特許第6782112号(P6782112)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782112
(24)【登録日】2020年10月21日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】光ファイバケーブルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   G02B 6/44 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   G02B6/44 391
   G02B6/44 361
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-147136(P2016-147136)
(22)【出願日】2016年7月27日
(65)【公開番号】特開2018-17851(P2018-17851A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2019年4月22日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000005290
【氏名又は名称】古河電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096091
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 誠一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌義
(72)【発明者】
【氏名】三浦 貴博
(72)【発明者】
【氏名】星野 豊
【審査官】 野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−089372(JP,A)
【文献】 特開2015−025889(JP,A)
【文献】 特開2016−057366(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/193696(WO,A1)
【文献】 中国特許出願公開第1458541(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 6/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光ファイバと、テンションメンバと、前記光ファイバと前記テンションメンバとを一括で被覆する外被と、を具備するケーブル部と、
支持線と、前記支持線を被覆する外被と、を具備する支持線部と、
前記ケーブル部と前記支持線部とを連結する連結部とを具備する光ファイバケーブルの製造方法であって、
前記支持線に一方向に捻りを加えながら巻き取る工程aと、
捻じられた状態の前記支持線と、前記光ファイバと、前記テンションメンバと、を供給して、前記支持線部と前記ケーブル部とが連結部を介して一体となるように前記外被を押出被覆する工程bと、
前記外被を固化させる工程cと、
前記光ファイバケーブルを巻き取る工程dと、
を具備し、
前記工程dは、引取部により、前記光ファイバケーブルの所定の張力を維持するように、前記光ファイバケーブルをボビンへ送り出した後、前記ボビンにより前記光ファイバケーブルを巻き取る工程であり、
前記工程aにおいて、前記工程bから前記工程dの製造ラインの長さに対応する巻き取り終了前の所定長さに対しては、前記支持線に捻りを加えずに巻き取ることを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法。
【請求項2】
前記光ファイバケーブルの長手方向に対する、前記支持線の捻りピッチP1と、前記支持線部を中心とした前記ケーブル部の螺旋ピッチP2との比P1/P2が、0.8〜1.0であることを特徴とする請求項1記載の光ファイバケーブルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自己支持型の光ファイバケーブルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅等に対して光ファイバケーブル等を敷設するためには、屋外に設けられる電柱等から、各部屋等に対して光ファイバケーブルが引き落とされて敷設される。
【0003】
このような自己支持型の光ファイバケーブルは、敷設後に風の影響によって振動が生じる場合がある。このような振動が生じると、内部の光ファイバの断線等のおそれがある。このため、光ファイバケーブルを敷設する際には、例えば10mごとに1回の頻度で捻りを入れて敷設される。このように、光ファイバケーブルを捻じることで、前述した振動を抑制することができる。
【0004】
