(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第2の分散媒の含有量が、有機保護剤によって被覆された銅粒子及び分散媒の総質量を基準として、0.1〜30質量%である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト。
前記第1の有機保護剤によって被覆されたサブマイクロ銅粒子の含有量が、有機保護剤によって被覆された銅粒子の総質量を基準として、10〜90質量%である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の接合用銅ペースト。
第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合用金属ペースト、及び第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、前記接合用金属ペーストを、前記第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える、接合体の製造方法。
第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、請求項1〜6のいずれか一項に記載の接合用金属ペースト、及び第二の部材がこの順に積層されている積層体を用意し、前記接合用金属ペーストを、前記第一の部材の自重、又は前記第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備え、
前記第一の部材及び前記第二の部材の少なくとも一方は半導体素子である、半導体装置の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書において、例示する材料は、特に断らない限り、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。接合用金属ペースト中の各成分の含有量は、接合用金属ペースト中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、接合用金属ペースト中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「〜」を用いて示された数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値をそれぞれ最小値及び最大値として含む範囲を示す。本明細書中に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、本明細書中に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「層」との語は、平面図として観察したときに、全面に形成されている形状の構造に加え、一部に形成されている形状の構造も包含される。
【0028】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0029】
<接合用金属ペースト>
本実施形態に係る接合用金属ペーストは、有機保護剤によって被覆された銅粒子と、分散媒とを含む。
【0030】
(銅粒子)
本実施形態に係る銅粒子としては、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子が挙げられる。サブマイクロ銅粒子とは、0.1μm以上1μm未満の粒子径を有する銅粒子を意味し、マイクロ銅粒子とは、1μm以上50μm未満の粒子径を有する銅粒子を意味する。本明細書では、便宜上、複数の金属粒子の集合を「金属粒子」と称することがある。サブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子及びその他の金属粒子についても同様である。
【0031】
(サブマイクロ銅粒子)
サブマイクロ銅粒子は、250℃以上380℃以下の温度範囲で焼結性を有する銅粒子であればよい。サブマイクロ銅粒子としては、粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、体積平均粒径が0.12μm以上0.8μm以下の銅粒子を用いることができる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.12μm以上であれば、サブマイクロ銅粒子の合成コストの抑制、良好な分散性、有機保護剤の使用量の抑制といった効果が得られやすくなる。サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径が0.8μm以下であれば、サブマイクロ銅粒子の焼結性が優れるという効果が得られやすくなる。より一層上記効果を奏するという観点から、サブマイクロ銅粒子の体積平均粒径は、0.15μm以上0.8μm以下であってもよく、0.15μm以上0.6μm以下であってもよく、0.2μm以上0.5μm以下であってもよく、0.3μm以上0.45μm以下であってもよい。
【0032】
なお、本願明細書において体積平均粒径とは、50%体積平均粒径を意味する。銅粒子の体積平均粒径を求める場合、原料となる銅粒子、又は接合用銅ペーストから揮発成分を除去した乾燥銅粒子を、分散剤を用いて分散媒に分散させたものを光散乱法粒度分布測定装置(例えば、島津ナノ粒子径分布測定装置(SALD−7500nano,株式会社島津製作所製))で測定する方法等により求めることができる。光散乱法粒度分布測定装置を用いる場合、分散媒としては、ヘキサン、トルエン、α−テルピネオール、4−メチル−1,3−ジオキソラン−2−オン等を用いることができる。
【0033】
銅粒子又は銅以外の金属粒子が球状でない場合は、下記方法により粒子径を最大粒径として求めることができる。銅粒子の長径をSEM像から算出する方法を例示する。銅粒子の粉末を、SEM用のカーボンテープ上にスパチュラで載せ、SEM用サンプルとする。このSEM用サンプルをSEM装置により100〜5000倍で観察する。このSEM像の銅粒子に外接する長方形を画像処理ソフトにより作図し、長方形の長辺をその粒子の長径とする。銅以外の金属粒子においても、同じ方法により粒子径を求めることができる。
【0034】
サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びマイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、10質量%以上90質量%以下であることが好ましい。サブマイクロ銅粒子の上記含有量が10質量%以上であれば、マイクロ銅粒子の間を充分に充填することができ、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。サブマイクロ銅粒子の含有量が90質量%以下であれば、接合用銅ペーストを焼結した時の体積収縮を充分に抑制できるため、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果が得られやすくなるという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量は、サブマイクロ銅粒子の質量及びマイクロ銅粒子の質量の合計を基準として、20質量%以上85質量%以下であってもよく、30質量%以上80質量%以下であってもよく、40質量%以上70質量%以下であってもよい。
【0035】
また、サブマイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量を基準として、10質量%以上90質量%以下であってもよく、20質量%以上80質量%以下であってもよく、30質量%以上70質量%以下であってもよい。サブマイクロ銅粒子の含有量が上記範囲内であれば、接合用金属ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用金属ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0036】
なお、本明細書において、銅粒子の含有量には表面処理剤の量は含まれない。また、銅以外の金属粒子の含有量には、金属粒子の表面に吸着した表面処理剤の量は含まれない。
【0037】
サブマイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。サブマイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、サブマイクロ銅粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、フレーク状マイクロ銅粒子との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。本明細書において、「フレーク状」とは、板状、鱗片状等の平板状の形状を包含する。
【0038】
サブマイクロ銅粒子は、分散性、充填性、及びフレーク状マイクロ銅粒子との混合性の観点から、アスペクト比が5以下であってもよく、3以下であってもよい。本明細書において、「アスペクト比」とは、粒子の長辺/厚みを示す。粒子の長辺及び厚みの測定は、例えば、粒子のSEM像から求めることができる。
【0039】
サブマイクロ銅粒子は、有機保護剤で処理されていることが望ましい。すなわち、有機保護剤で被覆されたサブマイクロ銅粒子を用いることができる。有機保護剤は、より望ましくは、有機酸であり、さらに望ましくはカルボン酸化合物である。さらに、カルボン酸化合物は、後述する大気圧下における脱離開始温度が、140℃以上380℃以下の範囲にあることが望ましい。
【0040】
カルボン酸化合物としては、例えば、炭素数2〜18のカルボン酸化合物が挙げられる。炭素数2〜18のカルボン酸化合物としては、例えば、酢酸、プロパン酸、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、カプリル酸、メチルヘプタン酸、エチルヘキサン酸、プロピルペンタン酸、ペラルゴン酸、メチルオクタン酸、エチルヘプタン酸、プロピルヘキサン酸、カプリン酸、メチルノナン酸、エチルオクタン酸、プロピルヘプタン酸、ブチルヘキサン酸、ウンデカン酸、メチルデカン酸、エチルノナン酸、プロピルオクタン酸、ブチルヘプタン酸、ラウリン酸(ドデカン酸)、メチルウンデカン酸、エチルデカン酸、プロピルノナン酸、ブチルオクタン酸、ペンチルヘプタン酸、トリデカン酸、メチルドデカン酸、エチルウンデカン酸、プロピルデカン酸、ブチルノナン酸、ペンチルオクタン酸、ミリスチン酸、メチルトリデカン酸、エチルドデカン酸、プロピルウンデカン酸、ブチルデカン酸、ペンチルノナン酸、ヘキシルオクタン酸、ペンタデカン酸、メチルテトラデカン酸、エチルトリデカン酸、プロピルドデカン酸、ブチルウンデカン酸、ペンチルデカン酸、ヘキシルノナン酸、パルミチン酸、メチルペンタデカン酸、エチルテトラデカン酸、プロピルトリデカン酸、ブチルドデカン酸、ペンチルウンデカン酸、ヘキシルデカン酸、ヘプチルノナン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、メチルシクロヘキサンカルボン酸、エチルシクロヘキサンカルボン酸、プロピルシクロヘキサンカルボン酸、ブチルシクロヘキサンカルボン酸、ペンチルシクロヘキサンカルボン酸、ヘキシルシクロヘキサンカルボン酸、ヘプチルシクロヘキサンカルボン酸、オクチルシクロヘキサンカルボン酸、ノニルシクロヘキサンカルボン酸等の飽和脂肪酸;オクテン酸、ノネン酸、メチルノネン酸、デセン酸、ウンデセン酸、ドデセン酸、トリデセン酸、テトラデセン酸、ミリストレイン酸、ペンタデセン酸、ヘキサデセン酸、パルミトレイン酸、サビエン酸、オレイン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレイン酸、リノレン酸等の不飽和脂肪酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o−フェノキシ安息香酸、メチル安息香酸、エチル安息香酸、プロピル安息香酸、ブチル安息香酸、ペンチル安息香酸、ヘキシル安息香酸、ヘプチル安息香酸、オクチル安息香酸、ノニル安息香酸等の芳香族カルボン酸が挙げられる。有機酸は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。このような有機酸と上記サブマイクロ銅粒子とを組み合わせることで、サブマイクロ銅粒子の分散性と焼結時における有機酸の脱離性を両立できる傾向にある。
【0041】
有機保護剤の処理量は、処理後のサブマイクロ銅粒子の全質量を基準として、0.1質量%以上10質量%以下であってもよく、1質量%以上5質量%以下であってもよく、1.5質量%以上3質量%以下であってもよい。
【0042】
有機保護剤の処理量は、サブマイクロ銅粒子の表面に一分子層〜三分子層付着する量であってもよい。この処理量(すなわち、有機保護剤で被覆されたサブマイクロ銅粒子における有機保護剤の含有量)は、以下の方法により測定される。大気中、700℃で2時間処理したアルミナ製るつぼ(例えば、アズワン製、型番:1−7745−07)に、有機保護剤で表面処理されたサブマイクロ銅粒子をW1(g)量り取り、大気中700℃で1時間焼成する。その後、水素中、300℃で1時間処理し、るつぼ内の銅粒子の質量W2(g)を計測する。次いで、下記式に基づき、有機保護剤の処理量(有機保護剤の含有量)を算出する。
有機保護剤の処理量(質量%)=(W1−W2)/W1×100
【0043】
上記サブマイクロ銅粒子は良好な焼結性を有するため、銅ナノ粒子を主に用いた接合材にみられる高価な合成コスト、良好でない分散性、焼結後の体積収縮の低下等の課題を低減することができる。
【0044】
本実施形態に係るサブマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているサブマイクロ粒子としては、例えば、CH−0200(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.36μm)、HT−14(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.41μm)、CT−500(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径0.72μm)、Tn−Cu100(太陽日産社製、体積平均粒径0.12μm)が挙げられる。
【0045】
本実施形態において、有機保護剤で被覆されたサブマイクロ銅粒子は、有機保護剤の大気圧下における脱離開始温度T
P1が140℃以上380℃以下であることが好ましい。なお、本明細書において大気圧とは、1気圧(1013hPa)を意味する。
【0046】
有機保護剤の大気圧下における脱離開始温度は、有機保護剤によって処理された(被覆された)銅粒子を、無酸素雰囲気中でTG−DTA(示差熱‐熱重量同時測定、Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)測定することにより求めることができる。具体的には、有機保護剤によって処理された銅粒子を、無酸素雰囲気中でTG−DTA測定することで、有機保護剤の脱離による重量減少が観察されるので、その重量減少として0.3%変化した点を有機保護剤の脱離開始温度とする。また、重量減少が停止したときの温度が、有機保護剤の脱離完了温度であり、重量減少開始から重量減少停止まで変化した重量を、有機保護剤で被覆されたサブマイクロ銅粒子における有機保護剤の含有量として求めることができる。なお、TG−DTA測定の条件は、実施例に記載の条件とすることができる。
【0047】
(マイクロ銅粒子)
マイクロ銅粒子は、粒径が2.0μm以上50μm以下の銅粒子を含むものが挙げられ、例えば、体積平均粒径が2.0μm以上50μm以下の銅粒子を用いることができる。マイクロ銅粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を充分に低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果が得られやすくなるという観点から、マイクロ銅粒子の体積平均粒径は、下限が2μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、上限が20μm以下であってもよく、10μm以下であってもよい。
【0048】
