(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6781982
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】熱電変換モジュールとその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 35/32 20060101AFI20201102BHJP
H01L 35/24 20060101ALI20201102BHJP
H01L 35/34 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
H01L35/32 A
H01L35/24
H01L35/34
【請求項の数】9
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-139328(P2016-139328)
(22)【出願日】2016年7月14日
(65)【公開番号】特開2018-10981(P2018-10981A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年4月3日
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度 国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(73)【特許権者】
【識別番号】301021533
【氏名又は名称】国立研究開発法人産業技術総合研究所
(72)【発明者】
【氏名】向田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】衛 慶碩
(72)【発明者】
【氏名】石田 敬雄
【審査官】
上田 智志
(56)【参考文献】
【文献】
特表平03−501910(JP,A)
【文献】
特開2016−058529(JP,A)
【文献】
国際公開第2014/034258(WO,A1)
【文献】
特開2016−082132(JP,A)
【文献】
特開2014−135379(JP,A)
【文献】
特表2013−546175(JP,A)
【文献】
特開2014−157914(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 35/24,35/32,35/34,
51/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱電変換モジュールであって、
当該熱電変換モジュールの両端に位置する2つの金属層の間でP型の熱電特性を有する導電性高分子層と金属層が交互に隙間なく積層され、
前記導電性高分子層の両面に、絶縁層と、前記導電性高分子層と前記金属層との接触抵抗より低い接触抵抗を実現するための電極層とが接合しており、
前記電極層が、前記導電性高分子層の第1の面の第1端部と、前記導電性高分子層の第2の面の、前記第1端部とは反対側の第2端部とに位置し、前記導電性高分子層と前記金属層とが前記電極層を介して電気的に接続する、熱電変換モジュール。
【請求項2】
熱電変換モジュールであって、
当該熱電変換モジュールの両端に位置する2つの金属層の間でP型の熱電特性を有する導電性高分子層と金属層が交互に隙間なく積層され、
前記導電性高分子層の第1の面に、第1の絶縁層と第1の電極層とが接合しており、
前記導電性高分子層の第2の面に、第2の絶縁層と第2の電極層とが接合しており、
前記第1の電極層が、前記導電性高分子層の前記第1の面の第1端部に位置し、前記第2の電極層が、前記第2の面の、前記第1端部とは反対側の第2端部に位置し、
前記導電性高分子層と前記金属層とが前記第1の電極層又は前記第2の電極層を介して電気的接続し、
前記導電性高分子層はPEDOT:PSS膜からなり、前記金属層はNiからなり、
前記第1の電極層はAu、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つからなり、
前記第2の電極層はAu、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つからなる、
熱電変換モジュール。
【請求項3】
前記第1及び第2の絶縁層は、絶縁性高分子層からなる、請求項2の熱電変換モジュール。
【請求項4】
発電時に、前記導電性高分子層を第1方向に流れる電流が、接合する前記第1又は第2の電極層を介して隣の前記金属層へ流れ込み、当該金属層を前記第1方向とは逆向きの第2方向に流れる、請求項2の熱電変換モジュール。
【請求項5】
P型の熱電特性を有する導電性高分子層と金属層とを含む熱電変換モジュールの製造方法であって、
第1の面の端部に前記導電性高分子層と前記金属層との接触抵抗より低い接触抵抗を実現するための電極層が形成され、前記第1の面の前記電極層以外の領域に絶縁層が形成された第1金属層を準備するステップと、
