(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ストライプ領域長さは、描画する際の前記ステージの移動方向における、前記複数のストライプ領域のうちの当該ストライプ領域内の描き始めのビームのショットと描き終わりのビームのショットとの間の前記第2の方向の距離で定義されることを特徴とする請求項1記載の荷電粒子ビーム描画装置。
図形パターンが配置されるチップのチップ領域が第1の方向に向かって所定の幅で短冊状に仮想分割された複数のストライプ領域の前記第1の方向と直交する第2の方向のストライプ領域長さに応じて前記第2の方向に試料を載置するステージが移動する場合の前記ステージの最大ステージ速度を可変に演算する工程と、
前記最大ステージ速度を超えないように、前記第2の方向へ前記ステージを移動させる工程と、
前記ストライプ領域長さに応じて可変に設定された前記最大ステージ速度を超えないように前記ステージが前記第2の方向に移動している状態で、荷電粒子ビームを用いて、前記チップデータに定義される前記図形パターンを前記試料に描画する工程と、
を備えたことを特徴とする荷電粒子ビーム描画方法。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
かかる駆動上限速度でステージを移動させるためには、かかる駆動上限速度まで加速する加速時間と描画終了時に停止するまでの減速時間が必要となる。ここで、試料にパターンを描画する際、パターンを形成するチップのサイズが小さければ、その分、描画領域の長さも短い。かかる短い領域を駆動上限速度でステージを移動させると、実際の描画にかかる時間に対して、加速時間と減速時間の割合が大きくなる。特に、チップのパターン密度が小さい場合には、ステージ加減速に必要な時間の方が実際の描画にかかる時間よりも多くかかる場合もあり得る。よって、ステージ加減速に必要な時間も含めて描画時間の短縮を図る必要がある。
【0007】
そこで、本発明の一態様は、ステージ加減速に必要な時間も含めて描画時間を短縮することが可能な描画装置および方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画装置は、
試料を載置する、移動可能なステージと、
図形パターンが配置されるチップのチップデータを記憶する記憶装置と、
チップのチップ領域が第1の方向に向かって所定の幅で短冊状に仮想分割された複数のストライプ領域の第1の方向と直交する第2の方向のストライプ領域長さに応じて第2の方向にステージが移動する場合のステージの最大ステージ速度を可変に演算する最大ステージ速度演算部と、
最大ステージ速度を超えないように、第2の方向へのステージの移動を制御するステージ制御部と、
ストライプ領域長さに応じて可変に設定された最大ステージ速度を超えないようにステージが第2の方向に移動している状態で、荷電粒子ビームを用いて、チップデータに定義される図形パターンを試料に描画する描画部と、
を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、記憶装置は、複数のチップのチップデータが記憶され、
複数のチップをマージ処理するマージ処理部をさらに備え、
ストライプ領域長さは、マージ処理されたチップの第2の方向の幅サイズに対応するように構成すると好適である。
【0010】
或いは、ストライプ領域長さは、描画する際のステージの移動方向における、複数のストライプ領域のうちの当該ストライプ領域内の描き始めのビームのショットと描き終わりのビームのショットとの間の第2の方向の距離で定義されると好適である。
【0011】
また、複数のストライプ領域の各ストライプ領域は、第2の方向に所定の間隔で複数の小領域に分割され、
ストライプ領域長さに応じて可変に設定された最大ステージ速度を用いて、複数の小領域を描画する場合のステージの速度分布を演算する速度分布演算部をさらに備えると好適である。
【0012】
本発明の一態様の荷電粒子ビーム描画方法は、
図形パターンが配置されるチップのチップ領域が第1の方向に向かって所定の幅で短冊状に仮想分割された複数のストライプ領域の前記第1の方向と直交する第2の方向のストライプ領域長さに応じて第2の方向に試料を載置するステージが移動する場合のステージの最大ステージ速度を可変に演算する工程と、
