(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、広ダイナミックレンジの画像を得るには、露光量の異なる複数の画像を合成する方法がある。また、露光量の異なる画像を得る方法の一つとして、絞りおよびISO感度の設定を同一にしつつ、露光時間を異ならせる方法がある。この方法では、露光時間が被写体の明るさを基準に設定されたのち、露光量が多いフレームは露光時間を長くし、露光量が少ないフレームは露光時間を短くする。
【0006】
しかしながら、露光時間を被写体の明るさのみを基準にして設定してしまうと、露光を行わないブランク期間が発生してしまう場合がある。このようにブランク期間が発生してしまうと、得られる動画において、フレーム間のつながりが不自然になったり、被写体が移動したり手振れが発生したりした場合には残像が発生してしまう。したがって、ブランク期間をできるだけ短くして、露光量が多いフレームと露光量が少ないフレームを撮像することが望まれている。
【0007】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、ブランク期間を無視できるほどに短くして、フレーム間のつながりを滑らかにし、動体像や手振れによる残像の発生が抑制された動画を取得することができる撮像装置、撮像方法、およびプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の一の態様である撮像装置は、撮像部と、nを2以上の整数とすると、n枚のフレーム間でそれぞれ異なるn個の露光時間を設定する露光時間設定部と、撮像部により連続して撮像される各フレームの露光を制御する露光制御部であって、設定されたn個の露光時間にしたがって連続するn枚のフレームの露光時間をそれぞれ異ならせ、かつフレーム間のブランク期間をn個の露光時間に対して無視できる程度に短く設定して露光させる露光制御部と、露光が制御された撮像部から連続するn枚のフレーム間で露光時間がそれぞれ異なる画像データを取得する画像データ取得部と、取得した画像データのn枚の画像データからダイナミックレンジを拡大した動画記録用または動画表示用の合成フレームを生成する合成フレーム生成部と、を備え、露光時間設定部は、n個の露光時間の合計と、合成フレームのnフレーム分の時間とが一致する前記n個の露光時間をそれぞれ設定する、または、前記n個の露光時間の合計と、合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するn個の露光時間をそれぞれ設定する。
【0009】
本態様によれば、露光時間設定部により、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とが一致するn個の露光時間が設定される。または、本態様によれば、露光時間設定部により、n個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するn個の露光時間が設定される。これにより本態様は、露光制御部により設定されたn個の露光時間にしたがって連続するn枚のフレームの露光時間をそれぞれ異ならせ、かつフレーム間のブランク期間をn個の露光時間に対して無視できる程度に短く設定して露光させることができる。したがって、本態様は、フレーム間のつながりが滑らかで、被写体の移動や手振れに起因する残像の発生が抑制された動画を得ることができる。
【0010】
好ましくは、露光時間設定部は、撮像部で撮像される被写体の明るさに応じて、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させる露光時間の設定と、n個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させる露光時間の設定とを切り替える。
【0011】
本態様によれば、露光時間設定部により、撮像部で撮像される被写体の明るさに応じて、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させ、またはn個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させることを切り替えられる。これにより、本態様は、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させる場合には、暗いシーンでも低感度で撮像することができ、これにより、ノイズが抑制された動画を得ることができる。また本態様は、明るいシーンでも高感度で撮像可能であり、露出連動範囲を広くさせることができる。
【0012】
好ましくは、露光時間設定部は、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(1)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0013】
【数1】
【0014】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための被合成フレームの枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データ取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数であり、各被合成フレームの番号ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
