特許第6780369号(P6780369)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6780369芳香族化合物製造触媒及び芳香族化合物の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6780369
(24)【登録日】2020年10月19日
(45)【発行日】2020年11月4日
(54)【発明の名称】芳香族化合物製造触媒及び芳香族化合物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 15/04 20060101AFI20201026BHJP
   C07C 15/06 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 15/08 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 2/42 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 2/84 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 5/367 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 5/387 20060101ALI20201026BHJP
   C07C 5/41 20060101ALI20201026BHJP
   B01J 29/70 20060101ALI20201026BHJP
   B01J 35/10 20060101ALI20201026BHJP
   C10G 35/095 20060101ALI20201026BHJP
   C01B 39/48 20060101ALI20201026BHJP
   C07B 61/00 20060101ALN20201026BHJP
【FI】
   C07C15/04
   C07C15/06
   C07C15/08
   C07C2/42
   C07C2/84
   C07C5/367
   C07C5/387
   C07C5/41
   B01J29/70 Z
   B01J35/10 301
   C10G35/095
   C01B39/48
   !C07B61/00 300
【請求項の数】5
【全頁数】45
(21)【出願番号】特願2016-164397(P2016-164397)
(22)【出願日】2016年8月25日
(65)【公開番号】特開2017-119267(P2017-119267A)
(43)【公開日】2017年7月6日
【審査請求日】2019年7月12日
(31)【優先権主張番号】特願2015-247308(P2015-247308)
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-247309(P2015-247309)
(32)【優先日】2015年12月18日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-253036(P2015-253036)
(32)【優先日】2015年12月25日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-249458(P2015-249458)
(32)【優先日】2015年12月22日
(33)【優先権主張国】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】林 智洋
(72)【発明者】
【氏名】淺川 哲夫
(72)【発明者】
【氏名】吉田 智
(72)【発明者】
【氏名】高光 泰之
(72)【発明者】
【氏名】小栗 元宏
【審査官】 山口 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−227203(JP,A)
【文献】 特開平10−036860(JP,A)
【文献】 特開2012−012340(JP,A)
【文献】 特開昭49−041322(JP,A)
【文献】 特開2006−347862(JP,A)
【文献】 特開2012−030228(JP,A)
【文献】 特開昭62−179593(JP,A)
【文献】 特開平05−058919(JP,A)
【文献】 特開平10−033987(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J21/00−38/74
C01B33/20−39/54
C07B31/00−61/00
C07B63/00−63/04
C07C1/00−409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)〜(iii)に示す特性を満足するMFI型ゼオライトを含む芳香族化合物製造触媒に、炭素数4の炭化水素混合物及び/又は炭素数6の炭化水素混合物を接触し、芳香族化合物とする際に、芳香族化合物製造触媒を有する反応場を複数とし、少なくとも1つの空気充填反応場にて芳香族化合物製造触媒の再生を行うスイング運転にて芳香族化合物とすることを特徴とする芳香族化合物の製造方法
(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.05ml/g≦pvであるメソ細孔群を有する。
(ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii)平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
【請求項2】
芳香族化合物製造触媒が、上記(i)に示すpvの全メソ細孔容積の対する細孔容積の割合(pvr)が30%≦pvr≦100%であるメソ細孔群を有する、との特性をさらに満足するMFI型ゼオライトを含むものであることを特徴とする請求項1に記載の芳香族化合物の製造方法
【請求項3】
炭素数4の炭化水素混合物及び/又は炭素数6の炭化水素混合物を反応温度400〜600℃、反応圧力0.05〜5MPa、空間速度1〜50000h−1で接触することを特徴とする請求項1又は2に記載の芳香族化合物の製造方法
【請求項4】
炭素数4の炭化水素混合物及び/又は炭素数6の炭化水素混合物が、ナフサ熱分解による生成留分であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法
【請求項5】
芳香族化合物がベンゼン、トルエン、キシレンからなる群のうち少なくとも1つ含むものであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の芳香族化合物の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定のMFI型ゼオライトを含む芳香族化合物製造触媒及びそれを用いてなる芳香族化合物の製造方法に関するものであり、特に比較的均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含む生産性・安定性・スイング運転性・長寿命に優れる芳香族化合物製造触媒、それを用いた芳香族化合物の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
MFI型ゼオライトは、ゼオライト構造由来の均一な細孔を利用した高選択性触媒として用いられている。MFI型ゼオライトを触媒として用いた例として、トルエンの不均化(例えば、特許文献1参照。)、キシレンの異性化(例えば、特許文献2参照。)などが挙げられる。
【0003】
これらの反応は主に、MFI型ゼオライトのミクロ細孔の特徴を利用したものである。MFI型ゼオライトのミクロ細孔は、入口径がおよそ0.5nmであり、この細孔径に近接した分子径を持つ分子の有効な反応場となると考えられる。
【0004】
さらに、ミクロ細孔(2nm未満)よりも大きな細孔、つまりメソ細孔(細孔径2〜50nm)を有するMFI型ゼオライトの研究が行われている(例えば、非特許文献1参照。)。
【0005】
そして、工業利用に有望な材料として、10nm以上の均一なメソ細孔を有した、新規MFI型ゼオライト及びその製造方法(例えば特許文献3参照。)が提案され、メソ細孔を有したゼオライトを触媒として利用した例として、超安定Y型ゼオライト(USY)を用いた、減圧軽油の流動接触分解(FCC)(例えば、特許文献4、5参照。)が提案されている。該プロセスでは、重質油を原料とした接触分解反応を進行させることを含むものであるため、重質油相当の大きなサイズの分子が拡散しうる細孔を持つ触媒が望まれる。メソ孔を有したゼオライトを触媒として利用したケースは、かねてより、メソ孔内部の比較的大きな空間を反応場とし、重質油等の比較的大きな分子を原料として用いたものに限られていた。そのため、特に炭素数10以下の比較的小さな分子を原料とした反応において、メソ孔を有したゼオライトを触媒として用いることで、特異的な結果が得られたという報告は僅かである。
【0006】
ベンゼン、トルエン、キシレン(以下、総称して芳香族化合物と表記する)は、多くの場合、石油精製により得られた原料油(例えば、ナフサなど)を、熱分解反応装置にて分解し、得られた熱分解生成物から芳香族化合物を蒸留または抽出によって分離精製することで得られる。これら製造法による芳香族化合物の製造では、芳香族化合物以外の熱分解生成物として、脂肪族および脂環式炭化水素が含まれる。そのため、芳香族化合物の製造に伴って、脂肪族および脂環式炭化水素が同時に製造されるため、芳香族化合物の生産量は脂肪族および脂環式炭化水素の生産量を見合って調整がなされ、おのずと生産量に限度があるものであった。また、脂肪族または脂環式炭化水素原料を、中細孔径ゼオライトを主に含んだ触媒と約400℃〜約800℃程度の温度で接触させることにより、芳香族化合物を製造することができる(例えば、非特許文献2〜5)。該製造法は、熱分解による芳香族化合物の製造法と比較して、付加価値が低く、余剰な炭化水素原料から芳香族化合物が製造できるといった利点がある。また、これらの芳香族化合物製造に用いられる触媒の開発も行われている。例えば、特許文献6では、パラフィン、オレフィン、ナフテンを含有する炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒として、亜鉛飛散量の抑制された亜鉛担持中間細孔径ゼオライト系触媒を提供している。あるいは、特許文献7では、パラフィン、オレフィン、アセチレン系炭化水素、環状パラフィン及び環状オレフィンを原料として用いた芳香族化合物製造に用いられる触媒として、L型ゼオライトに白金及びハロゲン成分を同時に担持させてなる触媒を提供している。あるいは、特許文献8では、構造体の大きさが0.1〜100mmであって、構造体表層部に結晶性多孔質アルミノシリケートが存在し、構造体表層部を除く内部の層に無機支持体が存在する構造体に亜鉛および/またはガリウムが担持したことを特徴とする芳香族化反応用触媒を提供している。その他、特許文献9〜10において、炭化水素を原料とした芳香族化合物製造用触媒が提供されている。
【0007】
これらの触媒反応を用いた芳香族化合物製造法では、製造コストの観点から、触媒寿命(反応開始後の触媒が活性な状態から触媒が失活するまでの時間)が問題となる。そこで、比較的小さな分子(特に炭素数が10以下)である炭化水素原料から芳香族化合物を選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に製造する方法は、非常に有意義なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特許第4014279号公報
【特許文献2】特許第2598127号公報
【特許文献3】特開2013−227203公報
【特許文献4】特許5339845号公報
【特許文献5】特許4773420号公報
【特許文献6】特開1998−33987公報
【特許文献7】特許第3264447号公報
【特許文献8】特許第5447468号公報
【特許文献9】特許第3966429号公報
【特許文献10】特許第5564769号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials 第137巻、92頁(2011年)
【非特許文献2】Industrial & Engineering Chemistry Research 第31巻、995頁(1992年)
【非特許文献3】Industrial & Engineering Chemistry Research 第26巻、647頁(1987年)
【非特許文献4】Applied Catalysis 第78巻、15頁(1991年)
