(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成して酸素8員環ゼオライトを製造する方法において、
該アルミニウム原子原料として、少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含み、かつFramework densityが15T/1000Å3以下のアルミノシリケートゼオライトを用い、
該ケイ素原子原料として、少なくとも、該アルミノシリケートゼオライトと、該アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料とを用い、
該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用いることを特徴とする酸素8員環ゼオライトの製造方法。
前記アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料が、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、水ガラス、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、及びアルミノシリケートゲルから選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の酸素8員環ゼオライトの製造方法。
前記有機構造規定剤が、ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物、アルキル基を有するアミン、及びシクロアルキル基を有するアミンから選ばれる少なくとも1種を含むことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の酸素8員環ゼオライトの製造方法。
前記原料混合物の水の含有量が、該原料混合物に含まれるSiに対するモル比で3以上50以下であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の酸素8員環ゼオライトの製造方法。
アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成してCHA型ゼオライトを製造する方法において、
該アルミニウム原子原料として少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に有するアルミノシリケートゼオライトを用い、
該ケイ素原子原料として、少なくとも、該アルミノシリケートゼオライトと、該アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料とを用い、
該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用いることを特徴とするCHA型ゼオライトの製造方法。
ゼオライト骨格形成原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成してAEI型ゼオライトを製造する方法において、
該ゼオライト骨格形成原子原料として、少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを用い、
該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アルキルアンモニウム塩を用い、
種晶として、AEI型ゼオライトを、該原料混合物中のSiが全てSiO2になっているとしたときのSiO2に対して0.5重量%以上混合して反応前混合物を得、
該反応前混合物を水熱合成することを特徴とするAEI型ゼオライトの製造方法。
前記ゼオライト骨格形成原子原料として、前記アルミノシリケートゼオライトと、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、及びアルミノシリケートゲルから選ばれる少なくとも1種とを用いることを特徴とする請求項10又は11に記載のAEI型ゼオライトの製造方法。
請求項1乃至8のいずれかに記載の酸素8員環ゼオライトの製造方法により酸素8員環ゼオライトを製造し、得られた酸素8員環ゼオライトに、Si及びAl以外の金属を担持させることを特徴とする触媒の製造方法。
請求項9に記載のCHA型ゼオライトの製造方法によりCHA型ゼオライトを製造し、得られたCHA型ゼオライトに、Si及びAl以外の金属を担持させることを特徴とする触媒の製造方法。
請求項10乃至14のいずれかに記載のAEI型ゼオライトの製造方法によりAEI型ゼオライトを製造し、得られたAEI型ゼオライトに、Si及びAl以外の金属を担持させることを特徴とする触媒の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。以下の説明は、本発明の実施態様の一例(代表例)であり、本発明はこれらの内容に何ら限定されない。
【0040】
本発明において、ゼオライト骨格形成原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤及び水を混合して得られたもの、又はアルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤及び水を混合して得られたものを「原料混合物」と称す。原料混合物に更に種晶を混合して得られたものを「反応前混合物」と称す。ただし、後述の通り、反応前混合物の製造手順に特に制限はなく、種晶は必ずしも予め調製された原料混合物に添加混合する必要はない。
【0041】
以下において、原料混合物(上記の通り、原料混合物には種晶は含まれず、原料混合物とは、反応前混合物中の種晶以外の成分の合計をさす。)中のSiが全てSiO
2になっているとしたときのSiO
2に対する添加成分の割合を、「対SiO
2換算割合」と称す場合がある。
【0042】
[酸素8員環ゼオライトの製造方法]
本発明の酸素8員環ゼオライトの製造方法は、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成して酸素8員環ゼオライトを製造する方法において、該アルミニウム原子材料として少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含み、かつFramework densityが15T/1000Å
3以下のアルミノシリケートゼオライトを用い、該ケイ素原子原料として、少なくとも、該アルミノシリケートゼオライトと、これ以外のケイ素原子原料とを用い、該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用いることを特徴とする。
【0043】
本発明により製造される酸素8員環ゼオライト(以下、「本発明の酸素8員環ゼオライト」と称す場合がある。)の酸素8員環とは、ゼオライト骨格を形成する酸素とT元素(骨格を構成する酸素以外の元素)で構成される細孔の中で最も酸素の数が大きいものを示す。例えば、MOR型ゼオライトのように酸素12員環と8員環の細孔が存在する場合は、酸素12員環のゼオライトとみなす。
【0044】
酸素8員環ゼオライトには、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでABW、ACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATN、ATT、ATV、AWO、AWW、BCT、BIK、BRE、CAS、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、ESV、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、JBW、KFI、LEV、LTA、MER、MON、MTF、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTE、RTH、RWR、SAS、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUG、ZON構造のものが挙げられる。好ましくはAEI型、CHA型、AFX型、LEV型、DDR型、LTA型、RHO型である。より好ましくはAEI型、CHA型である。酸素8員環ゼオライトは特に好ましくはAEI型である。
【0045】
ゼオライトの構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定すると、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じる。このため、実際の測定でIZAの規定に記載された各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
【0046】
ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定義するゼオライトであるが、好ましくはアルミノシリケートゼオライトである。アルミノシリケートゼオライトは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよい。
【0047】
酸素8員環ゼオライトのアルミノシリケートゼオライトの骨格構造を構成しているMe、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されない。Me、Al、Siの合計に対するMeのモル比をx、Alのモル比をy、Siのモル比をzとすると、xは通常0以上、0.3以下である。xがこの上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
【0048】
yは通常0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上で、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
【0049】
zは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上で、通常0.999以下、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.95以下である。
【0050】
y、zが上記範囲外であると、合成が困難になる場合や、触媒として用いた場合に酸点が少なすぎて活性が発現しない場合がある。
【0051】
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
【0052】
<酸素8員環ゼオライトの製造に用いられるアルミノシリケートゼオライト>
本発明の酸素8員環ゼオライトの製造方法の特徴は、アルミニウム原子原料として、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含み、かつFramework densityが15T/1000Å
3以下のアルミノシリケートゼオライトを用いることにある。Framework densityは、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revised Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値であり、骨格密度を表す値である。
【0053】
Framework densityは、ゼオライトの単位体積1000Å
3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味する。この値はゼオライトの構成により決まる。
【0054】
Framework densityが15T/1000Å
3以下のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる酸素8員環ゼオライトの製造工程での作用効果は次の通り推測される。
Framework densityが15T/1000Å
3以下と比較的Framework densityの小さいゼオライトは、溶解性が高いため、骨格を構成するd6rあるいはd6rを構成するナノパーツに容易に分解される。分解したパーツが、有機構造規定剤を取り囲むように再び結晶構造を作ることで酸素8員環ゼオライトが得られる。
【0055】
アルカリ中でアルミノシリケートゼオライトがナノパーツに分解しやすいという点において、Framework densityは15T/1000Å
3以下であり、14.8T/1000Å
3以下が好ましく、14.6T/1000Å
3以下がより好ましく、14.5T/1000Å
3以下が更に好ましく、14.3T/1000Å
3以下が特に好ましい。Framework densityが過度に小さいとアルミノシリケートゼオライトが溶解しすぎてナノパーツとしての役割を果たせなくなるため、アルミノシリケートゼオライトのFramework densityは好ましくは10T/1000Å
