特許第6779061号(P6779061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6779061保護シート、構造体及び有機デバイスの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779061
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】保護シート、構造体及び有機デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05B 33/04 20060101AFI20201026BHJP
   H01L 51/50 20060101ALI20201026BHJP
   H05B 33/10 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H05B33/04
   H05B33/14 A
   H05B33/10
【請求項の数】8
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-144782(P2016-144782)
(22)【出願日】2016年7月22日
(65)【公開番号】特開2018-14304(P2018-14304A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年6月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(72)【発明者】
【氏名】松本 康男
【審査官】 小久保 州洋
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−123532(JP,A)
【文献】 国際公開第2013/146583(WO,A1)
【文献】 特開2009−123690(JP,A)
【文献】 特開2016−091630(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 33/04
H01L 51/50 − 51/56
H05B 33/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機デバイスを保護する保護シートであって、
可撓性を有する基材と、
前記基材の少なくとも一方の面に設けられたスペーサーと、を備え
前記スペーサーは、
前記基材の前記一方の面上に設けられた第1粘接着層と、
前記第1粘接着層上に設けられたスペーサー層と、
前記スペーサー層上に設けられた第2粘接着層と、を有し、
前記第1粘接着層は、前記第2粘接着層よりも粘着力が高い、保護シート。
【請求項2】
前記スペーサーは、前記基材と共に凹状の空間を画成する開口部を有する、請求項1に記載の保護シート。
【請求項3】
前記基材は、一方向に延在しており、
前記スペーサーは、前記基材の前記一方向に延在し且つ前記基材の前記一方向に直交する他方向において所定の間隔をあけて対向して配置されている、請求項1に記載の保護シート。
【請求項4】
前記基材は、一方向に延在しており、
前記スペーサーは、前記基材の前記一方向に直交する他方向に延在し且つ前記一方向において所定の間隔をあけて配置されている、請求項1に記載の保護シート。
【請求項5】
前記基材は、前記一方の面に乾燥剤が塗布されている、請求項1〜のいずれか一項に記載の保護シート。
【請求項6】
請求項1〜のいずれか一項に記載の保護シートと、
有機デバイス、又は、前記有機デバイスを構成する層のうちの一部の層が形成された中間体が設けられた支持基板と、を備え、
前記支持基板において前記有機デバイス又は前記中間体が形成されていない領域に、前記スペーサーが配置されている、構造体。
【請求項7】
可撓性を有する支持基板上に有機デバイスを製造する有機デバイスの製造方法であって、
前記支持基板上に、前記有機デバイス、又は、前記有機デバイスを構成する層のうちの一部の層が形成された中間体を形成する形成工程と、
前記有機デバイス又は前記中間体が形成された前記支持基板に、可撓性を有し且つ一方向に延在する基材及び前記基材の少なくとも一方の面に設けられたスペーサーを備える保護シートを貼り付ける貼付工程と、を含み、
前記貼付工程では、
前記基材の前記一方の面上に設けられた第1粘接着層と、前記第1粘接着層上に設けられたスペーサー層と、前記スペーサー層上に設けられた第2粘接着層と、を有し、前記第1粘接着層が前記第2粘接着層よりも粘着力が高い前記スペーサーを有する前記保護シートを用い、