両面の端部に前記導電性高分子層と前記金属層との接触抵抗より低い接触抵抗を実現するための電極層が形成され、前記両面の前記電極層以外の領域に絶縁層が形成された第2金属層を準備するステップであって、前記両面の端部は両面で互いに反対側に位置する、ステップと、
少なくとも2以上の導電性高分子層を準備し、隣り合う2つの導電性高分子層の間に、前記第2金属層を接合した積層構造を作るステップと、
前記積層構造の両端の前記導電性高分子層の各々に、前記電極層及び前記絶縁層が接するように前記第1金属層を接合するステップと、を含む製造方法。
【請求項6】
熱電変換モジュールの製造方法であって、
第1の金属箔の第1の面の端部に第1の電極層が形成され、前記第1の面の前記第1の電極層以外の領域に絶縁層が形成された第1金属層を準備するステップと、
第2の金属箔の第1の面の端部に第2の電極層が形成され、前記第2の金属箔の第2の面の端部に第3の電極層が形成され、前記第1の面及び前記第2の面の前記第2及び第3の電極層以外の領域に絶縁層が形成された第2金属層を準備するステップであって、前記第1の面の端部と前記第2の面の端部は互いに反対側に位置する、ステップと、
P型の熱電特性を有する少なくとも2以上の導電性高分子層を準備し、隣り合う2つの導電性高分子層の間に、前記第2金属層を接合した積層構造を作るステップと、
前記積層構造の両端の前記導電性高分子層の各々に、前記第1の電極層及び前記絶縁層が接するように前記第1金属層を接合するステップと、
を含み、
前記導電性高分子層はPEDOT:PSS膜からなり、
前記第1及び第2の金属箔が、Niからなり、
前記第1の電極層乃至前記第3の電極層の各々は、Au、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つからなる
製造方法。
【請求項7】
前記絶縁層が、絶縁性高分子層である
請求項6の製造方法。
【請求項8】
前記第1金属層を接合後の前記積層構造を加圧及び加熱するステップをさらに含む、請求項6又は7の製造方法。
【請求項9】
前記絶縁性高分子層を形成する際に、前記絶縁層を形成する領域に液体のりを塗布して加熱する
請求項7の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱電変換モジュールに関し、より具体的には、熱電材料として導電性高分子を用いた熱電変換モジュールとその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱電変換とは、固体の熱電変換モジュールを用いて熱エネルギーと電気エネルギーを相互に変換する技術である。このうち熱エネルギーを電気エネルギーに変換する技術は、熱電発電と呼ばれ、熱電効果の1つであるゼーベック効果に基づく。熱電発電では、熱電変換モジュールの両端間の温度差が電気エネルギーに直接変換される。
【0003】
導電性高分子は、材料として軽量、フレキシビリティ、無毒性安価等のメリットがあり、製造プロセスにおいては大量生産、大面積生産、安価等のメリットがあり、電気・電子部材への応用が見込まれる材料である。例えば、特許文献1では、導電性高分子を含む導電性フィルムと絶縁性断熱体を交互に隣接させた構造体の上下に電極を配したいわゆるパイ(π)型の熱電変換モジュールを開示している。
【0004】
特許文献1のπ型の熱電変換モジュールでは、P型熱電材料(導電性高分子)からなる導電性フィルムの間の絶縁性断熱体中に上下の各電極を電気的に接続する導電線が設けられており、導電線及び上下電極の配置上余計なスペースが必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開WO2013/065856
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、P型の導電性高分子材料を用いた、熱電出力が大きく、省スペース型の熱電変換モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様では、両端に位置する2つの金属層の間でP型の熱電特性を有する導電性高分子層と金属層が交互に隙間なく積層され、導電性高分子層の両面に絶縁層と電極層が接合しており、電極層が、導電性高分子層の表面の第1端部と、裏面の第1端部とは反対側の第2端部とに位置し、導電性高分子層と金属層が電極層を介して電気的接続する、熱電変換モジュールを提供する。
【0008】
本発明の他の一態様では、従来の上下の電極が不要であり、隙間なく積層されたP型の導電性高分子層と金属層の間を層間の電極層を介して発電時の電流が流れるので、単位面積当たりの熱電出力が大きい省スペース型の熱電変換モジュールを得ることができる。
【0009】