3以上、より好ましくは10.5T/1000Å
3以上、更に好ましくは10.6T/1000Å
3以上、特に好ましくは10.8T/1000Å
3以上である。
【0056】
本発明で用いるアルミノシリケートゼオライトの作用機構の観点から、アルミノシリケートゼオライトとして、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むものを用いる。具体的にはAEI、AFT、AFX、CHA、EAB、ERI、FAU、GME、KFI、LEV、LTL、LTN、MOZ、MSO、MWW、OFF、SAS、SAT、SAV、SBS、SBT、SZR、TSC、WENが挙げられ、より好ましくはAEI、AFT、AFX、CHA、ERI、FAU、KFI、LEV、LTL、MWW、SAV、更に好ましくはAEI、AFX、CHA、FAU、特に好ましくはFAU型ゼオライト(Y型ゼオライト)である。
【0057】
アルミノシリケートゼオライトのシリカ(SiO
2)/アルミナ(Al
2O
3)モル比は3〜50が好ましい。この値が上記上限より大きいと、塩基性溶液中での溶解度が極めて高く適さない。シリカ/アルミナモル比が30以下、特に25以下、中でも20以下、とりわけ10以下であれば、廉価で工業的に入手しやすく好ましい。アルミノシリケートゼオライトのシリカ/アルミナモル比の下限は、アルミノシリケートゼオライトの溶解性から、3以上、特に5以上が好ましい。
【0058】
目的物である酸素8員環ゼオライトのシリカ/アルミナモル比は、後述する用途、中でも特にSCR触媒として用いる場合には、20〜30であることが好ましい。従来、このような酸素8員環ゼオライトを製造するにあたっては、原料としてシリカ/アルミナモル比の高い、具体的には、目的物の酸素8員環ゼオライトのシリカ/アルミナモル比よりもシリカ/アルミナモル比の高いアルミノシリケートゼオライトを用いていた。より具体的には、原料としてシリカ/アルミナモル比が25以上の、高価なアルミノシリケートゼオライトを用いていた。しかし、本発明によれば、後述するように、上記の特定のアルミノシリケートゼオライトと、これ以外のケイ素原子原料を用いることで、上記のように、シリカ/アルミナモル比が20以下の廉価なアルミノシリケートゼオライトを用いることができる。このような観点から、アルミノシリケートゼオライトのシリカ/アルミナモル比は20以下であることが好ましい。
【0059】
以上の理由から、アルミノシリケートゼオライトのシリカ(SiO
2)/アルミナ(Al
2O
3)モル比は、3以上20以下であることが好ましく、5以上20以下であることがより好ましく、5以上15以下であることが最も好ましい。
【0060】
アルミノシリケートゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0061】
アルミノシリケートゼオライトは、目的とする酸素8員環ゼオライトのAl及びSi含有量に応じて、必要に応じて用いられるアルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料及び/又はケイ素原子原料との合計で、後述のアルミニウム原子原料及びケイ素原子原料の使用量となるように用いられる。本発明では、上述の特定のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全アルミニウム原子原料の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を上述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。全ケイ素原子原料の60重量%以下、特に15〜40重量%、とりわけ2〜10重量%を上述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。
【0062】
<種晶>
種晶として添加する酸素8員環ゼオライトは、製造しようとするゼオライトと同じ構造を有するゼオライトであることが望ましい。
【0063】
種晶として添加する酸素8員環ゼオライトは、平均粒径が0.1〜5.0μm、特に0.1〜3.0μmであることが好ましい。種晶の粒径が上記上限よりも小さいと製造時間の短縮が期待される。種晶の粒径が上記下限よりも大きいと取り扱いが容易である。
【0064】
種晶の使用量は、対SiO
2換算割合で0.1重量%以上であり、反応をより円滑に進めるために、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1重量%以上である。種晶の使用量の上限は特に限定されないが、コストダウンの効果を十分得るために対SiO
2換算割合で通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは22重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
【0065】
種晶として添加する酸素8員環ゼオライトは、水熱合成後に焼成を行っていない未焼成品でも、水熱合成後に焼成を行った焼成品でもよい。種晶ゼオライトが溶解しやすい高温・高アルカリの水熱合成条件を採用する場合は、溶解しにくい未焼成品を用いることが好ましい。種晶ゼオライトが溶解しにくい低温・低アルカリの水熱合成条件を採用する場合は、溶解しやすい焼成品を用いることが好ましい。
【0066】
一般にゼオライトの製造方法において、種晶の添加により収率を向上させるという技術は散見されるが、本発明は、所望するタイプのゼオライトが製造し得なかった材料に特定のゼオライトを添加することにより、所望するタイプのゼオライトを製造するものであり、従来の種晶効果とは異なる。
【0067】
<アルミニウム原子原料>
本発明においては、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外に、他のアルミニウム原子原料を添加して反応前混合物の組成を調整してもよい。アルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができる。例えばアモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。後述のケイ素原子原料として挙げたアルミノシリケートゲルは、アルミニウム原子原料ともなる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0068】
アルミニウム原子原料(前述の特定のアルミノシリケートゼオライトを含む。)の使用量は、反応前混合物の調製のしやすさや生産効率の点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルミニウム原子原料中のアルミニウム(Al)のモル比で通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08以上である。アルミニウム原子原料の使用量の上限は特に限定されないが、反応前混合物中にアルミニウム原子原料を均一に溶解させる点から上記モル比で通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0069】
アルミニウム原子原料として、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外のものを併用する場合、前述の特定のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全アルミニウム原子原料の50重量%以上、特に70〜100重量%、とりわけ90〜100重量%を前述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。
【0070】
<ケイ素原子原料>
本発明において、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外に他のケイ素原子原料を添加して反応前混合物の組成を調整する。アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができる。例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、トリメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。好ましくは、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0071】
このように、前述の特定のアルミノシリケートゼオライトと、これ以外の他のケイ素原子原料を用いることにより、シリカ/アルミナモル比の低い、廉価な該アルミノシリケートゼオライトを使用することができる。
【0072】
ケイ素原子原料は、ケイ素原子原料に対する他の原料の使用量がそれぞれ前述ないしは後述の好適範囲となるように用いられる。前述の特定のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全ケイ素原子原料の60重量%以下、特に15〜40重量%、とりわけ2〜10重量%を前述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。
【0073】
<アルカリ金属原子原料>
本発明で用いるアルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子は、特に限定されず、ゼオライトの合成に使用される公知のものが使用できるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンを存在させて結晶化させることが好ましい。このうち好ましくはナトリウム又はカリウムであり、特に好ましくはナトリウムである。
【0074】
アルカリ金属原子原料がこれらのアルカリ金属原子を含むことにより、結晶化の進行が容易となり、また副生物(不純物結晶)が生成しにくくなる。
【0075】
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0076】
アルカリ金属原子原料は、その適当量を使用することにより、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくできる点から、本発明で添加する種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で0.1以上0.8以下となるように用いることが好ましい。このモル比は、より好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.18以上、とりわけ好ましくは0.2以上で、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下、とりわけ好ましくは0.5以下である。
【0077】
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、ゼオライト製造の際に使用される、4級アンモニウム塩、アミン、イミン等が挙げられる。本発明では、テンプレートとして、以下の(1)を少なくとも用いるが、以下の(2a)〜(2c)からなる群から選ばれた少なくとも1種類の化合物を用いることも好ましい。これらは入手しやすく安価であり、製造コストダウンに好適である。
(1) 1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩
(2a) ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2b) アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(2c) シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
【0078】
(1)1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩
1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩の分子量は通常300以下、好ましくは250以下、より好ましくは100以上200以下である。1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド等が挙げられる。好ましくは工業的に入手しやすいことから、テトラエチルアンモニウムヒドロキシドである。1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0079】
