(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の実施形態における熱音響装置は、ループ管と、前記ループ管内に配置される第1スタックであって、前記第1スタック内の温度勾配によって前記ループ管に音波を発生させる第1スタックと、前記ループ管内に配置される第2スタックであって、前記ループ管の音波によって前記第2スタック内に温度勾配を発生させる第2スタックと、前記第1スタックの一方端に配置され、前記第1スタックの一方端を前記第1スタックの他方端より高温にする第1高温側熱交換器と、前記第1スタックの他方端に配置され、前記第1スタックの他方端を一方端より低温にする第1低温側熱交換器と、前記第2スタックの両端のうち前記第1高温側熱交換器へ向く方の端に配置される第2高温側熱交換器と、前記第2スタックの両端のうち前記第1低温側熱交換器へ向く方の端に配置される第2低温側熱交換器と、前記ループ管内の、前記第2スタックの前記第2高温側熱交換器が配置される端と、前記第1スタックの一方端との間に設けられ、前記ループ管の軸方向に振動可能な第1振動板とを備える(第1の構成)。
【0013】
上記第1の構成において、第1高温側熱交換器及び第1低温側熱交換器により、第1スタックの一方端と他方端に温度勾配が生じる。第1スタックの温度勾配によってループ管内の作動流体に音波が発生する。この音波によって、第2スタック内に温度勾配が生じる。この温度勾配により、第2スタックの第1低温側熱交換器へ向く方の端の温度が、第2スタックの第1高温側熱交換器へ向く方の端の温度より低くなる。例えば、第2スタックの第2高温側熱交換器によって、第2スタックの高温側の端の温度を制御することで、第2スタックの低温側の端の温度をより低く制御することができる。この場合、第2低温側熱交換器を介して、ループ管の外部の冷却対象を冷却することができる。熱音響装置では、第2スタックの第2高温側熱交換器が配置される端と、第1スタックの第1高温側熱交換器が配置される一方端との間に、第1振動板が設けられる。この位置に第1振動板を設けることにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を増幅することができる。その結果、音エネルギーと熱エネルギーの変換効率を高めることができる。ここで、第1振動板による音波の増幅は、音波の減衰を抑制する場合も含む。
【0014】
上記第1の構成において、前記第2スタックの両端のうち前記第2高温側熱交換器が配置される端と、前記第1振動板とは、前記第1スタックの一方端から前記ループ管の管長の2分の1の距離の位置に対して、第1距離内に配置することができる。ここで、前記第1距離は、前記第1スタックの温度勾配によって前記ループ管に生じる1次モードの周波数の音波の振幅が、前記音波の最大振幅の1/√2倍から1倍となる前記ループ管の部分の長さに相当する距離である(第2の構成)。
【0015】
上記第2の構成では、第1スタックの高温側の一方端からループ管の管長の2分の1の距離の位置に対応するループ管の区間に、第1振動板と第2スタックの高温側の端が配置される。これにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を第1振動板によって増幅する効果をさらに高めることができる。
【0016】
なお、上記の、「第1スタックの一方端からループ管の管長の2分の1の距離」、及び、「第1距離」における「距離」は、ループ管の経路の距離である。ループ管の経路の距離は、ループ管内の中心軸を通る経路の距離とする。以下に述べる「距離」についても同様である。
【0017】
上記第1又は第2の構成において、前記第2スタックの両端のうち前記第2高温側熱交換器が配置される端と、前記第1振動板との距離は、前記ループ管の管長の1/4以下の長さの長さである(第3の構成)。
【0018】
上記第3の構成では、第2スタックの高温側の端からループ管の管長の4分の1の距離の区間に、第1振動板が配置される。これにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を第1振動板によって増幅する効果をさらに高めることができる。
【0019】
上記第1〜第2のいずれかの構成において、前記熱音響装置は、前記ループ管内において、前記第2スタックの両端のうち前記第2低
温側熱交換器が配置される端と前記第1スタックの他方端との間に設けられ、前記ループ管の軸方向に振動可能な第2振動板をさらに備えてもよい(第4の構成)。第2振動板により、第1スタックの温度勾配により発生する音波をさらに増幅させることができる。
【0020】
上記第4の構成において、前記第2振動板は、前記第1スタックの両端のうち前記第1低温側熱交換器が配置される端から第2距離内に配置されてもよい。ここで、前記第2距離は、前記第1スタックの温度勾配によって前記ループ管に生じる1次モードの周波数の音波の振幅が、前記音波の最大振幅の1/√2倍から1倍となる前記ループ管の部分の長さに相当する距離である(第5の構成)。これにより、第2振動板により、第1スタックの温度勾配により発生する音波を増幅する効果をさらに高めることができる。また、前記第1スタックの両端のうち前記第1低温側熱交換器が配置される端と前記第2振動板との距離は、前記ループ管の管長の1/4以下の長さとすることもできる。この場合も同様に、第2振動板による音波増幅効果を高めることができる。
【0021】
上記第1〜第5のいずれかの構成において、前記第1振動板の25℃における共振周波数で振動時の損失係数tanδは、0≦tanδ≦0.5とすることができる(第6の構成)。好ましくは、第1振動板の損失係数tanδを、0≦tanδ≦0.2とすることができ、より好ましくは、0≦tanδ≦0.025とすることができる。すなわち、第1振動板の損失係数tanδは、0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.025以下がさらに好ましい。また、第1振動板の損失係数tanδは、0以上とすることができる。このように、第1振動板の粘性を低くすることで、第1振動板により、第1スタックの温度勾配によって発生するループ管の音波の増幅効果をより高めることができる。
【0022】
