(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
第1の面と第2の面とを有する第1の基板と、前記第1の面上に設けられた酸化インジウムスズからなる第1の透明導電膜と前記第1の透明導電膜上に設けられた酸化ケイ素と酸化スズとを含む第2の透明導電膜との積層膜と、前記第2の面上に設けられたカラーフィルタとを備えるカラーフィルタ基板と、
第2の基板と、前記第2の基板の一方の面に設けられた感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路とを備える対向基板と、
前記カラーフィルタ基板の第2の面と前記対向基板の前記一方の面とが対向するように配置された基板間に挟持され、前記液晶駆動用電子回路に駆動制御される液晶と
を具備する液晶パネル。
一方の面にカラーフィルタが設けられた基板の他方の面上に、酸化インジウムスズからなるターゲットを用い、酸素分圧が0.0225〜0.0325Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で、第1の透明導電膜を成膜し、
前記第1の透明導電膜上に、ケイ素と酸化スズからなるターゲットを用い、酸素分圧が1.3〜2.7Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で、第2の透明導電膜を成膜する
透明導電膜付き基板の製造方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、酸化インジウムスズを主材料としケイ素を含む導電膜は、その表面で酸化インジウムスズが露出するため、耐候性や耐薬品性に問題があり、経時劣化が生じやすい。
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、経時劣化の少ない透明導電膜付き基板、液晶パネル及び透明導電膜付き基板を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る透明導電膜付き基板は、基板と、第1の透明導電膜と、第2の透明導電膜を具備する。
上記基板は、第1の面と第2の面を有する。
上記第1の透明導電膜は、上記第1の面上に設けられ、酸化インジウムスズからなる。
上記第2の透明導電膜は、上記第1の透明導電膜上に設けられ、酸化ケイ素と酸化スズとを含む。
【0008】
本発明のこのような透明導電膜付き基板は、第1の透明導電膜上に第2の透明導電膜が設けられているので、第1の透明導電膜(ITO膜)と第2の透明導電膜(ST膜)とからなる積層膜のシート抵抗の経時変化が少ない。これは、ITO膜単層の場合は、ITO膜から酸素が抜け出してしまうためシート抵抗の経時変化が著しいのに対し、ITO膜とST膜との積層膜の場合は、ITO膜表面での酸素の抜け(酸化物の還元)をST膜によって抑制でき、その結果、積層膜のシート抵抗の経時変化を少なくすることができるものと考えられる。
尚、第1の透明導電膜(ITO膜)は酸化インジウムスズからなるが、これは、酸化インジウムスズを主成分とし、ターゲットの製造過程において混入された微量なAlやZr等の元素が含まれたものも含み、本発明の効果が得られればよい。
【0009】
上記透明導電膜付き基板であって、上記第1の透明導電膜と上記第2の透明導電膜との積層膜のシート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□、波長550nmにおける透過率が95%以上であってもよい。このような透明導電膜付き基板をインセル型の液晶パネルに用いることにより、タッチ操作時のタッチ感知を可能としつつ、積層膜によって透明導電膜付き基板側の帯電を防止することができ、安定したタッチパネル機能及び表示特性を有する液晶パネルが得られる。
【0010】
上記透明導電膜付き基板であって、上記第2の面上にはカラーフィルタが設けられていてもよい。このように、例えば液晶パネル等に用いられるカラーフィルタ基板に適用でき、これを液晶パネルに用いた場合、カラーフィルタへの帯電を積層膜によって防止することができ、帯電による誤動作を防止できる。
【0011】
