特許第6779995号(P6779995)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6779995現場発泡体を製造するためのシステムおよび方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6779995
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】現場発泡体を製造するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/30 20060101AFI20201026BHJP
   C08L 101/02 20060101ALI20201026BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20201026BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20201026BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20201026BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20201026BHJP
【FI】
   C08J9/30CER
   C08L101/02
   C08K3/013
   C08K3/04
   C08L83/04
   C08K5/5419
【請求項の数】19
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2018-520087(P2018-520087)
(86)(22)【出願日】2016年10月6日
(65)【公表番号】特表2018-532856(P2018-532856A)
(43)【公表日】2018年11月8日
(86)【国際出願番号】EP2016073917
(87)【国際公開番号】WO2017067792
(87)【国際公開日】20170427
【審査請求日】2019年10月7日
(31)【優先権主張番号】15190531.2
(32)【優先日】2015年10月20日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】ダニエラ ロンゴ−シェーデル
(72)【発明者】
【氏名】ハンス−ヨアヒム ヘーンレ
(72)【発明者】
【氏名】レベッカ フォン ベンテン
(72)【発明者】
【氏名】フランク ロイター
【審査官】 大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】 特表2015−529272(JP,A)
【文献】 特表2013−508524(JP,A)
【文献】 特開昭63−314228(JP,A)
【文献】 特開昭52−039760(JP,A)
【文献】 特表平03−503059(JP,A)
【文献】 特開2008−239729(JP,A)
【文献】 特開2008−239730(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00− 9/42
B29C 44/00−44/60;67/20
C08K 3/00−13/08
C08L 1/00−101/14
C08G 18/00−18/87
C08G 71/00−71/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1以上の無機充填材A) 50〜98質量%、
1以上のカチオン性または両性ポリマーB) 1〜48質量%、
1以上の界面活性剤C) 0.5〜48質量%、
前記ポリマーB)と反応可能な1以上の架橋剤D) 0.01〜5質量%、
シリコーン、シリコナート、および炭素から選択される1以上の気泡調節剤E) 0.5〜10質量%、
1以上の添加物F) 0〜20質量%
の成分を含み、前記成分A)〜F)の質量百分率は、無水の割合を基準とし、かつA)〜F)の合計は、100質量%となる、現場発泡体を製造するための系。
【請求項2】
気泡調節剤E)として、アルカリアルキルシリコナートを含むことを特徴とする、請求項1記載の系。