前記支持基板において前記有機デバイス又は前記中間体が形成されていない領域に前記スペーサーが配置されるように、前記支持基板に前記保護シートを貼り付ける、有機デバイスの製造方法。
【請求項8】
前記貼付工程では、前記基材の前記一方向に直交する他方向に延在し且つ前記一方向において所定の間隔をあけて配置された前記スペーサーを有する前記保護シートを前記支持基板に貼り付け、
前記貼付工程の後に、前記スペーサーが配置されている位置で、前記他方向に沿って前記保護シート及び前記支持基板を切断する切断工程を含む、請求項に記載の有機デバイスの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、保護シート、構造体及び有機デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の保護シートとして、例えば、特許文献1に記載されたシートが知られている。特許文献1に記載の保護シートは、可撓性の支持体、ガスバリア層及び3層以上の積層構造を有する。この保護シートは、有機デバイスの製造工程において有機機能層が形成された後に、有機機能層上に重ね合わせて巻き取られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−123532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の保護シートは、有機機能層上に重ね合わせて巻き取られる。そのため、従来の保護シートは、有機機能層に接触する。この場合、保護シートが接触した有機機能層に不具合が生じるおそれがある。これにより、有機デバイスの品質が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、有機デバイスの品質の低下を抑制できる保護シート、構造体及び有機デバイスの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一側面に係る保護シートは、有機デバイスを保護する保護シートであって、可撓性を有する基材と、基材の少なくとも一方の面に設けられたスペーサーと、を備える。
【0007】
この保護シートでは、基材の少なくとも一方の面にスペーサーが設けられている。これにより、保護シートでは、有機デバイスの例えば有機機能層と基材とが接触することを抑制できる。したがって、有機デバイスに破損等の不具合が発生することを抑制できる。また、保護シートは、基材により、有機デバイスに塵及び埃等が付着することを抑制できる。その結果、保護シートでは、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【0008】
一実施形態においては、スペーサーは、基材の一方の面上に設けられた第1粘接着層と、第1粘接着層上に設けられたスペーサー層と、スペーサー層上に設けられた第2粘接着層と、を有し、第1粘接着層は、第2粘接着層よりも粘着力が高くてもよい。この構成では、基材とスペーサーとの接着性を確保しつつ、第2粘着層の剥離性を確保できる。そのため、使用時に、有機デバイスから保護フィルムを容易に剥離することができる。
【0009】
一実施形態においては、スペーサーは、基材と共に凹状の空間を画成する開口部を有していてもよい。この構成では、開口部により画成される空間に有機デバイスを収容できる。そのため、基材と有機デバイスとの接触を抑制できる。
【0010】
一実施形態においては、基材は、一方向に延在しており、スペーサーは、基材の一方向に延在し且つ前記基材の一方向に直交する他方向において所定の間隔をあけて対向して配置されていてもよい。この構成では、スペーサーにより、基材と有機デバイスとの接触を抑制できると共に、有機デバイスに塵及び埃等が付着することをより確実に抑制できる。
【0011】
一実施形態においては、基材は、一方向に延在しており、スペーサーは、基材の一方向に直交する他方向に延在し且つ一方向において所定の間隔をあけて配置されていてもよい。この構成では、スペーサーにより、基材と有機デバイスとの接触を抑制できる。
【0012】
一実施形態においては、基材は、一方の面に乾燥剤が塗布されていてもよい。この構成では、保護シートにより保護される有機デバイスに水分が含まれることを抑制できる。その結果、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【0013】