【非特許文献5】Microporous and Mesoporous Materials 第47巻、253頁(2001年)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の目的は、比較的小さな分子(特に炭素数が10以下)である炭化水素原料から芳香族化合物を選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に製造することが可能となる新規な芳香族化合物製造触媒及びそれを用いた芳香族化合物の製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記の課題を解決するため鋭意検討を行った結果、特定のMFI型ゼオライトを含む芳香族化合物製造触媒が、選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に芳香族化合物を製造することが可能となる触媒となりうることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記(i)〜(iii)に示す特性を満足するMFI型ゼオライトを含むことを特徴とする芳香族化合物製造触媒、及び、それに、炭素数2〜6のオレフィンからなる群のうち少なくとも1つを含む低級オレフィンを接触し、芳香族化合物とすることを特徴とする芳香族化合物の製造方法に関するものである。
(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)が0.05ml/g≦pvであるメソ細孔群を有する。
(ii)回折角を2θとした粉末X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さない。
(iii)平均粒子径(PD)がPD≦100nmである。
【0013】
以下に、本発明について詳細に説明する。
【0014】
本発明の芳香族化合物製造触媒は、特定のMFI型ゼオライトを含んでなるものであり、特定のMFI型ゼオライトを含んでなることにより、芳香族化合物を選択的に、かつ、長時間にわたって安定的に製造することが可能な触媒となるものである。
【0015】
本発明の芳香族化合物製造触媒を構成するMFI型ゼオライトは、上記(i)〜(iii)に示す特性を満足するものであり、MFI型ゼオライトとしては、国際ゼオライト学会で定義される構造コードMFIに属するアルミノシリケート化合物を示すものである。また、本発明でいうメソ細孔とは、IUPACで定義されたメソ細孔であり、細孔直径が2〜50nmの範囲の細孔を示すものである。そして、メソ細孔は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法により測定することができる。また、窒素吸着法で得られた測定結果を解析することにより、メソ細孔の細孔容積の値を得ることができる。その解析には、例えば以下の方法を使用することができる。
【0016】
具体的には、Barret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)で脱着過程を解析する方法を挙げることができ、例えば、細孔直径が2nm以上50nm以下に相当する範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより、メソ細孔に属する細孔の全細孔容積の値を得ることができる。
【0017】
また、最初に、縦軸が単位質量当りの窒素脱着量V/m(mL/g)、横軸がメソ細孔直径D(nm)とする累積曲線を得てから、縦軸をメソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V/m)/d(D))とすることにより、メソ細孔直径における単位質量当りの窒素脱着量の増加分のピークを得ることができる。
【0018】
本発明の芳香族化合物製造触媒は、細孔直径がほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなるものであり、本発明においては、細孔直径がほぼ均一であるメソ細孔群を均一メソ細孔と称する場合もある。そして、具体的には、均一メソ細孔とは、細孔分布曲線におけるメソ細孔に係るピークの内、最大のピークをガウス関数で近似し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(μ±2σ)内の細孔直径を有するメソ細孔をいう。また、均一メソ細孔の細孔容積は、μ±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めることができる。
【0019】
そして、本発明の芳香族化合物製造触媒は、ほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトの中でも、(i)メソ細孔分布曲線がピークを有するものであり、該ピークの半値幅(hw)がhw≦20nm、該ピークの中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmであり、該ピークに相当するメソ細孔のメソ細孔容積(pv)がpv≧0.05ml/gである、より均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなるものである。
【0020】
本発明の芳香族化合物製造触媒は、メソ細孔の細孔分布曲線がピークを有し、該ピークがhw≦20nm以下のMFI型ゼオライトという細孔直径の大きさのバラつきの小さなほぼ均一なメソ細孔群を有するMFI型ゼオライトを含んでなることにより、反応選択性に優れるものとなり、その効果はhw≦15nmであることにより、より顕著な好ましいものとなる。そして、hwの下限としては特に設定するものではないが、より反応選択性に優れるものとなることから1nm以上のものであることが好ましい。なお、hw>20nmである場合、反応選択性に劣るものとなる。また、該ピークをガウス関数近似した際の中心値(μ)が10nm≦μ≦20nmのMFI型ゼオライトを含むことにより、より大きいサイズの分子をも選択的に反応することが可能となり、優れた芳香族化合物製造触媒となるものである。さらに、pv≧0.05ml/gであることにより、長寿命の触媒となるものであり、0.05ml/g≦pv≦0.70ml/gであることが好ましく、特に0.10ml/g≦pv≦0.7ml/gであることが好ましく、更に0.20ml/g≦pv≦0.5ml/gであることが好ましい。ここで、pv<0.05ml/gである場合、反応時に副生するコーク等の蓄積により細孔が閉塞しやすいものとなり触媒寿命に劣るものとなる。
【0021】
また、本発明の芳香族化合物製造触媒に含まれるMFI型ゼオライトは、特に選択的な反応を可能とする触媒となることから、上記(i)に示されるpvの全細孔容積に占める割合(pvr)が、30%≦pvr≦100%であることが好ましく、更に40%≦pvr≦100%であることが好ましい。
【0022】
本発明の芳香族化合物製造触媒に含まれるMFI型ゼオライトは、(ii)回折角を2θとした紛体X線回折測定において0.1〜3度の範囲にピークを有さないものである。このことは、メソ細孔間の配置には規則性がないこと、メソ細孔間を区切る壁も存在しないことを示すものであり、触媒とした際にはメソ細孔間の物質移動が容易になることから反応効率に優れる芳香族化合物製造触媒となるものである。
【0023】
本発明の芳香族化合物製造触媒に含まれるMFI型ゼオライトは、(iii)PD≦100nmのものであり、特に耐熱性にも優れる芳香族化合物製造触媒となることから、3nm≦PDであることが好ましく、更に5nm≦PDであることが好ましい。ここで、PD>100nmのゼオライトである場合、ほぼ均一なメソ細孔群が形成されなく、選択性におとるものとなる。なお、PDは、例えば外表面積から以下の式(1)を用いて算出して求めることができる。
PD=6/S(1/2.29×10+0.18×10−6) (1)
(ここで、Sは外表面積(m/g)を示すものである。)
また、式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における一般的な窒素吸着法を用い、t−plot法から求めることができる。例えば、tを吸着量の厚みとするときに、tについて0.6〜1nmの範囲の測定点を直線近似し、得られた回帰直線の傾きから外表面積を求める方法である。
【0024】
なお、MFI型ゼオライトの粒子径を測定する別の方法としては、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)や透過型電子顕微鏡(TEM)の写真から任意の粒子を10個以上選んで、その表面積平均直径を求める方法を挙げることができる。
【0025】
本願発明の芳香族化合物製造触媒に含まれるMFI型ゼオライトは、そのSiO/Al(モル比)は制限されるものではなく、その中でも耐熱性、反応選択性、生産性に優れる触媒となることから、SiO/Al(モル比)が20以上200以下であることが好ましい。
【0026】
本発明の芳香族化合物製造触媒に含まれるMFI型ゼオライトとしては、反応選択性、生産性に優れる触媒となることから、細孔内にテトラプロピルアンモニウム塩の様な構造指向剤を含まないものであることが好ましい。
【0027】
該MFI型ゼオライトを本発明の芳香族化合物製造触媒として用いる際の形態としては、制限されるものではなく、例えば合成されたMFI型ゼオライト粉末をそのまま触媒として用いること、圧縮成型を行い特定の形状物として用いること、バインダー等と混合し成形を行い特定の形状物として用いること、等のいずれの形態として用いることも可能である。
【0028】
本発明の芳香族化合物製造触媒は、該MFI型ゼオライトを含んでなることにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる芳香族化合物製造触媒となるものであり、例えば炭素数2〜6の炭化水素と接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することを可能とするものである。その際の炭素数2〜6の炭化水素としてはその範疇に属するものであれば如何なるものを挙げることができ、例えば飽和炭化水素、不飽和炭化水素、脂環式炭化水素、それらの混合物等を挙げることができ、より具体的には、エタン、エチレン、プロパン、プロピレン、シクロプロパン、n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタジエン、シクロブテン、シクロブタン、n−ペンタン、1−ペンタン、2−ペンタン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、n−ヘキサン、1−ヘキサン、2−ヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン、ヘキサジエン、シクロヘキサン及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0029】
そして、本発明の芳香族化合物製造触媒は、該MFI型ゼオライトを含んでなることにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる芳香族化合物製造触媒となるものであり、例えば炭素数2〜6のオレフィンからなる群のうち少なくとも1つの低級オレフィンと接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することを可能とするものである。その際のオレフィンとしては、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、3−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、3−ヘキセン及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0030】
また、炭素数4の炭化水素混合物と該MFI型ゼオライトを含んでなる触媒とを接触することにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる芳香族化合物の製造方法となるものであり、炭素数4の炭化水素混合物としては、例えばナフサ等の石油類の分解留分の内、C4留分等として称されるものを挙げることができ、より具体的には、n−ブタン、イソブタン、1−ブテン、2−ブテン、イソブテン、ブタジエン、シクロブテン、シクロブタン等からなる混合物等を挙げることができる。
【0031】
炭素数6の炭化水素混合物と該MFI型ゼオライトを含んでなる触媒とを接触することにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる芳香族化合物の製造方法となるものであり、炭素数6の炭化水素混合物としては、例えばナフサ等の石油類の分解留分の内、C6留分等として称されるものを挙げることができ、より具体的には。n−ヘキサン、1−ヘキセン、2−ヘキセン、ヘキサジエン、シクロヘキサン等からなる混合物等を挙げることができる。
【0032】
