(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記光ファイバ伝送路を経由して光受信機で計測される前記光変調信号の伝送品質に応じて、当該伝送品質が最良値となるように、前記波長分散補償量を掃引しながら前記FFT部へ入力する制御部
を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光送信機。
請求項1〜5の何れか1項に記載の光送信機と、当該光送信機から送信される前記光変調信号が伝送される光ファイバ伝送路と、当該光ファイバ伝送路を伝送してきた光変調信号を受信する光受信機と
を備えることを特徴とする光伝送システム。
【背景技術】
【0002】
近年、データセンタの急速なトラフィック増大を背景として、100GbE{ギガビットイーサネット(登録商標)}の標準化及び光モジュールの開発が進展しており、データセンタ内の光インタフェースとしてCFP4{(Centum gigabit Form factor Pluggable 4):活線挿抜可能な光トランシーバ}や、QSFP28(Quad Small Form-factor Pluggable 28)といった、より小型省電力のモジュールの開発が進んでいる。
【0003】
一方、直接データセンタ間を接続するために、ITU−T(International Telecommunication Union Telecommunication Standardization Sector)で規定された波長多重分離(WDM)グリッドの任意の光信号を出力する光モジュールの開発が進んでいる。例えば、10GbE用の規格であるXFP(10 Gigabit Small Form Factor Pluggable)やSFP(Small Form-factor Pluggable)等の小型モジュールの市販が始まっており、これらの光モジュールを用いることで低コストWDMシステムの構築が可能となる。100GbE若しくはそれ以上の伝送容量の光モジュールの場合、波長多重や多値変調方式を用いてボーレートが25Gbaud以上の光信号を伝送することが一般的である。
【0004】
このような高速の光信号が、WDMグリッドの帯域で、光ファイバ伝送路として広く用いられているITU−T G.652で規定されたシングルモードファイバ(SMF)中を伝搬すると、光ファイバの波長分散の影響により光信号のパルス広がりによる光波形歪みが生じ、伝送品質が劣化する。
【0005】
長距離WDMシステムにおいて、波長分散を補償するために、波長分散補償ファイバやファイバグレーティング等の光デバイスを用いる方法が一般的である(非特許文献1)。
【0006】
一方、デジタル信号処理により電気的に波長分散を補償する方法も、研究、実用化されている。デジタル信号処理による方法は、前述の光デバイスを用いる方法に比べて、分散補償デバイスの小型化が容易であり、伝送路中での光損失が無いため伝送特性の改善が期待できる。デジタル信号処理による方法として、有限インパルス応答(FIR)フィルタを用いる方法(非特許文献2)や、高速フーリエ変換(FFT)を用いた周波数領域等化(非特許文献3)がある。
【0007】
25Gbaud以上の光信号を長距離伝送した場合、インパルス応答長が長くなりFIRフィルタの回路規模が莫大になるため、100G−WDMシステム等では周波数領域等化技術が用いられている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、100GbE以上の小型光モジュールに波長分散補償技術を適用する場合、波長分散補償デバイスの小型化が必須であり、電気的な波長分散補償が有利となる。しかし、前述の周波数領域等化技術の場合でも、FFT、各周波数成分の位相回転処理、逆高速フーリエ変換(IFFT)を時間的に繰り返すため、電気回路への負荷は重く、このため、小型光モジュールへ適用できる程のデバイスの小型化が困難であるという問題があった。