本発明の一側面に係る構造体は、上記のいずれかの保護シートと、有機デバイス、又は、前記有機デバイスを構成する層のうちの一部の層が形成された中間体が設けられた支持基板と、を備え、支持基板において有機デバイス又は中間体が形成されていない領域に、スペーサーが配置されている。
【0014】
本発明の一側面に係る構造体では、支持基板において有機デバイス又は中間体が形成されていない領域に、保護シートのスペーサーが配置されている。これにより、構造体では、有機デバイスの例えば有機機能層と基材とが接触することを抑制できる。したがって、有機デバイスに破損等の不具合が発生することを抑制できる。また、構造体では、基材により、有機デバイスに塵及び埃等が付着することを抑制できる。その結果、構造体では、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【0015】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法は、可撓性を有する支持基板上に有機デバイスを製造する有機デバイスの製造方法であって、支持基板上に、有機デバイス、又は、有機デバイスを構成する層のうちの一部の層が形成された中間体を形成する形成工程と、有機デバイス又は中間体が形成された支持基板に、可撓性を有し且つ一方向に延在する基材及び基材の少なくとも一方の面に設けられたスペーサーを備える保護シートを貼り付ける貼付工程と、を含み、貼付工程では、支持基板において有機デバイス又は中間体が形成されていない領域にスペーサーが配置されるように、支持基板に保護シートを貼り付ける。
【0016】
本発明の一側面に係る有機デバイスの製造方法では、貼付工程において、支持基板において有機デバイス又は中間体が形成されていない領域にスペーサーが配置されるように、支持基板に保護シートを貼り付ける。これにより、有機デバイスの例えば有機機能層と基材とが接触することを抑制できる。したがって、有機デバイスに破損等の不具合が発生することを抑制できる。また、基材により、有機デバイスに塵及び埃等が付着することを抑制できる。その結果、有機デバイスの製造方法では、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【0017】
一実施形態においては、貼付工程では、基材の一方向に直交する他方向に延在し且つ一方向において所定の間隔をあけて配置されたスペーサーを有する保護シートを支持基板に貼り付け、貼付工程の後に、スペーサーが配置されている位置で、他方向に沿って保護シート及び支持基板を切断する切断工程を含んでいてもよい。これにより、スペーサーを切断した場合であっても、基材、スペーサー及び支持基板により画成された空間に有機デバイスが封入されているため、スペーサーを切断した際に生じた塵等が有機デバイスに付着することを抑制できる。したがって、スペーサーを切断して有機デバイスを個片化して保管する場合であっても、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明の一側面によれば、有機デバイスの品質の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】一実施形態に係る保護シートを示す図である。
図2図1におけるII−II線に沿った断面構成を示す図である。
図3】(a)は保護シートが有機ELデバイスの形成された支持シートに取り付けられた状態を示す図であり、(b)は(a)におけるb−b線に沿った断面構成を示す図である。
図4】他の実施形態に係る保護シートを示す図である。
図5】他の実施形態に係る保護シートを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面の説明において同一又は相当要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0021】
図1に示されるように、保護シート1は、基材3と、スペーサー5と、を備える。図1では、保護シート1をスペーサー5側から見た状態を示している。保護シート1は、有機EL素子(有機デバイス)17(図3参照)を保護するための部材である。
【0022】
基材3は、プラスチックフィルムである。基材3は、一方向に延在している。基材3の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)である。基材3の厚さは、例えば、30μm〜50μmである。基材3は、一方の面3aを有する。
【0023】
図2に示されるように、スペーサー5は、第1粘接着層7と、スペーサー層9と、第2粘接着層11と、を有する。
【0024】
