(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記異物の収容領域は、ガスの循環方向と直交する方向に見て、前記循環路の一部が当該循環路の外側へ引き出されるように形成されることを特徴とする請求項2記載のガス供給部材。
真空雰囲気が形成される縦型の反応容器内にて、基板保持具に棚状に保持された複数の基板を加熱すると共に当該複数の基板に処理ガスを供給して処理を行うガス処理装置において、
縦方向に沿って直線状に形成され、一端から前記処理ガスが供給される直線流路と、前記直線流路が分岐して横方向に開口するように形成されたガス吐出口と、前記直線流路の延長線に沿って形成されると共に当該直線流路の他端に接続された、前記直線流路に供給された前記処理ガスに含まれる異物を捕集するための前記処理ガスの循環路と、を備えるガス供給部材を備えたことを特徴とするガス処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明に係る基板処理装置の実施形態の一例である成膜装置1について、
図1の縦断側面図及び
図2の縦断側面図を参照しながら説明する。この成膜装置1は、基板であるウエハWに例えばトリスジメチルアミノシラン(3DMAS)などのSi(シリコン)を含むSi原料ガスと、例えばオゾン(O
3)などのSiを酸化する酸化ガスとを交互に供給し、ALDによってSiO
2膜を形成する。
【0013】
成膜装置1は、長手方向が垂直方向に向けられた略円筒状の縦型の容器である反応容器11を備えている。反応容器11は、内管12と、当該内管12を囲むように形成された外管13とから構成された二重管構造を有する。内管12は上方が開放され、外管13は天井を備えている。なお、図中内管12と外管13との隙間については誇張して描いている。外管13の下方には、筒状に形成されたマニホールド14が配置されており。マニホールド14は、外管13の下端と気密に接続されている。また、内管12は、マニホールド14の内壁から突出するとともに、マニホールド14と一体に形成された支持リング15に支持されている。
【0014】
マニホールド14の下方には蓋体16が配置されており、図示しない昇降機構により当該蓋体16は上昇位置と、下降位置との間で昇降自在に構成される。
図1では、上昇位置に位置する状態の蓋体16を示しており、この上昇位置において蓋体16は、マニホールド14の下方側の反応容器11の開口部17を閉鎖し、当該反応容器11内を気密に閉じる。蓋体16の上方には基板保持具であるウエハボート31が載置される載置台18が設けられている。蓋体16の昇降によりウエハボート31を反応容器11に搬入、搬出することができ、蓋体16が上昇位置に位置するときにウエハボート31は内管12に囲まれるように反応容器11内に格納される。図中19は、載置台18を回転させる回転機構であり、図中25は、蓋体16と載置台18との間に介在する断熱部材である。
【0015】
ウエハボート31について説明すると、図中32はウエハボート31を構成する垂直な3本(
図1では2本のみ表示している)の支柱である。
図2中33は各支柱32から突出するウエハWの載置部である。載置部33は上下方向(縦方向)に多段に設けられており、各載置部33に水平に載置されることで、多数枚の各ウエハWは、横方向の位置が互いに揃うように棚状に保持される。従って、各載置部33上は基板の保持領域をなす。上記の回転機構19によって、縦軸であるウエハWの中心軸周りにウエハボート31が回転する。
【0016】
図1に示すように反応容器11の外側には、反応容器11を取り囲むように断熱体21が設けられ、その内壁面には、加熱部であるヒーター22が設けられており、反応容器11内を加熱することができる。また、上記のマニホールド14には、支持リング15の上方における側面に排気管23の上流端が開口して排気口をなし、排気管23の下流端はバタフライバルブなどの図示しない圧力調整部を介して真空ポンプ24に接続されている。このような構成により、反応容器11内が排気されて所望の圧力の真空雰囲気とされる。
【0017】
図中41はウエハWにSi原料ガスを吐出するガス供給部材であるガスインジェクタであり、
図3の縦断側面図、
図4の斜視図も参照しながら、その構成について説明する。ガスインジェクタ41は、本体部42と、循環路形成部43と、異物収容領域形成部44と、を備えている。本体部42は棒状に形成されており、その基端はマニホールド14の外側に設けられている。本体部42の先端側はマニホールド14内へ水平に伸びた後に上方へ向けて屈曲され、内管12の内側を当該内管12の壁面に沿って上方へ垂直に伸びるように構成されている。