本態様によれば、露光時間設定部は、式(1)に基づいてn個の露光時間が算出するので、適切なn個の露光時間を設定することができる。
【0015】
好ましくは、露光時間設定部は、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(2)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0016】
【数2】
【0017】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データ取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数あり、各被合成フレームの番号ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
本態様によれば、露光時間設定部は、式(2)に基づいて、n個の露光時間を算出するので、より適切なn個の露光時間を設定することができる。
【0018】
好ましくは、露光時間設定部は、記憶部に記憶された露光情報に基づいて、n個の露光時間を設定する。
【0019】
本態様によれば、露光時間設定部により、記憶部に記憶された露光情報に基づいて、n個の露光時間が設定される。これにより、本態様は、予め決められた露光時間に基づいて、露光時間が設定され、合成フレームが生成される。
【0020】
好ましくは、ブランク期間は、撮像部からの画像データの読み出しと新たな画像データの露光開始とのタイムラグである。
【0021】
ここで、タイムラグとは、撮像部からの画像データの読み出しと新たな画像データの露光開始との間の時間を意味する。
【0022】
本発明の他の態様である撮像方法は、nを2以上の整数とすると、n枚のフレーム間でそれぞれ異なるn個の露光時間を設定する露光時間設定ステップと、撮像部により連続して撮像される各フレームの露光を制御する露光制御ステップであって、設定されたn個の露光時間にしたがって連続するn枚のフレームの露光時間をそれぞれ異ならせ、かつフレーム間のブランク期間をn個の露光時間に対して無視できる程度に短く設定して露光させる露光制御ステップと、露光が制御された撮像部から連続するn枚のフレーム間で露光時間がそれぞれ異なる画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得した画像データのn枚の画像データからダイナミックレンジを拡大した動画記録用または動画表示用の合成フレームを生成する合成フレーム生成ステップと、を含み、露光時間設定ステップは、n個の露光時間の合計と、合成フレームのnフレーム分の時間とが一致する前記n個の露光時間をそれぞれ設定する、または、前記n個の露光時間の合計と、合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するn個の露光時間をそれぞれ設定する。
【0023】
好ましくは、露光時間設定ステップは、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(1)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0024】
【数3】
【0025】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための被合成フレームの枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データ取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数であり、各被合成フレームの番号ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
好ましくは、露光時間設定ステップは、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(2)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0026】
【数4】
【0027】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データ取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数あり、各被合成フレームの番号ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
本発明の他の態様である撮像工程をコンピュータに実行させるプログラムは、nを2以上の整数とすると、n枚のフレーム間でそれぞれ異なるn個の露光時間を設定する露光時間設定ステップと、撮像部により連続して撮像される各フレームの露光を制御する露光制御ステップであって、設定されたn個の露光時間にしたがって連続するn枚のフレームの露光時間をそれぞれ異ならせ、かつフレーム間のブランク期間をn個の露光時間に対して無視できる程度に短く設定して露光させる露光制御ステップと、露光が制御された撮像部から連続するn枚のフレーム間で露光時間がそれぞれ異なる画像データを取得する画像データ取得ステップと、取得した画像データのn枚の画像データからダイナミックレンジを拡大した動画記録用または動画表示用の合成フレームを生成する合成フレーム生成ステップと、を含