(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、発明の実施の形態について適宜図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する実施の形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、一の実施の形態、実施例において説明する内容は、他の実施の形態、実施例にも適用可能である。各図面が示す部材の大きさや位置関係等は、説明を明確にするため、誇張していることがある。
【0009】
実施形態1
この実施形態では、例えば、
図1A及び1Bに示すように、発光装置10は、半導体レーザ素子1と、前記半導体レーザ素子1の光路上に貫通孔3が設けられた支持部材4と、波長変換部材2とを備える。
貫通孔3は、光の入射側から出射側に向かって開口幅が縮小する下側部3aと、上側部3bとを有する。
半導体レーザ素子1は、半導体レーザ素子1から出射された第1光が下側部3a内に入射し、この第1光が下側部3aの内壁で反射される位置に配置されている。
なお、半導体レーザ素子から出射されるレーザ光を第1光と、第1光が照射されることにより波長変換部材によって変換された光を第2光と称することがある。また、本明細書では、発光装置から最終的に光が取り出される側を上側とし、その反対側を下側とする。また、
図1A及び1Bは、支持部材4と波長変換部材2とを、貫通孔3の貫通方向に沿って切断した状態を示す概略断面図である。後述する
図2及び3も同様である。
【0010】
このような発光装置10では、貫通孔3の下側部3aが、光の入射側から出射側に向かって開口幅が狭まる(以下「縮幅」ともいう)内壁を有するため、半導体レーザ素子1からの光が貫通孔3の下側部3aに入射した際に、その入射した光を、下側部3aの内壁で内側且つ上方に反射させることができる。このように、発光装置10においては、下側部3aの内壁で反射させることで第1光の拡がりを低減させることができる。このため、半導体レーザ素子1と波長変換部材2との間にレンズを介在させることなく、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の大部分を波長変換部材2に集めることが可能であり、これによって発光装置10の発光を高輝度化することが可能である。したがって、発光装置の部品数を削減し、小型化することができる。
さらに、下側部3aの内壁で光を反射させることによって、レーザ光の強度分布の偏り、つまり、中心が強くその周辺が弱いという分布の偏りを緩和することができる。すなわち、レーザ光の外周部分が下側部3aの内壁で反射されて下側部3aの上端に向かうため、レーザ光の外周部分の発光強度が高まりやすく、中心部と外周部との強度差を低減することができる。よって、波長変換部材2を経た光の色度の偏りを緩和することができる。これにより、色度の偏りを緩和させるための波長変換部材2の厚膜化を回避することができるため、波長変換部材2の薄膜化を実現することができる。このような波長変換部材2の薄膜化により、光の散乱を低減させることができ、光取り出し効率をより一層向上させることができる。
また、このような構成の発光装置10では、半導体レーザ素子1の実装位置が、支持部材4の貫通孔3に対して、多少シフトしても、レーザ光が貫通孔3内に導入しさえすれば、反射を利用することができる。すなわち、実装位置が多少シフトしても光取り出し効率の低下を抑制することができ、品質のバラつきを低減することが可能となるため、歩留りを向上させることができる。
【0011】
(半導体レーザ素子1)
半導体レーザ素子1としては、例えば、窒化物半導体(主として一般式In
xAl
yGa
1-x-yN、0≦x、0≦y、x+y≦1)で表される)、InAlGaAs系半導体、InAlGaP系半導体などの半導体層を備える素子が挙げられる。これらの材料及びその組成等を調整することにより、半導体レーザ素子1の発振波長を調整することができる。例えば、活性層がInGaN井戸層を含む量子井戸構造であり、400〜530nmの範囲に発振波長を有する半導体レーザ素子1を用いることができる。
【0012】
(支持部材4)
支持部材4は、後述する波長変換部材2を支持するための部材であって、半導体レーザ素子1を被覆する機能も果たす。