最大ステージ速度を超えないように、第2の方向へステージを移動させる工程と、
ストライプ領域長さに応じて可変に設定された最大ステージ速度を超えないようにステージが第2の方向に移動している状態で、荷電粒子ビームを用いて、チップデータに定義される図形パターンを試料に描画する工程と、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の一態様によれば、最大ステージ速度が小さくなっても描画時間を短縮できる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態では、荷電粒子ビームの一例として、電子ビームを用いた構成について説明する。但し、荷電粒子ビームは、電子ビームに限るものではなく、イオンビーム等の荷電粒子を用いたビームでも構わない。また、荷電粒子ビーム装置の一例として、可変成形型の描画装置について説明する。
【0016】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1における描画装置の構成を示す概念図である。
図1において、描画装置100は、描画部150と制御部160を備えている。描画装置100は、荷電粒子ビーム描画装置の一例である。特に、可変成形型(VSB方式)の描画装置の一例である。描画部150は、電子鏡筒102と描画室103を備えている。電子鏡筒102内には、電子銃201、照明レンズ202、第1のアパーチャ203、投影レンズ204、偏向器205、第2のアパーチャ206、対物レンズ207、主偏向器208及び副偏向器209が配置されている。描画室103内には、XYステージ105が配置される。XYステージ105上には、描画時には描画対象となるマスク等の試料101が配置される。試料101には、半導体装置を製造する際の露光用マスクが含まれる。また、試料101には、レジストが塗布された、まだ何も描画されていないマスクブランクスが含まれる。
【0017】
制御部160は、制御計算機110、メモリ112、ステージ制御回路120、ステージ駆動機構122、制御回路130、及び磁気ディスク装置等の記憶装置140,142,144を有している。制御計算機110、メモリ112、ステージ制御回路120、ステージ駆動機構122、制御回路130、及び記憶装置140,142,144は、図示しないバスを介して互いに接続されている。
【0018】
制御計算機110内には、取得部50、長さ演算部52、可変上限速度演算部54、選択部56、チップマージ処理部58、領域分割部59、ショット分割部60、ショット数演算部62、ショットデータ生成部64、ステージ速度分布演算部66、及び描画制御部68が配置される。取得部50、長さ演算部52、可変上限速度演算部54、選択部56、チップマージ処理部58、領域分割部59、ショット分割部60、ショット数演算部62、ショットデータ生成部64、ステージ速度分布演算部66、及び描画制御部68といった各「〜部」は、処理回路を有する。かかる処理回路は、例えば、電気回路、コンピュータ、プロセッサ、回路基板、量子回路、或いは、半導体装置を含む。各「〜部」は、共通する処理回路(同じ処理回路)を用いても良いし、或いは異なる処理回路(別々の処理回路)を用いても良い。取得部50、長さ演算部52、可変上限速度演算部54、選択部56、チップマージ処理部58、領域分割部59、ショット分割部60、ショット数演算部62、ショットデータ生成部64、ステージ速度分布演算部66、及び描画制御部68に入出力される情報および演算中の情報はメモリ112にその都度格納される。
【0019】
ここで、
図1では、実施の形態1を説明する上で必要な構成を記載している。描画装置100にとって、通常、必要なその他の構成を備えていても構わない。例えば、位置偏向用には、主偏向器208と副偏向器209の主副2段の多段偏向器を用いているが、3段以上の多段偏向器によって位置偏向を行なう場合であってもよい。
【0020】
