(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特定のコイル部材の間の距離の利用に着目すると、それ以外の距離(一次側コイルの幅や二次側コイルの幅)については、非接触電力伝送回路の大型化を招く無駄な空間となる。上記非接触充電技術の適用分野によっては、非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置の小型化や高効率化を求められる場合があり、対応が困難となる。
【0008】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、一方側(電力を供給する側:一次側)から他方側(電力が供給される側:二次側)に非接触で電力を送ることができ、小型化及び高効率化を実現することが可能な非接触電力伝送回路を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、一方側から他方側に非接触で電力を送ることができ、小型化及び高効率化を図ることが可能な非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための請求項1にかかる本発明の非接触電力伝送回路は、一方側の一方コイルと前記一方コイルに並列又は直列に接続された一方コンデンサとで閉回路を形成して一方コイル部材とし、他方側の他方コイルと前記他方コイルに並列又は直列に接続された他方コンデンサとで閉回路を形成して他方コイル部材とする一方、中間コイルと前記中間コイルに並列に接続された中間コンデンサとで閉回路を形成して中間コイル部材とし、前記一方コイル部材と前記他方コイル部材との間に、複数の前記中間コイル部材を配置した非接触電力伝送回路であって、前記一方コイル及び前記他方コイルは、円盤状に巻回されたコイル本体と、前記コイル本体に並設された磁性体と、前記コイル本体及び前記磁性体の前記中間コイル部材とは反対側である外側に配置された金属磁気遮蔽板とからそれぞれ構成され、前記中間コイルは、円盤状に巻回されたコイル本体と、前記コイル本体に並設され、前記コイル本体を部分的に被覆する磁性体とから構成されることを特徴とする。
【0011】
請求項1にかかる本発明では、一方コイル及び他方コイルにおいて、コイル本体及び磁性体の中間コイル部材とは反対側である外側に金属磁気遮蔽板をそれぞれ配置したので、発生した磁界が各金属磁気遮蔽板の中間コイル部材とは反対側である外側に回り込まないようにすることができ、漏洩を防止することができる。
【0012】
また、中間コイルにおいて、コイル本体に並設され、コイル本体を部分的に被覆する磁性体を配置したので、コイル間の結合が小さくなり、無駄な空間を大幅に短縮することができると共に、自己インダクタンスが増加するため、コイル電流が減少しジュール損失が減少する。
【0013】
そして、請求項2にかかる本発明の非接触電力伝送回路は、請求項1に記載の非接触電力伝送回路において、前記中間コイルにおける前記磁性体は、複数の棒状又は扇型形状の磁性体からなり、前記複数の棒状又は扇型形状の磁性体は、放射状に配置されていることを特徴とする。
【0014】
請求項2にかかる本発明では、請求項1にかかる本発明と同様にして、無駄な空間の大幅な短縮と、自己インダクタンスの増加によるコイル電流の減少を実現することができると共に、ジュール損失が減少することで電源容量を必要最低限に抑えることができ、コスト性にも優れている。
【0015】
上記目的を達成するための請求項3にかかる本発明の非接触電力伝送装置は、請求項1又は請求項2に記載の非接触電力伝送回路と、直流電源が接続され、前記直流電源の直流出力電圧を交流電圧に変換すると共に、変換した前記交流電圧が前記他方コイルに印加されるように前記一方コイルが接続されてインバータとして駆動される一方電力変換装置と、前記他方コイルに接続され、前記他方コイルを介して印加される前記交流電圧を直流出力電圧に変換し、前記直流出力電圧を直流負荷に印加するコンバータとして駆動される他方電力変換装置とを備えたことを特徴とする。
【0016】
請求項3にかかる本発明では、コイル間の無駄な空間を大幅に短縮できると共に、自己インダクタンスの増加によりコイル電流が減少しジュール損失が減少した状態で、小型、小容量化したインバータ及びコンバータを介した電力伝送を行うことができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明では、一方側(電力を供給する側:一次側)から他方側(電力が供給される側:二次側)に非接触で電力を送ることができ、小型化及び高効率化を実現することが可能な非接触電力伝送回路を提供することが可能になる。
【0018】