【0010】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、小型光モジュールへ適用可能に小型化を図ることができる光送信機及び光伝送システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するための手段として、請求項1に係る発明は、光ファイバ伝送路を経由して光受信機で受信される光信号を送信する光送信機であって、前記光ファイバ伝送路の波長分散を補償する波長分散補償量に応じて、波長分散による波形広がり分を含んだ長さの繰り返し周期の1ビットパルス信号に、高速フーリエ変換を施して複数の周波数成分に分解するFFT部と、前記分解された各周波数成分に対して前記波長分散補償量に応じた位相回転を与え、各周波数成分に対応する複素信号データを得る位相回転部と、前記複素信号データに逆高速フーリエ変換を施し、複素信号で表される前記1ビットパルス信号の予等化波形データを生成するIFFT部とを有する予等化波形生成部と、入力された送信信号のビットパターンを有するBPデータに応じて、前記生成された予等化波形データに時間遅延を与えて合成し、この合成により予等化変調信号を生成して出力する予等化波形合成部と、光源から出射される信号光を、前記生成された予等化変調信号で変調し、この変調により前記光信号としての光変調信号を生成して前記光ファイバ伝送路へ送信するベクトル変調部とを備えることを特徴とする光送信機である。
【0012】
この構成によれば、光送信機において、波長分散補償量に応じて予等化波形データを生成し、この予等化波形データをBPデータで変調した光変調信号で信号光を変調して光ファイバ伝送路へ送信する。波長分散補償量に応じて予等化波形データを生成する場合、FFT部、位相回転部、IFFT部での1回の演算処理で生成可能である。このため、演算量を、従来のようにFFT、位相回転処理、IFFTを時間的に繰り返す場合に比べて、大幅に少なくすることができる。これによって、電気回路の負荷が軽くなり、小型光モジュールへ適用可能に、光送信機の小型化を図ることができる。
【0013】
請求項2に係る発明は、前記IFFT部で生成された予等化波形データを記憶するメモリ部を更に備えることを特徴とする請求項1に記載の光送信機である。
【0014】
この構成によれば、FFT部、位相回転部、IFFT部での1回の演算処理で予等化波形データを生成してメモリ部に記憶しておけば、以降その演算処理を行わなくても、記憶された予等化波形データを用いて予等化変調信号を生成することができる。
【0015】
請求項3に係る発明は、光ファイバ伝送路を経由して光受信機で受信される光信号を送信する光送信機であって、前記光ファイバ伝送路の波長分散を補償する波長分散補償量に応じて、1ビット長に無信号区間を加えた繰り返し周期の1ビットパルス信号に、高速フーリエ変換を施して複数の周波数成分に分解するFFT部と、前記分解された各周波数成分に対して前記波長分散補償量に応じた位相回転を与え、各周波数成分に対応する時間波形を得る位相回転部と、前記各周波数成分に対応する時間波形に、前記繰り返し周期の長さの窓関数を乗算する窓関数乗算部と、前記窓関数を乗算した各周波数成分に対応する時間波形に、前記波長分散補償量に応じた遅延を与えて合成することで、複素信号で表される1ビットパルス信号の時間領域複素データを生成する遅延合成部とを有する予等化波形生成部と、入力された送信信号のビットパターンを有するBPデータに応じて、前記生成された時間領域複素データに時間遅延を与えて合成し、この合成により予等化変調信号を生成して出力する予等化波形合成部と、光源から出射される信号光を、前記生成された予等化変調信号で変調し、この変調により前記光信号としての光変調信号を生成して前記光ファイバ伝送路へ送信するベクトル変調部とを備えることを特徴とする光送信機である。
【0016】
この構成によれば、各周波数成分に対応する時間波形に、無信号区間を加えた繰り返し周期の長さの窓関数を乗算し、この窓関数を乗算した各周波数成分に対応する時間波形に、波長分散補償量に応じた遅延を与えて合成することで、複素信号で表される1ビットパルス信号の時間領域複素データを生成する。このため、窓関数で繰り返し周期が短い方のでデータ量が少なくなり、遅延を与えたとしても無信号区間を含む分、時間領域複素データのデータ量が少なくなる。このため、演算量をより少なくすることができるので、光送信機のより小型化を図ることができる。
【0017】
請求項4に係る発明は、前記遅延合成部で生成された時間領域複素データを記憶するメモリ部を更に備えることを特徴とする請求項3に記載の光送信機である。
【0018】
この構成によれば、FFT部、位相回転部、窓関数乗算部、遅延合成部での1回の演算処理で時間領域複素データを生成してメモリ部に記憶しておけば、以降その演算処理を行わなくても、記憶された時間領域複素データを用いて予等化変調信号を生成することができる。