マイクロ銅粒子の含有量は、銅粒子の全質量の合計を基準として、10質量%以上90質量%以下であってもよく、15質量%以上65質量%以下であってもよく、20質量%以上60質量%以下であってもよい。マイクロ銅粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となり、接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。
【0049】
サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、銅粒子及び銅以外の金属粒子の質量の合計を基準として、80質量%以上とすることができる。サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計が上記範囲内であれば、接合用銅ペーストを焼結した際の体積収縮を十分に低減でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果が得られやすくなるという観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、銅粒子及び銅以外の金属粒子の質量の合計を基準として、90質量%以上であってもよく、95質量%以上であってもよい。また、銅粒子の焼結性の観点から、サブマイクロ銅粒子の含有量及びマイクロ銅粒子の含有量の合計は、銅粒子及び銅以外の金属粒子の質量の合計を基準として、99.99質量%以下であってもよく、99.0質量%以下であってもよい。
【0050】
マイクロ銅粒子の形状は、特に限定されるものではない。マイクロ銅粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状、及びこれらの凝集体が挙げられる。マイクロ銅粒子の形状は、中でも、フレーク状が好ましい。フレーク状のマイクロ銅粒子を用いることで、接合用銅ペースト内のマイクロ銅粒子が、接合面に対して略平行に配向することにより、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮を抑制でき、接合用銅ペーストを焼結させて製造される接合体の接合強度を確保することが容易となる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示す傾向にある。上記効果が得られやすくなるという観点から、フレーク状のマイクロ銅粒子としては、中でも、アスペクト比が4以上であってもよく、6以上であってもよい。
【0051】
マイクロ銅粒子は有機保護剤で処理されていることが望ましい。すなわち、有機保護剤で被覆されたマイクロ銅粒子を用いることができる。有機保護剤としては、例えば、ラウリン酸(ドデカン酸)、パルミチン酸、ヘプタデカン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、リノール酸、リノレイン酸、オレイン酸等の脂肪族カルボン酸;テレフタル酸、ピロメリット酸、o−フェノキシ安息香酸等の芳香族カルボン酸;セチルアルコール、ステアリルアルコール、イソボルニルシクロヘキサノール、テトラエチレングリコール等の脂肪族アルコール;p−フェニルフェノール等の芳香族アルコール;オクチルアミン、ドデシルアミン、ステアリルアミン等のアルキルアミン;ステアロニトリル、デカンニトリル等の脂肪族ニトリル;アルキルアルコキシシラン等のシランカップリング剤;ポリエチレングリコール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、シリコーンオリゴマー等の高分子処理材等が挙げられる。有機保護剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0052】
本実施形態において、有機保護剤で被覆されたマイクロ銅粒子は、有機保護剤の大気圧下における脱離開始温度T
P2が140℃以上380℃以下であることが好ましい。
【0053】
有機保護剤で被覆されたマイクロ銅粒子の有機保護剤の大気圧下における脱離開始温度は、上記と同様に測定することできる。
【0054】
本実施形態においては、有機保護剤が有機酸であることが好ましく、カルボン酸化合物であることがより好ましい。さらに、カルボン酸化合物は、大気圧下における脱離開始温度が、140℃以上380℃以下の範囲にあることが望ましい。
【0055】
有機保護剤の処理量は、粒子表面に一分子層以上の量であってもよい。このような有機保護剤の処理量は、マイクロ銅粒子の比表面積、有機保護剤の分子量、及び有機保護剤の最小被覆面積により変化する。
【0056】
有機保護剤の処理量は、処理後のマイクロ銅粒子の全質量を基準として、通常0.001質量%以上であり、0.01質量%以上20質量%以下であってもよく、0.1質量%以上10質量%以下であってもよい。有機保護剤で被覆されたマイクロ銅粒子における有機保護剤の含有量は、上述した有機保護剤で表面処理されたサブマイクロ銅粒子の場合と同様にして求めることができる。
【0057】
上記サブマイクロ銅粒子のみから接合用銅ペーストを調製する場合、分散媒の乾燥に伴う体積収縮及び焼結収縮が大きいため、接合用銅ペーストの焼結時に被着面より剥離しやすくなり、半導体素子等の接合においては充分なダイシェア強度及び接続信頼性が得られにくい。銅粒子として上記マイクロ銅粒子のみから接合用銅ペーストを調製する場合、焼結温度が高温化し、400℃以上の焼結工程を必要とする傾向にある。サブマイクロ銅粒子とマイクロ銅粒子とを併用することで、接合用銅ペーストを焼結させたときの体積収縮が抑制され、接合体は充分な接合強度を有することができる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示すという効果が得られる。
【0058】
本実施形態に係るマイクロ銅粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているマイクロ粒子としては、例えば、MA−C025(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径7.5μm、平均最大径4.1μm)、MA−C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径5μm、平均最大径10μm)、3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径8.0μm、平均最大径7.3μm)、2L3(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径9.9μm、平均最大径9μm)、2L3N/A(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径9.4μm、平均最大径9μm)、1110F(三井金属鉱業株式会社製、体積平均粒径3.8μm、平均最大径5μm)、HWQ3.0μm(福田金属箔粉工業株式会社製、体積平均粒径3.0μm)が挙げられる。
【0059】
(銅粒子以外の金属粒子)
本実施形態に銅ペーストは、銅以外の金属粒子(以下、「その他の金属粒子」という場合もある)を含んでいてもよい。その他の金属粒子は、特に制限されるものではない。その他の金属粒子の組成は、金属単体でもよいし、2種類以上の金属を含む合金(固溶体、金属間化合物、不均一な混合物)又は金属化合物(金属酸化物及び金属窒化物など)であってもよい。
【0060】
その他の金属粒子の粒子形状は特に制限されない。その他の金属粒子の形状としては、例えば、球状、塊状、針状、フレーク状、略球状及びこれらの凝集体が挙げられる。分散性及び充填性の観点から、その他の金属粒子の形状は、球状、略球状、フレーク状であってもよく、燃焼性、分散性、他の銅粒子との混合性等の観点から、球状又は略球状であってもよい。
【0061】
その他の金属粒子の体積平均粒径は、0.01μm以上50μm以下であることが好ましく、0.02μm以上20μm以下であることがより好ましく、0.03μm以上5μm以下であることが更に好ましい。その他の金属粒子の体積平均粒径が上記範囲内であれば、銅粒子の焼結を阻害しにくくなる。
【0062】