本発明の一態様では、熱電変換モジュールの製造方法が提供される。その製造方法は、(a)表面の端部に電極層が形成され、表面の前記電極層以外の領域に絶縁層が形成された第1金属層を準備するステップと、(b)両面の端部に電極層が形成され、両面の電極層以外の領域に絶縁層が形成された第2金属層を準備するステップであって、その両面の端部は表面と裏面とで互いに反対側に位置するステップと、(c)少なくとも2以上の導電性高分子層を準備し、隣り合う2つの導電性高分子層の間に、第2金属層を接合した積層構造を作るステップと、(d)積層構造の両端の導電性高分子層の各々の表面に、表面の電極層及び絶縁層が接するように第1金属層を接合するステップと、を含む。
【0010】
本発明の他の一態様では、熱電変換モジュールを構成する各層を予め準備し、求められる熱電出力に応じて、必要となる数の各層を隙間なく積層(接合)させるという比較的簡易な方法で、単位面積当たりの熱電出力が大きい省スペース型の熱電変換モジュールを得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態の熱電変換モジュールの構成を示す断面図である。
【
図2】本発明の一実施形態の熱電変換モジュールの製造工程を示す図である。
【
図3】本発明の一実施形態の熱電変換モジュールの製造工程を説明するための図である。
【
図4】本発明の一実施例の熱電変換モジュールの外観を示す図である。
【
図5】本発明の一実施例の熱電変換モジュールの特性を示す図である。
【
図6】本発明の一実施例の熱電変換モジュールの特性を示す図である。
【
図7】本発明の一実施例の熱電変換モジュールの特性を示す図である。
【
図8】本発明の一実施例の熱電変換モジュールで利用可能な電極(金属)材料の接触抵抗を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態の熱電変換モジュール100の構成を示す断面図である。(a)に示すように、熱電変換モジュール100は、導電性高分子層1と金属層2が交互に積層された構造を備える。その際に、両端には金属層2が配置される。導電性高分子層1はP型の熱電特性を有する材料からなる。金属層2は電気的接続用の金属からなる。したがって、本発明の一実施形態の熱電変換モジュールは、P型の熱電材料(導電性高分子層)と電気的接続材料(金属層)が交互に積層された構成を有する。
【0013】
導電性高分子層1は、例えばPEDOT:PSS膜からなる。PEDOT:PSSは、poly(3,4-ethylenedioxythiophen)(PEDOT)とpoly(styrenesulfonate)(PSS)とから構成される電荷移動複合体(charge transfer complex)である。PEDOT:PSSは、P型の熱電特性を有する。PEDOT:PSSでは、ドーパントとして働くPSSからキャリアがPEDOTに供給され、これによりPEDOTに良好な導電性が生じる。また、エチレングリコール(EG)をPEDOT:PSS膜の製膜時に添加する事により結晶方向がそろい製膜後のPEDOT:PSS膜の電気伝導度を向上させることができる。
【0014】
金属層2は、例えばニッケル(Ni)膜からなる。一般的な金属は、熱電特性的にN型であるため、金属層2はモジュール構成上電気的接続のみでなくN型としての熱電特性が大きい金属が望ましい。NiはN型の熱電特性を有し、20mV/Kのゼーベック係数を有する。ただし、詳細は後述するように、Ni膜とPEDOT:PSS膜との接触抵抗が大きいので、本発明では以下に述べる電極層を用いる。
【0015】
図1(b)は(a)の楕円で囲まれた領域、すなわち2つの導電性高分子層1の間の金属層2を含む構成の詳細を示す。金属層2の両面に絶縁層3と電極層4、5が接合している。電極層4が、金属層2の表面の一方の端部に位置し、電極層5は裏面の一方の端部とは反対側の他方の端部に位置する。
【0016】
なお、
図1(b)では絶縁層3及び電極層4、5と導電性高分子層1との間にスペースがあるが、これは構成をわかりやすく見せるために空けたものであり、実際には絶縁層3及び電極層4、5は導電性高分子層1にも接合している。したがって、(b)の2つの導電性高分子層1の内側の表面から観ると、電極層4が一方の導電性高分子層1の表面の一方の端部に位置し、電極層5は他方の導電性高分子層1の表面の一方の端部とは反対側の他方の端部に位置する。その結果、導電性高分子層1と金属層2は電極層4、5を介して電気的に直列接続することになる。
【0017】
図1(c)は(b)の構成(積層構造)が複数接合された状態(多段)の熱電変換モジュール100が熱電変換により発電する様子を示すイメージ図である。熱電変換モジュールの下側に熱源があって加熱されており、ゼーベック効果によりモジュール内で発生する電流が矢印6で示すように順次流れて外部回路へ出力されると共に、その上側から放熱する。モジュール内では、導電性高分子層1内で発生し上側へ流れる電流が、接合する電極層4を介して隣の金属層1へ流れ込む。電流は金属層2内を下側へ向けて流れ、接合する電極層5を介して隣の導電性高分子層1へ流れ込む。以下、同様な電流経路6が繰り返される。