(2a)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が隣り合わないものが好ましい。
【0080】
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下で、通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0081】
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物としては、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0082】
(2b)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基である。アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。アルキルアミンのアルキル基の炭素原子数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素原子数の合計は5以上30以下がより好ましい。
【0083】
アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0084】
アルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0085】
(2c)シクロアルキルアミン
シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素原子数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0086】
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、本発明の酸素8員環ゼオライトの製造方法においては、上記有機構造規定剤のうち、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩、好ましくはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを用いる。
【0087】
有機構造規定剤の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。有機構造規定剤の使用量は、コストダウンの効果を十分得るために、上記モル比で通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0088】
<水>
水の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上である。水の使用量は、廃液処理にかかるコストダウンの効果を十分得るために、上記モル比で通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
【0089】
<原料の混合(反応前混合物の調製)>
本発明の製造方法においては、以上述べた、アルミノシリケートゼオライト、アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料、及び必要に応じて用いられるアルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料と、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた原料混合物に、必要に応じて用いられる種晶として所望する酸素8員環ゼオライトを十分に混合し、得られた反応前混合物を水熱合成する。
【0090】
原料の混合順序に特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にアルミノシリケートゼオライトを添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、ここへアルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料、必要に応じて用いられるアルミニウム原子原料、アルミノシリケートゼオライト、酸素8員環ゼオライトの順番で添加して混合することが好ましい。
【0091】
本発明においては、上記のアルミノシリケートゼオライト、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、水及び種晶である酸素8員環ゼオライト以外に、必要に応じて触媒や補助剤などの他の添加剤を任意の工程で添加混合して反応前混合物を調製してもよい。
【0092】
<熟成>
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となる。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが可能となる。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。熟成温度の下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上で、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0093】
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された反応前混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
【0094】
水熱合成の際の反応温度は、通常120℃以上で、通常230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上で、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0095】
上記の条件で反応させることにより、所望する酸素8員環ゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し難くなり、所望の酸素8員環ゼオライトを収率よく得ることが可能となる。
【0096】
<酸素8員環ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物である酸素8員環ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
【0097】
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
【0098】
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後焼成等を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトを得ることができる。
【0099】
本発明の酸素8員環ゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
【0100】
SDA等含有ゼオライトから有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を除去する処理は、酸性溶液や有機構造規定剤分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理を採用することができる。これらの処理を組合せて用いてもよい。通常、SDA等含有ゼオライトを空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出したりする等の方法により、SDA等含有ゼオライトに含有される有機構造規定剤等を除去することができる。製造性の面で焼成による有機構造規定剤等の除去が好ましい。この場合の焼成温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上で、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
【0101】
本発明の製造方法では、仕込み組成比を変えることにより、従来製造できなかった広い範囲のSi/Al比(モル比)の酸素8員環ゼオライトを製造することができる。よって得られたゼオライトのSi/Al比は特に限定されるものではないが、より触媒としての活性点が多い方が好ましいことから50以下が好ましく、より好ましくは40以下、更に好ましくは35以下、とりわけ好ましくは25以下、最も好ましくは20以下である。また骨格内のAl量が多いゼオライトは水蒸気を含むガスにさらされた場合、骨格内Alが脱離して構造破壊が起きるため、Si/Al比は好ましくは2以上、より好ましくは3以上、更に好ましくは4以上、とりわけ好ましくは4.5以上である。
【0102】
本発明の酸素8員環ゼオライトを後述する用途の中でもSCR触媒用途として用いる場合には、優れた高温水蒸気耐久性を確保する観点から、本発明の酸素8員環ゼオライトのSi/Al比は、好ましくは2以上50以下、より好ましくは3以上40以下、更に好ましくは4以上35以下、とりわけ好ましくは4.5以上30以下である。
【0103】
本発明の酸素8員環ゼオライトの平均粒径は、特に限定されないが、触媒として用いた時のガス拡散性を高くするために、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.2〜8μm、更に好ましくは0.5〜5μmである。
【0104】
本発明の酸素8員環ゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなるから300〜1000m
2/gが好ましく、より好ましくは400〜800m
2/g、更に好ましくは500〜750m
2/gである。
【0105】
ゼオライトのイオン交換能について説明する。
イオン交換能は、アルカリ金属原子原料あるいはゼオライト骨格形成原子原料、有機構造規定剤、及び種晶ゼオライトに含まれるアルカリ原子由来のアルカリ金属部分を、水素(H型)やアンモニウム(NH
4型)で置き換えることによって得ることもできる。その方法は公知の技術を採用することができる。例えば、NH
4NO
3などアンモニウム塩あるいは塩酸などの酸で、通常、室温から100℃で処理後、水洗する方法などにより行うことができる。
【0106】
<酸素8員環ゼオライトの用途>
本発明の酸素8員環ゼオライトの用途としては特に制限はない。本発明の酸素8員環ゼオライトは、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。前述の特許文献1にも記載があるように、特に自動車等の排ガス浄化用触媒等に好適に用いられる。その他の用途として、石化用触媒、例えばエチレンからプロピレンや、メタンからオレフィンを合成するなどの化学合成の触媒にも使用することができる。
【0107】
<排ガス処理用触媒>
本発明の酸素8員環ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本発明の酸素8員環ゼオライトはそのままで用いてもよく、必要に応じて金属を含有させた酸素8員環ゼオライトを用いてもよい。金属を含有させる方法として具体的には、含侵、液相または固相のイオン交換などがある。あるいは水熱合成前に金属を加えることにより金属を含有したゼオライトを直接合成してもよい。金属を含有させたゼオライトにおける金属の存在状態としては、骨格構造に含まれる場合と、含まれない場合がある。
【0108】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は、バインダーと混合し、造粒して用いたり、ハニカム状等の所定の形状に成形して用いたりすることができる。例えば、該触媒をシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状の触媒やハニカム触媒、触媒成形品を得ることができる。
【0109】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は、シートやハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。例えば、本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒とシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布し、焼成する方法が挙げられる。好ましくはこの際にハニカム形状の基材に塗布することにより、触媒が塗布されたハニカム状のハニカム触媒を得ることができる。
【0110】
ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよい。
