(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記血管指標値算出部は、前記複数波長の画像毎に血管指標値を算出し、算出した血管指標値に対して、それぞれ重み付して加算することにより、前記測定対象血管の血管指標値を算出し、
前記血管指標値に対する重み付け係数は、前記血管指標値の算出に用いた画像が有する波長成分に基づいて設定される請求項3記載の画像処理装置。
前記複数の血管指標値変動要因の中から、前記血管指標値変動要因測定部で測定する特定の血管指標値変動要因を選択する血管指標値変動要因選択部を有する請求項1ないし4いずれか1項記載の画像処理装置。
前記血管深さ算出部の算出結果を表示部に表示するための血管深さ測定画像を生成する血管深さ測定画像生成部を有する請求項1ないし5いずれか1項記載の画像処理装置。
前記血管指標値は、血管コントラスト、血管部の輝度値、又は血管部の色情報のうち少なくとも1以上を組み合わせて得られる値である請求項1ないし6いずれか1項記載の画像処理装置。
前記血管指標値変動要因は、血管太さ、酸素飽和度、血管密度、撮影距離、撮影角度、黄色色素濃度、及び粘膜の散乱係数のうち1以上を組み合わせて得られる値である請求項1ないし7いずれか1項記載の画像処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[第1実施形態]
図1に示すように、第1実施形態の内視鏡システム10は、内視鏡12と、光源装置14と、プロセッサ装置16(本発明の「画像処理装置」、「内視鏡用プロセッサ装置」に対応する)、モニタ18(本発明の「表示部」に対応する)と、コンソール20とを有する。内視鏡12は、光源装置14と光学的に接続されるとともに、プロセッサ装置16と電気的に接続される。内視鏡12は、被検体内に挿入される挿入部21と、挿入部21の基端部分に設けられた操作部22と、挿入部21の先端側に設けられた湾曲部23及び先端部24を有している。操作部22のアングルノブ22aを操作することにより、湾曲部23は湾曲動作する。この湾曲動作にともなって、先端部24が所望の方向に向けることができる。
【0018】
また、操作部22には、アングルノブ22aの他、観察モード切替SW22bと、ズーム操作部22cと、静止画像を保存するためのフリーズボタン(図示しない)と、が設けられている。モード切替SW22bは、通常観察モードと、酸素飽和度モードと、血管太さ測定モードと、血管深さ測定モードとの4種類のモード間の切り替え操作に用いられる。
【0019】
通常観察モードは、被検体内の観察対象をフルカラー画像化した通常光画像をモニタ18に表示するモードである。酸素飽和度モードは、観察対象の血中ヘモグロビンの酸素飽和度を画像化した酸素飽和度画像をモニタ18に表示するモードである。血管太さ測定モードは、観察対象の血管の太さを測定し、測定結果をモニタ18に表示するモードである。血管太さ測定モードは、観察対象の血管の深さを測定し、測定結果をモニタ18に表示するモードである。ズーム操作部22cは、内視鏡12内のズームレンズ47(
図2参照)を駆動させて、観察対象を拡大させるズーム操作に用いられる。
【0020】
プロセッサ装置16は、モニタ18及びコンソール20と電気的に接続される。モニタ18は、通常光画像や酸素飽和度画像等の画像、及びこれらの画像に関する情報(以下、画像情報等という)を表示する。コンソール20は、機能設定等の入力操作を受け付けるUI(User Interface:ユーザインタフェース)として機能する。なお、プロセッサ装置16には、画像情報等を記録する記録部(図示省略)を接続しても良い。
【0021】
図2に示すように、光源装置14は、中心波長473nmの第1青色レーザ光を発する第1青色レーザ光源(473LD(Laser Diode:レーザダイオード))34と、中心波長445nmの第2青色レーザ光を発する第2青色レーザ光源(445LD)36と、中心波長405nmの紫色レーザ光を発する紫色レーザ光源(405LD)38と、を発光源として備えている。これらの半導体発光素子からなる各光源34,36,38の発光量及び発光タイミングは、光源制御部40により個別に制御される。
【0022】
なお、第1,第2青色レーザ光及び紫色レーザ光の半値幅は±10nm程度にすることが好ましい。また、第1、第2青色レーザ光及び紫色レーザ光の中心波長は、上記で示した中心波長に対して±5〜10nmの範囲に入ることが好ましい。また、第1、第2青色レーザ光及び紫色レーザ光の中心波長は、ピーク波長と同じであってもよく異なってもよい。また、第1青色レーザ光源34、第2青色レーザ光源36、及び紫色レーザ光源38は、ブロードエリア型のInGaN系レーザダイオードが利用でき、また、InGaNAs系レーザダイオードやGaNAs系レーザダイオードを用いることもできる。また、上記光源として、発光ダイオード等の発光体を用いた構成としても良い。
【0023】
光源制御部40は、通常観察モード及び血管太さ測定モードの場合には、第2青色レーザ光源36のみを点灯する制御を行う。また、酸素飽和度モード及び血管深さ測定モードの場合には、光源制御部40は、1フレーム間隔で、第1青色レーザ光源34と第2青色レーザ光源36を交互に点灯させる制御を行う。なお、通常観察モード、酸素飽和度モード、血管太さ測定モード、及び血管深さ測定モードのいずれのモードにおいても、第2青色レーザ光源36を点灯した時には、紫色レーザ光源38も同時に点灯する制御を行ってもよい。
【0024】
各光源34,36,38から出射される第1,第2青色レーザ光及び紫色レーザ光は、集光レンズ、光ファイバ、合波器等の光学部材(いずれも図示せず)を介してライトガイド41に入射する。ライトガイド41は、光源装置14と内視鏡12を接続するユニバーサルコード17(
図1参照)と、内視鏡12に内蔵されている。ライトガイド41は、各光源34,36,38からの第1,第2青色レーザ光及び紫色レーザ光を、内視鏡12の先端部24まで伝搬する。なお、ライトガイド41としては、マルチモードファイバを使用することができる。一例として、コア径105μm、クラッド径125μm、外皮となる保護層を含めた径がφ0.3〜0.5mmの細径なファイバケーブルを使用することができる。
【0025】
内視鏡12の先端部24は、照明光学系24aと撮像光学系24bを有している。照明光学系24aには、蛍光体44と、照明レンズ45が設けられている。蛍光体44には、ライトガイド41から第1,第2青色レーザ光及び紫色レーザ光が入射する。蛍光体44は、第1または第2青色レーザ光が照射されることで蛍光を発する。また、一部の第1または第2青色レーザ光は、そのまま蛍光体44を透過する。これに対して、紫色レーザ光は、ほぼ全てが蛍光体44を透過する。蛍光体44を出射した光は、照明レンズ45を介して観察対象に照射される。