上記透明導電膜付き基板であって、上記第1の透明導電膜は10nm以上20nm以下の膜厚を有し、上記第2の透明導電膜は20nm以上55nm以下の膜厚を有し、上記第2の透明導電膜の屈折率は1.6〜1.8であってもよい。このような構成とすることにより高透過率を保持し、所望のシート抵抗を示す、シート抵抗の経時変化が少ない、第1の透明導電膜と第2の透明導電膜との積層膜が得られる。
【0012】
第1の透明導電膜の膜厚が10nmよりも薄いとシート抵抗が高すぎてしまい、20nmよりも厚いと積層膜としたときに透過率が低くなる。また、第2の透明導電膜の膜厚が20nmよりも薄いと、第1の透明導電膜表面の酸素の抜けを抑制するというバリア機能が十分に得られず、55nmよりも厚いと積層膜としたときに透過率が低くなる。また、ST膜の屈折率を1.6〜1.8とすることにより高透過率の積層膜が得られる。
【0013】
本発明の一形態に係る液晶パネルは、カラーフィルタ基板と、対向基板と、液晶とを具備する。
上記カラーフィルタ基板は、第1の面と第2の面とを有する第1の基板と、上記第1の面上に設けられた酸化インジウムスズからなる第1の透明導電膜と上記第1の透明導電膜上に設けられた酸化ケイ素と酸化スズとを含む第2の透明導電膜との積層膜と、上記第2の面上に設けられたカラーフィルタとを備える。
上記対向基板は、第2の基板と、上記第2の基板の一方の面に設けられた感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路とを備える。
上記液晶は、上記カラーフィルタ基板の第2の面と上記対向基板の上記一方の面とが対向するように配置された基板間に挟持され、上記液晶駆動用電子回路に駆動制御される。
【0014】
本発明のこのような液晶パネルは、積層膜によってカラーフィルタの帯電が防止されるので、帯電による誤動作がない。そして、この積層膜は、第1の透明導電膜(ITO膜)上に第2の透明導電膜(ST膜)が形成されて構成されているので、ITO膜表面での酸素の抜け(酸化物の還元)をST膜が抑制し、その結果、積層膜のシート抵抗の経時変化を少なくすることができる。したがって、タッチ感知機能の経時変化が少ない、信頼性の高い液晶パネルを得ることができる。
【0015】
上記液晶パネルであって、上記第1の透明導電膜と上記第2の透明導電膜との積層膜のシート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□、波長550nmにおける透過率が95%以上であってもよい。これにより、タッチ操作時のタッチ感知を可能としつつ帯電防止の効果を得ることができ、安定した表示特性を有する液晶パネルが得られる
【0016】
上記液晶パネルであって、上記第1の透明導電膜は10nm以上20nm以下の膜厚を有し、上記第2の透明導電膜は20nm以上55nm以下の膜厚を有し、上記第2の透明導電膜の屈折率は1.6〜1.8であってもよい。
【0017】
このような構成とすることにより高透過率を保持し、所望のシート抵抗を得つつ、シート抵抗の経時変化が少ない、第1の透明導電膜と第2の透明導電膜との積層膜が得られる。第1の透明導電膜の膜厚が10nmよりも薄いとシート抵抗が高すぎてしまい、20nmよりも厚いと積層膜としたときに透過率が低くなる。また、第2の透明導電膜の膜厚が20nmよりも薄いと、第1の透明導電膜からの酸素の抜けを抑制するというバリア機能が十分に得られず、55nmよりも厚いと積層膜としたときに透過率が低くなる。第2の透明導電膜の屈折率を1.6〜1.8とすることにより透過率の低下を防止することができる。
【0018】
本発明の一形態に係る透明導電膜付き基板の製造方法は、第1の透明導電膜を成膜し、第2の透明導電膜を成膜する。
上記第1の透明導電膜の成膜は、一方の面にカラーフィルタが設けられた基板の他方の面上に、酸化インジウムスズからなるターゲットを用い、酸素分圧が0.0225〜0.0325Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で成膜する。