【0111】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒等のNOxの選択的還元触媒として有効である。
【0112】
本発明の酸素8員環ゼオライトにAl,Si以外の金属を含有ないし担持させて製造された排ガス処理用触媒も、NOxの選択的還元触媒として、特に有効である。排ガス処理用触媒として、酸素8員環ゼオライトに含有ないし担持させる金属元素としては遷移金属が好ましく、中でも、鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。酸素8員環ゼオライトに含有ないし担持させる金属元素は更に好ましくは、鉄及び/又は銅である。酸素8員環ゼオライトに含有ないし担持させる金属は、2種以上の金属を組み合わせて用いてもよい。Al,Si以外の金属元素の含有量ないし担持量は、Al,Si以外の金属元素を含有ないし担持させてなる酸素8員環ゼオライト全量中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上で、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。
【0113】
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用してもよい。
【0114】
具体的には、本発明の酸素8員環ゼオライトから得られた排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0115】
本発明の酸素8員環ゼオライトは、窒素酸化物浄化用触媒用途以外に、例えば、本発明の酸素8員環ゼオライトを用いた窒素酸化物浄化用触媒を用いて窒素酸化物の浄化を行った後段の工程において、窒素酸化物浄化で消費されなかった余剰の還元剤(例えばアンモニア)を酸化する酸化触媒用途に用いることができる。本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は酸化触媒として余剰の還元剤を酸化し、排ガス中の還元剤を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、本発明の酸素8員環ゼオライトを該担体として使用できる。また、本発明の酸素8員環ゼオライトは、窒素酸化物の選択的還元触媒として使用できる。例えば鉄及び/又は銅を担持した本発明の酸素8員環ゼオライトに、更に該白金族等の金属を担持した触媒を使用することができる。
【0116】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は様々な排気浄化システムにおいて用いることができる。該システムとしては、本発明の触媒を含む選択還元型窒素酸化物浄化触媒を備えた排気浄化システムが例示できる。該排気浄化システムにおいて前記選択還元型窒素酸化物浄化触媒の下流にアンモニア酸化触媒が配置されていてもよい。
【0117】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒は様々な排気浄化方法において用いることができる。該排気浄化方法は、アンモニアを選択還元型窒素酸化物浄化触媒に吸着させ、吸着されたアンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程を含む排気浄化方法である。選択還元型窒素酸化物浄化触媒として本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒を用いることが好ましい。更に、前記アンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程の下流に、余剰のアンモニアを酸化する工程を含んでいてもよい。
【0118】
前記アンモニアとしては、外部から排気浄化システム内に導入したアンモニアや、外部から排気浄化システム内に導入した尿素から生成したアンモニアを用いることができる。また、排気浄化システム内で排ガスからアンモニアを生成して用いることもできる。
【0119】
本発明の酸素8員環ゼオライトを含む触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではない。排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上、更に好ましくは5000/h以上で、通常500000/h以下、好ましくは400000/h以下、更に好ましくは200000/h以下である。触媒と排ガスの接触時の温度は通常100℃以上、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは150℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下、更に好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
【0120】
[CHA型ゼオライトの製造方法]
本発明のCHA型ゼオライトの製造方法は、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた混合物を水熱合成してCHA型ゼオライトを製造する方法において、該アルミニウム原子原料として少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に有するアルミノシリケートゼオライトを用い、該ケイ素原子原料として、少なくとも、該アルミノシリケートゼオライトと、これ以外のケイ素原子原料を用い、該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用いて反応前混合物を得、その後水熱合成することを特徴とする。
【0121】
<アルミニウム原子原料>
本発明のCHA型ゼオライトの製造方法の特徴は、アルミニウム原子原料として、少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に有するアルミノシリケートゼオライトを用いることにある。このd6rを骨格中に有するアルミノシリケートゼオライトは、先に説明した酸素8員環ゼオライトの製造方法におけるアルミノシリケートゼオライトと同様である。
【0122】
本発明のCHA型ゼオライトの製造方法は、d6rを骨格中に有するアルミノシリケートゼオライトにFramework densityが15T/1000Å以下であるという条件が不要であることを除き、前述の酸素8員環ゼオライトの製造方法の項で説明した条件が適用でき、またその用途や製造方法にしても同様である。また、得られるCHA型ゼオライトの好ましい粒径や、表面積等についても、本発明の酸素8員環ゼオライトと同様である。
【0123】
製造されたCHA型ゼオライトは、本発明の酸素8員環ゼオライトと同様に触媒とすることができ、本発明の酸素8員環ゼオライトと同様、排ガス処理用触媒として有用である。
【0124】
[AEI型ゼオライトの製造方法]
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法は、ゼオライト骨格形成原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し、得られた原料混合物を水熱合成してAEI型ゼオライトを製造する方法において、該ゼオライト骨格形成原子原料として、少なくとも、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを用い、該有機構造規定剤として、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アルキルアンモニウム塩を用い、種晶として、AEI型ゼオライトを、該原料混合物中のSiが全てSiO
2になっているとしたときのSiO
2に対して0.5重量%以上混合して反応前混合物を得、該反応前混合物を水熱合成することを特徴とする。
【0125】
本発明により製造されるAEI型ゼオライト(以下、「本発明のAEI型ゼオライト」と称す場合がある。)とは、International Zeolite Association(IZA)が定めるゼオライトの構造を規定するコードでAEI構造のものを示す。ゼオライトの構造は、X線回折のデータにより特徴付けられる。ただし、実際に作製されたゼオライトを測定すると、ゼオライトの成長方向や、構成する元素の比、吸着した物質、欠陥の存在、乾燥状態などの影響を受け、各ピークの強度比やピーク位置に若干のずれを生じる。このため、実際の測定でIZAの規定に記載されたAEI構造の各パラメータと全く同じ数値が得られるわけではなく、10%程度の幅は許容される。
【0126】
ゼオライトとは、International Zeolite Association(IZA)が定義するゼオライトであるが、好ましくはアルミノシリケートゼオライトである。アルミノシリケートゼオライトは骨格構造を構成する原子として、少なくとも酸素、アルミニウム(Al)、ケイ素(Si)を含むものであり、これらの原子の一部が他の原子(Me)で置換されていてもよい。
【0127】
AEI型ゼオライトのアルミノシリケートゼオライトの骨格構造を構成しているMe、AlおよびSiの構成割合(モル比)は、特に限定されない。Me、Al、Siの合計に対するMeのモル比をx、Alのモル比をy、Siのモル比をzとすると、xは通常0以上、0.3以下である。xがこの上限値より大きいと、合成時に不純物が混入しやすくなる傾向がある。
【0128】
yは通常0.001以上、好ましくは0.005以上、より好ましくは0.01以上、更に好ましくは0.05以上で、通常0.5以下、好ましくは0.4以下、より好ましくは0.3以下、更に好ましくは0.25以下である。
【0129】
zは通常0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上、更に好ましくは0.75以上で、通常0.999以下、好ましくは0.995以下、より好ましくは0.99以下、更に好ましくは0.95以下である。
【0130】
y、zが上記範囲外であると、合成が困難になる場合や、触媒として用いた場合に酸点が少なすぎて活性が発現しない場合がある。
【0131】
他の原子Meは、1種でも2種以上含まれていてもよい。好ましいMeは、周期表第3又は第4周期に属する元素である。
【0132】
<AEI型ゼオライトの製造に用いられるアルミノシリケートゼオライト>
本発明のAEI型ゼオライトの製造方法の特徴は、ゼオライト骨格形成原子原料、即ち、アルミニウム原子原料及びケイ素原子原料として、International Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを用いることにある。
【0133】
本発明で用いるInternational Zeolite Association(IZA)がcomposite building unitとして定めるd6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトは、Framework densityが14.5T/1000Å
3以下であることが好ましい。Framework densityは、Ch.BaerlocherらによるATLAS OF ZEOLITE FRAME WORK TYPES(Sixth Revised Edition、2007、ELSEVIER)に記載の値であり、骨格密度を表す値である。
【0134】
Framework densityは、ゼオライトの単位体積1000Å
3あたりに存在するT原子(ゼオライトの骨格構造を構成する酸素原子以外の原子)の数を意味する。この値はゼオライトの構成により決まる。
【0135】
Framework densityが14.5T/1000Å
3以下の骨格原子原料であるアルミノシリケートゼオライトを用いることによるAEI型ゼオライトの製造工程での作用効果の詳細は明らかではないが、次の通り推測される。
Framework densityが14.5T/1000Å
3以下と比較的Framework densityの小さいゼオライトは、溶解性が高いため、骨格を構成するd6rあるいはd6rを構成するナノパーツに容易に分解される。分解したパーツが、種結晶の周りで有機構造規定剤を取り囲むように再び結晶構造を作ることでAEI型ゼオライトが得られる。
【0136】
アルカリ中でアルミノシリケートゼオライトがナノパーツに分解しやすいという点において、Framework densityは好ましくは14.5T/1000Å
3以下であり、14.3T/1000Å
3以下がより好ましく、14.1T/1000Å
3以下が更に好ましく、14.0T/1000Å
3以下が特に好ましく、13.5T/1000Å