【請求項3】
前記ポリマーB)は、pH7で標準条件下(20℃、101.3kPa)で、少なくとも5質量%の水中での溶解度を有することを特徴とする、請求項1または2記載の系。
【請求項4】
カチオン性ポリマーB)として、ポリビニルアミンまたはポリ(ビニルアミン−ビニルホルムアミド)コポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の系。
【請求項5】
両性ポリマーB)として、ビニルアミン、ビニルホルムアミドおよびアクリル酸ナトリウムの単位からなるターポリマーを含むことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の系。
【請求項6】
無機充填材A)として、アミノ基、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基で表面変性された硫酸カルシウム、アミノ基、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基で表面変性されたケイ酸アルミニウムまたはこれらの混合物を使用することを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の系。
【請求項7】
界面活性剤C)として、天然タンパク質原料を基礎とする少なくとも1つの界面活性剤を含むことを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の系。
【請求項8】
架橋剤D)として、ジアルデヒドを含むことを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の系。
【請求項9】
前記成分B)〜D)を水溶液の形で使用することを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の系。
【請求項10】
請求項1からまでのいずれか1項記載の系の成分の使用下で、かつガスまたはガス混合物を用いて泡立てながら、現場発泡体を製造する方法。
【請求項11】
(a) 少なくとも成分C)を含む水溶液または懸濁液中にガスまたはガス混合物を導入すること、
(b) 1以上の混合要素を介して前記水溶液または懸濁液を泡立てること、
(c) 前記成分A)、B)、D)、E)およびF)を、一緒にまたは別個に、工程(b)の前または後で、1以上の混合要素を介して添加すること、
(d) 5質量%未満の含水率に乾燥すること
の工程を含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程(a)では、圧縮空気を100〜2000kPaの範囲内の圧力で導入することを特徴とする、請求項11記載の方法。
【請求項13】
最後の混合要素中の前記水溶液または懸濁液は、5〜50質量%の範囲内の固体含有率を有することを特徴とする、請求項11または12記載の方法。
【請求項14】
請求項10から13までのいずれか1項記載の方法により得られる現場発泡体。
【請求項15】
10〜50kg/m3の範囲内の密度を有することを特徴とする、請求項14記載の現場発泡体。
【請求項16】
DIN 51900パート3により決定して3.0MJ/kg未満の燃焼熱を有することを特徴とする、請求項14または15記載の現場発泡体。
【請求項17】
断熱のための、請求項14から16までのいずれか1項記載の現場発泡体の使用。
【請求項18】
空洞部および中空体を充填するための、請求項14から16までのいずれか1項記載の現場発泡体の使用。
【請求項19】
防火壁または防火壁の一部としての、請求項14から16までのいずれか1項記載の現場発泡体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現場発泡体を製造するためのシステムおよび方法、ならびにその使用に関する。
【0002】
ウレタン、硬化可能なアミノプラスト縮合体またはフェノール樹脂を基礎とする現場発泡体は、以前から公知である。この現場発泡体は可燃性でありかつ乾燥時に収縮することが欠点である。DE 25 42 471は、収縮および可燃性を低下させる、オルトホウ酸および多価アルコールまたは多価アルコールのポリアルキレングリコールエーテルからなる反応生成物の存在で、硬化可能なアミノプラスト縮合体から低収縮性発泡材を製造する方法を記載している。