なお、第2振動板についても、前記第2振動板の25℃における共振周波数で振動時の損失係数tanδ2は、0≦tanδ2≦0.5とすることができる。好ましくは、第2振動案の損失係数tanδ2を、0≦tanδ2≦0.2とすることができ、より好ましくは、0≦tanδ2≦0.025とすることができる。すなわち、第2振動板の損失係数tanδ2は、0.5以下が好ましく、0.2以下がより好ましく、0.025以下がさらに好ましい。また、第2振動板の損失係数tanδ2は、0以上とすることができる。これにより、第2振動板による音波増幅効果をより高めることができる。
【0023】
第1〜第6のいずれかの構成において、前記第1振動板の被駆動周波数Dと、前記ループ管の共振周波数Fが、D/F≧0.8の関係を有する構成とすることができる(第7の構成)。これにより、第1振動板により、第1スタックの温度勾配によって発生するループ管の音波の増幅効果をより高めることができる。被駆動周波数Dは、ループ管の音波によって振動する第1振動板の周波数である。なお、第2振動板についても、前記第2振動板の被駆動周波数D2と、前記ループ管の共振周波数Fが、D2/F≧0.8の関係を有する構成とすることができる。これにより、第2振動板による音波増幅効果をより高めることができる。被駆動周波数D2は、ループ管の音波によって振動する第2振動板の周波数である。
【0024】
第1〜第7のいずれかの構成において、前記第1振動板は、樹脂又は金属で形成することができる(第8の構成)。第1振動板を樹脂又は金属で形成することで、第1振動板の粘性が、音波増幅効果の観点から適切なものとなる。そのため、第1振動板により、第1スタックの温度勾配によって発生するループ管の音波の増幅効果をより高めることができる。なお、第2振動板も、樹脂又は金属で形成することができる。これにより、第2振動板による音波増幅効果をより高めることができる。
【0025】
第1〜第8のいずれかに構成において、前記第1振動板は、第1スタックの温度勾配によって前記ループ管内に生じる1次モードの周波数の音波の腹の位置から
前記第1距離の範囲内に配置されてもよ
い(第9の構成)。
【0026】
上記第9の構成では、第1スタックの温度勾配によってループ管内に生じる1次モードの周波数の音波の腹の位置に対応するループ管の区間に、第1振動板が配置される。これにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を第1振動板によって増幅する効果をさらに高めることができる。また、前記第1距離を、前記ループ管の管長の10分の1の長さとすることもできる。この場合も同様に、第1振動板による音波増幅効果を高めることができる。
【0027】
前記第2振動板は、第1スタックの温度勾配によって前記ループ管内に生じる1次モードの周波数の音波の腹の位置から第1距離の範囲内に配置されてもよい。これにより、第2振動板による音波増幅効果をより高めることができる。
【0028】
第1〜9のいずれかの構成において、前記第1スタックの一方端から前記ループ管の管長の2分の1の距離の位置を挟んで互いに反対側に、前記第2スタックの両端のうち前記第2高温側熱交換器が配置される端と前記第1振動板とが配置されてもよい(第10の構成)。すなわち、前記第1振動板と、前記第2スタックの高温側の端との間に、前記第1スタックの高温側の端から第2スタックの高温側へ向けてループ管の管長の2分の1の距離の位置が配置されてもよい。これにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を第1振動板によって増幅する効果をさらに高めることができる。
【0029】
第1〜10のいずれかの構成において、前記第1振動板は、前記第2スタックの両端のうち前記第2高温側熱交換器が配置される端から前記第1スタックの前記一方端までの管内の経路の中央の位置よりも、前記第2スタック寄りの位置に配置されてもよい(第11の構成)。これにより、第1スタックの温度勾配により発生する音波を第1振動板によって増幅する効果をさらに高めることができる。
【0030】
以下、実施形態について図面を参照しつつ説明する。図中同一及び相当する構成については同一の符号を付し、同じ説明を繰り返さない。説明の便宜上、各図において、構成を簡略化又は模式化して示したり、一部の構成を省略して示したりする場合がある。
【0031】
(実施形態1)
[熱音響装置の構成例]
図1は、本実施形態における熱音響装置の構成例を示す図である。熱音響装置10は、1つのループ管3と、ループ管3内に設けられた第1スタック13及び第2スタック23を備える。ループ管3には、作動流体が封入される。作動流体は、例えば、空気、窒素、ヘリウム、アルゴン、又はそれらのうち少なくとも2つの混合気とすることができる。ループ管3には、枝管は接続されない。
【0032】
第1スタック13は、ループ管3の長さ方向(軸方向又は管内経路の方向とも称することができる)に貫通する複数の導通路13kを有する。第2スタック23も、ループ管3の長さ方向に貫通する複数の導通路23kを有する。導通路13k、23kは、作動流体の流路となっている。すなわち、第1スタック13及び第2スタック23において、導通路13k、23k内を作動流体が移動可能となっている。作動流体は、第1スタック13及び第2スタック23を、ループ管3の長さ方向に通り抜けることができる。なお、スタックは、蓄熱器と称することもできる。
【0033】
第1スタック13内の温度勾配が臨界点を越えると、スタック13内の作動流体が振動する。第2スタック23内の温度勾配が臨界点を越えると、スタック23内の作動流体が振動する。作動流体の振動は音波を発生させる。その結果、ループ管3内の作動流体に定在波を含む音波が発生する。また、ループ管3内の音波によって、第1スタック13又は第2スタック23内の作動流体が振動すると、第1スタック13又は第2スタック23内に温度勾配が発生する。温度勾配は、第1スタック13のループ管3の長さ方向における一方端(一方側)13Aと他方端(他方側)13Bの間に発生する。同様に、第2スタック23のループ管3の長さ方向における一方端(一方側)23Aと他方端(他方側)23Bの間に温度勾配が発生する。このように、第1スタック13及び第2スタック23は、熱エネルギーと音エネルギーを相互に変換することができる。
【0034】