その他の金属粒子の含有量は、銅粒子及びその他の金属粒子の質量の合計を基準として、0.001質量%以上10質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以上2質量%以下であることが更に好ましい。その他の金属粒子の含有量が、上記範囲内であれば、接合用銅ペーストの焼結性に影響を与えにくい。
【0063】
その他の金属粒子の有機保護剤の処理の有無は特に限定されるものではない。分散安定性及び耐酸化性の観点から、その他の金属粒子は有機保護剤で処理されていてもよい。有機保護剤は、接合時に除去されるものであってもよい。その他の金属粒子の具体的な有機保護剤としては、サブマイクロ銅粒子又はマイクロ銅粒子に使用される上記有機保護剤を使用できる。
【0064】
本実施形態に係るその他の金属粒子としては、市販されているものを用いることができる。市販されているその他の金属粒子としては、例えば、銀粒子AgC239(50%体積平均粒径10μm、福田金属箔株式会社)、亜鉛粒子(50%体積平均粒径5μm、Alfa Aeser)、鉄粉末(50%体積平均粒径45μm、和光純薬工業株式会社製)、コバルト粉末Cobalt Powder S−160(50%体積平均粒径3.0μm、フリーポートコバルト社製)、ニッケル粒子(50%体積平均粒径1.5μm、METAL FOIL & POWDERS MFG CO.製)などが挙げられる。
【0065】
上記その他の金属粒子を添加することで、焼結銅の中にその他の金属粒子に由来する金属元素が固溶或いは分散した状態となり、降伏応力、疲労強度等の機械的な特性が改善することで接合強度及び接続信頼性が高まる。
【0066】
(分散媒)
分散媒は、沸点が250℃未満の第1の分散媒(以下、「低沸点分散媒」という場合もある)と、沸点が250℃以上の第2の分散媒(以下、「高沸点分散媒」という場合もある)とを併用することが好ましい。なお、沸点は、大気圧下(1気圧)における温度を指す。
【0067】
低沸点分散媒は、揮発性とペースト焼結時の脱離性とのバランスの観点から、沸点が40℃以上250℃未満が好ましく、沸点が80℃以上230℃以下がより好ましく、沸点が120℃以上200℃以下がさらに好ましい。
【0068】
低沸点分散媒の含有量は、銅粒子と低沸点分散媒と高沸点分散媒の質量の合計を基準として、0.1質量%以上30質量%以下であることが好ましい。また、低沸点分散媒の含有量は、低沸点分散媒及び高沸点分散媒の質量の合計を基準として、30質量%以上90質量%以下であることが好ましい。
【0069】
高沸点分散媒は、ペースト焼結時の離脱性の観点から、沸点が250℃以上350℃以下が好ましく、沸点が250℃以上330℃以下がより好ましく、沸点が250℃以上310℃以下がさらに好ましい。
【0070】
高沸点分散媒の含有量は、銅粒子と低沸点分散媒と高沸点分散媒の質量の合計を基準として、3質量%以上10質量%以下であることが好ましい。また、高沸点分散媒の含有量は、低沸点分散媒及び高沸点分散媒の質量の合計を基準として、10質量%以上70質量%以下であることが好ましい。
【0071】
また、高沸点分散媒の含有量は、有機保護剤によって被覆された銅粒子及び分散媒の総質量を基準として、0.1〜30質量%であってもよい。
【0072】
低沸点分散媒の大気圧下における脱離温度は、上述した銅粒子を被覆する有機保護剤の脱離温度よりも低温であることが好ましい。また、低沸点分散媒の脱離開始温度は、高沸点分散媒の脱離開始温度よりも低温であることが好ましい。具体的な、低沸点分散媒の脱離開始温度としては、20℃以上120℃以下であることが好ましく、30℃以上100℃以下であることがより好ましく、40℃以上80℃以下であることが更に好ましい。
【0073】
低沸点分散媒は、大気圧下における脱離開始温度が異なる2種以上の分散媒を含むことができる。この場合、ボイド抑制の観点から、脱離開始温度が20℃以上の低沸点分散媒と、脱離開始温度が120℃未満の低沸点分散媒とを含むことが好ましい。
【0074】
なお、分散媒の大気圧下における脱離温度は、上述した銅粒子を被覆する有機保護剤の脱離温度と同様にして測定することができる。具体的には、分散媒を、無酸素雰囲気中でTG−DTA測定することで、分散媒の脱離による重量減少が観察されるので、その重量減少として0.3%変化した点を分散媒の脱離開始温度とする。
【0075】
高沸点分散媒の大気圧下における脱離温度T
S2は、上述した銅粒子を被覆する有機保護剤の脱離温度以下であることが好ましい。すなわち、T
S2≦T
P1、かつ、T
S2≦T
P2であることが好ましい。
【0076】
高沸点分散媒の大気圧下における脱離温度T
S2は、ボイドの発生をより効果的に抑制する観点から、140℃以下であることが好ましく、50℃以上130℃以下であることがより好ましく、70℃以上130℃以下であることがさらに好ましく、90℃以上130℃以下であることがさらにより好ましい。
【0077】
また、高沸点分散媒の大気圧下における脱離温度T
S2は、上記T
P1との差が50℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。さらに、高沸点分散媒の大気圧下における脱離温度T
S2は、上記T
P2との差が50℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0078】
また、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子を被覆する有機保護剤のうちの大気圧下における脱離開始温度が最も低い有機保護剤の脱離開始温度をT
Pminとしたときに、高沸点分散媒の大気圧下における脱離開始温度T
S2は、T
Pminとの差が50℃以下であることが好ましく、0℃以上50℃以下であることがより好ましい。
【0079】
さらに、接合用銅ペーストに含まれる銅粒子を被覆する有機保護剤のうちの大気圧下における脱離開始温度が最も低い有機保護剤の脱離開始温度をT
Pminとし、高沸点分散媒の大気圧下における脱離開始温度が最も高い分散媒の脱離開始温度をT
S2maxとしたときに、T
S2max≦T
Pminであることが好ましい。
【0080】
低沸点分散媒及び高沸点分散媒の種類は限定されるものではなく、揮発性のものであってもよい。揮発性の分散媒としては、例えば、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、デカノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、α−テルピネオール、イソボニルシクロヘキサノール(MTPH)等の一価及び多価アルコール類、エチレングリコールブチルエーテル、エチレングリコールフェニルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルエーテル、ジエチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールイソブチルエーテル、ジエチレングリコールヘキシルエーテル、トリエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールブチルメチルエーテル、ジエチレングリコールイソプロピルメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールブチルメチルエーテル、プロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテル、ジプロピレングリコールエチルエーテル、ジプロピレングリコールプロピルエーテル、ジプロピレングリコールブチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、トリプロピレングリコールメチルエーテル、トリプロピレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、エチレングリコールエチルエーテルアセテート、エチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールブチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(DPMA)、乳酸エチル、乳酸ブチル、γ−ブチロラクトン、炭酸プロピレン、オクタン酸オクチル等のエステル類、N−メチル−2−ピロリドン、N、N−ジメチルアセトアミド、N、N−ジメチルホルムアミド等の酸アミド、シクロヘキサン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ヘプタデカン等の脂肪族炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素、炭素数1〜18のアルキル基を有するメルカプタン類、炭素数5〜7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類が挙げられる。炭素数1〜18のアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、エチルメルカプタン、n−プロピルメルカプタン、i−プロピルメルカプタン、n−ブチルメルカプタン、i−ブチルメルカプタン、t−ブチルメルカプタン、ペンチルメルカプタン、ヘキシルメルカプタン及びドデシルメルカプタンが挙げられる。炭素数5〜7のシクロアルキル基を有するメルカプタン類としては、例えば、シクロペンチルメルカプタン、シクロヘキシルメルカプタン及びシクロヘプチルメルカプタンが挙げられる。