このような、振動を防止するための光ファイバケーブルとしては、製造時にあらかじめ捻りを付与したものが提案されている。例えば、光ファイバケーブルを製造する際に、支持線に外被を施した後、正逆反転させながら繰り返し光ファイバケーブルにSZ捻りを加える方法がある(特許文献1)。
【0005】
また、支持線に往復捻りを加えながら外被等を被覆することで、製造時の張力等を解放した際に、SZ捻りが付与された自己支持型光ファイバケーブルを得る方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2014−164235号公報
【特許文献2】特開2016−57366号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1のように、外被を押出被覆した後、外被が固化する前に捻りを加える方法では、ケーブルを捻じる際に、支持線部とケーブル部とをつなぐ連結部が破断、または変形するなどの問題がある。
【0008】
また、特許文献2のように、支持線部を捻じる方法を採用しても、外被の押し出し被覆部へ捻りの影響が及ぶため、特許文献1と同様に、支持線部とケーブル部とをつなぐ連結部が破断するなどの問題がある。
【0009】
また、例えば特許文献2のように、支持線等を正逆往復して捻じり、ケーブルを製造しても、ケーブルの捻り量は、支持線の捻りが戻ろうとする力と、外被等による反力とが釣り合った捻り角度となる。このため、支持線の捻り角度と、製品に付与された捻り角度とが一致しない。
【0010】
さらに、支持線捻り位置における支持線の捻り量は、外被の押出被覆位置における支持線の捻り量とは一致せず、支持線捻り位置と外被押し出し位置までの長さに応じて捻りが緩和される。特に、捻り方向の反転時には、それまでの捻りが一気に戻ろうとするため、長手方向に捻り角度を一定の変化量とすることが困難である。このように、捻り角度を精度よく制御することが困難であり、得られるケーブルの捻り角度が、長手方向に対してばらつく要因となる。
【0011】
また、特許文献1、2ともに、光ファイバケーブルの製造装置に捻回装置を付加する必要があるため、従来の製造装置を改造する必要がある。さらに、製造装置内で、支持線を捻じるための捻り装置が動作するため、線速を上げることができず、従来の光ファイバケーブルと比較して、製造効率が低くなるという問題がある。
【0012】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたもので、製造性に優れ、精度よく捻りが付与された自己支持型の光ファイバケーブルの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述した目的を達するために本発明は、光ファイバと、テンションメンバと、前記光ファイバと前記テンションメンバとを一括で被覆する外被とを具備するケーブル部と、支持線と、前記支持線を被覆する外被とを具備する支持線部と、前記ケーブル部と前記支持線部とを連結する連結部とを具備する光ファイバケーブルの製造方法であって、前記支持線に一方向に捻りを加えながら巻き取る工程aと、捻じられた状態の前記支持線と、前記光ファイバと、前記テンションメンバと、を供給して、前記支持線部と前記ケーブル部とが連結部を介して一体となるように前記外被を押出被覆する工程bと、前記外被を固化させる工程cと、前記光ファイバケーブルを巻き取る工程dと、を具備し、前記工程dは、引取部により、前記光ファイバケーブルの所定の張力を維持するように、前記光ファイバケーブルをボビンへ送り出した後、前記ボビンにより前記光ファイバケーブルを巻き取る工程であり、前記工程aにおいて、前記工程bから前記工程dの製造ラインの長さに対応する巻き取り終了前の所定長さに対しては、前記支持線に捻りを加えずに巻き取ることを特徴とする光ファイバケーブルの製造方法である。
【0014】
前記光ファイバケーブルの長手方向に対する、前記支持線の捻りピッチP1と、前記支持線部を中心として螺旋状に配置された前記ケーブル部の螺旋ピッチP2との比P1/P2が、0.8〜1.0であることが望ましい。
【0017】
本発明によれば、支持線を一方向に捻じって巻き取る工程と、光ファイバケーブルを製造する工程とが別であるため、光ファイバケーブルを製造する装置は従来のものを使用することができる。また、光ファイバケーブル製造時には、支持線は従来と同様に供給されるため、従来と同様の線速で製造を行うことができる。
【0018】
また、支持線は、一方向に捻じられるため、捻りピッチの制御が容易である。また、支持線を捻じる装置自体は、従来の回転式の巻き取り機を利用することができ、極めて高速に捻りを付与することができるため、製造性にも優れる。
【0019】
また、支持線の捻りピッチP1に対して、支持線部を中心としたケーブル部の螺旋ピッチP2との比P1/P2が、0.8〜1.0であれば、外被等に対して捻れによる過剰な応力が付与されることがない。
