(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記フォーカスリングを吸着する工程は、前記複数の電極に互いに異なる極性の電圧を印加することにより、前記複数の電極間に電位差を生じさせる請求項2又は3に記載のプラズマ処理方法。
前記基板を搬出する工程の後、前記空間に熱媒体が供給された状態で前記処理容器をクリーニングする工程をさらに備える請求項2〜5のいずれか一つに記載のプラズマ処理方法。
前記制御部は、前記プラズマが生成される期間以外の期間において、前記空間に前記熱媒体が供給されない状態で、前記フォーカスリングを吸着する請求項7に記載のプラズマ処理装置。
前記プラズマが生成される期間は、前記基板をプラズマ処理するための期間と、前記基板をプラズマ処理するための期間の後に前記処理容器をクリーニングするための期間とを含む請求項7〜9のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
前記制御部は、前記プラズマが生成される期間以外の期間において、前記空間に前記熱媒体が供給されない状態で、前記フォーカスリングを吸着する請求項13に記載のプラズマ処理装置。
前記制御部は、前記複数の電極に互いに異なる極性の電圧を印加することにより、前記複数の電極間に電位差を生じさせる請求項13又は14に記載のプラズマ処理装置。
前記プラズマが生成される期間は、前記基板をプラズマ処理するための期間と、前記基板をプラズマ処理するための期間の後に前記処理容器をクリーニングするための期間とを含む請求項13〜15のいずれか一つに記載のプラズマ処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、基板が載置される静電チャックと、基板が載置される領域を囲んで静電チャック上に設けられたフォーカスリングとで挟まれる空間に熱媒体を供給する供給部と、静電チャック内部の、フォーカスリングに対応する領域に設けられ、静電チャックにフォーカスリングを吸着するための電圧が印加される複数の電極とを備えた基板処理装置を用いた静電吸着方法であって、基板をプラズマ処理するためのプラズマが生成される期間であるプラズマ処理期間において供給部によって空間に熱媒体を供給し、プラズマ処理期間以外の他の期間において、空間に熱媒体が供給されない状態で、フォーカスリングを吸着する複数の電極に互いに異なる電圧を印加する。
【0013】
また、開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、複数の電極のうち、フォーカスリングの内周側に配置された電極と、フォーカスリングの外周側に配置された電極との間に電位差が生じるように、電圧を印加する。
【0014】
また、開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、複数の電極のうち、フォーカスリングの内周側に配置された電極に、所定の極性を有する電圧を印加し、フォーカスリングの外周側に配置された電極に、所定の極性とは反対の極性を有する電圧を印加する。
【0015】
また、開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、プラズマ処理期間以外の他の期間として、処理容器内へ基板が搬入されている期間及び処理容器外へ基板が搬出されている期間において、電位差が生じるように、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する。
【0016】
複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、プラズマを生成する高周波電力として0〜2000Wを印加する弱プラズマ処理条件下で、電位差が生じるように、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する。
【0017】
また、開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、熱媒体を供給する処理は、処理容器外へ基板が搬出されてから、処理容器内へ次の基板が搬入されるまでの期間であって、処理容器内をクリーニングするためのプラズマが生成される期間であるクリーニング期間において、供給部によって空間に熱媒体をさらに供給し、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、プラズマ処理期間以外の他の期間として、クリーニング期間において、空間に熱媒体が供給された状態で、電位差が生じるように、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する。
【0018】
また、開示する静電吸着方法は、1つの実施形態において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理は、プラズマ処理期間以外の他の期間として、基板処理装置の稼働が停止されている期間において、電位差が生じるように、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する。
【0019】
また、開示する基板処理装置は、1つの実施形態において、基板が載置される静電チャックと、基板が載置される領域を囲んで静電チャック上に設けられたフォーカスリングとで挟まれる空間に熱媒体を供給する供給部と、静電チャック内部の、フォーカスリングに対応する領域に設けられ、静電チャックにフォーカスリングを吸着するための電圧が印加される複数の電極と、基板をプラズマ処理するためのプラズマが生成される期間であるプラズマ処理期間において供給部によって空間に熱媒体を供給し、プラズマ処理期間以外の他の期間において、空間に熱媒体が供給されない状態で、フォーカスリングを吸着する複数の電極に互いに異なる電圧を印加する処理を実行する制御部とを備えた。
【0020】
以下、図面を参照して種々の実施形態について詳細に説明する。なお、各図面において同一又は相当の部分に対しては同一の符号を附すこととする。
【0021】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の概略構成を示す断面図である。なお、本実施形態では、本願の開示する基板処理装置がRIE(Reactive Ion Etching)型のプラズマ処理装置である例について説明するが、基板処理装置は、表面波プラズマを利用したプラズマエッチング装置やプラズマCVD装置等に適用されてもよい。