【0026】
観察対象に対して照射される光のスペクトルと発光タイミングは、モード毎に異なっている。通常観察モード及び血管太さ測定モードにおいては、第2青色レーザ光のみが蛍光体44に入射するため、
図3に示すように、第2青色レーザ光と、この第2青色レーザ光により蛍光体44から励起発光する緑色〜赤色の第2蛍光を含む第2白色光が観察対象に照射される。なお、第2青色レーザ光と同時に紫色レーザ光を発光した場合、紫色レーザ光は蛍光体44で吸収されずにそのまま透過するため、紫色レーザ光により蛍光が発光することはほとんどない。
【0027】
酸素飽和度モード及び血管深さモードにおいては、第1青色レーザ光と第2青色レーザ光が蛍光体44に交互に入射することにより、
図4に示すように、第1青色レーザ光と、この第1青色レーザ光により蛍光体44から励起発光する緑色〜赤色の第1蛍光を含む第1白色光と、第2白色光とが観察対象に交互に照射される。第1蛍光と第2蛍光は、波形(スペクトルの形状)がほぼ同じである。ただし、蛍光体44においては、第2青色レーザ光に対する吸収量は、第1青色レーザ光に対する吸収量よりも大きいため、同じ強度の第1及び第2青色レーザ光が蛍光体44に入射した場合、第2蛍光の波長全体の強度は第1蛍光の強度よりも大きくなっている。
【0028】
なお、蛍光体44は、第1及び第2青色レーザ光の一部を吸収して、緑色〜赤色に励起発光する複数種類の蛍光体(例えばYAG系蛍光体、あるいはBAM(BaMgAl
10O
17)等の蛍光体)を含んで構成されるものを使用することが好ましい。また、本実施形態のように、半導体発光素子を蛍光体44の励起光源として用いれば、高い発光効率で高強度の第1白色光及び第2白色光が得られる。また、各白色光の強度を容易に調整できる上に、色温度、色度の変化を小さく抑えることができる。
【0029】
内視鏡12の撮像光学系24bは、撮像レンズ46、ズームレンズ47、センサ48を有している(
図2参照)。観察対象からの反射光は、撮像レンズ46及びズームレンズ47を介してセンサ48に入射する。これにより、センサ48に観察対象の反射像が結像される。ズームレンズ47は、ズーム操作部22cを操作することでテレ端とワイド端との間を移動する。
【0030】
センサ48は、カラーの撮像素子であり、観察対象の反射像を撮像して画像信号を出力する。センサ48としては、例えばCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal-Oxide Semiconductor)イメージセンサを用いることができる。本実施形態では、センサ48はCCDイメージセンサである。また、センサ48は、撮像面に対して、Rカラーフィルタが設けられたR画素と、Gカラーフィルタが設けられたG画素と、Bカラーフィルタが設けられたB画素とを有している。これらRGBの各色の画素で光電変換をすることによってR,G,Bの三色の画像信号を出力する。
【0031】
図5に示すように、Bカラーフィルタは380〜560nmの分光透過率を有しており、Gカラーフィルタは450〜630nmの分光透過率を有しており、Rカラーフィルタ580〜760nmの分光透過率を有している。したがって、通常観察モード及び血管太さ測定モード時に第2白色光が観察対象に照射された場合には、B画素には第2青色レーザ光と第2蛍光の緑色成分の一部が入射し、G画素には第2蛍光の緑色成分の一部が入射し、R画素には第2蛍光の赤色成分が入射する。
【0032】
一方、酸素飽和度モード及び血管深さ測定モード時に第1白色光が観察対象に照射された場合には、B画素には第1青色レーザ光と第1蛍光の緑色成分の一部が入射し、G画素には第1蛍光の緑色成分の一部とGカラーフィルタによって減衰した第1青色レーザ光が入射し、R画素には第1蛍光の赤色成分が入射する。第1青色レーザ光は第1蛍光よりも発光強度が極めて大きいので、B画素から出力されるB画像信号の大部分は第1青色レーザ光の反射光成分で占められている。酸素飽和度モード及び血管深さ測定モード時に第2白色光が観察対象に照射されたときのRGB各画素での光入射成分は、通常観察モードの場合と同様である。
【0033】
センサ48としては、撮像面にC(シアン),M(マゼンタ),Y(イエロー)及びG(グリーン)の補色フィルタを備えた、いわゆる補色イメージセンサを用いても良い。センサ48として補色イメージセンサを用いる場合は、CMYGの四色の画像信号からRGBの三色の画像信号に色変換する色変換部を、内視鏡12、光源装置14またはプロセッサ装置16のいずれかに設けておけば良い。こうすれば補色イメージセンサを用いる場合でも、CMYGの4色の画像信号から色変換によってRGB3色の画像信号を得ることができる。
【0034】
撮像制御部49はセンサ48の撮像制御を行う。通常観察モード及び血管太さ測定モード時には、1フレームの期間(以下、単に1フレームという)毎に、第2白色光で照明された観察対象をセンサ48で撮像する。これにより、1フレーム毎に、センサ48は、R画素からRc画像信号を出力し、G画素からGc画像信号を出力し、B画素からBc画像信号を出力する。
【0035】
撮像制御部49は、酸素飽和度モード及び血管深さ測定モード時には、第1白色光と第2白色光の発光タイミングに同期して、センサ48が撮像を行うように制御する。具体的には、センサ48は、第1白色光のもとで観察対象を撮像して得た信号電荷を読み出して、R画素からR1画像信号を出力し、G画素からG1画像信号を出力し、B画素からB1画像信号を出力する。そして、第2白色光のもとで観察対象を撮像して得た信号電荷を2フレーム目の読出期間に読み出して、R画素からR2画像信号を出力し、G画素からG2画像信号を出力し、B画素からB2画像信号を出力する。
【0036】
図2に示すように、センサ48から出力される各色の画像信号は、CDS(correlated double sampling)/AGC(automatic gain control)回路50に送信される(
図2参照)。CDS/AGC回路50は、センサ48から出力されるアナログの画像信号に相関二重サンプリング(CDS)や自動利得制御(AGC)を行う。CDS/AGC回路50を経た画像信号は、A/D(Analog/Digital)変換器52によってデジタル画像信号に変換される。こうしてデジタル化された画像信号はプロセッサ装置16に入力される。
【0037】