【0019】
請求項5に係る発明は、前記光ファイバ伝送路を経由して光受信機で計測される前記光変調信号の伝送品質に応じて、当該伝送品質が最良値となるように、前記波長分散補償量を掃引しながら前記FFT部へ入力する制御部を更に備えることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の光送信機である。
【0020】
この構成によれば、制御部による波長分散補償量の掃引に応じて、光ファイバ伝送路を経由して光受信機から制御部にフィードバックされる伝送品質を最良値に収束させることができる。
【0021】
請求項6に係る発明は、請求項1〜5の何れか1項に記載の光送信機と、当該光送信機から送信される前記光変調信号が伝送される光ファイバ伝送路と、当該光ファイバ伝送路を伝送してきた光変調信号を受信する光受信機とを備えることを特徴とする光伝送システムである。
【0022】
この構成によれば、光伝送システムにおいて、上記同様に光送信機の小型化を図ることができる。また、光受信機で受信される光変調信号の伝送品質を最良値に収束させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、小型光モジュールへ適用可能に小型化を図ることが可能な光送信機及び光伝送システムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
<第1実施形態の構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係る光送信機を用いた光伝送システムの構成を示すブロック図である。
図1に示す光伝送システム10Aは、光送信機11Aと、光受信機12と、光ファイバ伝送路13とを備えて構成され、光送信機11Aから送信された光信号としての光変調信号S1を、光ファイバ伝送路13に伝送させて光受信機12で受信するものである。
【0026】
光送信機11Aは、予等化波形生成部(生成部ともいう)14Aと、予等化波形合成部(合成部ともいう)15と、LD(レーザダイオード)16と、ベクトル変調部17とを備えて構成されている。なお、LD16は、請求項記載の光源を構成する。
【0027】
予等化波形生成部14Aは、波長分散補償量(補償量ともいう)H1に応じて、LD16から出射される信号光S3の波形歪を抑制する予等化のための予等化波形データD1を生成するものである。この生成部14Aは、FFT(高速フーリエ変換)部21と、位相回転部22と、IFFT(逆高速フーリエ変換)部23と、メモリ部24とを備えて構成されている。補償量H1は、光ファイバ伝送路13において生じる波長分散を補償するために予め定め設定された値となっている。
【0028】
Δt=ΔλDL …(1)
ここで、Δλは信号光帯域幅、Dは信号光波長における分散パラメータ、Lは光信号の伝送距離である。
【0029】
上記繰り返し周期Tを持つ1ビットパルス信号s
0(t)の時間波形を、
図2(a)に示す。1ビットパルス信号s
0(t)は、波長分散による波形広がり分を含んだ長さの繰り返し周期Tを有しており、FFT部21に予め保持されている。FFT部21が行う高速フーリエ変換では、様々な周期を持つsin波(正弦波)、cos波(余弦波)の振幅(各周波数成分の振幅)に分解して1ビットパルス信号s
0(t)を近似する処理が行われる。
【0030】
式(1)の最大遅延差Δtは、繰り返し周期Tを決めるための目安である。最大遅延差Δtが大きいとパルス幅が拡がるので、繰り返し周期Tを大きくする必要がある。繰り返し周期Tが小さいと、パルスが拡がって食み出すので正確に補償できなくなる。繰り返し周期Tは、繰り返し関数であるため、波長分散の遅れ進みは、位相の回転が遅れたり進んだりすることで表される。このため、後述のように、位相回転部22で逆の位相回転を与えることで波長分散を補償する。
【0031】
【数1】
ここで、ω
cは光信号の中心角周波数、ωはω
cからの相対角周波数である。
【0032】
波長分散は、光信号(予等化変調信号S2)の周波数成分毎に位相の回転が異なってくる現象なので、位相回転部22で位相回転を逆に与えることで波長分散を補償(波長分散補償)する。ここでは、波長分散補償量H1が大きい程に位相回転を大きくする必要があり、周波数に応じて位相の回転量を変える。
【0033】
上式(2)の分散パラメータDは、光ファイバ伝送路13の光ファイバの仕様で決る値である。分散パラメータDを基に、式(2)の群速度分散β