支持部材4の形状は、半導体レーザ素子1の光を通過させ、波長変換部材2を支持するための貫通孔3を備えるものを採用することができる。例えば、平板状、円筒形状等、種々の形状が挙げられる。
支持部材4の大きさ及び厚みは、使用目的によって、適宜設定することができる。なかでも、放熱性及び/又は強度と、生産性とを考慮すると、0.2mm程度以上2.0mm程度以下の厚みを有することが好ましい。
【0013】
支持部材4は、少なくとも貫通孔3の内壁が、光を吸収しにくい、反射性の材料からなることが好ましい。ここで反射性とは、用いる光源、すなわち半導体レーザ素子1から出射される光を80%以上反射する材料、さらには90%以上反射する材料が好ましい。支持部材4は、熱伝導性が良好な材料からなることが好ましい。ここで、熱伝導性が良好とは、20℃における熱伝導率が数W/m・K以上のものが好ましく、25W/m・K以上がより好ましく、50W/m・K以上がさらに好ましい。支持部材4は、耐熱性の良好な材料からなることが好ましい。ここで、耐熱性が良好とは、融点が数百℃以上のものが好ましく、1000℃以上がより好ましい。
支持部材4の材料は、例えば、セラミックス、金属、これらの複合体などが挙げられる。セラミックスとしては、炭化珪素、酸化アルミニウム、窒化珪素、窒化アルミニウム等が挙げられ、金属としては、鉄、銅、ステンレス鋼、タングステン、タンタル、モリブデン、コバール等が挙げられる。例えば、支持部材4をステム7に接合することによって半導体レーザ素子1を気密封止する場合には、支持部材4の材料としてステム7と溶接可能な金属材料を選択する。このような金属材料としては例えばコバールが挙げられる。また、ステム7に接合する蓋体を別に設け、その蓋体に支持部材4を接合する場合には、例えば光反射率の比較的高いセラミックスを支持部材4として用いることができる。このようなセラミックスとしては、例えば、主として酸化アルミニウムを含む材料により形成されたものが挙げられる。
【0014】
図1Aでは、支持部材4は、主として、安価且つ加工容易なステンレス鋼によって、円筒形状に形成されている。貫通孔3の内壁には、ステンレス鋼よりも高反射率の金属反射層が設けられており、この金属反射層は主として銀を含む。ここでの支持部材4の大きさは、直径が6.8mmの円柱状であり、貫通孔3の貫通方向における厚み(
図1BのL)は0.28mmである。
【0015】
支持部材4において、貫通孔3の形状は、半導体レーザ素子1からの光の入射側から出射側に向かって順に、下側部3aと、上側部3bとを有する。
下側部3aは、光の入射側から出射側に向かって、幅が縮小している。下側部3aの内壁は、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の光軸に対して5〜40度の傾斜角を有するものが好ましく、10〜40度がより好ましく、10〜25度がさらに好ましい。なお、下側部3aの内壁のレーザ光の光軸に対する傾斜角は
図1B中においてα−90となる。このような角度に設定することにより、入射した光を、下側部3aの内壁で反射させて、波長変換部材2側に効率的に進行させることができる。
上側部3bが、下側部3aの上端の幅よりも小さい幅を有するものであれば、下側部3aからの光が半導体レーザ素子1側に戻される場合がある。したがって、上側部3bは、下側部3a下側部3aの上端の幅と同じかそれ以上の幅を有しているものが好ましい。光の入射側から出射側に向かって、一定であってもよいし、拡幅又は縮幅していてもよい。なかでも、光入射側から光出射側に向かって一定の幅の形状、拡幅する形状、又はこれらを組み合わせた形状であることが好ましい。上側部3bが光入射側から光出射側に向かって幅が拡大する形状であることにより、下側部3aの側に戻ろうとする光を上側部3bの内壁で反射させ、発光装置10の外部に取り出すことができる。この場合、上側部3bの内壁は、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の光軸に対して10〜45度の傾斜角を有するものが好ましい。なお、上側部3bの内壁の傾斜角は
図1B中において90−βとなる。
幅の拡張又は縮小は、傾斜的又は段階的のいずれでもよい。つまり、支持部材4における貫通孔3は、柱状、錐台形状又はこれらを組み合わせた形状とすることができる。ただし、上側部3bの内壁のうち波長変換部材2が固定される面は平坦であることが好ましく、これにより波長変換部材2を確実に固定することができる。
【0016】
