒸気透過率は、JIS K 7129 A法により、温度40℃、湿度90%RHという測定条件で測定しうる。
【0176】
光学積層体のレターデーションReは、好ましくは400nm以下、より好ましくは300nm以下、特に好ましくは200nm以下である。光学積層体のレターデーションが前記の範囲に収まることにより、当該光学積層体を備える表示装置の表示品位を効果的に高めることができ、例えば、その表示装置の虹状の色ムラを効果的に抑制できる。光学積層体のレターデーションの下限値は、理想的には0nm以上であるが、光学積層体の製造を容易に行う観点では、好ましくは1nm以上、より好ましくは2nm以上である。
【0177】
光学積層体は、紫外線透過率が小さいことが好ましい。具体的には、波長380nmにおける光学積層体の光線透過率は、好ましくは10.0%以下、より好ましくは8%以下、特に好ましくは5%以下である。これにより、光学積層体を備える偏光板の耐久性を向上させたり、当該光学積層体を適用した液晶表示装置の液晶パネルの紫外線による劣化を抑制したりできる。このように低い紫外線透過率を実現する方法は、任意であるが、紫外線吸収剤を含む結晶性樹脂を用いる方法を採用してもよい。
【0178】
光学積層体の全光線透過率は、好ましくは85%〜100%、より好ましくは87%〜100%、特に好ましくは90%〜100%である。全光線透過率は、JIS K0115に準拠して、分光光度計を用いて測定しうる。
【0179】
光学積層体のヘイズは、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下、特に好ましくは3%以下である。ヘイズは、JIS K7361−1997に準拠して、濁度計を用いて測定しうる。
【0180】
光学積層体が含む揮発性成分の量は、好ましくは0.1重量%以下、より好ましくは0.05重量%以下、さらに好ましくは0.02重量%以下である。揮発性成分の量を前記範囲にすることにより、光学積層体の寸法安定性が向上し、レターデーション等の光学特性の経時変化を小さくすることができる。さらには、光学積層体を備える偏光板及び表示装置の劣化を抑制でき、長期的に表示装置の表示を安定で良好に保つことができる。ここで、揮発性成分は、分子量200以下の物質である。揮発性成分としては、例えば、残留単量体及び溶媒などが挙げられる。揮発性成分の量は、分子量200以下の物質の合計として、ガスクロマトグラフィーにより分析することにより定量しうる。
【0181】
[7.光学積層体の形状及び厚み]
光学積層体は、通常、フィルム状の部材である。光学積層体は、枚葉のフィルムであってもよく、長尺のフィルムであってもよい。通常は、光学積層体は長尺のフィルムとして製造され、必要に応じて任意の部材と貼り合わせられた後、所望の大きさとなるように切り出されて使用される。
【0182】
光学積層体の厚みは、好ましくは10μm以上、より好ましくは15μm以上、特に好ましくは20μm以上であり、好ましくは50μm以下、より好ましくは40μm以下、特に好ましくは30μm以下である。光学積層体の厚みを、前記範囲の下限値以上にすることにより、光学積層体の剛性を効果的に高めることができ、前記範囲の上限値以下にすることにより光学積層体を薄くできる。
【0183】
[8.光学積層体の製造方法]
光学積層体は、延伸特性を有し、その製造時に延伸してもシワ及び破損等の欠陥が生じ難いという利点を有する。そのため、光学積層体は、延伸を含む製造方法によって製造することが好ましい。好ましい製造方法としては、例えば、
結晶性樹脂からなる層と、非晶性樹脂からなる層と、を備える延伸前積層体を用意する第一工程と、
延伸前積層体を延伸して、延伸積層体を得る第二工程と、
延伸積層体を所定の温度に調整する第三工程と、
を含む、製造方法が挙げられる。
【0184】
〔8.1.第一工程〕
第一工程では、延伸前積層体を用意する。延伸前積層体は、例えば、結晶性樹脂からなるフィルム、及び、非晶性樹脂からなるフィルムを別々に用意する工程と、用意した前記のフィルムを、必要に応じて接着剤を使用して、貼り合わせる工程とを含む方法によって、製造してもよい。また、延伸前積層体は、例えば、結晶性樹脂からなる層上に、塗布法等の層形成方法によって、非晶性樹脂からなる層を形成する工程を含む製造方法によって製造してもよい。さらに、延伸前積層体は、例えば、非晶性樹脂からなる層上に、塗布法等の層形成方法によって、結晶性樹脂からなる層を形成する工程を含む製造方法によって製造してもよい。特に、延伸前積層体は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を、同時に層状に成形する工程を含む製造方法により、製造することが好ましい。