【0018】
循環路形成部43は起立した円環状に形成されており、内管12の上方に位置している。本体部42の先端は、循環路形成部43を開口方向に見たときの横方向の一端部に接続されており、循環路形成部43について、当該横方向の他端部は内管12の外側に位置している。従って、循環路形成部43は内管12の上端と外管13の天井との間に設けられており、上方から見たときには、内管12の内側から外側に突出している。また、異物収容領域形成部44は循環路形成部43の下端部から下方へ突出し、内管12と外管13との間に位置するように設けられている。
【0019】
後述するように、本体部42には基端からガスが供給される。本体部42にはその長さ方向に沿って当該ガスの流路が形成されており、
図3中、本体部42において垂直に伸びる部位に形成された直線流路を45として示している。そして、本体部42においてこの垂直に伸びる部位には、直線流路45に供給されたガスをウエハWに向けて吐出する多数のガス吐出口46が、上下方向(縦方向)に間隔を空けて水平方向に開口している。従って、このガス吐出口46は直線流路45から分岐するように形成された流路である。上方から見て、ガス吐出口46は、上記の本体部42からの循環路形成部43の突出方向とは反対方向に向けて開口している。また、各ガス吐出口46は、ウエハボート31に保持される各ウエハWの表面にガスを供給することができるように、各ウエハWに対応する高さ位置に形成されている。
【0020】
循環路形成部43の内部は空洞であり、直線流路45に接続されると共に縦方向にガスを循環させるように円環状に形成された循環路47をなす。上記のように本体部42と循環路形成部43とが接続されていることにより、直線流路45の下流には直線流路45の延長方向に沿った循環路47が接続された構成となっている。循環路47が直線流路45の延長方向に沿っているとは、言い換えると、当該直線流路45の延長線をなす流路が、下流側に向かうにつれて徐々に湾曲され、その延長線の端部を直線流路45の端部、即ち延長線の基端に接続することで循環路47として形成されることであり、さらに言い換えると、直線流路45におけるガスの流通と、循環路47におけるガスの循環とが同一平面上で起こり得るように循環路が形成されることである。
【0021】
後述するように、上記の循環路47には直線流路45から供給されるガスと共に異物であるパーティクルが進入する。仮に循環路47が水平方向にガスを循環させるように構成されるものとすると、直線流路45の下流端に対向するように循環路47を形成する壁面が設けられることになる。その場合、直線流路45から循環路47にガス流に乗って進入したパーティクルは、この壁面に衝突して跳ね返り、直線流路45に戻り、ガス吐出口46からウエハWに吐出されてしまうおそれが有る。そのようにパーティクルの壁面への衝突が抑えられ、ガス流が滞らずに直線流路45から循環路47に導入されて当該循環路47を流通することで、異物を循環路47に捕集することができるように、循環路47は既述のように直線流路45の延長方向に沿って形成されている。
【0022】
上記の異物収容領域形成部44の内部も空洞であり、当該内部は上記の循環路47に進入した異物を収容する直方体状の異物収容領域48として構成されている。上記のように異物収容領域形成部44が循環路形成部43の下方に設けられることで、この異物収容領域48は、循環路47の下端部に接続されている。つまり、循環路47の下端部が、当該循環路47をガスの循環方向と直交する方向に見たときに外側下方に向けて引き出されることで、循環路47に臨む異物収容領域48が形成されている。以降の説明では循環路47についてガスの循環方向に直交して見たときの横方向について、直線流路45が接続される側を前方側、その反対側を後方側とする。異物収容領域48については縦長に形成され、その前後の幅L1よりも高さH1の方が大きい。
【0023】
図1、
図2に戻って説明を続ける。ガスインジェクタ41の本体部42の基端には、配管51の下流端が接続され、配管51の上流端はバルブV1、タンク52、バルブV2をこの順に介してSi原料ガスの供給源53に接続されている。また、配管51においてバルブV1の下流側には、配管54の下流端が接続されており、配管54の上流端はバルブV3を介してN2(窒素)ガスの供給源55に接続されている。このような配管構成により、後述の成膜処理時において、ガスインジェクタ41から反応容器11内に吐出するガスを処理ガスであるSi原料ガスとN2ガスとの間で切り替えることができる。