少なくとも1つの図形パターンから構成される複数のセルを有するチップのデータが定義された描画データが描画装置100の外部より入力され、記憶装置140(第1の記憶部)に格納されている。チップデータには、各図形パターンの形状、配置座標、およびサイズを示す各図形パターンのパターンデータが定義される。
【0021】
図2は、実施の形態1における各領域を説明するための概念図である。
図2において、試料101の描画領域10内には、描画対象となるチップ12に定義されるパターンが描画される。複数のチップを同時期に描画する場合には、後述するように複数のチップをマージ処理した上で、マージ処理されたチップに定義されるパターンが描画される。かかるチップ12の領域は、主偏向器208の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割される。また、各ストライプ領域20は、副偏向器209の偏向可能サイズで、メッシュ状に複数のサブフィールド(SF)30(小領域)に仮想分割される。ここで、描画装置100で図形パターンを描画するためには、1回のビームのショットで照射できるサイズのショット図形にチップデータに定義された各図形パターンを分割する必要がある。そして、各SF30内の各ショット位置にかかるショット図形32が描画される。
【0022】
描画装置100では、かかる複数段の偏向器を用いて、ストライプ領域20毎に描画処理を進めていく。ここでは、一例として、主偏向器208、及び副偏向器209といった2段偏向器が用いられる。XYステージ105が例えば−x方向に向かって連続移動しながら、1番目のストライプ領域20についてx方向に向かって描画を進めていく。そして、1番目のストライプ領域20の描画終了後、同様に、或いは逆方向に向かって2番目のストライプ領域20の描画を進めていく。以降、同様に、3番目以降のストライプ領域20の描画を進めていく。そして、主偏向器208が、XYステージ105の移動に追従するように、SF30の基準位置Aに電子ビーム200を順に偏向する。基準位置Aは、例えば、SF30の中心位置が用いられる。或いは、SF30の左下角の位置であっても好適である。また、副偏向器209(第2の偏向器)が、各SF30の基準位置Aから、当該SF30内に照射される、ショット図形32に成形されたショットビーム(電子ビーム200)を所望の位置に偏向する。このように、主偏向器208、及び副偏向器209は、サイズの異なる偏向領域をもつ。
【0023】
図3は、実施の形態1におけるストライプ領域長さに応じたステージ速度と描画時間の関係の一例を示す図である。
図3では、縦軸に描画時間を示し、横軸にステージ速度を示している。ストライプ領域中を一定のステージ速度Vで例えば−x方向にXYステージを移動させる場合、描画時間T(ステージ移動時間)は、ステージ加速度G、ステージ速度V、及びストライプ領域長さL(x方向の長さ)を用いて、次の式(1)で定義できる。
(1) T=2V/G+L/V
【0024】
式(1)の右辺第1項は、描画位置がストライプ領域左端に入るまでにゼロからステージ速度VまでXYステージを加速する時間と、描画位置がストライプ領域右端まで到達し、ステージ速度VからゼロまでXYステージを減速する時間との合計となる。式(1)の右辺第2項は、描画位置がストライプ領域中を通過する時間を示す。
【0025】
かかる式(1)を用いて、
図3の例では、ストライプ領域長さLが0.1mm、1mm、及び10mmの各場合について、ステージ速度Vと描画時間Tとの関係を示す。例えば、ストライプ領域長さLが大きい、L=10mm(A”)では、ステージ速度を早くすれば、その分、描画時間Tが短縮されることがわかる。これに対して、例えば、ストライプ領域長さLが小さい、L=1mm(B”)では、ある速度まではステージ速度を早くすれば、その分、描画時間Tが短縮されるが、かかる速度を超えると逆に描画時間Tが長くなる変曲点が存在することがわかる。さらに、ストライプ領域長さLを小さくした、L=0.1mm(C”)では、さらに遅い速度で描画時間Tが短縮から増加に転じる変曲点が存在することがわかる。このように、ストライプ領域長さLに応じて、描画時間Tが最小値となるステージ速度に違いがあることがわかる。
【0026】
図4は、実施の形態1におけるストライプ領域長さと描画時間が最小となる最適なステージ速度との関係の一例を示す図である。
