特許第6778092号(P6778092)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6778092
(24)【登録日】2020年10月13日
(45)【発行日】2020年10月28日
(54)【発明の名称】ウェーハの加工方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/301 20060101AFI20201019BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20201019BHJP
   B23K 26/53 20140101ALI20201019BHJP
【FI】
   H01L21/78 Q
   H01L21/78 B
   H01L21/78 V
   H01L21/304 631
   B23K26/53
【請求項の数】1
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-229962(P2016-229962)
(22)【出願日】2016年11月28日
(65)【公開番号】特開2018-88438(P2018-88438A)
(43)【公開日】2018年6月7日
【審査請求日】2019年9月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】特許業務法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】廣沢 俊一郎
【審査官】 宮久保 博幸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−173428(JP,A)
【文献】 特開2014−078556(JP,A)
【文献】 特開2016−171214(JP,A)
【文献】 特開2012−146840(JP,A)
【文献】 特開2016−054207(JP,A)
【文献】 特開2014−072476(JP,A)
【文献】 特開平06−275714(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/301
B23K 26/53
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一方向に伸長する複数の第一ストリートと該第一方向と直交する第二方向に伸長する複数の第二ストリートとを有し、該第一ストリートと該第二ストリートとで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成され、隣接する該第一ストリート間の第一距離よりも隣接する該第二ストリート間の第二距離の方が短いウェーハの加工方法であって、
該第一ストリートに沿ってウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射してウェーハの内部に第一改質層を形成するとともに該第二ストリートに沿ってウェーハに対して該レーザビームを照射してウェーハの内部に第二改質層を形成する改質層形成ステップと、
該改質層形成ステップを実施した後、ウェーハの裏面を研削してウェーハを所定厚みへ薄化するとともに該第一改質層と該第二改質層とを起点にウェーハを個々のチップへと分割する研削ステップと、を備え、
該改質層形成ステップでは、隣接するチップの該第一改質層が互いに該第二方向にずれて形成される、ウェーハの加工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、デバイスが形成されたウェーハの加工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のデバイスがストリートと呼ばれる分割予定ラインによって区画され表面に形成された半導体ウェーハ等の被加工物は、ストリートに沿って個々のデバイスチップに分割され、各種電子機器等に利用されている。
【0003】