【0024】
また、Si原料ガスはタンク52に貯留された後に、ガスインジェクタ41から吐出される。つまりバルブV1が閉じられ、バルブV2が開かれた状態でSi原料ガスがタンク52に供給されて貯留され、然る後バルブV2が閉じられ、バルブV1が開かれてSi原料ガスがガスインジェクタ41に供給される。このようにSi原料ガスをタンク52に貯留した後にガスインジェクタ41に供給するのは、短時間で多くの量のSi原料ガスを反応容器11内に供給して、成膜速度を向上させるためである。このように短時間に多くの量のガスをガスインジェクタ41に供給する場合、発明が解決しようとする課題の項目で述べたように、ガスインジェクタ41内におけるパーティクルが上方へ押し上げられやすくなり、上部側のガス吐出口46からウエハWに吐出されやすくなるので、上記した異物捕集用の循環路47を設けることが特に有効である。
【0025】
図1、
図2に示す49は、ウエハWに酸化ガスを吐出するガスインジェクタである。このガスインジェクタ49は、ウエハWに吐出するガスが異なる他はガスインジェクタ41と同様に構成されている。
図2に示すように、ガスインジェクタ49は、ガスインジェクタ41と同様にウエハWの一端側から他端側に向けてガス吐出口46からガスを吐出する、つまりガスインジェクタ41、49は同方向にガスを吐出するように反応容器11内に設けられているが、
図1では図示の便宜上、ガスインジェクタ49はガスインジェクタ41とは逆方向にガスを吐出するように配置されるように示している。
【0026】
ガスインジェクタ49の本体部42の基端には、配管61の下流端が接続され、配管51の上流端はバルブV4、タンク62、バルブV5をこの順に介して酸化ガスの供給源63に接続されている。また、配管61においてバルブV1の下流側には、配管64の下流端が接続されており、配管64の上流端はバルブV6を介してN2(窒素)ガスの供給源65に接続されている。このような配管構成により、後述の成膜処理時において、ガスインジェクタ49から反応容器11内に吐出するガスを処理ガスである酸化ガスとN2ガスとの間で切り替えることができる。成膜速度を向上させるために、酸化ガスについても、Si原料ガスと同様にバルブV4、V5の開閉によって、タンク62に貯留された後にガスインジェクタ49に供給される。
【0027】
この成膜装置1には、コンピュータにより構成された制御部10が設けられており、制御部100はプログラムを備えている。このプログラムは、ウエハWに対して後述の一連の成膜処理を行うことができるように、成膜装置1の各部に制御信号を出力して、当該各部の動作を制御することができるようにステップ群が組まれている。このプログラムは例えばハードディスク、コンパクトディスク、メモリーカード等の記憶媒体に格納された状態で制御部10に格納される。
【0028】
続いて、成膜装置1にて実施される成膜処理について説明する。上記のように多数のウエハWが保持されたウエハボート31が載置台18に載置された状態で蓋体16が下降位置から上昇位置に向けて上昇し、ウエハボート31が反応容器11内に搬入されると共に蓋体16によって反応容器11が閉鎖されて、当該反応容器11内が気密となる。続いて、反応容器11内が排気されて所定の圧力の真空雰囲気とされると共に、ヒーター22によって反応容器11内が所定の温度になるように加熱される。さらに、ウエハボート31が回転する。
【0029】
ガスインジェクタ41、49からN2ガスが吐出され、然る後、ガスインジェクタ41から吐出されるガスがN2ガスからSi原料ガスに切り替わり、各ウエハWにSi原料ガスが吸着される。その後、ガスインジェクタ41から吐出されるガスがSi原料ガスからN2ガスに切り替わる。つまり、ガスインジェクタ41、49からN2ガスが吐出される状態となり、ウエハWに吸着されずに反応容器11内に残留するSi原料ガスがパージされる。
【0030】
続いて、ガスインジェクタ49から吐出されるガスがN2ガスから酸化ガスに切り替わり、各ウエハWに吸着されたSi原料ガス中のSiが酸化ガスにより酸化されて、SiO
2の薄膜が形成される。その後、ガスインジェクタ41から吐出されるガスが酸化ガスからN2ガスに切り替わる。つまり、ガスインジェクタ41、49からN2ガスが吐出された状態となり、反応容器11内に残留する酸化ガスがパージされる。以降、上記したウエハWにSi原料ガスをウエハWに吸着させるステップ、反応容器11内をパージするステップ、酸化ガスによるSiを酸化するステップ、反応容器11内をパージするステップからなるサイクルが繰り返し行われ、SiO