【0081】
高沸点分散媒は、炭化水素化合物、アルコール化合物、エステル化合物及びエーテル化合物から選択される分散媒が好ましい。
【0082】
(添加剤)
接合用銅ペーストには、必要に応じて分散剤、表面保護剤、増粘剤、チキソ性付与剤等の添加剤を更に含んでもよい。接合用銅ペーストが添加剤を含む場合、200℃以下の温度で不揮発性又は非分解性である添加剤の含有量が、接合用銅ペースト全量を基準として、20質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましい。添加剤の含有量が上記範囲であれば、接合用銅ペーストの焼結性の低下を抑制しやすい。
【0083】
(接合用金属ペーストの調製)
接合用銅ペーストは、上述のサブマイクロ銅粒子、マイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を分散媒に混合して調製することができる。各成分の混合後に、撹拌処理を行ってもよい。接合用銅ペーストは、分級操作により分散液の最大粒径を調整してもよい。
【0084】
接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子、有機保護剤、分散媒をあらかじめ混合して、分散処理を行ってサブマイクロ銅粒子の分散液を調製し、更にマイクロ銅粒子、その他の金属粒子及び任意の添加剤を混合して調製してもよい。このような手順とすることで、サブマイクロ銅粒子の分散性が向上してマイクロ銅粒子との混合性が良くなり、接合用銅ペーストの性能がより向上する。サブマイクロ銅粒子の分散液を分級操作によって凝集物を除去してもよい。
【0085】
撹拌処理は、撹拌機を用いて行うことができる。撹拌機としては、例えば、自転公転型攪拌装置、ライカイ機、二軸混練機、三本ロールミル、プラネタリーミキサー、薄層せん断分散機等が挙げられる。
【0086】
分級操作は、例えば、ろ過、自然沈降、遠心分離を用いて行うことができる。ろ過用のフィルタとしては、例えば、金属メッシュ、メタルフィルター、ナイロンメッシュが挙げられる。
【0087】
分散処理としては、例えば、薄層せん断分散機、ビーズミル、超音波ホモジナイザー、ハイシアミキサー、狭ギャップ三本ロールミル、湿式超微粒化装置、超音速式ジェットミル、超高圧ホモジナイザー等が挙げられる。
【0088】
接合用銅ペーストは、成型する場合には各々の印刷・塗布手法に適した粘度に調整してもよい。接合用銅ペーストの粘度としては、例えば、25℃におけるCasson粘度が0.05Pa・s以上2.0Pa・s以下であってもよく、0.06Pa・s以上1.0Pa・s以下であってもよい。
【0089】
本実施形態の接合用銅ペーストによれば、大面積の半導体素子と基板とを無加圧で接合する場合であっても、充分な接合強度を得ることができる。このような効果が得られる理由としては以下が考えられる。(i)上記サブマイクロ銅粒子と上記マイクロ銅粒子とを組み合わせて含有させることにより、充分な焼結性を維持しつつ、有機保護剤又は分散媒に起因する焼結時の体積収縮を充分抑制することができ、無加圧で接合する場合であっても焼結体強度の確保及び被着面との接合力向上が可能になったこと、(ii)更に、140℃以上380℃以下の脱離開始温度を有する有機保護剤で被覆された銅粒子に上記低沸点分散媒及び上記高沸点分散媒を配合するとともに高沸点分散媒の脱離開始温度を有機保護剤の脱離開始温度以下とすることで、分散媒が適度に存在している状態で有機保護剤を脱離させることができ、これによりボイドの発生が抑制できたこと、(iii)また、銅粒子の焼結が開始する直前まで上記高沸点分散媒が適度に残存することにより銅ペーストの粘着性が維持され、この粘着性の効果によって銅ペーストが有機保護剤の脱離が開始する温度、すなわち銅粒子の焼結の開始温度まで接合する部材(例えば半導体素子及び基板の両方)に対して充分に接触した状態が確保され、部材に充分接触した状態のまま銅粒子が焼結することで、例えば半導体素子及び基板の表面の金属に対して金属結合を形成することができたこと、などが考えられる。
【0090】
上記の作用効果を奏する本実施形態の接合用銅ペーストは、過度の加圧をすることなく、部材との接合力を確保することができる。接合用銅ペーストを半導体素子の接合に用いる場合は、半導体装置が良好なダイシェア強度及び接続信頼性を示すことができる。すなわち、本実施形態の接合用銅ペーストは、無加圧接合用銅ペーストとして用いることができる。なお、本明細書において、「無加圧」とは、接合する部材の自重、又はその自重に加え、0.01MPa以下の圧力を受けている状態を意味する。
【0091】
また、本実施形態の接合用銅ペーストによれば、比較的安価な銅粒子を用いることで、製造コストを抑えることができ、大量生産をすることができる。特に、本実施形態の接合用銅ペーストは、サブマイクロ銅粒子及びマイクロ銅粒子によって上述した効果を得ることができることから、高価な銅ナノ粒子を主成分とする接合材に比べて、より安価で且つ安定的に供給できるという利点を有する。これにより、例えば半導体装置等の接合体を製造する場合に生産安定性を一層高めることが可能となる。
【0092】
<焼結体>
本実施形態の焼結体は、上述した本実施形態の接合用銅ペーストを焼結することにより得られる。本実施形態の焼結体によれば、部材同士をボイド無く接合することができる。
【0093】
本実施形態の焼結体の製造方法は、本実施形態の接合用銅ペーストを焼結する工程を備える。当該工程は、例えば、接合用銅ペーストを部材等に塗布した後に行うことができる。
【0094】
塗布する手法としては、接合用銅ペーストを堆積させられる手法であればよい。このような手法として、インクジェット印刷、スーパーインクジェット印刷、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、ジェットプリンティング法、ディスペンサー、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ソフトリソグラフ、バーコート、アプリケータ、粒子堆積法、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ、電着塗装等を用いることができる。
【0095】
接合用銅ペーストの厚みは、1μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、10μm以上であってもよく、20μm以上であってもよい。また、接合用銅ペーストの厚みは、3000μm以下であってもよく、1000μm以下であってもよく、500μm以下であってもよく、300μm以下であってもよく、250μm以下であってもよく、200μm以下であってもよく、150μm以下であってもよい。
【0096】