また、本発明では、一方側から他方側に非接触で電力を送ることができ、小型化及び高効率化を実現することが可能な非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置とすることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1から
図3に基づいて本発明の非接触電力伝送回路、及び、非接触電力伝送装置の構成を説明する。
【0021】
図1には、本発明の一実施形態にかかる非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置の全体の概略を説明する概略系統、
図2には、非接触電力伝送回路を構成する一方コイル部材、他方コイル部材、及び中間コイル部材の配置の状況を示してある。また、
図3には、一方コイル部材及び中間コイル部材の各構成要素の配置の状況を示してある。尚、
図3では、説明の便宜上、厚さ方向に切断して半円盤状にした各部材を示しているが、実際の各部材は円盤状である。また、説明では各部材の形状は円盤状としたが、これに限らず、例えば正方形にしてもよい。
【0022】
図1に示すように、非接触電力伝送装置1は、一方コイル部材2を備えた一方側(電力を供給する側:一次側)の設備(電源装置)である一次側設備3と、他方コイル部材5を備えた他方側(電力が供給される側:二次側)の設備である二次側設備6とを備えている。
【0023】
二次側設備6の例としては、例えば、電気自動車に対する充電装置に適用されて実施される。
【0024】
図2(a)に示すように、一方コイル部材2は、一方コイル4と一方コイル4に並列に接続された一方コンデンサ8とで閉回路が形成されて構成されており、他方コイル部材5は、他方コイル7と他方コイル7に並列に接続された他方コンデンサ9とで閉回路が形成されて構成されている。或いは、
図2(b)に示すように、一方コイル部材2は、一方コイル4と一方コイル4に直列に接続された一方コンデンサ8とで閉回路が形成され、他方コイル部材5は、他方コイル7と他方コイル7に直列に接続された他方コンデンサ9とで閉回路が形成されてもよい。
【0025】
図1に示すように、一次側設備3には直流電源11が備えられ、直流電源11には一方電力変換装置としてのインバータ12が接続され、インバータ12には一方コイル部材2の一方コイル4が接続されている。インバータ12は、直流電源11の直流出力電圧を交流電圧に変換し、一方コイル4を介して変換した交流電圧が他方コイル7に印加されるように駆動される。
【0026】
二次側設備6には負荷15(直流負荷:例えば、車載バッテリ)が備えられ、負荷15には他方電力変換装置としての整流器16が接続され、整流器16は他方コイル部材5の他方コイル7に接続されている。整流器16は、他方コイル7を介して印加される交流電圧を直流出力電圧に変換し、直流出力電圧を負荷15に印加するコンバータとして駆動される。
【0027】
図1及び
図2に示すように、一方コイル部材2と他方コイル部材5の間には、中間コイル部材21が2つ配置されている。中間コイル部材21は、中間コイル22と中間コイル22に並列に接続された中間コンデンサ23とで閉回路が形成されて構成されている。非接触電力伝送装置1には、複数の中間コイル部材21が配置されていれば数は問わないが、少なくとも2つ配置されていることが好ましく、或いは3つ以上配置されていてもよい。そして、隣接するコイル部材同士(コイル同士)が共振回路を構成している。
【0028】
本実施形態では、一方コイル部材2と他方コイル部材5の間に中間コイル部材21を配置したので、磁気共鳴方式において、中間コイル部材21(中間コイル22)を介して一方コイル部材2から他方コイル部材5に向けてコイル電流を確保することができる。
【0029】
次に、
図1及び
図3を参照して、各コイルの構成について詳細に説明する。
図1及び
図3(a)に示すように、一方コイル4は、円盤状に巻回されたコイル本体41と、コイル本体41に並設された円盤状の磁性体42と、コイル本体41及び磁性体42の中間コイル部材21とは反対側である外側に配置された金属磁気遮蔽板43とから構成されている。コイル本体41から発生する磁界が金属磁気遮蔽板43に到達すると、金属磁気遮蔽板43表面に渦電流が生じて損失が発生する。本実施形態では、コイル本体41と金属磁気遮蔽板43との間に磁性体42を挿入することで、渦電流損失を緩和させると共に、コイル本体41の自己インダクタンスを増加させることで、コイル電流が減少し、ジュール損失を減少させることができる。
【0030】
一方、他方コイル7は、円盤状に巻回されたコイル本体71と、コイル本体71に並設された円盤状の磁性体72と、コイル本体71及び磁性体72の中間コイル部材21とは反対側である外側に配置された金属磁気遮蔽板73とから構成されている。尚、一方コイル4と他方コイル7の構成及び材質は同一であるので、他方コイル7の各部材の説明は適宜省略する。