2の膜厚が上昇する。
【0031】
上記のようにサイクルが繰り返されて成膜が行われるにあたり、ガスインジェクタ41から供給されるガスがN2ガスからSi原料ガスに切り替わるときのガスインジェクタ41内の様子を、当該ガスインジェクタ41の縦断側面図である
図5〜
図10を参照して説明する。
図5〜
図10では矢印でガスの流れを示している。
図5は、ガスインジェクタ41からN2ガスが吐出されている状態を示しており、このときにガスインジェクタ41内の下部には、パーティクルPが存在しているものとする。このパーティクルPは、例えば発明が解決しようとする項目で述べたように、ガスインジェクタ41内に成膜されたSiO
2膜が剥がれることで生じたものである。
【0032】
ガスインジェクタ41にSi原料ガスが供給されると、上記のようにSi原料ガスはタンク52から比較的高い流量でガスインジェクタ41に供給されるので、急激に直線流路45を上昇し、パーティクルPを直線流路45の上端へと押し上げ、パーティクルPはこのSi原料ガスと共に循環路47に流入する。そして、Si原料ガスは直線流路45に充満し、ガス吐出口46からウエハWに向けて吐出される(
図6)。
【0033】
循環路47に流入したSi原料ガス及びパーティクルPは当該循環路47に沿って流通し、循環路47を周回する(
図7)。この周回中、遠心力の作用を受けることによってパーティクルPは、循環路47の外側下方に形成された異物収容領域48に流れ込む(
図8)。循環路47の外側に設けられることで異物収容領域48ではSi原料ガスの流れが抑えられており、異物収容領域48に流入したパーティクルPは、重力の作用により異物収容領域48を沈降し、当該異物収容領域48の底部に蓄積される(
図9)。循環路47におけるSi原料ガスの周回が続けられ、循環路47に流入した全てのパーティクルPが異物収容領域48に流れ込んで蓄積される(
図10)。
【0034】
上記のサイクルが所定の回数行われ、ウエハWに所望の膜厚を有するSiO
2膜が形成されると、ガスインジェクタ41、49からのガスの吐出及びウエハボート31の回転が停止し、蓋体16が下降位置に移動して反応容器11内からウエハボート31が搬出されて、成膜処理が終了する。ところで上記の成膜処理中において、ガスインジェクタ41にSi原料ガスが供給されるときにパーティクルPが捕集されるものとして説明したが、N2ガスもSi原料ガスと同様にガスインジェクタ41内を流通するので、ガスインジェクタ41にN2ガスが供給されるときにガスインジェクタ41内にパーティクルPが存在する場合も、循環路47に当該パーティクルPを捕集することができる。また、ガスインジェクタ49についても既述のようにガスインジェクタ41と同様に構成されることにより、酸化ガス及びN2ガスを吐出する際に、パーティクルPを捕集することができる。
【0035】
上記の成膜装置1によれば、ガスインジェクタ41、49内のパーティクルPが当該ガスインジェクタ41、49に設けられた循環路47に捕集されるように構成されている。従って、直線流路45を上昇したパーティクルPがガス吐出口46からウエハWに吐出されて付着することを防ぐことができる。ところで、パーティクルPは既述のように膜が剥がれることによってガスインジェクタ41、49内に生じる場合の他に、ガスインジェクタ41、49の上流側に接続される配管からガスインジェクタ41、49内に流入する場合も考えられる。そのように配管から流入したガスインジェクタ41、49に流入したパーティクルPについてもガスインジェクタ41、49は、膜の剥がれによって生じたパーティクルPと同様に捕集することができる。従って、ガスインジェクタ41、49は成膜装置以外のガス処理装置にも適用することができる。具体的には、上記の成膜装置1において例えばガスインジェクタ41、49から成膜用の処理ガスを吐出する代わりにエッチングガスやアニール処理用の不活性ガスを吐出し、ウエハWにエッチングやアニール処理を行ってもよい。このように、成膜装置1として説明した構成の装置は、成膜装置として使用する代わりにエッチング装置やアニール装置として使用することができる。
【0036】
なお、上方から見たときのガス吐出口46の開口方向に対する本体部42から循環路形成部43が突出する方向については、上記のように反対方向とすることに限られず、どのような向きであってもよい。例えば
