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特許67800101,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収
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  • 特許6780010-1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780010
(24)【登録日】2020年10月16日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収
(51)【国際特許分類】
   C07D 323/06 20060101AFI20201026BHJP
【FI】
   C07D323/06
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2018-550863(P2018-550863)
(86)(22)【出願日】2016年12月7日
(65)【公表番号】特表2019-501968(P2019-501968A)
(43)【公表日】2019年1月24日
(86)【国際出願番号】EP2016080090
(87)【国際公開番号】WO2017102504
(87)【国際公開日】20170622
【審査請求日】2019年12月6日
(31)【優先権主張番号】15201263.9
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
(73)【特許権者】
【識別番号】518213592
【氏名又は名称】コーロン プラスティックス インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】Kolon Plastics Inc.
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アーヒム シュタマー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ハイツ
(72)【発明者】
【氏名】マーヴィン クランプ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン−ムン キム
(72)【発明者】
【氏名】イン−ギ チョ
(72)【発明者】
【氏名】ジン−サン チョイ
(72)【発明者】
【氏名】サン−ユプ イ
【審査官】 奥谷 暢子
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−540808(JP,A)
【文献】 特開平7−228582(JP,A)
【文献】 特開昭58−157782(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 323/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収方法であって、
a)ホルムアルデヒドを、第1の反応器(R1)中で水および少なくとも1種の酸性触媒の存在下に反応させて、水および1,3,5−トリオキサンを含む第1の生成物混合物(P1)を得て、その第1の生成物混合物(P1)を、流れ(1)として第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送する工程、
b)第1の生成物混合物(P1)を、蒸留塔(D)中で少なくとも1種の抽出剤(E)と接触させることで、少なくとも1種の抽出剤(E)および水を含む塔頂留出物(OP)と、少なくとも1種の抽出剤(E)および1,3,5−トリオキサンを含む側留(SC)とを得て、その塔頂留出物(OP)を、第1の温度(T1)および第1の圧力(p1)を有する流れ(2)として蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送する工程、
c)流れ(2)の機械的圧縮機(MC)中での機械的圧縮により、流れ(2)の第1の温度(T1)よりも高い第2の温度(T2)および流れ(2)の第1の圧力(p1)よりも高い第2の圧力(p2)を有する圧縮された流れ(3)を得る工程、
d)圧縮された流れ(3)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む方法。
【請求項2】
工程d)は、以下の工程
d1)圧縮された流れ(3)を、機械的圧縮機(MC)から第1の熱交換器(H1)へと移送し、そこで圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達され、こうして加熱された凝縮物(hC)が得られる工程、
d2)加熱された凝縮物(hC)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程d2)は、以下の工程
d2−i)加熱された凝縮物(hC)を、流れ(4)として第2の熱交換器(H2)へと移送し、そこで流れ(4)から、ホルムアルデヒドおよび水を含む混合物(M)へと熱を伝達することで、加熱された混合物(hM)を得る工程、
d2−ii)加熱された混合物(hM)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程d2−i)における混合物(M)は、流れ(5a)として第1の反応器(R1)から第2の熱交換器(H2)へと移送される、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
工程d2−ii)において、加熱された混合物(hM)は、流れ(5b)として第2の熱交換器(H2)から第1の反応器(R1)へと移送される、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
工程b)における少なくとも1種の抽出剤(E)は、ベンゼン、1,2−ジクロロエタン、および塩化メチレンからなる群から選択される、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
工程a)における流れ(1)は、流れ(1)の全質量に対して、31質量%から56質量%までのホルムアルデヒド、8質量%から32質量%までの1,3,5−トリオキサン、11質量%から35質量%までの水、および1質量%から25質量%までの副生成物を含む、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
流れ(2)の第1の温度(T1)は、49℃から92℃までの範囲内である、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
流れ(2)の第1の圧力(p1)は、0.05baraから2baraまでの範囲内である、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
