特許第6779087号(P6779087)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779087
(24)【登録日】2020年10月15日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】配線基板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H05K 3/18 20060101AFI20201026BHJP
   H05K 3/00 20060101ALI20201026BHJP
   H05K 3/10 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   H05K3/18 A
   H05K3/00 J
   H05K3/10 E
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2016-197080(P2016-197080)
(22)【出願日】2016年10月5日
(65)【公開番号】特開2018-60906(P2018-60906A)
(43)【公開日】2018年4月12日
【審査請求日】2019年8月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000134051
【氏名又は名称】株式会社ディスコ
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】特許業務法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】陳 曄
(72)【発明者】
【氏名】フランク リリ ウェイ
(72)【発明者】
【氏名】内保 貴
(72)【発明者】
【氏名】川瀬 雅之
(72)【発明者】
【氏名】李 勸商
【審査官】 齊藤 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開平6−112630(JP,A)
【文献】 特開平9−55577(JP,A)
【文献】 特開平10−98268(JP,A)
【文献】 特開2005−26313(JP,A)
【文献】 特開2006−32462(JP,A)
【文献】 特開2011−35127(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0114373(US,A1)
【文献】 中国特許出願公開第103945644(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K1/00−3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表裏面に再配線層を備える配線基板の製造方法であって、
コアとなる基板の表裏面に樹脂のベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成ステップと、
表裏面の該ベース絶縁層の表面をバイト工具又は研削砥石で削り平坦化する表裏平坦化ステップと、
レーザー光線またはフォトエッチングによって該ベース絶縁層に回路パターンとなる溝を形成する溝形成ステップと、
該溝形成ステップの後に、該ベース絶縁層の表面に金属を被覆する金属被覆ステップと、
該ベース絶縁層が所定の仕上げ厚さに至るまで該金属及び該ベース絶縁層をバイト工具で削り、該金属の該回路パターンが露出した平坦な回路パターン層を形成する回路パターン層形成ステップと、を備え、
該表裏平坦化ステップと該回路パターン層形成ステップにより平坦な配線基板を形成することを特徴とする配線基板の製造方法。
【請求項2】
該溝形成ステップの後で該金属被覆ステップの前に、該ベース絶縁層の表面に金属薄膜を被覆し、該金属薄膜を該ベース絶縁層の表面にめっき処理で該金属を被覆する際の電極とすることを特徴とする請求項1記載の配線基板の製造方法。
【請求項3】
該回路パターン層の上に更に該回路パターン層を積層して形成する請求項1又は2記載の配線基板の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線基板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体チップや各種電気部品を実装して搭載し、これらの電極と他の部品との導通を確保するインターポーザーやプリント配線基板といった再配線層を有する配線基板に関する技術が知られている。例えば、特許文献1には、コア基板の表裏面に導体層と有機絶縁層とを交互に積み上げていくビルドアップ方式のプリント配線板が開示されている。
【0003】