み、露光時間設定ステップは、n個の露光時間の合計と、合成フレームのnフレーム分の時間とが一致する前記n個の露光時間をそれぞれ設定する撮像工程、または、前記n個の露光時間の合計と、合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するn個の露光時間をそれぞれ設定する撮像工程をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、露光時間設定部により、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とが一致するn個の露光時間が設定され、または、露光時間設定部により、n個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するn個の露光時間が設定され、露光制御部により設定されたn個の露光時間にしたがって連続するn枚のフレームの露光時間をそれぞれ異ならせ、かつフレーム間のブランク期間をn個の露光時間に対して無視できる程度に短く設定して露光させることができるので、フレーム間のつながりが滑らかで、被写体の移動や手振れに起因する残像の発生が抑制された動画を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、添付図面にしたがって本発明にかかる撮像装置、撮像方法、およびプログラムの好ましい実施の形態について説明する。
【0031】
図1は、撮像装置1の制御処理系を示すブロック図である。
【0032】
被写体光は、レンズ12、絞り14、及びメカニカルシャッタ20を通過し、撮像素子(撮像部)21によって受光される。レンズ12は、撮像レンズおよび絞り14を含む撮像光学系によって構成される。撮像素子21は、被写体像を受光して撮像信号(画像データ)を生成する素子であり、RGB(赤緑青)等のカラーフィルタと、光学像を電気信号に変換するCCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等のイメージセンサとを有する。撮像素子21から出力される画像データは、プロセス処理部22でAGC(Automatic Gain Control)回路等によってプロセス処理が施され、その後、AD(Analog Digital)変換部23によってアナログ形式の画像データがデジタル形式の画像データに変換される。デジタル化された画像データはメインメモリ24に保存される。
【0033】
メインメモリ24は、画像データを一時的に記憶する領域であり、DRAM(Dynamic Random Access Memory)等によって構成される。AD変換部23から送られてきてメインメモリ24に蓄えられた画像データは、システム制御部25により制御される画像処理部31によって読み出される。
【0034】
画像処理部31は、撮像素子21が生成する画像データを入力画像データとして使用し、ホワイトバランス補正、ガンマ補正処理およびデモザイク処理等の各種の画像処理を行い、画像処理後の画像データを再びメインメモリ24に保存する。
【0035】
また、画像処理部31は、ダイナミックレンジを拡大した合成フレームを生成する。画像処理部31の合成フレームの生成に関しては後で説明する。なお、ダイナミックレンジの拡大処理を行った合成フレームを以下では「広ダイナミックレンジの合成フレーム」と記載する。また、広ダイナミックレンジの合成フレームを構成するフレームを「被合成フレーム」と記載する。
【0036】
画像処理部31において画像処理が施されてメインメモリ24に保存された画像データは、表示制御部35および圧縮伸張部32によって読み出される。表示制御部35は表示部8を制御し、メインメモリ24から読み出した画像データを表示部8に表示させる。このように、撮像素子21から出力され画像処理部31において画像処理を受けた画像データは、撮像確認画像(ポストビュー画像)として表示部8に表示される。
【0037】
一方、圧縮伸張部32は、メインメモリ24から読み出した画像データの圧縮処理を行って、JPEG(Joint Photographic Experts Group)やTIFF(Tagged Image File Format)等の任意の圧縮形式の画像データを作成する。圧縮処理後の画像データは、外部メモリ10へのデータ記憶処理および外部メモリ10からのデータ読み出し処理をコントロールする記憶制御部33によって、外部メモリ10に記憶される。撮像情報は任意のフォーマットで画像データに付加され、例えばExif(Exchangeable image file format)形式を採用可能である。
【0038】
撮像装置1のAF処理機能は、シャッタボタンの第1段階の押下(半押し)があると、半押し時に取り込まれるAFエリアに対応する画像データの高周波成分の絶対値を積算し、この積算した値(AF評価値)をシステム制御部25に出力する。
【0039】
AE検出機能は、シャッタボタンの第1段階の押下(半押し)があると、画面全体に対応するデジタル信号を積算し、または画面中央部と周辺部とで異なる重みづけをした画像データを積算し、その積算値をシステム制御部25に出力する。
【0040】
システム制御部25は、上述のようにメインメモリ24、画像処理部31および記憶制御部33をコントロールするが、撮像装置1における他の各部(AF処理機能、AE検出機能)もコントロールする。
【0041】