上記第2の透明導電膜の成膜は、上記第1の透明導電膜上に、ケイ素と酸化スズからなるターゲットを用い、酸素分圧が1.3〜2.7Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で成膜する。
【0019】
このような雰囲気下で第1の透明導電膜を成膜することにより、所望の1×10
7〜1×10
10Ω/□という高抵抗のシート抵抗を得るために、酸素が膜中に多く取り込まれた第1の透明導電膜を得ることができる。そして、第2の透明導電膜が第1の透明導電膜上に形成されることにより、第1の透明導電膜表面での酸素の抜け(酸化物の還元)を抑制でき、第1の透明導電膜と第2の透明導電膜との積層膜のシート抵抗の経時変化の少ない透明導電膜付き基板が得られる。
【0020】
また、上述した酸素分圧の混合ガス雰囲気下で第2の透明導電膜を成膜することにより、所望の屈折率の第2の透明導電膜を成膜することができる。
【0021】
上記透明導電膜付き基板の製造方法であって、上記第1の透明導電膜の成膜及び上記第2の透明導電膜の成膜は60℃以下で行われてもよい。このように60℃以下で成膜されるので、基板にカラーフィルタが形成されていても、カラーフィルタを劣化させることなく、第1の透明導電膜及び第2の透明導電膜を成膜することができる。
【発明の効果】
【0022】
以上述べたように、本発明によれば、帯電防止膜として、経時劣化の少ない、ITO膜と(第1の透明導電膜)とST膜(第2の透明導電膜)の積層膜を得ることができ、長期にわたって動作特性が安定した、透明導電膜付き基板、液晶パネル及び透明導電膜付き基板を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
本実施形態では、FFS方式を採用したインセル型のタッチパネル機能付きの液晶パネルを例に挙げて説明するが、これに限定されない。例えばIPS方式の液晶パネルにも適用でき、液晶パネルを構成する一対の基板のうち、一方の基板に液晶駆動用電子回路及び感知センサ用電極が設けられ、他方の基板には電極は形成されずカラーフィルタが形成される構成のものに適用可能である。
【0025】
[液晶パネル]
図1は、本発明の一実施形態に係る液晶パネル1を概略的に示す断面図である。
図1に示すように、液晶パネル1は、所定の間隙をおいて配置された透明導電膜付き基板としてのカラーフィルタ基板10と、対向基板20と、液晶40と、カラーフィルタ基板10及び対向基板20を挟むように設けられた一対の偏光板50及び51と、カラーフィルタ基板10側に設けられたカバーガラス60を具備する。
【0026】
液晶パネル1は、画像を表示する機能とタッチパネル機能とを有する
【0027】
図1に示すように、対向基板20側にはバックライトが配置される。カラーフィルタ基板10側にはカバーガラス60が配置され、カバーガラス60の表面を指70などでタッチしてタッチ操作が行われる。また、カバーガラス60側が表示画面となる。
【0028】
カラーフィルタ基板10は、第1のガラス基板11と、カラーフィルタ15と、帯電防止膜14を備える。
【0029】
第1のガラス基板11は、第1の面11aと第2の面11bを有する。
【0030】
カラーフィルタ15は、第1のガラス基板11の第2の面11b上に形成される。カラーフィルタ15は、黒色樹脂などで格子状に形成されたブラックマトリクスと、ブラックマトリクスの開口部を埋めるように例えばストライプ状に形成された赤色着色層、緑色着色層、青色着色層とからなる。カラーフィルタ15上には図示しない配向膜が形成されている。
【0031】
格子状のブラックマトリックスにより形成される開口部はサブ画素に対応し、1つの画素は、赤色サブ画素、緑色サブ画素及び青色サブ画素の3つのサブ画素によって構成される。
【0032】
透明導電膜としての帯電防止膜14は、第1のガラス基板11の第1の面11a上に設けられている。帯電防止膜14は、酸化インジウムスズ(ITO)からなる第1の透明導電膜としてのITO膜12と、酸化ケイ素と酸化スズとを含む第2の透明導電膜としてのST膜13との積層膜である。帯電防止膜14を構成するITO膜12はガラス基板11の第1の面11a上に形成され、ST膜13はITO膜12上に形成される。
【0033】