【0031】
本実施形態では、コイル本体41,71及び磁性体42,72の中間コイル部材21とは反対側である外側に金属磁気遮蔽板43,73を配置したので、発生した磁界が金属磁気遮蔽板43,73の中間コイル部材21とは反対側である外側に回り込まないようにすることで、漏洩を防止することができる。
【0032】
コイル本体41,71は、例えば外径が3mmのリッツ線(複数のエナメル素線を束ねてねじり、その素線束を束ねて更にねじった構造で複合撚りRopeLayとも呼ばれる)を直径r(
図2参照)が20cmの円盤状になるように27回巻回した。また、磁性体42,72は、コイル本体41,71の直径rよりも大きな直径を有する円板であり、フェライト等の磁性体材料からなる。更に、金属磁気遮蔽板43,73は、磁性体42,72の直径よりも大きな直径を有する円板であり、磁気遮蔽効果を有するアルミ等の金属材料からなる。ただし、必要に応じてコイル本体41,71、磁性体42,72及び金属磁気遮蔽板43,73の構成及び材質は適宜変更され得る。
【0033】
一方、
図1及び
図3(b)に示すように、中間コイル22は、一方コイル4に配置されたコイル本体41と同様の構成及び材質であるコイル本体221と、コイル本体221に並設され、コイル本体221を部分的に覆う磁性体222とから構成される。磁性体222の材質は、一方コイル4に配置された磁性体42と同様であるが、磁性体222の構成は異なる。即ち、磁性体222は、例えば、複数(ここでは8本)の棒状の磁性体(棒状磁性体)224からなり、これらの棒状磁性体224は、放射状に配置され、コイル本体221を部分的に覆うことが好ましい。コイル本体221の全体に対する磁性体222の被覆率は、中間コイル22と一方コイル4との距離S
1(
図2参照)を接近させるに従って大きくする必要がある。例えば、上述の仕様であれば、距離S
1が7cmの場合には、被覆率は0%でよいが、距離S
1が3cmとなるように両者を接近させると、被覆率を25%とすることが必要となる。各棒状磁性体224として、長手方向の幅が10cm、短手方向の幅が1cm及び厚さが3mmの矩形状の板を8本用いた場合には、磁性体222の被覆率は、下記式(1)に示す通り概ね25%となる。
100×(8×10×1)/(π×10
2)≒25 ・・・(1)
【0034】
本実施形態では、8本の棒状磁性体224からなる磁性体222を、コイル本体221の厚さ方向に対する面に放射状に配置したので、無駄な空間を大幅に短縮することができると共に、自己インダクタンスが増加するため、コイル電流が減少しジュール損失を減少させることができる。また、インバータ12や直流電源11の容量を必要最低限に抑えることができ、コスト性にも優れている。尚、本実施形態では、8本の棒状磁性体224からなる磁性体222を用いたが、磁性体222は、複数の扇型形状の磁性体から構成されてもよい。
【0035】
図4には、上述した非接触電力伝送回路の等価回路を示しており、(a)には一方コイル及び他方コイルに接続された各コンデンサを並列に配置した等価回路、(b)には一方コイル及び他方コイルに接続された各コンデンサを直列に配置した等価回路を示している。本実施形態では、各コンデンサC
0,C
3の配置は、上記の通り並列でも直列でも構わない。
図4に示した通り、直流電源11から負荷15に電力を伝送する回路において、伝送側(一次側)から順に各コイル(一方コイル4、中間コイル22、中間コイル22、他方コイル7)の自己インダクタンスをL
0,L
1,L
2,L
3とし、各コイルの巻線抵抗をr
0,r
1,r
2,r
3とし、共振コンデンサをC
0,C
1,C
2,C
3としている。
【0036】
また、一方コイル4と一方コイル4に隣接する中間コイル22との間の結合係数をk
01、中間コイル22同士の間の結合係数をk
12、他方コイル7に隣接する中間コイル22と他方コイル7との間の結合係数をk
23、一方コイル4と他方コイル7に隣接する中間コイル22との間の結合係数をk
02、一方コイル4に隣接する中間コイル22と他方コイル7との間の結合係数をk
13、一方コイル4と他方コイル7との間の結合係数をk
03としている。本実施形態では、上述した通りに各コイルが配置されることにより、結合係数k
01,k
12,及びk
23の比率が概ね2:1:2となるが、これに限定されない。全体として電力が伝送できる範囲であれば、結合係数k
01,k
12,及びk
23の比率が2:1:2から多少前後してもよい。
【0037】