【0185】
結晶性樹脂及び非晶性樹脂を同時に層状に成形する方法としては、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を共押出又は共延伸する工程を含む方法が挙げられる。中でも、共押出は、製造効率に優れ、光学積層体中に揮発性成分を残留させ難いので、特に好ましい。
【0186】
共押出法は、結晶性樹脂及び非晶性樹脂を共押し出しする押出工程を含む。押出工程において結晶性樹脂及び非晶性樹脂は、それぞれ溶融状態で層状に押し出される。この際、樹脂の押出方法としては、例えば、共押出Tダイ法、共押出インフレーション法、共押出ラミネーション法等が挙げられる。中でも、共押出Tダイ法が好ましい。共押出Tダイ法には、フィードブロック方式及びマルチマニホールド方式があり、厚みのばらつきを少なくできる点で、マルチマニホールド方式が特に好ましい。
【0187】
押出工程において、押し出される樹脂の溶融温度は、好ましくはTg+80℃以上、より好ましくはTg+100℃以上であり、好ましくはTg+180℃以下、より好ましくはTg+170℃以下である。ここで「Tg」は、結晶性樹脂又は非晶性樹脂に含まれる重合体のガラス転移温度のうち、最も高い温度を表す。押し出される樹脂の溶融温度を、前記範囲の下限値以上にすることにより樹脂の流動性を十分に高めて成型性を良好にでき、また、上限値以下にすることにより樹脂の劣化を抑制できる。
【0188】
押出工程において、押出機における樹脂の温度は、樹脂投入口では好ましくはTg〜(Tg+100℃)、押出機出口では好ましくは(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)、ダイス温度は好ましくは(Tg+50℃)〜(Tg+170℃)である。
【0189】
さらに、押出工程において用いるダイのダイスリップの算術平均粗さは、好ましくは1.0μm以下、より好ましくは0.7μm以下、特に好ましくは0.5μm以下である。ダイスリップの算術平均粗さを前記範囲に収めることにより、光学積層体のスジ状の欠陥を抑制することが容易となる。
【0190】
共押出法では、通常、ダイスリップから押し出された層状の溶融樹脂を冷却ロールに密着させて冷却し、硬化させる。この際、溶融樹脂を冷却ロールに密着させる方法としては、例えば、エアナイフ方式、バキュームボックス方式、静電密着方式などが挙げられる。
【0191】
冷却ロールの数は、特に制限されず、通常は2本以上である。冷却ロールの配置方法としては、例えば、直線型、Z型、L型などが挙げられる。この際、ダイスリップから押出された溶融樹脂の冷却ロールへの通し方は特に制限されない。
【0192】
〔8.2.第二工程〕
第二工程では、前記のようにして得られた延伸前積層体を延伸して、延伸積層体を得る。通常は、延伸によって樹脂中の重合体が延伸方向に配向する。よって、このように配向させることにより、光学積層体の物性を調整することが可能である。さらに、延伸を行うことによって、結晶性樹脂に含まれる結晶性の重合体Aを配向させながら、当該重合体Aの結晶化を促進することができるので、光学積層体の剛性を高めることが可能である。
【0193】
延伸は、一方向のみに延伸処理を行う一軸延伸処理を行ってもよく、異なる2方向に延伸処理を行う二軸延伸処理を行ってもよい。また、二軸延伸処理では、2方向に同時に延伸処理を行う同時二軸延伸処理を行ってもよく、ある方向に延伸処理を行った後で別の方向に延伸処理を行う逐次二軸延伸処理を行ってもよい。さらに、延伸は、延伸前積層体の長手方向に延伸処理を行う縦延伸処理、延伸前積層体の幅方向に延伸処理を行う横延伸処理、延伸前積層体の幅方向に平行でもなく垂直でもない斜め方向に延伸処理を行う斜め延伸処理のいずれを行ってもよく、これらを組み合わせて行ってもよい。延伸処理の方式は、例えば、ロール方式、フロート方式、テンター方式などが挙げられる。
【0194】