【0022】
図1において、RIE型のプラズマ処理装置として構成されるプラズマ処理装置は、金属製、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼製の保安接地された円筒型の処理容器10を有し、該処理容器10内に、被処理体(基板)としてのウエハWを載置する円板状のサセプタ(下部電極)11が配設されている。このサセプタ11は、例えば、アルミニウムからなり、絶縁性の筒状保持部材12を介して処理容器10の底から垂直上方に延びる筒状支持部13に支持されている。
【0023】
処理容器10の側壁と筒状支持部13との間には排気路14が形成され、この排気路14の入口又は途中に環状のバッフル板15が配設されると共に、底部に排気口16が設けられ、該排気口16に排気管17を介して排気装置18が接続されている。ここで、排気装置18は、真空ポンプを有し、処理容器10内の処理空間を所定の真空度まで減圧する。また、排気管17は可変式バタフライバルブである自動圧力制御弁(automatic pressure control valve)(以下「APC」という)(不図示)を有し、該APCは自動的に処理容器10内の圧力制御を行う。さらに、処理容器10の側壁には、ウエハWの搬入出口19を開閉するゲートバルブ20が取り付けられている。
【0024】
サセプタ11には、プラズマ生成およびRIE用の高周波電源21が整合器22および給電棒23を介して電気的に接続されている。この高周波電源21は、所定の高周波、例えば、60MHzの高周波電力をサセプタ11に印加する。また、処理容器10の天井部には、後述する接地電位の上部電極としてのシャワーヘッド24が配設されている。これにより、高周波電源21からの高周波電圧がサセプタ11とシャワーヘッド24との間に印加される。
【0025】
サセプタ11の上面にはウエハWを静電吸着力で吸着する静電チャック25が配設されている。この静電チャック25は、ウエハWが載置される円板状の中心部25aと、環状の外周部25bとからなり、中心部25aは外周部25bに対して図中上方に突出している。外周部25bの上面には、中心部25aを環状に囲むフォーカスリング30が載置されている。また、中心部25aは、導電膜からなる電極板25cを一対の誘電膜の間に挟み込むことによって構成される。外周部25bは、導電膜からなる電極板25dを一対の誘電膜の間に挟み込むことによって構成される。電極板25cには直流電源26がスイッチ27を介して電気的に接続されている。電極板25dには直流電源28−1,28−2がスイッチ29−1,29−2を介して電気的に接続されている。そして、静電チャック25は、直流電源26から電極板25cに印加された電圧によりクーロン力等の静電力を発生させ、静電力により静電チャック25にウエハWを吸着保持する。また、静電チャック25は、直流電源28−1,28−2から電極板25dに印加された電圧によりクーロン力等の静電力を発生させ、静電力により静電チャック25にフォーカスリング30を吸着保持する。なお、電極板25dの設置態様についての詳細は、後述する。
【0026】
また、サセプタ11の内部には、例えば、円周方向に延在する環状の冷媒室31が設けられている。この冷媒室31には、チラーユニット32から配管33,34を介して所定温度の冷媒、例えば、冷却水が循環供給され、当該冷媒の温度によって静電チャック25上のウエハWの処理温度を制御する。
【0027】
また、静電チャック25には、ガス供給ライン36を介して伝熱ガス供給部35が接続されている。ガス供給ライン36は、静電チャック25の中心部25aに至るウエハ側ライン36aと、静電チャック25の外周部25bに至るフォーカスリング側ライン36bとに分岐されている。伝熱ガス供給部35は、ウエハ側ライン36aを用いて、静電チャック25の中心部25aと、ウエハWとで挟まれる空間に伝熱ガスを供給する。例えば、また、伝熱ガス供給部35は、フォーカスリング側ライン36bを用いて、静電チャック25の外周部25bと、フォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスを供給する。伝熱ガスとしては、熱伝導性を有するガス、例えば、Heガス等が好適に用いられる。伝熱ガスは、熱媒体の一例に相当し、伝熱ガス供給部35は、熱媒体を供給する供給部の一例に相当する。
【0028】
天井部のシャワーヘッド24は、多数のガス通気孔37aを有する下面の電極板37と、該電極板37を着脱可能に支持する電極支持体38とを有する。また、該電極支持体38の内部にバッファ室39が設けられ、このバッファ室39のガス導入口38aには処理ガス供給部40からのガス供給配管41が接続されている。また、処理容器10の周囲には、環状又は同心状に延びる磁石42が配置されている。
【0029】
このプラズマ処理装置の各構成要素、例えば、排気装置18、高周波電源21、静電チャック用のスイッチ27,29−1,29−2、直流電源26,28−1,28−2、チラーユニット32、伝熱ガス供給部35および処理ガス供給部40等は、制御部43に接続されている。制御部43は、プラズマ処理装置の各構成要素を制御する。
【0030】
制御部43は、図示しない中央処理装置(CPU)、及びメモリといった記憶装置を備え、記憶装置に記憶されたプログラム及び処理レシピを読み出して実行することで、プラズマ処理装置において所望の処理を実行する。例えば、制御部43は、フォーカスリング30を静電吸着するための静電吸着処理を行う。なお、制御部43によって実行される静電吸着処理の詳細は、後述する。
【0031】
このプラズマ処理装置の処理容器10内では、磁石42によって一方向に向かう水平磁界が形成されると共に、サセプタ11とシャワーヘッド24との間に印加された高周波電圧によって鉛直方向のRF電界が形成され、これにより、処理容器10内において処理ガスを介したマグネトロン放電が行われ、サセプタ11の表面近傍において処理ガスから高密度のプラズマが生成される。
【0032】
このプラズマ処理装置では、ドライエッチング処理の際、先ずゲートバルブ20を開状態にして加工対象のウエハWを処理容器10内に搬入し、静電チャック25の上に載置する。そして、処理ガス供給部40より処理ガス(例えば、所定の流量比率のC4F8ガス、O2ガス及びArガスから成る混合ガス)を所定の流量および流量比で処理容器10内に導入し、排気装置18等により処理容器10内の圧力を所定値にする。さらに、高周波電源21より高周波電力をサセプタ11に供給し、直流電源26より直流電圧を静電チャック25の電極板25cに印加して、ウエハWを静電チャック25上に吸着する。そして、シャワーヘッド24より吐出された処理ガスは上述したようにプラズマ化し、このプラズマで生成されるラジカルやイオンによってウエハWの表面がエッチングされる。