【0020】
また、支持線の巻き取り終了前の所定長さに対して、支持線に捻りを加えずに巻き取ることで、光ファイバケーブル製造ライン置への通線が容易である。
【0021】
また、捻じられた支持線を所定の長さだけ巻き戻して、捻りを除去した後、支持線を製造ラインに通線しても、光ファイバケーブル製造ラインへの通線が容易である。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、製造性に優れ、精度よく捻りが付与された自己支持型の光ファイバケーブルの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】光ファイバケーブル1を示す断面図。
図2】(a)は、光ファイバケーブル1の捻り状態を示す図、(b)は(a)のA−A線断面図、(c)は(a)のB−B線断面図、(d)は(a)のC−C線断面図、(e)は(a)のD−D線断面図、(f)は(a)のE−E線断面図。
図3】支持線捻り装置20を示す図。
図4】光ファイバケーブル製造装置30を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。図1は、自己支持型の光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面図である。光ファイバケーブル1は、主に、ケーブル部17及び支持線部15が連結部11で連結されて構成される。
【0025】
ケーブル部17は、光ファイバ3及びテンションメンバ5が外被9によって一括して被覆されて構成される。
【0026】
光ファイバ3は、ケーブル部17の略中心部に設けられる。光ファイバ3の両側には、テンションメンバ5が設けられる。光ファイバ3の中心とテンションメンバ5のそれぞれの中心は、略同一直線上に位置する。
【0027】
なお、光ファイバ3の上下に位置する外被9の外周には、必要に応じてV字状のノッチ13が形成される。ノッチ13は、外被9を引裂き、内部の光ファイバ3を容易に取り出すためのものである。
【0028】
テンションメンバ5の材質としては、例えば、アラミド繊維やガラス繊維を用いた繊維強化プラスチック(FRP)を適用することができる。外被9の材質としては、例えば、難燃ポリオレフィンを適用することができる。また、難燃ポリオレフィンにさらに耐候性用にカーボンブラック等を添加することもできる。
【0029】
なお、ケーブル部17の断面の外径は、例えば、長径(図中左右方向)×短径(図中上下方向)が約1.6mm×2mm程度とすればよい。
【0030】
ケーブル部17の一方の側方には、支持線部15が設けられる。支持線部15は、支持線7が外被9によって被覆されて構成される。支持線部15は、ケーブル部17と連結部11で連結される。すなわち、支持線部15の外被9とケーブル部17の外被9とが連結部11を介して一体で形成される。なお、支持線7は、例えば、1.2mmφ程度の径の亜鉛メッキ鋼線や樹脂等、弾性変形可能な材質からなる。
【0031】
光ファイバケーブル1の長手方向に垂直な断面において、支持線部15の支持線7は、光ファイバ3とテンションメンバ5の中心とを結ぶケーブル部17の中心線(の延長線)上に配置される。
【0032】
なお、ケーブル部17及び支持線部15の形態は、図示した例には限られない。例えば、光ファイバ3は、シングルコアやマルチコアの光ファイバ心線のみならず、例えば間欠テープ心線のような複数の光ファイバ心線から構成される光ファイバであってもよい。
【0033】
図2(a)は、光ファイバケーブル1の側方概念図である。光ファイバケーブル1の長手方向に対して、ケーブル部17は、支持線部15を中心として一方向に螺旋状に配置される。すなわち、支持線部15をまっすぐに直線状に配置した際に、ケーブル部17は、所定のピッチ(図中P2)で、支持線部15の外周に螺旋状に配置される。
【0034】
例えば、図2(b)は、図2(a)のA−A線断面図である。この部位では、支持線部15の下方にケーブル部17が配置される。図2(c)は、図2(a)のB−B線断面図である。この部位では、ケーブル部17は、図2(b)に対して時計回りに約90°回転した位置に配置される。図2(d)は、図2(a)のC−C線断面図である。この部位では、ケーブル部17は、図2(c)に対してさらに時計回りに約90°回転して、支持線部15の上方にケーブル部17が位置に配置される。図2(e)は、図2(a)のD−D線断面図である。この部位では、ケーブル部17は、図2(d)に対してさらに時計回りに約90°回転した位置に配置される。図2(f)は、図2(a)のE−E線断面図である。この部位では、ケーブル部17は、図2(e)に対してさらに時計回りに約90°回転し、図2(b)と同位置に配置される。
【0035】
以上のように、光ファイバケーブル1は、略全長にわたって、略一定のピッチで、ケーブル部17が支持線部15の外周に一方向に螺旋状に配置される。