【0003】
WO 2011/051170は、良好な断熱特性および遮音特性を有する弾性の無機−有機ハイブリッド発泡材の製造方法を記載している。この発泡材は、石膏またはカオリン、ポリビニルアミン水溶液、発泡剤としての揮発性有機化合物、乳化剤および架橋剤からなる混合物を発泡させることにより得られる。使用した発泡剤に基づき、空洞部の面一の発泡充填は不可能である。
【0004】
WO 2009/109537は、アルカリケイ酸塩、界面活性剤および水性ポリマー分散液を含む水性組成物からなる攪拌フォームまたは発泡フォームを硬化させることによる、高い耐火性および低い密度を有する発泡材の製造方法を記載している。ポリマー分散液の乾燥による皮膜形成は、現場発泡体としての用途のためには遅すぎる。
【0005】
特開平11−279318号公報(JP-A 11-279318)は、リン酸水溶液と場合により無機充填材とをNCO基含有ウレタンプレポリマーと炭酸カルシウムとの混合物と加圧下で混合することにより得られる、ポリウレタンを基礎とする耐火性吹付発泡体を記載している。
【0006】
独国特許発明第19912988号明細書(DE 199 12 988 C1)からは、充填材を含む、ポリウレタンを基礎とする発泡材、およびその断熱材および絶縁材ならびに防火発泡体としての適性が公知である。
【0007】
WO 2008/007187は、良好な断熱特性および遮音特性、透過性および防火性、ならびにコンクリートに対する良好な付着を示す、ポリウレタンおよび無機充填材を基礎とするハイブリッド発泡材を記載している。
【0008】
ポリウレタンを基礎とする現場発泡体をほぼ閉鎖された空洞部の充填のために使用する場合、成分の反応の際のCO2の形成は、空洞部内で、内壁を破裂させるほど高い圧力形成を引き起こすことがある。
【0009】
WO 2014/044604は、
1以上の無機充填材A) 50〜98質量%、
1以上の水溶性カチオン性ポリマーB) 1〜48質量%、
1以上の界面活性剤C) 0.5〜48質量%、
ポリマーB)と反応可能な1以上の架橋剤D) 0.01〜5質量%、
1以上の添加物E) 0〜20質量%、
の成分を含み、成分A)〜E)の質量百分率は、無水の割合を基準にし、かつA)〜E)の合計は100質量%となる、現場発泡体を製造する系、ならびにこの系の成分の使用下でかつガスまたはガス混合物を用いて泡立てながら現場発泡体を製造する方法、ならびに空洞部または中空体を断熱および充填するための使用を記載している。この現場発泡体の熱伝導率は、いくつかの断熱用途のためにはまだ高すぎる。
【0010】
本発明の課題は、上述の欠点を除去し、かつ微細気泡の均質なフォーム構造および乾燥した状態でも湿分調整された状態でも低下された熱伝導率を有する、低密度の現場発泡体を製造するための系および方法を提供することであった。
【0011】
前記課題は、
1以上の無機充填材A) 50〜98質量%、好ましくは85〜95質量%、
1以上のカチオン性または両性ポリマーB) 1〜48質量%、好ましくは2〜10質量%、
1以上の界面活性剤C) 0.5〜48質量%、好ましくは1〜10質量%、
ポリマーB)と反応可能な1以上の架橋剤D) 0.01〜5質量%、好ましくは0.1〜1質量%、
シリコーン、シリコナート、または炭素から選択される1以上の気泡調節剤E) 0.5〜10質量%、好ましくは1〜5質量%、
1以上の添加物F) 0〜20質量%、好ましくは1〜10質量%、
の成分を含み、これらの成分A)〜F)の質量百分率は、固体もしくは無水の割合を基準とし、かつA)〜F)の合計は、100質量%となる、現場発泡体を製造するための系により解決された。
【0012】
成分A)
成分A)として、この系は、1以上の無機充填材、ことに鉱物、例えばコロイド状ケイ酸、ケイ酸塩、例えばケイ酸アルミニウム、ことにカオリンAl23・2SiO3・2H2OまたはカオリナイトAl4[(OH)8Si410]、硫酸塩、例えば硫酸カルシウム、ことに含水硫酸塩Ca[SO4]・nH2O[式中、n=1/2、2(石膏)]、またはそれらの混合物を含む。特に好ましくは、硫酸カルシウム、煙道ガス脱硫プラントからのREA石膏、ケイ酸アルミニウム、ことにカオリンまたはこれらの混合物を使用する。