図4では、縦軸に最適なステージ速度を示し、横軸にストライプ領域長さを示す。
図4に示すように、ストライプ領域長さが小さくなるに伴い、最適なステージ速度も小さくなることがわかる。
図4では、さらに、描画装置100の駆動上限速度A1を示している。なお、駆動上限速度A1は、XYステージ105の機械構造上の最大値である必要はなく、運用上限値であればよい。例えば、機械構造上の最大値に安全係数を乗じた値等が好適である。
【0027】
図5は、実施の形態1におけるステージ速度分布の一例を示す図である。
図5(a)の例では、ストライプ領域長さL1が長い(大きい)ストライプ領域aを描画する場合のステージ速度分布を示している。
図5(b)の例では、ストライプ領域長さL2が短い(小さい)ストライプ領域bを描画する場合のステージ速度分布を示している。ストライプ領域内に描画するパターンのパターン密度が粗であれば、従来、いずれも最大ステージ速度が駆動上限速度A1で駆動していた。そのため、ストライプ領域aとストライプ領域bでは、共に、同じだけの加減速にかかる時間が必要となる。しかしながら、
図3及び
図5において説明したように、最適なステージ速度が駆動上限速度A1よりも小さくなるストライプ領域長さを描画する場合、最大ステージ速度を駆動上限速度A1で駆動すると逆に描画時間が長くなってしまう場合がある。
図5(c)の例では、
図5(b)と同様のストライプ領域長さL2が短い(小さい)ストライプ領域bを描画する場合のステージ速度分布の一例を示している。
図5(c)の例では、最大ステージ速度をA1からB1に落としている。かかるケースでは、ストライプ領域bを描画する時間は
図5(b)の例よりも長くなるが、加減速にかかる時間を短縮できるので、結果的に描画時間を短縮できる。そこで、実施の形態1では、一律に、最大ステージ速度を例えば駆動上限速度A1に設定するのではなく、ストライプ領域長さに応じて可変に設定する。
【0028】
実施の形態1では、まず、実験或いはシミュレーション等により、予め
図4に示したストライプ領域長さLと描画時間が最小となる最適なステージ速度Vとの相関関係データ(L−Vデータ)を作成して、描画装置100の外部から入力し、記憶装置142に格納しておく。また、駆動上限速度A1についても予め決めておき、描画装置100の外部から入力し、記憶装置142に格納しておく。
【0029】
図6は、実施の形態1における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図6において、実施の形態1における描画方法は、駆動上限速度A1取得工程(S102)と、チップマージ工程(S104)と、ストライプ領域長さ取得工程(S106)と、可変上限速度B1演算工程(S108)と、上限速度C1選択工程(S110)と、ショット分割工程(S120)と、コンパートメントショット数演算工程(S122)と、ステージ速度分布E1演算工程(S130)と、ショットデータ生成工程(S132)と、描画(ステージ駆動)工程(S150)と、いう一連の工程を実施する。
【0030】
駆動上限速度A1取得工程(S102)として、取得部50は、記憶装置142から駆動上限速度A1を読み出し、取得する。
【0031】
チップマージ工程(S104)として、チップマージ処理部58は、記憶装置140からチップデータを読み出し、複数のチップが存在し、かかる複数のチップを同じジョブの描画処理で描画する場合には、複数のチップのマージ処理を行う。
【0032】
図7は、実施の形態1におけるチップマージ処理の一例を示す図である。
図7の例では、例えば、チップ11a(A)とチップ11b(B)との2つのチップを同じジョブの描画処理で描画する場合を想定する。同じジョブでは、通常、基準照射量、或いは近接効果補正係数等のパラメータ等といった描画条件を同一にする。描画条件が同じチップについては、同じ描画処理で実施する方が効率的である。よって、チップマージ処理部58は、チップ11a(A)とチップ11b(B)との2つのチップをマージ処理する。マージ処理後のチップ12は、
図7に示すように、例えば、複数のチップ11a,11bの外接矩形に設定すればよい。同じジョブの描画処理で描画するチップが1つであれば、マージ処理は不要となる。