延伸温度は、所望の物性を有する光学積層体が得られる範囲で任意に設定しうる。ただし、好適な延伸温度は、好ましくはTgA以上、より好ましくはTgA+10℃以上、特に好ましくはTgA+20℃以上であり、好ましくはTgA+60℃以下、より好ましくはTgA+50℃以下、より好ましくはTgA+40℃以下である。ここで、TgAは、前述の通り、基材層中の結晶性の重合体Aのガラス転移温度を表す。延伸温度が前記範囲にあることにより、シワ及び破損等の欠陥の発生を抑制しながら延伸を行うことができる。
【0195】
延伸倍率は、所望の物性を有する光学積層体が得られる範囲で任意に設定しうる。具体的な延伸倍率の範囲は、好ましくは1.01倍〜30倍、好ましくは1.01倍〜10倍、より好ましくは1.01倍〜5倍である。
【0196】
〔8.3.第三工程〕
第三工程では、延伸積層体を所定の処理温度に調整する処理を行って、光学積層体を得る。前記の処理温度において、結晶性樹脂に含まれる結晶性の重合体Aの結晶化が促進され、その結晶化度が高まる。これにより、剛性に優れる光学積層体が得られる。また、前記の処理温度において、非晶性樹脂に含まれる非晶性の重合体B及びB’の配向が緩和して、第一表面層及び第二表面層の面配向係数Pを小さくできる。
【0197】
第三工程においては、通常、延伸積層体の寸法を固定した状態において、延伸積層体の加熱を行う。これにより、延伸積層体の熱収縮による変形を抑制しながら、結晶性の重合体Aの結晶化の促進、及び、非晶性の重合体B及びB’の配向の緩和を行うことができる。処理の際の具体的操作は、特に限定されないが、延伸積層体の寸法が固定された状態で、ヒーターを延伸積層体に近接させて加熱する方法、所定の温度に加熱されたオーブン又は炉の室内に延伸積層体を通して加熱する方法、などの方法を採用しうる。
【0198】
第三工程における処理温度は、好ましくはTcA−20℃以上、より好ましくはTcA−10℃以上、特に好ましくはTcA−5℃以上であり、好ましくはTcA+20℃以下、より好ましくはTcA+10℃以下、特に好ましくはTcA+5℃以下である。ここで、TcAは、前述の通り、結晶性の重合体Aの結晶化温度を表す。このような処理温度においては、重合体Aの結晶化を速やかに進めることができる。
【0199】
第三工程において前記の処理温度に保持する処理時間は、好ましくは1秒以上、より好ましくは3秒以上、特に好ましくは5秒以上であり、好ましくは3分以下、より好ましくは2分以下、特に好ましくは1分以下である。処理時間が、前記範囲の下限値以上であることにより、結晶性の重合体Aの結晶化度を十分に高められるので、光学積層体の剛性を特に高めたり、透湿性を特に低くしたりすることが可能である。また、非晶性の重合体B及びB’の配向を十分に緩和させられるので、第一表面層及び第二表面層の面配向係数Pを効果的に低くできる。また、処理時間が、前記範囲の上限値以下であることにより、光学積層体の製造を効率良く行うことができる。
【0200】
〔8.4.任意の工程〕
光学積層体の製造方法は、前述した工程に加えて、更に任意の工程を含んでいてもよい。
【0201】
[9.偏光板]
本発明の偏光板は、偏光子と、当該偏光子の少なくとも片側に設けられた前記の光学積層体を備える。
【0202】
偏光子としては、直角に交わる二つの直線偏光の一方を透過し、他方を吸収又は反射しうるフィルムを用いうる。偏光子の具体例を挙げると、ポリビニルアルコール、部分ホルマール化ポリビニルアルコール等のビニルアルコール系重合体のフィルムに、ヨウ素、二色性染料等の二色性物質による染色処理、延伸処理、架橋処理等の適切な処理を適切な順序及び方式で施したものが挙げられる。特に、ポリビニルアルコールを含む偏光子が好ましい。また、偏光子の厚さは、通常、5μm〜80μmである。
【0203】
偏光板は、偏光子の片側に光学積層体を貼り合わせることにより、製造できる。貼り合わせに際しては、必要に応じて接着剤を用いてもよい。貼り合わせの向きは任意である。例えば、光学積層体の第一表面層又は第二表面層の表面で偏光子との貼り合わせを行うと、偏光子からの光学積層体の剥離を抑制することができる。また、例えば、第一表面層又は第二表面層が偏光板の最外層となる向きで貼り合わせを行うと、第一表面層又は第二表面層の表面が偏光板の最表面となり、偏光板を任意の部材に貼り合わせたときに、偏光板の剥離を抑制することができる。