2が計算できるようになっている。また、分散パラメータDと伝送距離Lとを与えれば、相対角周波数ωに対する回転角度θ(ω)が求められる。相対角周波数ωが中心から離れる場合、2乗の関係(ω
2)で回転角度θ(ω)が増加する。
【0035】
予等化波形合成部15は、入力される例えば“1,0,1”のBPデータ(ビットパターンデータ)D2に応じて、予等化波形データD1に時間遅延を与えて合成し、これを予等化変調信号S2としてベクトル変調部17へ出力する。即ち、合成部15は、
図3(a)〜(d)に示すように、入力される予等化波形データD1のbit列{b
i}(i=1,…)に対して、1/B,2/B,3/B,…で示すように、1/Bitrate(ビットレート)ずつ遅延を与えながら、b
n=“1”(on:オン)の場合のみ、時間領域複素信号s
0’(t)の出力を開始する。この開始後、i=n−k,…,nまでの時間領域複素信号s
0’(t)の総和を取って予等化波形信号列s’(t)を生成する。この予等化波形信号列s’(t)が、予等化変調信号S2である。
【0036】
つまり、合成部15は、ベクトル変調部17から光ファイバ伝送路13へ送信される光変調信号S1が、後述の所定波形{
図4(a)参照}となるような、信号光S3の波形歪を抑制する予等化波形としての予等化変調信号S2を生成して出力する。
【0037】
図3(a),(c),(d)の“1”の波形は、
図2(a)の1ビットパルス信号s
0(t)に対応する波形である。
図3(b)の“0”の波形は、信号成分が無い部分の波形である。
【0038】
ベクトル変調部17は、LD16から出射される信号光S3を、予等化変調信号S2で変調し、この変調で得られる光変調信号S1を光ファイバ伝送路13へ送信する。光変調信号S1の波形は、
図4(a)に示すように、実数成分W5及び虚数成分W6から成る。
【0039】
ここで、ベクトル変調部17がI/Q変調器であるとする。I/Q変調部では、入力される信号光S3を2分岐し、それぞれの信号に予等化変調信号S2に応じた異なる電圧を掛けて、それぞれの信号の位相を変える。この位相が異なる各信号を合成すると、その位相の状態で打ち消し合ったり強め合ったりして変調が掛かる。これによって、両方の信号の位相を進めたり遅らせたりできるので、I/Q変調器から出力されるIとQの複素信号が回転し、実数成分W5と虚数成分W6との量が変わる。これは、光の干渉を使用しているので、入力信号光S3に対してcos特性となる。
【0040】
このようにベクトル変調部17から出力される光変調信号S1が、光ファイバ伝送路13を経由して光受信機12で受信される。この受信信号は、例えば、
図4(b)に示す離間した振幅AM1,AM2を有する波形となる。光受信機12は、その波形の振幅AM1を“1”、振幅AM2を“1”、振幅AM1とAM2との間を“0”と復号する。この復号により、送信側のBPデータD2と同じ“1,0,1”のビットパターンのデータD2aが出力される。
【0041】
<第1実施形態の具体例>
LD16からの信号光S3としての、信号光波長λ
c=1550nm、Bitrate=25Gbit/sの信号に対して、分散パラメータD=14ps/nm/km、光ファイバ伝送路13として、長さ150kmのSMFで伝送した場合の波長分散の予等化を考える。
【0042】
信号光帯域幅をBitrateの2倍とすると、上式(1)より、最大遅延差Δtは840psとなる。FFT部21及びIFFT部23の信号処理に伴う波形歪を処理するための余長分も含めて、繰り返し周期T=1280psとする。サンプリング周波数を100GHzとすると、予等化変調信号S2である時間領域複素信号s
0’(t)のデータ量は、256ポイントとなる。
【0043】
この際の予等化変調信号S2は、
図4(a)に示す波形のようになる。即ち、予等化波形生成部14Aで生成された予等化波形信号列s’(t)としての予等化波形データD1が、ビットパターン“101”のデータ列(BPデータD2)に応じて、予等化波形合成部15で遅延されて合成されたものとなる。この予等化変調信号S2は、150km伝送後の
図4(b)に示す波形を見ると、波長分散が打ち消されてビットパターン“101”の信号波形が復元されていることが分かる。
【0044】
<第1実施形態の効果>
以上説明したように、第1実施形態の光伝送システム10Aは、光送信機11Aと、光送信機11Aから送信される光変調信号S1が伝送される光ファイバ伝送路13と、光ファイバ伝送路13を伝送してきた光変調信号S1を受信する光受信機12とを備えて構成されている。