圧縮された流れ(3)の第2の温度(T2)は、161℃から205℃までの範囲内である、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
圧縮された流れ(3)の第2の圧力(p2)は、4baraから14baraまでの範囲内である、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
流れ(2)は、流れ(2)の全質量に対して、80質量%から94質量%までの少なくとも1種の抽出剤(E)、4.5質量%から12.5質量%までの水、0.7質量%から3.2質量%までの副生成物、0.6質量%から2.6質量%までのホルムアルデヒド、および0.01質量%から1質量%までの1,3,5−トリオキサンを含む、請求項1から11までのいずれか1項記載の方法。
【請求項13】
工程d1)における凝縮物(C)は、水を含む、請求項2から12までのいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
流れ(4)は、120℃から170℃までの範囲内の温度を有する、請求項3から13までのいずれか1項記載の方法。
【請求項15】
流れ(5b)は、82℃から140℃までの範囲内の温度を有する、請求項4から14までのいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収方法に関する。
【0002】
1,3,5−トリオキサンは一般に、水および触媒、特に酸性触媒の存在下でのホルムアルデヒドの三量体化により製造される。ホルムアルデヒドの三量体化および該三量体化の間に得られる生成物混合物からの所望の1,3,5−トリオキサンの分離は、非常にエネルギーを消費するものであり、したがって費用がかかる。通常、前記三量体化の間に得られる生成物混合物は、蒸留装置および抽出装置または結晶化装置に移送されて、該生成物混合物から所望の生成物である1,3,5−トリオキサンが分離される。従来技術においては該生成物混合物から1,3,5−トリオキサンを分離するための幾つかの方法が記載されている。
【0003】
欧州特許第2634182号明細書(EP2634182)および欧州特許第2634183号明細書(EP2634183)は、両者とも1つの蒸留装置中に一体形成された蒸留ユニットおよび抽出ユニットを記載している。これらの方法においては、1,3,5−トリオキサンは、反応器中でホルムアルデヒドから製造される。得られた生成物混合物は、前記蒸留装置中に移送される。1,3,5−トリオキサンを含む流れは、該蒸留装置から排出され、引き続きこの流れは、油相と水相とに分離される。その水相は、蒸留装置中に還流される。欧州特許第2634182号明細書(EP2634182)および欧州特許第2634183号明細書(EP2634183)に記載される方法によって、蒸留装置中の副生成物の形成を減らすことができる。しかしながら、該方法は、1トンの1,3,5−トリオキサンの精製に3トンを超える流れが必要とされるので依然として非常にエネルギーを消費するものである。
【0004】
したがって、本発明の基礎を成す課題は、1,3,5−トリオキサンの製造方法のエネルギー消費を、従来技術に記載される方法に対して減らすことができる方法を提供することである。
【0005】
前記課題は、1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収方法であって、
a)ホルムアルデヒドを、第1の反応器(R1)中で水および少なくとも1種の酸性触媒の存在下に反応させて、水および1,3,5−トリオキサンを含む第1の生成物混合物(P1)を得て、その第1の生成物混合物(P1)を、流れ(1)として第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送する工程、
b)第1の生成物混合物(P1)を、蒸留塔(D)中で少なくとも1種の抽出剤(E)と接触させることで、少なくとも1種の抽出剤(E)および水を含む塔頂留出物(OP)と、少なくとも1種の抽出剤(E)および1,3,5−トリオキサンを含む側留(SC)とを得て、その塔頂留出物(OP)を、第1の温度(T1)および第1の圧力(p1)を有する流れ(2)として蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送する工程、
c)流れ(2)の機械的圧縮機(MC)中での機械的圧縮により、流れ(2)の第1の温度(T1)よりも高い第2の温度(T2)および流れ(2)の第1の圧力(p1)よりも高い第2の圧力(p2)を有する圧縮された流れ(3)を得る工程、
d)圧縮された流れ(3)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む方法によって達成される。
【0006】
本発明の方法は、1,3,5−トリオキサンの製造方法からエネルギーを回収することを可能にし、かつ回収されたエネルギーを1,3,5−トリオキサンの製造において再利用することを可能にする。したがって、本発明の方法により、1,3,5−トリオキサンの製造方法の総エネルギー消費量を大幅に減らすことができ、それにより本発明による1,3,5−トリオキサンの製造方法は非常に費用効率の高いものとなる。
【0007】
本発明の方法を、以下でより詳しく説明する。
【0008】
工程a)
工程a)において、ホルムアルデヒドを、第1の反応器(R1)において水および少なくとも1種の酸性触媒の存在下で反応させることで、第1の生成物混合物(P1)が得られる。
【0009】
例えば、ホルムアルデヒド、水および少なくとも1種の酸性触媒の質量%の合計に対して、30質量%から70質量%までの範囲内のホルムアルデヒドが、30質量%から70質量%までの水および0.1質量%から15質量%までの少なくとも1種の酸性触媒の存在下で反応される。
【0010】
好ましくは、ホルムアルデヒド、水および少なくとも1種の酸性触媒の質量%の合計に対して、40質量%から65質量%までの範囲内のホルムアルデヒドが、35質量%から60質量%までの水および0.1質量%から10質量%までの少なくとも1種の酸性触媒の存在下で反応される。
【0011】
特に好ましくは、ホルムアルデヒド、水および少なくとも1種の酸性触媒の質量%の合計に対して、49質量%から62質量%までの範囲内のホルムアルデヒドが、38質量%から51質量%までの水および0.5質量%から5質量%までの少なくとも1種の酸性触媒の存在下で反応される。
【0012】
ホルムアルデヒドの水および少なくとも1種の酸性触媒の存在下での反応の間に、ホルムアルデヒドは三量体化して、1,3,5−トリオキサンが得られる。この三量体化反応は当業者に公知であり、前記少なくとも1種の酸性触媒により触媒される。さらに、ホルムアルデヒドの反応の間に、副生成物が形成することがある。これらの副生成物は、当業者に公知であり、例えばメタノール、メチルホルミエート、ジメトキシメタン、ギ酸、テトラオキサン、およびジメトキシジメチルエーテルである。