【0204】
偏光板は、上述した偏光子、光学積層体に組み合わせて、更に任意の層を備えていてもよい。例えば、偏光板は、光学積層体以外の任意の保護フィルム層を、偏光子の保護のために備えていてもよい。このような保護フィルム層は、通常、光学積層体とは反対側の偏光子の面に設けられる。
【0205】
[10.表示装置]
本発明の表示装置は、前記の偏光板を備える。このような表示装置としては、例えば、液晶表示装置及び有機エレクトロルミネッセンス表示装置が挙げられ、中でも、液晶表示装置が好ましい。通常、液晶表示装置は、光源、光源側偏光板、液晶セル及び視認側偏光板を、この順に備える。光学積層体を備える前記の偏光板は、光源側偏光板及び視認側偏光板のいずれに用いてもよい。
【0206】
液晶セルの駆動方式としては、例えば、インプレーンスイッチング(IPS)モード、バーチカルアラインメント(VA)モード、マルチドメインバーチカルアラインメント(MVA)モード、コンティニュアスピンホイールアラインメント(CPA)モード、ハイブリッドアラインメントネマチック(HAN)モード、ツイステッドネマチック(TN)モード、スーパーツイステッドネマチック(STN)モード、オプチカルコンペンセイテッドベンド(OCB)モードなどが挙げられる。
【実施例】
【0207】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温常圧大気中において行った。
【0208】
[評価方法]
(光学積層体の厚みの測定方法)
光学積層体の厚みは、接触式膜厚計(ミツトヨ社製ダイヤルゲージ)で測定した。
また、光学積層体に含まれる各層の厚みは、光学積層体をエポキシ樹脂で包埋した後に、ミクロトームを用いて厚み0.05μmにスライスし、顕微鏡を用い断面観察を行うことで測定した。
【0209】
(重合体のガラス転移温度及び結晶化温度の測定方法)
重合体のガラス転移温度Tg及び結晶化温度Tcは、示差走査熱量計(DSC)を用いて10℃/分で昇温して測定した。結晶化温度Tcは、示差走査熱量計で融点Tmを測定し、ガラス転移温度Tgおよび融点Tmの平均温度を結晶化温度Tcとした。
【0210】
(第一表面層の面配向係数の測定方法)
屈折率計(メトリコン社製「プリズムカプラ屈折率計Model2010」)を用いて、波長550nmで、第一表面層の屈折率nx、ny、nzを測定し、以下式に従って面配向係数Pを算出した。
P={(nx+ny)/2}−nz
【0211】
(光学積層体の引張弾性率の測定方法)
光学積層体から、矩形の試験片(幅10mm×長さ250mm)を切り出した。試験片をその長辺方向に引っ張って歪ませる際の応力を、JIS K7113に基づき、恒温恒湿槽付き引張試験機(インストロンジャパン社製の5564型デジタル材料試験機)を用いて、温度23℃、湿度60±5%RH、チャック間距離115mm、引張速度100mm/minの条件で、測定した。このような測定を、3回行った。そして、測定された応力とその応力に対応した歪みの測定データから、試験片の歪が0.6%〜1.2%の範囲で0.2%毎に測定データを選択した。即ち、歪みが0.6%、0.8%、1.0%及び1.2%の時の測定データを選択した。この選択された3回分の測定データから最小二乗法を用いて、光学積層体の引張弾性率を計算した。
【0212】
(延伸適性の評価方法)
延伸工程における延伸前積層体を観察し、下記の基準によって延伸適性を評価した。
良:シワ及び破損の発生が、無い。
可:シワ又は破損が、まれに発生する。
不良:シワ又は破損の発生が、常に発生する。
【0213】
(光学積層体の水蒸気透過率の測定方法)
光学積層体の水蒸気透過率は、水蒸気透過度測定装置(MOCON社製「PERMATRANW3/33」)を用い、JIS K 7129 Aに準じて測定した。この測定は、温度40℃、湿度90%RHという測定条件で行った。
【0214】
(剥離強度の評価方法)
ノルボルネン系重合体を含む樹脂からなる未延伸フィルム(日本ゼオン社製「ゼオノアフィルム」、樹脂のガラス転移温度160℃、厚み100μm)を用意した。
【0215】