帯電防止膜14は、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□、波長550nmにおける透過率が95%以上である膜であり、帯電したカラーフィルタ15の電荷を除電しカラーフィルタ15の帯電を防止するものである。このように帯電防止膜14のシート抵抗を設定することにより、帯電防止膜14は除電機能を持ちつつ、タッチ操作時のタッチ感知が可能となる。
【0034】
本実施形態においては、帯電防止膜14をITO膜12とST膜13との積層膜により構成している。ITO膜単体で帯電防止膜を構成する場合、時間の経過によりITO膜のシート抵抗が低くなっていき、タッチ感知機能が劣化してしまう。これは、ITO膜に含まれる酸素が抜けていくためにシート抵抗が低くなっていくためと考えられる。これに対し、本実施形態においては、ITO膜12上にST膜13を積層することにより、シート抵抗の経時変化が少ない帯電防止膜14を得ることができた。これは、ST膜13がITO膜12表面からの酸素の抜け(酸化物の還元)を抑制し、還元防止膜として機能しているためと考えられる。
【0035】
ITO膜12は10〜20nmの膜厚であることが望ましい。10nmよりも薄い膜厚であると成膜直後のシート抵抗が所望の抵抗値よりも高くなってしまい、帯電防止膜14としたときに十分な除電機能を持たせることができない。また、20nmよりも厚い膜厚であると、ST膜13を積層して帯電防止膜14としたときに透過率が低くなってしまう。
【0036】
ST膜13は20〜55nmの膜厚であることが望ましい。20nmよりも薄いと、ITO膜12からの酸素の抜けを抑制するというバリア機能を十分に得ることができない。また、55nmよりも厚い膜厚であると透過率が低くなってしまう。また、ST膜13の屈折率は1.6〜1.8であることが望ましく、このように屈折率を設定することにより透過率の高い帯電防止膜14を得ることができる。
【0037】
このように、ST膜13はITO膜12の表面からの酸素抜けを抑制するバリア機能として機能する。ST膜13は透明で導電性があり、また成膜時に導入する酸素の割合により屈折率を調整でき、更に低い屈折率を得やすい膜のため、帯電防止膜14が所望の特性を得るように調整しやすく、ITO膜12に積層する膜として最適である。
【0038】
対向基板20は、第2のガラス基板21と、感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路を備える層22を備える。
【0039】
第2のガラス基板21は、第1の面21aと第2の面21bを有する。感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路を備える層22は、第2のガラス基板21の一方の面である第2の面21b上に形成されている。また、感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路を備える層22上には図示しない配向膜が形成されている。
【0040】
液晶駆動用電子回路は、液晶40を駆動するものである。感知センサ用電極は、感知センサの一部を構成し、カバーガラス60表面上でのタッチ操作を感知するものである。
【0041】
感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路を備える層22は、画素電極と、TFT(Thin Film Transistor)と、ゲートラインと、信号ラインと、共通電極と、共通電極駆動用ラインと、感知センサ用駆動ラインと、感知センサ用検出ラインとを有する。
【0042】
液晶駆動用電子回路は、画素電極と、TFT(Thin Film Transistor)と、ゲートラインと、信号ラインと、共通電極と、共通電極駆動用ラインからなる。これら液晶駆動用電子回路は、液晶パネルに電気的に接続する図示しない駆動回路基板に設けられる駆動制御回路によって駆動制御される。
【0043】
感知センサ用電極は、感知センサ用駆動ラインと、感知センサ用検出ラインと、共通電極からなる。感知センサは、これら感知センサ用電極とタッチ位置検出制御回路とからなり、タッチ位置検出制御回路は液晶パネルに電気的に接続する図示しない駆動回路基板に設けられる。感知センサを設けることにより、液晶パネルはタッチパネル機能を備える。液晶駆動用に用いられる共通電極は感知センサ用電極としても機能する。