第1粘接着層7は、基材3の一方の面3aに設けられている。第1粘接着層7は、例えば、光硬化性又は熱硬化性のアクリレート樹脂、或いは、光硬化性又は熱硬化性のエポキシ樹脂から構成される。第1粘接着層7は、その他一般に使用されるインパルスシーラーで融着可能な樹脂フィルム、例えばエチレン酢酸ビニルコポリマー(EVA)、ポリプロピレン(PP)フィルム、ポリエチレン(PE)フィルム、ポリブタジエン(PB)フィルム等の熱融着性フィルムを使用することもできる。また、熱可塑性樹脂も使用することができる。第1粘接着層7の粘着力は、10〜50N/25mmである。第1粘接着層7の厚さは、例えば、5μm程度である。
【0025】
スペーサー層9は、第1粘接着層7上(第1粘接着層7において基材3の一方の面3aに接する面とは反対側の面)に配置されている。スペーサー層9は、第1粘接着層7と第2粘接着層11との間に配置されている。スペーサー層9の材料は、例えば、ポリエチレンテレフタラート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリイミド(PI)等である。スペーサー層9の厚さは、有機EL素子17の厚さ(高さ)に応じて適宜設定される。具体的には、スペーサー層9の厚さは、スペーサー5の厚さが有機EL素子17の厚さよりも大きくなるように設定される。
【0026】
第2粘接着層11は、スペーサー層9上(スペーサー層9において第1粘接着層7に接する面とは反対側の面)に設けられている。第2粘接着層11は、例えば、第1粘接着層7と同じ材料で形成される。第2粘接着層11の粘着力は、0.1〜1.0N/25mmである。すなわち、第2粘接着層11の粘着力は、第1粘接着層7の粘着力よりも低い。言い換えれば、第1粘接着層7の粘着力は、第2粘接着層11の粘着力よりも高い。第2粘接着層11の粘着力は、接着対象物に対して再剥離可能に設定されている。第2粘接着層11の厚さは、例えば、5μm程度である。
【0027】
図1に示されるように、スペーサー5には、開口部13が設けられている。開口部13は、スペーサー5において、第1粘接着層7、スペーサー層9及び第2粘接着層11がくり貫かれた部分である。本実施形態では、開口部13は、スペーサー5における第1粘接着層7、スペーサー層9及び第2粘接着層11の積層方向から見て、矩形状を呈している。すなわち、スペーサー5は、少なくとも、基材3の一方向(延在方向)に直交する他方向(幅方向)に延在し且つ一方向において所定の間隔をあけて配置されている。開口部13は、スペーサー5において、基材3の一方向に所定の間隔をあけて複数設けられている。開口部13は、基材3との協働により、有機EL素子17を収容する凹状の空間を画成する。開口部13の寸法(縦及び横の幅)は、有機EL素子17のサイズに応じて適宜設定されればよい。
【0028】
上記構成を有する保護シート1の製造方法について説明する。最初に、シート状の第1粘接着層7、スペーサー層9及び第2粘接着層11を積層し、スペーサー5を作成する。次に、スペーサー5の所定の箇所を打ち抜き、開口部13を形成する。続いて、スペーサー5を基材3の一方の面3aに貼り付ける。このとき、開口部13の配列方向が基材3の一方向に沿うように、基材3にスペーサー5を貼り付ける。以上により、保護シート1が製造される。なお、開口部13は、スペーサー5を基材3に貼り付けた後に、ハーフカットにより形成してもよい。
【0029】
図3(a)及び図3(b)に示されるように、保護シート1は、有機EL素子17が形成された支持基板15に貼り付けられる。具体的には、保護シート1の第2粘接着層11が支持基板15の一方の主面15aに貼り付けられる。支持基板15の一方の主面15a上に形成された有機EL素子17は、スペーサー5の開口部13内に収容される。これにより、有機EL素子17は、保護シート1(基材3及びスペーサー5)及び支持基板15により画成された空間に封入される。
【0030】
続いて、上記保護シート1を用いた有機EL素子17の製造方法について説明する。
【0031】
支持基板15が可撓性を有し、長手方向に延在する基板である形態では、有機EL素子17の製造方法には、ロールツーロール方式が採用され得る。ロールツーロール方式で有機EL素子17を製造する場合、巻出しロールと巻取りロールとの間に張り渡された長尺の可撓性の支持基板15を連続的に搬送ロールで搬送しながら、各層を支持基板15側から順に形成する。
【0032】