プロセッサ装置16は、画像信号取得部54(本発明の「画像取得部」に対応する)と、画像信号取得部54はDSP(Digital Signal Processor)56と、ノイズ低減部58と、信号変換部59と、画像処理切替部60と、通常観察画像処理部62と、酸素飽和度測定部64(本発明の「血管指標値変動要因測定部」に対応する)と、酸素飽和度画像生成部65と、血管太さ測定部66と、血管太さ測定画像生成部67と、血管深さ測定部68(本発明の「血管指標値変動要因測定部」に対応する)と、血管深さ測定画像生成部69と、映像信号生成部70とを備えている。
【0038】
画像信号取得部54は、内視鏡12のセンサ48から出力される画像信号を取得する。DSP56は、取得した画像信号に対して、欠陥補正処理、オフセット処理、ゲイン補正処理、リニアマトリクス処理、ガンマ変換処理、デモザイク処理、YC変換処理等の各種信号処理を行う。欠陥補正処理では、センサ48の欠陥画素の信号が補正される。オフセット処理では、欠陥補正処理が施された画像信号から暗電流成分が除かれ、正確な零レベルが設定される。ゲイン補正処理は、オフセット処理後のRGB各画像信号に特定のゲインを乗じることにより各画像信号の信号レベルを整える。ゲイン補正処理後の各色の画像信号には、色再現性を高めるためのリニアマトリクス処理が施される。
【0039】
その後、ガンマ変換処理によって、各画像信号の明るさや彩度が整えられる。リニアマトリクス処理後の画像信号には、デモザイク処理(等方化処理,同時化処理とも言う)が施され、補間により各画素の不足した色の信号が生成される。デモザイク処理によって、全画素がRGB各色の信号を有するようになる。DSP59は、デモザイク処理後の各画像信号にYC変換処理を施し、YC変換処理によって生成された輝度信号Yと色差信号Cb,Crをノイズ低減部58に出力する。
【0040】
ノイズ低減部58は、DSP56でデモザイク処理等が施された画像信号に対して、例えば移動平均法やメディアンフィルタ法等によるノイズ低減処理を施す。ノイズが低減された画像信号は、信号変換部59に入力され、RGBの画像信号に再変換された後、画像処理切替部60に入力される。
【0041】
画像処理切替部60は、通常観察モードにセットされている場合には、信号変換部59を経た画像信号を通常観察画像処理部62に入力する。また、酸素飽和度モードに設定されている場合、画像処理切替部60は、信号変換部59を経た画像信号を酸素飽和度測定部64に入力する。また、血管太さ測定モードに設定されている場合には、画像処理切替部60は、信号変換部59を経た画像信号を血管太さ測定部66に入力する。また、血管深さ測定モードに設定されている場合には、画像処理切替部60は、信号変換部59を経た画像信号を血管深さ測定部に68に入力する。
【0042】
通常観察画像処理部62は、入力された1フレーム分のRc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号を、それぞれR画素、G画素、B画素に割り当てたRGB画像データを生成する。そして、RGB画像データに対して、さらに3×3のマトリックス処理、階調変換処理、3次元LUT処理等の色変換処理を施す。そして、色変換処理済みのRGB画像データに対して、各種色彩強調処理を施す。色彩強調処理済みのRGB画像データに対しては、空間周波数強調等の構造強調処理を施す。構造強調処理が施されたRGB画像データは、通常観察画像として映像信号生成部70に入力される。映像信号生成部70では、入力された通常観察画像を映像信号(例えば、輝度信号Yと色差信号Cb,Cr)に変換し、変換後の映像信号をモニタ18に出力する。これにより、モニタ18には通常観察画像が表示される。
【0043】
酸素飽和度測定部64は、入力された2フレーム分のB1画像信号、G1画像信号、R1画像信号、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号に基づいて、血中ヘモグロビンの酸素飽和度を測定する。測定した酸素飽和度に関する情報は、酸素飽和度画像生成部65に送られる。酸素飽和度画像生成部65では、酸素飽和度に応じて色付けした酸素飽和度画像を生成する。生成された酸素飽和度画像は映像信号生成部70に入力される。映像信号生成部70では、入力された酸素飽和度画像を映像信号に変換し、変換後の映像信号をモニタ18に出力する。これにより、モニタ18には酸素飽和度画像が表示される。なお、酸素飽和度測定部64及び酸素飽和度画像生成部65の詳細については後述する。
【0044】
血管太さ測定部66は、入力された1フレーム分のBc画像信号、Gc画像信号、Rc画像信号に基づいて、ユーザーが指定した血管の血管太さを測定する。ここで、血管の太さ(血管径)とは、血管と粘膜の境界線間の距離であり、例えば、血管のエッジから血管の中を通って血管の短手方向に沿って画素数を計数した値である。したがって、血管の太さは画素数であるが、画像を撮影した際の撮影距離やズーム倍率等が既知の場合には、必要に応じて「μm」等の長さの単位に換算可能である。
【0045】
血管太さ測定部66で測定した血管太さに関する情報と1フレーム分のBc画像信号、Gc画像信号、Rc画像信号は、血管太さ測定画像生成部67に送られる。血管太さ測定画像生成部67では、観察対象の画像に対して、血管太さに関する情報が重畳表示された血管太さ測定画像を生成する。生成された血管太さ測定画像は映像信号生成部70に入力される。映像信号生成部70では、入力された血管太さ測定画像を映像信号に変換し、変換後の映像信号をモニタ18に出力する。これにより、モニタ18には血管太さ測定画像が表示される。なお、血管太さ測定部66及び血管太さ測定画像生成部67の詳細については後述する。
【0046】
血管深さ測定部68は、入力された2フレーム分のB1画像信号、G1画像信号、R1画像信号、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号に基づいて、ユーザーが指定した血管の血管深さを測定する。測定した血管深さに関する情報とB2画像信号、G2画像信号、R2画像信号は、血管深さ測定画像生成部69に送られる。血管深さ測定画像生成部69では、観察対象の画像に対して、血管深さに関する情報が重畳表示された血管深さ測定画像を生成する。生成された血管深さ測定画像は映像信号生成部70に入力される。映像信号生成部70では、入力された血管深さ測定画像を映像信号に変換し、変換後の映像信号をモニタ18に出力する。これにより、モニタ18には血管深さ測定画像が表示される。なお、血管深さ測定部68及び血管深さ測定画像生成部69の詳細については後述する。
【0047】