【0033】
ストライプ領域長さ取得工程(S106)として、長さ演算部52は、ストライプ領域長さを演算する。複数のチップがマージ処理された場合には、ストライプ領域長さは、マージ処理されたチップのx方向或いは−x方向(第2の方向)の幅サイズに対応する。言い換えれば、長さ演算部52は、複数のチップがマージ処理された場合には、マージ処理されたチップのx方向(第2の方向)の幅サイズをストライプ領域長さLとして演算する。長さ演算部52は、同じジョブの描画処理で描画するチップが1つの場合には、対応するチップのx方向(第2の方向)の幅サイズをストライプ領域長さLとして演算する。
【0034】
可変上限速度B1演算工程(S108)として、可変上限速度演算部54(最大ステージ速度演算部)は、チップ12のチップ領域がy方向(第1の方向)に向かって所定の幅で短冊状に仮想分割された複数のストライプ領域20のy方向と直交する−x方向(第2の方向)のストライプ領域長さLに応じて−x方向(第2の方向)にXYステージ105が移動する場合のXYステージ105の最大ステージ速度B1を可変に演算する。具体的には、可変上限速度演算部54は、記憶装置142からL−Vデータを読み出し、L−Vデータを用いて取得されたストライプ領域長さLに対応する最適ステージ速度Vを最大ステージ速度B1として演算する。
【0035】
上限速度C1選択工程(S110)として、選択部56は、駆動上限速度A1と最大ステージ速度B1とのうち、小さい方を上限速度C1として選択する。描画装置100の運用上、もともと駆動上限速度A1よりも高速にXYステージ105を移動させることはしないので、最大ステージ速度B1が駆動上限速度A1よりも小さければ、最大ステージ速度B1を上限速度C1として選択し、それ以外であれば駆動上限速度A1を上限速度C1として選択する。
【0036】
ショット分割工程(S120)として、まず、領域分割部59は、チップ12(マージ処理されている場合はマージ後のチップ)の領域を、主偏向器208の偏向可能幅で、例えばy方向に向かって短冊状に複数のストライプ領域20に仮想分割する。また、領域分割部59は、各ストライプ領域20を副偏向器209の偏向可能幅で、メッシュ状に複数のSF30に仮想分割する。
【0037】
次に、ショット分割部60は、記憶装置140から例えばストライプ領域20毎にチップデータを読み出し、かかるチップ12内に定義される図形パターンを複数のショット図形に分割し、ショット図形を対応するSF30に割り当てる。描画装置100では、図形パターンを1回のビームのショットで形成することは困難なので、図形パターンを1回のショットで照射可能なサイズのショット図形に分割する。
【0038】
コンパートメントショット数演算工程(S122)として、ショット数演算部62は、ストライプ領域20毎に、当該ストライプ領域20をx方向に所定のサイズで分割した複数のコンパートメント(CPM)領域22(小領域)について、CPM領域22毎に、CPM領域22内にショットされるショット数を演算する。このように、複数のストライプ領域20の各ストライプ領域20は、x方向(或いは−x方向)(第2の方向)に所定の間隔で複数のCPM領域22に分割される。CPM領域22のサイズは、任意で構わないが、例えば、ストライプ領域20のy方向幅と同サイズで分割すると好適である。
図2の例のように、ストライプ領域20にSF30がy方向に例えば4個配置される場合、CPM領域22が4×4の16個のSF30によって構成される。各CPM領域22のショット数は、当該CPM領域22を構成する各SF30に割り当てられたショット図形の数を合計すればよい。
【0039】
ステージ速度分布E1演算工程(S130)として、ステージ速度分布演算部66は、駆動上限速度A1と最大ステージ速度B1とから選択された上限速度C1を用いて、複数のCPM領域22を描画する場合のXYステージ105の速度分布E1を演算する。ストライプ領域長さLが小さい場合には、最大ステージ速度B1が上限速度C1として用いられることになる。その場合、ステージ速度分布演算部66は、ストライプ領域長さLに応じて可変に設定された最大ステージ速度B1を用いて、前記複数のCPM領域22を描画する場合のXYステージ105の速度分布E1を演算する。