ウェーハを個々のデバイスチップに分割する方法として、例えば、ウェーハにレーザビームを照射可能なレーザ加工装置とウェーハを研削砥石により研削可能な研削装置とを用いて実施するいわゆるSDBG(Stealth Dicing Before Grinding)と呼ばれる加工方法がある(例えば、特許文献1参照)。この加工方法は、レーザ加工と研削とを組み合わせた技術であり、まず、ウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームをストリートに沿って照射して、ウェーハ内部の所定深さの位置に改質層を形成する。その後、ウェーハの裏面を研削してウェーハを仕上がり厚みに薄化するとともに、改質層を分割起点として研削圧力によりウェーハの表面側に亀裂を伸長させることで、ウェーハを個々のデバイスチップに分割することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第03/077295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記特許文献1に記載されている加工方法では、分割によって形成される複数のチップが互いに近接しており、各チップの対角線方向において隣接する各チップのコーナー(角)間に間隔がないため、形成されたチップ同士が研削中に接触し、特に、チップのコーナー同士が擦れ合いコーナーに欠けが生じ易くなるという問題があった。そして、チップのコーナーが欠けると、この欠けを起点に発生したひびがデバイス表面に伸長し、デバイスが破損するという問題があった。
【0006】
したがって、レーザ加工と研削とを組み合わせたウェーハの加工方法においては、研削加工時において個々のチップの角に欠けを生じさせないようにしてウェーハを分割するという課題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明は、第一方向に伸長する複数の第一ストリートと該第一方向と直交する第二方向に伸長する複数の第二ストリートとを有し、該第一ストリートと該第二ストリートとで区画された各領域にそれぞれデバイスが形成され、隣接する該第一ストリート間の第一距離よりも隣接する該第二ストリート間の第二距離の方が短いウェーハの加工方法であって、該第一ストリートに沿ってウェーハに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射してウェーハの内部に第一改質層を形成するとともに該第二ストリートに沿ってウェーハに対して該レーザビームを照射してウェーハの内部に第二改質層を形成する改質層形成ステップと、該改質層形成ステップを実施した後、ウェーハの裏面を研削してウェーハを所定厚みへ薄化するとともに該第一改質層と該第二改質層とを起点にウェーハを個々のチップへと分割する研削ステップと、を備え、該改質層形成ステップでは、隣接するチップの該第一改質層が互いに該第二方向にずれて形成される、ウェーハの加工方法である。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るウェーハの加工方法は、改質層形成ステップにおいて第一改質層を形成する際に、隣接するチップ毎に第二方向にずらして非連続の第一改質層を形成する。よって対角線方向に隣接する各チップの角部分に間隔を形成することができ、研削ステップにおいて各チップの角同士が擦れ合ってしまうことを抑止し、チップの角部分に欠けを生じさせないようにすることが可能となる。
【0009】
また、本発明に係るウェーハの加工方法においては、ストリート間隔が狭く本数の多い第二ストリートには連続した第二改質層を形成し、よりストリート間隔が広く本数の少ない第一ストリートには非連続の第一改質層を形成する。そのため、レーザ加工制御がより複雑となり加工に時間がかかる非連続の第一改質層を形成するための工程が、第二ストリートよりストリート本数が少ない第一ストリートに沿って行われるため、第二ストリートに沿って非連続の改質層を形成する場合に比べて効率よくウェーハの加工を行っていくことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】隣接する第一ストリート間の第一距離よりも隣接する第二ストリート間の第二距離の方が狭く設定されたウェーハの表面に保護テープを貼着する状態を示す斜視図である。
図2】レーザ加工装置を用いて第二ストリートに沿ってウェーハに対してレーザビームを照射してウェーハの内部に第二改質層を形成している状態を示す断面図である。
図3】ウェーハの内部に第二ストリートに沿って連続的に直線状に延びる第二改質層が形成される状態を、ウェーハの上方から見た場合の説明図である。
図4】ウェーハの内部に第一ストリートに沿って非連続的に延びる第一改質層が形成される状態を、ウェーハの上方から見た場合の説明図である。