直流電源11から見た入力インピーダンスと電力の伝送効率は、コイルにかかる電圧、コイルに流れる電流との関係に基づき与えられ、相互インダクタンスは、結合係数、及び、自己インダクタンスを用いて導き出すことができる。そして、各コイルの損失は、電流の値、及び、コイルの巻線抵抗に基づく発熱量により導き出すことができる。
【0038】
本実施形態では、各コイルが上述した通りの構造を有することにより、
図2に示すように、一方コイル部材2と中間コイル部材21の間の距離S
1は3cm、中間コイル部材21の間の距離S
2は10cm、中間コイル部材21と他方コイル部材5の間の距離S
3は3cmにそれぞれ設定される。ただし、各コイル間の距離S
1,S
2及びS
3は、上記値に限定されることはなく、各コイルの配置などに応じて適宜変更され得る。
【0039】
上記構成の非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置1では、直流電源11からの直流出力電圧が、インバータ12により交流電圧に変換され、変換された交流電圧が一方コイル4を介して中間コイル22を介して他方コイル7に印加される。他方コイル7に印加された交流電圧が整流器16により直流出力電圧に変換され、直流出力電圧が負荷15に印加される。これにより、直流電源11からの電力が磁気共鳴方式によって非接触で負荷15に供給される。
【0040】
上述した非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置1は、中間コイル22において、コイル本体221に並設され、コイル本体221を部分的に被覆する磁性体222を配置したので、無駄な空間を大幅に短縮しても、結合係数が過大とならないよう適切な値に維持することができると共に、自己インダクタンスの増加によりコイル電流が減少してジュール損失も減少した状態となることから、小容量化したインバータ及びコンバータを介した電力伝送を行うことができる。
【0041】
これにより、小型化及び高効率化を実現することが可能な非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置1とすることが可能になる。
【0042】
また、上述した非接触電力伝送装置1は、電気自動車等、電力を要する車両に対する給電に適用することができる。
【0043】
尚、上述した実施形態における非接触電力伝送回路は、直流電源11から負荷15に一方向で給電を行う例を挙げて説明したが、電力変換装置(インバータ12、整流器16)の回路を適宜変更することにより、双方向で電力を伝送する装置とすることができる。
【実施例】
【0044】
次に、以下の実施例及び比較例を参照して、本発明を更に詳細に説明する。
【0045】
(実施例1)
実施例1では、上述した非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置1を用いて、周波数に対する電流及び電力伝送効率を求めた。
図5には、実施例1で用いた非接触電力伝送回路の構成について、各コイルの配置の状況を示した。また、
図6には、周波数に対する電流及び電力伝送効率を求めた結果を示した。尚、ここでいう電力伝送効率とは、詳細は後述するが、1kWを出力するための効率である。
【0046】
図5に示した通り、実施例1で用いた非接触電力伝送回路では、一方コイル4と中間コイル22の距離S
1を3cm、中間コイル22同士の距離S
2を10cm、中間コイル22と他方コイル7の距離S
3を3cmとし、各コイルに配置されているコイル本体41、コイル本体221、コイル本体221及びコイル本体71の直径rをそれぞれ20cmとした。また、一次側設備3の出力ピーク電圧Vpは±200V及び出力電力Pは1kW、二次側設備6の負荷抵抗Rは20Ωであった。
【0047】
上述した通り、直流電源11から見た入力インピーダンスと電力の伝送効率は、コイルにかかる電圧、コイルの流れる電流との関係に基づき与えられ、相互インダクタンスは、結合係数、及び、自己インダクタンスを用いて導き出すことができる。そして、各コイルの損失は、電流の値、及び、コイルの巻線抵抗に基づく発熱量により導き出すことができる。導き出した各パラメータを下記表1に示した。また、下記表2には、各コイルの配置により設定された各コイル間の結合係数を示した。実施例1では、一方コイル4と一方コイル4に隣接する中間コイル22との間の結合係数をk
01、中間コイル22同士の間の結合係数をk
12、他方コイル7に隣接する中間コイル22と他方コイル7との間の結合係数をk
23、一方コイル4と他方コイル7に隣接する中間コイル22との間の結合係数をk
02、一方コイル4に隣接する中間コイル22と他方コイル7との間の結合係数をk
13、一方コイル4と他方コイル7との間の結合係数をk
03とした。
【0048】
【表1】
【0049】
【表2】
【0050】