また、特許文献2には、補強材を備えるコア基板の両面に、補強材に樹脂を含浸させてなる第1絶縁層を設け、第1絶縁層でコア基板を補強してから、補強材を含有しない複数の第2絶縁層を積層するプリント配線板が開示されている。このプリント配線板は、コア基板及び第1絶縁層に補強材を含ませたり、第1絶縁層の厚みを各第2絶縁層の厚みよりも厚くしたりすることで、プリント配線板に熱履歴が加わった場合に反りが生じることを抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−196743号公開
【特許文献2】特開2013−80823号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1、2に記載の配線基板に搭載される半導体チップや各種電気部品は、軽薄短小化が進んでおり、配線基板の電極と接続される電極パッドも小さくなっている。そのため、配線基板が反っていたり平坦でなかったりすると、搭載する半導体チップや各種電気部品の電極と配線基板の電極とを良好に接続することができず、動作不良の要因となってしまう。上述したように、特許文献2に記載のプリント配線板は、熱履歴が加わった際に反りが生じることを抑制しているが、熱履歴による変形を抑制するだけでは、コア基板がもともと反っていたり平坦でなかったりした場合に、配線基板を平坦に形成することができないおそれがある。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、搭載される部品の電極との接続をより良好に行うことが可能な、より平坦度が高い配線基板の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明は、表裏面に再配線層を備える配線基板の製造方法であって、コアとなる基板の表裏面に樹脂のベース絶縁層を形成するベース絶縁層形成ステップと、表裏面の該ベース絶縁層の表面をバイト工具又は研削砥石で削り平坦化する表裏平坦化ステップと、レーザー光線またはフォトエッチングによって該ベース絶縁層に回路パターンとなる溝を形成する溝形成ステップと、該溝形成ステップの後に、該ベース絶縁層の表面に金属を被覆する金属被覆ステップと、該ベース絶縁層が所定の仕上げ厚さに至るまで該金属及び該ベース絶縁層をバイト工具で削り、該金属の該回路パターンが露出した平坦な回路パターン層を形成する回路パターン層形成ステップと、を備え、該表裏平坦化ステップと該回路パターン層形成ステップにより平坦な配線基板を形成することを特徴とする。
【0008】
また、該溝形成ステップの後で該金属被覆ステップの前に、該ベース絶縁層の表面に金属薄膜を被覆し、該金属薄膜を該ベース絶縁層の表面にめっき処理で該金属を被覆する際の電極とすることが好ましい。
【0009】
また、該回路パターン層の上に更に該回路パターン層を積層して形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる配線基板の製造方法では、コアとなる基板の表面側及び裏面側の双方に形成されたベース絶縁層を平坦化する。この結果、仮にコアとなる基板自体が反っていたり、あるいは、基板の表面に凹凸があったりしても、後に回路パターン層となるベース絶縁層の表面を平坦にすることができる。また、ベース絶縁層上に被覆された金属をベース絶縁層と共に削ることで回路パターンが露出した回路パターン層を形成するため、回路パターン層の表面をより平坦にすることができる。従って、本実施形態にかかる配線基板の製造方法によれば、搭載される部品の電極との接続をより良好に行うことが可能な、より平坦度が高い配線基板を得ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、実施形態にかかる配線基板の製造方法により製造される配線基板を示す断面図である。
図2図2は、実施形態にかかる配線基板の製造方法の流れの一部として、各回路パターン層を形成する処理手順を示すフローチャートである。
図3図3は、ベース絶縁層形成ステップによりベース絶縁層を形成したコア基板を示す説明図である。
図4図4は、表裏平坦化ステップにおいてベース絶縁層の表面を平坦化する様子を示す説明図である。
図5図5は、表裏平坦化ステップにおいてベース絶縁層の表面を平坦化する様子の他の例を示す説明図である。
図6図6は、ベース絶縁層が平坦化されたコア基板を示す説明図である。
図7図7は、溝形成ステップにおいてベース絶縁層の表面に複数の溝を形成する様子を示す説明図である。
図8図8は、金属薄膜形成ステップによりベース絶縁層の表面に金属薄膜を形成したコア基板を示す説明図である。
図9図9は、金属被覆ステップによりベース絶縁層上に金属が被覆されたコア基板を示す説明図である。
図10図10は、回路パターン層形成ステップにおいて金属及びベース絶縁層の一部を切削する様子を示す説明図である。
図11図11は、第1回路パターン層が形成されたコア基板を示す説明図である。