光学積層体の第一表面層側の面に、コロナ処理を施した。また、前記未延伸フィルムの片面に、コロナ処理を施した。光学積層体のコロナ処理を施した面と、未延伸フィルムのコロナ処理を施した面とに、接着剤としてシランカップリング剤を付着させ、シランカップリング剤を付着させた面同士を貼り合わせた。これにより、光学積層体及び未延伸フィルムを備えるサンプルフィルムを得た。
【0216】
その後、前記のサンプルフィルムを、15mm幅に裁断した。裁断されたサンプルフィルムの光学積層体側の面を、スライドガラスの表面に、両面粘着テープ(日東電工社製、品番「CS9621」)を用いて貼り合わせた。
【0217】
スライドガラスに貼り合わせられたサンプルフィルムの未延伸フィルムを、フォースゲージの先端に挟み、スライドガラスの表面の法線方向に引っ張ることによって、90度剥離試験を実施した。この際、未延伸フィルムが剥れる際に測定された力は、光学積層体と未延伸フィルムとを剥離させるために要する力であるので、この力の大きさを、剥離強度として測定した。
【0218】
測定された剥離強度に基づいて、下記の基準で、光学積層体がデラミネーションを生じ難い良好なものであるか否かを評価した。
良:剥離強度が2.0N以上である。
不良:剥離強度が2.0N未満であり、かつ光学積層体に材破壊が発生した。
【0219】
(光学積層体のレターデーションの測定方法)
光学積層体の波長550nmにおけるレターデーションは、ポラリメータ(Axiometric社製「Axoscan」)を用いて測定した。
【0220】
(光学積層体の光線透過率の測定方法)
光学積層体の波長380nmにおける光線透過率は、JIS K 0115(吸光光度分析通則)に準拠して、分光光度計(日本分光社製の紫外可視近赤外分光光度計「V−650」)を用いて測定した。
【0221】
[製造例1.結晶性脂環構造重合体(K1)の製造]
金属製の耐圧反応器を、充分に乾燥した後、窒素置換した。この金属製耐圧反応器に、シクロヘキサン154.5部、ジシクロペンタジエン(エンド体含有率99%以上)の濃度70%シクロヘキサン溶液42.8部(ジシクロペンタジエンの量として30部)、及び1−ヘキセン1.9部を加え、53℃に加温した。
【0222】
テトラクロロタングステンフェニルイミド(テトラヒドロフラン)錯体0.014部を0.70部のトルエンに溶解した溶液に、濃度19%のジエチルアルミニウムエトキシド/n−ヘキサン溶液0.061部を加えて10分間攪拌して、触媒溶液を調製した。
この触媒溶液を耐圧反応器に加えて、開環重合反応を開始した。その後、53℃を保ちながら4時間反応させて、ジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液を得た。
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の数平均分子量(Mn)及び重量平均分子量(Mw)は、それぞれ、8,750および28,100であり、これらから求められる分子量分布(Mw/Mn)は3.21であった。
【0223】
得られたジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部に、停止剤として1,2−エタンジオール0.037部を加えて、60℃に加温し、1時間攪拌して重合反応を停止させた。ここに、ハイドロタルサイト様化合物(協和化学工業社製「キョーワード(登録商標)2000」)を1部加えて、60℃に加温し、1時間攪拌した。その後、濾過助剤(昭和化学工業社製「ラヂオライト(登録商標)#1500」)を0.4部加え、PPプリーツカートリッジフィルター(ADVANTEC東洋社製「TCP−HX」)を用いて吸着剤と溶液を濾別した。ここで、前記「PP」は、ポリプロピレンの略称である。
【0224】
濾過後のジシクロペンタジエンの開環重合体の溶液200部(重合体量30部)に、シクロヘキサン100部を加え、クロロヒドリドカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム0.0043部を添加して、水素圧6MPa、180℃で4時間水素化反応を行なった。これにより、ジシクロペンタジエンの開環重合体の水素添加物を含む反応液が得られた。この反応液は、水素添加物が析出してスラリー溶液となっていた。
【0225】