図6に示すように、酸素飽和度測定部64は、信号比算出部81と、相関関係記憶部82と、酸素飽和度算出部83とを有する。信号比算出部81は、B1画像信号とG2画像信号の信号比B1/G2を画素毎に算出し、かつ、R2画像信号とG2画像信号の信号比R2/G2を画素毎に算出する。なお、信号比算出部81は、信号比B1/G2を算出する際に、B1画像信号,G1画像信号,R1画像信号を用いた画素間演算によって、B1画像信号から第1蛍光による信号値を除去して色の分離性を高める補正処理を施し、ほぼ第1青色レーザ光だけによる信号値に補正したB1画像信号を用いることが好ましい。
【0048】
相関関係記憶部82は、信号比算出部81が算出する信号比と、酸素飽和度との相関関係を記憶している。この相関関係は、
図7に示す二次元空間上に酸素飽和度の等値線を定義した2次元テーブルで記憶されている。信号比に対する等値線の位置及び形状は、光散乱の物理的なシミュレーションによって予め得られ、各等値線の間隔は血液量(
図7の横軸)に応じて変化する。この信号比と酸素飽和度との相関関係はlogスケールで記憶されている。
【0049】
上記相関関係は、
図8に示すように、酸化ヘモグロビン(グラフ90)や還元ヘモグロビン(グラフ91)の吸光特性や光散乱特性と密接に関連し合っている。例えば、第1青色レーザ光の中心波長473nmの近傍の波長範囲ように、酸化ヘモグロビンと還元ヘモグロビンの吸光係数の差が大きい波長範囲、すなわち血中ヘモグロビンの酸素飽和度に応じて吸光係数が変化する波長範囲では、酸素飽和度の情報を取り扱いやすい。しかしながら、473nmの光に対応する信号を含むB1画像信号は、酸素飽和度だけでなく、血液量にも依存度が高い。そこで、B1画像信号に加え、主として血液量に依存して変化する光に対応するG2画像信号と、B1画像信号とG2画像信号のリファレンス信号となるR2画像信号とから得られる信号比R2/G2を用いることで血液量に依存することなく、酸素飽和度を正確に求めることができる。
【0050】
酸素飽和度算出部83は、信号比算出部81で算出された信号比を用いることにより、画像信号に基づいて酸素飽和度を算出する。より具体的には、酸素飽和度算出部83は、相関関係記憶部82に記憶された相関関係を参照し、信号比算出部81で算出された信号比に対応する酸素飽和度を画素毎に算出する。例えば、特定画素における信号比B1/G2及び信号比R2/G2がそれぞれB1
*/G2
*及びR2
*/G2
*である場合、
図9に示すように、相関関係を参照すると、信号比B1
*/G2
*及び信号比R2
*/G2
*に対応する酸素飽和度は「60%」である。したがって、酸素飽和度算出部83は、この特定画素の酸素飽和度を「60%」と算出する。
【0051】
なお、信号比B1/G2及び信号比R2/G2が極めて大きくなったり、極めて小さくなったりすることはほとんどない。すなわち、信号比B1/G2や信号比R2/G2の値が、酸素飽和度0%の下限ライン93を上回ったり、反対に酸素飽和度100%の上限ライン94を下回ったりすることはほとんどない。但し、算出する酸素飽和度が下限ライン93を下回ってしまった場合には酸素飽和度算出部83は酸素飽和度を0%とし、上限ライン94を上回ってしまった場合には酸素飽和度を100%とする。また、信号比B1/G2及び信号比R2/G2に対応する点が下限ライン93と上限ライン94の間から外れた場合には、その画素における酸素飽和度の信頼度が低いことが分かるように表示をしたり、酸素飽和度を算出しないようにしても良い。
【0052】
酸素飽和度画像生成部65は、酸素飽和度算出部83で算出された酸素飽和度を用いて、酸素飽和度を色付けした酸素飽和度画像を生成する。具体的には、まず、酸素飽和度画像生成部65では、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づいて、通常観察画像と同様の生成方法で、ベース画像を生成する。そして、ベース画像に対して、ベース画像の色を酸素飽和度に応じて変更する色付け処理を施す。これにより、酸素飽和度画像が得られる。なお、色付け処理では、例えば、酸素飽和度が特定の閾値(例えば70%)を超える画素領域についてはベース画像の色を変更せず、酸素飽和度が特定の閾値を下回る画素領域については酸素飽和度に応じてベース画像の色を変更するようにすることが好ましい。
【0053】
また、上記とは別の方法で、酸素飽和度画像を生成してもよい。例えば、輝度信号Yと色差信号Cr、Cbで酸素飽和度画像を生成する場合には、輝度信号YについてはG2画像信号に応じて信号レベルを変えるとともに、色差信号Cr、Cbについては、酸素飽和度に応じて信号レベルを変えることが好ましい。例えば、酸素飽和度が高いときには、Crの信号レベルを「正」にし、Cbの信号レベルを「負」にする一方で、酸素飽和度が低い時には、Crの信号レベルを「負」にし、Cbの信号レベルを「正」にするように設定することが好ましい。この場合には、酸素飽和度画像では、高酸素領域が赤みを帯びて表示される一方、低酸素領域が青みを帯びて表示される。
【0054】
血管太さ測定部66は、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号に基づいて、特定の血管の血管太さを測定する。血管太さ測定部66では、血管太さの測定対象となる測定対象血管を指定するために、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号を測定対象血管指定部100に送信する(
図2参照)。測定対象血管指定部100では、
図10に示すように、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号に基づいて、測定対象血管を選択するための血管選択用画像102を生成し、モニタ18に表示する。血管選択用画像102は、血管とそれ以外の部分を区別する二値化処理等によって、血管を抽出した画像であることが好ましい。ユーザーは、コンソール20等の操作部材により血管選択用画像102上の選択ポインタ104を操作し、選択ポインタ104で測定対象血管TBを指定する。測定対象血管指定部100は、コンソール20等の操作部材で指定された測定対象血管TBに関する情報を、血管太さ測定部66に送信される。
【0055】
血管太さ測定部66は、測定対象血管が指定されたら、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号のうち、測定対象血管が存在する部分の画素を特定する。この特定した画素から、測定対象血管の血管太さを算出する。具体的には、特定した画素の画素数(例えば、