【0044】
このように対向基板20には、液晶パネル1の表示画面に表示する画像を生成する液晶駆動用電子回路と、液晶パネル1の表面上の指70やタッチペン等の器具によるタッチを感知する感知センサの一部が設けられている。
【0045】
第2のガラス基板21の水平面をXY平面とすると、ゲートラインと信号ラインとは層間絶縁膜を介してそれぞれX方向、Y方向に設けられ、その交差部毎にTFT及び櫛歯状の画素電極が設けられる。TFTを構成するゲート電極はゲートラインと電気的に接続され、TFTを構成するソース、ドレインはそれぞれ信号ラインと画素電極に電気的に接続される。
【0046】
共通電極は、1画素毎に対応して島状に複数形成される。TFT、共通電極、画素電極は、それぞれガラス基板21側からTFT、層間絶縁膜、共通電極、層間絶縁膜、画素電極の順に積層された構成となっている。
【0047】
共通駆動用ラインは、共通電極と電気的に接続し、信号ライン、ソース及びドレインと同じ層で形成される。
【0048】
感知センサ用駆動ラインは、ゲート電極及びゲートラインと同じ層でX方向に複数形成される。感知センサ用駆動ラインは、一部の共通電極と電気的に接続し、感知センサ用駆動電極に接続された共通電極は、感知センサの駆動電極として機能する。感知センサ用駆動電極は、図示しないタッチ位置検出制御回路に接続されており、このタッチ位置検出制御回路は、タッチ位置検出用の駆動信号を出力する。
【0049】
感知センサ用検出ラインは、ソース及び信号ラインと同じ層でY方向に複数形成される。感知センサ用検出ラインは、感知センサ用駆動ラインと電気的に接続していない他の共通電極と電気的に接続し、感知センサ用検出ラインに接続された共通電極は、感知センサの検出電極として機能する。感知センサ用駆動ラインは、図示しないタッチ位置検出制御回路に接続されており、このタッチ位置検出制御回路は、感知センサ用検出ラインから送られてきた検出信号を受信する。そして、受信した検出信号を解析することによってタッチ位置の座標を算出する。
【0050】
液晶パネル1において、表示段階では、液晶駆動用電子回路により横電界が形成されて液晶40が駆動し、液晶パネル1に画像を表示させる。
そして、タッチ段階では、指が表示面に近づくことにより、感知センサの駆動電極と検出電極との間の容量が減少するので、この容量の変化を感知センサにて検出することにより指のタッチ位置を特定する。
【0051】
液晶40は、カラーフィルタ基板10と対向基板20との間に挟持される。2枚の基板の間隙は、スペーサ41によって保持される。2枚の基板10及び20は、カラーフィルタ基板10のカラーフィルタ15が形成されているガラス基板11の第2の面11bと、対向基板20の感知センサ用電極及び液晶駆動用電子回路を備える層22が設けられたガラス基板21の第2の面21bが対向するように配置される。液晶40は、液晶駆動用電子回路によって駆動が制御される。
【0052】
カバーガラス60は、図示しない粘着層によって偏光板50と接着固定される。
【0053】
本実施形態における液晶パネル1は、カラーフィルタ基板10に所定の範囲の高抵抗シートの帯電防止膜14が設けられているので、タッチ操作時のタッチ感知が可能で、カラーフィルタ15の帯電を防止することができ、安定した表示特性を有する液晶パネル1を得ることができる。
【0054】
更に、帯電防止膜14は、ITO膜12とST膜13の積層膜から構成されているので、ST膜13がITO膜12表面からの酸素の抜けを抑制し、帯電防止膜14のシート抵抗の経時変化を少なくすることができる。したがって、タッチパネル機能の劣化が抑制され、安定したタッチパネル機能を有する液晶パネルが得られる。
【0055】
[帯電防止膜の評価]
次に、上述したカラーフィルタ基板に成膜される帯電防止膜の評価結果について説明する。以下、
図2〜
図6を用いて説明するが、いずれのサンプル基板においても、ITO膜、ST膜は次の条件で成膜した膜を用いている。
【0056】
ITO膜は、10重量%酸化スズ(SnO