塗布された接合用銅ペーストは、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、適宜乾燥させてもよい。乾燥時のガス雰囲気は大気中であってもよく、窒素、希ガス等の無酸素雰囲気中であってもよく、水素、ギ酸等の還元雰囲気中であってもよい。乾燥方法は、常温放置による乾燥であってもよく、加熱乾燥であってもよく、減圧乾燥であってもよい。更に、乾燥工程から焼結工程に移る際に、乾燥温度を保持したまま、焼結工程を行うことが望ましい。乾燥時に銅ペーストはチップや基板に対して粘着した状態となっているが、乾燥後に特に冷却が生じると粘着が剥離しやすくなる。乾燥温度を保持したまま、次の焼結工程に移す製造工程とすることで、粘着を保持しやすくなり、その結果、焼結後も特に被着体に対する接合面積が確保され、良好な接合強度となる。
【0097】
加熱乾燥又は減圧乾燥には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉、熱板プレス装置等を用いることができる。乾燥の温度及び時間は、使用した分散媒の種類及び量に合わせて適宜調整してもよい。乾燥の温度及び時間としては、大気中あるいは無酸素雰囲気中で、50〜150℃で乾燥することが望ましい。
【0098】
接合用銅ペーストを加熱処理することで焼結を行うことができる。加熱処理には、例えば、ホットプレート、温風乾燥機、温風加熱炉、窒素乾燥機、赤外線乾燥機、赤外線加熱炉、遠赤外線加熱炉、マイクロ波加熱装置、レーザー加熱装置、電磁加熱装置、ヒーター加熱装置、蒸気加熱炉等を用いることができる。
【0099】
焼結時のガス雰囲気は、銅焼結体及び部材の酸化抑制の観点から、無酸素雰囲気であってもよい。焼結時のガス雰囲気は、接合用銅ペーストの銅粒子の表面酸化物を除去するという観点から、還元雰囲気であってもよい。無酸素雰囲気としては、例えば、窒素、希ガス等の無酸素ガスの導入、又は真空下が挙げられる。還元雰囲気としては、例えば、純水素ガス中、フォーミングガスに代表される水素及び窒素の混合ガス中、ギ酸ガスを含む窒素中、水素及び希ガスの混合ガス中、ギ酸ガスを含む希ガス中等が挙げられる。
【0100】
加熱処理時の到達最高温度は、部材への熱ダメージの低減及び歩留まりを向上させるという観点から、200℃以上450℃以下であってもよく、200℃以上400℃以下であってもよく、250℃以上400℃以下であってもよく、250℃以上350℃以下であってもよく、250℃以上300℃以下であってもよい。
【0101】
到達最高温度保持時間は、分散媒を全て揮発させ、また、歩留まりを向上させるという観点から、1分間以上60分間以下であってもよく、1分間以上40分間未満であってもよく、1分間以上30分間未満であってもよい。
【0102】
焼結は、無加圧で行うことができる。すなわち、接合用金属ペースト上に配置した部材による自重のみ、又は部材の自重に加え、0.01MPa以下、好ましくは0.005MPa以下の圧力を受けた状態で、充分な接合強度を得ることができる。焼結時に受ける圧力が上記範囲内であれば、特別な加圧装置が不要なため歩留まりを損なうこと無く、ボイドの低減、ダイシェア強度及び接続信頼性をより一層向上させることができる。接合用金属ペーストが0.01MPa以下の圧力を受ける方法としては、例えば、接合用金属ペースト上に配置した部材の上に重りを載せる方法等が挙げられる。
【0103】
<接合体及び半導体装置>
以下、図面を参照しながら本実施形態に係る接合体及び半導体装置について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は、図示の比率に限られるものではない。
【0104】
図1は、本実施形態の接合用金属ペーストを用いて製造される接合体の一例を示す模式断面図である。
【0105】
図1に示す接合体100は、第一の基部1a及び第一の金属層1bを有する第一の部材1と、第二の基部3a及び第二の金属層3bを有する第二の部材3と、第一の部材と第二の部材とを接合する焼結体2と、を備える。焼結体2は、本実施形態の接合用銅ペーストの焼結体である。
【0106】
第一の部材及び第二の部材としては、例えば、IGBT、ダイオード、ショットキーバリヤダイオード、MOS−FET、サイリスタ、ロジック、センサー、アナログ集積回路、LED、半導体レーザー、発信器等の半導体素子、リードフレーム、金属板貼付セラミックス基板(例えばDBC)、LEDパッケージ等の半導体素子搭載用基材、銅リボン、金属ブロック、端子等の給電用部材、放熱板、水冷板等が挙げられる。
【0107】
図1に示されるように、第一の部材1及び第二の部材3は、接合用銅ペーストの焼結体2と接する面に、接合用銅ペーストの焼結体2と金属結合を形成する第一の金属層1b及び第二の金属層3bを設けることができる。第一の金属層1b及び第二の金属層3bを構成する金属としては、例えば、銅、ニッケル、銀、金、パラジウム、白金、鉛、錫、コバルト等が挙げられる。これらの金属は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。また、第一の金属層1b及び第二の金属層3bは、上記金属を含む合金であってもよい。合金に用いられる金属としては、上記金属の他に、亜鉛、マンガン、アルミニウム、ベリリウム、チタン、クロム、鉄、モリブデン等が挙げられる。第一の金属層1b及び第二の金属層3bを有する部材としては、例えば、各種金属メッキを有する部材、ワイヤ、金属メッキを有するチップ、ヒートスプレッダ、金属板が貼り付けられたセラミックス基板、各種金属メッキを有するリードフレーム又は各種金属からなるリードフレーム、銅板、銅箔が挙げられる。
【0108】
接合体のダイシェア強度は、第一の部材及び第二の部材を充分に接合するという観点から、10MPa以上であってもよく、15MPa以上であってもよく、20MPa以上であってもよく、30MPa以上であってもよい。ダイシェア強度は、万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)等を用いて測定することができる。
【0109】
上記接合体において、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方は、半導体素子であってもよい。半導体素子としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、LEDモジュール等が挙げられる。このような場合、上記接合体は半導体装置となる。得られる半導体装置は充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。
【0110】
図2は、本実施形態の接合用金属ペーストを用いて製造される半導体装置の一例を示す模式断面図である。
図2に示す半導体装置200は、金属層5b及び基部5aを有するリードフレーム5上に、本実施形態に係る接合用銅ペーストの焼結体2を介して接続された、金属層4b及び基部4aを有する半導体素子4と、これらをモールドするモールドレジン6とからなる。半導体素子1は、ワイヤ7を介して金属層8b及び基部8aを有するリードフレーム8に接続されている。
【0111】
本実施形態の接合用銅ペーストを用いて製造される半導体装置としては、例えば、ダイオード、整流器、サイリスタ、MOSゲートドライバ、パワースイッチ、パワーMOSFET、IGBT、ショットキーダイオード、ファーストリカバリダイオード等からなるパワーモジュール、発信機、増幅器、高輝度LEDモジュール、センサー等が挙げられる。
【0112】
<接合体及び半導体装置の製造方法>
以下、本実施形態の接合用金属ペーストを用いた接合体及び半導体装置の製造方法について説明する。
【0113】
本実施形態に係る接合体100の製造方法は、第一の部材1、該第一の部材1の自重が働く方向側に、上記接合用金属ペースト、及び第二の部材3がこの順に積層された積層体を用意し、接合用金属ペーストを、第一の部材1の自重、又は第一の部材1の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。第一の部材1の自重が働く方向とは、重力が働く方向ということもできる。
【0114】
上記積層体は、例えば、第一の部材1又は第二の部材3の必要な部分に本実施形態の接合用金属ペーストを設け、次いで接合用金属ペースト上に接合する部材を配置することにより用意することができる。
【0115】