【0013】
ホルムアルデヒドの反応は、一般的に、80℃から120℃までの範囲内の、好ましくは90℃から115℃までの範囲内の、特に好ましくは95℃から110℃までの範囲内の温度で実施される。
【0014】
したがって、工程a)の間の第1の反応器(R1)における温度は、一般的に、80℃から120℃までの範囲内、好ましくは90℃から115℃までの範囲内、特に好ましくは95℃から110℃までの範囲内である。
【0015】
ホルムアルデヒドの反応は、通常は、0.1baraから5baraまでの範囲内の、好ましくは0.5baraから3baraまでの範囲内の、特に好ましくは0.9baraから1.5baraまでの範囲内の圧力で実施される。
【0016】
したがって、工程a)の間の第1の反応器(R1)における圧力は、通常は、0.1baraから5baraまでの範囲内、好ましくは0.5baraから3baraまでの範囲内、特に好ましくは0.9baraから1.5baraまでの範囲内である。本発明の文脈内の「bara」は、絶対圧(bar absolute)を意味する。絶対圧baraは、絶対尺度を用いて完全真空をゼロ基準にしたものである。通常、baraは、ゲージ圧と大気圧とを足したものに等しい。
【0017】
本発明の文脈内での「少なくとも1種の酸性触媒」は、ちょうど1種の酸性触媒も、2種以上の酸性触媒の混合物も意味する。
【0018】
少なくとも1種の酸性触媒としては、工程a)におけるホルムアルデヒドの反応、好ましくは三量体化を触媒するあらゆる酸性触媒が適している。
【0019】
前記少なくとも1種の酸性触媒は、均一系触媒または不均一系触媒であってよい。前記触媒は、均一系触媒であることが好ましい。
【0020】
前記少なくとも1種の触媒としては、硫酸またはメタンスルホン酸が特に好ましい。
【0021】
第1の反応器(R1)としては、ホルムアルデヒドの反応の温度および圧力のために適した当業者に公知のあらゆる反応器を使用することができる。これらの反応器は、当業者に公知であり、例えば槽型反応器、パイプ型反応器、または管形反応器であり、例えばバッチ式反応器または連続式撹拌槽型反応器である。
【0022】
ホルムアルデヒド、水、および少なくとも1種の酸性触媒は、当業者に公知の任意の方法により第1の反応器(R1)に供給することができる。好ましくは、ホルムアルデヒドは、第1の反応器(R1)に水と一緒に、そして少なくとも1種の酸性触媒とは別個に供給される。特に好ましくは、ホルムアルデヒドは、水と一緒に第1の反応器(R1)に連続的に、少なくとも1種の酸性触媒とは別個に供給され、その触媒は、一般的に第1の反応器(R1)に断続的に供給される。
【0023】
工程a)において、第1の生成物混合物(P1)が得られる。第1の生成物混合物(P1)は、水および1,3,5−トリオキサンを含む。ホルムアルデヒドの反応の間に副生成物が形成されるのであれば、該副生成物は同様に第1の生成物混合物(P1)中に含まれる。副生成物に関しては、前記の実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0024】
さらに、前記第1の生成物混合物(P1)は、一般的に未反応のホルムアルデヒドをさらに含む。
【0025】
第1の生成物混合物(P1)は、工程a)において、流れ(1)として第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送される。
【0026】
流れ(1)は、第1の生成物混合物(P1)と同じ組成を有する。例えば、前記流れ(1)は、流れ(1)中に含まれるホルムアルデヒド、トリオキサン、水、および副生成物の質量%の合計に対して、好ましくは流れ(1)の全質量に対して、31質量%から56質量%までのホルムアルデヒド、8質量%から32質量%までの1,3,5−トリオキサン、11質量%から35質量%までの水、および1質量%から25質量%までの副生成物を含む。
【0027】
好ましくは、前記流れ(1)は、流れ(1)中に含まれるホルムアルデヒド、トリオキサン、水、および副生成物の質量%の合計に対して、好ましくは流れ(1)の全質量に対して、36質量%から51質量%までのホルムアルデヒド、13質量%から27質量%までの1,3,5−トリオキサン、16質量%から30質量%までの水、および6質量%から20質量%までの副生成物を含む。
【0028】
特に好ましくは、前記流れ(1)は、流れ(1)中に含まれるホルムアルデヒド、トリオキサン、水、および副生成物の質量%の合計に対して、好ましくは流れ(1)の全質量に対して、38質量%から46質量%までのホルムアルデヒド、18質量%から22質量%までのトリオキサン、21質量%から25質量%までの水、および11質量%から15質量%までの副生成物を含む。
【0029】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程a)における流れ(1)が、流れ(1)の全質量に対して、31質量%から56質量%までのホルムアルデヒド、8質量%から32質量%までの1,3,5−トリオキサン、11質量%から35質量%までの水、および1質量%から25質量%までの副生成物を含む、方法である。
【0030】
流れ(1)の温度は、通常は、80℃から120℃までの範囲内、好ましくは90℃から115℃までの範囲内、特に好ましくは95℃から110℃までの範囲内である。
【0031】
流れ(1)の圧力は、通常は、0.1baraから5baraまでの範囲内、好ましくは0.5baraから3baraまでの範囲内、特に好ましくは0.9baraから1.5baraまでの範囲内である。
【0032】
第1の生成物混合物(P1)は、当業者に公知の任意の方法により、流れ(1)として第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送され得る。一般的に、流れ(1)を第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送するために配管が使用される。
【0033】
蒸留塔(D)としては、工程b)における少なくとも1種の抽出剤(E)を使用することによる1,3,5−トリオキサンの第1の生成物混合物(P1)からの分離を可能にするあらゆる蒸留塔が適している。
【0034】
好ましくは、蒸留塔(D)は、蒸留区間および抽出区間を含む。特に好ましくは、蒸留区間および抽出区間は、両者とも蒸留塔(D)中に含まれている。これらの蒸留塔(D)は、当業者に公知であり、例えば国際公開第2011/131609号パンフレット(WO2011/131609)に記載されている。
【0035】
工程b)
工程b)において、第1の生成物混合物(P1)を蒸留塔(D)において少なくとも1種の抽出剤(E)と接触させることで、塔頂留出物(OP)および側留(SC)が得られる。