図11に示すようにガス吐出口46の開口方向に対して90°異なる向きに循環路形成部43が突出していてもよいし、ガス吐出口46の開口方向と同じ向きに循環路形成部43が突出していてもよい。ただし循環路形成部43については、上記のように内管12の上端と外管13との間のスペースに設置することで、この循環路形成部43の専用の設置スペースを設ける必要が無くなり、成膜装置1の大型化や装置構成の複雑化を防ぐことができるので好ましい。また、このように循環路形成部43を設置することで、上記のように内管12の側壁と外管13の側壁との間のスペースに異物収容領域形成部44を配置することができるので、異物収容領域形成部44の専用の設置スペースを設ける必要が無くなり、成膜装置1の大型化及び装置構成の複雑化を防ぐことができる。ただし、上記の成膜装置1の反応容器11は二重管として構成されていなくてもよい。例えば内管12が設けられず、外管13に相当する部材によってのみ反応容器11が構成される成膜装置においても、ガスインジェクタ41、49を適用することができる。
【0037】
ところで、循環路形成部としては上記の循環路形成部43のように構成されることには限られない。
図12の斜視図及び
図13の縦断側面図は、ガスインジェクタ41において循環路形成部43の代わりに球状の循環路形成部71が、本体部42の上方に設けられた例を示している。この循環路形成部71の内部は空洞であり、球状空間72を構成しており、この球状空間72の中心を通る縦断側面で見たときに、当該球状空間72の横方向の一端部に下側から直線流路45が接続される。従って、直線流路45から供給されたガスは、
図12中に矢印で示すように球状空間72の周壁に沿って直線流路45の延長方向に沿って流れ、球状空間72内を循環する。つまり、球状空間72は、直線流路45の延長方向に沿った循環路として構成されている。
【0038】
このように循環路形成部71においては循環路形成部43と異なり、ガスの循環方向に沿った断面で見たときに、中心部と周縁部とを区画する仕切りが設けられない構成となっている。つまり、このような仕切りは設けられていてもよいし、設けられていなくてもよい。従って、循環路形成部としては43、71のような内部が空洞の円環や球として構成とする他に、例えば内部が空洞で起立した円板状の部材により構成されていてもよい。なお、循環路形成部43、71については、循環路は略真円を描くように形成されているが、楕円を描くように形成されていてもよい。
【0039】
ところで、異物収容領域48は、既述のように循環路を流れるパーティクルPが遠心力により進入できるように、当該循環路をガスの循環方向と直交する方向から見たときに当該循環路の一部が外側へ突出するように構成されていればよい。従って、異物収容領域48は、循環路47の下方に設けられることには限られない。
図14に示すガスインジェクタ41は、
図1〜
図4で説明したガスインジェクタ41に対して異物収容領域形成部44が設けられる位置について異なっている。この
図14に示すガスインジェクタ41の循環路47においては、その後方側の上部がさらに後方に向けて引き出されることで異物収容領域48をなすように、異物収容領域形成部44が設けられている。このように形成された異物収容領域48においても、図に示すように収容されたパーティクルPが重力により当該異物収容領域48の底部に沈降する。
【0040】
また、
図15に示すガスインジェクタ41も
図1〜
図4で説明したガスインジェクタ41に対して異物収容領域形成部44の位置について異なっており、この
図15に示すガスインジェクタ41においては、循環路47の後方端の高さ中央部が後方側へ向けて引き出され、さらに下方へ向かうことで異物収容領域48をなすように異物収容領域形成部44が設けられている。
【0041】
また、
図16に示すガスインジェクタ41のように、異物収容領域48について前後の幅L1の方が高さH1よりも大きくなるように形成してもよい。ただし、遠心力により異物収容領域48に進入したパーティクルPが異物収容領域48に衝突して循環路47に戻ることを防ぐために、高さH1は大きくすることが好ましい。また、前後の幅L1が大きすぎると循環路47のガス流が異物収容領域48に流れ込み、収容された異物が循環路47へ巻き上げられてしまうおそれが有る。従って、
図1〜
図4に示すガスインジェクタ41のように、例えば前後の幅L1<高さH1とすることが好ましく、例えば高さH1が前後の幅L1の3倍以上の大きさであるとより好ましい。なお、異物収容領域48は直方体状に形成することには限られず、多くの異物を収容できるように例えば末広がりに形成してもよい。その場合、前後の幅L1は、循環路47と接続される位置の前後の幅である。