システム制御部25は、オート撮影モード時にシャッタボタンが半押しされると、AE検出機能を動作させる。AE検出機能により入力される積算値より被写体輝度(撮像Ev値)を算出し、この撮像Ev値に基づいて絞り駆動部28を介して絞り14の絞り値およびシャッタ速度(メカニカルシャッタ20および/または撮像素子21の電荷蓄積時間)をプログラム線図にしたがって決定する。
【0042】
シャッタボタンが全押しされると、決定した絞り値に基づいて絞り14を制御するとともに、決定したシャッタ速度に基づいてシャッタ駆動部27を介してメカニカルシャッタ20を制御する。なお、撮像素子21の電荷蓄積時間は、センサ駆動部26により制御される。
【0043】
システム制御部25は、オート撮影モード時にシャッタボタンが半押しされると、レンズ駆動部29を介してレンズ12のフォーカスレンズを至近から無限遠側に移動させるとともに、AF処理機能を動作させて各レンズ位置におけるAF評価値をAF処理機能から取得する。そして、AF評価値が最大となる合焦位置をサーチし、その合焦位置にフォーカスレンズを移動させることにより、被写体への焦点調節を行う。システム制御部25は、フォーカスレンズの移動位置に基づいて合焦位置に関する情報を取得する。
【0044】
またシステム制御部25は、シャッタボタン、電源スイッチおよび操作部を含むユーザインタフェース36からの操作信号を取得し、操作信号に応じた各種の処理およびデバイス制御を行う。
【0045】
システム制御部25で行われる各種の処理およびデバイス制御に必要なプログラムやデータ類は、メインメモリ24に記憶されている。システム制御部25は、必要に応じて、制御メモリ30に記憶されているプログラムやデータ類を読み出すことができ、また、新たなプログラムやデータ類を制御メモリ30に保存することができる。
【0046】
次に、本発明の露光時間の設定および露光制御に関して説明する。
図2は、露光時間の設定および露光制御に関連する機能構成例を示すブロック図である。
【0047】
システム制御部25は露光時間設定部101を含む。露光時間設定部101は、合成フレームを生成するための被合成フレームの露光時間をそれぞれ設定する。すなわち、露光時間設定部101は、合成フレームがn枚の被合成フレームからなる場合には、n枚のフレーム間でそれぞれ異なるn個の露光時間を設定する。
【0048】
また、露光時間設定部101は、n個の露光時間の合計と、合成フレームのnフレーム分の時間とが一致するように、n個のフレームの露光時間をそれぞれ設定する。また、露光時間設定部101は、n個の露光時間の合計と、合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するように、n個の露光時間を設定する。ここで、後で説明するが被合成フレーム間には、撮像素子21からの画像データの読み出しと新たな画像データの露光開始とのタイムラグが存在する。
【0049】
シャッタ駆動部27は、撮像素子21における露光制御部103を有する。露光制御部103は、撮像素子21により連続して撮像される各フレームの露光を制御する。
【0050】
図3は、画像処理部31の機能構成例を示すブロック図である。画像処理部31は、画像データ取得部105、合成フレーム生成部107を備える。
【0051】
画像データ取得部105は、露光が制御された撮像部から各フレームの画像データを取得する。具体的には、画像データ取得部105は、撮像素子21から出力された、露光時間が異なる被合成フレームの画像データを1セットとしてメインメモリ24から逐次取得する。
【0052】
合成フレーム生成部107は、取得した被合成フレームのn枚の画像データからダイナミックレンジを拡大した動画記録用または動画表示用の合成フレームを生成する。なお、nは2以上の整数である。
【0053】
図4は、従来の露光時間の設定手法に関して説明する図である。
図4では、縦軸は時間単位あたりの露光量を示し、横軸は時間を示している。
【0054】
広ダイナミックレンジの合成フレームは、被合成フレームである露光量の多いフレーム(フレームA)と露光量の少ないフレーム(フレームB)とで構成される。また、フレームAおよびフレームBの各々は、30fps(frame per second)で撮像されており、すなわち1/30秒毎に取得されている。なお、フレームAおよびフレームBは同じISO感度、同じ絞り値(F値)により取得されており、露光時間を変えることにより、露光量の異なるフレームとされる。
【0055】
フレームAの露光時間は1/30秒に設定されており、フレームBの露光時間は1/30秒より短く設定されている。そうすると、フレームBの撮像のタイミングでブランク期間が発生することになる。ブランク期間とは露光を行わない期間のことをいう。なお、この従来の露光時間の設定手法のブランク期間は、後で説明するタイムラグよりも長く、フレームAおよびフレームBの露光時間に対して無視できない程度の期間である。
【0056】
フレームBの撮像後にブランク期間が発生するので、合成フレーム1、合成フレーム2、合成フレーム3、合成フレーム4のつながりが不自然となる。また、合成フレーム2および合成フレーム4においては、被合成フレームのフレームAおよびフレームBとの間にブランク期間が発生してしまうので、動体像や手振れによる残像が発生してしまう。
【0057】
<第1の実施形態>
次に、本発明の第1の実施形態に関して説明する。
【0058】
図5は、本実施形態の合成フレームを構成する被合成フレームの露光に関して説明する図である。なお、