図12図12は、変形例にかかる溝形成ステップを実施する様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明を実施するための形態(実施形態)につき、図面を参照しつつ詳細に説明する。以下の実施形態に記載した内容により本発明が限定されるものではない。また、以下に記載した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のものが含まれる。さらに、以下に記載した構成は適宜組み合わせることが可能である。また、本発明の要旨を逸脱しない範囲で構成の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【0013】
本発明の実施形態にかかる配線基板の製造方法を図面に基づいて説明する。図1は、実施形態にかかる配線基板の製造方法により製造される配線基板を示す断面図である。図1に示す配線基板1は、半導体チップや各種電機部品を実装して搭載し、これらの電極と他の部品との導通を確保するインターポーザーやプリント配線基板といった再配線層を有する配線基板である。本実施形態において、配線基板1は、半導体チップを搭載して印刷配線基板に接続されて、半導体チップの電極と印刷配線基板の配線パターンとを予め定められたパターン通りに接続するインターポーザーである。配線基板1は、図1に示すように、コアとなるコア基板10と、コア基板10の表面10a及び裏面10bの双方に形成された再配線層である回路パターン層20とを備える。
【0014】
コア基板10は、例えばガラスエポキシ樹脂やセラミックス、ガラス等で形成される絶縁性(非導電性)の基板である。コア基板10の厚みは、例えば50μm程度である。本実施形態において、コア基板10は、図1に示すように、裏面10b側(図中下側)に凸型を描くように湾曲した形状である。なお、図1を含め、以下に説明する図面においては、コア基板10が湾曲していることを説明するため、コア基板10に実際に生じる湾曲度合よりも大きく記載している。
【0015】
回路パターン層20は、コア基板10の表面10a上及び裏面10b上に形成された第1回路パターン層21と、第1回路パターン層21上に形成された第2回路パターン層22と、第2回路パターン層22上に形成された第3回路パターン層23とを有する。なお、回路パターン層20は、コア基板10上に少なくとも1層形成されればよく、4層以上形成されてもよい。
【0016】
第1回路パターン層21は、絶縁性のベース絶縁層21aと、ベース絶縁層21a内に埋め込まれた電極回路としての複数の回路パターン21bとを有する。第2回路パターン層22は、絶縁性のベース絶縁層22aと、ベース絶縁層22a内に埋め込まれた電極回路としての複数の回路パターン22bとを有する。第3回路パターン層23は、絶縁性のベース絶縁層23aと、ベース絶縁層23a内に埋め込まれた電極回路としての複数の回路パターン23bとを有する。
【0017】
ベース絶縁層21a、22a、23aは、樹脂材を含むドライフィルム式の層間絶縁材料であり、味の素ファインテクノ株式会社製の味の素ビルドアップフィルム(以下、「ABF」という。)を用いて形成される。本実施形態において、ベース絶縁層21a、22a、23aは、ABFにより構成されるが、ベース絶縁層21a、22a、23aを構成するのはABFに限定されない。ベース絶縁層21a、22a、23aは、各回路パターン層20内において隣り合う回路パターン21b、22b、23b同士を絶縁すると共に、各回路パターン層20間における回路パターン21b、22b、23b同士を絶縁する。ベース絶縁層21a、22a、23aの厚みは、例えば40μm程度である。
【0018】
各回路パターン21b、22b、23bは、例えば銅等の金属で形成される。各回路パターン21b、22b、23bの高さ(回路パターン層の積層方向における高さ)は、例えば15μm〜20μm程度である。各回路パターン21b、22b、23bは、図1に示すように、所定箇所において電気的に接続されている。最外層に位置する第3回路パターン層23の回路パターン23bは、配線基板1の外側に露出している。配線基板1の外側に露出した回路パターン23bは、半導体チップの電極又は印刷配線基板の配線パターンに接続されるものである。また、配線基板1は、コア基板10を表面10aから裏面10bまで貫通し、回路パターン層20に接続する貫通電極を有している。配線基板1は、配線基板1の外側に露出した回路パターン23bが半導体チップの電極又は印刷配線基板の配線パターンに接続され、かつ各回路パターン層20の回路パターン21b、22b、23b同士が所定箇所において電気的に接続されることにより、半導体チップの電極と印刷配線基板の配線パターンとを予め定められたパターンに従って電気的に接続する。
【0019】