図10の場合であれば、画素数は「5画素」となる。)に対して、1画素あたりの平均的な大きさを掛け合わせることで、測定対象血管の血管太さが算出される。なお、血管太さは、観察対象と内視鏡の先端部24との間の観察距離によって影響を受けるため、1画素当たりの大きさは、観察距離に応じて決めておくことが好ましい。
【0056】
血管太さ測定画像生成部67は、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号に基づいて、通常観察画像と同様の生成方法で、ベース画像を生成する。そして、血管太さ測定画像生成部67は、ベース画像に対して、測定対象血管を強調表示するとともに、測定対象血管の血管太さを重畳表示する処理を行う。これにより、
図11に示すように、強調表示された測定対象血管TBと、測定対象血管TBの血管太さφxが表示された血管太さ測定画像110が得られる。
【0057】
図12に示すように、血管深さ測定部68は、血管コントラスト算出部96(本発明の「血管指標値算出部」に対応する)と、データセット記憶部97と、血管深さ算出部98とを備えている。この血管深さ算出部98においても、血管太さ測定部66と同様に、血管深さの測定対象となる測定対象血管の指定を行う。測定対象血管の指定は、上記と同様、測定対象血管指定部100によって行う。なお、測定対象血管指定部100では、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号に基づいて血管選択用画像を生成することが好ましい。
【0058】
血管コントラスト算出部96は、入力された画像信号のうち血管コントラスト用画像信号(本発明の「血管指標値用画像」に対応する)に基づいて、血管部分の画素値Ibと、粘膜など血管以外の部分の画素値Im(例えば、粘膜の画素値の平均値)を算出する。この血管コントラスト算出部96では、複数波長の画像信号(本発明の「複数波長の画像」に対応する)を含む血管コントラスト用画像信号を使用する。複数波長の画像信号は、それぞれが異なる波長成分を持つ複数の画像信号から構成され、本実施形態では、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に対応している。そして、血管コントラスト算出部96は、下記式により、血管コントラストCtを算出する。
式)Ct=−Log(Ib/Im)
なお、以下において、測定対象血管の血管コントラストCtを「Ct
*」とする。
【0059】
データセット記憶部97は、
図13に示すように、血管コントラストCtと、その血管コントラストCtが得られる場合の酸素飽和度、血管太さ、及び血管深さとを対応づけた測定用データで構成されるデータセット120を記憶している。
図13の場合であれば、測定用データは、酸素飽和度のレベル毎に分けて記憶されている。具体的には、酸素飽和度が100%の場合における測定用データについては、血管太さ測定可能範囲内で最小の血管太さφ1と血管深さ測定可能範囲内で一番浅い血管深さd1と、血管太さφ1と血管深さd1の場合に得られる血管コントラストCt(100、φ1、d1)とを対応付けた測定用データを記憶している。
【0060】
同様にして、最小の血管太さφ1に対する血管深さP2〜Pnの全ての組み合わせと、それらを組み合わせた場合に得られる血管コントラストCt(100、φ1、d2)〜Ct(100、φ1、dn)とを対応付けた測定用データも記憶している。また、酸素飽和度が100%の場合における血管太さφ2〜φmについても、上記と同様の対応付けが行われた測定用データを記憶している。更には、酸素飽和度が0%〜99%の場合においても、上記と同様の対応付けが行われた測定用データを記憶している。
【0061】
なお、血管コントラストCtと、酸素飽和度s、血管太さφ、及び血管深さdとの関係は、関数Ct=f(s、φ、d)で表すことができる。この関数Ct=f(s、φ、d)については、酸素飽和度sを特定値に固定した場合、血管深さdをX軸とし、血管太さφをY軸とし、血管コントラストCtをZ軸とする3次元空間上では、
図14に示すような平面130で表される。この
図14では、血管深さが深く且つ血管太さが細くなるほど、血管コントラストが低くなることが分かる。一方、血管深さが浅く且つ血管太さが太くなるほど、血管コントラストが高くなることが分かる。
【0062】
血管深さ算出部98は、血管コントラスト算出部96で算出した血管コントラストCt
*と、2フレーム分のB1画像信号、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号を用い、データセット記憶部97に記憶したデータセットを参照して、特定の血管の血管深さを算出する。
【0063】
血管深さ算出部98は、B1画像信号、G2画像信号、R2画像信号を酸素飽和度測定部64に送り、酸素飽和度測定部64で、測定対象血管の酸素飽和度s
*を測定する。測定した測定対象血管の酸素飽和度s
*の情報は、血管深さ算出部98に返される。また、血管深さ算出部98は、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号を血管太さ測定部66に送り、血管太さ測定部66で、測定対象血管の血管太さφ
*を測定する。
【0064】
測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*が得られたら、血管深さ算出部98は、データセット記憶部97に記憶したデータセットの中から、測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*に該当する測定用データを第1のサブデータセットとして絞り込む。例えば、測定対象血管の酸素飽和度s
*が100%で、血管太さφ
*がφ1の場合には、データセットの中から、酸素飽和度100%、血管太さφ1に該当する部分の測定用データが、第1のサブデータセットとして選択される(
図13参照)。
【0065】
第1のサブデータセットが絞り込まれたら、血管深さ算出部98は、第1のサブデータセットを参照して、血管コントラスト算出部96で算出した血管コントラストCt
*に対応する血管深さを算出する。この算出された血管深さが、測定対象血管の血管深さとなる。例えば、
図13に示す第1のサブデータセットに絞り込んだ場合には、第1のサブデータセットにおいて、血管コントラストCt
*に対応する血管深さは「d
*」となる。以上のように、血管コントラストだけでなく、酸素飽和度測定部64で測定した酸素飽和度や血管太さ測定部66で測定した血管太さと、血管コントラスト、酸素飽和度、血管太さ、及び血管深さとを対応付けた測定用データとを用いて、測定対象血管の血管深さを算出していることから、算出された血管深さの算出精度は、血管コントラストだけで算出を行った場合に比べて、高くなっている。