図5】先に形成された第一改質層に対して第二方向にずれて第一ストリートに沿って非連続的に延びる第一改質層が形成される状態を、ウェーハの上方から見た場合の説明図である。
図6】ウェーハの裏面を研削してウェーハを所定厚みへ薄化するとともに第一改質層と第二改質層とを起点にウェーハを個々のチップへと分割する状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1に示すウェーハWは、例えば、円盤状の外形を有する半導体ウェーハであり、ウェーハWの表面Wa上には、第一方向(図1においては、X軸方向)に伸長する複数の第一ストリートS1と、第一方向と水平面において直交する第二方向(図1においては、Y軸方向)に伸長する複数の第二ストリートS2とが配列されている。一本の第一ストリートS1とその隣に位置する別のもう一本の第一ストリートS1との間の距離(各第一ストリートS1の中心線間の距離)は、第一距離L1で等間隔となっており、また、一本の第二ストリートS2とその隣に位置する別のもう一本の第二ストリートS2との間の距離(各第二ストリートS2の中心線間の距離)も、第二距離L2で等間隔となっている。そして、隣接する各第一ストリートS1間の第一距離L1よりも隣接する各第二ストリートS2間の第二距離L2の方が狭く設定されており、第一ストリートS1と第二ストリートS2とで区画された長方形状の各領域には、IC等のデバイスDがそれぞれ形成されている。例えば、デバイスDは、各領域の形状に対応して長方形状に形成されている。
【0012】
ウェーハWは、第一ストリートS1及び第二ストリートS2に沿ってデバイスDを備える各チップに分割されるにあたり、例えば、図2に示すレーザ加工装置1によって分割起点となる改質層がウェーハWの内部に形成される。そのために、図1に示す保護テープTが表面Waに貼着された状態になる。
【0013】
保護テープTは、例えば、ウェーハWの外径と同程度の外径を有する円盤状のフィルムであり、粘着力のある粘着面Taを備えている。例えば、粘着面Taには、紫外線を照射すると硬化して粘着力が低下するアクリル系ベース樹脂等からなるUV硬化糊が用いられている。ウェーハWの表面Waに保護テープTの貼着面Taが貼着されることで、ウェーハWの表面Waは保護テープTによって保護された状態になる。
【0014】
以下に、本発明に係るウェーハの加工方法を実施してウェーハWを個々のデバイスチップに分割する場合の各ステップについて説明していく。
【0015】
(1)改質層形成ステップ
図2に示すレーザ加工装置1は、例えば、ウェーハWを吸引保持するチャックテーブル10と、チャックテーブル10に保持されたウェーハWに対してレーザビームを照射するレーザビーム照射手段11と、を少なくとも備えている。チャックテーブル10は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなる保持面10a上でウェーハWを吸引保持する。チャックテーブル10は、鉛直方向(Z軸方向)の軸心周りに回転可能であるとともに、加工送り手段12によって、X軸方向に往復移動可能となっている。
【0016】
レーザビーム照射手段11は、例えば、ウェーハWに対して透過性を有する所定の波長のレーザビームを発振できるレーザビーム発振器110(例えば、YAGレーザやYVO4レーザ)を備えており、レーザビーム発振器110は、光ファイバー等の伝送光学系を介して集光器111に接続されている。そして、レーザビーム照射手段11は、レーザビーム発振器110から発振されたレーザビームを集光器111の内部の集光レンズ111aに入光させることで、レーザビームをウェーハWの内部に集光することができる。レーザ加工装置1は、レーザビーム発振器110によるレーザビームの照射のONとOFFとの切り替えを行うON/OFF切り替え手段119を備えている。
【0017】