【0033】
このプラズマ処理装置では、サセプタ11に対して従来(一般に27MHz以下)よりも格段に高い周波数領域(50MHz以上)の高周波を印加することにより、処理ガスを好ましい解離状態まで解離させる。解離された処理ガスはプラズマとなるため、低圧の条件下でも高密度プラズマを生成できる。この高密度プラズマは低ダメージの酸化・窒化処理の実現を可能にし、半導体デバイスの高性能化、低消費電力化に大きく寄与する。すなわち、プラズマ中の高エネルギー粒子や、該高エネルギー粒子の衝突等によって処理室の内壁等から放出された金属原子によるウエハWの損傷や汚染等を防止できるため、高品位の絶縁膜形成が要求されるゲート形成工程へのプラズマ処理の適用が可能となり、それ故、本実施の形態に係るプラズマ処理装置はウエハWの加工微細化の進展によって発生するであろう技術的課題に対応することができる。
【0034】
次に、
図1に示した電極板25dの設置態様について説明する。
図2は、電極板25dの設置態様の一例を示す図である。
図2に示すように、電極板25dは、静電チャック25の外周部25bの内部の、フォーカスリング30に対応する領域に設けられている。電極板25dは、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2を有する。
【0035】
内周側電極板25d−1は、フォーカスリング30の内周側に環状に配置されている。内周側電極板25d−1は、スイッチ29−1を介して直流電源28−1に電気的に接続されている。内周側電極板25d−1には、直流電源28−1から、静電チャック25にフォーカスリング30を吸着するための正の電圧又は負の電圧が選択的に印加される。直流電源28−1から内周側電極板25d−1に印加される電圧が有する極性の切り換えは、制御部43によって行われる。
【0036】
外周側電極板25d−2は、フォーカスリング30の外周側に環状に配置されている。外周側電極板25d−2は、スイッチ29−2を介して直流電源28−2に電気的に接続されている。外周側電極板25d−2には、直流電源28−2から、静電チャック25にフォーカスリング30を吸着するための正の電圧又は負の電圧が選択的に印加される。直流電源28−2から外周側電極板25d−2に印加される電圧が有する極性の切り換えは、制御部43によって行われる。
【0037】
次に、第1の実施形態の制御部43によって実行される静電吸着処理について説明する。
図3は、第1の実施形態の静電吸着処理のタイムチャートの一例を示す図である。
【0038】
図3において、「WAF−HV(V)」は、静電チャック25の中心部25aにウエハWを吸着するための、電極板25cに印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「FR−A−HV(V)」は、静電チャック25の外周部25bにフォーカスリング30を吸着するための、内周側電極板25d−1に印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「FR−B−HV(V)」は、静電チャック25の外周部25bにフォーカスリング30を吸着するための、外周側電極板25d−2に印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「He供給」は、伝熱ガス供給部35から静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスとして供給されるHeガスの供給状態の変化を示すタイムチャートである。
【0039】
また、
図3において、「プラズマ処理期間」は、ウエハWをプラズマ処理するためのプラズマが形成される期間(以下「プラズマ処理期間」という)を示している。「搬入」は、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間を示している。「搬出」は、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間を示している。
【0040】
第1の実施形態の静電吸着処理では、制御部43は、プラズマ処理期間において、伝熱ガス供給部35から静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスを供給する。そして、制御部43は、プラズマ処理期間以外の他の期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスが供給されない状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。
【0041】
すなわち、制御部43は、
図3に示すように、プラズマ処理期間以外の他の期間として、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間において、伝熱ガス供給部35によって静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスを供給しない。そして、制御部43は、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスが供給されない状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。具体的には、制御部43は、直流電源28−1を用いて、内周側電極板25d−1に所定の極性を有する電圧を印加し、直流電源28−2を用いて、外周側電極板25d−2に所定の極性とは反対の極性を有する電圧を印加する。
図3の例では、制御部43は、内周側電極板25d−1に正の電圧である2500Vを印加し、かつ、外周側電極板25d−2に負の電圧である−2500Vを印加して、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差を生じさせる。これにより、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。その結果、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。