2)を添加した酸化インジウムスズ(ITO)からなるターゲットを用い、DCスパッタで、基板温度60℃で、酸素分圧が0.025Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で成膜した。
【0057】
ST膜は、ケイ素(Si)が12at%、スズ(Sn)が88at%のターゲットを用い、DCスパッタで、基板温度60℃で、酸素分圧が2.5Paのアルゴンと酸素の混合ガス雰囲気下で成膜した。
【0058】
また、帯電防止膜の評価はシート抵抗を測定することにより行った。サンプル基板上の透明導電膜のシート抵抗の測定は接触式抵抗測定装置により行い、針状のプローブを膜表面に接触させて測定を行った。積層膜の測定においては、積層膜の膜表面、すなわちST膜表面にプローブを接触させて測定した。
【0059】
以下、図を用いて順に評価結果について説明する。
【0060】
図2は、ガラス基板に、ITO膜単層(膜厚10nm)、ST膜単層(膜厚45nm、60nmの2種類)、本実施形態に係るITO膜とST膜の積層膜(ITO膜10nm、ST膜20nm)をそれぞれ形成したサンプル基板のシート抵抗の経時変化を示す。評価は、大気中、常温放置で行った。
【0061】
横電界方式のインセル型タッチパネル機能付き液晶パネルの帯電防止膜としては、除電機能を保持しつつ、タッチ感知を可能とするために、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□のものが望まれる。図中、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□の領域を点線で囲んでいる。
【0062】
図2に示すように、ITO膜単層では、成膜時は所望のシート抵抗を示すものの、時間経過に伴って著しくシート抵抗がさがっている。尚、ITO膜単層では、膜厚に関係なく、時間経過に伴ってシート抵抗がさがっていく傾向にある。
【0063】
ST膜単層では、時間経過に伴ってゆるやかではあるがシート抵抗が高くなっていく傾向にあり、所望のシート抵抗値の範囲からはずれてしまう。
【0064】
一方、ITO膜とST膜との積層膜においては、成膜から12時間後にシート抵抗が若干低くなるものの、それ以降はほぼ横ばい状態となり、成膜直後からシート抵抗はほとんど変化していない。
このように、ITO膜上にST膜を形成することにより、シート抵抗の経時変化を少なくすることができる。
【0065】
次に
図3を用いて、ITO膜とST膜との積層からなる帯電防止膜を、ガラス基板上に形成した場合と、カラーフィルタ基板上に形成した場合を比較する。
【0066】
図3に、ガラス基板に本発明に係る帯電防止膜を形成したサンプル基板と、カラーフィルタ基板のカラーフィルタが形成されていない面に帯電防止膜を形成したサンプル基板の、大気中で常温放置した場合のシート抵抗の経時変化を示す。更に、
図3に、ガラス基板に帯電防止膜を形成したサンプル基板と、カラーフィルタ基板に帯電防止膜を形成したサンプル基板を、60℃、湿度90%の高温多湿環境下で120時間放置した場合のシート抵抗値を示す。
【0067】
横電界方式のインセル型タッチパネル機能付き液晶パネルの帯電防止膜としては、除電機能を保持しつつ、タッチ感知を可能とするために、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□のものが望まれる。図中、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□の領域は2本の太い横線に挟まれた領域に相当する。
【0068】
いずれのサンプル基板も、帯電防止膜として、ITO膜10nmとST膜20nmの積層膜を用いた。
【0069】
図3に示すように、大気中、常温放置の場合、帯電防止膜を形成する基板がガラス基板でもカラーフィルタ基板でも、帯電防止膜のシート抵抗の経時変化はほとんどなく、帯電防止膜に求められるシート抵抗値の範囲内におさまっていた。
【0070】
また、高温高湿環境下に120時間放置した場合においても、ガラス基板でもカラーフィルタ基板でも、帯電防止膜のシート抵抗は帯電防止膜に求められるシート抵抗値の範囲内におさまっていた。