図6に示した通り、コイルの最大効率となる周波数は81190Hzであり、一方コイル4のコイル電流(入力電流)は7.60Aであり、一方コイル4と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は11.35Aであり、他方コイル7と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は12.21Aであり、他方コイル7のコイル電流(出力電流)は7.09Aであった。また、コイルの最大効率は91.8%であった。表2に示した通り、各コイル間の結合係数k
01、結合係数k
12及び結合係数k
23の比率をおよそ2:1:2にできた。
【0051】
(比較例1)
比較例1では、2つの中間コイル22を配置せずに、一方コイル4と他方コイル7の距離を10cmにしたこと以外は実施例1で用いた非接触電力伝送回路と同様の回路を用いた。
図7には、周波数に対する電流及び電力伝送効率を求めた結果を示し、導き出した各パラメータ及び各コイル間の結合係数を下記表3に示した。
【0052】
【表3】
【0053】
図7に示した通り、コイルの最大効率となる周波数は87210Hzであり、一方コイル4のコイル電流(入力電流)は22.14A(過電流:20A以上)であり、他方コイル7のコイル電流(出力電流)は7.09Aであった。また、コイルの最大効率は88.2%であった。
【0054】
(比較例2)
比較例2では、2つの中間コイル22に磁性体222をそれぞれ配置せずに、一方コイル4と中間コイル22の距離及び他方コイル7と中間コイル22の距離をそれぞれ7cmにしたこと以外は実施例1で用いた非接触電力伝送回路と同様の回路を用いた。
図8には、周波数に対する電流及び電力伝送効率を求めた結果を示し、導き出した各パラメータを下記表4に、各コイル間の結合係数を下記表5に示した。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】
図8に示した通り、コイルの最大効率となる周波数は82180Hzであり、一方コイル4のコイル電流(入力電流)は7.27Aであり、一方コイル4と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は16.53Aであり、他方コイル7と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は14.77Aであり、他方コイル7のコイル電流(出力電流)は7.10Aであった。また、コイルの最大効率は88.6%であった。表5に示した通り、磁性体222を用いない替りに、距離を3cmから7cmに離すことで、各コイル間の結合係数k
01、結合係数k
12及び結合係数k
23の比率をおよそ2:1:2にできた。
【0058】
(比較例3)
比較例3では、2つの中間コイル22におけるコイル本体221の一方の側の全面に磁性体222(形状は磁性体42と同一)をそれぞれ配置し、一方コイル4と中間コイル22の距離及び他方コイル7と中間コイル22の距離をそれぞれ1cmにしたこと以外は実施例1で用いた非接触電力伝送回路と同様の回路を用いた。
図9には、周波数に対する電流及び電力伝送効率を求めた結果を示し、導き出した各パラメータを下記表6に、各コイル間の結合係数を下記表7に示した。
【0059】
【表6】
【0060】
【表7】
【0061】
図9に示した通り、コイルの最大効率となる周波数は81960Hzであり、一方コイル4のコイル電流(入力電流)は19.93Aであり、一方コイル4と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は20.79A(過電流:20A以上)であり、他方コイル7と隣接する中間コイル22のコイル電流(中間共振電流)は28.95A(過電流:20A以上)であり、他方コイル7のコイル電流(出力電流)は7.08Aであった。また、コイルの最大効率は69.0%であった。更に、表7に示した通り、たとえ距離を3cmから1cmに接近させたとしても、全面の磁性体222(形状は磁性体42と同一)が各コイル間の結合を妨げるため、各コイル間の結合係数k
01、結合係数k
12及び結合係数k
23の比率を2:1:2にできなかった。
【0062】
実施例1及び比較例1を比較すると、実施例1では、一方コイル4と他方コイル7との間に2つの中間コイル22を配置することで、一方コイル4の過電流(過熱)が解消された。
【0063】