レーザビーム照射手段11の近傍には、図1に示すウェーハWの第一ストリートS1及び第二ストリートS2を検出するアライメント手段14が配設されている。アライメント手段14は、赤外線を照射する図示しない赤外線照射手段と、赤外線を捕らえる光学系および赤外線に対応した電気信号を出力する撮像素子(赤外線CCD)等で構成された赤外線カメラ140とを備えており、赤外線カメラ140により取得した画像に基づき、パターンマッチング等の画像処理によってウェーハWの表面Waの第一ストリートS1及び第二ストリートS2を検出することができる。レーザビーム照射手段11はアライメント手段14と一体となって構成されており、両者は連動してY軸方向及びZ軸方向へと移動する。チャックテーブル10、レーザビーム照射手段11、加工送り手段12及びアライメント手段14は、CPUとメモリ等の記憶素子とから構成されレーザ加工装置1全体の制御を行う図示しない制御手段に接続されており、この制御手段は、オペレータが制御手段に入力した加工条件等に基づいて、上述した各構成の動作を制御する。
【0018】
本実施形態においては、例えば、まず、図2に示すレーザ加工装置1を用いて第二ストリートS2に沿ってレーザビームを照射してウェーハWの内部に第二改質層を形成し、続いて、第一ストリートS1に沿ってレーザビームを照射して第一改質層を形成する。第二改質層は、第二ストリートS2の中央に連続的に直線状に形成するが、第一改質層は、第一ストリートS1の中央から両側にずれた位置に交互に非連続に形成する。かかる加工を行うために、第二改質層及び第一改質層の形成前に、レーザ加工装置1に備える図示しない制御手段に対して加工条件を設定する。あらかじめ設定しておく加工条件としては、ウェーハWの加工送り速度、第一ストリートS1及び第二ストリートS2の加工開始位置、第一距離L1及び第二距離L2の値等がある。ウェーハWの加工送り速度は、オペレータによってレーザ加工装置1に備えた図示しない入力手段から入力される。第一ストリートS1及び第二ストリートS2の加工開始位置は、アライメント手段14によって検出される。第一距離L1及び第二距離L2の値は既知であるため、オペレータによってその値がレーザ加工装置1に備えた図示しない入力手段から入力される。また、第一ストリートS1に形成する第一改質層を非連続とするために、ON/OFF切り替え手段119により切り替えられるON時間及びOFF時間を決定して制御手段に設定する。かかるON時間及びOFF時間は、第二距離L2の値及びウェーハWの加工送り速度の値等に基づいて図示しない制御手段が演算処理を行うことによって算出される。ON時間とOFF時間とは等しく、それぞれの時間は、第二距離L2分だけチャックテーブル10がX軸方向に移動するのに掛かる時間であり、ONとOFFとを交互に繰り返すように設定される。
【0019】
まず、図2に示すレーザ加工装置1のチャックテーブル10の保持面10aとウェーハWの保護テープTにより保護されている表面Wa側とが対向するように位置合わせを行い、ウェーハWを裏面Wb側を上側にしてチャックテーブル10上に載置する。そして、チャックテーブル10に接続された図示しない吸引源が作動しウェーハWをチャックテーブル10上に吸引保持する。
【0020】
次いで、ウェーハWの第一ストリートS1がX軸方向に対して平行になるように、ウェーハWを保持するチャックテーブル10がZ軸方向の軸心周りに回転してその向きが調整される。そして、加工送り手段12により、チャックテーブル10に保持されたウェーハWが−X方向(往方向)に送られるとともに、アライメント手段14により第一ストリートS1が検出される。ここで、第一ストリートS1が形成されているウェーハWの表面Waは下側に位置し、アライメント手段14と直接対向してはいないが、赤外線カメラ140によりウェーハWの裏面Wb側から透過させて第一ストリートS1を撮像することができる。赤外線カメラ140によって撮像された第一ストリートS1の画像により、アライメント手段14がパターンマッチング等の画像処理を実行し、最初にレーザビームを照射すべき第一ストリートS1の位置、例えば図1における最も−Y側の第一ストリートS1が検出される。そして、検出された第一ストリートS1のY座標の値が制御手段に記憶される。
【0021】
次いで、ウェーハWの第二ストリートS2がX軸方向に対して平行になるように、ウェーハWを保持するチャックテーブル10がZ軸方向の軸心周りに回転する。そして、アライメント手段14により第二ストリートS2が検出される。例えば、図1における最も−X側の第二ストリートS2が検出される。
【0022】
第二ストリートS2が検出されるのに伴って、レーザビーム照射手段11がY軸方向に駆動され、レーザビームを照射する第二ストリートS2と集光器111とのY軸方向における位置合わせがなされる。この位置合わせは、例えば、集光器111に備える集光レンズ111aの直下に第二ストリートS2の中心線が位置するように行われる。