第1スタック13及び第2スタック23は、例えば、ループ管3の長さ方向に延びる複数の壁によって、導通路13k、23kを形成する構造とすることができる。この場合、ループ管3の長さ方向に垂直な断面における複数の壁の形状を、例えば、格子状とすることができる。又は、第1スタック13及び第2スタック23は、ループ管3の長さ方向に伸びる柱状体に、同長さ方向に貫通する複数の孔を設けた構造とすることもできる。又は、第1スタック13及び第2スタック23は、ループ管3の長さ方向に伸び、ループ管3の長さ方向に貫通する孔を有する中空の柱を複数並べた構造とすることができる。この場合、例えば、各柱の軸方向に垂直な面の断面を六角形とすることで、柱を隙間なく並べることができる。すなわち、第1スタック13及び第2スタック23を、ハニカム構造とすることができる。
【0035】
第1スタック13及び第2スタック23は、例えば、金属、又は、セラミック等で形成することができる。第1スタック13及び第2スタック23は、多数の導通路13k、23kを有することが好ましい。導通路13k、23kの各々のループ管3の方向に垂直な断面の面積は、ループ管3の内部の同断面の面積に比べて十分小さいことが好ましい。なお、第1スタック13と第2スタック23は、必ずしも同じ構成でなくてもよい。
【0036】
本実施形態では、第1スタック13の一方端13Aの温度が他方端13Bの温度より高くなるよう温度勾配が発生する。第1スタック13内の温度勾配により、ループ管3に音波が発生する。第1スタック13内の温度勾配により発生した音波によって、第2スタック23内に温度勾配が発生する。
【0037】
第1スタック13及び第2スタック23のそれぞれの一方端13A、23Aと他方端13B、23Bには、熱交換器14、24、12、22が設けられる。熱交換器14、24、12、22は、ループ管3の外部と第1スタック13又は第2スタック23との間で熱を交換する。熱音響装置10の動作時は、ループ管3内に音波が生じ、第1スタック13の一方端13Aと他方端13Bの間、及び第2スタック23の一方端23Aと他方端23Bとの間に温度勾配が生じる。第1スタック13の両端のうち、熱音響装置10の動作時に温度勾配で高温となる一方端13Aに配置される熱交換器14を第1高温側熱交換器14とし、低温となる他方端13Bに配置される熱交換器12を第1低温側熱交換器12とする。第2スタック23の両端のうち、熱音響装置10の動作時に温度勾配で高温となる一方端23Aに設けられる熱交換器24を第2高温側熱交換器24とし、低温となる他方端23Bに設けられる熱交換器22を第2低温側熱交換器22とする。なお、熱交換器14、24、12、22は、必ずしも、スタック13、23の一方端13A、23A又は他方端13B、23Bに接していなくてもよい。
【0038】
第1高温側熱交換器14は、第1スタック13の一方端13Aに対応する位置に配置される。第1高温側熱交換器14は、例えば、ループ管3内に配置される管内部分と、ループ管3外に配置される管外部分を含んでもよい。管内部分は、ループ管3内の第1スタック13の一方端13Aに対向し、複数の導通路を有する構成とすることができる。管外部分は、ループ管3の外周面の第1スタック13の一方端13Aに対応する位置に配置される構成とすることができる。
【0039】
第1低温側熱交換器12は、第1スタック13の他方端13Bに対応する位置に配置される。第1低温側熱交換器12は、例えば、ループ管3内に配置される管内部分と、ループ管3外に配置される管外部分を含んでもよい。管内部分は、ループ管3内の第1スタック13の他方端13Bに対向し、複数の導通路を有する構成とすることができる。管外部分は、ループ管3の外周面の第1スタック13の他方端13Bに対応する位置に配置される構成とすることができる。このように、第1スタック13のループ管3の長さ方向の両端に、第1高温側熱交換器14及び第1低温側熱交換器12が配置される。第1高温側熱交換器14及び第1低温側熱交換器12は、第1スタック13を挟むように配置される。
【0040】
第1高温側熱交換器14は、ループ管3の外部からの熱により第1スタック13の一方端13Aを加熱する。第1高温側熱交換器14により、第1スタック13の一方端13Aは、他方端13Bより高温になる。第1高温側熱交換器14は、外部の熱源30に熱伝導可能に接続される。熱源30の熱は、第1高温側熱交換器14を介して第1スタック13の一方端13Aへ伝わる。
【0041】
第1低温側熱交換器12は、ループ管3の外部と第1スタック13の他方端13Bとの間で熱を伝導することにより、第1スタック13の他方端13Bの温度を調整する。例えば、第1低温側熱交換器12は、第1スタック13の他方端13Bの温度を所定の基準温度より上がらないようにすることができる。第1低温側熱交換器12により、第1スタック13の他方端13Bが一方端13Aより低温になる。このようにして、第1高温側熱交換器14及び第1低温側熱交換器12によって、第1スタック13の一方端13Aと他方端13Bの間の温度勾配(温度差)を制御することができる。
【0042】
第1低温側熱交換器12、第1スタック13、及び第1高温側熱交換器14は、入力された熱を作動流体の振動に変換して音波を発生させる熱音響原動機(熱音響エンジン)を構成する。
【0043】
本実施形態では、第1スタック13内に生じた温度勾配によって発生した音波により第2スタック23内に温度勾配が生じると、第2スタック23の他方端23Bの温度が、一方端23Aの温度より低くなる。第2高温側熱交換器24は、第1スタック13内の温度勾配に起因して第2スタック23内に温度勾配が生じた際に、高温となる一方端23Aに設けられる。第2低温側熱交換器22は、第1スタック13の温度勾配に起因して第2スタック23に温度勾配が生じた際に、低温となる他方端23Bに設けられる。
【0044】
言い換えれば、第2高温側熱交換器24は、第2スタック23の両端のうち第1高温側熱交換器14へ向く方の端(一方端23A)に配置される。第2低温側熱交換器22は、第2スタック23の両端のうち第1低温側熱交換器12へ向く方の端(他方端23B)に配置される。ここで、第1高温側熱交換器14へ向くとは、ループ管3内の経路において第1高温側熱交換器14へ向いていることである。すなわち、第1高温側熱交換器14へ向くスタック23の一方端23Aから出て、ループ管3内の経路を進むと、第1低温側熱交換器12よりも先に、第1高温側熱交換器14に到達する。同様に、第1低温側熱交換器12に向くとは、ループ管3内の経路において第1低温側熱交換器12へ向いていることである。すなわち、第1低温側熱交換器12へ向くスタック23の他方端23Bから出て、ループ管3内の経路を進むと、第1高温側熱交換器14よりも先に、第1低温側熱交換器12に到達する。