最初に、支持基板15を用意し、加熱して乾燥させる(乾燥工程)。支持基板15は、可視光(波長400nm〜800nmの光)に対して透光性を有する樹脂から構成されている。支持基板15は、フィルム状の基板である。支持基板15の厚さは、例えば、30μm以上500μm以下である。支持基板15が樹脂の場合は、ロールツーロール方式の連続時の基板ヨレ、シワ、伸びの観点からは45μm以上、可撓性の観点からは125μm以下が好ましい。支持基板15の一方の主面15a上には、ガスバリア層、或いは、水分バリア層が配置されていてもよい。支持基板15の他方の主面15bは、発光面である。
【0033】
続いて、支持基板15上に陽極層を形成する(陽極層形成工程)。陽極層は、光透過性を示す電極層が用いられる。光透過性を示す電極としては、電気伝導度の高い金属酸化物、金属硫化物及び金属を含む薄膜を用いることができ、光透過率の高い薄膜が好適に用いられる。例えば酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、インジウム錫酸化物(Indium Tin Oxide:略称ITO)、インジウム亜鉛酸化物(Indium Zinc Oxide:略称IZO)、金、白金、銀、及び銅等を含む薄膜が用いられ、これらの中でもITO、IZO、又は酸化スズからなる薄膜が好適に用いられる。
【0034】
陽極層として、ポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等の有機物の透明導電膜を用いてもよい。また、陽極層として、金属又は金属合金等をメッシュ状にパターニングした電極、或いは、銀を含むナノワイヤーがネットワーク状に形成されている電極を用いてもよい。陽極層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法、メッキ法及び塗布法等を挙げることができる。
【0035】
続いて、陽極層上に有機機能層を形成する(有機機能層形成工程)。有機機能層は、発光層を含んでいる。有機機能層は、通常、主として蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料、或いは該発光材料とこれを補助する発光層用ドーパント材料を含む。発光層用ドーパント材料は、例えば発光効率を向上させたり、発光波長を変化させたりするために加えられる。なお、蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料は、低分子化合物であってもよいし、高分子化合物であってもよい。有機機能層を構成する有機物としては、例えば下記の色素材料、金属錯体材料、高分子材料等の蛍光及び/又はりん光を発光する発光材料や、発光層用ドーパント材料等を挙げることができる。
【0036】
有機機能層の厚さは、通常約2nm〜200nmである。有機機能層は、例えば、発光材料を含む塗布液(例えばインク)を用いる塗布法により形成される。発光材料を含む塗布液の溶媒としては、発光材料を溶解するものであれば、限定されない。また、発光層は、真空蒸着によって形成されてもよい。
【0037】
続いて、有機機能層上に陰極層を形成する(陰極層形成工程)。陰極層の材料としては、例えばアルカリ金属、アルカリ土類金属、遷移金属及び周期表第13族金属等を用いることができる。陰極層の材料としては、具体的には、例えばリチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、スカンジウム、バナジウム、亜鉛、イットリウム、インジウム、セリウム、サマリウム、ユーロピウム、テルビウム、イッテルビウム等の金属、前記金属のうちの2種以上の合金、前記金属のうちの1種以上と、金、銀、白金、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうちの1種以上との合金、又はグラファイト若しくはグラファイト層間化合物等が用いられる。合金の例としては、マグネシウム−銀合金、マグネシウム−インジウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金、インジウム−銀合金、リチウム−アルミニウム合金、リチウム−マグネシウム合金、リチウム−インジウム合金、カルシウム−アルミニウム合金等を挙げることができる。
【0038】
また、陰極層としては、例えば、導電性金属酸化物及び導電性有機物等からなる透明導電性電極を用いることができる。導電性金属酸化物としては、具体的には、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ、ITO、及びIZO等を挙げることができ、導電性有機物としてポリアニリン及びその誘導体、ポリチオフェン及びその誘導体等を挙げることができる。なお、陰極層は、2層以上を積層した積層体で構成されていてもよい。