さらに、本発明の芳香族化合物製造触媒は、該MFI型ゼオライトを含んでなることにより、反応選択性、生産性等の効率に優れる転化触媒となるものであり、例えば炭素数2〜6の飽和脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素と接触することにより、効率よく芳香族化合物を製造することを可能とするものである。その際の飽和脂肪族炭化水素又は脂環式炭化水素としては、例えばエタン、プロパン、ブタン、イソブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロプロパン、シクロブタン、シクロヘキサン及びそれらの混合物等を挙げることができる。
【0033】
そして、その際の実施形態である反応において、反応温度は特に限定されるものではなく、芳香族化合物の製造が可能であればよく、中でも、オレフィン又はアルカンの生成を抑制し、必要以上の耐熱反応装置を要しない芳香族化合物の効率的な反応となることから400〜800℃の範囲が望ましい。また、反応圧力にも制限はなく、例えば0.05MPa〜5MPa程度の圧力範囲で運転が可能である。そして、本発明の芳香族化合物製造触媒に対する反応原料であるオレフィンの供給は、触媒体積に対し原料ガスの体積の比として特に制限されるものではなく、例えば1h−1〜50000h−1程度の空間速度を挙げることができる。オレフィンを原料ガスとして供給する際には、該オレフィンの単一ガス、混合ガス、およびこれらを窒素等の不活性ガス、水素、一酸化炭素、二酸化炭素から選ばれる単一または混合ガスにより希釈したものとして用いることもできる。
【0034】
その反応形式として制限はなく、例えば固定床、輸送床、流動床、移動床、多管式反応器のみならず連続流式および間欠流式並びにスイング式反応器、等を用いることができる。そして、特に効率的な芳香族化合物の製造方法となることからスイング式反応器による反応形式であることが好ましい。そして、本願発明の芳香族化合物製造触媒は、芳香族化合物の製造効率に優れると共に、長い触媒寿命及び耐再生性に優れることからスイング運転用の触媒であることが好ましい。
【0035】
また、製造される芳香族化合物としては、芳香族化合物と称される範疇に属するものであれば特に制限はなく、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ナフタレン、メチルナフタレン等を挙げることができ、特に、ベンゼン、トルエン、キシレンであることが好ましい。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、特定のMFI型ゼオライトを含む芳香族化合物製造触媒に関するものであり、特にオレフィン、飽和脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素から芳香族化合物を製造する際に、特異的に長い触媒寿命を得ることができ、スイング運転に適した芳香族化合物製造触媒およびそれを用いた芳香族化合物の製造方法を提供するものであり、工業的にも非常に有用なものである。
【実施例】
【0037】
以下に、本発明を実施例により具体的に説明する。
なお、実施例により用いたMFI型ゼオライト、芳香族化合物製造触媒は以下の方法により測定・定義した。
【0038】
〜細孔分布、細孔直径、及び外表面積の測定〜
ゼオライトの細孔分布、及び、細孔直径は窒素吸着測定により測定した。
【0039】
その際の窒素吸着測定としては、窒素吸着装置((商品名)OMNISORP360CX,BeckmanCoulter社製)を用い、吸脱着とも30torr/stepの条件で測定した。外表面積は、t−plot法により、吸着層の厚み(t=0.6〜1.0nm)の範囲を直線近似して求めた。
【0040】
そして、窒素吸着測定の脱着過程をBarret−Joyner−Halenda法(Journal of the American Chemical Society、1951年、頁373〜380)にて解析し、横軸が細孔直径の常数、縦軸が窒素ガスの脱着量の微分値であるメソ細孔の細孔分布曲線を得た。メソ細孔の全細孔容積は、2nm以上50nm以下の範囲の窒素ガス脱着量を積算することにより求めた。
【0041】
そして、メソ細孔からの窒素ガス脱着量のメソ細孔直径値での微分値(d(V/m)/d(D))のピークの内、最大のピークをガウス関数の強度近似で解析し、そのガウス関数の中心値(μ)から標準偏差の2倍(2σ)の範囲(=μ±2σ)内の直径を有するメソ細孔を均一メソ細孔と定義した。均一メソ細孔の細孔容積は、中心値(μ)を基準として±2σの範囲の窒素ガス脱着量を積算して求めた。
【0042】
〜平均粒子径の測定〜
外表面積から前記の式(1)を用いて平均粒子径を算出した。式(1)中、Sは外表面積(m/g)であり、PDは平均粒子径(m)である。式(1)における外表面積(S(m/g))は、液体窒素温度における窒素吸着法によりt−plot法から求めた。
【0043】
〜SiO/Alモル比の測定〜
ゼオライトのSiO/Alモル比は、MFI型ゼオライトをフッ酸と硝酸の混合水溶液で溶解し、これを一般的なICP装置((商品名)OPTIMA3300DV,PerkinElmer社製)による誘導結合プラズマ発光分光分析(ICP−AES)で測定し、求めた。
【0044】
〜凝集径の測定〜
凝集径として、動的散乱法によって凝集粒子径の体積平均径(D50)を測定した。測定には(商品名)マイクロトラックHRA(Model9320−x100)(日機装製)を用いた。測定において粒子屈折率は1.66、粒子の設定は透明非球状粒子、溶媒の液体屈折率は1.33とした。
【0045】
〜粉末X線回折の測定〜
X線回折測定装置(スペクトリス社製、(商品名)X’pert PRO MPD)を用い、管電圧45kV、管電流40mAとしてCuKα1を用いて、大気中において測定した。0.04〜5度の範囲を0.08度/ステップ、200秒/ステップで分析した。また、ダイレクトビームの吸収率で補正したバックグラウンドを除去している。
【0046】
ピークの有無の確認は目視で行うことができるほか、ピークサーチプログラムを利用してもよい。ピークサーチプログラムは、一般的なプログラムが利用できる。例えば、横軸が2θ(度)、縦軸が強度(a.u.)の測定結果をSAVITSKY&GOLAYの式とSliding Polynomialフィルターで平滑化した後、2次微分を行ったときに、3点以上連続する負の値がある場合、ピークが存在すると判断した。
【0047】
〜芳香族化合物製造装置及びその製造方法〜
実施例により得られた芳香族化合物製造触媒は、以下の方法により芳香族化合物の製造を行い、その評価を行った。
【0048】
ステンレス製反応管(内径16mm、長さ600mm)を用いた固定床気相流通式反応装置を2本並列で接続したスイング式反応器を用いた。2本のステンレス製反応管のそれぞれの中段に、芳香族化合物製造触媒を充填し、乾燥空気流通下での加熱前処理を行ったのち、2本の反応装置に対して、所定時間ごとに切り替え運転を行い、交互に原料ガスをフィードした。片方の反応装置(反応側)で原料ガスを供給し反応している間に、他方の反応装置(再生側)で空気ガスを流通し、コーク燃焼による芳香族化合物製造触媒の再生を行った。なお、スイング式反応器の装置条件および運転条件は、本実施例記載の条件に限定されるものではなく、適宜選択可能である。そして、加熱はセラミック製管状炉を用い、触媒層の温度を制御した。反応出口ガスおよび反応液を採取し、ガスクロマトグラフを用い、ガス成分および液成分を個別に分析した。ガス成分は、TCD検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−1700)を用いて分析した。充填剤は、Waters社製PorapakQ(商品名)またはGLサイエンス社製MS−5A(商品名)を用いた。液成分は、FID検出器を備えたガスクロマトグラフ(島津製作所製、(商品名)GC−2015)を用いて分析した。分離カラムは、キャピラリーカラム(GLサイエンス社製、(商品名)TC−1)を用いた。
【0049】
反応条件は下記のように設定した。
【0050】
(芳香族化合物製造条件)
触媒温度:600℃。
流通ガス:原料ガス50mol%+窒素50mol%の混合ガス、100ml/分。
触媒体積に対する原料ガスの体積の比:1000/時間。
触媒重量:1.5g。
触媒形状:MFI型ゼオライト粉末を400kgf/cmで1分間成型した後に粉砕し、約1mmのペレット形状とした。
反応圧力:0.1MPa。
【0051】
(スイング運転時の触媒再生条件および空気パージ条件)
触媒温度:600℃。
流通ガス:空気50ml/分。
触媒体積に対する空気ガスの体積の比:1000/時間。
圧力:0.1MPa。
【0052】
(窒素パージ条件)
触媒温度:600℃。
流通ガス:窒素50ml/分。
触媒体積に対する窒素ガスの体積の比:1000/時間。
圧力:0.1MPa。
【0053】
MFI型ゼオライトの製造は、特開2013−227203公報を参考にその製造を行った。
【0054】
実施例1
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0055】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0056】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0057】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径27nm、SiO/Alモル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。また、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0058】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、エチレンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。その際のスイング式反応器の反応側、再生側の各条件は、以下の通りである。
【0059】
(反応側)
600℃で加熱した反応管に対し、原料ガスを140分流通し、次いで、原料ガスフィードを再生側の反応管方向にただちに切り替えた。
【0060】
(再生側)
反応側の反応管の原料ガスフィードが開始すると同時に、600℃で加熱した再生側の反応管に対し窒素パージ(1)を開始し、30分間窒素パージを行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、供給ガスを窒素から空気にただちに切り替え、10分間空気パージを行い、反応管内を十分に空気雰囲気に置換した。次いで、60分間空気を流通させ芳香族化合物製造触媒の再生処理を行った。次いで、供給ガスを空気から窒素にただちに切り替え、10分間窒素パージ(2)を行い反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。続いて、窒素パージ(3)を30分間行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、窒素ガスフィードラインを反応側の反応管方向にただちに切り替えると同時に、再生側の反応管に原料ガスフィードを開始した。以後、上記と同様の一連の処理を繰り返し行い、連続的に生成物フィードを得た。なお、以後の実施例、比較例に記載の反応でも同様の手順で運転を行い、原料ガス流通時間、再生処理時間および窒素パージ(3)時間のみを変更した。各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0061】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表3に示す。原料ガス流通時間1395分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0062】
【表1】
【0063】
【表2】
【0064】
【表3】
【0065】
実施例2
実施例1により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料としてプロピレンを用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0066】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表4に示す。原料ガス流通時間2295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0067】
【表4】
【0068】
実施例3
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とし、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0069】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0070】