図5は、
図4と同様に、縦軸は時間単位あたりの露光量を示し、横軸は時間を示している。
【0059】
本実施形態では、合成フレームをn枚の被合成フレームで構成する場合には、露光時間設定部101は、撮像部で撮像される被写体の明るさに応じて、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させるように各フレームの露光時間を設定する。具体的には、合成フレームを構成する2枚のフレームAおよびフレームBの露光時間は、2/30秒の期間にブランク期間を実質的に設けないように設定される。このように、フレームAおよびフレームBの露光時間を設定することにより、ブランク期間をフレームAおよびフレームBの露光時間に対して無視できる程度に短くすることができる。すなわち、露光が行われない時間をタイムラグだけにすることができる。また、ブランク期間を実質的に設けないとは、例えば後で説明するタイムラグH以外のブランク期間が設けられていない場合をいう。
【0060】
図6は、
図5に示した被合成フレームの露光のタイミングチャートである。
【0061】
図6(A)は動画撮像のタイミング(fps)が示されており、
図6(B)は電子シャッタ開始パルスのタイミングが示されおり、
図6(C)は読み出し開始パルスのタイミングが示されおり、
図6(D)にはフレームA(SS_1)およびフレームB(SS_2)の露光時間が示されている。
【0062】
動画撮像の時間は、予め設定されていたりユーザが設定することができる。例えば、動画は30fpsや60fpsで撮像される。
図6に示す場合では30fpsで2枚の被合成フレームを撮像するので、
図6(A)には(1/30)×2秒のタイミングが示されている。
【0063】
図6(B)および
図6(C)に示されている電子シャッター開始パルスと読み出し開始パルスは、露光制御部103により出力される。具体的には、露光時間設定部101で設定された露光時間SS_1および露光時間SS_2に合わせて、電子シャッター開始パルスと読み出し開始パルスを出力する。
【0064】
ここで、
図6に示されているタイムラグHに関して説明する。タイムラグHは、読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグである。タイムラグHは、露光時間SS_1や露光時間SS_2に対して無視できる程度に短い。例えばタイムラグHは、ブランク期間を最小にする際の必要最低限のクロック数に相当する期間であり、実際の時間にすると10マイクロ秒程度である。またタイムラグHは、フレームレートに対して0.1%以下の期間である。したがって、タイムラグHは、フレームAおよびフレームBの露光時間に対して、無視できる程度に短い。
【0065】
露光時間設定部101は、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(1)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0067】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための被合成フレームの枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データを取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数であり、各被合成フレームの番号
ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
具体的には、30fpsで動画を撮像し、2枚のフレームで広ダイナミックレンジの合成フレームを生成し、2枚のフレームの露光差は1Ev、Hが0に近い場合を考えると、フレームAの露光時間SS_1とフレームBの露光時間SS_2とは以下のように算出される。
【0069】
上述のように算出された露光時間SS_1と露光時間SS_2とを加算すると、2/30秒となり動画の撮像30fpsにおける2フレーム分の期間になる。
【0070】
次に、本発明の撮像工程に関して説明する。
図7は、撮像装置1の動作を示すフロー図である。
【0071】
露光時間設定部101は、合成フレームを構成するフレームAおよびBの露光時間を設定する(ステップS10:露光時間設定ステップ)。フレームAおよびフレームBの露光時間は、上述の式(1)を用いて、それぞれSS_1およびSS2_と設定される。
【0072】
その後、露光制御部103により、露光時間設定部101で設定された露光時間に基づいて露光が制御される(ステップS11:露光制御ステップ)。具体的には、露光制御部103は、先ず電子シャッター開始パルスを出力し、撮像素子21にフレームAの露光を開始させる。その後、露光時間SS_1を経過したのちに、露光制御部103は読み出し開始パルスを出力して、フレームAの画像データの読み出しを開始させる。次に、露光制御部103は、タイムラグHの期間後に電子シャッター開始パルスを出力して、撮像素子21にフレームBの露光を開始させる。その後、露光時間SS_2を経過したのちに、露光制御部103は読み出し開始パルスを出力して、フレームBの画像データの読み出しを開始させる。
【0073】
その後、画像データ取得部105は、フレームAおよびフレームBの画像データを取得する(ステップS12:画像データ取得ステップ)。次に、合成フレーム生成部107は、取得したフレームAおよびフレームBの画像データにより、合成フレームを生成する(ステップS13:合成フレーム生成ステップ)。