【0042】
なお、制御部43は、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間において、電極板25cへの電圧の印加を停止する。
【0043】
続いて、制御部43は、直流電源28−1を用いて、内周側電極板25d−1に正の電圧を印加し、直流電源28−2を用いて、外周側電極板25d−2に正の電圧を印加する。
図3の例では、制御部43は、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に正の電圧である2500Vを印加して、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2と、プラズマを通じて接地電位に設定されたフォーカスリング30との間に電位差を生じさせる。これにより、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2と、プラズマを通じて接地電位に設定されたフォーカスリング30との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。この後、プラズマ処理期間において、伝熱ガス供給部35によって静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスを供給する。処理容器10内へウエハWが搬入されている期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保されているので、プラズマ処理期間において、伝熱ガス供給部35から供給される伝熱ガスの漏洩が抑制される。
【0044】
なお、制御部43は、プラズマ処理期間において、電極板25cに電圧を印加して静電チャック25に静電力を発生させ、処理容器10内へ搬入されたウエハWを静電チャック25上に吸着する。
【0045】
続いて、制御部43は、プラズマ処理期間以外の他の期間として、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間において、伝熱ガス供給部35によって静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスを供給しない。そして、制御部43は、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスが供給されない状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。具体的には、制御部43は、直流電源28−1を用いて、内周側電極板25d−1に所定の極性を有する電圧を印加し、直流電源28−2を用いて、外周側電極板25d−2に所定の極性とは反対の極性を有する電圧を印加する。
図3の例では、制御部43は、内周側電極板25d−1に正の電圧である2500Vを印加し、かつ、外周側電極板25d−2に負の電圧である−2500Vを印加して、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差を生じさせる。これにより、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。その結果、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。
【0046】
なお、制御部43は、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間において、電極板25cへの電圧の印加を停止する。
【0047】
以上、第1の実施形態の基板処理装置では、プラズマ処理期間以外の他の期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスが供給されない状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。これにより、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。このため、プラズマ処理期間以外の他の期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。その結果、プラズマ処理期間において、フォーカスリング30と静電チャック25とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができる。
【0048】
図4は、第1の実施形態における静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量を比較した実験の結果の一例を示す図である。
図4において、縦軸は、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスとして供給されるHeガスのリーク量(sccm)を示し、横軸は、プラズマ処理期間において実行されるプラズマ処理プロセスに対応する実行回数を示している。なお、
図4の実験では、最初のプラズマ処理期間において1回目のプラズマ処理プロセスが実行された後、ウエハWの搬入出が実行され、次のプラズマ処理期間において、2回目のプラズマ処理プロセスが実行されるものとする。また、2回目のプラズマ処理プロセスと、1回目のプラズマ処理プロセスとは、同一の処理条件を用いるものとする。
【0049】
また、
図4の実験では、比較例1として、プラズマ処理期間以外の他の期間において、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いずに、プラズマ処理プロセスを実行した。また、実施例1として、プラズマ処理期間以外の他の期間において、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いて、プラズマ処理プロセスを実行した。
【0050】
図4に示すように、比較例1では、1回目のプラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量と比較して、2回目のプラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量が約5sccmだけ増大した。
【0051】