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例1と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0071】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径26nm、SiO/Alモル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.42ml/gであり、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、μ=17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0072】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、エチレンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0073】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0074】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表5に示す。原料ガス流通時間1395分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0075】
【表5】
【0076】
実施例4
実施例3により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、プロピレンを原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0077】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表6に示す。原料ガス流通時間2295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0078】
【表6】
【0079】
比較例1
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0080】
該原料組成物における組成は以下のとおりである。
【0081】
SiO/Alモル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、HO/Siモル比=18
該原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は、実施例1と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0082】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径115nm、SiO/Alモル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、μ=4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。
【0083】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、エチレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0084】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0085】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表7に示す。原料ガス流通時間1395分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0086】
【表7】
【0087】
比較例2
比較例1により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、エチレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0088】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0089】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表8に示す。エチレン流通時間535分で、転化率が51%、ベンゼン収率が8wt%、トルエン収率が9wt%、キシレン収率が2wt%まで低下し、生産性に劣るものであった。
【0090】
【表8】
【0091】
比較例3
比較例1により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、プロピレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0092】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0093】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表9に示す。原料ガス流通時間2295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0094】
【表9】
【0095】
比較例4
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0096】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0097】
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例1と同様に反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0098】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径42nm、SiO/Alモル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、μ=6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。
【0099】
得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、エチレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0100】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0101】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表10に示す。原料ガス流通時間1395分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0102】
【表10】
【0103】
比較例5
比較例4により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、エチレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0104】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0105】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表11に示す。エチレン流通時間895分で、転化率が52%、ベンゼン収率が10wt%、トルエン収率が8wt%、キシレン収率が2wt%まで低下し、生産性に劣るものであった。
【0106】
【表11】
【0107】
比較例6
比較例4により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、プロピレンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0108】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。
【0109】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表12に示す。原料ガス流通時間2295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0110】
【表12】
【0111】
実施例5
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0112】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0113】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0114】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径26nm、SiO/Alモル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.40ml/gであった。また、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.32ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は80%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表13に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0115】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、n−ブタンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。その際のスイング式反応器の反応側、再生側の各条件は、以下の通りである。
【0116】
(反応側)
600℃で加熱した反応管に対し、原料ガスを1000分流通し、次いで、原料ガスフィードを再生側の反応管方向にただちに切り替えた。
【0117】
(再生側)
反応側の反応管の原料ガスフィードが開始すると同時に、600℃で加熱した再生側の反応管に対し窒素パージ(1)を開始し、30分間窒素パージを行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、供給ガスを窒素から空気にただちに切り替え、10分間空気パージを行い、反応管内を十分に空気雰囲気に置換した。次いで、60分間空気を流通させ芳香族化合物製造触媒の再生処理を行った。次いで、供給ガスを空気から窒素にただちに切り替え、10分間窒素パージ(2)を行い反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。続いて、窒素パージ(3)を890分間行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、窒素ガスフィードラインを反応側の反応管方向にただちに切り替えると同時に、再生側の反応管に原料ガスフィードを開始した。以後、上記と同様の一連の処理を繰り返し行い、連続的に生成物フィードを得た。なお、以後の実施例、比較例に記載の反応でも同様の手順で運転を行い、原料ガス流通時間、再生処理時間および窒素パージ(3)時間のみを変更した。各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0118】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表15に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0119】
【表13】
【0120】
【表14】
【0121】
【表15】
【0122】
実施例6
実施例5により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料としてイソブタンを用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0123】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表16に示す。原料ガス流通時間9795分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0124】
【表16】
【0125】
実施例7
実施例5により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料としてn−ヘキサンを用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0126】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表17に示す。原料ガス流通時間10495分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0127】