【0023】
次いで、集光器111でウェーハWに対して透過性を有するレーザビームの集光点を第二ストリートS2に対応するウェーハWの内部の所定の高さ位置に位置付けた状態でレーザビーム発振器110から発振され集光レンズ111aで集光されたレーザビームを第二ストリートS2に沿って照射しつつ、ウェーハWを−X方向に所定の加工送り速度で加工送りし、図2に示すようにウェーハWの内部に第二改質層M2を形成していく。第二改質層M2のウェーハWの厚み方向(Z軸方向)における形成位置は、例えば、ウェーハWの表面Waからデバイスチップの仕上がり厚さ分だけ上方の位置よりも上の位置となる。また、第二改質層M2は、ウェーハWの第二方向(図1におけるY軸方向)に延在する第二ストリートS2の中心線と重なるように形成されていく。
【0024】
ウェーハWの内部に第二ストリートS2の中心線に沿って第二改質層M2を連続的に形成し、例えば、一本の第二ストリートS2にレーザビームを照射し終えるX軸方向の所定の位置までウェーハWが−X方向に進行すると、図3において破線で示すように、ウェーハWの内部に、第二ストリートS2に沿って第二ストリートS2の一端から他端まで各第一ストリートS1を横断するように直線状に連続的に延びる第二改質層M2が形成される。
【0025】
次いで、レーザビームの照射を停止するとともにウェーハWの−X方向(往方向)での加工送りを一度停止させ、レーザビーム照射手段11を+Y方向へ移動させて、レーザビームが照射された第二ストリートS2の隣に位置しレーザビームがまだ照射されていない第二ストリートS2と集光器111とのY軸方向における位置合わせを行う。次いで、加工送り手段12が、ウェーハWを+X方向(復方向)へ加工送りし、往方向でのレーザビームの照射と同様に第二ストリートS2にレーザビームが照射されていく。順次同様のレーザビームの照射を行うことにより、X軸方向に延びる全ての第二ストリートS2に沿ってレーザビームがウェーハWの裏面Wb側から照射され、ウェーハW内部に分割起点となる第二改質層M2が形成されていく。
【0026】
次に、第一ストリートS1に沿ってウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射してウェーハWの内部に第一方向に延びる第一改質層を形成する
【0027】
まず、図2に示すウェーハWの第一ストリートS1がX軸方向に対して平行になるように、ウェーハWを保持するチャックテーブル10がZ軸方向の軸心周りに回転する。そして、加工送り手段12により、チャックテーブル10に保持されたウェーハWが−X方向(往方向)に送られる。
【0028】
次いで、集光器111のY軸方向の位置を、最初にレーザビームを照射しようとする図4に示す第一ストリートS11に合わせる。この位置合わせは、例えば、集光器111に備える集光レンズ111aの直下位置が、第一ストリートS11の中心線から所定の距離だけ−Y方向にずれるように行われる。
【0029】
次いで、集光器111でウェーハWに対して透過性を有するレーザビームの集光点を第一ストリートS11に対応するウェーハWの内部の所定の高さ位置に位置付けた状態で、レーザビーム発振器110から発振され集光レンズ111aで集光されたレーザビームを第一ストリートS11に沿って照射しつつ、ウェーハWを−X方向に所定の加工送り速度で加工送りし、ウェーハWの内部に図4において一点鎖線で示す第一改質層M11を形成していく。第一改質層M11の形成位置は、例えば、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)においては、ウェーハWの表面Waからデバイスチップの仕上がり厚さ分だけ上方の位置よりも上の位置となり、また、ウェーハWの第二方向においては、第一ストリートS11の中心線から所定距離だけ−Y方向側にずれた位置となる。
【0030】
例えば、ウェーハWが第二距離L2分だけ加工送りされ、制御手段が決定したレーザビーム発振器110のON時間が経過して図4に示す第二改質層M21から第一方向に第二距離L2だけ隔てて形成されている第二改質層M22まで第一改質層M11が直線状に延びるように形成されると、制御手段が決定したレーザビーム発振器110のON時間が経過したとして、ON/OFF切り替え手段119がレーザビームの照射をOFFに切り替える。そうすると、ウェーハWが−X方向へ所定の加工送り速度で加工送りされる状態が維持されるが、レーザビームの照射は停止するため、第一ストリートS11のうち第二改質層M22から第二改質層M23までの間には、ウェーハWの内部にレーザビームが照射されず第一改質層が形成されない。