【0040】
図8は、実施の形態1におけるステージ速度分布の一例を示す図である。XYステージ105の速度は、CPM領域22毎に設定される。その際、上限速度C1が最大速度となる。電子ビーム描画におけるショットサイクルにかかる時間tcは、次の式(2)に示すように、副偏向器209へ偏向電圧を印加する図示しないデジタル・アナログ変換(DAC)アンプの整定時間と成形用の偏向器205へ偏向電圧を印加する図示しないDACアンプの整定時間との長い方の整定時間tstと、ビームを照射する照射時間tと、の和で求められる。
(2) tc=t+tst
【0041】
よって、CPM領域22を描画するためにかかる時間tcpmは、次の式(3)に示すように、ショットサイクルにかかる時間tcにショット数Mを乗じた値で定義できる。
(3) tcpm=tc×M
【0042】
よって、CPM領域22を描画する際のステージ速度Vcpmは、次の式(4)に示すように、ステージ移動方向である−x方向におけるCPM領域22の幅(x方向幅)Lcpmを、CPM領域22を描画するためにかかる時間tcpmで割った値で定義できる。
(4) Vcpm=Lcpm/tcpm
【0043】
よって、ステージ速度分布演算部66は、CPM領域22毎に、それぞれCPM領域22を描画する際のステージ速度Vcpmを演算する。
【0044】
次に、CPM領域22毎にステージ速度Vcpmが変化するので、隣接するCPM領域22同士間では、ステージの加減速を行う必要がある。各CPM領域22では、演算されたステージ速度Vcpmを超える速度でXYステージ105を移動させると描画処理が間に合わなくなる。よって、隣接するCPM領域22同士間では、ステージ速度Vcpmが遅いCPM領域22を優先し、早いCPM領域22側で加減速を行えばよい。なお、ステージ速度Vcpmが上限速度C1を超える場合には、かかるCPM領域22のステージ速度Vcpmは上限速度C1となる点は言うまでもない。よって、
図8の例では、描画位置が1番目のCPM領域22の左端になるまでに加速度Gで上限速度C1まで加速させておく。そして、2番目のCPM領域22の方が1番目のCPM領域22よりもステージ速度Vcpmが遅いので、2番目のCPM領域22の左端で2番目のCPM領域22のステージ速度Vcpmになるように、1番目のCPM領域22の途中から加速度Gで減速する。そして、2番目のCPM領域22の方が3番目のCPM領域22よりもステージ速度Vcpmが遅いので、描画位置が2番目のCPM領域22の左端から右端になるまでは2番目のCPM領域22のステージ速度Vcpmに維持する。続いて、描画位置が3番目のCPM領域22の左端から加速度Gで3番目のCPM領域22のステージ速度Vcpmになるまで加速する。4番目のCPM領域22の方が3番目のCPM領域22よりもステージ速度Vcpmが遅いので、4番目のCPM領域22の左端で4番目のCPM領域22のステージ速度Vcpmになるように、3番目のCPM領域22の途中から加速度Gで減速する。同様に、加減速を行いながら、対象となるストライプ領域20の最終端まで進み、ストライプ領域20の最終端(右端)での速度からゼロになるまで加速度Gで減速する。ステージ速度分布演算部66は、かかるステージ速度分布E1を作成(演算)する。ストライプ毎に作成されたステージ速度分布は、例えば記憶装置144に格納される。
【0045】
ショットデータ生成工程(S132)として、ショットデータ生成部64は、ショット順に、ショット図形が照射される位置(座標)、ショット図形の図形種(図形コード)、ショット図形のサイズ、及びショット図形の照射時間を定義するショットデータを生成する。例えば、照射時間については、別のファイルで作成しても好適である。生成されたショットデータは、例えば記憶装置144に格納される。照射時間の演算方法は従来と同様で構わない。例えば、近接効果補正等を行った照射量に相当する時間に設定すると好適である。
【0046】