【0013】
成分Aは、乾燥時の現場発泡体のわずかな収縮を重要視する場合に、好ましくは表面変性された鉱物として使用される。表面官能化は、好ましくは、アミノ基、カルボキシル基および/またはヒドロキシル基による変性である。
【0014】
成分A)の平均粒子直径は、好ましくは0.1〜10μmの範囲にある。成分A)の見掛け密度は、好ましくは2〜3kg/m3の範囲にあり、嵩密度は0.3〜2kg/m3の範囲にある。
【0015】
成分B)
成分B)として、この系は、1以上のカチオン性または両性ポリマーを含む。第一級または第二級アミノ基を有するポリマーが好ましい。ポリマーB)は、一般に水溶性であり、つまり水中での溶解度は、pH7で標準条件下(20℃、101.3kPa)で、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも8質量%である。両性ポリマーの場合には、pH依存性の溶解度が存在する。組成に応じて、ポリマーは多様なpH範囲で水溶性である。6を越えるpH値、特に好ましくは7.5〜12のpH範囲で可溶性であるポリマーが好ましい。ポリマーB)は、一般に、水溶液の形で、好ましくは少なくとも50g/l、ことに少なくとも80g/lの濃度で使用される。
【0016】
カチオン性ポリマーBの例は、ビニルアミン、アリルアミン、エチレンイミン、ビニルイミダゾール、N−アルキルアミノエチルアクリラート、N−アルキルアミノエチルメタクリラート、N−アルキルアミノプロピルアクリルアミド、N−アルキルアミノプロピルアクリルアミドから選択される1以上の構造単位を含むポリマーである。
【0017】
同様に、第一級または第二級アミノ基を有するポリマー、およびサッカリドのような再生可能原料を基礎とするポリマー、例えばキトサンも適用可能である。
【0018】
ことに、WO 2010/145956に記載されたビニルアミド単位を含む重合体、または重合によりこの重合体に組み込まれたN−ビニルホルムアミドから、アミノ基の形成下でのホルミル基の引き続く部分的または完全な脱離により得られた共重合体が適している。
【0019】

【化1】
[式中、R1、R2=HまたはC1〜C6−アルキルを意味する]の少なくとも1つのモノマーの重合により得られるポリマーの完全なまたは部分的な加水分解により得られるポリマーが好ましい。式(I)の好ましいモノマーは、N−ビニルホルムアミド、N−ビニル−N−メチルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルアセトアミド、N−ビニル−N−エチルアセトアミド、N−ビニル−N−メチルプロピオンアミド、およびN−ビニルプロピオンアミドである。
【0020】
特に、ポリビニルアミンまたはポリ(ビニルアミン−ビニルホルムアミド)コポリマーが好ましい。
【0021】
カチオン性または両性ポリマーB(対イオンなし)の電荷密度は、原則として、1〜23meq/gの範囲内、好ましくは2〜14meq/gの範囲内、特に好ましくは3〜11meq/gの範囲内にある。質量平均分子量は、通常では、50,000〜8,000,000の範囲内、好ましくは100 000〜5 000 000の範囲内、特に好ましくは200,000〜3,000,000の範囲内にある。特に、Lupamin(登録商標)の商標で販売されているポリビニルアミンおよびそのコポリマーが好ましい。例えば、Lupamin(登録商標)9030、Lupamin(登録商標)9050、Lupamin(登録商標)9095である。
【0022】
両性ポリマーB)を使用する場合、ことに湿分調整後に、特に低い熱伝導率を有する現場発泡体を得ることができる。適切な両性ポリマーは、例えばWO 2004/087818およびWO 2005/012637に記載されている。ビニルアミンおよびビニルホルムアミド、またはビニルアミンおよび不飽和カルボン酸/カルボン酸塩の単位からなるコポリマー、ならびにビニルアミン、ビニルホルムアミドおよび不飽和カルボン酸/カルボン酸塩の単位からなるターポリマーが好ましい。特に、ビニルアミンおよびアクリル酸ナトリウムからなるコポリマー、ならびにビニルアミン、ビニルホルムアミドおよびアクリル酸ナトリウムからなるターポリマーが好ましい。例示的に、例えばXELOREX(登録商標)F 3000を挙げることができる。