【0036】
次に、光ファイバケーブル1の製造方法について説明する。図3は、支持線捻り装置20を示す概念図である。素材となる支持線7は、あらかじめボビン21に巻き取られている。この状態では、支持線7には捻りは付与されていない。
【0037】
巻き取り用のボビン23は、ボビン23を巻き取り回転させる回転軸を具備するとともに、この回転軸と直交する方向にも回転(以下、この回転を「捻り回転」と称する)することが可能である。
【0038】
ボビン21から繰り出された支持線7は、ボビン23へ送られ(図中矢印F)、ボビン23で巻き取られる。この際、ボビン23は、ボビン23の巻き取り方向への回転とともに、この巻き取り回転と直交する方向にも捻り回転する(図中矢印G)。すなわち、ボビン23によって、支持線7に一方向に捻りを加えながら巻き取ることができる。なお、支持線7の送り速度と、捻り回転速度を制御することで、任意の捻りピッチ(P1)で支持線7を捻じることができる。
【0039】
なお、支持線7に捻りを加える方法は、図示した方法には限られない。例えば、供給側のボビン21を捻り回転させながら支持線7を繰り出して、巻き取り側のボビン23では、巻き取り回転のみとしてもよい。また、他のガイドローラなどを用いれば、ボビンの捻り回転の回転軸方向は、必ずしも支持線7の繰り出し方向に平行な向きでなくてもよい。
【0040】
支持線7が巻き取られると、支持線7の端部はボビン23へテープ等によって固定され、支持線7の捻れが解放されないように保持される。
【0041】
次に、ボビン23を光ファイバケーブル製造装置へ配置する。図4は、光ファイバケーブル製造装置30を示す概念図である。光ファイバケーブル製造装置30は、外被被覆部25、冷却部27、引取部29等から構成される。
【0042】
まず、ボビン23から、支持線7を繰り出し、光ファイバケーブル製造装置30の製造ラインに通線する。例えば、支持線7を、外被被覆部25、冷却部27、引取部29を通して、ボビン31まで通線する。支持線7の先端を巻き取り用のボビン31に固定することで、支持線7の通線作業が終了する。
【0043】
なお、支持線7に捻りが付与されているため、支持線7を光ファイバケーブル製造装置30に通線する際に、支持線7の捻りが元に戻ろうとする。このため、支持線7の取り扱いが困難となるおそれがある。
【0044】
このため、支持線7を光ファイバケーブル製造装置30に通線する際には、例えば、光ファイバケーブル製造装置30の製造ライン長(図中L)に対応した長さだけ、一旦、捻じられた支持線7をボビン23から巻き出す。その後、巻き出した支持線7の捻りを除去する。その後、必要に応じて、捻りが除去された支持線7をボビン23に巻き戻す。その後、ボビン23を光ファイバケーブル製造装置30に設置して、捻りが除去された支持線7を製造ラインに通線する。このようにすることで、支持線7の通線作業が容易である。
【0045】
また、前述した、支持線7への捻り付与工程において、支持線7の巻き取り終了前の所定長さ(光ファイバケーブル製造装置30の製造ライン長に対応する長さ)に対しては、支持線7に捻りを加えずに巻き取ってもよい。このようにすることで、ボビン23から支持線7を繰り出す際、最初の所定長さの支持線7には捻りが付与されていないため、捻りを除去せずに容易に通線作業を行うことができる。
【0046】
同様に、図示を省略した、光ファイバ供給部、テンションメンバ供給部等から、光ファイバ3及びテンションメンバ5を外被被覆部25に集線し、同様に製造ラインへの通線を行う。
【0047】
次に、捻じられた状態の支持線7、光ファイバ3、テンションメンバ5を外被被覆部25に供給しつつ(図中矢印H)、支持線部15とケーブル部17とが連結部11を介して一体となるように、外被9を押出被覆する。外被被覆部25によって、支持線7、光ファイバ3、テンションメンバ5が一括して被覆され、光ファイバケーブル1の外形が形成される。
【0048】
外被被覆部25で押出被覆された光ファイバケーブル1は冷却部27で冷却される。冷却部27によって、外被9を固化することができる。
【0049】
引取部29は、前工程に対して光ファイバケーブル1に所定の張力を維持するように、光ファイバケーブル1をボビン31方向へ送り出す(図中矢印I)。すなわち、引取部29より前の工程においては、支持線7に対しても張力が付与される。したがって、ボビン23から引取部29までは、支持線7は、張力によって捻りが維持される。
【0050】
その後、光ファイバケーブル1は、ボビン31に巻き取られる。なお、支持線7の捻りが維持された状態で、光ファイバケーブル1をボビン31に巻き取ることで、ボビン31においては、光ファイバケーブル1を一定の向きで整列させて巻き取ることができる。
【0051】