【0042】
また、
図17に示すガスインジェクタ41では、
図1〜
図4で説明したガスインジェクタ41に対して異物収容領域48が設けられていない点で異なっている。上記のように循環路47に流入したパーティクルPは、ガスインジェクタ41に比較的大きな流量でガスが供給されている間は、このガスの流れに乗って循環路47を循環することになる。ガスインジェクタ41に供給されるガスの流量が比較的小さくなると、重力の作用により循環路47の底部へ沈降し、蓄積されることになる。つまり、異物収容領域48が設けられていなくても、パーティクルPは、循環路47に捕集され、ガス吐出口46から排出されることが抑制されるので、当該異物収容領域48は設けられていなくてもよい。ただし、このパーティクルPが循環路47から直線流路45へ戻り、ガス吐出口46から吐出されることを、より確実に防ぐためには異物収容領域48を設けることが好ましい。
【0043】
なお、ガス吐出口46が形成される領域の下流側から循環路47の入り口に至るまで直線方向に見て遮蔽されないように空間が形成されておれば、当該空間を介してガス流に乗ったパーティクルPを流路の壁面に衝突させずに循環路47へ導入して捕集し得る。具体的に、
図18に示す例では本体部42の上下方向に伸びる部位を縦断面で見たときに、流路を形成する壁部が波状であり、直線状に構成されていない。しかしこの流路の中心部には、既述した直線方向に見て遮蔽されない空間(図中に点線の枠73として表示)が形成されており、この空間が直線流路に相当する。つまり、直線流路は、断面が直線状の流路形成部材により形成されることには限られない。
【0044】
ところで、ガスインジェクタ41、49は、上記の成膜装置1のような縦型の処理装置に適用されることには限られない。
図19、
図20は、ガスインジェクタ41、49が適用された他の成膜装置8の縦断側面図、横断平面図を夫々示しており、この成膜装置8もALDによってウエハWにSiO
2膜を形成する。図中、成膜装置8について、成膜装置1と同様に構成された部位については成膜装置1で使用した符号と同じ符号を付し、説明を省略する。
【0045】
成膜装置8は扁平な形状の反応容器81を備えている。反応容器81は平面で見て概ね円形に構成されており、天板82と、反応容器81の側壁及び底部をなす容器本体83とにより構成されている。図中84はガス供給管であり、反応容器81内に設けられる水平な回転テーブル9の中心部上にN
2ガスを供給し、当該中心部上でガスインジェクタ41、49から吐出されるSi原料ガスと酸化ガスとが混合されることを防ぐ。
【0046】
回転テーブル9は平面視円形に構成されており、その中心軸を回転軸として回転機構91により、平面視時計回りに回転する。回転テーブル9の表面側(一面側)には、回転方向に沿って例えば5つの凹部92が形成されており、この凹部92内にウエハWが載置される。
図20中85は、反応容器81の側壁に設けられるウエハWの搬送口を開閉するゲートバルブである。回転テーブル9の外周側の下方には、図示しない圧力調整部を介して真空ポンプ24に接続される排気口86、87が設けられている。
図19中88は、回転テーブル9及びウエハWを加熱するヒーターであり、89はN2ガスを供給して回転テーブル9の下方をパージするパージガス供給管である。
【0047】
回転テーブル9の上方には、ガスインジェクタ41、ガスインジェクタ93、ガスインジェクタ49、ガスインジェクタ94がこの順に時計回りに配設されている。ガスインジェクタ41の配置について詳しく述べると、本体部42の基端側は反応容器81の外側に位置し、上記の直線流路45が形成された本体部42の先端側は反応容器11の側壁を貫通して当該反応容器11内を回転テーブル9の径方向に沿って、当該回転テーブル9の中心に向かうように水平に伸びている。つまり、この本体部42は回転テーブル9の半径上を、当該回転テーブル9の回転方向と交差するように伸びている。そして、この本体部42の吐出口42は下方に向けられており、回転テーブル9によって回転するウエハWの表面全体にガスを供給することができる。
【0048】
他のガスインジェクタ49、93、94についてもガスインジェクタ41と同様に、ガス吐出口46からウエハWの表面全体にガスを吐出することができるように配置されている。ガスインジェクタ93、94の基端はN2ガスの供給源55、65に夫々接続され、ガスインジェクタ41による処理雰囲気とガスインジェクタ49による処理雰囲気とを分離する分離ガスとしてN2ガスを吐出する。ガスインジェクタ93、94は、循環路形成部43及び異物収容領域形成部44が設けられていない例を示しているが、これらの各部が設けられた構成であってもよい。