【0036】
本発明の文脈内での「少なくとも1種の抽出剤(E)」は、ちょうど1種の抽出剤(E)も、2種以上の抽出剤(E)の混合物も意味する。ちょうど1種の抽出剤(E)が好ましい。
【0037】
前記少なくとも1種の抽出剤(E)としては、第1の生成物混合物(P1)を塔頂留出物(OP)および側留(SC)へと分離することを可能にする当業者に公知のあらゆる抽出剤が適している。
【0038】
工程b)における少なくとも1種の抽出剤(E)は、好ましくはベンゼン、1,2−ジクロロエタン、および塩化メチレンからなる群から選択される。
【0039】
最も好ましくは、工程b)における少なくとも1種の抽出剤(E)は、ベンゼンからなる。
【0040】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程b)における少なくとも1種の抽出剤(E)が、ベンゼン、1,2−ジクロロエタン、および塩化メチレンからなる群から選択される、方法である。
【0041】
第1の生成物混合物(P1)は、当業者に公知の任意の方法により、蒸留塔(D)において少なくとも1種の抽出剤(E)と接触され得る。好ましくは、前記第1の生成物混合物(P1)は、蒸留塔(D)中に含まれる抽出蒸留区間において少なくとも1種の抽出剤(E)と接触される。
【0042】
蒸留塔(D)において第1の生成物混合物(P1)が少なくとも1種の抽出剤(E)と接触される温度は、一般的に、30℃から150℃までの範囲内、好ましくは50℃から150℃までの範囲内、より好ましくは60℃から130℃までの範囲内、特に好ましくは65℃から105℃までの範囲内である。
【0043】
第1の生成物混合物(P1)が少なくとも1種の抽出剤(E)と接触される圧力は、一般的に、0.1baraから5baraまでの範囲内、好ましくは0.5baraから3baraまでの範囲内、特に好ましくは0.9baraから1.5baraまでの範囲内である。
【0044】
工程b)における第1の生成物混合物(P1)と少なくとも1種の抽出剤(E)との接触の間に、塔頂留出物(OP)および側留(SC)が得られる。
【0045】
塔頂留出物(OP)は、少なくとも1種の抽出剤(E)および水を含む。塔頂留出物(OP)は、生成物混合物(P1)中に含まれる副生成物、ホルムアルデヒド、および1,3,5−トリオキサンの残留物の少なくとも1種をさらに含み得る。
【0046】
本発明の文脈内の「1,3,5−トリオキサンの残留物」は、塔頂留出物(OP)の全質量に対して、0.01質量%から1質量%までの、好ましくは0.5質量%から0.8質量%までの、特に好ましくは0.1質量%から0.5質量%までの1,3,5−トリオキサンを意味する。
【0047】
塔頂留出物(OP)は、例えば、塔頂留出物(OP)中に含まれる少なくとも1種の抽出剤、水、副生成物、ホルムアルデヒド、および1,3,5−トリオキサンの質量%の合計に対して、好ましくは塔頂留出物(OP)の全質量に対して、80質量%から94質量%までの少なくとも1種の抽出剤(E)、4.5質量%から12.5質量%までの水、0.7質量%から3.2質量%までの副生成物、0.6質量%から2.6質量%までのホルムアルデヒド、および0.01質量%から1質量%までの1,3,5−トリオキサンを含む。
【0048】
好ましくは、塔頂留出物(OP)は、塔頂留出物(OP)中に含まれる少なくとも1種の抽出剤(E)、水、副生成物、ホルムアルデヒド、および1,3,5−トリオキサンの質量%の合計に対して、好ましくは塔頂留出物(OP)の全質量に対して、84質量%から92質量%までの少なくとも1種の抽出剤(E)、5.5質量%から11.5質量%までの水、1.1質量%から2.8質量%までの副生成物、1質量%から2.2質量%までのホルムアルデヒド、および0.05質量%から0.8質量%までの1,3,5−トリオキサンを含む。
【0049】
特に好ましくは、塔頂留出物(OP)は、塔頂留出物(OP)中に含まれる少なくとも1種の抽出剤(E)、水、副生成物、ホルムアルデヒド、および1,3,5−トリオキサンの質量%の合計に対して、好ましくは塔頂留出物(OP)の全質量に対して、86質量%から90質量%までの少なくとも1種の抽出剤(E)、6.5質量%から10.5質量%までの水、1.5質量%から2.4質量%までの副生成物、1.4質量%から1.8質量%までのホルムアルデヒド、および0.1質量%から0.5質量%までの1,3,5−トリオキサンを含む。
【0050】
第1の生成物混合物(P1)を少なくとも1種の抽出剤(E)と接触させることで得られる側留(SC)は、少なくとも1種の抽出剤(E)および1,3,5−トリオキサンを含む。
【0051】
例えば、側留(SC)は、少なくとも1種の抽出剤(E)、1,3,5−トリオキサン、ホルムアルデヒド、および水の質量%の合計に対して、好ましくは側留(SC)の全質量に対して、10質量%から20質量%の少なくとも1種の抽出剤(E)、15質量%から40質量%までの1,3,5−トリオキサン、20質量%から40質量%までのホルムアルデヒド、および20質量%から40質量%までの水を含む。
【0052】
側留(SC)中に含まれる少なくとも1種の抽出剤(E)、1,3,5−トリオキサン、ホルムアルデヒド、および水の質量%は、通常は足して100%となる。
【0053】
側留(SC)は、蒸留塔(D)から流れ(2a)として抜き出される。この流れ(2a)をさらに精製することで、1,3,5−トリオキサンを得ることができる。流れ(2a)の精製方法は、当業者に公知である。
【0054】
側留(SC)は、通常は、蒸留塔(D)の側方から流れ(2a)として抜き出される。
【0055】
工程b)において、塔頂留出物(OP)は次いで、流れ(2)として蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送される。流れ(2)は、当業者に公知の方法により、蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送され得る。
【0056】
前記塔頂留出物(OP)は、通常は、蒸留塔(D)の塔頂から流れ(2)として出て行く。
【0057】
塔頂留出物(OP)は、流れ(2)として蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送されるので、その流れ(2)は、塔頂留出物(OP)と同じ組成を有する。したがって、流れ(2)の組成に関して、塔頂留出物(OP)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0058】
したがって、本発明のもう一つの主題は、流れ(2)が、流れ(2)の全質量に対して、80質量%から94質量%までの少なくとも1種の抽出剤(E)、4.5質量%から12.5質量%までの水、0.7質量%から3.2質量%までの副生成物、0.6質量%から2.6質量%までのホルムアルデヒド、および0.01質量%から1質量%までの1,3,5−トリオキサンを含む、方法である。