【表17】
【0128】
実施例8
実施例5により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料としてメチルシクロペンタンを用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0129】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表18に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0130】
【表18】
【0131】
実施例9
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とし、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0132】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0133】
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例1と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0134】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径25nm、SiO/Alモル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.43ml/gであり、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、μ=17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.40ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は93%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表13に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0135】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、n−ブタンを原料とし、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0136】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0137】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表19に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0138】
【表19】
【0139】
実施例10
実施例9により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、イソブテンを原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0140】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表20に示す。原料ガス流通時間9795分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0141】
【表20】
【0142】
実施例11
実施例9により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、n−ヘキサンを原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0143】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表21に示す。原料ガス流通時間10495分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0144】
【表21】
【0145】
実施例12
実施例9により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、メチルシクロペンタンを原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0146】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表22に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0147】
【表22】
【0148】
比較例7
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0149】
該原料組成物における組成は以下のとおりである。
【0150】
SiO/Alモル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、HO/Siモル比=18
該原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は、実施例1と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0151】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径115nm、SiO/Alモル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、μ=4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表13に示す。
【0152】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、n−ブタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0153】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0154】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表23に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0155】
【表23】
【0156】
比較例8
比較例7により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、イソブタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0157】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0158】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表24に示す。原料ガス流通時間9795分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0159】
【表24】
【0160】
比較例9
比較例7により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、n−ヘキサンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0161】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0162】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表25に示す。原料ガス流通時間10495分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0163】
【表25】
【0164】
比較例10
比較例7により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、メチルシクロペンタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0165】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0166】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表26に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0167】
【表26】
【0168】
比較例11
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0169】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0170】
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例9と同様に反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0171】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径42nm、SiO/Alモル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、μ=6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。
【0172】
得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、n−ブタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0173】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0174】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表27に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0175】
【表27】
【0176】
比較例12
比較例11により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、イソブタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0177】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0178】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表28に示す。原料ガス流通時間9795分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0179】
【表28】
【0180】
比較例13
比較例11により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、n−ヘキサンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0181】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0182】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表29に示す。原料ガス流通時間10495分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0183】
【表29】
【0184】
比較例14
比較例11により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、メチルシクロペンタンを原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0185】
各工程におけるガスの流通時間を表14に示す。
【0186】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表30に示す。原料ガス流通時間9995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0187】
【表30】
【0188】
実施例13