【0066】
なお、血管コントラストCtと酸素飽和度s、血管太さφ、及び血管深さdとの関係を、上記した3変数関数Ct=f(s、φ、d)で表した場合における血管深さの算出方法は、以下のようになる。まず、測定対象血管の酸素飽和度s
*が確定すると、関数Ct=f(s
*、φ、d)は、血管太さφと血管深さdについての2変数関数となる。この2変数関数を上記の3次元空間で表した場合には、
図14に示す平面130で表される。更に、血管太さφ
*が確定すると、関数Ct=f(s
*、φ
*、d)は、血管深さdについての1変数関数となる。
【0067】
この1変数関数については、
図15に示すように、上記2変数関数を表した平面130において血管太さφ
*の部分でX軸方向に沿って切断した場合の断面132に等しくなる。また、X軸を血管深さdとし、Y軸を血管コントラストCtする2次元平面で上記の1変数関数Ct=f(s
*、φ
*、d)を表した場合には、
図16に示すように、血管深さdが深くなるほど、血管コントラストCtが減少するような関数で表される。上記のように、1変数関数Ct=f(s
*、φ
*、d)にまで落とし込むことで、血管コントラストCt
*から、血管深さd
*を算出することが可能となる。
【0068】
血管深さ測定画像生成部69は、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づいて、通常観察画像と同様の生成方法で、ベース画像を生成する。そして、血管深さ測定画像生成部69は、ベース画像に対して、測定対象血管を強調表示するとともに、測定対象血管の血管深さを重畳表示する処理を行う。これにより、
図17に示すように、強調表示された測定対象血管TBと、測定対象血管TBの血管深さd
*が表示された血管深さ測定画像150が得られる。
【0069】
次に、本実施形態の内視鏡システム10による観察の流れを
図18のフローチャートに沿って説明する。まず、通常観察モードにおいて、ユーザーは観察対象の観察を行い、病変部の可能性がある部位の検出を行う。そして、病変部の可能性ある部位を発見した場合には、その部分の血管について血管深さを測定するために、モード切替SW22bを操作して、血管深さ測定モードに切り替える。
【0070】
血管深さ測定モードに切り替えられると、第1及び第2白色光がセンサ48の撮像フレームに同期して交互に観察対象に照射される。センサ48は1フレーム目にR1画像信号,G1画像信号,B1画像信号を出力し、2フレーム目にR2画像信号,G2画像信号,B2画像信号を出力する。これらの画像信号は、プロセッサ装置16の画像信号取得部54に取得され、各種信号処理が施される。
【0071】
そして、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づいて血管選択用画像102が生成され、モニタ18に表示される。ユーザーは、血管選択用画像102において病変部の可能性がある部分の血管を測定対象血管として選択する。測定対象血管が選択されると、血管コントラスト算出部96が、測定対象血管の血管コントラストCt
*を算出する。また、B1画像信号、G2画像信号、R2画像信号が酸素飽和度測定部64に送られ、酸素飽和度測定部64で測定対象血管の酸素飽和度s
*が測定される。また、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号が血管太さ測定部66に送られ、血管太さ測定部66で測定対象血管の血管太さφ
*が測定される。
【0072】
測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*を測定した後は、血管深さ算出部98が、データセット記憶部97に記憶したデータセットの中から、測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*に該当する測定用データを第1のサブデータセットとして絞り込む。第1のサブデータセットが絞り込まれたら、血管深さ算出部98は、第1のサブデータセットを参照して、測定対象血管の血管コントラストCt
*に対応する血管深さを測定対象血管の血管深さd
*として算出する。測定対象血管の血管深さd
*が算出されたら、測定対象血管の血管深さd
*の情報とR2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づいて、血管深さ測定画像を生成し、モニタ18に表示する。
【0073】
なお、上記実施形態において、血管コントラスト算出部96で、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に対して重み付けを行い、重み付けしたR2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づいて、測定対象血管の血管コントラストを算出してもよい。例えば、血管選択用画像102において、ユーザによる目視により、測定対象血管のおおよその血管深さ(目測の血管深さ)を測り、その目測の血管深さに応じた重み付けを行う。なお、重み付けの設定は、コンソール20等の操作部材により行う。
【0074】
ここで、目測の血管深さが浅い場合には、表層血管など浅い部分に位置する血管は短波長の画像信号に多く含まれることから、短波長の画像信号に含まれるB2画像信号に対する重み付けを、その他のG2画像信号、R2画像信号に対する重み付けよりも大きくする。一方、目測の血管深さが深い場合には、中深層血管などの深い部分に位置する血管は、長波長の画像信号に多く含まれることから、長波長の画像信号に含まれるG2画像信号に対する重み付けを、その他のB2画像信号、R2画像信号に対する重み付けよりも大きくする。以上のように、測定対象血管が含まれる波長帯域の画像信号の重み付けを大きくすることで、測定対象血管の血管コントラストの算出精度を向上することができる。この血管コントラストの算出精度向上は、血管深さの算出精度の向上にも繋がることになる。
【0075】
また、血管コントラスト算出部96では、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号毎に、血管コントラストを算出し、算出した血管コントラストを組み合わせて演算することにより、測定対象血管の血管コントラストを算出してもよい。血管コントラストを組み合わせて演算する方法としては、例えば、血管コントラストに重み付して加算する重み付け平均処理が考えられる。この重み付け平均処理を行う場合には、各血管コントラストに対する重み付け係数は、血管コントラストの算出に用いた画像信号が有する波長成分に基づいて設定することが好ましい。