【0059】
前記流れ(2)は、第1の温度(T1)および第1の圧力(p1)を有する。
【0060】
流れ(2)の第1の温度(T1)は、通常は、49℃から92℃までの範囲内、好ましくは59℃から82℃までの範囲内、特に好ましくは69℃から72℃までの範囲内である。
【0061】
したがって、本発明のもう一つの主題は、流れ(2)の第1の温度(T1)が49℃から92℃までの範囲内である、方法である。
【0062】
流れ(2)の第1の圧力(p1)は、通常は、0.05baraから2baraまでの範囲内、好ましくは0.55baraから1.5baraまでの範囲内、特に好ましくは0.95baraから1.2baraまでの範囲内である。
【0063】
したがって、本発明のもう一つの主題は、流れ(2)の第1の圧力(p1)が0.05baraから2baraまでの範囲内である、方法である。
【0064】
前記流れ(2)は、通常は気体状である。
【0065】
流れ(2)が移送される機械的圧縮機(MC)としては、当業者に公知のあらゆる機械的圧縮機(MC)が適している。
【0066】
機械的圧縮機(MC)は、一般的にターボ圧縮機である。該機械的圧縮機(MC)は、多段階、一般的には2段階から6段階まで、好ましくは3段階から4段階までを有する。機械的圧縮機(MC)は、好ましくは蒸気タービンまたは電気モータにより駆動される。
【0067】
工程c)
工程c)においては、流れ(2)を機械的圧縮機(MC)において機械的圧縮することで、圧縮された流れ(3)が得られる。
【0068】
機械的圧縮は、当業者に公知である。通常は、流れ(2)の機械的圧縮の間に、流れ(2)の圧力および温度が高められ、圧縮された流れ(3)が得られる。
【0069】
得られた圧縮された流れ(3)は、流れ(2)と同じ組成を有する。したがって、圧縮された流れ(3)に関しては、流れ(2)の組成についての実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0070】
圧縮された流れ(3)は、第2の温度(T2)および第2の圧力(p2)を有する。圧縮された流れ(3)の第2の温度(T2)は、流れ(2)の第1の温度(T1)よりも高い。圧縮された流れ(3)の第2の圧力(p2)は、流れ(2)の第1の圧力(p1)よりも高い。
【0071】
例えば、圧縮された流れ(3)の第2の温度(T2)は、161℃から205℃までの範囲内、好ましくは170℃から195℃までの範囲内、特に好ましくは181℃から185℃までの範囲内である。
【0072】
したがって、本発明のもう一つの主題は、圧縮された流れ(3)の第2の温度(T2)が161℃から205℃までの範囲内である、方法である。
【0073】
したがって、本発明のもう一つの主題は、圧縮された流れ(3)の第2の温度(T2)が流れ(2)の第1の温度(T1)よりも高い、方法である。
【0074】
圧縮された流れ(3)の第2の圧力(p2)は、通常は、4baraから14baraまでの範囲内、好ましくは6baraから12baraまでの範囲内、特に好ましくは8baraから10baraまでの範囲内である。
【0075】
したがって、本発明のもう一つの主題は、圧縮された流れ(3)の第2の圧力(p2)が4baraから14baraまでの範囲内である、方法である。
【0076】
したがって、本発明のもう一つの主題は、圧縮された流れ(3)の第2の圧力(p2)が流れ(2)の第1の圧力(p1)よりも高い、方法である。
【0077】
前記圧縮された流れ(3)は、通常は気体状である。
【0078】
工程d)
工程d)において、圧縮された流れ(3)から第1の反応器(R1)へと熱が伝達される。圧縮された流れ(3)から第1の反応器(R1)への熱伝達は、当業者に公知のあらゆる方法により実施することができる。例えば、前記圧縮された流れ(3)は、第1の反応器(R1)中に導入されるか、または圧縮された流れ(3)は、少なくとも1つの第1の熱交換器(H1)中に移送され、そこで熱が伝達され得る。この実施形態が好ましい。
【0079】
圧縮された流れ(3)を第1の反応器(R1)中に導入することで、第1の反応器(R1)へと熱を伝達する場合に、その圧縮された流れ(3)は、第1の反応器(R1)中に直接的に導入され得る。さらに、該圧縮された流れ(3)を、第1の反応器(R1)の壁内、加熱ジャケット内または加熱コイル内に導入することで、第1の反応器(R1)を加熱することが可能である。
【0080】
前記のように、圧縮された流れ(3)を、少なくとも1つの第1の熱交換器(H1)中に移送することで、第1の反応器(R1)へと熱を伝達することが好ましい。
【0081】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d)において、圧縮された流れ(3)を、少なくとも1つの第1の熱交換器(H1)中に移送することで、第1の反応器(R1)へと熱が伝達される、方法である。
【0082】
本発明の文脈内の「少なくとも1つの第1の熱交換器(H1)」は、ちょうど1つの第1の熱交換器(H1)も、2つ以上の第1の熱交換器(H1)も意味する。2つ以上の第1の熱交換器(H1)が使用される場合には、それらの熱交換器は、並列式にまたは直列式に配置され得る。
【0083】
特に好ましくは、工程d)は、以下の工程:
d1)圧縮された流れ(3)を機械的圧縮機(MC)から第1の熱交換器(H1)へと移送し、そこで圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達され、こうして加熱された凝縮物(hC)が得られる工程、
d2)加熱された凝縮物(hC)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む。
【0084】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d)が、以下の工程
d1)圧縮された流れ(3)を機械的圧縮機(MC)から第1の熱交換器(H1)へと移送し、そこで圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達され、こうして加熱された凝縮物(hC)が得られる工程、
d2)加熱された凝縮物(hC)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程
を含む方法である。
【0085】
前記圧縮された流れ(3)は、当業者に公知の方法により、機械的圧縮機(MC)から、工程d1)における第1の熱交換器(H1)へと移送され得る。通常は、前記圧縮された流れ(3)は、配管を通じて機械的圧縮機(MC)から第1の熱交換器(H1)へと移送される。
【0086】
第1の熱交換器(H1)としては、当業者に公知のあらゆる熱交換器が適している。シェルアンドチューブ型熱交換器が好ましい。前記第1の熱交換器(H1)が、シェルアンドチューブ型熱交換器であり、圧縮された流れ(3)がチューブ内部にあることが特に好ましい。