【0045】
第2高温側熱交換器24は、第2スタック23の一方端23Aに対応する位置に配置される。第2高温側熱交換器24は、例えば、ループ管3内に配置される管内部分と、ループ管3外に配置される管外部分を含んでもよい。管内部分は、ループ管3内の第2スタック23の一方端23Aに対向し、複数の導通路を有する構成とすることができる。管外部分は、ループ管3の外周面の第2スタック23の一方端23Aに対応する位置に配置される構成とすることができる。
【0046】
第2低温側熱交換器22は、第2スタック23の他方端23Bに対応する位置に配置される。第2低温側熱交換器22は、例えば、ループ管3内に配置される管内部分と、ループ管3外に配置される管外部分を含んでもよい。管内部分は、ループ管3内の第2スタック23の他方端23Bに対向し、複数の導通路を有する構成とすることができる。管外部分は、ループ管3の外周面の第2スタック23の他方端23Bに対応する位置に配置される構成とすることができる。このように、第2スタック23のループ管3の長さ方向の両端に、第2高温側熱交換器24及び第2低温側熱交換器22が配置される。第2高温側熱交換器24及び第2低温側熱交換器22は、第2スタック23を挟むように配置される。
【0047】
第2高温側熱交換器24は、ループ管3の外部と第2スタック23の一方端23Aとの間で熱を伝導することにより、第2スタック23の一方端23Aの温度を調整する。例えば、第2高温側熱交換器24は、第2スタック23の一方端23Aの温度を一定に保つことができる。
【0048】
第2低温側熱交換器22は、ループ管3の外部の熱を吸収して、第2スタック23の他方端23Bへ取り込む。これにより、ループ管3の外部を冷却する。言い換えれば、第2低温側熱交換器22は、第2スタック23内に生じた温度勾配によって温度が低下した第2スタック23の他方端23Bの冷熱を取り出し、ループ管3の外部へ伝える。第2低温側熱交換器22は、例えば、ループ管3の外部の冷却対象40に熱伝導可能に接続される。
【0049】
第2低温側熱交換器22、第2スタック23、及び第2高温側熱交換器24は、音波(作動流体の振動)から温度勾配を発生させる熱音響ヒートポンプを構成する。
【0050】
図1に示す構成において、熱源30の熱は、第1高温側熱交換器14を介して、第1スタック13の一方端13Aに伝えられる。これにより、第1スタック13の一方端13Aが、加熱される。第1低温側熱交換器12は、ループ管3の外部と第1スタック13の他方端13Bとの間で熱を伝導することにより、第1スタック13の他方端13Bを所定の第1基準温度(例えば、室温)以下に維持する。これにより、第1スタック13の一方端13Aの温度は他方端13Bの温度より高くなる。すなわち、第1スタック13の一方端13Aと他方端13Bとの間に温度勾配(温度差)が発生する。
【0051】
第1スタック13内の温度勾配が臨界点を超えると、第1スタック13内の作動流体が振動して音波が生じる。第1スタック13内の作動流体の振動は、ループ管3内の作動流体に伝わる。これにより、ループ管3内には、音波が発生する。音波の振動により、第2スタック23の作動流体が振動する。第2スタック23内の作動流体が振動すると、第2スタック23内に温度勾配(温度勾配)が生じる。すなわち、第2スタック23の一方端23Aの温度が、他方端23Bの温度より高くなる。
【0052】
第2高温側熱交換器24は、ループ管3の外部と第2スタック23の一方端23Aとの間で熱を伝導することにより、第2スタック23の一方端23Aを所定の第2基準温度(例えば、室温)に維持する。そのため、第2スタック23内に温度勾配が生じると、第2スタック23の他方端23Bの温度は、第2基準温度より低くなる。すなわち、第2スタック23の他方端23Bは冷却される。第2低温側熱交換器22は、第2スタック23の他方端23Bの冷熱をループ管3の外部の冷却対象40へ伝える。これにより、冷却対象40が冷却される。
【0053】
[振動板の構成例]
従来、熱音響装置のループ管の作動流体を隔離する遮断壁により、気体の移動を遮断することが行われていた(例えば、特開2012−159266号公報(特許文献1)参照)。このようなループ管内の遮断壁は、熱音響装置の動作に必要な音波の振動を妨げないことが好ましい。遮断壁は、音波の振動を妨げないために振動可能に構成されていた。発明者らは、ループ管に設ける振動膜の様々な構成について検討したところ、ループ管内に振動板を設けることにより、ある条件下では、ループ管内の音波を増幅できる場合があることを見出した。そして、さらなる検討の結果、発明者らは、第1スタックの高温側の端と、第2スタックの高温側の端との間のループ管の経路上に振動板を設けることで、熱音響装置の動作に寄与するループ管内の音波を増幅できることを見出した。本実施形態の熱音響装置10の構成は、このような知見に基づいている。
【0054】
ループ管3内の、第2スタック23の第2高温側熱交換器24が配置される一方端23Aと、第1スタック13の第1高温側熱交換器14が配置される一方端13Aとの間に、第1振動板4が設けられる。第1振動板4は、ループ管3の軸方向(長さ方向)に振動可能な板である。第1振動板4は、板状の弾性体で形成される。第1振動板4は、ループ管3内において、第1スタック13の一方端13Aと、第2スタック23の一方端23Aの間のループ管3の経路K1上に配置される。この位置に第1振動板4を配置することで、第1スタック13の温度勾配により発生したループ管3内の音波を、第1振動板4によって増幅することができる。また、この位置に配置された第1振動板4により、第1スタックの温度勾配により発生した音波の周波数が調整される。これにより、熱音響効果の効率を向上させることができる。
【0055】
図1に示す例では、第1振動板4は、第1スタック13の一方端13Aから、第2スタック23の一方端23Aまでのループ管3内の経路K1の中央Hの位置よりも、第2スタック23寄りの位置(経路K2上の位置)に配置される。これにより、第1振動板4による音波の増幅効果を高めることができる。好ましくは、第1スタック13の一方端13Aから第2スタック23の一方端23Aまでのループ管3内の経路K1のうち、第2スタック23側の4分の1の範囲内の位置(経路K3上の位置)に、第1振動板4を設けることができる。