【0031】
ウェーハWが−X方向へ所定の加工送り速度でさらに第二距離L2分だけ加工送りされることで所定のOFF時間が経過すると、ON/OFF切り替え手段119がレーザビームの照射をONに切り替える。そのため、ウェーハWは−X方向へ所定の加工送り速度で加工送りされることで、ウェーハWの内部にレーザビームが照射され、第二改質層M23から第一方向に第二距離L2だけ隔てて形成されている図4に示す第二改質層M24までの間の第一ストリートS11に沿って、一点鎖線で示す第一改質層M11がウェーハWの内部に形成されていく。
【0032】
上記のように、ウェーハWの内部に第一ストリートS11に沿って第一改質層M11を所定の間隔だけ第一方向に離間するように非連続的に形成し、一本の第一ストリートS11にレーザビームを照射し終えるX軸方向の所定の位置までウェーハWが−X方向に進行する。次いで、レーザビームの照射を停止するとともにウェーハWの−X方向(往方向)での加工送りを一度停止させ、図2に示すレーザビーム照射手段11を+Y方向へ移動させて、レーザビームが照射された第一ストリートS11の隣に位置しレーザビームがまだ照射されていない図4に示す第一ストリートS12と集光器111とのY軸方向における位置合わせを行う。次いで、加工送り手段12が、ウェーハWを+X方向(復方向)へ加工送りし、往方向でのレーザビームの照射と同様に第一ストリートS12にレーザビームが照射されていく。順次同様のレーザビームの照射を行うことにより、X軸方向に延びる全ての第一ストリートS1に沿ってレーザビームがウェーハWの裏面Wb側から照射され、ウェーハW内部に分割起点となる第一改質層M11が各第一ストリートS1に沿って非連続で形成されていく。
【0033】
次に、第一改質層M11と互いに第二方向にずれ第一方向に延びる第一改質層を、第一ストリートS1に沿ってウェーハWに対して透過性を有する波長のレーザビームを照射してウェーハWの内部に形成していく。まず、図2に示す加工送り手段12により、チャックテーブル10に保持されたウェーハWが−X方向(往方向)に送られる。
【0034】
そして、レーザビームを照射する第一ストリートS11と集光器111とのY軸方向における位置合わせがなされる。この位置合わせは、例えば、集光器111に備える集光レンズ111aの直下位置が、第一ストリートS11の中心線から所定の距離だけ+Y方向にずれるように行われる。次いで、集光器111で所定波長のレーザビームの集光点を第一ストリートS11に対応するウェーハWの内部の所定の高さ位置に位置付ける。また、ウェーハWを−X方向に所定の加工送り速度で加工送りする。
【0035】
例えば、ON/OFF切り替え手段119がレーザビームの照射をOFFにすることで、ウェーハWは−X方向へ所定の加工送り速度で加工送りされても、図5に示す第一ストリートS11のうち第二改質層M21から第二改質層M22までの間には、ウェーハWの内部にレーザビームが照射されず、第一改質層M11と互いに第二方向にずれ第一方向に延びる第一改質層が形成されない。
【0036】
ウェーハWが−X方向へ所定の加工送り速度でさらに第二距離L2分だけ加工送りされることで所定のOFF時間が経過すると、ON/OFF切り替え手段119がレーザビームの照射をONに切り替える。そのため、ウェーハWは−X方向への所定の加工送り速度でさらに加工送りされることで、ウェーハWの内部にレーザビームが照射され、図5に示す第二改質層M22から第二改質層M23までの間の第一ストリートS11に沿って、二点鎖線で示す第一改質層M12がウェーハWの内部に形成されていく。第一改質層M12の形成位置は、例えば、ウェーハWの厚み方向(Z軸方向)においては、ウェーハWの表面Waからデバイスチップの仕上がり厚さ分だけ上方の位置よりも上の位置となり、また、ウェーハWの第二方向においては、第一ストリートS11の中心線から所定距離だけ+Y方向側にずれた位置となる。そのため、第一改質層M12は第一改質層M11に対して第二方向にずれて形成されていく。
【0037】