前記の反応液に含まれる水素添加物と溶液とを、遠心分離器を用いて分離し、60℃で24時間減圧乾燥して、結晶性脂環構造重合体(K1)28.5部を得た。この結晶性脂環構造重合体(K1)の水素添加率は99%以上、ガラス転移温度Tgは95℃、結晶化温度Tcは180℃、融点Tmは262℃、ラセモ・ダイアッドの割合は89%であった。
【0226】
[製造例2:非晶性の重合体(H2)の製造]
(第1段階の反応:ブロックA1の伸長)
十分に乾燥し窒素置換した、攪拌装置を備えたステンレス鋼製反応器に、脱水シクロヘキサン320部、スチレン55部、及びジブチルエーテル0.38部を仕込み、60℃で攪拌しながらn−ブチルリチウム溶液(15重量%含有ヘキサン溶液)0.41部を添加して重合反応を開始させ、第1段階の重合反応を行った。反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、ガスクロマトグラフィー(GC)により分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
【0227】
(第2段階の反応:ブロックBの伸長)
第1段階の反応で得られた反応混合物に、スチレン20部及びイソプレン20部からなる混合モノマー40部を添加し、引き続き第2段階の重合反応を開始した。第2段階の重合反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、GCにより分析した結果、重合転化率は99.5%であった。
【0228】
(第3段階の反応:ブロックA2の伸長)
第2段階の反応で得られた反応混合物に、スチレン5部を添加し、引き続き第3段階の重合反応を開始した。第3段階の重合反応開始後1時間の時点で、反応混合物から、試料をサンプリングし、重合体の重量平均分子量Mw及び数平均分子量Mnを測定した。またこの時点でサンプリングした試料をGCにより分析した結果、重合転化率はほぼ100%であった。その後直ちに、反応混合物にイソプロピルアルコール0.2部を添加して反応を停止させた。これにより、A1−B−A2のトリブロック分子構造を有する重合体を含む混合物を得た。
【0229】
第1段階の反応及び第2段階での反応では、重合反応を十分に進行させたことから、重合転化率は略100%であり、したがってブロックBにおけるSt/Ipの重量比は20/20であると考えられる。これらの値から、得られた重合体は、St−(St/Ip)−St=55−(20/20)−5のトリブロック分子構造を有する重合体であることが分かった。重合体の重量平均分子量(Mw)は105,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.04であった。
【0230】
次に、上記の重合体を含む混合物を、攪拌装置を備えた耐圧反応器に移送し、水素化触媒として珪藻土担持型ニッケル触媒(日揮触媒化成社製「E22U」、ニッケル担持量60%)8.0部及び脱水シクロヘキサン100部を添加して、混合した。反応器内部を水素ガスで置換し、さらに溶液を攪拌しながら水素を供給し、温度190℃、圧力4.5MPaにて6時間、水素化反応を行った。水素化反応により得られた反応溶液に含まれる重合体の水素化物の重量平均分子量(Mw)は111,800、分子量分布(Mw/Mn)は1.05であった。
【0231】
水素化反応の終了後、反応溶液をろ過して水素化触媒を除去した後、フェノール系酸化防止剤であるペンタエリスリチル・テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート](松原産業社製「Songnox1010」)0.1部を溶解したキシレン溶液2.0部を添加して、溶解させた。
【0232】
次いで、上記溶液を、円筒型濃縮乾燥器(日立製作所社製「コントロ」)を用いて、温度260℃、圧力0.001MPa以下で乾燥させて、溶液から、溶媒であるシクロヘキサン、キシレン及びその他の揮発成分を除去した。乾燥後に得られた溶融ポリマーを、ダイからストランド状に押出し、冷却後、ペレタイザーにより成形して、重合体(X)としての非晶性の重合体(H2)のペレット95部を作製した。
得られた非晶性の重合体(H2)のガラス転移温度Tgは130℃、重量平均分子量(Mw)は110,300、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、水素化率はほぼ100%であった。
【0233】
[実施例1]
(1−1.基材層用の樹脂の用意)