【0039】
陰極層の厚さは、電気伝導度、耐久性を考慮して設定される。陰極層の厚さは、通常、10nm〜10μmであり、好ましくは20nm〜1μmであり、さらに好ましくは50nm〜500nmである。
【0040】
陰極層の形成方法としては、例えば真空蒸着法、スパッタリング法、金属薄膜を熱圧着するラミネート法及び塗布法等を挙げることができる。以上により、支持基板15上に有機EL素子17が形成される(形成工程)。
【0041】
続いて、支持基板15に保護シート1を貼り付ける(貼付工程)。具体的には、図3(a)及び図3(b)に示されるように、スペーサー5の開口部13内に有機EL素子17が収容されるように、保護シート1の第2粘接着層11を支持基板15に貼合する。すなわち、有機EL素子17が形成されていない支持基板15の領域にスペーサー5が位置するように、保護シート1を支持基板15に貼合する。これにより、保護シート1と、有機EL素子17が設けられた支持基板15とを備える構造体20が構成される。
【0042】
続いて、支持基板15及び保護シート1からなる構造体20をロール状に巻き取る(巻取工程)。構造体20は、図示しない芯に巻き取られる。これにより、ロールが形成される。そして、ロールを、例えば、保管庫に保管する(保管工程)。
【0043】
続いて、保管していたロールを用意し、支持基板15から保護シート1を剥離する(剥離工程)。保護シート1を剥離した後、有機EL素子17を封止部材(図示しない)により封止する(封止工程)。以上により、有機EL素子17が製造される。
【0044】
なお、構造体20を保管するときには、ロール状に巻き取らなくてもよい。構造体20は、シート状の状態で保管してもよい。また、図3(a)及び図3(b)に示されるように、構造体20を切断線Lに沿って切断し(切断工程)、構造体20を個片化して保管してもよい。図3(a)及び図3(b)に示す例では、1つの有機EL素子17が含まれるように切断線Lが設定されている。切断線Lは、スペーサー5の位置に設定されている。これにより、構造体20を切断した場合であっても、基材3、スペーサー5及び支持基板15により画成された空間に有機EL素子17が封入されているため、構造体20を切断した際に生じた塵等が有機EL素子17に付着することを抑制できる。なお、構造体20を個片化する場合には、例えば、複数の有機EL素子17が含まれるように切断線Lを設定して切断してもよい。
【0045】
以上説明したように、本実施形態に係る保護シート1は、基材3の一方の面3aにスペーサー5が設けられている。これにより、保護シート1では、有機EL素子17の例えば有機機能層と基材3とが接触することを抑制できる。したがって、有機EL素子17に不具合が発生することを抑制できる。その結果、保護シート1では、有機EL素子17の品質の低下を抑制できる。
【0046】
本実施形態に係る保護シート1では、スペーサー5は、第1粘接着層7、スペーサー層9及び第2粘接着層11を有する。この構成では、第2粘接着層11により保護シート1が支持基板15に接着する。これにより、支持基板15を巻き取るときに保護シート1がずれることを抑制できる。したがって、保護シート1のずれの補修等といった手間が生じないため、有機EL素子17の効率的な製造が可能となる。
【0047】
本実施形態に係る保護シート1では、スペーサー5は、開口部13を有している。開口部13は、基材3と共に有機EL素子17を収容する空間を画成する。これにより、保護シート1では、空間に有機EL素子17が収容されるため、基材3と有機EL素子17との接触を抑制できる。また、保護シート1では、開口部13の形状を変更することにより、種々の形状の有機EL素子17に対応することができる。
【0048】
本実施形態に係る保護シート1では、スペーサー5の厚さは、有機EL素子17の厚さよりも大きくなるように設定されている。これにより、基材3と有機EL素子17とが接触することをより確実に抑制できる。
【0049】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0050】
上記実施形態では、スペーサー5の開口部13が矩形状である形態を一例に説明したが、開口部の形状はこれに限定されない。開口部の形状は、有機EL素子17が収容される形状であればよい。
【0051】
上記実施形態では、スペーサー5が、第1粘接着層7、スペーサー層9及び第2粘接着層11を有する形態を一例に説明した。しかし、スペーサーの構成はこれに限定されない。例えば、スペーサーは、他の層を有していてもよい。また、スペーサーは、2層以下の層により形成されていてもよい。