【0023】
成分C)
成分C)として、この系は、発泡体の形成および安定化のために使用される1以上の界面活性剤を含む。界面活性剤として、アニオン性、カチオン性、非イオン性、または両性界面活性剤を使用することができる。
【0024】
適切なアニオン性界面活性剤は、ジフェニレンオキシドスルホナート、アルカンスルホナートおよびアルキルベンゼンスルホナート、アルキルナフタレンスルホナート、オレフィンスルホナート、アルキルエーテルスルホナート、アルキルスルファート、アルキルエーテルスルファート、アルファ−スルホ脂肪酸エステル、アシルアミノアルカンスルホナート、アシルイセチオナート、アルキルエーテルカルボキシラート、N−アシルサルコシナート、アルキルホスファートおよびアルキルエーテルホスファートである。非イオン性界面活性剤として、アルキルフェノールポリグリコールエーテル、脂肪アルコールポリグリコールエーテル、脂肪酸ポリグリコールエーテル、脂肪酸アルカノールアミド、EO/PO−ブロックコポリマー、アミンオキシド、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタンエステルおよびアルキルポリグルコシドを使用することができる。カチオン性界面活性剤として、アルキルトリアンモニウム塩、アルキルベンジルジメチルアンモニウム塩、およびアルキルピリジニウム塩が使用される。
【0025】
特に好ましくは、アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤との混合物を使用する。
【0026】
低い密度を達成するために、好ましくは、天然タンパク質原料を基礎とする界面活性剤、特に好ましくは耐アルコール性タンパク質起泡剤を使用する。この種の界面活性剤混合物は、例えば、Dr. Sthamer、ハンブルクのSchaumgeist(登録商標)系列の製品として市場で入手可能である。
【0027】
成分D)
成分D)として、この系は、成分B)と反応することができる1以上の架橋剤D)を含む。好ましくは、架橋剤として、官能基としてアルデヒド、ケトン、イソシアナート、エポキシド、アクリラート、アクリルアミド、エステルまたはビニルスルホナートを有する少なくとも二官能性化合物が使用される。二官能性または多官能性アルデヒドが好ましく、特にエタンジアールが好ましい。
【0028】
成分E)
成分E)として、この系は、1以上の気泡調節剤を含む。気泡調節剤は、均質で微細気泡の気泡構造を提供し、かつ乾燥した状態で現場発泡体の低い熱伝導率を提供する。気泡調節剤として、例示的に、例えばEvonik Indunstries社のTegostab(登録商標)系列の製品として提供されているようなシリコーンまたはシリコナート、または例えばWacker Chemie社のSilRes(登録商標)系列の製品として提供されているようなシリコナートが適していて、この場合、好ましくはアルキルシリコナートが用いられる。
【0029】
成分E)として、炭素、ことに黒鉛として変性されている状態の炭素も適している。炭素は、現場発泡体の製造のための系中で気泡調節剤として作用し、かつ本発明の場合に、無機充填材(成分A)として使用されない。1〜50μm、ことに2.5〜12μmの平均粒子サイズを有する黒鉛が好ましい。嵩密度は、好ましくは100〜500g/lの範囲内にある。比表面積は、好ましくは5〜20m2/gの範囲内にある。例えば、天然黒鉛または粉砕された合成黒鉛を使用することができる。
【0030】
成分F)
成分F)として、この系は、成分A)〜E)とは異なる1以上の添加物を含むことができる。添加物として、ことに、収縮または吸水を低下させる加工技術的利点をもたらす化合物が挙げられる。
【0031】
収縮の低下のために、例えばジメチルジヒドロキシエチル尿素、または例えばソルビトールのような糖誘導体を使用することができる。
【0032】
吸水は、例えば、自己架橋性スチレン−アクリラート分散液により低下させることができる。
【0033】