製造例1で得られた結晶性脂環構造重合体(K1)93.0部と、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤(ADEKA社製「LA−31」)7.0部とを、二軸押出機により混合して、混合物を得た。次いで、その混合物を、押出機に接続されたホッパーへ投入し、単軸押出機へ供給して溶融押出して、基材層用の結晶性樹脂を用意した。
【0234】
(1−2.表面層用の樹脂の用意)
脂環式構造を含有する非晶性の重合体(H1)としてのノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ゼオノア1600」;ガラス転移温度160℃)を、表面層用の非晶性樹脂として用意した。
【0235】
(1−3.押出工程)
前記工程(1−1)で用意した基材層用の樹脂を、ホッパーへ投入した。そして、投入された基材層用の樹脂を、マルチマニホールドダイに供給した。
【0236】
他方、前記工程(1−2)で用意した表面層用の樹脂を、別のホッパーへ投入した。そして、投入された表面層用の樹脂を、前記のマルチマニホールドダイに供給した。
【0237】
次いで、マルチマニホールドダイから前記の樹脂をフィルム状に吐出させ、冷却ロールにキャストした。このような共押出法によって、非晶性樹脂からなる第一表面層/結晶性樹脂からなる基材層/非晶性樹脂からなる第二表面層をこの順に備える、長尺の延伸前積層体を得た。
【0238】
(1−4.延伸工程)
延伸前積層体を、当該延伸前積層体の幅方向の両端を把持しうるクリップ及び前記クリップを案内しうるレールを備えたテンター装置に供給し、このテンター装置で延伸した。延伸は、長手方向の延伸倍率2.0倍、幅方向の延伸倍率2.0倍、延伸温度120℃の条件で行った。これにより、長尺の延伸積層体を得た。
【0239】
(1−5.結晶化工程)
延伸積層体に加熱処理を施して、基材層に含まれる結晶性脂環構造重合体(K1)の結晶化を促進した。前記の加熱処理は、加熱温度180℃、加熱時間30秒の条件で行った。また、加熱処理は、延伸積層体に収縮が生じないように、延伸積層体の幅方向の両端をテンター装置のクリップで把持して寸法を固定した状態で、行った。これにより、「非晶性の重合体(H1)を含む第一表面層(厚み5.0μm)」/「結晶性脂環構造重合体(K1)を含む基材層(厚み20.0μm)」/「非晶性の重合体(H1)を含む第二表面層(厚み5.0μm)」をこの順に備える、長尺の光学積層体を得た。得られた光学積層体について、上述した方法で評価を行った。
【0240】
[実施例2]
表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0241】
[実施例3]
表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0242】
[実施例4]
前記工程(1−1)において、製造例1で得られた結晶性脂環構造重合体(K1)それ自体を、紫外線吸収剤を含まない基材層用の結晶性樹脂として用意した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0243】
[実施例5]
前記工程(1−1)において、製造例1で得られた結晶性脂環構造重合体(K1)それ自体を、紫外線吸収剤を含まない基材層用の結晶性樹脂として用意した。また、表1に示す厚みの第一表面層及び基材層を有する光学積層体(第二表面層を有さない光学積層体)が得られるように、前記工程(1−3)において、マルチマニホールドダイを変更した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0244】
[実施例6]
前記工程(1−2)において、非晶性の重合体(H1)の代わりに、製造例2で製造した非晶性の重合体(H2)を、表面層用の非晶性樹脂として用意した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0245】
[実施例7]
前記工程(1−2)において、非晶性の重合体(H1)の代わりに、脂環式構造を含有する非晶性の重合体(H3)としてのノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ゼオノア1430」;ガラス転移温度140℃)を、表面層用の非晶性樹脂として用意した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0246】