【0076】
例えば、R2画像信号から得られた血管コントラストCtrの重み付け係数をα、G2画像信号から得られた血管コントラストCtgの重み付け係数をβ、B2画像信号から得られた血管コントラストCtbの重み付け係数をγとすると、測定対象血管の血管コントラストは「α×Ctr+β×Ctg+γ×Ctb」となる。測定対象血管が表層血管である場合には、重み付け係数γを、他の重み付け係数α、βよりも大きくすることが好ましい。なお、各血管コントラストCtr、Ctg、Ctbは、それぞれ同一の注目血管に対する血管コントラストを示している。
【0077】
なお、上記実施形態においては、酸素飽和度測定部64で測定した測定対象血管の酸素飽和度s
*と、血管太さ測定部66で測定した測定対象血管の血管太さφ
*とを用いて、それら測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*を持つ第1のサブデータセットの絞り込みを行っているが、その他の方法でサブデータセットの絞り込みを行ってもよい。例えば、
図19に示すように、血管深さ算出部98に接続された情報入力部160により、測定対象血管の酸素飽和度s
**と血管太さφ
**を、手動で入力した上で、血管深さ算出部98は、その入力した測定対象血管の酸素飽和度s
**と血管太さφ
**を持つ測定用データを第2のサブデータセットとして絞り込む。この第2のサブデータセットの場合も、第1のサブデータセットと同様の方法で、血管深さの算出を行う。なお、情報入力部160の機能はコンソール20に組み込んでもよい。
【0078】
以上のように、手動で測定対象血管の酸素飽和度s
**と血管太さφ
**を入力する状況としては、血管深さを測定する前に、既に、ユーザーが、酸素飽和度画像や血管太さ測定画像を見て、おおよその酸素飽和度と血管太さを認識している状況が考えられる。なお、血管深さ算出部98は、酸素飽和度測定部64及び血管太さ測定部66で測定した測定対象血管の酸素飽和度s
*と血管太さφ
*に基づいて、第1のサブデータセットを絞り込む自動モードと、手動入力された測定対象血管の酸素飽和度s
**と血管太さφ
**に基づいて、第2のサブデータセットを絞り込む手動モードの2つのモードを実行可能な状態にしてもよい。この場合には、コンソール20等の操作部材により、自動モードと手動モードのいずれかのモードに選択的に設定される。
【0079】
なお、上記実施形態では、血管深さを算出するために、血管コントラストを用いたが、その他の血管指標値を用いてもよい。血管指標値としては、例えば、測定対象血管の輝度値(平均値など)や測定対象血管の色情報が挙げられる。色情報としては、R2画像信号、G2画像信号、B2画像信号に基づく演算により得られる演算値、例えば、R2/G2、B2/G2など信号比や、色差信号Cr、Cb、彩度S、色相Hなどがある。また、血管指標値は、血管コントラスト、血管部の輝度値、及び血管部の色情報を組み合わせて得られる値としてもよい。
【0080】
なお、上記実施形態では、血管コントラストと、酸素飽和度、血管太さ、及び血管深さとの関係を定めておいた上で、血管深さ以外の酸素飽和度及び血管
太さを測定し、この測定結果と関係を用いることで、血管深さを算出したが、これに限らず、血管コントラストなどの血管指標値と、血管指標値を変動させる血管指標値変動要因であって、血管深さ以外の特定の血管指標値変動要因と、血管深さとの関係を予め定めておいた上で、特定の血管指標値変動要因を測定し、その測定結果と関係を用いることで、血管深さを算出するようにしてもよい。
【0081】
この場合、複数の血管指標値変動要因の中から、特定の血管指標値変動要因を選択又は追加できるようにするために、
図20に示すように、各血管指標値変動要因について血管指標値と対応付けした測定用データで構成される選択用データセットを選択用データセット記憶部165に予め記憶してくことが好ましい。そして、血管深さ測定部68に接続された血管指標値変動要因選択部170で特定の血管指標値変動要因が選択されると、その選択された血管指標値変動要因に対応する選択用データセットを選択用データセット記憶部165から読み出して、1つのデータセットとして統合する。この統合したデータセットをデータセット記憶部97に記憶し、同様の方法で、血管深さの算出を行う。なお、酸素飽和度及び血管太さ以外の特定の血管指標値変動要因が選択された場合には、その特定の血管指標値変動要因を測定することができる特定測定部が新たに必要となる。
【0082】
なお、特定の血管指標値変動要因が複数ある場合には、一部は代表値(例えば、酸素飽和度であれば「70%」)で固定し、その他の特定の血管指標値変動要因について血管指標値と血管深さとを対応付けたデータセットとすることが好ましい。この場合には、代表値で固定した一部の特定の血管指標値変動要因の測定又は入力は行わず、その他の特定の血管指標値変動要因の測定又は入力のみを行うことになる。
【0083】
特定の血管指標値変動要因としては、酸素飽和度や血管太さ以外に、以下がある。例えば、撮影距離や撮影角度は、血管コントラストを変動させる特定の血管指標値変動要因であることから、血管コントラストと、撮影距離又は撮影角度などと、血管深さとの関係から、血管深さを算出するようにしてもよい。また、血管密度についても、血管コントラストを変動させる特定の血管指標値変動要因であることから、血管コントラストと、血管密度と、血管深さとの関係から、血管深さを算出するようにしてもよい。その他の特定の血管指標値変動要因としては、ビリルビンなどの黄色色素の濃度や、粘膜の散乱係数などがある。なお、撮影距離については、粘膜全体の平均輝度から算出することが好ましい。また、撮影角度については、画像全体の輝度分布から推定することが好ましい。また、血管密度については、画像中の血管領域を抽出し、抽出した血管領域に基づいて算出することが好ましい。
【0084】
[第2実施形態]
図21に示すように、内視鏡システム200の光源装置14には、第1及び第2青色レーザ光源34,36及び紫色レーザ光源38と光源制御部40の代わりに、LED(Light Emitting Diode)光源ユニット201と、LED光源制御部204が設けられている。また、内視鏡システム200の照明光学系24aには蛍光体44が設けられていない。それ以外については、第1実施形態の内視鏡システム10と同様である。
【0085】
LED光源ユニット201は、特定の波長帯域に制限された光を発光する光源として、R−LED201a,G−LED201b,B−LED201c、V−LED201dを有する。