【0045】
(1)光送信機11Aは、予等化波形生成部14Aと、予等化波形合成部15と、ベクトル変調部17とを備えて構成されている。予等化波形生成部14Aは、FFT部21、位相回転部22、IFFT部23を備える。FFT部21は、光ファイバ伝送路13の波長分散を補償する波長分散補償量に応じて、波長分散による波形広がり分を含んだ長さの繰り返し周期の1ビットパルス信号に、高速フーリエ変換を施して複数の周波数成分に分解する。位相回転部22は、その分解された各周波数成分に対して波長分散補償量に応じた位相回転を与え、各周波数成分に対応する複素信号データを得る。IFFT部23は、複素信号データに逆高速フーリエ変換を施し、複素信号で表される1ビットパルス信号の予等化波形データD1を生成する。
【0046】
予等化波形生成部14Aは、入力された送信信号のビットパターンを有するBPデータに応じて、生成された予等化波形データD1に時間遅延を与えて合成し、この合成により予等化変調信号S2を生成して出力する。ベクトル変調部17は、LD16から出射される信号光S3を、生成された予等化変調信号S2で変調し、この変調により光信号としての光変調信号S1を生成して光ファイバ伝送路13へ送信する。
【0047】
この構成によれば、光送信機11Aにおいて、波長分散補償量H1に応じて予等化波形データD1を生成し、この予等化波形データD1をBPデータで変調した光変調信号S1で信号光S3を変調して光ファイバ伝送路13へ送信する。波長分散補償量H1に応じて予等化波形データD1を生成する場合、FFT部21、位相回転部22、IFFT部21での1回の演算処理で生成可能である。このため、演算量を、従来のようにFFT、位相回転処理、IFFTを時間的に繰り返す場合に比べて、大幅に少なくすることができる。これによって、電気回路の負荷が軽くなり、小型光モジュールへ適用可能に、光送信機11Aを小型化することができる。
【0048】
(2)IFFT部21で生成された予等化波形データD1を記憶するメモリ部24を更に備える構成とした。
【0049】
この構成によれば、FFT部21、位相回転部22、IFFT部21での1回の演算処理で予等化波形データD1を生成してメモリ部に記憶しておけば、以降その演算処理を行わなくても、記憶された予等化波形データD1を用いて予等化変調信号S2を生成することができる。
【0050】
<第2実施形態の構成>
図5は、本発明の第2実施形態に係る光送信機を用いた光伝送システムの構成を示すブロック図である。
図5に示す第2実施形態の光伝送システム10Bが、第1実施形態の光伝送システム10Aと異なる点は、時間領域複素信号s
0’(t)のデータ量の更なる削減を実現するものであり、光送信機11Bの予等化波形生成部14Bの構成にある。予等化波形生成部14Bは、FFT部21Aと、位相回転部22Aと、窓関数乗算部31と、遅延合成部32と、メモリ部24とを備えて構成されている。
【0054】
サンプリング周波数が同等の場合、繰り返し周期が短い方がデータ量が少なくなり、式(3)の遅延T
1を与えたとしても、無信号区間を含む分、時間領域複素信号s”(t)のデータ量も少なくなる。この時間領域複素信号s”(t)が時間領域複素データD4としてメモリ部24に記憶される。メモリ部24に記憶された時間領域複素データD4は、予等化波形合成部15へ出力される。
【0055】
予等化波形合成部15及びベクトル変調部17、並びに光受信機12の動作は、第1実施形態と同様である。
【0056】
<第2実施形態の具体例>
信号光波長λ
c=1550nm等の各数値の前提条件は、第1実施形態と同様であるが、繰り返し周期T’=640psとした場合、データ量が200ポイントで、これと同等の予等化された時間領域複素信号s”(t)を生成することができる。
【0057】
<第2実施形態の効果>
以上説明したように、第2実施形態の光伝送システム10Bは、光送信機11Bと、光送信機11Bから送信される光変調信号S1が伝送される光ファイバ伝送路13と、光ファイバ伝送路13を伝送してきた光変調信号S1を受信する光受信機12とを備えて構成されている。
【0058】