これに対して、実施例1では、1回目のプラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量と比較して、2回目のプラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量が約1sccmだけ増大した。すなわち、プラズマ処理期間以外の他の期間において、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いた実施例1では、フォーカスリング30と静電チャック25とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができた。
【0052】
(第2の実施形態)
上記第1の実施形態では、プラズマ処理期間以外の他の期間において複数の電極に互いに異なる電圧を印加し、プラズマ処理期間において静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスを供給する例を説明した。しかしながら、開示の技術はこれには限られない。例えば、プラズマ処理期間においても所定の位置に配置された複数の電極に互いに異なる電圧を印加し、フォーカスリング30を静電チャック25に吸着させることで伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができる。具体的には、処理容器10内をクリーニングするためのプラズマが生成される期間であるクリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスを供給する場合が想定される。この場合、クリーニング期間において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加してもよい。そこで、第2の実施形態では、クリーニング期間において、複数の電極に互いに異なる電圧を印加する例を説明する。なお、第2の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成は、第1の実施形態に係るプラズマ処理装置の構成と同様であるので、ここでは、その説明を省略する。
【0053】
図5は、第2の実施形態の静電吸着処理のタイムチャートの一例を示す図である。
【0054】
図5において、「WAF−HV(V)」は、静電チャック25の中心部25aにウエハWを吸着するための、電極板25cに印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「FR−A−HV(V)」は、静電チャック25の外周部25bにフォーカスリング30を吸着するための、内周側電極板25d−1に印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「FR−B−HV(V)」は、静電チャック25の外周部25bにフォーカスリング30を吸着するための、外周側電極板25d−2に印加される電圧の変化を示すタイムチャートである。また、「He供給」は、伝熱ガス供給部35から静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスとして供給されるHeガスの供給状態の変化を示すタイムチャートである。
【0055】
また、
図5において、「プラズマ処理期間」は、ウエハWをプラズマ処理するためのプラズマが形成される期間(以下「プラズマ処理期間」という)を示している。「搬入」は、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間を示している。「搬出」は、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間を示している。「WLDC」は、処理容器10外へウエハWが搬出されてから、処理容器10内へ次のウエハWが搬入されるまでの期間であって、処理容器10内をクリーニングするためのプラズマが生成される期間(以下「クリーニング期間」という)を示している。
【0056】
第2の実施形態の静電吸着処理は、以下に説明する点を除き、基本的には第1の実施形態の静電吸着処理と同様である。このため、以下の説明では、第1の実施形態の静電吸着処理と共通の処理の説明を省略する。
【0057】
すなわち、制御部43は、
図5に示すように、クリーニング期間において、伝熱ガス供給部35によって、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスをさらに供給する。そして、制御部43は、クリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれた空間に伝熱ガスが供給された状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。具体的には、制御部43は、直流電源28−1を用いて、内周側電極板25d−1に所定の極性を有する電圧を印加し、直流電源28−2を用いて、外周側電極板25d−2に所定の極性とは反対の極性を有する電圧を印加する。
図5の例では、制御部43は、内周側電極板25d−1に正の電圧である2500Vを印加し、かつ、外周側電極板25d−2に負の電圧である−2500Vを印加して、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差を生じさせる。これにより、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。その結果、クリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。
【0058】
ここで、クリーニング期間において生成されるプラズマの電子密度は、プラズマ処理期間において生成されるプラズマの電子密度と比較して、低く、クリーニング期間において、フォーカスリング30は、プラズマを通じて接地電位に設定されにくい場合がある。そのため、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じないとすれば、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2と、フォーカスリング30との間に電位差が発生せず、フォーカスリング30が静電チャック25に吸着されない恐れがある。
【0059】