貫通孔3の全長Lは、用いる支持部材4の大きさ、厚みにより適宜設定することができる。例えば、0.2〜2.0mm程度が挙げられる。下側部3aの長さL1は、貫通孔の全長Lの10〜90%が挙げられ、20〜80%とすることができる。
貫通孔3の下側部3aは、光の入射側から出射側に向かって縮幅するように、その内壁によって規定されている。これにより、半導体レーザ素子1から貫通孔3の下側部3aに入射した光を、下側部3aの内壁で反射させることができ、光出射側に効率的に取り出すことができる。特に、下側部3aの内壁で光を反射させることによって、レーザ光の強度分布の偏り、つまり、中心が強くその周辺が弱いという分布の偏りを緩和することができる。よって、波長変換部材2における色度の偏りを緩和することができる。さらに、色度の偏りを緩和させるための波長変換部材2の厚膜化を回避することができるために、波長変換部材2の薄膜化を実現することができる。これによって波長変換部材2による光の散乱を低減させることができ、光取り出し効率をより一層向上させることができる。
【0017】
貫通孔3の光入射側からの平面視における形状は、例えば、円形、楕円形、三角形及び四角形等の多角形が挙げられる。用いる半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の形状は楕円形状であるため、これを入射させるために、円形又は楕円形が好ましい。
貫通孔3の大きさは、例えば、半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光を通過させることができる大きさとする。貫通孔3の光入射側の開口は、半導体レーザ素子1から出射されるレーザ光の中心部を含む略全てが貫通孔3に進入できるものが好ましい。レーザ光の中心部を含む略全てとは、具体的には、レーザ光のビーム径として定義される部分の全てである。ビーム径は、例えば、ピーク強度値から1/e
2になったときの強度での幅で定義される。例えば、貫通孔3の光入射側の開口の面積は、以下の式(1)で表される範囲に設定することができる。
(式中、Aは、貫通孔3の光入射側の開口の面積(mm
2)を表す。Sは、半導体レーザ素子1と支持部材4との最短距離(mm)を表す。Rは、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の拡がり角(°)を表す。)
ここで、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の拡がり角とは、上述のビーム径の全角を指す。さらに、貫通孔3の光入射側の開口の面積Aは以下の式(2)で表される範囲に設定することが好ましい。これにより、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光のうちビーム径として定義される部分の全てを貫通孔3に入射させることができる。
具体的には、半導体レーザ素子1の種類にもよるが、下側部3aの半導体レーザ素子1からのレーザ光の入射側の端部において、つまり、支持部材4の下面において、貫通孔3の幅D1が0.1〜5.0mmであることが好ましい。
【0018】
下側部3aの上端の幅D2は、レーザ光の外周部の少なくとも一部が下側部3aの内壁で反射される程度に小さい。レーザ光は、例えば横方向(半導体層の面に平行な方向)の幅よりも縦方向(半導体層の面に対して垂直な方向)の幅の方が大きな楕円形状である。したがって、幅D2は、レーザ光の縦方向の両端が下側部3aの内壁で反射される程度に小さくすることが好ましい。これによってレーザ光の強度分布の偏りをより一層緩和することができる。また、貫通孔3の幅D2は、小さくするほど下側部3aの上端におけるレーザ光の断面積を小さくすることができる、すなわち理想的な点光源に近づけることができる。しかし一方で、レーザ光を点に近づけるほど光密度が上昇し、波長変換部材2の発熱温度が上昇する。このため、貫通孔3の幅D2は、4.0mm以下とすることが好ましく、さらには0.05〜4.0mmであることが好ましい。
なお、貫通孔3の幅とは、半導体レーザ素子1が出射するレーザ光の光軸の垂直方向における、貫通孔3の最大長さを指す。例えばレーザ光の光軸の垂直方向における断面形状が円形状である場合には、貫通孔3の幅とは貫通孔3の直径である。
【0019】