改善された発泡性のために、粘度に影響を及ぼす添加物、例えばデンプン、変性セルロース、グアー種子粉、ポリビニルアルコール、または官能化されたアルキルジオキシシランもしくはアルキルトリオキシシラン、例えば3−アミノプロピルトリエトキシシランを添加することができる。
【0034】
この系は、例えば低沸点のC4〜C8−炭化水素、アルコール、エーテル、ケトン、およびエステルのような易揮発性有機発泡剤を含まない。
【0035】
良好な防火性のために、現場発泡体中の有機成分の割合をできるだけ低くすることが好ましい。好ましくは、この現場発泡体がDIN 4102による燃焼試験B1に合格しかつ50mmの厚みで耐火性F30、および100mmの厚みで耐火性F60を有する程、有機成分の割合が低い系が使用される。したがって、成分B)、C)、D)、E)およびF)の固形分(無水の割合)の合計は、現場発泡体を基準として、好ましくは2〜20質量%の範囲内、特に好ましくは5〜15質量%の範囲内にある。
【0036】
本発明の主題は、この系の上記の成分A)〜F)の使用下で、かつガスまたはガス混合物を用いて泡立てながら現場発泡体を製造する方法でもある。
【0037】
現場発泡体は、成分A)〜F)からなる水性組成物を、加圧下でかつスタティックミキサを用いた攪拌または剪断のような機械的力の作用下で、ガスまたはガス混合物を用いて混合および泡立てることにより得ることができる。水性組成物を、不活性ガスを微細な気泡の形で分散させることにより泡立てることも可能である。水性組成物中への気泡の導入は、衝撃装置、振盪装置、攪拌装置、ホイップステータ装置またはロータ装置を用いて行うことができる。好ましくは、ステータおよび/またはロータ要素を備えた混合機を使用する。
【0038】
ガスまたはガス混合物として、好ましくは、不活性ガス、例えば窒素、アルゴン、二酸化炭素、または酸素が使用される。特に好ましくは、空気が使用される。
【0039】
好ましくは、この方法は、
(a) 少なくとも成分C)および好ましくはD)を含む水溶液または懸濁液中にガスまたはガス混合物を導入すること、
(b) 1以上の混合要素を介して水溶液または懸濁液を泡立てること、
(c) A)、B)、E)およびF)を、一緒にまたは別個に、1以上の混合要素を介して発泡系に供給すること、
(d) 5質量%未満の含水率に乾燥すること
の工程を含む。
【0040】
工程(a)では、好ましくは圧縮空気を10〜3000kPaの範囲内、好ましくは100〜2000kPaの範囲内の圧力で導入する。
【0041】
成分A)〜F)の混合は、一緒にまたは個別に、1以上の混合要素を介して行うことができる。好ましくは、この系の成分B)およびD)、もしくはこれらの成分を含む予備混合物を別個に貯蔵し、かつ現場発泡体を製造する現場で初めて混合する。好ましくは、装置の多様な供給箇所を介して導入が行われる。
【0042】
現場発泡体は、現場発泡体用の市販の発泡装置中で製造することができる。現場発泡体(フォーム)を製造するために適した装置は、図1〜4の図面に図式的に示されている。
【図面の簡単な説明】
【0043】
図1】3つの供給装置(Dos1、Dos2およびDos3)を備えた3つのスタティックミキサ(SM1、SM2およびSM3)からなる装置。
図2】成分A)〜F)からなる水性組成物を添加するための供給装置(Dos1)を備えた1つだけのスタティックミキサ(SM1)からなる装置。
図3】付加的供給装置(Dos2)を備えた図2による装置に対応する装置。
図4】2つの供給装置(Dos1およびDos2)を備えた2つのスタティックミキサ(SM1およびSM2)からなる装置。
【0044】
図1による装置は、3つの供給装置(Dos1、Dos2およびDos3)を備えた3つのスタティックミキサ(SM1、SM2およびSM3)からなる。好ましくは、成分C)およびD)場合によりE)およびガスまたはガス混合物を、供給装置(Dos1)を介して、成分A)、B)およびE)を一緒に、供給装置(Dos2)を介して、および成分F)を、供給装置(Dos3)を介して添加する。
【0045】
図2による装置は、成分A)〜F)からなる水性組成物を添加するための供給装置(Dos1)を備えた1つだけのスタティックミキサ(SM1)からなる。
【0046】