【0074】
以上、説明したように本実施形態では、露光時間設定部101により、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とが一致するn個の露光時間が設定され、その露光時間に応じたフレームの画像データが取得される。これにより、ブランク期間をn個の露光時間に対して無視できるほど短く設定することができ、フレーム間のつながりが滑らかで、被写体の移動や手振れに起因する残像の発生が抑制された動画を得ることができる。また、本実施形態では、後述する第2の実施形態で決定される露光時間よりも長く露光時間が設定されるので、暗いシーンであっても低感度で撮像することができ、ノイズが抑制された動画を得ることができる。
【0075】
上記実施形態において、各種の処理を実行する処理部(processing unit)のハードウェア的な構造は、次に示すような各種のプロセッサ(processor)である。各種のプロセッサには、ソフトウェア(プログラム)を実行して各種の処理部として機能する汎用的なプロセッサであるCPU(Central Processing Unit)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などの製造後に回路構成を変更可能なプロセッサであるプログラマブルロジックデバイス(Programmable Logic Device:PLD)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)などの特定の処理を実行させるために専用に設計された回路構成を有するプロセッサである専用電気回路などが含まれる。
【0076】
1つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの1つで構成されていてもよいし、同種または異種の2つ以上のプロセッサ(例えば、複数のFPGA、あるいはCPUとFPGAの組み合わせ)で構成されてもよい。また、複数の処理部を1つのプロセッサで構成してもよい。複数の処理部を1つのプロセッサで構成する例としては、第1に、クライアントやサーバなどのコンピュータに代表されるように、1つ以上のCPUとソフトウェアの組合せで1つのプロセッサを構成し、このプロセッサが複数の処理部として機能する形態がある。第2に、システムオンチップ(System On Chip:SoC)などに代表されるように、複数の処理部を含むシステム全体の機能を1つのIC(Integrated Circuit)チップで実現するプロセッサを使用する形態がある。このように、各種の処理部は、ハードウェア的な構造として、上記各種のプロセッサを1つ以上用いて構成される。
【0077】
さらに、これらの各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子などの回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0078】
上述の各構成および機能は、任意のハードウェア、ソフトウェア、或いは両者の組み合わせによって適宜実現可能である。例えば、上述の処理ステップ(処理手順)をコンピュータに実行させるプログラム、そのようなプログラムを記録したコンピュータ読み取り可能な記録媒体(非一時的記録媒体)、或いはそのようなプログラムをインストール可能なコンピュータに対しても本発明を適用することが可能である。
【0079】
<第2の実施形態>
次に、本発明の第2の実施形態に関して説明する。本実施形態は、被合成フレームの合計の露光時間が動画撮像の1フレーム分の時間に一致するように設定される。
【0080】
図8は、本実施形態の被合成フレームの露光に関して説明する図である。なお、
図8は、
図4と同様に、縦軸は時間単位あたりの露光量を示し、横軸は時間を示している。
【0081】
本実施形態では、合成フレームをn枚の被合成フレームで構成する場合には、露光時間設定部101は、撮像部で撮像される被写体の明るさに応じて、n個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させるように露光時間を設定する。具体的には、合成フレームを構成する2枚のフレームAおよびフレームBの露光時間は、1/30秒の期間にブランク期間を実質的に設けないように設定される。
【0082】
図9は、
図8に示した被合成フレームの露光のタイミングチャートである。
図9(A)―(D)には、
図6と同様の事項が示されている。
【0083】
図9に示す場合では30fpsで動画が撮像される場合が示されている。
【0084】
露光時間設定部101は、n個の露光時間を算出する場合であってn個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させる場合には、以下の式(2)に基づいて、n個の露光時間を算出する。
【0086】
t:動画1フレーム辺りの秒数
n:合成フレームを取得するための枚数
H:読み出し開始パルスと電子シャッター開始パルスとの間に必要なタイムラグ
SS_i:各画像データ取得するための露光時間
i:1からnまでの自然数あり、各被合成フレームの番号ΔEv_i:最も明るい被合成フレームに対する露出差