3以下がとりわけ好ましい。Framework densityが過度に小さいとアルミノシリケートゼオライトが溶解しすぎてナノパーツとしての役割を果たせなくなるため、アルミノシリケートゼオライトのFramework densityは好ましくは10T/1000Å
3以上、より好ましくは10.5T/1000Å
3以上、更に好ましくは10.6T/1000Å
3以上、特に好ましくは10.8T/1000Å
3以上である。
【0137】
本発明で用いるアルミノシリケートゼオライトとしては、具体的にはCHA、EMT、FAU、SAV、SBS、SBT、TSCが挙げられ、より好ましくはCHA、EMT、FAU、SAV、更に好ましくはCHA、FAU、特に好ましくはFAU型ゼオライト(Y型ゼオライト)である。
【0138】
アルミノシリケートゼオライトのシリカ(SiO
2)/アルミナ(Al
2O
3)モル比は3〜100が好ましい。この値が上記上限より小さいと、塩基性溶液中での溶解度が高くなりすぎることが無く好ましい。シリカ/アルミナモル比が30以下、特に15以下であれば、廉価で工業的に入手しやすく好ましい。アルミノシリケートゼオライトのシリカ/アルミナモル比の下限は、アルミノシリケートゼオライトの溶解性から、1以上、特に3以上が好ましい。
【0139】
前述した理由と同様に、アルミノシリケートゼオライトのシリカ(SiO
2)/アルミナ(Al
2O
3)モル比は、3以上20以下であることが好ましく、特に5以上20以下であることがより好ましく、5以上15以下であることが最も好ましい。
【0140】
アルミノシリケートゼオライトは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0141】
アルミノシリケートゼオライトは、目的とするAEI型ゼオライトのAl及びSi含有量に応じて、必要に応じて用いられるアルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料及び/又はケイ素原子原料との合計で、後述のアルミニウム原子原料及びケイ素原子原料の使用量となるように用いられる。本発明では、上述の特定のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全アルミニウム原子原料の50重量%以上、特に60〜100重量%、とりわけ80〜100重量%を上述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。また、全ケイ素原子原料の50重量%以上、特に60〜100重量%とりわけ80〜100重量%を上述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。
【0142】
<種晶>
種晶として添加するAEI型ゼオライトは、製造しようとするゼオライトと同じ構造を有するゼオライトであることが望ましい。
【0143】
種晶として添加するAEI型ゼオライトは、平均粒径が0.01〜5.0μm、特に0.5〜3.0μmであることが好ましい。種晶の粒径が上記上限よりも小さいと製造時間が短縮できることが期待される。種晶の粒径が上記下限よりも大きいと取り扱いが容易である。
【0144】
種晶の使用量は、対SiO
2換算割合で0.5重量%以上であり、反応をより円滑に進めるために、好ましくは1重量%以上、より好ましくは2重量%以上、更に好ましくは3重量%以上、特に好ましくは4重量%以上である。種晶の使用量の上限は特に限定されないが、コストダウンの効果を十分得るために対SiO
2換算割合で通常30重量%以下、好ましくは25重量%以下、より好ましくは22重量%以下、更に好ましくは20重量%以下である。
【0145】
種晶として添加するAEI型ゼオライトは、水熱合成後に焼成を行っていない未焼成品でも、水熱合成後に焼成を行った焼成品でもよい。種晶ゼオライトが溶解しやすい高温・高アルカリの水熱合成条件を採用する場合は、溶解しにくい未焼成品を用いることが好ましい。種晶ゼオライトが溶解しにくい低温・低アルカリの水熱合成条件を採用する場合は、溶解しやすい焼成品を用いることが好ましい。
【0146】
一般にゼオライトの製造方法において、種晶の添加により収率を向上させるという技術は散見されるが、本発明は、所望するタイプのゼオライトが製造し得なかった材料に特定のゼオライトを添加することにより、所望するタイプのゼオライトを製造するものであり、従来の種晶効果とは異なる。特に本発明のAEI型ゼオライトの製造方法においては、種晶を添加せずに、所定の有機構造規定剤を使用すると、CHA型やBEA型のゼオライトが生成することから、これらをAEI型とするために、種晶の添加が大きな役割を果たすことになる。
【0147】
<アルミニウム原子原料>
本発明においては、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外に、他のアルミニウム原子原料を添加して反応前混合物の組成を調整してもよい。アルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができる。例えばアモルファスの水酸化アルミニウム、ギブサイト構造を持つ水酸化アルミニウム、バイヤーライト構造を持つ水酸化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酸化アルミニウム、アルミン酸ナトリウム、ベーマイト、擬ベーマイト、アルミニウムアルコキシドなどが挙げられる。後述のケイ素原子原料として挙げたアルミノシリケートゲルは、アルミニウム原子原料ともなる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0148】
アルミニウム原子原料(前述の特定のアルミノシリケートゼオライトを含む。)の使用量は、反応前混合物の調製のしやすさや生産効率の点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するアルミニウム原子原料中のアルミニウム(Al)のモル比で通常0.02以上、好ましくは0.04以上、より好ましくは0.06以上、更に好ましくは0.08以上である。アルカリ金属原子原料の使用量の上限は特に限定されないが、反応前混合物中にアルミニウム原子原料を均一に溶解させる点から上記モル比で通常2以下、好ましくは1以下、より好ましくは0.4以下、更に好ましくは0.2以下である。
【0149】
アルミニウム原子原料として、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外のものを併用する場合、前述の特定のアルミノシリケートゼオライトを用いることによる本発明の効果を有効に得る上で、全アルミニウム原子原料の50重量%以上、特に60〜100重量%、とりわけ80〜100重量%を前述の特定のアルミノシリケートゼオライトとすることが好ましい。
【0150】
<ケイ素原子原料>
本発明において、前述の特定のアルミノシリケートゼオライト以外に他のケイ素原子原料を添加して反応前混合物の組成を調整してもよい。アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料は、特に限定されず、公知の種々の物質を使用することができる。例えば、ヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、珪酸メチル、珪酸エチル、トリメチルエトキシシラン等のシリコンアルコキシド、テトラエチルオルトシリケート、アルミノシリケートゲルなどを用いることができる。好ましくはヒュームドシリカ、コロイダルシリカ、無定型シリカ、珪酸ナトリウム、ケイ酸メチル、ケイ酸エチル、シリコンアルコキシド、アルミノシリケートゲルである。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0151】
<アルカリ金属原子原料>
本発明で用いるアルカリ金属原子原料に含まれるアルカリ金属原子は、特に限定されず、ゼオライトの合成に使用される公知のものが使用できるが、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム及びセシウムからなる群から選ばれる少なくとも1種のアルカリ金属イオンを存在させて結晶化させることが好ましい。このうち好ましくはナトリウム又はカリウムであり、特に好ましくはナトリウムである。アルカリ金属原子原料がこれらのアルカリ金属原子を含むことにより、結晶化の進行が容易となり、また副生物(不純物結晶)が生成しにくくなる。
【0152】
アルカリ金属原子原料としては、上記のアルカリ金属原子の水酸化物、酸化物、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、塩化物、臭化物等の無機酸塩、酢酸塩、シュウ酸塩、クエン酸塩等の有機酸塩などを用いることができる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0153】
アルカリ金属原子原料は、その適当量を使用することにより、アルミニウムに後述の有機構造規定剤が好適な状態に配位しやすくなるため、結晶構造を作りやすくできる点から、本発明で添加する種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で0.1以上0.8以下となるように用いることが好ましい。このモル比は、より好ましくは0.13以上、更に好ましくは0.15以上、特に好ましくは0.18以上、とりわけ好ましくは0.2以上で、より好ましくは0.8以下、更に好ましくは0.7以下、特に好ましくは0.6以下、とりわけ好ましくは0.5以下である。
【0154】
<有機構造規定剤>
有機構造規定剤(「テンプレート」とも呼称される。以下有機構造規定剤を「SDA」と称す場合がある。)としては、4級アンモニウム塩、アミン、イミン等、好ましくは以下の(1)、或いは、以下の(2a)〜(2c)からなる群から選ばれた少なくとも1種類の化合物が、入手しやすく安価であり、製造コストダウンに好適である。これらの中でも、以下の(1)のうち、4級アルキルアンモニウム塩を用いる。
(1) 1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩
(2a) ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
(2b) アルキル基を有するアミン(アルキルアミン)
(2c) シクロアルキル基を有するアミン(シクロアルキルアミン)
【0155】
(1)1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩
1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩の分子量は通常300以下、好ましくは250以下、より好ましくは100以上200以下である。1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩としては、例えば、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリエチルメチルアンモニウムヒドロキシド等の4級アルキルアンモニウム塩が挙げられる。好ましくは工業的に入手しやすい点よりテトラエチルアンモニウムヒドロキシドである。1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0156】
(2a)ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の複素環は通常5〜7員環であって、好ましくは6員環である。複素環に含まれるヘテロ原子の個数は通常3個以下、好ましくは2個以下である。窒素原子以外のヘテロ原子は任意であるが、窒素原子に加えて酸素原子を含むものが好ましい。ヘテロ原子の位置は特に限定されないが、ヘテロ原子が隣り合わないものが好ましい。
【0157】
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物の分子量は、通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下で、通常30以上、好ましくは40以上、さらに好ましくは50以上である。
【0158】
ヘテロ原子として窒素原子を含む脂環式複素環化合物としては、モルホリン、N−メチルモルホリン、ピペリジン、ピペラジン、N,N’−ジメチルピペラジン、1,4−ジアザビシクロ(2,2,2)オクタン、N−メチルピペリジン、3−メチルピペリジン、キヌクリジン、ピロリジン、N−メチルピロリドン、ヘキサメチレンイミンなどが挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、モルホリン、ヘキサメチレンイミン、ピペリジンが好ましく、モルホリンが特に好ましい。