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0189】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0190】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0191】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径28nm、SiO/Alモル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.38ml/gであった。また、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.30ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は78%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表31に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0192】
得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ブテン50mol%と2−ブテン50mol%の混合物を原料とした芳香族化合物の製造を行った。その際のスイング式反応器の反応側、再生側の各条件は、以下の通りであった。
【0193】
(反応側)
600℃で加熱した反応管に対し、原料ガスを500分流通し、次いで、原料ガスフィードを再生側の反応管方向にただちに切り替えた。
【0194】
(再生側)
反応側の反応管の原料ガスフィードが開始すると同時に、600℃で加熱した再生側の反応管に対し窒素パージ(1)を開始し、30分間窒素パージを行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、供給ガスを窒素から空気にただちに切り替え、10分間空気パージを行い、反応管内を十分に空気雰囲気に置換した。次いで、60分間空気を流通させ触媒の再生処理を行った。次いで、供給ガスを空気から窒素にただちに切り替え、10分間窒素パージ(2)を行い反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。続いて、窒素パージ(3)を390分間行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、窒素ガスフィードラインを反応側の反応管方向にただちに切り替えると同時に、再生側の反応管に原料ガスフィードを開始した。以後、上記と同様の一連の処理を繰り返し行い、連続的に生成物フィードを得た。なお、以後の実施例、比較例に記載の反応でも同様の手順で運転を行い、原料ガス流通時間、再生処理時間および窒素パージ(3)時間のみを変更した。各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0195】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表33に示す。原料ガス流通時間4995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0196】
【表31】
【0197】
【表32】
【0198】
【表33】
【0199】
実施例14
実施例13により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料として1−ブテン20mol%、2−ブテン20mol%、イソブテン20mol%、n−ブタン20mol%、イソブタン20mol%の混合物を用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0200】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表34に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0201】
【表34】
【0202】
実施例15
実施例13に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン29mol%、2−ブテン17mol%、イソブテン47mol%、n−ブタン5mol%、イソブタン2mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。なお、本実施例で用いた原料組成は、通常のナフサ分解によるC4留分から1、3−ブタジエンを除いた混合物を想定したものである。
【0203】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表35に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0204】
【表35】
【0205】
実施例16
実施例13に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン49mol%、2−ブテン29mol%、イソブテン10mol%、n−ブタン9mol%、イソブタン3mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。なお、本実施例で用いた原料組成は、通常のナフサ分解によるC4留分から1、3−ブタジエンおよびイソブテンの一部を除いた混合物を想定したものである。
【0206】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表36に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0207】
【表36】
【0208】
実施例17
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0209】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0210】
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例13と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は27nm、SiO/Alモル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.41ml/gであった。
【0211】
得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、中心値は17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.38ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は92%であった。
【0212】
得られたMFI型ゼオライトの物性を表31に示す。
【0213】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン50mol%と2−ブテン50mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0214】
各工程におけるガスの流通時間を表2に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表37に示す。原料ガス流通時間4995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0215】
【表37】
【0216】
実施例18
実施例17に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン20mol%、2−ブテン20mol%、イソブテン20mol%、n−ブタン20mol%、イソブタン20mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0217】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表38に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0218】
【表38】
【0219】
実施例19
実施例17に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン29mol%、2−ブテン17mol%、イソブテン47mol%、n−ブタン5mol%、イソブタン2mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。なお、本実施例で用いた原料組成は、通常のナフサ分解のC4留分から1、3−ブタジエンを除いた混合物を想定したものである。
【0220】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表39に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0221】
【表39】
【0222】
実施例20
実施例17に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン49mol%、2−ブテン29mol%、イソブテン10mol%、n−ブタン9mol%、イソブタン3mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。なお、本実施例で用いた原料組成は、通常のナフサ分解のC4留分から1、3−ブタジエンおよびイソブテンの一部を除いた混合物を想定したものである。
【0223】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表40に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0224】
【表40】
【0225】
比較例15
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0226】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0227】
SiO/Alモル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、H2O/Siモル比=18
この原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は実施例1と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は115nm、SiO/Alモル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであった。
【0228】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、中心値は4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。
【0229】
得られたMFI型ゼオライトの物性を表31に示す。
【0230】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン50mol%と2−ブテン50mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0231】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0232】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表41に示す。原料ガス流通時間4995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0233】
【表41】
【0234】
比較例16
比較例15に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン20mol%、2−ブテン20mol%、イソブテン20mol%、n−ブタン20mol%、イソブタン20mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0235】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0236】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表42に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0237】
【表42】
【0238】
比較例17