貫通孔3の光入射側の開口部すなわち貫通孔3の下端と、半導体レーザ素子1とを近づけるほど、半導体レーザ素子1から出射された光を貫通孔3に導入させやすく、波長変換部材2で効率的に変換することができる。具体的には、支持部材4は、貫通孔3の光入射側開口部と、半導体レーザ素子1との最短距離Sが、貫通孔3の光入射側の開口部の幅D1よりも小さくなるように、支持部材4と半導体レーザ素子1との間隔を調整することが好ましい。また、別の観点から、貫通孔3の光入射側の開口部と、半導体レーザ素子1との最短距離Sは、貫通孔3の下側部3aの長さL1の3倍よりも小さいことが好ましい。さらに、最短距離Sは、D1よりも小さく、かつL1の3倍よりも小さいことが好ましい。これによって、半導体レーザ素子1から出射された光の略全部を、貫通孔3に導入することができ、後述する波長変換部材2で効率的に変換することができる。一方で、最短距離Sを0以下とすると、支持部材4を実装する際に支持部材4が半導体レーザ素子1と接触する可能性が高まるため、最短距離Sは0より大きいことが好ましい。
【0020】
上述した範囲で、半導体レーザ素子からのレーザ光が、貫通孔3の下側部3aの内壁で0〜1回程度の反射回数となるように、傾斜角度、形状等を設定することが好ましい。これにより、半導体レーザからのレーザ光を、貫通孔3の内壁によって効率的に後述する波長変更部材2へ集光させることができるため、光の取り出し効率を向上させることができる。貫通孔3は、例えば下側部3a及び上側部3bのみからなる。また、貫通孔3の下側部3a内にはサファイア等の透光性部材を配置することもできるが、下側部3aは空洞であること、つまり気体が充填されていることが好ましい。下側部3aが空洞であることにより、下側部3aに透光性部材が配置されている場合よりも、半導体レーザからのレーザ光をより多く波長変換部材2まで到達させることができる。
【0021】
図1A及び1Bでは、貫通孔3は、平面視で、略円形である。貫通孔3の全長Lは、支持部材4の厚みと等しく、例えば、280μmである。下側部3aの長さL1は、80μmである。
貫通孔3の下側部3aは、
図1Bに示すような縦断面視で、略円錐台形状である。貫通孔3の下側部3aの光入射側の端部の直径D1は260μmであり、貫通孔3の下側部3aの光出射側の端部の直径D2は、200μmである。
上側部3bは、縦断面視で、逆転した略円錐台形状である。貫通孔3の上側部3bの光入射側の端部の直径は200μmであり、貫通孔3の上側部3bの光出射側の直径は、300μmである。
貫通孔3の光入射側の開口部、つまり、貫通孔3の下端と、半導体レーザ素子1との最短距離Sは200μmである。
【0022】
貫通孔3の内壁、特に、下側部3aの内壁には、反射膜14が形成されていることが好ましい。下側部3aの内壁よりもレーザ光に対する反射率の高い反射膜を設けることにより、下側部3aに入射したレーザ光の波長変換部材2への到達率を向上させることができる。反射膜14は、例えば、銀又は銀合金によって形成することができる。この場合の反射膜14の反射率は、80%以上が好ましく、例えば、80〜95%がより好ましい。
図1Bに示すように、反射膜14は下側部3aだけでなく上側部3bにも設けることができる。なお、反射膜14は数μm以下程度の薄膜で設けることが可能であるため、上述の貫通孔3の幅D1、D2等の好ましい範囲を、反射膜14を設ける場合の貫通孔3の幅D1、D2等としてそのまま採用することができる。もしくは、反射膜14の表面を貫通孔3の内壁と読み替えて、上述の貫通孔3の幅の好ましい範囲を採用してもよい。
【0023】
(波長変換部材2)
波長変換部材2は、支持部材4の貫通孔3の中、つまり、上側部3bに配置されている。
波長変換部材2の形状は、貫通孔3の上側部3bの形状に応じて適宜調整することができる。なかでも、貫通孔3の上側部3bの形状に一致した形状で、貫通孔3の上側部3bの内壁に接触するような形状であることが好ましい。このような形状によって、支持部材4との密着性を図ることができ、波長変換部材2に照射される光により生じる熱を効果的に支持部材4に逃がすことができる。
【0024】
波長変換部材2の光入射面及び光出射面は、例えば互いに平行に対向する平坦面である。いずれか一方又は双方が凹又は凸を有していてもよい。なかでも、光入射面及び光出射面は、半導体レーザ素子が出射するレーザ光の進行方向を示す軸線、すなわち光軸に対して、それぞれ垂直に配置されることが好ましい。
【0025】