[実施例8]
表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0247】
[実施例9]
表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。以上の事項以外は実施例4と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0248】
[比較例1]
前記工程(1−2)において、非晶性の重合体(H1)の代わりに、製造例1で製造した結晶性脂環構造重合体(K1)を、表面層用の樹脂として用意した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0249】
[比較例2]
前記工程(1−1)において、製造例1で製造した結晶性脂環構造重合体(K1)の代わりに、脂環式構造を含有する非晶性の重合体(H1)としてのノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ゼオノア1600」;ガラス転移温度160℃)を用いて、基材層用の樹脂を用意した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0250】
[比較例3]
前記工程(1−1)において、製造例1で製造した結晶性脂環構造重合体(K1)の代わりに、製造例2で製造した非晶性の重合体(H2)を用いて、基材層用の樹脂を用意した。
また、前記工程(1−2)において、非晶性の重合体(H1)の代わりに、製造例2で製造した非晶性の重合体(H2)を、表面層用の非晶性樹脂として用意した。
さらに、表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0251】
[比較例4]
前記工程(1−1)において、製造例1で製造した結晶性脂環構造重合体(K1)の代わりに、脂環式構造を含有する非晶性の重合体(H3)としてのノルボルネン系重合体(日本ゼオン社製「ゼオノア1430」;ガラス転移温度140℃)を用いて、基材層用の樹脂を用意した。
また、前記工程(1−2)において、非晶性の重合体(H1)の代わりに、脂環式構造を含有する非晶性の重合体(H3)としてのノルボルネン系重合体を、表面層用の樹脂として用意した。
さらに、表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0252】
[比較例5]
表1に示す厚みの層を有する光学積層体が得られるように、前記工程(1−3)での樹脂の押し出し時に、各樹脂の押出厚みを調整した。以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
以上の事項以外は実施例1と同様にして、長尺の光学積層体の製造及び評価を行った。
【0253】
[結果]
前記の実施例及び比較例の結果を、表1及び表2に示す。表1及び表2において、略称の意味は、下記の通りである。
UVA濃度:基材層における紫外線吸収剤の濃度。
Tg:ガラス転移温度。
Tc:結晶化温度。
P:面配向係数。
Re:レターデーション。
UV透過率:波長380nmにおける光線透過率。
【0254】
【表1】
【0255】
【表2】
【0256】
[検討]
比較例1の結果から分かるように、結晶性樹脂を表面層に含む光学積層体は、表面層が容易にデラミネーションを生じるので、剥離強度が小さい。また、比較例5の結果から分かるように、結晶性樹脂からなる基材層と非晶性樹脂からなる表面層とを組み合わせた光学積層体であっても、延伸適性に劣ることがあり得る。これに対し、実施例1〜9では、デラミネーションを生じ難く、結果として高い剥離強度が得られている上に、優れた延伸適性を有する。以上の結果から、本発明により、結晶性の重合体を含む樹脂からなる層を備え、デラミネーションを生じ難く、且つ、延伸工程を含む製造方法によって容易に製造できる光学積層体を提供できることが確認された。
【符号の説明】
【0257】
100 光学積層体
110 基材層
120 第一表面層
200 光学積層体
230 第二表面層
図1
図2