描画(ステージ駆動)工程(S150)として、描画制御部68による制御のもと、ステージ制御回路120(ステージ制御部)は、最大ステージ速度(ここでは、上限速度C1)を超えないように、−x方向へのXYステージ105の移動を制御する。そして、描画制御部68による制御のもと、制御回路130は、記憶装置144からショットデータを読み出し、ショットデータに沿って描画部150を制御する。描画部150は、ストライプ領域長さLに応じて可変に設定された最大ステージ速度(ここでは、上限速度C1)を超えないようにXYステージ105が−x方向に移動している状態で、電子ビーム200を用いて、チップ12のチップデータに定義される図形パターンを試料101に描画する。描画部150は、具体的には以下のように動作する。
【0047】
電子銃201(放出源)から放出された電子ビーム200は、照明レンズ202により矩形の穴を持つ第1のアパーチャ203全体を照明する。ここで、電子ビーム200をまず矩形に成形する。そして、第1のアパーチャ203を通過した第1のアパーチャ像の電子ビーム200は、投影レンズ204により第2のアパーチャ206上に投影される。偏向器205によって、かかる第2のアパーチャ206上での第1のアパーチャ像は偏向制御され、ビーム形状と寸法を変化させる(可変成形させる)ことができる。そして、第2のアパーチャ206を通過した第2のアパーチャ像の電子ビーム200は、対物レンズ207により焦点を合わせ、主偏向器208及び副偏向器209によって偏向され、連続的に移動するXYステージ105に配置された試料101の所望する位置に照射される。
図1では、位置偏向に、主副2段の多段偏向を用いた場合を示している。かかる場合には、主偏向器208でSF30の基準位置Aにステージ移動に追従しながら該当ショットの電子ビーム200を偏向し、副偏向器209でSF30内の各照射位置にかかる該当ショットのビームを偏向すればよい。
【0048】
図9は、実施の形態1における効果を説明するための図である。
図9では、ストライプ領域長さLが小さいチップ12の一例を描画する場合の最大ステージ速度V’を示す図である。
図4で説明したように、ストライプ領域長さLが小さいほど、最大ステージ速度V’を小さくした方が結果的に描画時間を短縮できる。言い換えれば、実施の形態1の効果は、最適ステージ速度が駆動上限速度A1よりも小さくなるストライプ領域長さLのチップ12を描画する場合に、特に、効果的と言える。さらに、パターン密度が粗の領域では、特に効果的である。
【0049】
以上のように、実施の形態1によれば、ストライプ領域長さによっては、最大ステージ速度が駆動上限速度A1よりも小さくなる場合があるが、最大ステージ速度をあえて小さくしても描画時間を短縮できる。
【0050】
実施の形態2.
実施の形態1では、ストライプ領域長さLをチップ12のステージ移動方向(−x方向)サイズとしたが、これに限るものではない。実施の形態2では、さらに詳細にストライプ領域長さLを設定することで、さらに、最適なステージ速度を可変に求める。描画装置100の構成は
図1と同様で構わない。また、以下、特に説明する点以外の内容は、実施の形態1と同様である。
【0051】
図10は、実施の形態2における描画方法の要部工程を示すフローチャート図である。
図10において、実施の形態2における描画方法は、駆動上限速度A1取得工程(S102)と、チップマージ工程(S104)と、ショット分割工程(S120)と、コンパートメントショット数演算工程(S122)と、ストライプ領域長さ演算工程(S126)と、可変上限速度B2演算工程(S128)と、上限速度C2選択工程(S129)と、ショットデータ生成工程(S132)と、ステージ速度分布E2演算工程(S140)と、描画(ステージ駆動)工程(S150)と、いう一連の工程を実施する。
【0052】
駆動上限速度A1取得工程(S102)と、チップマージ工程(S104)と、ショット分割工程(S120)と、コンパートメントショット数演算工程(S122)と、の各工程の内容は、実施の形態1と同様である。
【0053】
ストライプ領域長さ演算工程(S126)として、長さ演算部52は、ストライプ領域長さLとして、チップ12を仮想分割したストライプ領域20のx方向サイズよりも小さいサイズを演算する。
【0054】
図11は、実施の形態2におけるストライプ領域長さの一例を示す図である。