本実施形態の接合用金属ペーストを、第一の部材及び第二の部材の必要な部分に設ける方法としては、接合用金属ペーストを堆積させられる方法であればよい。このような方法としては、例えば、スクリーン印刷、転写印刷、オフセット印刷、凸版印刷、凹版印刷、グラビア印刷、ステンシル印刷、ジェット印刷等の印刷による方法、ディスペンサ(例えば、ジェットディスペンサ、ニードルディスペンサ)、カンマコータ、スリットコータ、ダイコータ、グラビアコータ、スリットコート、バーコータ、アプリケータ、スプレーコータ、スピンコータ、ディップコータ等を用いる方法、ソフトリソグラフィによる方法、粒子堆積法、電着塗装による方法などを用いることができる。
【0116】
接合用金属ペーストの厚さは、1〜1000μmであってよく、10〜500μmであってもよく、50〜200μmであってもよく、10〜3000μmであってもよく、15〜500μmであってもよく、20〜300μmであってもよく、5〜500μmであってもよく、10〜250μmであってもよく、15〜150μmであってもよい。
【0117】
部材上に設けられた接合用金属ペーストは、焼結時の流動及びボイドの発生を抑制する観点から、適宜乾燥させてもよい。乾燥は、上述した焼結体の製造方法と同様に行うことができる。
【0118】
一方の部材を他方の部材上に配置する方法(例えば、接合用金属ペーストが設けられた第二の部材上に第一の部材を配置する方法)としては、例えば、チップマウンター、フリップチップボンダー、カーボン製又はセラミックス製の位置決め冶具等が挙げられる。
【0119】
積層体を加熱処理することで、接合用金属ペーストの焼結を行う。加熱処理は、上述した焼結体の製造方法と同様に行うことができる。
【0120】
本実施形態に係る半導体装置は、上述した接合体の製造方法と同様にして製造することができる。すなわち、半導体装置の製造方法は、第一の部材及び第二の部材の少なくとも一方に半導体素子を用い、第一の部材、該第一の部材の自重が働く方向側に、上記接合用金属ペースト、及び第二の部材がこの順に積層された積層体を用意し、接合用金属ペーストを、第一の部材の自重、又は第一の部材の自重及び0.01MPa以下の圧力を受けた状態で焼結する工程を備える。例えば、リードフレーム上に接合用金属ペーストを設け、半導体素子を配置して加熱する工程が挙げられる。得られる半導体装置は、無加圧での接合を行った場合であっても、充分なダイシェア強度及び接続信頼性を有することができる。本実施形態の半導体装置は、充分な接合力を有し、熱伝導率及び融点が高い銅の焼結体を備えることにより、充分なダイシェア強度を有し、接続信頼性に優れるとともに、パワーサイクル耐性にも優れたものになり得る。
【実施例】
【0121】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0122】
実施例及び比較例では以下の材料を用いた。
[金属粒子]
(マイクロ銅粒子)
MA−C025KFD(三井金属鉱業株式会社製、50%体積平均粒径5μm、有機保護剤:ドデカン酸、1μm以上8.4μm未満の粒子径を有する銅粒子の含有量:90質量%)
3L3(福田金属箔粉工業株式会社製、50%体積平均粒径8.0μm)
(サブマイクロ銅粒子)
CH−0200(三井金属鉱業株式会社製、50%体積平均粒径0.36μm、有機保護剤:ドデカン酸、0.1μm以上1μm未満の粒子径を有する銅粒子の含有量:100質量%)
亜鉛粒子:Zinc powder(Alfa Aesar社製)
銀粒子:AgC239(福田金属箔株式会社製、50%体積平均粒径10μm)
ニッケル粒子:Ni−HWQ(福田金属箔株式会社製、50%体積平均粒径1.5μm)
【0123】
[分散媒]
(低沸点分散媒)
α−テルピネオール(和光純薬工業株式会社製)
(高沸点分散媒)
トリブチリン(和光純薬工業株式会社製)
イソボルニルシクロヘキサノール(MTPH、日本テルペン化学株式会社製)
オクタン酸オクチル(和光純薬工業株式会社製)
ヘプタデカン(和光純薬工業株式会社製)
ステアリン酸ブチル(和光純薬工業株式会社製)
スクワラン(和光純薬工業株式会社製)
ステアリン酸(和光純薬工業株式会社製)
【0124】
(1)分散媒及び有機保護剤の脱離温度(TG−DTA(示差熱‐熱重量同時測定、Thermogravimetry−Differential Thermal Analysis)測定)
分散媒又は有機保護剤によって被覆された銅粒子を、TG−DTA測定用のAlサンプルパンに10mg乗せ、これをTG−DTA測定装置(エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社、EXSTAR6000 TG/DTA6300)の試料ホルダーにセットした。窒素を流量約400mL/分で流しながら、昇温速度10℃/分で室温(25℃)から約500℃までサンプルを加熱し、その際の重量変化と熱挙動を測定した。重量変化が開始してその変化量が0.3%となったとき温度を脱離開始の温度とし、重量減少が停止した温度を脱離完了の温度とした。また、重量減少量をその有機保護剤の処理量(銅粒子に対する付着量)とした。
【0125】
図3は、サブマイクロ銅粒子CH−0200(有機保護剤:ドデカン酸)の窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。これより、ドデカン酸が、140℃〜195℃、240℃〜320℃の二段階で脱離していることが分かる。つまり、この銅粒子の有機保護剤(ドデカン酸)の脱離開始温度は140℃となる。また、ドデカン酸の処理量は、サブマイクロ銅粒子の質量を基準として約2.5質量%であり、処理後のサブマイクロ銅粒子の質量を基準として2.4質量%であった。なお、図中の実線が重量変化の曲線を示し、破線が熱量変化の曲線を示す。
【0126】
図4は、マイクロ銅粒子MA−C025KFD(有機保護剤の処理なし)の窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。脱離する有機保護剤が付着していないため、MA−C025KFDは重量減少しなかった。
【0127】
図5は、マイクロ銅粒子3L3(有機保護剤:ドデカン酸)の窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。これより、ドデカン酸が、185℃〜345℃で脱離している。つまり、この銅粒子の有機保護剤の脱離開始温度は185℃である。なお、ドデカン酸の脱離開始温度がサブマイクロ粒子のCH−0200と変わるのは、Cuの粒径が異なることにより脱離反応に対する触媒作用が変化するためと考えられる。また、有機保護剤の付着量は、マイクロ銅粒子の質量を基準として約3.3質量%であり、処理後のマイクロ銅粒子の質量を基準として3.2質量%であった。
【0128】
図6は、低沸点分散媒のテルピネオールの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。テルピネオールが、60℃〜160℃で脱離していることが分かる。テルピネオールの脱離開始温度は60℃であった。
【0129】
図7は、高沸点分散媒のトリブチリンの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。トリブチリンが、128℃〜250℃で脱離していることが分かる。トリブチリンの脱離開始温度は128℃でであった。
【0130】
図8は、高沸点分散媒のMTPHの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。MTPHが、125℃〜235℃で脱離していることが分かる。MTPHの脱離開始温度は125℃であった。
【0131】
図9は、高沸点分散媒のオクタン酸オクチルの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。オクタン酸オクチルが、110℃〜243℃で脱離していることが分かる。テオクタン酸オクチルの脱離開始温度は110℃であった。
【0132】
図10は、高沸点分散媒のヘプタデカンの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。ヘプタデカンが、93℃〜212℃で脱離していることが分かる。ヘプタデカンの脱離開始温度は93℃であった。
【0133】
図11は、高沸点分散媒のステアリン酸ブチルの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。ステアリン酸ブチルが、155℃〜270℃で脱離していることが分かる。ステアリン酸ブチルの脱離開始温度は155℃であった。