【0071】
このように、カラーフィルタ基板に帯電防止膜を形成する場合においても、シート抵抗の経時変化が少ない帯電防止膜が得られることが確認された。
【0072】
図4〜
図6は、ITO膜とST膜それぞれの膜厚を変えてガラス基板上に帯電防止膜を成膜して作製したサンプル基板の、帯電防止膜のシート抵抗の経時変化を示す。図中、シート抵抗が1×10
7〜1×10
10Ω/□の領域は2本の太い横線に挟まれた領域に相当する。
【0073】
図4は、ST膜の厚みを55nm、ITO膜の厚みを5nm、10nm、20nmとして成膜した帯電防止膜のシート抵抗の経時変化を示す。
【0074】
図4に示すように、ITO膜が5nmの帯電防止膜のシート抵抗値は、成膜直後から帯電防止膜に求められるシート抵抗値の範囲外にあり、60時間経過後においても所望のシート抵抗値の範囲外であった。これに対し、ITO膜の厚みが10nm、20nmの帯電防止膜のシート抵抗値は、時間が経っても所望のシート抵抗値の範囲内にあった。
【0075】
図5は、ST膜の厚みを20nm、ITO膜の厚みを5nm、10nm、20nmとして成膜した帯電防止膜のシート抵抗の経時変化を示す。
【0076】
図5に示すように、ITO膜が5nmの帯電防止膜のシート抵抗値は、成膜直後から帯電防止膜に求められるシート抵抗値の範囲外にあり、60時間経過後においても所望のシート抵抗値の範囲外であった。これに対し、ITO膜の厚みが10nm、20nmの帯電防止膜のシート抵抗値は、時間が経っても所望のシート抵抗値の範囲内にあった。
【0077】
図6は、ST膜の厚みを10nm、ITO膜の厚みを5nm、10nm、20nmとして成膜した帯電防止膜のシート抵抗の経時変化を示す。
【0078】
図6に示すように、ITO膜が5nm、10nmの帯電防止膜のシート抵抗値は、成膜直後から帯電防止膜に求められるシート抵抗値の範囲外にあり、60時間経過後においても所望のシート抵抗値の範囲外であった。また、ITO膜の厚みが20nmの帯電防止膜においては、シート抵抗値は、時間が経っても所望のシート抵抗値の範囲内にあるものの、所望のシート抵抗値範囲の上限に近いシート抵抗を示している。
【0079】
図4〜
図6に示す結果より、ST膜の膜厚に係らず、ITO膜は10nm以上の膜厚が必要であり、これよりも薄いと所望のシート抵抗値よりも高いシート抵抗値となってしまう。
また、ST膜の膜厚が20〜55nmの範囲であれば、膜厚が10〜20nmのITO膜との積層膜のシート抵抗値は、所望のシート抵抗値の範囲内となる。
【0080】
したがって、帯電防止膜に求められるシート抵抗及び透過率、酸素抜けを防止するバリア機能を得るために、帯電防止膜を構成するITO膜及びST膜は次のような膜厚とすることが望ましい。
【0081】
ITO膜は10〜20nmの膜厚であることが望ましい。10nmよりも薄い膜厚であると成膜直後のシート抵抗が、所望の抵抗値よりも高くなってしまい、十分な除電機能を持たせることができない。また、20nmよりも厚い膜厚であると、ST膜を積層して帯電防止膜としたときに透過率が低くなってしまう。
【0082】
ST膜は20〜55nmの膜厚であることが望ましい。20nmよりも薄いと、ITO膜からの酸素の抜けを抑制するというバリア機能を十分に得ることができない。また、55nmよりも厚い膜厚であるとST膜単体での透過率が低くなってしまう。また、ST膜の屈折率は1.6〜1.8であることが望ましく、屈折率は、成膜時に導入する酸素の割合により調整することができる。屈折率の低い膜とすることにより高透過率の帯電防止膜を実現することができる。
【0083】
[カラーフィルタ基板の製造方法]
次に、上述の液晶パネル1を構成するカラーフィルタ基板10の製造方法について説明する。
【0084】
まず、ブラックマトリクス、赤色着色層、緑色着色層及び青色着色層からなるカラーフィルタが一方の面(第2の面)に形成されたカラーフィルタ基板を準備する。
【0085】
次に、カラーフィルタ基板のカラーフィルタが形成されていない他方の面(第1の面)に、ITO膜を成膜する。
ITO膜は、10重量%酸化スズ(SnO