【0049】
反応容器81の天板82の下方には、平面視扇状の2つの突状部95が当該天板82から下方に突出するように設けられ、ガスインジェクタ93、94は各々突状部95にめり込むように設けられている。突状部95の下方はガスインジェクタ93、94からN2ガスが吐出されることにより、回転テーブル9を各々周方向に広がるSi原料ガスと酸化ガスとの混合を阻止するための分離領域Dを構成する。
図19中、80は制御部であり、成膜装置1の制御部10と同様に構成され、成膜装置8の動作を制御する。
【0050】
上記の成膜装置8では反応容器81内が排気されて所定の圧力の真空雰囲気とされた状態で、ヒーター88によりウエハWが加熱されると共に回転テーブル9が回転する。そして、ガスインジェクタ41からSi原料ガスが、ガスインジェクタ49から酸化ガスが、ガスインジェクタ93、94及びガス供給管84、89からN2ガスが並行して吐出される。吐出された各N2ガスにより、回転テーブル9上においてSi原料ガスが吐出される処理領域R1の雰囲気と、酸化ガスが吐出される処理領域R2の雰囲気と、が互いに分離される。回転テーブル9の回転により、処理領域R1、R2をウエハWが交互に繰り返し通過することによって、Si原料ガスの吸着とSiの酸化とが交互に繰り返し行われ、ウエハWの表面にSiO2膜が形成される。
【0051】
このような成膜装置8においても、ガスインジェクタ41、49内では直線流路45内のパーティクルPが循環路47に捕集されることで、ウエハWへ吐出されることを防ぐことができる。従って成膜装置8は成膜装置1と同様の効果を奏する。なお、成膜装置8についても、成膜装置1と同様、ガスインジェクタ41、49から成膜用の処理ガスを吐出する代わりにエッチングガスやアニール処理用の不活性ガスを吐出する構成とし、エッチング装置やアニール装置として使用することができる。アニール装置として使用する場合には、上記の分離領域Dは形成しなくてもよい。
【0052】
成膜装置1、8に各々適用した例として示したように、ガスインジェクタ41、49の直線流路45としては、縦方向に形成されていてもよいし、横方向に形成されていてもよい。なお、この縦方向、横方向には夫々垂直方向、水平方向の他に斜め方向も含まれる。また、ガス吐出口46としては直線流路45と直交する方向に形成されることに限られず、直線流路45に対して斜め方向に形成されていてもよい。さらにガス吐出口46は複数設けることに限られず、一つのみ設けられていてもよい。また、成膜装置1、8では、SiO2膜を形成するように処理ガスとしてSi原料ガス及び酸化ガスをウエハWに供給しているが、金属膜などのSiO2膜以外の膜を形成するための処理ガスを供給するようにしてもよい。また、ALDによって成膜を行う装置に限られず、CVDによって成膜を行う装置にもガスインジェクタ41、49は適用することができる。なお、本発明は、既述した各実施の形態に限られるものではなく、各実施形態については適宜変更したり、組み合わせたりすることができる。
【0053】
[評価試験]
本発明に関連して行われた評価試験について説明する。
・評価試験1
シミュレーションにより、試験用ガスインジェクタにおいて内部に多数のパーティクルが溜まった状態で、当該ガスインジェクタ内にガスを供給したときのガスインジェクタ内の上部側におけるパーティクルの様子を調べた。この試験用ガスインジェクタについては、循環路形成部43及び異物収容領域形成部44が設けられておらず、本体部42の上端が閉鎖されていることを除いて、既述のガスインジェクタ41と同様に構成されている。上記のタンク52の下流側のバルブV1を開放したタイミングを基準時とすると、基準時から0.003秒後、0.005秒後、0.01秒後において、試験用ガスインジェクタ内の上部側のパーティクルの個数は夫々115個、96個、74個であった。つまり、試験用ガスインジェクタの上部側のガス吐出口46からガスと共にパーティクルが吐出されていることが確認された。
【0054】
・評価試験2
シミュレーションにより評価試験1と同様の試験を行ったが、この評価試験2では、試験用ガスインジェクタの代わりにガスインジェクタ41を用いた。その結果、発明の実施の形態で説明したように、パーティクルは循環路47に捕集されて、異物収容領域48に収容され、当該異物収容領域48の底部へ沈降することで、ガス吐出口46からは吐出されないことが確認された。