波長変換部材2の大きさは、上述した貫通孔3の大きさに合わせて適宜調整することができる。具体的には、半導体レーザ素子1の種類にもよるが、その最大幅を0.1〜3.0mmとすることが好ましい。なお、貫通孔3の貫通方向に対して一定の幅でなくてもよい。波長変換部材2の厚みは、用いる支持部材4の大きさに合わせて適宜設定することができる。例えば、0.2〜1.0mm程度が挙げられる。これによって、波長変換部材2の外周面が支持部材4と接触することによって効果的な放熱効果を発揮させることができる。
【0026】
波長変換部材2は、光透過率のよい材料によって形成されていることが好ましい。例えば、波長変換部材2が蛍光体と別の部材とが混在するセラミックス等である場合は、蛍光体の割合が波長変換部材2の総重量に対して50重量%以下、さらには30重量%以下であることが好ましい。このとき、蛍光体の割合は波長変換部材2の総重量に対して1重量%以上であることが好ましい。もしくは、蛍光体の単結晶を波長変換部材2として用いてもよい。単結晶の波長変換部材2はセラミックスの波長変換部材2と比較して光を散乱し難い。したがって、蛍光体の単結晶を波長変換部材2として用いることで、光取り出し効率を向上させることができる。一方で、光散乱が少ないということは、レーザ光の強度分布の偏りがほぼそのまま波長変換部材2から取り出される光の強度分布に反映されるということでもある。しかし、発光装置10であれば、下側部3aの内壁で光を反射させることによってレーザ光の強度分布の偏りを緩和することが可能であるため、単結晶の波長変換部材2であっても、波長変換部材2から取り出される光の強度分布の偏りを緩和することができる。また、波長変換部材2としては、高出力の光が照射されても変質等しない耐光性及び耐熱性の良好な材料によって形成されているものが好ましい。例えば、融点が1000℃〜3000℃のものが挙げられ、1300℃〜2500℃が好ましく、1500℃〜2000℃がより好ましい。
【0027】
波長変換部材2の材料としては、例えば、セラミックスが挙げられる。具体的には、酸化アルミニウム(Al
2O
3、融点:約1900℃〜2100℃)、石英ガラス等の二酸化ケイ素(SiO
2、融点:約1500℃〜1700℃)、酸化バリウム(BaO、融点:1800℃〜2000℃)、酸化イットリウム(Y
2O
3、融点:2425℃)、等が挙げられる。これらは単独で又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。なかでも、透光性が良好であり、融点、熱伝導性及び拡散性等の観点から、酸化アルミニウム、二酸化ケイ素を含むものが好ましく、酸化アルミニウムを含むものがより好ましい。
このような材料により波長変換部材2を形成することにより、半導体レーザ素子の高出力化により波長変換部材2が高温になった場合でも、波長変換部材2自体が融解することを抑制することができ、ひいては波長変換部材2の変形及び変色を回避することができる。よって、長期間、光学特性を劣化させることなく維持することができる。また、熱伝導率に優れるものを用いることにより、光源に起因する熱を効率よく放出することができる。
波長変換部材2は、単一の材料又は複数の材料によって形成することができ、単層構造又は積層構造を採用することができる。
【0028】
波長変換部材2は、蛍光体を含有している。これによって、半導体レーザ素子1から出射される光を波長変換することができ、典型的には、半導体レーザ素子1からの光と、波長変換された光との混色光を外部に放出することができる。
蛍光体としては、例えば、用いる光源の出射光の波長、得ようとする光の色などを考慮して選択することができる。具体的には、セリウムで賦活されたイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)、セリウムで賦活されたルテチウム・アルミニウム・ガーネット(LAG)、ユウロピウム及び/又はクロムで賦活された窒素含有アルミノ珪酸カルシウム(CASN)、などが挙げられる。なかでも、耐熱性に優れたYAG蛍光体を用いることが好ましい。
蛍光体は、複数の種類の蛍光体を組み合わせて用いてもよい。例えば、発光色の異なる蛍光体を所望の色調に適した組み合わせや配合比で用いて、演色性や色再現性を調整することもできる。
複数の種類の蛍光体は、単層構造の波長変換部材において、組み合わせて用いてもよいし、積層構造の波長変換部材に、異なる層それぞれに異なる蛍光体を含有させてもよい。