このようにして巻き取られた光ファイバケーブル1は、敷設する際に張力が解放されると、支持線7の捻りが元の状態に戻ろうとする。このため、光ファイバケーブル1を敷設する際に、自己の捻りの解放によって所定ピッチで捻りが付与された状態で、光ファイバケーブル1を敷設することができる。したがって、所定長さごとに光ファイバケーブル1を捻じる必要がなく、敷設作業が容易である。
【0052】
なお、支持線7に付与した捻りピッチP1に対して、光ファイバケーブル1におけるケーブル部17の螺旋ピッチP2は必ずしも一致しない。これは、支持線7の捻りが戻ろうとする力と、外被9を含む他の構成が捻じられることによる反力とが釣り合った位置で、ケーブル部17の螺旋ピッチが定まるためである。
【0053】
本発明では、支持線捻り装置20で捻じられた支持線7の捻りピッチP1と、光ファイバケーブル1の長手方向に対する、支持線部15を中心としたケーブル部17の螺旋ピッチP2との比(P1/P2)が、0.8〜1.0であることが望ましい。一般的に、支持線7の捻りピッチP1が短くなるほど、外被9等の捻りピッチが小さくなるため、捻りに対する反力が大きくなる。したがって、比(P1/P2)が小さくなる。
【0054】
P1/P2が小さくなりすぎると、支持線7に対して捻りによる応力が残った状態となるとともに、外被9等の捻れによる応力が大きくなる。このため、P1/P2は0.8以上であることが望ましい。なお、捻じられた支持線7の捻りピッチP1と、光ファイバケーブル1の長手方向に対する、支持線部15を中心としたケーブル部17の螺旋ピッチP2が、完全に一致する場合には、P1/P2が1.0となる。
【0055】
以上、本実施の形態によれば、支持線7にあらかじめ捻りを付与し、捻じられた支持線7を供給するため、光ファイバケーブル1の製造装置は、従来の装置を使用することができ、また、従来と同程度の線速で製造を行うことができる。このため、製造性が良好である。なお、支持線7の捻り工程が別途行われるため、光ファイバケーブル1の製造と並行して行うことができる。また、支持線7に捻りを付与するのみであるため、高い線速で捻り工程を行うことができる。
【0056】
また、光ファイバケーブル1に捻りが付与されるのは、外被9が固化した後であるため、連結部11の破断等を抑制することができる。
【0057】
また、捻り方向が一方向であるため、従来のSZ捻りのように、捻り角度のばらつきが生じにくく、支持線部15を中心としたケーブル部17の螺旋ピッチP2を、光ファイバケーブル1の全長にわたって略一定にすることができる。
【0058】
また、捻りを加えた支持線7に対して、所定の長さを巻き出して、捻りを除去した後に支持線7を製造ラインに通線することで、支持線7の通線作業が容易である。
【0059】
また、支持線7への捻り付与工程において、巻き取り終了前の所定長さに対して捻りを付与しないことで、製造ラインに対しての通線作業が容易である。
【実施例】
【0060】
捻じられた支持線7を用いて光ファイバケーブル1を製造し、P1/P2を測定した。支持線7は、1.2mmφの亜鉛メッキ鋼線とし、0.25mmφのUV被覆光ファイバと、アラミド繊維FRPのテンションメンバを、難燃ポリオレフィンで被覆した光ファイバケーブルを製造した。
【0061】
支持線7の捻りピッチP1と、得られた光ファイバケーブル1のケーブル部17の螺旋ピッチP2を測定し、P1/P2を算出した。結果を表1に示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1に示す様に、支持線7の捻りピッチP1が小さいほど、P1/P2が小さくなる。すなわち、P1とP2の差が大きくなる。前述したように、P1/P2の比が小さくなると、光ファイバケーブルにおける支持線7と外被9等の両方に大きな残留応力が残る。このため、支持線7のピッチP1と、光ファイバケーブル製造後のケーブル部17の螺旋ピッチP2との比が、所定値以上となるように、支持線7のピッチをあらかじめ設定すればよい。
【0064】
以上、添付図を参照しながら、本発明の実施の形態を説明したが、本発明の技術的範囲は、前述した実施の形態に左右されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において各種の変更例又は修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【0065】
例えば、支持線7の捻り装置を、光ファイバケーブル製造装置30の上工程に配置し、支持線7を捻りながら外被被覆部25へ供給してもよい。
【符号の説明】
【0066】
1………光ファイバケーブル
3………光ファイバ
5………テンションメンバ
7………支持線
9………外被
11………連結部
13………ノッチ
15………支持線部
17………ケーブル部
20………支持線捻り装置
21、23、31………ボビン
25………外被被覆部
27………冷却部
29………引取部
30………光ファイバケーブル製造装置
図1
図2
図3
図4