図3による装置は、付加的供給装置(Dos2)を備えた図2による装置に対応する。ここでは、成分A)〜E)を一緒に供給装置Dos1を介して添加することができ、かつ、これとは別に成分F)を供給装置Dos2を介して添加することができる。
【0047】
図4による装置は、図1による装置の簡略化された形である。この装置は、2つの供給装置(Dos1およびDos2)を備えた2つのスタティックミキサ(SM1およびSM2)からなる。好ましくは、成分C)、D)、および場合により1以上の成分E)、およびガスまたはガス混合物を供給装置(Dos1)を介して添加し、かつ成分A)、B)およびF)および場合により1以上の他の成分E)を一緒に供給装置(Dos2)を介して添加する。
【0048】
一般に、成分B)〜D)を水溶液の形で使用する。粘度を合わせるために、個々の成分または成分の混合物にさらに水を添加することができる。好ましくは、最後の混合要素中の水性懸濁液は、5〜50質量%、特に好ましくは10〜30質量%の範囲内の固体含有率を有する。
【0049】
本発明の主題は、本発明による方法により得られる現場発泡体でもある。使用する発泡装置、混合要素の数および圧力の調節に応じて、密度を広範囲に調節することができる。好ましくは、この現場発泡体は、10〜300kg/m3の範囲内、特に好ましくは20〜50kg/m3の範囲内の密度を有する。乾燥した現場発泡体の、DIN EN 12667(2001年5月)により測定した熱伝導率λは、好ましくは36mW/K・m未満、特に好ましくは30〜35mW/K・mの範囲内にある。空調室内で湿度80%および23℃で一定重量になるまで貯蔵した後の湿潤状態での熱伝導率λは、好ましくは32〜41mW/K・mの範囲にある。現場発泡体は、好ましくは、DIN 51900パート3により決定して、3.0MJ/kg未満の燃焼熱を有する。
【0050】
現場発泡体は、空洞部および中空体の断熱のためおよび充填のために、ことに例えば中空壁の充填による建築物内の空洞部の断熱のために適している。さらに、現場発泡体は、建築物、特に壁、天井、床下、および屋根の内部断熱のため、断熱効率を改善するためのキャビティブロックの発泡充填のため、導管および技術的構成要素の断熱のため、例えば配線貫通部用の外壁開口部の耐火性の密閉のため、ならびに耐火性の区画ゲート、ドアおよび窓用形材の充填のために適している。現場発泡体は、建物内の防火壁または防火壁の一部として、または空洞部および中空体の充填のためにも適している。
【0051】
現場発泡体は、この適用および他の適用のために、単独でも、1以上の他の断熱材と組み合わせても、プレートまたはフレークの形で使用することができる。適切な断熱材は、発泡プラスチック、例えば白色または灰色の膨張可能なポリスチレンからなる粒子発泡材(EPS、Styropor(登録商標)、Neopor(登録商標))、またはスチレン押出発泡材(XPS、Styrodur(登録商標))、またはポリウレタン発泡材(PUR)、ネオプレンゴムまたはEPDMを基礎とする発泡エラストマー、無機断熱材、例えば鉱物繊維、ロックウール、グラスウール、ガラス発泡顆粒、発泡ガラス、膨張パーライトまたはケイ酸塩発泡材、天然断熱材、例えば羊毛、亜麻、木材軟質繊維板、木毛軽量構造板、コルク、ココヤシマットまたはセルロースである。好ましくは、本発明による現場発泡体は、鉱物綿と一緒に使用することができる。
【0052】
実施例
使用材料:
成分A1 Translink(登録商標)445(平均粒子サイズ1.4μmを有する表面変性されたカオリン)
成分A2 REA石膏(煙道ガス−脱硫プラント由来)CaSO4・2H2O。硫酸カルシウム二水和物
成分A3 Ansilex(登録商標)93(焼成カオリン、未表面処理、平均粒子サイズ0.9μm)
成分B1 Lupamin(登録商標)4570(中分子量を有するビニルアミン、ビニルホルムアミド(7:3モル)からなるコポリマー、固形分31%)
成分B2 Xelorex(登録商標)F3000(ビニルアミン、ビニルホルムアミドおよびアクリル酸ナトリウム(35:35:30モル)からなる、両性の、高分子量、固体含有率10〜12質量%を有するターポリマー)
成分B3 Lupamin(登録商標)9050(高分子量を有するビニルホルムアミドおよびビニルアミン(1:1モル)からなるコポリマー;固形分16.5%)