【0018】
図1に示すように、本発明の一実施形態の熱電変換モジュール100において、導電性高分子層1と金属層2を直接接合して電気的な直列接続、言い換えれば両者間の電流経路を形成せずに、両者に接合する電極層4、5を介して両者間の電流経路を形成するのは、既に上述した導電性高分子層1にPEDOT:PSSを用い、金属層2にNiを用いた場合のように、導電性高分子層1と金属層2との接合界面における接触抵抗が大きい場合を想定しているからである。
【0019】
図8に導電性高分子層1としてPEDOT:PSSを用いた場合の複数の金属材料との接触抵抗を示す。Ni以外では、Alは接触抵抗が大きいので電極層としては明らかに不向きである。電極層としては、Au、Pt、Ag、C、またはCuを用いることができる。より好ましくは、接触抵抗が低く酸化しにくい金属であるAu、PtまたはAgを電極層として用いることができる。なお、
図8の“20nmAu−Ni”は、PEDOT:PSS膜上のNi上に重ねて20nm厚さのAuを形成した場合の接触抵抗である。この構成は、
図1の本発明の一実施形態の熱電変換モジュール100における導電性高分子層1(PEDOT:PSS)、金属層2(Ni)及び電極層(Au)4、5の組み合わせと同じである。
【0020】
絶縁層3としては、例えば絶縁性高分子を用いることができる。絶縁性高分子としては、例えば液体のり(PVAL:ポリビニルアルコール)を用いることができる。
【0021】
図2と
図3を参照しながら
図1の本発明の一実施形態の熱電変換モジュールの製造方法について説明する。
図2のステップ(a)において、第1金属層を準備する。
図3(a)に示すように、金属層(例えばNi箔)2の表面に最初に端部を覆うマスクを用いて電極層(例えばAu)4を真空蒸着などの従来の薄膜形成技術を用いて形成する。次に、電極層を覆うマスクを用いて絶縁層(絶縁性高分子、例えば液体のり)3を形成(例えば塗布)する。その後、所定時間加熱して(例えば50〜100度で数十分間)絶縁性高分子を固定し平坦化する。本発明では、この金属箔2の表面に絶縁層3と電極層4が形成された形態(
図3のA)を第1金属層と呼ぶ。
【0022】
図2のステップ(b)において、第2金属層を準備する。
図3(b)に示すように、金属層(例えばNi箔)2の両面(表と裏)にステップ(a)と同様な方法によって電極層(例えばAu)4、5と絶縁層(絶縁性高分子、例えば液体のり)3を形成(例えば塗布)する。その際、金属層(例えばNi箔)2の表面の電極層4と裏面の電極層5が互いに反対側の端部に位置するようにする。本発明では、この金属箔2の両面に絶縁層3と電極層4、5が形成された形態(
図3のB)を第2金属層と呼ぶ。
【0023】
図2のステップ(c)において、導電性高分子層1を準備する。例えば導電性高分子層1としてPEDOT:PSSを用いる場合は、キャスト法を用いて、PEDOT:PSSの水性分散液に例えば3%のEGを添加したものを基板上に塗布して所定の温度でゆっくりと乾燥させる(例えば100度以下で数十時間)。乾燥後のPEDOT:PSS(EG)膜を基板から剥離して、
図3(c)に示すように、金属箔(例えばNi箔)2と同様なサイズのPEDOT:PSS(EG)膜1を得る。
【0024】
図2のステップ(d)において、
図3(d)に示すように、ステップ(c)で作成した導電性高分子層(例えばPEDOT:PSS(EG)膜)1上に第2金属層Bと導電性高分子層1を交互に積層した積層構造を形成する。積層する第2金属層Bと導電性高分子層1の数は、求める熱電出力(熱起電力)に応じて決めることができる。積層構造は必要に応じて加工、整形され、全体のサイズやその断面(
図3の(d)の上面及び下面)の平坦性などが調整される。
【0025】
図2のステップ(e)において、
図3(e)に示すように、ステップ(d)で作成した積層構造の両端面に第1金属層Aを接合する。その際に第1金属層Aの金属層2が外側(表面)になるように第1金属層Aを接合する。その接合後の構造体を所定の圧力で加圧しながら所定の温度で加熱して(例えば、100〜300kgf、80〜150度で数十分間)、熱電変換モジュールを得ることができる。
【実施例】
【0026】
図2に示した製造方法(工程)を用いて、実際に
図1の熱電変換モジュール100を作製した。導電性高分子層1と第2金属層Bを1ユニット(組)として10ユニット(組)からなる熱電変換モジュール100を作製した。電性高分子層1としてPEDOT:PSS(EG)膜(厚さ:50〜100μm)を用い、金属層2としてNi箔(厚さ:約5μm)を用い、絶縁層3として液体のり(PVAL:ポリビニルアルコール)を用い、電極層4としてAu(20〜30nm)を用いた。全体のサイズは、22mm×22mm、厚さ2mmである。