【0056】
図2は、第1振動板4が配置されたループ管3の断面図である。
図2は、ループ管3の中心軸Jを含む面における第1振動板4及びループ管3の断面を示している。
図2に示すように、第1振動板4の端部は、ループ管3の内面に固定される。第1振動板4の表面は、ループ管3の中心軸Jに垂直に配置される。第1振動板4は、ループ管3の軸方向(長さ方向)に振動可能となる。
図2の例では、第1振動板4の中心部(ループ管3の中心軸Jが通る部分)で、振幅Wが最も大きくなる。
【0057】
[振動板の配置位置]
発明者らは、第1振動板4の配置位置について鋭意検討した結果、下記の第1振動板4の配置例に想到した。
【0058】
<第1振動板の配置例1>
図3は、第1振動板4の配置例を説明するための図である。
図3は、説明を分かりやすくするために、
図1に示すループ管3を直線状に展開して示している。
図3に示す配置例では、第1振動板4と第2スタック23の第2高温側熱交換器24が配置される一方端23Aは、第1スタック13の一方端13Aからループ管3の管長Lの2分の1の距離(L/2)の位置Tに対して、第1距離C1内に配置される。第1距離C1は、例えば、ループ管3の管長Lの10分の1の長さ(L/10)とすることができる。発明者らは、このように第1距離C1を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第1振動板4によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0059】
また、第1距離C1は、ループ管3の管長Lの20分の1の長さ(L/20)としてもよい。これにより、第1振動板4による音波増幅効果をより高めることができる。また、第2スタック23の両端のうち、第2高温側熱交換器24が配置される一方端23Aと、第1振動板4との距離F1が、ループ管3の管長Lの1/4以下の長さ(すなわち、F1≦L/4)になるように、第1振動板4は配置される。この構成においても、第1振動板4による音波増幅効果を高めることができる。好ましくは、距離F1をループ管3の管長Lの1/8以下の長さ(すなわち、F1≦L/8)とすることができる。
【0060】
<第1振動板の配置例2>
図4は、第1振動板4の他の配置例を説明するための図である。
図4は、説明を分かりやすくするために、
図1に示すループ管3を直線状に展開して示している。また、
図4の下部に、スタック12の温度勾配によってループ管3に発生する1次モードの周波数の音波TWの波形例を示している。
図4に示す例では、
図3と同様に、第1振動板4と第2スタック23の第2高温側熱交換器24が配置される一方端23Aは、第1スタック13の一方端13Aからループ管3の管長Lの2分の1の距離(L/2)の位置Tに対して、第1距離C1内に配置される。
【0061】
図4に示す配置例では、第1距離C1が、第1スタック13の温度勾配によって生じるループ管3の1次モードの周波数の音波の形状によって決められる。
図4に示す例では、第1距離C1は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが最大振幅Mの1/√2倍から1倍((1/√2)M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さ(距離)D1に相当する距離である(C1=D1)。発明者らは、このように第1距離C1を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第1振動板4によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0062】
また、第1距離C1は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが、最大振幅Mの0.9倍から1倍(0.9M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さ(距離)に相当する距離としてもよい。
【0063】
図3及び
図4に示す例では、第1スタック13の一方端13Aから第2スタック23の一方端23Aへ向かってループ管3の管長の2分の1の距離の位置Tを挟んで、互いに反対側に、第2スタック23の一方端23Aと、第1振動板4とが配置される。発明者らは、このように、第1スタック13、第2スタック23及び第1振動板4を配置することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第1振動板4によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0064】
なお、第2スタック23の一方端23A及び第1振動板4が、いずれも、上記位置Tから第1距離C1内であって、上記位置Tに対して同じ側に配置してもよい。
【0065】
<第1振動板の配置例3>
図5は、第1振動板4の他の配置例を説明するための図である。
図5は、説明を分かりやすくするために、
図1に示すループ管3を直線状に展開して示している。また、
図5の下部に、スタック12の温度勾配によってループ管3に発生する1次モードの周波数の音波TWの波形例を示している。
図5に示す配置例では、第1振動板4は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3内に生じる1次モードの周波数の音波の腹Uの位置から第1距離C1の範囲内に配置される。本例では、腹Uの位置は、1次モードの周波数の音波の振幅が最も大きくなる位置のうち、第1スタック13から遠い方の位置である。
【0066】
第1距離C1は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが、音波の最大振幅Mの1/√2倍から1倍((1/√2)M≦TA≦M)となる前記ループ管の連続する区分の長さD1に相当する距離である(C1=D1)。また、第1距離C1は、上記音波の振幅TAが、最大振幅Mの0.9倍から1倍(0.9M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さに相当する距離としてもよい。発明者らは、このように第1距離C1を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第1振動板4によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0067】