【0159】
(2b)アルキルアミン
アルキルアミンのアルキル基は、通常、鎖状アルキル基である。アルキルアミンの1分子中に含まれるアルキル基の数は特に限定されるものではないが、3個が好ましい。アルキルアミンのアルキル基は一部水酸基等の置換基を有していてもよい。アルキルアミンのアルキル基の炭素原子数は4以下が好ましく、1分子中の全アルキル基の炭素原子数の合計は5以上30以下がより好ましい。
【0160】
アルキルアミンの分子量は通常250以下、好ましくは200以下、さらに好ましくは150以下である。
【0161】
アルキルアミンとしては、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、N,N−ジエチルエタノールアミン、N,N−ジメチルエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、ジ−n−ブチルアミン、ネオペンチルアミン、ジ−n−ペンチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。これらのうち、ジ−n−プロピルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−イソプロピルアミン、トリエチルアミン、ジ−n−ブチルアミン、イソプロピルアミン、t−ブチルアミン、エチレンジアミン、ジ−イソプロピル−エチルアミン、N−メチル−n−ブチルアミンが好ましく、トリエチルアミンが特に好ましい。
【0162】
(2c)シクロアルキルアミン
シクロアルキルアミンとしては、アルキル基の炭素原子数が4以上10以下であるものが好ましく、中でもシクロヘキシルアミンが好ましい。シクロアルキルアミンは1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0163】
これらの有機構造規定剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよいが、本発明のAEI型ゼオライトの製造方法においては、上記有機構造規定剤のうち、少なくとも、1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アルキルアンモニウム塩、好ましくはテトラエチルアンモニウムヒドロキシドを用いる。
【0164】
有機構造規定剤の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常0.05以上、好ましくは0.1以上、より好ましくは0.15以上、更に好ましくは0.2以上である。有機構造規定剤の使用量は、コストダウンの効果を十分得るために、上記モル比で通常1以下、好ましくは0.8以下、より好ましくは0.6以下、更に好ましくは0.5以下である。
【0165】
<水>
水の使用量は、結晶の生成しやすさの観点から、種晶以外の原料混合物に含まれるケイ素(Si)に対するモル比で通常3以上、好ましくは5以上、より好ましくは8以上、更に好ましくは10以上である。水の使用量は、廃液処理にかかるコストダウンの効果を十分得るために、上記モル比で通常50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、更に好ましくは25以下である。
【0166】
<原料の混合(反応前混合物の調製)>
本発明の製造方法においては、以上述べた、アルミノシリケートゼオライト、必要に応じて用いられるアルミノシリケートゼオライト以外のアルミニウム原子原料及び/又はケイ素原子原料と、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、及び水を混合し得られた原料混合物に、種晶として所望するAEI型ゼオライトを十分に混合し、得られた反応前混合物を水熱合成する。
【0167】
原料の混合順序に特に限定はないが、好ましくはアルカリ溶液を調製した後にアルミノシリケートゼオライトを添加した方がより均一に原料が溶解する点から、水、有機構造規定剤、及びアルカリ金属原子原料を混合してアルカリ溶液を調製した後、ここへ必要に応じて用いられるケイ素原子原料及び/又はアルミニウム原子原料、アルミノシリケートゼオライト、AEI型ゼオライトの順番で添加して混合することが好ましい。
【0168】
本発明においては、上記のアルミノシリケートゼオライト、アルミニウム原子原料、ケイ素原子原料、アルカリ金属原子原料、有機構造規定剤、水及び種晶であるAEI型ゼオライト以外に、必要に応じて触媒や補助剤などの他の添加剤を任意の工程で添加混合して反応前混合物を調製してもよい。
【0169】
<熟成>
上記のようにして調製された反応前混合物は、調製後直ちに水熱合成してもよいが、高い結晶性を有するゼオライトを得るために、所定の温度条件下で一定時間熟成することが好ましい。特にスケールアップする場合は撹拌性が悪くなり原料の混合状態が不十分となる。そのため一定期間原料を撹拌しながら熟成させることにより、原料をより均一な状態に改善することが可能となる。熟成温度は通常100℃以下、好ましくは80℃以下、より好ましくは60℃以下である。熟成温度の下限は特に設けないが、通常0℃以上、好ましくは10℃以上である。熟成温度は熟成中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。熟成時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上で、通常30日以下、好ましくは10日以下、さらに好ましくは4日以下である。
【0170】
<水熱合成>
水熱合成は、上記のようにして調製された反応前混合物ないしはこれを熟成して得られる水性ゲルを耐圧容器に入れ、自己発生圧力下、又は結晶化を阻害しない程度の気体加圧
下で、撹拌下、又は、容器を回転ないしは揺動させながら、或いは静置状態で、所定温度を保持することにより行われる。
【0171】
水熱合成の際の反応温度は、通常120℃以上で、通常230℃以下、好ましくは220℃以下、より好ましくは200℃以下、更に好ましくは190℃以下である。反応時間は特に限定されないが、通常2時間以上、好ましくは3時間以上、より好ましくは5時間以上で、通常30日以下、好ましくは10日以下、より好ましくは7日、更に好ましくは5日以下である。反応温度は反応中一定でもよいし、段階的又は連続的に変化させてもよい。
【0172】
上記の条件で反応させることにより、所望するAEI型ゼオライトとは異なるタイプのゼオライトが生成し難くなり、所望のAEI型ゼオライトを収率よく得ることが可能となる。
【0173】
<AEI型ゼオライトの回収>
上記の水熱合成後、生成物であるAEI型ゼオライトを、水熱合成反応液より分離する。
【0174】
得られたゼオライト(以下、「SDA等含有ゼオライト」と称する。)は細孔内に有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を含有している。水熱合成反応液からのSDA等含有ゼオライトの分離方法は特に限定されないが、通常、濾過、デカンテーション、又は直接乾燥等による方法が挙げられる。
【0175】
水熱合成反応液から分離回収したSDA等含有ゼオライトは、製造時に使用した有機構造規定剤等を除去するために、必要に応じて水洗、乾燥した後焼成等を行って有機構造規定剤等を含有しないゼオライトを得ることができる。
【0176】
本発明のAEI型ゼオライトを触媒(触媒担体も含む)や吸着材等の用途で使用する場合、必要に応じてこれらを除去した後に使用に供する。
【0177】
SDA等含有ゼオライトから有機構造規定剤及びアルカリ金属の両方又はいずれか一方を除去する処理は、酸性溶液や有機構造規定剤分解成分を含んだ薬液を用いた液相処理、レジンなどを用いたイオン交換処理、熱分解処理を採用することができる。これらの処理を組合せて用いてもよい。通常、SDA等含有ゼオライトを空気又は酸素含有の不活性ガス、あるいは不活性ガス雰囲気下に300℃から1000℃の温度で焼成したり、エタノール水溶液などの有機溶剤により抽出したりする等の方法により、SDA等含有ゼオライトに含有される有機構造規定剤等を除去することができる。製造性の面で焼成による有機構造規定剤等の除去が好ましい。この場合の焼成温度は、好ましくは400℃以上、より好ましくは450℃以上、さらに好ましくは500℃以上で、好ましくは900℃以下、より好ましくは850℃以下、さらに好ましくは800℃以下である。不活性ガスとしては、窒素などを用いることができる。
【0178】
本発明の酸素8員環ゼオライトと同様に、本発明のAEI型ゼオライトを後述する用途の中でもSCR触媒として用いる場合には、優れた高温水蒸気耐久性を確保する観点から、本発明のAEI型ゼオライトのSi/Al比は、好ましくは2以上50以下、より好ましくは3以上40以下、更に好ましくは4以上35以下、とりわけ好ましくは4.5以上30以下である。
【0179】
本発明のAEI型ゼオライトの平均粒径は、特に限定されないが、触媒として用いた時のガス拡散性を高くするために、0.1〜10μmが好ましく、より好ましくは0.2〜8μm、更に好ましくは0.5〜5μmである。
【0180】
本発明のAEI型ゼオライトの比表面積は、特に限定されないが、細孔内表面に存在する活性点が多くなるから300〜1000m
2/gが好ましく、より好ましくは400〜800m
2/g、更に好ましくは500〜750m
2/gである。
【0181】
ゼオライトのイオン交換能について説明する。
イオン交換能は、アルカリ金属原子原料あるいはゼオライト骨格形成原子原料、有機構造規定剤、及び種晶ゼオライトに含まれるアルカリ原子由来のアルカリ金属部分を、水素(H型)やアンモニウム(NH
4型)で置き換えることによって得ることもできる。その方法は公知の技術を採用することができる。例えば、NH
4NO
3などアンモニウム塩あるいは塩酸などの酸で、通常、室温から100℃で処理後、水洗する方法などにより行うことができる。
【0182】
<AEI型ゼオライトの用途>
本発明のAEI型ゼオライトの用途としては特に制限はない。本発明のAEI型ゼオライトは、触媒、吸着材、分離材料などとして、好適に用いられる。前述の特許文献1にも記載があるように、特に自動車等の排ガス浄化用触媒等に好適に用いられる。またNOxの直接脱硝触媒、石化用触媒に用いてもよい。石化用触媒としては、例えばメタノールからオレフィンを合成する触媒、エチレンからプロピレンを合成する触媒として用いることができる。
【0183】
<排ガス処理用触媒>
本発明のAEI型ゼオライトを自動車排気浄化触媒等の排ガス処理用触媒として用いる場合、本発明のAEI型ゼオライトはそのままで用いてもよく、必要に応じて金属を含有させたAEI型ゼオライトを用いても良い。金属を含有させる方法として具体的には、含侵、液相または固相のイオン交換などがある。あるいは水熱合成前に金属を加える事により金属を含有したゼオライトを直接合成しても良い。金属を含有させたゼオライトにおける金属の存在状態としては、骨格構造に含まれる場合と、含まれない場合がある。
【0184】
本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒は、バインダーと混合し、造粒して用いたり、ハニカム状等の所定の形状に成形して用いたりすることができる。例えば、該触媒をシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーや、アルミナ繊維、ガラス繊維等の無機繊維と混合した後、造粒するかまたは押出法や圧縮法等によりハニカム状等の所定の形状に成形し、続いて焼成することにより、粒状の触媒やハニカム触媒、触媒成形品を得ることができる。
【0185】
本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒は、シートやハニカム等の基材に塗布して用いてもよい。例えば、本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒とシリカ、アルミナ、粘土鉱物等の無機バインダーとを混合し、スラリーを作製し、コージェライト等の無機物で作製された基材の表面に塗布し、焼成する方法が挙げられる。好ましくはこの際にハニカム形状の基材に塗布することにより、触媒が塗布されたハニカム状のハニカム触媒を得ることができる。
【0186】
ここでは排ガス処理用触媒を例にして説明しているため無機バインダーを用いているが、用途や使用条件によっては有機バインダーを用いてもよい。
【0187】
本発明のAEI型ゼオライトを含む本発明の触媒は、窒素酸化物を含む排ガスを接触させて窒素酸化物を浄化する自動車排気浄化触媒等のNOxの選択的還元触媒として有効である。
【0188】