比較例15に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン29mol%、2−ブテン17mol%、イソブテン47mol%、n−ブタン5mol%、イソブタン2mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0239】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0240】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表43に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0241】
【表43】
【0242】
比較例18
比較例15に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン49mol%、2−ブテン29mol%、イソブテン10mol%、n−ブタン9mol%、イソブタン3mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0243】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0244】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表44に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0245】
【表44】
【0246】
比較例19
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。発生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0247】
上記原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0248】
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
この原料組成物を実施例13と同様に反応、及び処理してMFI型ゼオライトを得た。得られたMFI型ゼオライトの平均粒子径は42nm、SiO/Alモル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであった。
【0249】
また、得られたMFI型ゼオライトの細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、中心値は6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。
【0250】
得られたMFI型ゼオライトの物性を表31に示す。
【0251】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン50mol%と2−ブテン50mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0252】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0253】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表45に示す。原料ガス流通時間4995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0254】
【表45】
【0255】
比較例20
比較例19に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン20mol%、2−ブテン20mol%、イソブテン20mol%、n−ブタン20mol%、イソブタン20mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0256】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0257】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表46に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0258】
【表46】
【0259】
比較例21
比較例19に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン29mol%、2−ブテン17mol%、イソブテン47mol%、n−ブタン5mol%、イソブタン2mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0260】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0261】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表47に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0262】
【表47】
【0263】
比較例22
比較例19に記載のMFI型ゼオライトを触媒として、1−ブテン49mol%と2−ブテン29mol%、イソブテン10mol%、n−ブタン9mol%、イソブタン3mol%の混合物を原料とした転化反応を行った。
【0264】
各工程におけるガスの流通時間を表32に示す。
【0265】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表48に示す。原料ガス流通時間5995分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0266】
【表48】
【0267】
実施例21
テトラプロピルアンモニウム(以降、TPAと略記する場合がある。)水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に不定形アルミノシリケートゲルを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。その際の種晶の添加量は、原料組成物中のAlとSiOの重量に対して、0.7重量%とした。また、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0268】
該原料組成物の組成は以下のとおりである。
SiO/Alモル比=44、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.16、OH/Siモル比=0.21、HO/Siモル比=10
得られた原料組成物をステンレス製オートクレーブに密閉し、115℃で攪拌しながら4日間結晶化させ、スラリー状混合液を得た。結晶化後のスラリー状混合液を遠心沈降機で固液分離した後、十分量の純水で固体粒子を洗浄し、110℃で乾燥して乾燥粉末を得た。
【0269】
得られた乾燥粉末10gを、550℃で1時間焼成後、60℃、20重量%の塩化アンモニウム水溶液100ml中で20時間交換、ろ過、洗浄してアンモニウム型のMFI型ゼオライトとした。その後、アンモニウム型のMFI型ゼオライトを550℃で1時間焼成して、MFI型ゼオライトを得た。
【0270】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径26nm、SiO/Alモル比は40、凝集径は46μmであった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.39ml/gであった。また、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は9nm、μ=16nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.31ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は79%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表49に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0271】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、1−ヘキセン50mol%と2−ヘキセン50mol%を原料とし、上記した条件にて芳香族化合物の製造を行った。その際のスイング式反応器の反応側、再生側の各条件は、以下の通りである。
【0272】
(反応側)
600℃で加熱した反応管に対し、原料ガスを430分流通し、次いで、原料ガスフィードを再生側の反応管方向にただちに切り替えた。
【0273】
(再生側)
反応側の反応管の原料ガスフィードが開始すると同時に、600℃で加熱した再生側の反応管に対し窒素パージ(1)を開始し、30分間窒素パージを行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、供給ガスを窒素から空気にただちに切り替え、10分間空気パージを行い、反応管内を十分に空気雰囲気に置換した。次いで、60分間空気を流通させ芳香族化合物製造触媒の再生処理を行った。次いで、供給ガスを空気から窒素にただちに切り替え、10分間窒素パージ(2)を行い反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。続いて、窒素パージ(3)を320分間行い、反応管内を十分に窒素雰囲気に置換した。次いで、窒素ガスフィードラインを反応側の反応管方向にただちに切り替えると同時に、再生側の反応管に原料ガスフィードを開始した。以後、上記と同様の一連の処理を繰り返し行い、連続的に生成物フィードを得た。なお、以後の実施例、比較例に記載の反応でも同様の手順で運転を行い、原料ガス流通時間、および窒素パージ(3)時間のみを変更した。各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0274】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表51に示す。原料ガス流通時間4295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0275】
【表49】
【0276】
【表50】
【0277】
【表51】
【0278】
実施例22
実施例21により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料として1−ヘキセン50mol%と3−ヘキセン50mol%の混合物を用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0279】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表52に示す。原料ガス流通時間4195分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0280】
【表52】
【0281】
実施例23
実施例21により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料として1−ヘキセン50mol%とn−ヘキサン50mol%の混合物を用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0282】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表53に示す。原料ガス流通時間7295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0283】
【表53】
【0284】
実施例24
実施例21により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、原料としてn−ヘキサン50mol%とシクロヘキサン50mol%の混合物を用い、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0285】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表54に示す。原料ガス流通時間8895分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0286】
【表54】
【0287】
実施例25
TPA臭化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加した後、MFI型ゼオライトを当該水溶液に種晶として加え原料組成物とし、副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0288】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0289】