成分C1 Schaumgeist(登録商標)-Omega %(天然タンパク質原料、気泡安定剤および不凍剤を基礎とする耐アルコール性タンパク質起泡剤、Dr. Sthamer、ハンブルク)
成分C2 アニオン性界面活性剤と非イオン性界面活性剤からなる界面活性剤混合物:質量比1:3のDisponil FES 32(ラウリルポリエーテル硫酸ナトリウム)およびLutensol AT80(脂肪酸エトキシラート);
成分C3 Schaumgeist(登録商標)6%(天然タンパク質原料、気泡安定剤および不凍剤を基礎とするタンパク質起泡剤、Dr. Sthamer、ハンブルク)
成分D1 グリオキサール(エタンジアール、オキサルアルデヒド)
成分E1 カリウムメチルシリコナートの水溶液
成分E2 黒鉛UF995
成分F1 3−アミノプロピルトリエトキシシラン
【0053】
測定方法:
発泡試料の密度を、秤量、ならびに長さ、幅および高さの測定により決定した。
【0054】
燃焼熱は、DIN 51900パート3の規格により決定した。
【0055】
吸水率(質量%)の決定のために、発泡試料を、空調室内で湿度80%および23℃で一定重量になるまで貯蔵した。
【0056】
気泡後の切断安定度(Schnittfestigkeit)をナイフおよびクロノメーターを用いて決定した。試料の一部分を、この部分が形状を失うことなくナイフで分離しかつ取りのけることができる場合に、この試料は切断安定(schnittfest)であると見なされる。
【0057】
収縮性の決定のために、発泡試料を、空調室内で湿度80%および23℃で一定重量になるまで貯蔵し、形状寸法変化を測定した。
【0058】
熱伝導率λは、DIN EN 12667(2001年5月)による単板式装置内で熱流の測定により算出された。湿潤状態での熱伝導率λは、空調室内で湿度80%および23℃で一定重量になるまで貯蔵した後に測定した。
【0059】
実施例1〜7
実施例1〜7について、20〜50mmの直径を有する2つのスタティックミキサ(SM1、SM2)を備えた図4の構造で、成分C)およびD)およびE1の水溶液を、第1の混合要素SM1内で、圧縮空気(500kPa)で発泡させた。引き続き、供給箇所Dos2を介して、成分A)、B)およびF)、および実施例7の場合にはE2および場合により懸濁液の固体含有率の調節のための付加的な水の混合物を混合し、第2の混合要素SM2に供給した。第1の混合要素の前方でこの構造に圧縮空気を印加することにより、この発泡体は、さらなる混合要素を通して出口ノズルにまで搬送される。乾燥を20℃で空気により行った。
【0060】
比較試験V1およびV2
5〜10mmの直径を有する3つのスタティックミキサ(SM1、SM2およびSM3)を有する図1による構造で、成分Cの水溶液を、第1の混合要素SM1中で、圧縮空気(2000kPa)で発泡させた。引き続き、第2の混合要素SM2を介して、成分A2、A3、B3および場合によりF1および場合により懸濁液の固体含有率の調節のための付加的な水の混合物を混合した。最後に、第3の混合要素SM3で、成分D1を計量供給し、かつ均質化した。第1の混合要素の前方でこの構造に圧縮空気を印加することにより、この発泡体は、さらなる混合要素を通して出口ノズルにまで搬送される。乾燥を20℃で空気により行った。
【0061】
比較試験V3
比較試験V3は、図4により、実施例1〜7にしたがって製造した。
【0062】
表1には、現場発泡体を製造するための成分A〜Fが、それぞれ無水の割合を基準として、質量百分率で表してまとめられている。質量百分率で表した固体含有率(無水の割合)は、最後の供給箇所の後の全ての成分の混合物に関する。
【0063】
表2には、乾燥した現場発泡体の特性がまとめられている。湿潤状態での熱伝導率λは、空調室内で湿度80%および23℃で一定重量になるまで貯蔵した後に測定した。
【0064】
表1 成分の無水の割合を基準として質量百分率で表す、現場発泡体の実施例B1〜B7、および比較試験V1〜V3についての使用材料
【表1】
【0065】
表2 比較試験V1〜V3および実施例B1〜B7の乾燥した現場発泡体の特性
【表2】
図1
図2
図3
図4