本発明のAEI型ゼオライトにAl,Si以外の金属を含有ないし担持させて製造された排ガス処理用触媒も、NOxの選択的還元触媒として、特に有効である。排ガス処理用触媒として、AEI型ゼオライトに含有ないし担持させる金属元素としては遷移金属が好ましく、中でも、鉄、コバルト、パラジウム、イリジウム、白金、銅、銀、金、セリウム、ランタン、プラセオジウム、チタン、ジルコニウム等が挙げられる。AEI型ゼオライトに含有ないし担持させる金属元素は、更に好ましくは、鉄及び/又は銅である。AEI型ゼオライトに含有ないし担持させる金属は、2種以上の金属を組み合わせて用いてもよい。Al,Si以外の金属元素の含有量ないし担持量は、Al,Si以外の金属元素を含有ないし担持させてなるAEI型ゼオライト全量中、通常0.1重量%以上、好ましくは0.3重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上、特に好ましくは1.0重量%以上で、通常20重量%以下、好ましくは10重量%以下、より好ましくは8重量%以下である。
【0189】
該排ガスには窒素酸化物以外の成分が含まれていてもよく、例えば炭化水素、一酸化炭素、二酸化炭素、水素、窒素、酸素、硫黄酸化物、水が含まれていてもよい。また、炭化水素、アンモニア、尿素等の窒素含有化合物等の公知の還元剤を使用してもよい。
【0190】
具体的には、本発明の酸素8員環ゼオライトから得られた排ガス処理用触媒により、ディーゼル自動車、ガソリン自動車、定置発電・船舶・農業機械・建設機械・二輪車・航空機用の各種ディーゼルエンジン、ボイラー、ガスタービン等から排出される多種多様の排ガスに含まれる窒素酸化物を浄化することができる。
【0191】
本発明のAEI型ゼオライトは、窒素酸化物浄化用触媒用途以外に、例えば、本発明のAEI型ゼオライトを用いた窒素酸化物浄化用触媒を用いて窒素酸化物の浄化を行った後段の工程において、窒素酸化物浄化で消費されなかった余剰の還元剤(例えばアンモニア)を酸化する酸化触媒用途に用いることができる。本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒は酸化触媒として余剰の還元剤を酸化し、排ガス中の還元剤を減少させることができる。その場合、酸化触媒として還元剤を吸着させるためのゼオライト等の担体に白金族等の金属を担持した触媒を用いることができるが、本発明のAEI型ゼオライトを該担体として使用できる。また、本発明のAEI型ゼオライトは、窒素酸化物の選択的還元触媒として使用できる。例えば鉄及び/又は銅を担持した本発明のAEI型ゼオライトに、更に該白金族等の金属を担持した触媒を使用することができる。
【0192】
本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒は様々な排気浄化システムにおいて用いることができる。該システムとしては、本発明の触媒を含む選択還元型窒素酸化物浄化触媒を備えた排気浄化システムが例示できる。該排気浄化システムにおいて前記選択還元型窒素酸化物浄化触媒の下流にアンモニア酸化触媒が配置されていてもよい。
【0193】
本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒は様々な排気浄化方法において用いることができる。該排気浄化方法は、アンモニアを選択還元型窒素酸化物浄化触媒に吸着させ、吸着されたアンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程を含む排気浄化方法である。選択還元型窒素酸化物浄化触媒として本発明のAEIゼオライトを含む触媒を用いることが好ましい。更に、前記アンモニアを還元剤として窒素酸化物を選択還元する工程の下流に、余剰のアンモニアを酸化する工程を含んでいてもよい。
【0194】
前記アンモニアとしては、外部から排気浄化システム内に導入したアンモニアや、外部から排気浄化システム内に導入した尿素から生成したアンモニアを用いることができる。また、排気浄化システム内で排ガスからアンモニアを生成して用いることもできる。
【0195】
本発明のAEI型ゼオライトを含む触媒を使用する際の、触媒と排ガスの接触条件としては特に限定されるものではない。排ガスの空間速度は通常100/h以上、好ましくは1000/h以上であり、更に好ましくは5000/h以上であり、通常500000/h以下、好ましくは400000/h以下、更に好ましくは200000/h以下であり、触媒と排ガスの接触時の温度は通常100℃以上、より好ましくは125℃以上、更に好ましくは150℃以上、通常1000℃以下、好ましくは800℃以下、更に好ましくは600℃以下、特に好ましくは500℃以下である。
【実施例】
【0196】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り以下の実施例により何ら限定されるものではない。
【0197】
〔分析・評価〕
以下の実施例及び比較例において得られたゼオライトの分析及び性能評価は以下の方法により行った。
【0198】
[粉末XRDの測定]
<試料の調製>
めのう乳鉢を用いて人力で粉砕したゼオライト試料約100mgを同一形状のサンプルホルダーを用いて試料量が一定となるようにした。
【0199】
<装置仕様及び測定条件>
粉末XRD測定装置仕様及び測定条件は以下の通りである。
【0200】
【表1】
【0201】
[Cu含有量とゼオライト組成の分析]
標準試料であるゼオライト中のSiとAl含有量、及び含有された銅原子の元素分析は以下の通りとした。
【0202】
ゼオライト試料を塩酸水溶液で加熱溶解させた後、ICP分析によりケイ素原子、アルミニウム原子とCu原子の含有量(重量%)を求めた。そして、標準試料中の分析元素の蛍光X線強度と分析元素の原子濃度との検量線を作成した。この検量線により、蛍光X線分析法(XRF)でゼオライト試料中のケイ素原子、アルミニウム原子及び銅原子の含有量(重量%)を求めた。ICP分析は、株式会社堀場製作所製ULTIMA 2Cを用いて行った。XRFは、株式会社島津製作所製EDX−700を用いて行った。
【0203】
[触媒活性の評価(初期活性)]
調製した触媒試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した。整
粒した触媒試料1mlを常圧固定床流通式反応管に充填した。触媒層に下記表2の組成のガスを空間速度SV=200000/hで流通させながら、触媒層を加熱した。160℃、175℃、200℃、250℃、300℃、400℃、又は500℃の各温度において、出口NO濃度が一定となったとき、下記式で算出されるNO浄化率の値によって、触媒試料の窒素酸化物除去活性を評価した。
NO浄化率(%)
={(入口NO濃度)−(出口NO濃度)}/(入口NO濃度)
×100
【0204】
【表2】
【0205】
[触媒活性の評価(水熱耐久試験後)]
調製した触媒試料をプレス成形後、破砕して篩を通し、0.6〜1mmに整粒した後、以下の水蒸気処理による水熱耐久試験を行った。水熱耐久試験を行った触媒試料について、上記と同様に触媒活性(水熱耐久後)の評価を行った。
【0206】
<水熱耐久試験>
整粒したゼオライト試料を800℃、10体積%の水蒸気に、空間速度SV=3000/hの雰囲気下、5時間通じた。
【0207】
〔酸素8員環ゼオライトの合成〕
〔CHA型ゼオライトの合成〕
[実施例I−1]
9.083gの水と、有機構造規定剤(SDA)として8.415gの35重量%テトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)(セイケム社製)と、0.412gのNaOH(キシダ化学社製:97重量%)を混合したものに、アルミニウム原子原料として、Framework density:12.7T/1000Å
3のFAU型アルミノシリケートゼオライト(シリカ/アルミナモル比=7、日揮触媒化成社製 USY−7、以下「FAU型ゼオライト」と記載する。)0.871gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これにケイ素原子原料として日産化学工業社製コロイダルシリカ「スノーテックスO−40(シリカ濃度40重量%)5.758gを加え再度撹拌した。
さらに種晶として0.300gの未焼成品のCHA型ゼオライト(平均粒径=0.2μm、シリカ/アルミナモル比=15)を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0208】
FAU型ゼオライトのシリカ/アルミナ比は7であるため、種晶を添加する前の原料混合物中のアルミニウム原子原料は、原料混合物中のケイ素(Si)に対するモル比で0.033であり、有機構造規定剤のTEAOHのモル比は0.4であり、水のモル比は20であり、NaOHのモル比は0.2である。
種晶であるCHA型ゼオライトの添加量は、対SiO
2換算割合で10重量%である。
【0209】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で回転させながら(15r
pm)、3日間水熱合成を行った。
【0210】
水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定し、そのピーク位置を読み取った。結果を表3に示す。これにより、CHA型ゼオライトである酸素8員環ゼオライトを合成することができたことが確認された。XRF分析によるこのゼオライトのSi/Alモル比は10.7であった。
【0211】
【表3】
【0212】
[比較例I−1]
実施例I−1において、反応前混合物中のSi/Al比が同じになるように、FAU型ゼオライトを使用せずに、アモルファスのAl(OH)
3(Al
2O
3 53.5重量%、Aldrich社製)0.318gと、コロイダルシリカ(シリカ濃度:40重量%、スノーテックスO−40、日産化学工業社製)7.510gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに種晶として実施例I−1で用いたものと同じ未焼成品のCHA型ゼオライト0.300gを添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0213】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。
【0214】
水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥した後、得られたゼオライト粉のXRDを測定したところ、ピークは得られずアモルファスであることを確認した。
【0215】
以上から、本発明の製造方法において、d6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを使用しない場合、所望の酸素8員環ゼオライトが得られないことが分かった。
【0216】
[実施例I−2]
アルミニウム原子原料として、d6r構造を有するY型アルミノシリケートゼオライトである日輝触媒化学社製USY−15(シリカ/アルミナモル比=15)を1.672g、ケイ素原子原料として日産化学工業社製コロイダルシリカ「スノーテックスO−40(シリカ濃度40重量%)を3.775g、アルカリ金属原子原料として水酸化ナトリウム0.412g(キシダ化学社製:97重量%)、有機構造規定剤(SDA)としてテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)(セイケム社製:35重量%)8.415g、水10.285gを混合し、得られた原料混合物に、種晶として平均粒径0.2μm(SEMでの観察値)、シリカ/アルミナモル比=15のCHA型ゼオライト(未焼成品)を0.3g添加し、反応前混合物を得た。
【0217】
この反応前混合物を160℃で72時間、撹拌しつつ水熱合成を行った。
【0218】
得られたゼオライトの結晶形をXRDにて確認したところCHA型であった。また、XRFにてシリカ/アルミナモル比を測定したところ、18.9であった。
【0219】
重量で表した仕込み原料の量と収率を表4に示す。仕込み原料の量をSiO
2のモル比を1とした時のモル比で表したもの及び対SiO
2換算割合の種晶仕込み量(重量%)と、結果を表5に示す。表4中、各実施例の欄の上段が原料種、下段が仕込み量(g)である。以下においてシリカ/アルミナモル比をSARと記載する場合がある。
【0220】
[実施例I−3〜I−13]
各原料を表4、表5の様に変え、また実施例I−13は反応時間を24時間に変更した以外は、実施例I−2と同様にしてゼオライトの合成を行った。収率を表4に、結果を表5に示す。
実施例I−3で用いたCHA型ゼオライトの焼成品は、未焼成品のCHA型ゼオライトを600℃で焼成したものを用いた。実施例I−10でアルミニウム原子原料として用いたCHA型ゼオライトは、Y型ゼオライト(日揮触媒化成製 シリカ/アルミナ比5)を原料とし、常法にて合成し、シリカ/アルミナ比6となったものである。