具体的には、30fpsで動画を撮像し、2枚の被合成フレームで合成フレームを生成し、2枚のフレームの露光差は1Ev、Hが0に近い場合を考えると、フレームAの露光時間SS_1とフレームBの露光時間SS_2とは以下のように算出される。
【0088】
上述のように算出された露光時間SS_1と露光時間SS_2とを加算すると、1/30秒となり動画の撮像30fpsにおける1フレーム分の期間になる。
【0089】
以上、説明したように本実施形態では、露光時間設定部101により、n個の被合成フレームの露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とが一致するように露光時間が設定される。そして、その露光時間に応じたフレームの画像データが取得される。これにより、ブランク期間をn個の露光時間に対して無視できるほど短く設定することができ、フレーム間のつながりが滑らかで、被写体の移動や手振れに起因する残像の発生が抑制された動画を得ることができる。また、本実施形態では、第1の実施形態での露光時間よりも短いために明るいシーンであっても高感度で撮像することが可能であり、露出連動範囲を広くすることができる。
【0090】
<第3の実施形態>
次に、本発明の第3の実施形態に関して説明する。本実施形態では、第1の露光時間決定方式(第1の実施形態)における露光時間の設定と第2の露光時間決定方式(第2の実施形態)における露光時間の設定とを切り替える。具体的には、露光時間設定部101は、撮像部で撮像される被写体の明るさに応じて、n個の露光時間の合計と合成フレームのnフレーム分の時間とを一致させるような露光時間の設定と、n個の露光時間の合計と合成フレームの1フレーム分の時間とを一致させるような露光時間の設定を切り替えて使用する。
【0091】
図10は、本実施形態の撮像装置1の動作を示すフロー図である。
【0092】
露光時間設定部101は、第1の露光時間決定方式により露光時間SS1_nを取得する(ステップS20)。次に、露光時間設定部101は、シーンの明るさと露光時間(SS1_n)と目標露出からISO感度(Sv1)と絞り値(Av1)とを取得する(ステップS21)。露光時間設定部101は、例えば、予め撮像装置1に記憶されている露光時間、ISO感度、および絞り値の関係を示したパラメータに沿って、ISO感度(Sv1)と絞り値(Av1)とを取得する。
【0093】
次に、露光時間設定部101は、取得したISO感度(Sv1)がカメラの低感度限界より小さいか否かを判定する(ステップS22)。
【0094】
露光時間設定部101は、ISO感度(Sv1)が撮像装置1の低感度限界より小さいと判定した場合には、次に取得した絞り値(Av1)が撮像装置1の小絞り限界よりも大きいか否かを判定する(ステップS23)。
【0095】
取得した絞り値(Av1)が撮像装置1の小絞り限界よりも大きい場合には、露光制御部103は、露光時間SS1_n、Sv1、Av1で撮像を行わせる(ステップS24)。そして、画像データ取得部105は、第1の露光時間決定方式で設定された露光時間で露光されたn枚の露出の違う画像データを取得し、合成フレーム生成部107は、合成フレームを生成する(ステップS25)。
【0096】
一方で、露光時間設定部101は、取得したISO感度(Sv1)がカメラの低感度限界よりも小さい場合、または取得した絞り値(Av1)が撮像装置1の小絞り限界よりも小さい場合には、第2の露光時間決定方式で露光時間SS2_nを取得する(ステップS26)。次に、露光時間設定部101は、シーンの明るさと露光時間(SS2_n)と目標露出からISO感度(Sv2)と絞り値(Av2)とを取得する(ステップS27)。その後、露光制御部103は、露光時間SS2_n、Sv2、Av2で撮像を行わせる(ステップS28)。そして、画像データ取得部105は、第2の露光時間決定方式で設定された露光時間で露光されたn枚の露出の違う画像データを取得し、合成フレーム生成部107は、合成フレームを生成する(ステップS25)。なお、上述の動作を行う場合には撮像装置1は絞り固定、ISO感度は自動で設定される。
【0097】
このように、本実施形態では被写体の明るさに応じて、第1の露光時間決定方式と第2の露光時間決定方式とで露光時間が決定される。第1の露光時間決定方式で露光時間が決定されると、第2の露光時間決定方式で決定される露光時間に比べて長くなり、被写体が暗いシーンでも低感度で撮像することができる。これにより、ノイズが抑制された動画を得ることができる。一方、第2の露光時間決定方式で露光時間が決定されると、明るいシーンでも高感度で撮像可能であり、露出連動範囲を広くさせることができる。
【0098】
<その他>
なお、上記では、露光時間設定部101が被合成フレームの露光時間を算出する例に関して説明したが、これに限定されるものではない。例えば露光時間設定部101は、記憶部(制御メモリ30)に記憶された露光情報に基づいて、n個の露光時間を設定する。ここで露光情報とは、被合成フレームの露光時間を決定するための情報である。具体的には、露光情報は、動画撮像のフレームレート(fps)および被合成フレームの枚数に基づいて、予め決められている露光時間が導出することができる情報である。
【0099】
以上で本発明の例に関して説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の精神を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であることは言うまでもない。