なお、
図5において、第1距離C1は、例えば、ループ管3の管長Lの10分の1の長さ(L/10)又は、ループ管3の管長Lの20分の1の長さ(L/20)とすることができる。発明者らは、このように、音波の腹Uからの第1距離C1を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第1振動板4によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出している。
【0068】
[スタックの端]
図6は、
図1に示す第1スタック13、第1高温側熱交換器14、第1低温側熱交換器12の構成例を示す断面図である。
図6に示す例では、第1低温側熱交換器12は、管内部分12bと、管外部分12aを含む。管内部分12bは、ループ管3内に、第1スタック13の他方端13Bに対向して配置される。管内部分12bは、ループ管3の長さ方向に貫通する複数の導通路を有する。導通路を作動流体が通り抜けることができる。
【0069】
管外部分12aは、第1スタック13の他方端13Bの径方向外側のループ管3の外周面を囲むように形成される。管外部分12aは、ループ管3の外周面を囲む流路12cを有する。流路12cには流体5が流れる。流体5は、ループ管3の外周面を周方向に沿って流れる。図示しないが、流路12cは、流体5が流入する流入口と、流体5が流出する流出口を有する。
【0070】
第1高温側熱交換器14は、管内部分14bと、管外部分14aを含む。管内部分14bは、ループ管3内に、第1スタック13の一方端13Aに対向して配置される。管内部分14bは、ループ管3の長さ方向に貫通する複数の導通路を有する。導通路を作動流体が通り抜けることができる。管外部分14aは、第1スタック13の一方端13Aの径方向外側のループ管3の外周面を囲むように形成される。管外部分14aは、金属等の熱伝導体で形成される。
【0071】
図6に示す例では、第1スタック13の一方端13Aは、第1高温側熱交換器14の管内部分14bに対向する面となる。第1スタック13の他方端13Bは、第1低温側熱交換器12の管内部分12bに対向する面となる。第2スタック23も、
図6と同様の構成にすることができる。この場合、第2スタック23の一方端23Aは、第2高温側熱交換器24の管内部分に対向する面となる。第2スタック23の他方端23Bは、第2低温側熱交換器22の管内部分に対向する面となる。なお、第2スタック23では、第2高温側熱交換器24の管外部分に、
図6に示す流路12cと同様の流路を設けることができる。
【0072】
図7は、
図1に示す第1スタック13、第1高温側熱交換器14、第1低温側熱交換器12の他の構成例を示す断面図である。
図7に示す例では、第1高温側熱交換器14、第1低温側熱交換器12は、管内部分を有さず、管外部分14a、12aで構成される。管外部分14aは、第1スタック13の一方端13Aから第1スタック13の内側に入った部分を、ループ管3の外周から取り囲むように設けられる。管外部分12aは、第1スタック13の他方端13Bから第1スタック13の内側に入った部分を、ループ管3の外周から取り囲むように設けられる。
【0073】
図7に示す構成では、第1スタック13のループ管3の長さ方向における両端面のうち、第1高温側熱交換器14が設けられた方の端面が、一方端13Aとなり、第1低温側熱交換器12が設けられた方の端面が、他方端13Bとなる。第2スタック23を、
図7と同様に構成した場合、第2スタック23のループ管3の長さ方向における両端面のうち、第2高温側熱交換器24が設けられた方の端面が、一方端23Aとなり、第2低温側熱交換器22が設けられた方の端面が、他方端23Bとなる。
【0074】
図8は、本実施形態における熱音響装置の構成例を示す図である。
図8に示す熱音響装置10は、
図1に示す構成において、第2振動板6を追加した構成である。第2振動板6は、ループ管3内の、第2スタック23の第2低
温側熱交換器22が配置される他方端23Bと、第1スタック13の他方端13Bとの間に設けられる。第2振動板6は、ループ管3の軸方向(長さ方向)に振動可能である。第2振動板6は、板状の弾性体で形成される。第2振動板6は、第1スタック23の他方端13Bと、第2スタック23の他方端23Bの間のループ管3の経路K4上に配置される。この位置に第2振動板6を配置することで、第1スタック13の温度勾配により発生したループ管3内の音波を、第2振動板6によってさらに増幅することができる。
【0075】
図8に示す例では、第2振動板6は、第1スタック13の他方端13Bから、第2スタック23の他方端23Bまでのループ管3内の経路K6の中央H2の位置よりも、第1スタック13寄りの位置(経路K5上の位置)に配置される。これにより、第2振動板6による音波の増幅効果を高めることができる。好ましくは、第1スタック13の他方端13Bから第2スタック23の他方端23Bまでのループ管3内の経路K4のうち、第1スタック13側の4分の1の範囲内の位置(経路K6上の位置)に、第2振動板6を設けることができる。
【0076】
<第2振動板の配置例1>
図9は、第2振動板6の配置例を説明するための図である。
図9は、説明を分かりやすくするために、
図8に示すループ管3を直線状に展開して示している。
図9に示す配置例では、第2振動板は、第1スタック13の第1低温側熱交換器12が配置される他方端13Bから第2距離C2内に配置される。第2距離C2は、例えば、ループ管3の管長Lの4分の1の長さ(L/4)とすることができる。すなわち、第1スタック13の他方端13Bと第2振動板6との距離は、ループ管3の管長Lの1/4以下とすることができる。発明者らは、このように第2距離C2を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第2振動板6によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。また、第2距離C2は、ループ管3の管長Lの8分の1の長さ(L/8)としてもよい。これにより、第2振動板6による音波増幅効果をより高めることができる。さらに好ましくは、第2距離C2を、ループ管3の管長Lの20分の1の長さ(L/20)とすることもできる。