次に、実施形態にかかる配線基板の製造方法について説明する。図2は、実施形態にかかる配線基板の製造方法の流れの一部として、各回路パターン層を形成する処理手順を示すフローチャートである。実施形態にかかる配線基板の製造方法は、図2に示すように、ベース絶縁層形成ステップST1と、表裏平坦化ステップST2と、溝形成ステップST3と、金属薄膜形成ステップST4と、金属被覆ステップST5と、回路パターン層形成ステップST6とを備える。配線基板1は、図2に示す処理を繰りかえし実施することにより、第1回路パターン層21、第2回路パターン層22、及び第3回路パターン層23が積層して形成される。以下、コア基板10上に形成される第1回路パターン層21を形成する場合を例にとって、各回路パターン層の形成手順を図面に基づいて説明する。
【0020】
図3は、ベース絶縁層形成ステップST1によりベース絶縁層21aを形成したコア基板10を示す説明図であり、図4は、表裏平坦化ステップST2においてベース絶縁層21aの表面を平坦化する様子を示す説明図であり、図5は、表裏平坦化ステップST2においてベース絶縁層21aの表面を平坦化する様子の他の例を示す説明図であり、図6は、ベース絶縁層21aが平坦化されたコア基板10を示す説明図であり、図7は、溝形成ステップST3においてベース絶縁層21aの表面に複数の溝Rを形成する様子を示す説明図であり、図8は、金属薄膜形成ステップST4によりベース絶縁層21aの表面に金属薄膜21cを形成したコア基板10を示す説明図であり、図9は、金属被覆ステップST5によりベース絶縁層21a上に金属Mが被覆されたコア基板10を示す説明図であり、図10は、回路パターン層形成ステップST6において金属M及びベース絶縁層21aの一部を切削する様子を示す説明図であり、図11は、第1回路パターン層21が形成されたコア基板10を示す説明図である。
【0021】
ベース絶縁層形成ステップST1は、コア基板10の表面10a及び裏面10bにベース絶縁層21aを形成するステップである。ベース絶縁層形成ステップST1では、図3に示すように、コア基板10の表面10a及び裏面10bの双方に味の素ファインテクノ株式会社製のABFを加熱圧着等により固定する。この際、本実施形態のコア基板10は、裏面10b側(図中下側)に凸形状を描くように湾曲しているため、図3に示すように、コア基板10の表面10a及び裏面10bに固定されたベース絶縁層21aのコア基板10とは反対側の表面211aも、コア基板10の形状にあわせて湾曲している。
【0022】
表裏平坦化ステップST2は、コア基板10の表面10a及び裏面10bに形成されたベース絶縁層21aの表面211aをバイト工具31で削り平坦化するステップである。表裏平坦化ステップST2では、図4に示すように、バイト切削装置30の金属製のピンチャック等から形成された保持面32aを有するチャックテーブル32に、コア基板10の表面10a及び裏面10bの一方側のベース絶縁層21aを吸引保持させる。そして、バイト切削装置30のバイトホイール33を回転させ、バイトホイール33を図示しない移動手段により図中下方向に移動させて、バイト工具31とチャックテーブル32とを保持面32aと平行方向に相対移動させて、バイト工具31によってベース絶縁層21aの表面211aを切削して平坦化する。次に、コア基板10の表面10a及び裏面10bの他方側のベース絶縁層21aをチャックテーブル32に吸引保持し、一方側のベース絶縁層21aの表面211aをバイト工具31によって同様に切削して平坦化する。これにより、図6に示すように、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方のベース絶縁層21aの表面を平坦に形成することができる。なお、表裏平坦化ステップST2では、チャックテーブル31に吸引保持される側のベース絶縁層21aの表面に粘着テープ等の保護部材を貼着してもよい。
【0023】
図4に示す例では、ベース絶縁層21aの表面211aをバイト切削装置30のバイト工具31で削り平坦化したが、表裏平坦化ステップST2は、図5に示すように、ベース絶縁層21aの表面211aを研削装置50の研削砥石51で削り平坦化しても良い。ベース絶縁層21aの表面211aを研削装置50の研削砥石51で削り平坦化する場合には、研削装置50の保持面52aを有するチャックテーブル52にベース絶縁層21aを吸引保持し、研削装置50の研削砥石51をベース絶縁層21aに接触させた状態でチャックテーブル52を回転させながら、研削ホイール53を回転させ、研削砥石51によってベース絶縁層21aの表面211aを切削して平坦化する。なお、表裏平坦化ステップST2において研磨装置50を用いる場合にも、チャックテーブル52に吸引保持される側のベース絶縁層21aの表面に粘着テープ等の保護部材を貼着してもよい。
【0024】
また、第1回路パターン層21を形成する際の表裏平坦化ステップST2を実施した後には、配線基板1に図示しない貫通電極を形成するため、レーザー光を用いたアブレーション加工をコア基板10及びベース絶縁層21aに施し、コア基板10自体及びコア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方のベース絶縁層21aを貫通する図示しない貫通孔(スルーホール)を形成する。なお、このアブレーション加工は、後述する溝形成ステップST3において行ってもよい。