比較例1及び比較例2を比較すると、比較例2では、一方コイル4と他方コイル7との間に2つの中間コイル22を配置してコイルの枚数が増えることで、ジュール損失(コイル電流)の減少と分散を促進させることができた。これにより、巻線を軽量化(断面積の減少)して回路の小型化を実現できる。更に、実施例1及び比較例2を比較すると、実施例1では、中間コイル22に磁性体222を配置したことで、コイル間の間隔が小さくなり、回路の小型化を実現することができる。また、各中間コイル22の自己インダクタンスがそれぞれ増加(概ね30%)したので、更に各コイル電流が減少し、また、コイルの最大効率は91.8%であり、電力伝送効率が向上したことが分かった。これにより、回路の高効率化を実現することができる。
【0064】
実施例1及び比較例3を比較すると、実施例1では、中間コイル22に磁性体222を部分的に配置したことで、各コイル間の結合係数について、結合係数k
01、結合係数k
12及び結合係数k
23の比率をおよそ2:1:2にすることができ、コイルの最大効率を増加させることができた。これにより、回路の高効率化を実現することができる。
【0065】
図10から
図13に基づいて参考例に関して説明する。
【0066】
図10には参考例としての非接触電力伝送回路を備えた非接触電力伝送装置の全体の概略を説明する概略系統を示してある。尚、
図1に示した実施例と同一部材には同一符号を付して重複する説明は省略してある。
【0067】
図10に示した非接触電力伝送装置51は、
図1に示した中間コイル部材21に代えて、中間空芯コイル52を間隔H(例えば、10cm)で配したものである。その他の構成は、
図1に示した非接触電力伝送装置1と同じである。中間空芯コイル52としては、例えば、外径が20cm、巻線には素線径0.12mmのエナメル銅線を228本より合わせたリッツ線を用いた。巻数については、リッツ線の外径3.15mmより、27巻となった。
【0068】
図11には、
図10に示した参考例の非接触電力伝送装置と、
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置の基本波電流に対する比率(dB)の状況を示してある。
【0069】
図11中、黒い棒線が第3高調波電流、斜線の傍線が第5高調波電流、白抜きの棒線が第7高調波電流の基本波電流に対する比率である。図に示したように、第3高調波電流、第5高調波電流、第7高調波電流は、参考例の非接触電力伝送装置に対して、実施例の非接触電力伝送装置のほうが比率は大きくなっている。つまり、放射ノイズ源となる高調波電流を抑制することができることになる。
【0070】
このため、
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置を用いると、中間コイル部材21がノイズフィルタとして機能することで、他の機器の動作を阻害する原因となる放射ノイズを抑制でき、電磁両立性(EMC)許容値をクリアすることが容易になる。例えば、電気自動車の充電装置として用いた場合、住宅地等、電磁両立性(EMC)許容値が厳しい地域で充電装置の設備を構築することが可能になる。
【0071】
図12には、
図10に示した参考例の非接触電力伝送装置51と、
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置1の、周波数(kHz)とコイルの効率(%)の関係を示してある。
【0072】
図12中□印が
図10に示した参考例の非接触電力伝送装置51の周波数(kHz)に対するコイルの効率(%)の関係であり、
図12中△印が
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置1の周波数(kHz)に対するコイルの効率(%)の関係である。図に示したように、実施例の非接触電力伝送装置1では、参考例の非接触電力伝送装置51に比べて、高周波数側にシフトしたものの、高いコイルの効率を維持することができることがわかる。
【0073】
このため、実施例の非接触電力伝送装置1では、中間コンデンサ23の微調整により、例えば、電気自動車の充電装置として用いる場合の周波数の領域で、高い効率を維持して適用することが可能になる。
【0074】
図13には、
図10に示した参考例の非接触電力伝送装置51と、
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置1の、DC負荷電圧(V)とコイルの効率(%)の関係を示してある。
【0075】
図13中□印が
図10に示した参考例の非接触電力伝送装置51のDC負荷電圧(V)に対するコイルの効率(%)の関係であり、
図13中△印が
図1に示した実施例の非接触電力伝送装置1のDC負荷電圧(V)に対するコイルの効率(%)の関係である。図に示したように、実施例の非接触電力伝送装置1では、参考例の非接触電力伝送装置51に比べて、DC負荷電圧(V)の最適値(効率がピークとなる電圧値)が高電圧側にシフトしていることがわかる。
【0076】
このため、実施例の非接触電力伝送装置1では、インダクタンスを減らし軽量化を図ることが可能になる。