【0087】
第1の熱交換器(H1)において、圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達される。凝縮物(C)の圧力は、通常はこの熱伝達の間に変化しない。熱交換器における熱伝達の概念は、当業者に公知である。通常は、第1の熱交換器(H1)における圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)への熱伝達は間接的に行われる。第1の熱交換器(H1)における熱伝達の文脈内での「間接的に」は、圧縮された流れ(3)および凝縮物(C)が、直接的に接触せずに、例えば熱伝導性の壁により互いに隔離されていることを意味する。
【0088】
前記凝縮物(C)は、通常は、60℃から120℃までの範囲内の、好ましくは70℃から110℃までの範囲内の、特に好ましくは80℃から100℃までの範囲内の温度を有する。
【0089】
凝縮物(C)としては、本発明の方法の間の凝縮物(C)の温度および圧力で液状または気体状であり、そこに熱が伝達され得るあらゆる物質が適している。好ましくは、該凝縮物(C)は、本発明の方法の間の凝縮物(C)の温度および圧力で液状である。工程d1)における凝縮物(C)が水を含むことがさらに好ましい。特に好ましくは、工程d1)における凝縮物(C)は水からなる。
【0090】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d1)における凝縮物(C)が水を含む、方法である。
【0091】
前記圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)への熱伝達の間に、該凝縮物(C)の温度は上昇し、その一方で該凝縮物(C)の圧力は通常は一定に留まる。
【0092】
凝縮物(C)は、通常は流れ(4a)として第1の熱交換器(H1)へと供給される。流れ(4a)に関しては、凝縮物(C)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0093】
工程d1)で得られる加熱された凝縮物(hC)は、凝縮物(C)と同じ組成を有する。したがって、加熱された凝縮物(hC)の組成に関しては、凝縮物(C)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0094】
圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達されて、加熱された凝縮物(hC)が得られるので、加熱された凝縮物(hC)の温度は、凝縮物(C)の温度よりも高い。熱伝達の間に、凝縮物(C)は、好ましくは部分的にまたは完全に蒸発され、特に好ましくは完全に蒸発される。したがって、得られた加熱された凝縮物(hC)は、通常は気体状である。
【0095】
したがって、本発明のもう一つの主題は、加熱された凝縮物(hC)の温度が、凝縮物(C)の温度よりも高い、方法である。
【0096】
例えば、加熱された凝縮物(hC)の温度は、120℃から170℃までの範囲内、好ましくは130℃から160℃までの範囲内、特に好ましくは140℃から150℃までの範囲内である。
【0097】
前記加熱された凝縮物(hC)は、通常は気体状である。
【0098】
前記圧縮された流れ(3)は、工程d1)において凝縮物(C)に熱を伝達する。この熱伝達の間に、圧縮された流れ(3)は冷却され、2相の流れ(3a)へと変換される。この2相の流れ(3a)は、通常は液状であり、第1の熱交換器(H1)から抜き出すことができる。
【0099】
前記2相の流れ(3a)は、通常は、122℃から166℃までの範囲内の、好ましくは132℃から156℃までの範囲内の、特に好ましくは142℃から146℃までの範囲内の温度を有する。
【0100】
前記2相の流れ(3a)は、通常は、5baraから14baraまでの範囲内の、好ましくは7baraから12baraまでの範囲内の、特に好ましくは9baraから10baraまでの範囲内の圧力を有する。
【0101】
前記2相の流れ(3a)は、当業者に公知の方法により精製することができ、次いで蒸留塔(D)へと再循環することができる。その再循環は、当業者に公知の任意の方法により実施することができる。
【0102】
工程d2)において、加熱された凝縮物(hC)から第1の反応器(R1)へと熱が伝達される。
【0103】
加熱された凝縮物(hC)から第1の反応器(R1)への熱の伝達は、当業者に公知のあらゆる方法により実施することができる。例えば、前記加熱された凝縮物(hC)は、第1の反応器(R1)中に導入され得るか、または加熱された凝縮物(hC)は、少なくとも1つの第2の熱交換器(H2)中に移送され得る。この実施形態が好ましい。
【0104】
加熱された凝縮物(hC)を第1の反応器(R1)中に導入することで、第1の反応器(R1)へと熱を伝達する場合に、その加熱された凝縮物(hC)は、第1の反応器(R1)中に直接的に導入され得る。さらに、該加熱された凝縮物(hC)を、第1の反応器(R1)の壁内、加熱ジャケット内または加熱コイル内に導入することで、第1の反応器(R1)を加熱することが可能である。
【0105】
前記のように、加熱された凝縮物(hC)を、少なくとも1つの第2の熱交換器(H2)中に移送することで、第1の反応器(R1)へと熱を伝達することが好ましい。
【0106】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d2)において、加熱された凝縮物(hC)を、少なくとも1つの第2の熱交換器(H2)中に移送することで、第1の反応器(R1)へと熱が伝達される、方法である。
【0107】
本発明の文脈内の「少なくとも1つの第2の熱交換器(H2)」は、ちょうど1つの第2の熱交換器(H2)も、2つ以上の第2の熱交換器(H2)も意味する。2つ以上の第2の熱交換器(H2)が使用される場合には、それらの熱交換器は、並列式にまたは直列式に使用され得る。
【0108】
特に好ましくは、第2の熱交換器(H2)が使用され、そこから第1の反応器(R1)へと加熱された凝縮物(hC)の熱が伝達される。
【0109】
したがって、好ましくは、工程d2)は、以下の工程:
d2−i)加熱された凝縮物(hC)を、流れ(4)として第2の熱交換器(H2)へと移送し、そこで流れ(4)から、ホルムアルデヒドおよび水を含む混合物(M)へと熱を伝達することで、加熱された混合物(hM)を得る工程、
d2−ii)加熱された混合物(hM)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程、
を含む。
【0110】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d2)が、以下の工程