図4にその作製した熱電変換モジュールの外観を示す。
図4(b)の表面の光って見えるのが外側層をなすNi箔である。
【0027】
作製した熱電変換モジュール100に
図1(c)に示すように上下で温度差ΔT(K)を与えて熱起電力(mV)を測定した。
図5にその結果を示す。温度差ΔT(K)の上昇と共に熱起電力(mV)がほぼ線形に増加していることがわかる。この時のゼーベック係数Sは、332.7μV/Kであった。
【0028】
図6に作製した熱電変換モジュール100の電流―電圧(I―V)特性の測定結果を示す。図の線形性からオーミック接合であることがわかり、その抵抗値Rは4.6Ωであった。
【0029】
図7に作製した熱電変換モジュール100の出力電圧と出力電力の関係を示す。温度差ΔT(K)が10K、30K、50Kと大きくなると共に、出力電圧(mV)と出力電力(μW)は上昇し、ΔT=50Kで最大電力P=10μW/0.44cm
2(22.7μW/cm
2)を得ることができた。すなわち、20μW/cm
2以上の出力電力密度を得ることができることがわかった。また、ΔT=50Kで出力電圧V=15mVを得ることができることがわかった。
【0030】
本発明の実施形態について、図を参照しながら説明をした。しかし、本発明はこれらの実施形態に限られるものではない。さらに、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲で当業者の知識に基づき種々なる改良、修正、変形を加えた態様で実施できるものである。
なお、明細書には以下のような発明が開示されている。
1.両端に位置する2つの金属層の間でP型の熱電特性を有する導電性高分子層と金属層が交互に隙間なく積層され、
前記導電性高分子層の両面に絶縁層と電極層が接合しており、
前記電極層が、前記導電性高分子層の表面の第1端部と、裏面の第1端部とは反対側の第2端部とに位置し、前記導電性高分子層と前記金属層が前記電極層を介して電気的接続する、熱電変換モジュール。
2.前記導電性高分子層はPEDOT:PSS膜からなり、前記金属層はNiからなり、前記電極層はAu、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つまたは2以上からなる、第1項記載の熱電変換モジュール。
3.前記絶縁層は、絶縁性高分子層からなる、第2項記載の熱電変換モジュール。
4.発電時に、前記導電性高分子層を第1方向に流れる電流が、接合する前記電極層を介して隣の前記金属層へ流れ込み、当該金属層を前記第1方向とは逆向きの第2方向に流れる、第1項記載の熱電変換モジュール。
5.熱電変換モジュールの製造方法であって、
表面の端部に電極層が形成され、表面の前記電極層以外の領域に絶縁層が形成された第1金属層を準備するステップと、
両面の端部に電極層が形成され、両面の前記電極層以外の領域に絶縁層が形成された第2金属層を準備するステップであって、前記両面の端部は表面と裏面とで互いに反対側に位置する、ステップと、
少なくとも2以上の導電性高分子層を準備し、隣り合う2つの導電性高分子層の間に、前記第2金属層を接合した積層構造を作るステップと、
前記積層構造の両端の前記導電性高分子層の各々の表面に、表面の前記電極層及び前記絶縁層が接するように前記第1金属層を接合するステップと、を含む製造方法。
6.前記導電性高分子層はPEDOT:PSS膜からなる、第5項記載の製造方法。
7.前記第1金属層を準備するステップと、前記第2金属層を準備するステップは、
Ni箔の表面の端部にAu、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つまたは2以上からなる金属層を形成するステップと、
前記Ni箔の表面の前記電極層以外の領域に絶縁性高分子層を形成するステップと、を含む第6項記載の製造方法。
8.前記第1金属層を接合後の前記積層構造を加圧及び加熱するステップをさらに含む、第7項の製造方法。
9.前記Ni箔の表面の端部に金属層を形成するステップは、前記Ni箔の表面にマスクを用いてAu、Pt、Ag、Cu、及びCの中から選択された1つまたは2以上の金属を蒸着するステップを含む、第7項記載の製造方法。
10.前記Ni箔の表面の前記電極層以外の領域に絶縁性高分子層を形成するステップは、前記領域に液体のりを塗布し加熱するステップを含む、第9項記載の製造方法。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の熱電変換モジュールは、小型で軽量であるため、身の回りの排熱回収を含めて産業上の幅広い利用が可能である。
【符号の説明】
【0032】
1 導電性高分子層
2 金属層
3 絶縁層
4、5 電極層
6 電流経路
100 熱電変換モジュール