【0052】
上記実施形態では、有機EL素子17の製造方法において、有機EL素子17として陰極層まで形成した後に、保護シート1を支持基板15に貼り付ける形態を一例に説明した。しかし、保護シート1を支持基板15に貼り付けるタイミングは、これに限定されない。例えば、保護シート1は、支持基板15上に有機機能層等の有機EL素子17を構成する層のうちの一部の層が形成された中間体を形成した後に、支持基板15に貼り付けられてもよい。なお、有機機能層は、複数の層により形成されていてもよい。この場合、有機機能層を形成する複数の層のうち、少なくとも一層が形成された後に、保護シート1を支持基板15に貼り付けてもよい。また、陽極層を形成した後に、保護シート1を支持基板15に貼り付けてもよい。
【0053】
有機EL素子17の構成は、上記実施形態に限定されない。有機EL素子17は、以下の構成を有していてもよい。
(a)陽極層/発光層/陰極層
(b)陽極層/正孔注入層/発光層/陰極層
(c)陽極層/正孔注入層/発光層/電子注入層/陰極層
(d)陽極層/正孔注入層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(e)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/陰極層
(f)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子注入層/陰極層
(g)陽極層/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
(h)(陽極層)/発光層/電子注入層/陰極層
(i)(陽極層)/発光層/電子輸送層/電子注入層/陰極層
ここで、記号「/」は、記号「/」を挟む各層が隣接して積層されていることを示す。
【0054】
上記実施形態では、保護シート1のスペーサー5に開口部13が設けられており、開口部13により画成される空間に有機EL素子17が収容される形態を一例に説明した。しかし、保護シートの構成はこれに限定されない。
【0055】
図4に示されるように、保護シート1Aでは、スペーサー5は、基材3の一方向(延在方向)に延在し且つ基材3の一方向に直交する他方向(幅方向)において所定の間隔をあけて対向して配置されている。具体的には、スペーサー5は、基材3の他方向の両端部において、基材3の一方向に沿って配置されている。この構成では、保護シート1が、有機EL素子17が設けられた支持基板15に貼り付けられたときに、基材3の他方向において対向する一対のスペーサー5の間に有機EL素子17が位置する。なお、一対のスペーサー5の間には、1つの有機EL素子17が位置してもよいし、複数の有機EL素子17が位置してもよい。保護シート1Aでは、スペーサー5により、基材3と有機EL素子17との接触を抑制できる。
【0056】
図5に示されるように、保護シート1Bでは、スペーサー5は、基材3の一方向(延在方向)に直交する他方向(幅方向)に延在し且つ一方向において所定の間隔をあけて配置されている。具体的には、スペーサー5は、基材3の他方向に略平行に位置している。この構成では、保護シート1が、有機EL素子17が設けられた支持基板15に貼り付けられたときに、基材3の一方向において対向する一対のスペーサー5の間に有機EL素子17が位置する。なお、一対のスペーサー5の間には、1つの有機EL素子17が位置してもよいし、複数の有機EL素子17が位置してもよい。保護シート1Bでは、スペーサー5により、基材3と有機EL素子17との接触を抑制できる。また、この構成では、スペーサー5が配置されている位置で、他方向に沿って構造体20を切断することで、構造体20を個片化して保管することができる。この構成では、構造体20を切断した場合であっても、基材3、スペーサー5及び支持基板15により画成された空間に有機EL素子17が封入されているため、構造体20を切断した際に生じた塵等が有機EL素子17に付着することを抑制できる。
【0057】
上記実施形態に加えて、基材3の一方の面3aには、乾燥剤が塗布されていてもよい。これにより、保護シート1,1A,1Bにより保護される有機EL素子17に水分が含まれることを抑制できる。
【符号の説明】
【0058】
1…保護シート、3…基材、3a…一方の面、5…スペーサー、7…第1粘接着層、9…スペーサー層、11…第2粘接着層、13…開口部、15…支持基板、17…有機EL素子(有機デバイス)。
図1
図2
図3
図4
図5