【0221】
【表4】
【0222】
【表5】
【0223】
表4、5及び後掲の表7a,7b中の記号は表6に示すとおりの意味である。
【0224】
【表6】
【0225】
実施例I−5の結果から、本発明で用いるアルミノシリケートゼオライトのSARは30以下であることが好ましいことが分かった。また、実施例I−9の結果から、CHA型ゼオライトの製造においては、種晶の添加が必須ではないことが分かった。さらに、実施例I−10の結果から、本発明で用いるアルミノシリケートゼオライトとしては、FAU型ゼオライトが好ましいことが分かった。
【0226】
[比較例I−2〜I−5]
表7aに示す条件とする以外は実施例I−1と同様にしてゼオライトを製造した。ただし、比較例I−5のみは、水熱合成時間を48時間とした。表7bに、仕込み原料をSiO
2のモル比を1とした時のモル比で表したもの及び対SiO
2換算割合の種晶仕込み量(重量%)と結果を示す。水酸化アルミニウムアモルファスとしてはAldrich社製(アルミナ換算53.5重量%)のものを用いた。
【0227】
【表7】
【0228】
比較例I−2では、SDAとして本発明で用いる特定の4級アンモニウム塩を用いていないため、目的とする酸素8員環ゼオライトを合成することができなかった。
比較例I−3及び4では、SARの低い(例えば20以下)アルミノシリケートゼオライトを使用し、これ以外のケイ素原子原料を用いていないため、ANA型ゼオライトが生成し、目的とする酸素8員環ゼオライトを合成することができなかった。
比較例I−5は、従来の8員環ゼオライトの製造方法を示すものであるが、目的物を得るためには、水熱合成に48時間を要した。
【0229】
以上の結果から、SDAとして1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用い、かつSARの高い(例えば21以上)のアルミノシリケートゼオライトを使用すれば、CHA型のゼオライトを製造し得ることが分かった。中でも、SDAとして1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用い、かつ、SARの低い(例えば20以下)アルミノシリケートゼオライトとこれ以外のケイ素原子原料を用いることで、より廉価に目的とする8員環ゼオライトを製造できることが分かった。
【0230】
〔触媒活性の評価〕
実施例I−1で得られたCHA型ゼオライトを、ゼオライト中の有機物を除去するために、600℃の空気気流下で6時間焼成した。次に焼成したゼオライト中のNaイオンを除去するために、1MのNH
4NO
3水溶液に分散させ80℃で2時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライトを回収し、イオン交換水での洗浄を3回行った。得られたゼオライト粉を100℃で12時間乾燥して、NH
4型のゼオライトIIIAを得た。ゼオライトIIIAについてXRFにて分析した結果、99%以上のNaが除去されている事を確認した。
【0231】
1gのCu(OAc)
2・H
2O(キシダ化学製)を37gの水に溶解して、酢酸銅(II)水溶液を得た。ゼオライトIIIAをこの酢酸銅(II)水溶液中に分散させ、40℃で1.5時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライト(ゼオライトIIIB)を回収し、イオン交換水での洗浄を3回行った。その後、改めて1gのCu(OAc)
2・H
2O(キシダ化学製)を37gの水に溶解して酢酸銅(II)水溶液を調製し、ゼオライトIIIBを分散させ、80℃で2時間イオン交換を行った。濾過によりゼオライト(ゼオライトIIIC)を回収し、イオン交換水での洗浄を3回行った。得られたゼオライト粉を100℃で12時間乾燥した後、空気中にて450℃で1時間焼成することにより、Cu含有CHA型ゼオライトよりなる触媒1を得た。XRF分析による触媒1のCuの含有量は3.3重量%であった。
【0232】
触媒1の触媒活性の評価結果を表8及び
図1に示した。
【0233】
比較例I−5で得られたゼオライトを用いた以外は、上記の触媒1と同様の処理を行って、Cu含有CHA型ゼオライトよりなる触媒2を得た。触媒2の触媒活性の評価結果を表8及び
図2に示した。
【0234】
【表8】
【0235】
表8、
図1、
図2の結果から明らかなように、本発明の製造方法で得られたCHA型ゼオライトは、初期触媒活性に優れ、800℃、5時間の水熱耐久試験後にも、高い触媒活性を維持していることから、耐久性にも優れることが判る。
【0236】
〔AEI型ゼオライトの合成〕
[実施例II−1]
1.5gの水と、有機構造規定剤(SDA)として1.9gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)(セイケム社製)と、0.5gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、Framework density:12.7T/1000Å
3のFAU型ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=30、Zeolyst社製)1.9gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに0.4gの未焼成品のAEI型ゼオライト(平均粒径3μm、以下の実施例及び比較例でも同様のものを用いた。)を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0237】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、90℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、2日間熟成させた後、160℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。
【0238】
水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥してAEI型ゼオライトII−1を得た。
【0239】
[実施例II−2]
水の使用量を6.9gとしたこと以外は、実施例II−1と同様に反応前混合物の調製、熟成、水熱合成、回収を行って、AEI型ゼオライトII−2を得た。
【0240】
[実施例II−3]
10gの水と、有機構造規定剤(SDA)として3.8gのテトラエチルアンモニウムヒドロキシド(TEAOH)(セイケム社製)と、0.5gのNaOH(和光純薬製)と、0.8gのKOH(和光純薬製)を混合したものに、Framework density:12.7T/1000Å
3のFAU型ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=10、Zeolyst社製)4.2gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに0.2gの未焼成品のAEI型ゼオライト(平均粒径3μm、以下の実施例及び比較例でも同様のものを用いた。)を添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0241】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、160℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。
【0242】
水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥してAEI型ゼオライトII−3を得た。このゼオライトはXRD測定の結果、AEI型の典型的なピークである2θが9.6°、15.9°、21.0°、23.6°の位置にピークを有しており、AEI型ゼオライトであることがわかる。
【0243】
[比較例II−1]
有機構造規定剤(SDA)として5.1gのTEAOH(セイケム社製)と、0.2gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、アモルファスのAl(OH)
3(Al
2O
3 53.5重量%、Aldrich社製)0.5gとコロイダルシリカ(シリカ濃度:40重量%、スノーテックス40、日産化学工業社製)4.5g加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに0.4gの未焼成品のAEI型ゼオライトを添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0244】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、90℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、2日間熟成させた後、170℃のオーブン中で回転させながら(15rpm)、3日間水熱合成を行った。
【0245】
水熱合成反応後、反応液を冷却して、濾過により生成した結晶を回収した。回収した結晶を100℃で12時間乾燥してBEA型ゼオライトII−4を得た。
【0246】
[比較例II−2]
4.8gの水と、有機構造規定剤(SDA)として5.1gのTEAOH(セイケム社製)と、0.2gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、アモルファスのAl(OH)
3(Al
2O
3 53.5重量%、Aldrich社製)0.5gとコロイダルシリカ(シリカ濃度:40重量%、スノーテックス40、日産化学工業社製)4.5g加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに0.4gの未焼成品のAEI型ゼオライトを添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0247】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、比較例II−1と同様に熟成、水熱合成、回収を行ってBEA型ゼオライトII−5を得た。
【0248】
[比較例II−3]
5.4gの水と、0.5gのNaOH(和光純薬製)を混合したものに、Framework density:12.7T/1000Å
3のFAU型ゼオライト(シリカ/アルミナモル比=30、Zeolyst社製)1.9gを加えて撹拌し、溶解させて透明溶液とした。これに0.4gの未焼成品のAEI型ゼオライトを添加し、室温で2時間撹拌して反応前混合物を得た。
【0249】
この反応前混合物を耐圧容器に入れ、実施例II−1と同様に熟成、水熱合成、回収を行ってMOR型ゼオライトII−6を得た。
【0250】
上記の実施例II−1〜3及び比較例II−1〜3における原料混合物及び反応前混合物の仕込み組成、得られたゼオライトのタイプを表9にまとめて示す。
【0251】
表9中の各ゼオライトの仕込み組成の数値は、それぞれ以下のものを示す。
Al
2O
3、NaOH、SDA、H
2O:種晶以外の原料混合物に含まれるSiに対する各原料のモル比
種晶のAEI型ゼオライト:対SiO
2換算割合、即ち種晶以外の原料混合物に含まれるSiをすべてSiO
2に換算した量に対する種晶の割合(重量%)
【0252】
【表9】
【0253】
比較例II−1及びII−2では、d6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを用いていないため、SDAとして1分子中に炭素原子を5〜11個有する4級アンモニウム塩を用いても目的とするAEI型ゼオライトを製造することができなかった。
比較例II−3では、d6rを骨格中に含むアルミノシリケートゼオライトを用いたがSDAを用いていないため、目的とするAEI型のゼオライトを製造することができなかった。
【0254】
以上の結果より、特定のアルミノシリケートゼオライトと、該アルミノシリケートゼオライト以外のケイ素原子原料を用いることにより、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の廉価で工業的に入手し易い有機構造規定剤を用いて、酸素8員環ゼオライトを製造することができることが分かる。
また、特定のアルミノシリケートゼオライトと、種晶としてAEI型ゼオライトを所定の割合で用いることにより、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド等の廉価で工業的に入手し易い有機構造規定剤を用いて、AEI型ゼオライトを製造することができることが分かる。