これに対し、本実施形態の制御部43は、クリーニング期間において、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極25d−1及び外周側電極25d−2に互いに異なる電圧を印加する。そのため、クリーニング期間においてフォーカスリング30がプラズマを通じて接地電位に設定されにくい場合であっても、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力によって、フォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。これにより、クリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。
【0060】
以上、第2の実施形態の基板処理装置では、プラズマ処理期間以外の他の期間として、クリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスが供給された状態で、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する。これにより、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間の電位差に応じた静電力が発生し、発生した静電力によってフォーカスリング30が静電チャック25に吸着される。このため、クリーニング期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。その結果、プラズマ処理期間において、フォーカスリング30と静電チャック25とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができる。
【0061】
ここまで、プラズマ処理期間以外の他の期間における伝熱ガスのリーク量の増大の抑制について期待される効果を述べたが、前記クリーニングに限らない。クリーニングに代替する弱プラズマ処理条件下においても、伝熱ガスのリーク流量の増大を抑えることができる。例えば、前記クリーニングにおいてはプラズマ生成用の高周波電力を発生するために800Wの高周波電力を用いる。したがって、前記代替条件となる弱プラズマ処理条件は高周波電力を発生するための高周波電力として0〜2000Wを必要とする。
【0062】
図6A及び
図6Bは、第2の実施形態における静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量を比較した実験の結果の一例を示す図である。
図6A及び
図6Bにおいて、縦軸は、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間に伝熱ガスとして供給されるHeガスのリーク量(sccm)を示し、横軸は、プラズマ処理期間において実行される各プラズマ処理プロセスの累積時間(hr)を示している。
【0063】
また、
図6Aにおいて、グラフ152は、クリーニング期間において内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いずに、プラズマ処理プロセスを実行した場合の、Heガスのリーク量を示すグラフである。
【0064】
また、
図6Bにおいて、グラフ162は、クリーニング期間において内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いて、プラズマ処理プロセスを実行した場合の、Heガスのリーク量を示すグラフである。
【0065】
図6Aに示すように、クリーニング期間において内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いなかった場合、各プラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量が1sccm程度増大した。
【0066】
これに対して、クリーニング期間において内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いた場合、各プラズマ処理プロセスにおけるHeガスのリーク量が1sccm未満だけ増大した。すなわち、クリーニング期間において内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加する静電吸着処理を用いた場合、フォーカスリング30と静電チャック25とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができた。
【0067】
なお、上記第1及び第2の実施形態では、プラズマ処理期間以外の他の期間として、処理容器10内へウエハWが搬入されている期間、処理容器10外へウエハWが搬出されている期間、及びクリーニング期間を用いる例を示したが、開示技術はこれに限定されない。例えば、制御部43は、プラズマ処理期間以外の他の期間として、基板処理装置(プラズマ処理装置)の稼働が停止している期間において、内周側電極板25d−1と、外周側電極板25d−2との間に電位差が生じるように、内周側電極板25d−1及び外周側電極板25d−2に互いに異なる電圧を印加してもよい。これにより、基板処理装置の稼働が停止している期間において、静電チャック25とフォーカスリング30との位置ずれが回避されるので、静電チャック25とフォーカスリング30とで挟まれる空間の密閉性が確保される。その結果、プラズマ処理期間において、フォーカスリング30と静電チャック25とで挟まれる空間に供給される伝熱ガスのリーク量の増大を抑えることができる。
【0068】
また、上記第1及び第2の実施形態では、便宜上、フォーカスリング30の内周側及び外周側に電極を配置しているが、複数の電極の配置はこれには限定されない。例えば、複数の電極は、静電チャックとして機能する位置に配置されても良い。この場合、制御部43は、複数の電極のうち一部の電極に所定の極性を有する電圧を印加し、前記一部以外の他の電極に所定の極性とは反対の極性を有する電圧を印加することができる。
【0069】
以下、複数の電極の配置例について説明する。
図7は、複数の電極の配置例(その1)を説明するための図である。複数の電極は、
図7に示すように、静電チャック25内部の、フォーカスリング30に対応する領域に同心円状に配置されても良い。
【0070】
図8A及び
図8Bは、複数の電極の配置例(その2)を説明するための図である。複数の電極は、
図8A及び
図8Bに示すように、静電チャック25内部の、フォーカスリング30に対応する領域に半円弧状に配置されても良い。
【0071】
図9は、複数の電極の配置例(その3)を説明するための図である。複数の電極は、
図9に示すように、静電チャック25内部の、フォーカスリング30に対応する領域に交互に配置されても良い。