【0029】
これらの蛍光体を利用することにより、可視波長の第1光及び第2光の混色光(例えば白色系)を出射する発光装置とすることができる。特に、第1光が青色である場合、これに組み合わせて白色発光させる蛍光体としては、青色光で励起されて黄色のブロードな発光を示すYAG蛍光体等の黄色蛍光体を用いることが好ましい。
【0030】
波長変換部材2は、光入射面及び/又は光出射面に、任意に、反射防止層(AR層)や、後述するものなどの機能性膜が形成されていてもよい。また、波長変換部材2の光入射側及び/又は光出射側にサファイア等の透光性部材を配置してもよい。
【0031】
図1Aでは、波長変換部材2は、蛍光体としてYAGが波長変換部材の全重量に対して11重量%含有された酸化アルミニウム(融点:約1900℃〜2100℃)によって形成されている。波長変換部材2は、その上面の直径が0.5mmであり、下面の直径が0.3mmであり、厚みが0.3mmである。波長変換部材2は、後述する第1透光部材が溶融することにより、波長変換部材2と支持部材4とを密着させており、波長変換部材2自体は、溶融していない。
【0032】
(第1透光部材)
貫通孔の内壁と波長変換部材とを融着するために第1透光部材を利用することができる。この場合、第1透光部材は、貫通孔3、特に上側部3bの内壁に膜状に配置される。
第1透光部材を構成する材料としては、無機材料からなるものが挙げられ、例えば、ホウケイ酸ガラス、ソーダ石灰ガラス、ソーダガラス、鉛ガラスなどのガラスからなるものが好ましい。
第1透光部材の厚みは、例えば、貫通孔3の上側部3bの内壁上において、0.01〜5μm程度が挙げられ、0.05〜3μm程度が好ましい。
【0033】
(第2透光部材)
支持部材4の貫通孔3の上側部3b内及び/又は上側部3bの上側の開口を塞ぐ位置には、波長変換部材2の光出射面を被覆するように、第2透光部材が配置されていてもよい。第2透光部材は、透光性を有する材料によって形成されており、例えば第1透光部材で例示した材料の中から選択することができる。
第2透光部材は、上述した蛍光体及び/又は光散乱材又はフィラーを含有していてもよい。これによって、波長変換部材を通過した光を均一化させることができるとともに、色調整を行うこともできる。
【0034】
(機能性膜)
機能性膜としては、光の透過性、反射性等に好適に機能し得る膜が挙げられる。例えば、第1光を透過し第2光を反射するショートパスフィルター、又は第1光を反射し第2光を透過するロングパスフィルターが挙げられる。これらは、その機能に適した位置に配置される。例えば、波長変換部材2の光の出射面側にロングパスフィルターを配置すること、及び/又は光の入射面側にショートパスフィルターを配置することができる。
【0035】
(装置構成部材)
この発光装置10においては、半導体レーザ素子1は、サブマウント5及びヒートシンク6を用いて板状のステム7に固定されている。ヒートシンク6とステム7は一体であってもよい。支持部材4とステム7により、半導体レーザ素子1は密閉されている。ステム7には、外部電力と電気的に接続するための複数のリード8がそれぞれステム7に設けた複数の貫通孔を通して配置されている。貫通孔は、低融点ガラスなどの材料から構成される封止材でさらに密閉することができる。半導体レーザ素子1は、ワイヤ9等の導電部材を介してリード8と電気的に接続されている。
半導体レーザ素子1と支持部材4との間には、レンズ等の集光部材を設けないことが好ましい。これにより、発光装置10を小型化することができるとともに、集光部材の使用を避けることにより部品数の低減、ひいては製造コストを減少させることができる。言い換えると、少ない部品数で、半導体レーザ素子1からのレーザ光を効率よく波長変換部材2に集光することができる。
【0036】
このような構成を有する発光装置10は、半導体レーザ素子1から出射された光が、入射光として、支持部材4の貫通孔を通って、波長変換部材2に照射され、波長変換部材2から外部に出る光が発光装置10の発光として取り出される。
これによって、波長変換部材2で所望の光に波長変換することができ、かつ、波長変換部材2を通過した光の強度及び色度の分布を均一に近づけることができる。
【0037】
実施形態2
この実施形態の発光装置20は、
図2に示すように、支持部材24の貫通孔23において、上側部23bが、下側部23aの上端の幅よりも大きな幅で下側部23aと連結しており、長さ方向に一定幅である以外は実施形態1の発光装置10と同様の構成を有する。