【0077】
<第2振動板の配置例2>
図10は、第2振動板6の他の配置例を説明するための図である。
図10は、
図8に示すループ管3を直線状に展開して示している。また、
図10の下部に、スタック12の温度勾配によってループ管3に発生する1次モードの周波数の音波TWの波形例を示している。
図10に示す例では、
図9と同様に、第2振動板6は、第1スタック13の他方端13Bから第2距離C2内に配置される。
【0078】
図10に示す配置例では、第2距離C2が、第1スタック13の温度勾配によって生じるループ管3の1次モードの周波数の音波の形状によって決められる。
図10に示す例では、第2距離C2は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが、音波の最大振幅Mの01/√2倍から1倍((1/√2)M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さ(距離)D1に相当する距離である(C2=D1)。発明者らは、このように第2距離C2を設定することで、第2スタック23の温度勾配により発生する音波を第2振動板6によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0079】
また、第2距離C2は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが、最大振幅Mの0.9倍から1倍(0.9M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さに相当する距離としてもよい。
【0080】
<第2振動板の配置例3>
図11は、第2振動板6の他の配置例を説明するための図である。
図11は、説明を分かりやすくするために、
図8に示すループ管3を直線状に展開して示している。また、
図11の下部に、スタック12の温度勾配によってループ管3に発生する1次モードの周波数の音波TWの波形例を示している。
図11に示す配置例では、第2振動板6は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3内に生じる1次モードの周波数の音波の腹U2の位置から第2距離C2の範囲内に配置される。本例では、腹U2の位置は、1次モードの周波数の音波の振幅が最も大きくなる位置U1、U2のうち、第1スタック13から近い方の位置である。
【0081】
第2距離C2は、第1スタック13の温度勾配によってループ管3に生じる1次モードの周波数の音波の振幅TAが、音波の最大振幅Mの1/√2倍から1倍((1/√2)M≦TA≦M)となる前記ループ管3の連続する区間の長さD1に相当する距離である(C2=D1)。また、第2距離C2は、上記音波の振幅TAが、音波の最大振幅Mの0.9倍から1倍(0.9M≦TA≦M)となるループ管3の連続する区間の長さに相当する距離としてもよい。発明者らは、このように第2距離C2を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第2振動板6によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出した。
【0082】
なお、
図11において、第2距離C2は、例えば、ループ管3の管長Lの4分の1の長さ(L/4)、又は、ループ管3の管長Lの8分の1の長さ(L/8)、若しくは、ループ管3の管長Lの20分の1の長さ(L/20)とすることができる。発明者らは、このように、音波の腹U2からの第2距離C2を設定することで、第1スタック13の温度勾配により発生する音波を第2振動板6によって増幅する効果をさらに高めることができることを見出している。
【0083】
なお、上記
図9〜
図11に示す第2振動板6の配置例1〜3において、第1振動板4の配置は、例えば、上記
図3〜6に示す第1振動板4の配置例1〜3のいずれかにすることができる。また、上記
図9〜
図11に示す第2振動板6の配置例1〜3において、第1振動板4と第2振動板6との距離E1は、例えば、ループ管3の管長Lの2分の1とすることができる。これにより、第2振動板6の追加による音波の増幅効果を、より高めることができる。
【0084】
[振動板の材料]
上記実施形態1、2における第1振動板4及び第2振動板6は、例えば、金属又は樹脂で形成することができる。発明者らは、第1スタック13の温度勾配により発生するループ管3の音波を効率よく増幅するための第1振動板4及び第2振動板6の材料について、種々の検討を行った。その結果、音波の増幅の観点からは、第1振動板4及び第2振動板6は、ゴムのように粘性が高い材料よりも、樹脂又は金属のように、粘性が低い材料が好ましいことがわかった。
【0085】
例えば、第1振動板4の25℃における共振周波数で振動時の損失係数tanδは、
0≦tanδ≦0.5であることが好ましい。損失係数tanδが0.5以下の材料で第1振動板4を形成することで、第1振動板4による音波増幅効果がより得られやすくなる。また、0≦tanδ≦0.2とすることがより好ましく、0≦tanδ≦0.025とすることがさらに好ましい。
【0086】
同様に、第2振動板6の25℃における共振周波数で振動時の損失係数tanδは、0≦tanδ≦0.5であることが好ましい。損失係数tanδが0.5以下の材料で第1振動板4を形成することで、第2振動板6による音波増幅効果がより得られやすくなる。また、0≦tanδ≦0.2とすることがより好ましく、0≦tanδ≦0.025とすることがさらに好ましい。
【0087】
図12は、第1振動板4の損失係数tanδと熱音響装置10の冷却効果の関係を測定した結果を示すグラフである。
図12に示す測定では、様々な損失係数の振動板を、
図1に示す熱音響装置10の第1振動板4として用いて、熱音響装置10の冷却効果を測定した。冷却効果は、熱音響装置10の動作時の第2低温側熱交換器22と第2高温側熱交換器24の温度差を所定の基準温度で除した値で表される。損失係数tanδは、損失弾性率G"/貯蔵弾性率G' であり、粘性と弾性の比と考えることができる。損失係数tanδの測定は、動的粘弾性測定装置を用いた。すなわち、振動板に応力を入力し、入力応力に対する応答の位相差δを測定した。損失係数tanδの測定は、25℃の雰囲気下で、第1振動板4の共振周波数で振動する応力を、第1振動板4に加えて、第1振動版4の応答変形の入力応力に対する位相差を測定することにより行った。