【0134】
図12は、高沸点分散媒のスクワランの窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。スクワランが、180℃〜310℃で脱離していることが分かる。スクワランの脱離開始温度は180℃であった。
【0135】
図13は、高沸点分散媒のステアリン酸の窒素雰囲気中におけるTG−DTA測定結果を示す図である。ステアリン酸が、160℃〜400℃で脱離していることが分かる。ステアリン酸の脱離開始温度は160℃であった。
【0136】
<接合用銅ペーストの調製及び評価>
(実施例1)
マイクロ銅粒子としてMA−C025KFD(有機保護剤なし)299.5g、ドデカン酸を0.5g、エタノール1000gを混合し、窒素雰囲気中、60℃に保持しながら、300rpmで3時間攪拌した。その後、エタノールを減圧蒸留で取り除くことで、ドデカン酸が約0.17質量%付着したマイクロ銅粒子MA−C025KFD(ドデカン酸処理品)を得た。この銅粒子の有機保護剤の脱離開始温度を測定したところ、185℃であった。
【0137】
表1の配合に従って接合用銅ペーストを以下の手順で調製した。分散媒としてα−テルピネオール及びトリブチリンを混合した。そこに、マイクロ銅粒子としてMA−C025KFD(ドデカン酸処理品)及びサブマイクロ銅粒子としてCH−0200を秤量して加え、自動乳鉢で5分間混合した。混合物をポリ瓶に移した後、2000rpm、2分間、減圧の条件でシンキー社製攪拌機(あわとり練太郎 ARE−310)にかけて接合用銅ペースト組成物を得た。この銅ペーストを用いて、下記の各種の測定及び分析を行った。
【0138】
[3mmチップのダイシェア強度]
銅板(19×25×3mm
3)上に厚さ100μmのステンレス板に3mm×3mm正方形の開口を9個有するメタルマスクを載せ、メタルスキージを用いて、ステンシル印刷により銅ペーストを塗布した。シリコンチップ(面積3mm×3mm、厚み400μm、銅ペーストとの被着面としてニッケルめっき層を有する)を、塗布した銅ペースト上に載せ、ピンセットで軽く押さえ、積層体を得た。積層体をホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)にて大気中、90℃15分加熱し、乾燥を行った。積層体をチューブ炉(株式会社エイブイシー製)にセットし、アルゴンガスを3L/minで流して空気をアルゴンガスに置換した後、水素ガスを300mL/minで流しながら昇温30分、300℃、60分の条件で焼結処理して銅板とシリコンチップを焼結体で接合した接合体を得た。アルゴンガスを0.3L/minに換えて冷却し、50℃以下になったら接合体を空気中に取り出した。
【0139】
得られた接合体について、1kNのロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ100μmでシリコンチップを水平方向に押し、接合体のダイシェア強度を測定した。5個の接合体を測定した値の平均値をダイシェア強度とした。
【0140】
[10mmチップのダイシェア強度]
銅板(19×25×3mm
3)上に厚さ100μmのステンレス板に10mm×10mm正方形の開口を1個有するメタルマスクを載せ、メタルスキージを用いて、ステンシル印刷により銅ペーストを塗布した。シリコンチップ(面積10mm×10mm、厚み400μm、銅ペーストとの被着面としてニッケルめっき層を有する)を、塗布した銅ペースト上に載せ、ピンセットで軽く押さえ、積層体を得た。積層体をホットプレート(アズワン株式会社製、EC HOTPLATE EC−1200N)にて大気中、90℃15分加熱し、乾燥を行った。積層体をチューブ炉(株式会社エイブイシー製)にセットし、アルゴンガスを3L/minで流して空気をアルゴンガスに置換した後、水素ガスを300mL/minで流しながら昇温30分、300℃、60分の条件で焼結処理して銅板とシリコンチップを焼結体で接合した接合体を得た。アルゴンガスを0.3L/minに換えて冷却し、50℃以下になったら接合体を空気中に取り出した。
【0141】
得られた接合体について、1kNのロードセルを装着した万能型ボンドテスタ(4000シリーズ、DAGE社製)を用い、測定スピード500μm/s、測定高さ100μmでシリコンチップを水平方向に押し、接合体のダイシェア強度を測定した。5個の接合体を測定した値の平均値をダイシェア強度とした。なお、チップの破壊強度よりもダイシェア強度が高かった場合を、「チップ破壊」と示す。
【0142】
[チップに対する焼結銅の接合面積]
3mmチップのダイシェア強度で作製した接合体及び10mmチップのダイシェア強度で作製した接合体について、超音波探傷装置(インサイト Insight−300)にて周波数110kHzのプローブを使用して、チップと焼結銅の接合界面を分析し、超音波探傷像(SAM像)を取得した。得られたSAM像のチップ面積に対する黒色領域(銅焼結体がチップに接合している領域)と白色領域(銅焼結体がチップに接合していない領域)の比率から、チップに対する焼結銅の接合面積を算出した。
【0143】
(実施例2〜15)
表1又は表2の配合に従って接合用銅ペーストを実施例1と同様にして調製した。それぞれ得られた接合用銅ペーストを用い、表1又は表2に示す乾燥条件及び焼結条件としたこと以外は実施例1と同様にして接合体を作製し、評価した。
【0144】
(比較例1〜14)
表3又は表4の配合に従って接合用銅ペーストを実施例1と同様にして調製した。それぞれ得られた接合用銅ペーストを用い、表3又は表4に示す乾燥条件及び焼結条件としたこと以外は実施例1と同様にして接合体を作製し、評価した。
【0145】
【表1】
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】
【0149】
【表5】
【0150】
【表6】
【0151】
【表7】
【0152】
【表8】
【0153】
実施例1〜15の接合用銅ペーストによれば、大面積の半導体素子を無加圧で接合する場合であっても充分な接合強度を得ることができることが分かった。
【0154】
図14は、実施例2の接合後の面積10mm×10mmチップの超音波探傷像(SAM像)を示す。SAM像においてチップ全体が黒色領域となっており、これはチップと銅焼結体がボイド無く接合していることを示している。
図15は、実施例14の接合後の面積10mm×10mmチップのSAM像を示す。こちらもSAM像においてチップ全体が黒色領域となっており、チップと銅焼結体がボイド無く接合していることを示している。
【0155】
また、
図16は、実施例2の接合後の接合断面の光学顕微鏡像である。チップ及び基板が銅焼結体によってボイドなく接合していることが分かる。なお、接合断面の観察は以下の手順で行った。
【0156】
10mmチップのダイシェア強度で作製した接合体を、カップ内にサンプルクリップ(Samplklip I、Buehler製)で固定し、周囲にエポキシ注形樹脂(エポマウント、リファインテック製)を接合体全体が埋まるまで流し込み、真空デシケータ内に静置して1分間減圧して脱泡した。その後、室温で10時間静置し、エポキシ注形樹脂を硬化し、サンプルを調製した。リファインソーエクセル(リファインテック製)を用いて、サンプルをシリコンチップ近傍で切断した。耐水研磨紙(カーボマックペーパー、リファインテック製)をつけた研磨装置(Refine Polisher HV、リファインテック製)で接合体の中央付近まで削り断面を出した。このサンプルを光学顕微鏡により、銅焼結体の接合断面を観察した。
【0157】
図17は、比較例2の接合後の面積10mm×10mmチップのSAM像を示す。SAM像においてチップの一部の白色領域は、チップと銅焼結体の間にボイドが有ることを示している。
図18は、比較例13の接合後の面積10mm×10mmチップのSAM像を示す。こちらはSAM像においてチップの大部分が白色領域となっており、チップと銅焼結体の間にボイドが生じ、チップがはく離していることを示している。
【0158】
図19は、比較例2の接合後の接合断面の光学顕微鏡像である。銅焼結体の中に大きなボイドが生じ、チップや基板に対して接合していない箇所がある。