d2−i)加熱された凝縮物(hC)を、流れ(4)として第2の熱交換器(H2)へと移送し、そこで流れ(4)から、ホルムアルデヒドおよび水を含む混合物(M)へと熱を伝達することで、加熱された混合物(hM)を得る工程、
d2−ii)加熱された混合物(hM)から第1の反応器(R1)へと熱を伝達する工程、
を含む、方法である。
【0111】
工程d2−i)において、前記加熱された凝縮物(hC)は、流れ(4)として第2の熱交換器(H2)へと移送される。流れ(4)に関しては、加熱された凝縮物(hC)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0112】
したがって、本発明のもう一つの主題は、流れ(4)が120℃から170℃までの範囲内の温度を有する、方法である。
【0113】
本発明の文脈内の「第2の熱交換器(H2)」は、ちょうど1つの第2の熱交換器(H2)も、2つ以上の第2の熱交換器(H2)も意味する。2つ以上の第2の熱交換器(H2)が好ましい。2つ以上の第2の熱交換器(H2)が使用される場合には、それらの熱交換器は、並列式にまたは直列式に使用され得、それらは並列式で使用されることが好ましい。当業者には、2つ以上の第2の熱交換器(H2)が使用される場合に、流れ(4)は2つ以上の流れ(4)へと分割されることは明らかであるべきである。流れ(4)を分割する方法は、当業者に公知である。
【0114】
前記流れ(4)から熱が伝達される混合物(M)は、通常は、80℃から140℃までの範囲内の、好ましくは90℃から130℃までの範囲内の、特に好ましくは100℃から120℃までの範囲内の温度を有する。
【0115】
前記混合物(M)は、通常は、0.4baraから2.5baraまでの範囲内の、好ましくは0.8baraから2baraまでの範囲内の、特に好ましくは1.0baraから1.5baraまでの範囲内の圧力を有する。
【0116】
前記混合物(M)は、通常は液状である。
【0117】
該混合物(M)は、ホルムアルデヒドおよび水を含む。ホルムアルデヒドおよび水を含むあらゆる混合物(M)を使用することができる。好ましくは、工程d2−i)における混合物は、流れ(5a)として第1の反応器(R1)から第2の熱交換器(H2)へと移送される。
【0118】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d2−i)における混合物(M)が、流れ(5a)として第1の反応器(R1)から第2の熱交換器(H2)へと移送される、方法である。
【0119】
したがって、前記混合物(M)は、さらなる成分、特に第1の反応器(R1)中に含まれる成分を含み得る。これらの成分は、例えば少なくとも1種の酸性触媒、1,3,5−トリオキサン、および副生成物である。
【0120】
流れ(5a)に関しては、混合物(M)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0121】
流れ(4)から混合物(M)へと熱が伝達されることで、加熱された混合物(hM)が得られる。熱伝達の間に、混合物(M)の温度は、通常は高められ、そして混合物(M)の圧力は一定に留まる。通常は、第2の熱交換器(H2)における流れ(4)から混合物(M)への熱伝達は、間接的に行われる。第2の熱交換器(H2)における熱伝達の文脈内での「間接的に」は、流れ(4)および混合物(M)が、直接的に接触せずに、例えば熱伝導性の壁により互いに隔離されていることを意味する。
【0122】
前記加熱された混合物(hM)は、混合物(M)と同じ組成を有する。したがって、該加熱された混合物(hM)の組成に関しては、混合物(M)の組成についての実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0123】
前記加熱された混合物(hM)は、通常は、82℃から140℃までの範囲内の、好ましくは92℃から130℃までの範囲内の、特に好ましくは102℃から120℃までの範囲内の温度を有する。
【0124】
加熱された混合物(hM)の温度は、通常は混合物(M)の温度よりも高い。
【0125】
したがって、本発明のもう一つの主題は、加熱された混合物(hM)の温度が、混合物(M)の温度よりも高い、方法である。
【0126】
前記加熱された混合物(hM)は、通常は、0.4baraから2baraまでの範囲内の、好ましくは0.8baraから1.5baraまでの範囲内の、特に好ましくは1.0baraから1.5baraまでの範囲内の圧力を有する。
【0127】
前記加熱された混合物(hM)は、通常は少なくとも部分的に気体状である。
【0128】
流れ(4)から混合物(M)への熱伝達の間に、流れ(4)は、通常は冷却され、凝縮物(C)へと変換される。この凝縮物(C)は、第2の熱交換器(H2)から流れ(4b)として抜き出すことができ、次いで第1の熱交換器(H1)へと再循環させることができる。
【0129】
前記加熱された混合物(hM)は、工程d2−ii)において第1の反応器(R1)に熱を伝達する。加熱された混合物(hM)から第1の反応器(R1)への熱伝達は、当業者に公知のあらゆる方法により実施することができる。好ましくは、前記加熱された混合物(hM)は、工程d2−ii)において、流れ(5b)として第2の熱交換器(H2)から第1の反応器(R1)へと移送される。
【0130】
したがって、本発明のもう一つの主題は、工程d2−ii)において、加熱された混合物(hM)が、流れ(5b)として第2の熱交換器(H2)から第1の反応器(R1)へと移送される、方法である。
【0131】
流れ(5b)に関しては、加熱された混合物(hM)について先に記載された実施形態および好ましい事項が当てはまる。
【0132】
したがって、本発明のもう一つの主題は、流れ(5b)が82℃から140℃までの範囲内の温度を有する、方法である。
【0133】
本発明の方法は、1,3,5−トリオキサンの製造方法からエネルギーを回収することを可能にする。さらに、本発明の方法の流れのほとんどは、少なくとも部分的に再循環させることができ、それにより従来技術に記載される方法よりも費用効率の高い方法がもたらされる。
【0134】
本発明の特に好ましい実施形態を、以下で図1を参照して説明する。
【0135】
工程a)において、ホルムアルデヒドは、第1の反応器(R1)において水および少なくとも1種の酸性触媒の存在下で反応され、第1の生成物混合物(P1)が得られる。第1の生成物混合物(P1)は、水および1,3,5−トリオキサンを含み、該混合物は、流れ(1)として第1の反応器(R1)から蒸留塔(D)へと移送される。
【0136】
蒸留塔(D)において、第1の生成物混合物(P1)は、工程b)において少なくとも1種の抽出剤(E)と接触される。塔頂留出物(OP)および側留(SC)が得られる。側留(SC)は、流れ(2a)として蒸留塔(D)の側方から抜き出される。側留(SC)は、少なくとも1種の抽出剤(E)および1,3,5−トリオキサンを含む。