【0088】
図12に示す測定結果から、第1振動板4の損失係数tanδが、0≦tanδ≦0.025の範囲において、熱音響装置10による冷却効果が特に良好となることがわかった。また、第1振動板4の損失係数tanδが、0.020以下の場合に、さらに良好な冷却効果が得られた。
【0089】
また、発明者らは、第1振動板4の被駆動周波数Dと、ループ管3の共振周波数Fの比(D/F)を1に近づけることで、第1スタック13の温度勾配により発生するループ管3の音波を効率よく増幅することができることを見出した。例えば、D/Fの下限は、D/F≧0.8とすることが好ましく、D/F≧0.85とすることがより好ましく、D/F≧0.9とすることがさらに好ましい。D/Fの上限は、例えば、D/F≦1.1とするのが好ましく、D/F≦1.0とするのがさらに好ましい。D/Fの範囲は、例えば、1.1≧D/F≧0.8とするのが好ましく、1.0≧D/F≧0.85とするのがより好ましい。
【0090】
なお、被駆動周波数Dとは、ループ管3の音波の振動によって振動する第1振動板4の周波数である。この被駆動周波数Dとループ管3の共振周波数Fとの比(D/F)を1に近づけるには、例えば、第1振動板4に、ループ管3の共振周波数Fに近い値の共振周波数を設定することで実現できる。また、第1振動板4の共振周波数が、ループ管3の共振周波数Fより小さい場合であっても、例えば、第1振動板4の共振周波数の高調波周波数がループ管3の共振周波数Fに近くなるように、第1振動板4の共振周波数を設定することができる。
【0091】
第2振動板6の被駆動周波数D2とループ管3の共振周波数Fの比(D2/F)も、第1振動板4と同様に、1に近い方が好ましい。
【0092】
図13は、第1振動板4の被駆動周波数Dと、ループ管3の共振周波数Fの比(D/F)と熱音響装置10の冷却効果の関係を測定した結果を示すグラフである。
図13に示す測定では、ループ管3の音波が基本波であることを前提として、
図1に示す熱音響装置10の第1振動板4の構成を変えて、熱音響装置10の冷却効果を測定した。第1振動板4の被駆動周波数Dは、様々な周波数の振動を第1振動板4に入力することによって測定した。ループ管3の共振周波数Fは、様々な周波数の振動をループ管3に入力することによって測定した。熱音響装置10の動作時の第2低温側熱交換器22と第2高温側熱交換器24の温度差を所定の基準温度で除した値で表される。
【0093】
図13の測定結果において、ループ管3の共振周波数Fは、ループ管3の一次モードの周波数とした。
【0094】
図13に示す測定結果から、第1振動板4の被駆動周波数Dと、ループ管3の共振周波数Fの比(D/F)は1に近い方が好ましいことがわかった。具体的には、D/Fは、1.0≧D/F≧0.8とすることが好ましく、1.0≧D/F≧0.85とすることがより好ましく、1.0≧D/F≧0.9とすることがさらに好ましいことがわかった。
【0095】
[振動板の共振周波数]
第1振動板4及び第2振動板6の共振周波数は、例えば、主に、振動板の面積、厚み、曲げ剛性から、推定(計算)することができる。また、ループ管3の共振周波数は、主に、ループ管3の管長Lから推定(計算)することができる。例えば、第1振動板4及び第2振動板6の共振周波数fnsは、下記式(1)によって計算することができる。下記式(1)は、振動板を円形膜とした場合の計算式である。
【0096】
【数1】
R:円形膜の半径
T:単位長さ当たりの一定の張力(N/m)
ρ
α:単位面積当たりの質量
λnsのn:周方向の次数(節直径の数)
λnsのs:半径方向の次数(節円の数)
【0097】
図14は、円形膜の振動板の固有モードと固有値λnsの例を示す図である。
図14において、円の中の白抜きの部分と斜線の部分は異なる位相で振動することを示している。例えば、
図14に示す固有モードG1は、節直径の数n=0、節円の数s=0の固有モードである。この場合、固有値λ
00=0.765となる。固有モードG2は、節直径の数n=1、節円の数s=0の固有モードである。この場合、固有値λ
10=1.216となる。
【0098】
上記のように、振動板の共振周波数を計算することで、ループ管内の音波を効率よく増幅できる振動板の設計が容易になる。また、例えば、上記実施形態1における第1振動板4の配置例1〜3と、上記振動板の好ましい材料特性とを組み合わることで、第1振動板4によるループ管3の音波の増幅効果を、効率よく高めることができる。
【0099】
なお、第1振動板4の位置に関わらず、第1振動板4の材料に上記の好ましい例を用いることで、第1振動板4によるループ管3の音波の増幅効果を奏することができる。例えば、他の実施形態として、第1高温側熱交換器14及び第1低温側熱交換器12の間の第1スタック13、及び第2高温側熱交換器24及び第2低温側熱交換器22の間の第2スタック23を管内に有するループ管3において、第1振動板4と同様の構成の振動板をループ管3内に配置することができる。この構成おいて、振動板の25℃における共振周波数で振動時の損失係数tanδを、0≦tanδ≦0.5とすることができる。好ましくは、振動板の損失係数tanδを0.2以下、さらに好ましくは、振動板の損失係数を0.025以下とすることができる。これにより、振動板がループ管3内のいずれの位置に配置されていても、振動板によるループ管3の音波の増幅効果を得ることができる。或いは、振動板の被駆動周波数Dと、ループ管の共振周波数Fが、D/F≧0.8の関係を有する構成とすることができる。これによっても、振動板によるループ管3の音波の増幅効果を得ることができる。
【0100】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記実施形態に限られない。スタック13、23の構成は、上記例に限られない。例えば、第1スタック13及び第2スタック23の、管3の長さ方向に貫通する複数の導通路13k、23kは、湾曲していてもよい。
【0101】
上記の熱音響装置10では、第2のスタックの温度勾配を利用してループ管の外部の物を冷却する熱音響冷却装置である。熱音響装置の用途は、冷却装置に限られない。例えば、熱音響装置10は、例えば、第2のスタックの温度勾配を利用してループ管の外部の物を加熱する熱音響加熱装置とすることもできる。