【0025】
溝形成ステップST3は、レーザー光線によってベース絶縁層21aに回路パターン21bとなる溝Rを形成するステップである。溝形成ステップST3では、レーザー加工装置40のポーラスセラミック等から形成された保持面41aを有するチャックテーブル41にコア基板10の表面10a及び裏面10bの一方側のベース絶縁層21aを吸引保持させる。そして、図7に示すように、レーザー光線照射部42から、例えばエキシマレーザー光等のレーザー光線Lを予め定められたパターンに従ってベース絶縁層21aの所定範囲に照射させ、ベース絶縁層21aの表面211aに複数の溝Rを形成する。このように、ベース絶縁層21aの所定範囲にレーザー光線Lを照射することで、複数の溝Rをより効率良く形成することができる。また、レーザー加工を用いることで、例えばベース絶縁層21aをフォトエッチング可能な樹脂材料で形成し、フォトエッチングにより溝Rを形成する場合に比べて、複数の溝Rを安価に形成することができる。次に、コア基板10の表面10a及び裏面10bの他方側のベース絶縁層21aをチャックテーブル41に吸引保持し、一方側のベース絶縁層21aの表面211aに同様にレーザー光線Lを照射して複数の溝Rを形成する。なお、溝形成ステップST3においても、チャックテーブル41に吸引保持される側のベース絶縁層21aの表面に粘着テープ等の保護部材を貼着してもよい。
【0026】
金属薄膜形成ステップST4は、ベース絶縁層21aの表面に金属薄膜21cを形成するステップである。金属薄膜形成ステップST4では、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方のベース絶縁層21a上に導電性の金属により構成された金属薄膜21cをスパッタリングによって順次被膜する。これにより、図8に示すように、複数の溝Rの内部を含めて、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方のベース絶縁層21aの表面211a全体に金属薄膜21cが形成される。この際、図示しない貫通電極用の貫通孔の内面にも金属薄膜21cが形成される。なお、金属薄膜21cは、金属材料からなる半田材等をスクリーン印刷やインクジェット方式の印刷によってベース絶縁層21c上に形成するものとしてもよい。
【0027】
金属被覆ステップST5は、金属薄膜21cを電極として、ベース絶縁層21aの表面211aに金属Mをめっき処理により被覆するステップである。金属被覆ステップST5では、溶液内で金属薄膜21cを電極として、ベース絶縁層21aの表面211a上の金属薄膜21c及び図示しない貫通孔の内面の金属薄膜21cに導電性の金属Mを電着させ、図9に示すように、溝R内に金属Mを充填する。この際、図示しない貫通電極用の貫通孔内にも、金属Mが充填される。金属被覆ステップST5では、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方のベース絶縁層21aにめっき処理を順次、または同時に施す。これにより、図9に示すように、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方において、複数の溝Rの内部を含めて、ベース絶縁層21aの表面211aに金属Mが被覆される。
【0028】
回路パターン層形成ステップST6は、ベース絶縁層21aが所定の仕上げ厚さに至るまで金属M及びベース絶縁層21aをバイト工具31で削り、金属の回路パターン21bが露出した平坦な第1回路パターン層21を形成するステップである。回路パターン層形成ステップST6では、図10に示すように、バイト切削装置30の金属製のピンチャック等から形成された保持面32aを有するチャックテーブル32に、コア基板10の表面10a及び裏面10bの一方側のベース絶縁層21a上に被覆された金属Mの表面を吸引保持する。そして、バイト切削装置30のバイトホイール33を回転させ、バイトホイール33とチャックテーブル32とを保持面32aに対して平行方向に相対移動させながら、バイト工具31によって金属Mを切削する。この際、ベース絶縁層21aの表層部分を含めて金属Mを切削する。次に、コア基板10の表面10a及び裏面10bの他方側のベース絶縁層21a上に被覆された金属Mの表面をチャックテーブル32に吸引保持する。そして、一方側のベース絶縁層21aに被覆された金属Mをバイト工具31によって同様に切削する。なお、回路パターン層形成ステップST6においても、チャックテーブル32に吸引保持される側のベース絶縁層21a上に被覆された金属Mの表面に、粘着テープ等の保護部材を貼着してもよい。
【0029】