例えば、ウェーハWが第二距離L2分だけ加工送りされ、図5に示す第二改質層M22から第二改質層M23まで第一改質層M12が直線状に延びるように形成されると、ON/OFF切り替え手段119がレーザビームの照射をOFFに切り替える。ウェーハWが−X方向へ所定の加工送り速度で加工送りされる状態が維持されるが、第二改質層M23から第二改質層M24までの間には、ウェーハWの内部にレーザビームが照射されず、第一改質層M11と互いに第二方向にずれ第一方向に延びる第一改質層が形成されない。
【0038】
上記のように、ウェーハWの内部に第一ストリートS11に沿って第一改質層M12を所定の間隔だけ第一方向に離間するように非連続的に形成し、一本の第一ストリートS11にレーザビームを照射し終えるX軸方向の所定の位置までウェーハWが−X方向に進行する。次いで、レーザビームの照射を停止するとともにウェーハWの−X方向(往方向)での加工送りを一度停止させ、レーザビーム照射手段11が+Y方向へ移動して、レーザビームが照射された第一ストリートS11の隣に位置しレーザビームがまだ照射されていない第一ストリートS12と集光器111とのY軸方向における位置合わせを行う。次いで、加工送り手段12が、ウェーハWを+X方向(復方向)へ加工送りし、往方向でのレーザビームの照射と同様に第一ストリートS12にレーザビームが照射されていく。順次同様のレーザビームの照射を行うことにより、X軸方向に延びる全ての第一ストリートS1に沿ってレーザビームがウェーハWの裏面Wb側から照射され、第一改質層M11と互いに第二方向にずれ第一方向に延びる第一改質層M12が、各第一ストリートS1に沿ってウェーハWの内部に非連続で形成されていく。第一改質層M12は、第一改質層M11の形成時にレーザをOFFとしたX座標位置に形成される。したがって、それぞれの第一ストリートS11,S12,・・・には、第一改質層M11と第二改質層M12とが第一方向に交互に形成され、隣接するチップ間で第一改質層M11と第二改質層M12とが互いに第二方向にずれて形成される。
【0039】
(2)研削ステップ
改質層形成ステップが完了した後、ウェーハWの裏面Wbを研削してウェーハWを所定厚みへ薄化するとともに図5に示す第一改質層M11及び第一改質層M12並びに第二改質層M2を起点として、ウェーハWを図5に示す個々のチップCへと分割する研削ステップを実施する。
【0040】
図6に示す研削装置2は、例えば、ウェーハWを吸引保持する保持テーブル20と、保持テーブル20に保持されたウェーハWを研削加工する研削手段21とを少なくとも備えている。保持テーブル20は、例えば、その外形が円形状であり、ポーラス部材等からなる保持面20a上でウェーハWを吸引保持する。保持テーブル20は、鉛直方向の軸心周りに回転可能であるとともに、Y軸方向送り手段23によって、Y軸方向に往復移動可能となっている。
【0041】
研削手段21は、研削手段21を保持テーブル20に対して離間又は接近するZ軸方向に研削送りする研削送り手段22によって上下動可能となっている。研削送り手段22は、例えば、モータ等によって動作するボールネジ機構である。研削手段21は、軸方向が鉛直方向(Z軸方向)である回転軸210と、回転軸210を回転駆動するモータ212と、回転軸210の下端に接続された円環状のマウント213と、マウント213の下面に着脱可能に接続された研削ホイール214とを備える。
【0042】
研削ホイール214は、ホイール基台214aと、ホイール基台214aの底面に環状に配設された略直方体形状の複数の研削砥石214bとを備える。研削砥石214bは、例えば、レジンボンドやメタルボンド等でダイヤモンド砥粒等が固着されて成形されている。なお、研削砥石214bの形状は、環状に一体に形成されているものでもよい。
【0043】
例えば、回転軸210の内部には、研削水供給源に連通し研削水の通り道となる図示しない流路が、回転軸210の軸方向(Z軸方向)に貫通して形成されており、流路はマウント213を通り、ホイール基台214aの底面において研削砥石214bに向かって研削水を噴出できるように開口している。
【0044】
研削ステップにおいては、まず、保持テーブル20の中心とウェーハWの中心とが略合致するようにして、ウェーハWが、裏面Wb側を上に向けた状態で保持面20a上に載置される。そして、図示しない吸引源により生み出される吸引力が保持面20aに伝達されることにより、保持テーブル20がウェーハWを吸引保持する。
【0045】