【0137】
前記塔頂留出物(OP)は、蒸留塔(D)の塔頂から流れ(2)として出て行く。塔頂留出物(OP)は、少なくとも1種の抽出剤(E)および水を含む。工程b)において、塔頂留出物(OP)は、流れ(2)として蒸留塔(D)から機械的圧縮機(MC)へと移送される。機械的圧縮機(MC)において、流れ(2)は、工程c)において機械的圧縮され、圧縮された流れ(3)が得られる。圧縮された流れ(3)は、流れ(2)の第1の温度(T1)よりも高い第2の温度(T2)を有する。さらに、圧縮された流れ(3)は、流れ(2)の第1の圧力(p1)よりも高い第2の圧力(p2)を有する。
【0138】
得られた圧縮された流れ(3)は、工程d1)において、機械的圧縮機(MC)から第1の熱交換器(H1)へと移送される。第1の熱交換器(H1)において、圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)へと熱が伝達され、加熱された凝縮物(hC)が得られる。凝縮物(C)は、流れ(4a)として第1の熱交換器(H1)へと添加される。
【0139】
圧縮された流れ(3)から凝縮物(C)への熱伝達の間に、その圧縮された流れ(3)は冷却され、凝縮することで、2相の流れ(3a)が得られ、その流れは、第1の熱交換器(H1)から抜き出される。
【0140】
前記加熱された凝縮物(hC)は、工程d2−i)において、流れ(4)として第2の熱交換器(H2)へと移送される。第2の熱交換器(H2)において、流れ(4)は混合物(M)へと熱を伝達することで、加熱された混合物(hM)が得られる。該混合物(M)は、第1の反応器(R1)から流れ(5a)として第2の熱交換器(H2)へと移送される。
【0141】
工程d2−i)で得られる加熱された混合物(hM)は次いで、流れ(5b)として第1の反応器(R1)へと移送される。流れ(4)からの混合物(M)への熱の伝達の間に、その流れ(4)は冷却され、凝縮物(C)が得られ、該凝縮物は、第2の熱交換器(H2)から流れ(4b)として抜き出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0142】
図1】本発明の1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収方法を示す図。
【0143】
以下の実施例は本発明を説明するものであって、本発明を限定するものではない。
【0144】
実施例1
実施例1は、本発明による一例である。1,3,5−トリオキサンの製造方法におけるエネルギー回収方法は、図1を参照して先に記載された好ましい実施形態に従って実施される。該方法は、連続的に実施される。第1の反応器(R1)において、61.9質量%のホルムアルデヒドを、34.8質量%の水および3.5質量%の硫酸の存在下で反応させる。第1の反応器(R1)は、107℃の温度および1.4bara(bar absolute)の圧力で作動される。
【0145】
第1の反応器(R1)における反応の間に、ホルムアルデヒドは、水および硫酸の存在下で三量体化して、1,3,5−トリオキサンが得られる。第1の反応器(R1)から、第1の生成物混合物(P1)は、流れ(1)として蒸留塔(D)へと移送される。
【0146】
蒸留塔(D)は、蒸留区間、抽出区間、側方排出部、および塔頂排出部を備える。蒸留塔は、段塔である。蒸留区間は、蒸留塔(D)の側方排出部の下方に位置している。抽出区間は、蒸留塔(D)の側方排出部の上方に位置している。流れ(1)は、蒸留塔(D)の蒸留区間の底部に移送される。抽出剤としてベンゼンが使用される。抽出剤は、蒸留塔(D)の抽出区間の頂部に供給される。蒸留塔(D)の最下段における温度は、105℃であり、圧力は1.4baraである。蒸留塔(D)の塔頂部での温度は71℃に保持され、圧力は1.1baraである。
【0147】
側方排出部から、側留(SC)が流れ(2a)として排出される。側留(SC)は、18.7質量%のベンゼン、28.6質量%の1,3,5−トリオキサン、27.3質量%のホルムアルデヒド、および25.4質量%の水を含む。蒸留塔(D)の塔頂排出部から、塔頂留出物(OP)が流れ(2)として排出される。塔頂留出物(OP)は、88質量%のベンゼン、8.0質量%の水、2.1質量%の副生成物、1.6質量%のホルムアルデヒド、および0.3質量%の1,3,5−トリオキサンを含む。流れ(2)は、1.1baraの圧力および71℃の温度を有する。
【0148】
流れ(2)を、電気モータにより駆動される3段階を有するターボ圧縮機である機械的圧縮機(MC)に移送する。機械的圧縮機(MC)において、流れ(2)が圧縮される。機械的圧縮機(MC)から、圧縮された流れ(3)が排出される。圧縮された流れ(3)は、9baraの圧力および181℃の温度を有する。圧縮された流れ(3)を、第1の熱交換器(H1)へと移送する。圧縮された流れ(3)の熱は凝縮物(C)へと伝達され、その凝縮物を、流れ(4a)として第1の熱交換器(H1)に供給する。凝縮物(C)を第1の熱交換器(H1)において加熱することで、加熱された凝縮物(HC)が得られ、該凝縮物は、流れ(4)として第1の熱交換器(H1)から排出され、第1の反応器(R1)へと熱が伝達される。加熱された凝縮物((hC);流れ(4))は、136℃の温度を有する。
【0149】
本発明の実施例1においては、1時間で1トンの1,3,5−トリオキサンが生産される。1時間で1トンの1,3,5−トリオキサンを生産するために、本発明の実施例1によれば、1時間当たり4.56トンのスチーム(圧力段階3.2bar;2.53MWのエネルギーに相当)が必要とされる。
【0150】
比較用の実施例2
比較用の実施例2は、前記の本発明の実施例1と同様にして行われるが、蒸留塔(D)から流れ(2)として排出される塔頂留出物(OP)は、機械的圧縮機(MC)へと移送されないという点で相違する。すなわち、比較用の実施例2による方法は、機械的蒸気圧縮をせずに実行されるが、その他は本発明の実施例1と同じである。結果的に、流れ(2)は、凝縮物(C)への熱の伝達のために使用することができず、したがって、第1の反応器(R1)へと熱を伝達するために加熱された凝縮物(hC)を得ることができない。比較用の実施例2においては、1時間で1トンの1,3,5−トリオキサンが生産される。1時間で1トンの1,3,5−トリオキサンを生産するために、比較用の実施例2によれば、1時間当たり22トンのスチーム(圧力段階3.2bara;12.22MWのエネルギーに相当)が必要とされる。
【符号の説明】
【0151】
1 第1の生成物混合物(P1)の流れ
2 塔頂留出物(OP)の流れ
2a 側留(SC)の流れ
3 圧縮された流れ
3a 2相の流れ
4 加熱された凝縮物(HC)の流れ
4a 凝縮物の流れ
4b 第2の熱交換器(H2)からの流れ
5a 混合物(M)の流れ
5b 加熱された混合物(hM)の流れ
図1