このような構成を有することにより、小型化を実現しながら光取り出し効率の向上を図ることができる。
【0038】
実施形態3
この実施形態の発光装置30は、
図3に示すように、支持部材34の貫通孔33において、上側部33bが、下側部33aの上端の幅よりも大きな幅で下側部33aと連結しており、光の入射面側から出射面側に向かって、一定幅の部位と、拡幅となる部位を有する以外は実施形態1の発光装置10と同様の構成を有する。
このような構成を有することにより、小型化を実現しながら光取り出し効率の向上を図ることができる。
【0039】
実施形態4
この実施形態の発光装置40は、
図4に示すように、半導体レーザ素子1が、基材47の上面に対してサブマウント45を介して平行に配置されており、その半導体レーザ素子1の光出射面に対応して、支持部材44の側方の壁に貫通孔43を有する以外は実施形態1の発光装置10と同様の構成を有する。
このような構成を有することにより、小型化を実現しながら光取り出し効率の向上を図ることができる。なお、
図4は、発光装置40に含まれるすべての部材を貫通孔43の貫通方向に沿って切断した状態を示す概略断面図である。
【0040】
実施形態5:光強度分布の評価
本発明の一実施形態である発光装置Aと、その比較例としての発光装置Bを設定した。これらの発光装置に対して、以下の条件で、光強度分布をシミュレートした。その結果を以下の表に示す。表における角度以外の数値はμmを表す。
発光装置Aにおいては、貫通孔3の下側部3aの光入射側の開口部の直径D1を該開口部に99.6%のレーザ光が入射できる大きさとし、発光装置Bでは、貫通孔のレーザ光入射側の開口部の直径は該開口部に97.9%のレーザ光が入射できる大きさとした。発光装置Aの貫通孔3の下側部3aのレーザ光出射側の直径D2は200μmとした。半導体レーザ素子1から貫通孔3までの最短距離Sは、発光装置A及び発光装置Bにおいて共にS=200μmとした。貫通孔3の断面形状(レーザ光の光軸に対して垂直な断面)は、発光装置A及び発光装置Bにおいて共に円形とした。半導体レーザ素子1の出射するレーザ光のビーム形状は、横方向(半導体層の面に平行な方向)の幅よりも縦方向(半導体層の面に対して垂直な方向)の幅の方が大きな楕円形状とした。これにより、発光装置Aの貫通孔3の下側部3aはレーザ光の縦方向の両端部を主に反射した。
なお、
図5は、発光装置Aの貫通孔3の下側部3aと上側部3bとの境界におけるレーザ光の強度分布を示し、
図6は、発光装置Bの貫通孔のレーザ光入射側の入口におけるレーザ光の強度分布を示す。これらの位置には波長変換部材2のレーザ光入射面が配置されると想定されるため、
図5及び
図6はすなわち、波長変換部材2に入射するレーザ光の強度分布を示すといえる。そして、高強度面積割合は、波長変換部材2のレーザ光入射面の平面積に占める、照射強度1.5×10
5(W/cm
2)以上の面積の割合として求めた。また、波長変換部材2へのレーザ光到達率は、レーザ光の総量、つまり解析光線の総数を100%とした場合の、それに占める波長変換部材2のレーザ光入射面に到達する解析光線の数の割合として求めた。
なお、上述の発光装置Aはα−90を20.5°としたが、α−90を14°〜20°とした場合でも同様の傾向が示された。すなわち、発光装置Bと比較して、高強度面積割合の低減が認められた。
この結果から、レーザ光の強度分布の偏り緩和を効果的に促進することができることが確認された。すなわち、レーザ光の縦方向の両端部が下側部3aの内壁で反射されて下側部3aの上端に向かうことにより、
図5に示すように、レーザ光の縦方向の両端部の発光強度が上昇し、中心部と外周部との強度差が減少した。これによって、波長変換部材2から取り出される光の色度の偏り緩和を実現できる。そのため、光を散乱させるための波長変換部材2の厚膜化が不要となり、よって、波長変換部材2を薄膜化することができる。これにより、波長変換部材2による光散乱を低減させることができるため、光取り出し効率の向上を図ることが可能となる。また、このようにレーザ光の外周部が貫通孔3の下側部3aによって反射されることでレーザ光の拡がりを低減することができるため、レンズ等の集光部材を用いなくても発光装置Aの発光を高輝度化することができる。これによって、発光装置10の部品数を減らすことができ、コスト低減や小型化を図ることができる。