図11に示すように、ストライプ領域20には、複数のショット図形32が照射される。しかし、最初のショット図形が描画される位置が、対象のストライプ領域20の左端とは限らない。ショット図形は、通常、ストライプ領域20の内部に描画されるのであって、左端及び右端には描画されない。そこで、実施の形態2では、ストライプ領域長さLをチップ12のx方向幅で定義するのではなく、描画する際のXYステージ105の移動方向における、複数のストライプ領域20のうちの当該ストライプ領域20内の描き始めのビームのショット(ショット図形32a)と描き終わりのビームのショット(ショット図形32b)との間のx方向(−x方向)(第2の方向)の距離で定義する。既にショット分割工程(S120)において各ショット図形が対応するSF30に割り当てられているので、描き始めのビームのショット(ショット図形32a)と描き終わりのビームのショット(ショット図形32b)の位置がわかる。よって、長さ演算部52は、ストライプ領域長さL’として、当該ストライプ領域20内の描き始めのビームのショット(ショット図形32a)と描き終わりのビームのショット(ショット図形32b)との間のx方向(−x方向)(第2の方向)の距離を演算する。
【0055】
図12は、実施の形態2におけるストライプ領域長さの他の一例を示す図である。上述したように、既にショット分割工程(S120)において各ショット図形が対応するSF30に割り当てられている。よって、長さ演算部52は、ストライプ領域長さL’として、当該ストライプ領域20内の描き始めのビームのショット(ショット図形32)が配置されるSF30aと描き終わりのビームのショット(ショット図形32)が配置されるSF30bとの間のx方向(−x方向)(第2の方向)の距離を演算しても好適である。SF30間の距離は、例えば、SF30の中心位置間の距離としても好適である。SF30自体が非常に小さいので、ストライプ領域長さL’として、SF30間の距離を用いても、チップ12のx方向幅で定義する場合よりも十分高精度な値を得ることができる。
【0056】
可変上限速度B2演算工程(S128)として、可変上限速度演算部54(最大ステージ速度演算部)は、演算されたストライプ領域長さL’に応じて−x方向(第2の方向)にXYステージ105が移動する場合のXYステージ105の最大ステージ速度B2を可変に演算する。具体的には、可変上限速度演算部54は、記憶装置142からL−Vデータを読み出し、L−Vデータを用いて取得されたストライプ領域長さL’に対応する最適ステージ速度Vを最大ステージ速度B2として演算する。
【0057】
上限速度C2選択工程(S129)として、選択部56は、駆動上限速度A1と最大ステージ速度B2とのうち、小さい方を上限速度C2として選択する。
【0058】
ショットデータ生成工程(S132)の内容は、実施の形態1と同様である。
【0059】
ステージ速度分布E2演算工程(S140)として、ステージ速度分布演算部66は、駆動上限速度A1と最大ステージ速度B2とから選択された上限速度C2を用いて、複数のCPM領域22を描画する場合のXYステージ105の速度分布E2を演算する。その他の内容は、実施の形態1と同様である。
【0060】
描画(ステージ駆動)工程(S150)の内容は、実施の形態1と同様である。
【0061】
以上のように、実施の形態2によれば、ストライプ領域長さL’を実施の形態1よりも現実に即してより高精度な値にできる。その結果、さらに、高精度なステージ速度を得ることができ、描画時間の短縮につなげることができる。
【0062】
以上、具体例を参照しつつ実施の形態について説明した。しかし、本発明は、これらの具体例に限定されるものではない。
【0063】
また、装置構成や制御手法等、本発明の説明に直接必要しない部分等については記載を省略したが、必要とされる装置構成や制御手法を適宜選択して用いることができる。例えば、描画装置100を制御する制御部構成については、記載を省略したが、必要とされる制御部構成を適宜選択して用いることは言うまでもない。
【0064】
その他、本発明の要素を具備し、当業者が適宜設計変更しうる全ての荷電粒子ビーム描画装置及び方法は、本発明の範囲に包含される。