これにより、図11に示すように、コア基板10の表面10a側及び裏面10b側の双方において、複数の溝Rの内部を除いたベース絶縁層21aの表面上から金属M及び金属薄膜21cが除去される。複数の溝R内に残留した金属M及び金属薄膜21cは、ベース絶縁層21aに埋め込まれた回路パターン21bとなり、ベース絶縁層21aの表面211aにおいて露出する。また、図示しない貫通電極用の貫通孔内に残留した金属M及び金属薄膜21cが貫通電極用の回路パターンとなり、ベース絶縁層21aの表面211aにおいて露出する。また、ベース絶縁層21aの表面211aと回路パターン21bの露出面211bとが平坦(面一)に形成される。すなわち、第1回路パターン層21を平坦に形成することができる。なお、ベース絶縁層21aの表層部分の切削量は、複数の溝Rの内部を除いたベース絶縁層21aの表面211a上から金属M及び金属薄膜21cを除去すると共に、第1回路パターン層21を平坦に形成することさえできれば、できるだけ少ないことが好ましい。それにより、ABFに含まれるシリカフィラーによって、バイト切削装置30のバイト工具31に摩耗やチッピングが発生したり、回路パターン21bの露出面211bに荒れ(スメア)が発生したりすることを抑制することが可能となる。また、回路パターン層形成ステップST6は、表裏平坦化ステップST2と同様に、図5に示す研削装置50を用いて、ベース絶縁層21aが所定の仕上げ厚さに至るまで金属M及びベース絶縁層21aを研削砥石51で削り、金属の回路パターン21bが露出した平坦な第1回路パターン層21を形成するものであってもよい。
【0030】
上記の手順で第1回路パターン層21を形成した後、再びベース絶縁層形成ステップST1から回路パターン層形成ステップST6までの処理を繰り返し実施する。すなわち、第1回路パターン層21上にABFを固定してベース絶縁層22aを形成し(ベース絶縁層形成ステップST1)、バイト切削装置30を用いてベース絶縁層22aを平坦化する(表裏平坦化ステップST2)。次に、レーザー加工装置40を用いてベース絶縁層22a上に複数の溝Rを形成する(溝形成ステップST3)。そして、スパッタリング等によりベース絶縁層22aに金属薄膜を形成し(金属薄膜形成ステップST4)、金属薄膜を電極としてベース絶縁層22aの表面に金属Mをめっき処理により被覆する(金属被覆ステップST5)。さらに、バイト切削装置30を用いて、ベース絶縁層22aの表層部分と共に金属Mをバイト工具31(または研削砥石51)で削り、第2回路パターン22bが露出した平坦な第2回路パターン層22を形成する(回路パターン層形成ステップST6)。これにより、平坦な第1回路パターン層21上に平坦な第2回路パターン層22を形成することができる。また、同様の手順により、平坦な第2回路パターン層22上に平坦な第3回路パターン層23を形成することができる。その結果、図1に示す平坦な回路パターン層20を有する配線基板1を形成することができる。
【0031】
また、図示しない貫通電極用の回路パターン同士を接続する場合を含め、各回路パターン層20間で回路パターン同士を電気的に接続する際には、図2に示す処理手順において、溝形成ステップST3でベース絶縁層に下層側の回路パターンが露出する位置まで達する溝Rを形成する。それにより、金属薄膜形成ステップST4において下層側の回路パターンの露出面上に金属薄膜が形成され、金属被覆ステップST5において当該溝R内に金属Mが充填される。そして、回路パターン層形成ステップST6により、下層側の回路パターンと接続された回路パターンを形成することができる。また、配線基板1の最外層では、回路パターンの中でも、いわゆる電極パッド部のみが表面において露出する。電極パッド部は、配線基板1と、配線基板1に搭載される半導体チップや配線基板1に接続される他の配線基板とを電気的に接続するための部分である。
【0032】
以上説明したように、本実施形態にかかる配線基板の製造方法では、コア基板10の表面10a及び裏面10bに形成されたベース絶縁層21aを平坦化する(表裏平坦化ステップST2)。この結果、本実施形態のコア基板10のようにコア基板10自体が反って(湾曲して)いたり、あるいは、コア基板10の表面10aまたは裏面10bに凹凸があったりしても、後に回路パターン層21となるベース絶縁層21aの表面を平坦にすることができる。また、ベース絶縁層21a上に被覆された金属Mをベース絶縁層21aと共に削ることで、回路パターン21bが露出した第1回路パターン層21を形成するため、第1回路パターン層21の表面をより平坦にすることができる。従って、本実施形態にかかる配線基板の製造方法によれば、搭載される部品の電極との接続をより良好に行うことが可能な、より平坦度が高い配線基板1を得ることが可能となる。
【0033】
また、溝形成ステップST3の後で金属被覆ステップST5の前に、ベース絶縁層21aの表面に金属薄膜21cを被覆し(金属薄膜形成ステップST4)、金属薄膜21cをベース絶縁層21aの表面にめっき処理で金属Mを被覆する際の電極とする。これにより、ベース絶縁層21a上に回路パターン21bとなる金属Mを容易に被覆することができる。