SiO/Alモル比=28、TPA/Siモル比=0.05、Na/Siモル比=0.17、OH/Siモル比=0.17、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例21と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0290】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径26nm、SiO/Alモル比は26であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.42ml/gであり、細孔分布曲線におけるメソ細孔分布曲線はピークを有し、均一メソ細孔のピークの半値幅は15nm、μ=17nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.39ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は91%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表1に示す。また、得られたMFI型ゼオライトの粉末X線回折では、0.1〜3度の範囲にピークは存在せず、メソ細孔が不規則に連結していることが示されている。
【0291】
得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、1−ヘキセン50mol%と2−ヘキセン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて芳香族化合物への転化反応を行った。
【0292】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0293】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表55に示す。原料ガス流通時間4295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく安定的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0294】
【表55】
【0295】
実施例26
実施例25により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、1−ヘキセン50mol%と3−ヘキセン50mol%の混合物を原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0296】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表56に示す。原料ガス流通時間4195分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0297】
【表56】
【0298】
実施例27
実施例25により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、1−ヘキセン50mol%とn−ヘキサン50mol%の混合物を原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0299】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表57に示す。原料ガス流通時間7295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0300】
【表57】
【0301】
実施例28
実施例25により得られたMFI型ゼオライトを芳香族化合物製造触媒とし、n−ヘキサン50mol%とシクロヘキサン50mol%を原料とした芳香族化合物への転化反応を行った。反応は上記した条件下で行った。
【0302】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表58に示す。原料ガス流通時間8895分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率がいずれも大きく低下することなく連続的に生成物フィードを得ることが可能であった。
【0303】
【表58】
【0304】
比較例23
水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0305】
該原料組成物における組成は以下のとおりである。
【0306】
SiO/Alモル比=48、Na/Siモル比=0.18、OH/Siモル比=0.18、H2O/Siモル比=18
該原料組成物を、結晶化温度を180℃にした以外は、実施例21と同様の方法により反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0307】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径115nm、SiO/Alモル比は42であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.05ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は0.3nm、μ=4nmであった。また、その均一メソ細孔の細孔容積は0.01ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は26%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表49に示す。
【0308】
得られたMFI型ゼオライトを触媒として、1−ヘキセン50mol%と2−ヘキセン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0309】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0310】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表59に示す。原料ガス流通時間4295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0311】
【表59】
【0312】
比較例24
比較例23により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ヘキセン50mol%と3−ヘキセン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0313】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0314】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表60に示す。原料ガス流通時間4195分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言い難いものであった。
【0315】
【表60】
【0316】
比較例25
比較例23により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ヘキセン50mol%とn−ヘキサン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0317】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0318】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表61に示す。原料ガス流通時間7295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0319】
【表61】
【0320】
比較例26
比較例23により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、n−ヘキサン50mol%とシクロヘキサン50mol%を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0321】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0322】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表62に示す。原料ガス流通時間8895分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0323】
【表62】
【0324】
比較例27
TPA水酸化物と水酸化ナトリウムの水溶液に水酸化アルミニウムを溶解させた。得られた水溶液にテトラエトキシシランを添加して懸濁させた。得られた懸濁液にMFI型ゼオライトを種晶として加え原料組成物とした。副生したエタノールは蒸発させて除いた。
【0325】
該原料組成物において、組成は以下のとおりである。
【0326】
SiO/Alモル比=59、TPA/Siモル比=0.20、Na/Siモル比=0.06、OH/Siモル比=0.26、HO/Siモル比=10
該原料組成物を実施例21と同様に反応、処理してMFI型ゼオライトを得た。
【0327】
得られたMFI型ゼオライトは、平均粒子径42nm、SiO/Alモル比は49であった。得られたMFI型ゼオライト中に存在するメソ細孔の全細孔容積は0.20ml/gであり、細孔分布曲線における均一メソ細孔のピークの半値幅は3nm、μ=6nmであった。また、均一メソ細孔の細孔容積は0.04ml/gであり、メソ細孔の全細孔容積に占める均一メソ細孔の細孔容積の割合は23%であった。得られたMFI型ゼオライトの物性を表49に示す。
【0328】
得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ヘキセン50mol%と2−ヘキセン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0329】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0330】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表63に示す。原料ガス流通時間4295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0331】
【表63】
【0332】
比較例28
比較例27により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ヘキセン50mol%と3−ヘキセン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0333】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0334】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表64に示す。原料ガス流通時間4195分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0335】
【表64】
【0336】
比較例29
比較例27により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、1−ヘキセン50mol%とn−ヘキサン50mol%の混合物を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0337】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0338】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表65に示す。原料ガス流通時間7295分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0339】
【表65】
【0340】
比較例30
比較例27により得られたMFI型ゼオライトを触媒とし、n−ヘキサン50mol%とシクロヘキサン50mol%を原料とし、上記した条件にて転化反応を行った。
【0341】
各工程におけるガスの流通時間を表50に示す。
【0342】
原料ガス流通時間、転化率、および、各生成物収率を表66に示す。原料ガス流通時間8895分まで、転化率、ベンゼン収率、トルエン収率、キシレン収率は一定の値の範囲で増減を繰り返し、安定した製造とは言いにくいものであった。
【0343】
【表66】
【産業上の利用可能性】
【0344】
本発明の芳香族化合物製造用触媒は、メソ細孔を特徴としたMFI型ゼオライトを含むことにより、例えば低級オレフィン、飽和脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素等の炭化水素原料から芳香族化合物を製造する際に、特異的な長い触媒寿命を発現し、生産性に優れると共に安定した製造方法とすることが可能となり、工業的にも非常に有用なものである。