次いで、ウェーハWを保持した保持テーブル20が、研削手段21の下まで+Y方向へ移動して、研削手段21に備える研削ホイール214とウェーハWとの位置合わせがなされる。位置合わせは、例えば、図6に示すように、研削ホイール214の回転中心が保持テーブル20の回転中心に対して所定の距離だけ+Y方向にずれ、研削砥石214bの回転軌道が保持テーブル20の回転中心を通るように行われる。
【0046】
研削手段21に備える研削ホイール214とウェーハWとの位置合わせが行われた後、回転軸210が+Z方向側から見て反時計回り方向に回転駆動されるのに伴って研削ホイール214が回転する。また、研削手段21が研削送り手段22により−Z方向へと送られ、回転する研削ホイール214の研削砥石214bがウェーハWの裏面Wbに当接することで研削加工が行われる。研削中は、保持テーブル20が+Z方向側から見て反時計回り方向に回転するのに伴って、保持面20a上に保持されたウェーハWも回転するので、研削砥石214bがウェーハWの裏面Wbの全面の研削加工を行う。また、研削加工中においては、研削水を回転軸210中の流路を通して研削砥石214bとウェーハWとの接触部位に対して供給して、研削砥石214bとウェーハWの裏面Wbとの接触部位を冷却・洗浄する。
【0047】
研削を続行すると、図5に示す第一改質層M11及び第一改質層M12並びに第二改質層M2に沿って研削圧力が作用することで亀裂がウェーハWの表面Waに向かって伸長し、ウェーハWは、図5に示す長方形状の個々のチップCに分割される。そして、分割後も研削を続行し、ウェーハWが仕上げ厚みに形成されると、研削送り手段22が研削手段21を+Z方向に上昇させ、研削を終了する。
【0048】
本発明に係るウェーハの加工方法は、改質層形成ステップにおいて第一改質層を形成する際に、図5に示すように、デバイスDを備える隣接するチップC毎に第二方向にずらして非連続の第一改質層M11及び第一改質層M12を形成する。よって対角線方向に隣接する各チップCの角Cd部分に間隔を形成することができ、研削ステップにおけるウェーハWの分割の際及び分割後に、各チップCの角Cd同士が擦れ合うことを抑止し、チップCの角Cdに欠けを生じさせないようにすることが可能となる。
【0049】
また、本発明に係るウェーハの加工方法においては、隣接するストリートの間隔が短く本数の多い第二方向に延在する第二ストリートS2には連続した第二改質層M2を形成し、よりストリート間隔が長く本数の少ない第一方向に延在する第一ストリートS1には、非連続の第一改質層M11及び第一改質層M12を互いにずれるように形成する。そのため、レーザ加工制御がより複雑となり加工に時間がかかる非連続の第一改質層M11及び第一改質層M12を形成するため工程が、ストリート本数がより少ない第一ストリートS1において行われるため、第二ストリートS2において非連続の改質層を形成する場合に比べて効率よくウェーハWの加工を行っていくことが可能となる。
【0050】
なお、本発明に係るウェーハの加工方法は上記実施形態に限定されるものではなく、また、添付図面に図示されているレーザ加工装置1及び研削装置2の構成等についても、これに限定されず、本発明の効果を発揮できる範囲内で適宜変更可能である。
【0051】
例えば、改質層形成ステップにおいて、最初に、第一ストリートS1に沿ってウェーハWに対してレーザビームを照射してウェーハWの内部に第一改質層M11及び第一改質層M12を形成し、その後、第二ストリートS2に沿ってウェーハWに対してレーザビームを照射してウェーハWの内部に第二改質層M2を形成するものとしてもよい。
【符号の説明】
【0052】
W:ウェーハ Wa:ウェーハの表面 Wb:ウェーハの裏面 S1:第一ストリート S2:第二ストリート D:デバイス M11、M12:第一改質層 M2:第二改質層
T:保護テープ Ta:保護テープの粘着面
1:レーザ加工装置 10:チャックテーブル 10a:チャックテーブルの保持面
11:レーザビーム照射手段 110:レーザビーム発振器 111:集光器
111a:集光レンズ 119:ON/OFF切り替え手段
12:加工送り手段 14:アライメント手段 140:赤外線カメラ
2:研削装置 20:保持テーブル 20a:保持テーブルの保持面
23:Y軸方向送り手段
21:研削手段 210:回転軸 212:モータ 213:マウント
214:研削ホイール 214a:ホイール基台 214b:研削砥石
図1
図2
図3
図4
図5
図6