【0034】
また、回路パターン層の上に更に回路パターン層を積層して形成する。すなわち、図2に示す処理手順を繰り返し実施することにより、平坦な第1回路パターン層21上に平坦な第2回路パターン層22を積層して形成し、平坦な第2回路パターン層22上に平坦な第3回路パターン層23を積層して形成する。これにより、各層を積層するごとに平坦度が低下してしまうことを良好に抑制することができる。従って、最外層に位置する第3回路パターン層23の平坦度をより良好に確保して、配線基板1の電極と配線基板1に搭載される部品の電極との接続をより良好に行うことが可能となる。すなわち、本発明は、配線基板1のような多層配線型の配線基板の製造に好適である。また、各回路パターン21b、22b、23bの表面を平坦化することにより、各回路パターン21b、22b、23bの層間距離(電極高さ)を一定とすることができる。この結果、各回路パターン21b、22b、23bにおける抵抗や通信速度の値を一定にすることが可能となる。
【0035】
本実施形態では、ベース絶縁層形成ステップST1においてベース絶縁層21a、22a、23aを味の素ファインテクノ社製のABFを用いて形成し、溝形成ステップST3においてベース絶縁層21a、22a、23aにレーザー光線を照射することにより複数の溝Rを形成するものとしたが、ベース絶縁層21a、22a、23a及び複数の溝Rの形成手法は、これに限られない。図12は、変形例にかかる溝形成ステップST3を実施する様子を示す説明図である。
【0036】
図12に示すコア基板10に形成されるベース絶縁層21aは、フォトエッチング(フォトリソグラフィ)によってパターニング除去可能な感光性の樹脂材料を含む。例えば、ベース絶縁層21aとして、感光性の樹脂材料を含むドライフィルムを用い、ベース絶縁層形成ステップST1において、ドライフィルムを加熱圧着によりコア基板10の表面10a及び裏面10bに固定する。また、ベース絶縁層21aとして、例えば感光性を有する液状樹脂を用い、ベース絶縁層形成ステップST1において、スピンコートにより液状樹脂をコア基板10の表面10a及び裏面10bに滴下し、加熱により固定してもよい。第2回路パターン層22のベース絶縁層22a、第3回路パターン層23のベース絶縁層23aを形成する際も、同様である。
【0037】
そして、図12に示す変形例にかかる溝形成ステップST3では、図中に実線矢印で示すように、複数の溝Rに沿ったパターンPが予め形成されたマスク60を介して、ベース絶縁層21aに光を所定時間に渡って照射する。これにより、マスク60のパターンPに沿ってベース絶縁層21aの露光した箇所の表面側の一部がパターニング除去され、ベース絶縁層21aに複数の溝Rが形成される。なお、ベース絶縁層21aの露光した箇所以外をパターニング除去するようにフォトエッチング(フォトリソグラフィ)を行う場合は、マスク60のパターンPを、複数の溝R以外の部分に沿った形状に形成しておけばよい。第2回路パターン層22のベース絶縁層22a、第3回路パターン層23のベース絶縁層23aに複数の溝Rを形成する際も、同様である。
【0038】
このように、ABFを用いることなく、フォトエッチング(フォトリソグラフィ)によってパターニング除去可能な感光性の樹脂材料でベース絶縁層21a(22a、23a)を形成することにより、回路パターン層形成ステップST6において、シリカフィラーを含むABFを切削することでバイト工具31に摩耗やチッピングが発生したり、回路パターン21bの表面が荒れたりすることを抑制することが可能となる。
【0039】
なお、本実施形態では、コア基板10の表面10a及び裏面10bの双方に回路パターン層20を形成するものとしたが、本発明は、コア基板10の何れか一方の面にのみ回路パターン層20を形成するものにも適用することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 配線基板
10 コア基板
10a 表面
10b 裏面
20 回路パターン層(再配線層)
21 第1回路パターン層
21a、22a、23a ベース絶縁層
21b、22b、23b 回路パターン
211b 露出面
21c 金属薄膜
22 第2回路パターン層
23 第3回路パターン層
30 バイト切削装置
31 バイト工具
32 チャックテーブル
32a 保持面
33 バイトホイール
40 レーザー加工装置
41 チャックテーブル
41a 保持面
42 レーザー光線照射部
50 研削装置
51 切削砥石
52 チャックテーブル
52a 保持面
60 マスク
L レーザー光線
M 金属
R 溝
図1
図2
図3
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図5
図6
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図10
図11
図12