(1)光送信機11Bは、予等化波形生成部14Bと、予等化波形合成部15と、ベクトル変調部17とを備えて構成されている。予等化波形生成部14Bは、FFT部21A、位相回転部22A、窓関数乗算部31及び遅延合成部32を備える。FFT部21Aは、光ファイバ伝送路13の波長分散を補償する波長分散補償量H1に応じて、1ビット長に無信号区間を加えた繰り返し周期の1ビットパルス信号に、高速フーリエ変換を施して複数の周波数成分に分解する。位相回転部22Aは、分解された各周波数成分に対して波長分散補償量に応じた位相回転を与え、各周波数成分に対応する時間波形を得る。窓関数乗算部31は、各周波数成分に対応する時間波形に、繰り返し周期の長さの窓関数を乗算する。遅延合成部32は、窓関数を乗算した各周波数成分に対応する時間波形に、波長分散補償量に応じた遅延を与えて合成することで、複素信号で表される1ビットパルス信号の時間領域複素データD4を生成する。
【0059】
予等化波形合成部15は、BPデータに応じて、生成された時間領域複素データD4に時間遅延を与えて合成し、この合成により予等化変調信号S2を生成して出力する。ベクトル変調部17は、LD16から出射される信号光S3を、生成された予等化変調信号S2で変調し、この変調により光信号としての光変調信号S1を生成して光ファイバ伝送路13へ送信する。
【0060】
この構成によれば、各周波数成分に対応する時間波形に、無信号区間を加えた繰り返し周期の長さの窓関数を乗算し、この窓関数を乗算した各周波数成分に対応する時間波形に、波長分散補償量に応じた遅延を与えて合成することで、複素信号で表される1ビットパルス信号の時間領域複素データD4を生成する。このため、窓関数で繰り返し周期が短い方のでデータ量が少なくなり、遅延を与えたとしても無信号区間を含む分、時間領域複素データD4のデータ量が少なくなる。このため、演算量をより少なくすることができるので、光送信機11Bを、第1実施形態の光送信機11Aよりも小型化することができる。
【0061】
(2)遅延合成部32で生成された時間領域複素データD4を記憶するメモリ部24を更に備える構成とした。
【0062】
この構成によれば、FFT部21A、位相回転部22A、窓関数乗算部31、遅延合成部32での1回の演算処理で時間領域複素データD4を生成してメモリ部に記憶しておけば、以降その演算処理を行わなくても、記憶された時間領域複素データD4を用いて予等化変調信号S2を生成することができる。
【0063】
<第3実施形態の構成>
図7は、本発明の第3実施形態に係る光送信機を用いた光伝送システムの構成を示すブロック図である。
図7に示す第3実施形態の光伝送システム10Cが、第1及び第2実施形態の光伝送システム10A,10Bと異なる点は、コントローラ41を備えたことにある。コントローラ41は、光受信機12からの伝送品質情報D5に応じて、波長分散補償量H2を予等化波形生成部14A又は14Bへ出力するものである。コントローラ41は、光送信機11A又は11Bに内蔵又は外付けで含まれているとする。なお、コントローラ41は、請求項記載の制御部を構成する。伝送品質情報D5は、請求項記載の伝送品質に対応する。
【0064】
伝送品質情報D5は、光受信機12が受信した光変調信号S1に対応する信号から検出されるエラーレート又はエラー訂正数などである。光受信機12は、光ファイバ伝送路13の波長分散に係る伝送品質を測定可能となっており、光ファイバ伝送路13で単位時間当たり、どれだけエラーが起こったかを測定する。
【0065】
コントローラ41は、光受信機12からの伝送品質情報D5が最も良い値(最良値)となるように、波長分散補償量H2を掃引しながら生成部14A又は14Bへ入力する。この入力により生成部14A又は14Bから出力される予等化波形データD1又は時間領域複素データD4は、伝送品質情報D5が最良値に近付く様に変化する。このようなコントローラ41による波長分散補償量H2の掃引に応じて、光ファイバ伝送路13を経由して光受信機12からコントローラ41にフィードバックされる伝送品質情報D5が最良値に収束する。
【0066】
光ファイバ伝送路13を構成する光ファイバは温度に応じて伸び縮みする。このため、波長分散は時間的にゆっくり変化するが、上記のフィードバックされる伝送品質情報D5に応じた波長分散補償量H2の掃引により、伝送品質情報D5を最良値とすることができる。つまり、波長分散が時間的にゆっくり変化する場合にも対応(補償)可能となる。
【0067】
その他、具体的な構成について、本発明の主旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能である。