2)を添加した酸化インジウムスズ(ITO)からなるターゲットを用い、マグネトロン方式のDCスパッタリング装置で、基板温度60℃、スパッタガスにアルゴンと酸素の混合ガスを用いて、10nmの膜厚に成膜した。アルゴンと酸素の混合ガスは、アルゴン流量を100sccm、酸素流量を5sccmの、酸素分圧が0.025Paの混合ガスを用いた。
尚、本実施形態においては、ITO膜成膜用のターゲットとして酸化スズの添加量が10重量%のものを用いたが、これに限定されない。例えば5〜10重量%のものを用いることもでき、好適なITO膜の膜厚範囲にあまり影響がない。
【0086】
本実施形態においては、所望の範囲の高シート抵抗のITO膜を得るためにスパッタガスの酸素流量を多くして成膜をしている。スパッタガスとして、酸素分圧が0.0225〜0.0325Paのアルゴンと酸素の混合ガスを用いることができ、これにより所望の範囲の高シート抵抗のITO膜が得られる。
【0087】
次に、ITO膜上にST膜を成膜する。
ST膜は、Siが12at%、SnOが88at%のターゲットを用い、マグネトロン方式のDCスパッタリング装置で、基板温度60℃で、スパッタガスにアルゴンと酸素の混合ガスを用いて、20nmの膜厚に成膜した。アルゴンと酸素の混合ガスは、アルゴン流量を30sccm、酸素流量を500sccmの、酸素分圧が2.5Paの混合ガスを用いた。
尚、本実施形態においては、ST膜成膜用のターゲットとしてSiが12at%のターゲットを用いたが、これに限定されず、30at%程度まで選択可能である。Siが32at%のターゲットを用いた場合でも、同様の効果が得られた。
【0088】
本実施形態においては、所望の範囲の高シート抵抗を示し、かつ、屈折率が1.6〜1.8となるST膜を得るためにスパッタガスの酸素流量を調整して成膜をしている。スパッタガスとして、酸素分圧が1.3〜2.7Paのアルゴンと酸素の混合ガスを用いることができ、これにより所望の範囲の高シート抵抗かつ屈折率のST膜が得られる。
【0089】
上述のITO膜及びST膜の成膜においては、60℃という温度条件下で成膜を行っている。これにより、耐熱性の低いカラーフィルタの劣化を防止することができる。
【0090】
以上により、ITO膜とST膜の積層膜からなる透明導電膜としての帯電防止膜が形成されたカラーフィルタ基板が製造される。
【0091】
本実施形態で得られた帯電防止膜は、
図5に示すように、シート抵抗が、成膜直後では5.73×10
9Ω/□、12時間後では2.3×10
9Ω/□、60時間後では1.85×10
9Ω/□であり、シート抵抗の経時変化が少なかった。
【0092】
ここで、本実施形態においては、帯電防止膜としてITO膜とST膜との積層膜を用いているが、帯電防止膜をSiO
2が添加されたITOをターゲットとして成膜した単層膜により構成することが考えられる。しかしながら、このようなITOにSiを添加してなる膜においては、ITOが膜表面に露出するので耐候性や耐薬品性に問題がある。また、ターゲットの成分がそのまま成膜成分に反映されるので、帯電防止膜の抵抗値や透過率等の調整が困難である。
【0093】
これに対し、本実施形態においては、帯電防止膜としてITO膜とST膜との積層膜を採用しているので、ITO膜が露出することがない。また、既存のターゲットを用いてITO膜及びST膜を成膜することができるので、製造が容易である。
【0094】
上述の実施形態においては、カラーフィルタ基板に帯電防止膜としてITO膜とST膜との積層膜を形成したが、あらかじめカラーフィルタ基板と対向基板とを貼り合わせ、液晶を注入してなる液晶パネルの状態に、本発明の帯電防止膜を形成してもよい。この場合においても、カラーフィルタ基板に帯電防止膜を形成する場合と同じ成膜条件下で帯電防止膜を形成することができる。
【0095】
以上のように、本実施形態においては、帯電防止膜としてITO膜とST膜との積層膜を用いることにより、シート抵抗の経時変化の少ない帯電防止膜を得ることができる。したがって、このような帯電防止膜を備えたインセル型の静電容量型のタッチパネル機能を備えた液晶パネルは、タッチ感度の劣化がなく、また帯電による誤動作のない、動作信頼性の高いものとなる。