図22に示すように、R−LED201aは、例えば約600〜650nmの赤色帯域光(以下、単に赤色光という)を発光する。この赤色光の中心波長は約620〜630nmである。G−LED201bは、正規分布で表される約500〜600nmの緑色帯域光(以下、単に緑色光)を発光する。B−LED201cは、445〜460nmを中心波長とする青色帯域光(以下、単に青色光という)を発光する。V−LED201dは、400〜410nmを中心波長とする紫色帯域光(以下、単に紫色光という)を発行する。
【0086】
また、LED光源ユニット201は、B−LED201cが発する青色光の光路上に挿抜されるハイパスフィルタ(HPF)202を有する。ハイパスフィルタ202は、約450nm以下の波長帯域の青色光をカットする。この約450nm以下の波長帯域がカットされた青色光は、酸化ヘモグロビンの吸光係数が還元ヘモグロビンの吸光係数よりも大きい波長帯域(
図8参照)で構成されるため、酸素飽和度の測定に使用することができる。そのため、以下、約450nm以下の波長帯域がカットされた青色光を測定用青色光という。なお、ハイパスフィルタ202の挿抜は、LED光源制御部204の制御のもとで、HPF挿抜部203によって行われる。
【0087】
LED光源制御部204は、LED光源ユニット201の各LED201a〜201dの点灯/消灯及び各発光量、及びハイパスフィルタ202の挿抜を制御する。具体的には、通常観察モード及び血管太さ測定モードの場合、LED光源制御部204は、各LED201a〜201dを全て点灯させ、ハイパスフィルタ202はB−LED301cを光路上から退避させる。これにより、紫色光、青色光,緑色光,赤色光が重畳した白色光が観察対象に照射され、センサ48はその反射光により観察対象を撮像し、Bc画像信号,Gc画像信号,Rc画像信号を出力する。
【0088】
一方、酸素飽和度モード及び血管深さ測定モードの場合、LED光源制御部204は、ハイパスフィルタ202を挿入した状態で、B−LED203dのみの点灯と、全てのLED203a〜203dの点灯とを、1フレームごとに交互に切り替える制御を行う。これにより、観察対象には、測定用青色光と、紫色光、測定用青色光、緑色光、及び赤色光とを含む混合光とが交互に照射される。
【0089】
そして、撮像制御部49では、測定用青色光のもとで観察対象を撮像して得た信号電荷を1フレーム目の読出し期間に読み出して、B1画像信号,G1画像信号,R1画像信号を出力する。また、紫色光、測定用青色光、緑色光、及び赤色光とを含む混合光のもとで観察対象を撮像して得た信号電荷を2フレーム目の読出期間に読み出して、B2画像信号、G2画像信号、R2画像信号を出力する。その後の処理は内視鏡システム10と同様に行うことができる。
【0090】
[第3実施形態]
図23に示すように、内視鏡システム300の光源装置14には、第1及び第2青色レーザ光源34,36及び紫色レーザ光源38と光源制御部40の代わりに、広帯域光源301と、回転フィルタ302と、回転フィルタ制御部303が設けられている。また、内視鏡システム300のセンサ305は、カラーフィルタが設けられていないモノクロの撮像素子である。このため、DSP56は、デモザイク処理等のカラー撮像素子に特有の処理は行わない。それ以外については、第1実施形態の内視鏡システム10と同じである。
【0091】
広帯域光源301は、例えばキセノンランプ、白色LED等からなり、波長帯域が青色から赤色に及ぶ白色光を発する。回転フィルタ302は、第1フィルタ310と第2フィルタ311とを備えており(
図24参照)、広帯域光源301から発せられる白色光がライトガイド41に入射される光路上に、第1フィルタ310を配置する第1位置と、第2フィルタ311を配置する第2位置との間で径方向に移動可能である。
【0092】
第1位置と第2位置への回転フィルタ302の相互移動は、選択された観察モードに応じて回転フィルタ制御部303によって制御される。また、回転フィルタ302は、第1位置または第2位置に配置された状態で、センサ305の撮像フレームに応じて回転する。回転フィルタ302の回転速度は、選択された観察モードに応じて回転フィルタ制御部303によって制御される。
【0093】
図24に示すように、第1フィルタ310は、通常観察モード及び血管太さ測定モード時に用いられ、回転フィルタ302の内周部に設けられている。第1フィルタ310は、赤色光を透過するRフィルタ310aと、緑色光を透過するGフィルタ310bと、紫色光及び青色光を含む青紫色光を透過するBフィルタ310cと有する。通常観察モード及び血管太さ測定モードに設定された場合には、回転フィルタ302は第1位置に配置され、広帯域光源301からの白色光は、回転フィルタ302の回転に応じてRフィルタ310a、Gフィルタ310b、Bフィルタ310cのいずれかに入射する。このため、観察対象には、透過したフィルタに応じて、赤色光、緑色光、青紫色光が順次照射される。センサ305は、これらの反射光によりそれぞれ観察対象を撮像することにより、Rc画像信号、Gc画像信号、Bc画像信号を順次出力する。
【0094】
また、第2フィルタ311は、酸素飽和度モード及び血管深さ測定モード時に用いられ、回転フィルタ302の外周部に設けられている。第2フィルタ311は、赤色光を透過するRフィルタ311aと、緑色光を透過するGフィルタ311bと、紫色光及び青色光を含む青紫色光を透過するBフィルタ311cと、473±10nmの狭帯域光を透過する狭帯域フィルタ311dとを有する。酸素飽和度モード及び血管深さ測定モードに設定された場合には、回転フィルタ302は第2位置に配置され、広帯域光源301からの白色光は、回転フィルタ302の回転に応じてRフィルタ311a、Gフィルタ311b、Bフィルタ311c、狭帯域フィルタ311dのいずれかに入射する。このため、観察対象には、透過したフィルタに応じて、赤色光、緑色光、青紫色光,狭帯域光(473nm)が順次照射される。
【0095】
センサ405は、赤色光が照射されたときに観察対象の撮像を行ってR2画像信号を出力し、緑色光が照射されたときに観察対象の撮像を行ってG2画像信号を出力し、青紫色光が照射されたときに観察対象の撮像を行ってB2画像信号を出力し、狭帯域光が照射されたときに観察対象の撮像を行ってB1画像信号を出力する。その後の処理は第1実施形態の内視鏡システム10と同様に行うことができる。
【0096】
第1〜第3実施形態では酸素飽和度を算出しているが、これに代えて、あるいはこれに加えて、「血液量×酸素飽和度(%)」から求まる酸化ヘモグロビンインデックスや、「血液量×(1−酸素飽和度)(%)」から求まる還元ヘモグロビンインデックス等、他の生体機能情報を算出しても良い。