特許第6782440号(P6782440)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6782440
(24)【登録日】2020年10月22日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】小型渦流燃焼器
(51)【国際特許分類】
   F23D 14/02 20060101AFI20201102BHJP
【FI】
   F23D14/02 M
【請求項の数】5
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-137520(P2016-137520)
(22)【出願日】2016年7月12日
(65)【公開番号】特開2018-9721(P2018-9721A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年1月22日
(73)【特許権者】
【識別番号】000109026
【氏名又は名称】ダイニチ工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504136568
【氏名又は名称】国立大学法人広島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 剛
(74)【代理人】
【識別番号】100097065
【弁理士】
【氏名又は名称】吉井 雅栄
(72)【発明者】
【氏名】横尾 直樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩之
(72)【発明者】
【氏名】下栗 大右
【審査官】 渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】 特開平08−270906(JP,A)
【文献】 特開2005−207625(JP,A)
【文献】 国際公開第2015/098025(WO,A1)
【文献】 特開2003−343811(JP,A)
【文献】 実開昭57−051240(JP,U)
【文献】 特開2013−019557(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に筒状の燃焼部を有する燃焼器本体部と、前記燃焼部の内面の接線方向に向けて燃料ガスを導入する燃料ガス導入部とから成り、前記燃料ガス導入部から前記燃焼部内に燃料ガスが導入されることで、この燃料ガスが前記燃焼部内で旋回流になって該燃焼部内に渦流火炎が形成され、この渦流火炎の熱若しくは前記渦流火炎の燃焼によって生じた燃焼ガスの熱により被加熱部が加熱されるように構成された小型渦流燃焼器であって、前記燃焼部内に形成される渦流火炎の火炎温度低下を抑制する断熱空隙部が、前記燃焼部の外側にして前記燃焼部の前記渦流火炎を囲繞する位置に設けられていて、この断熱空隙部は一端が閉塞され他端が前記燃焼部から排出される燃焼ガスを前記燃焼器本体部の外部に排出するための排気口に連通するように構成されていることを特徴とする小型渦流燃焼器。
【請求項2】
前記燃焼器本体部が前記熱により加熱されるように構成されていて、この燃焼器本体部が前記被加熱部とされていること、または、前記燃焼器本体部と別体で設けられている接続被加熱部が前記熱により加熱されるように構成されていて、この接続被加熱部が前記被加熱部とされていることを特徴とする請求項1記載の小型渦流燃焼器。
【請求項3】
前記燃焼部は、前記燃焼器本体部に形成された燃焼部形成孔に、前記燃焼器本体部と別体の筒状燃焼部形成部が配設されて形成されていて、前記筒状燃焼部形成部は、前記燃焼部形成孔との間に前記断熱空隙部を介して配設されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1記載の小型渦流燃焼器。
【請求項4】
前記筒状燃焼部形成部は、前記燃焼器本体部より熱伝導率が低い部材からなることを特徴とする請求項3記載の小型渦流燃焼器。
【請求項5】
前記燃焼部と前記燃料ガス導入部との間に、この燃焼部と燃料ガス導入部との間の熱伝導を抑制する導入部断熱部が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の小型渦流燃焼器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型渦流燃焼器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、超小型電子機器(例えばMEMS等)の発達に伴い、これらの電力源の小型化が課題とされているなか、エネルギー密度の高い炭化水素燃料を利用した小型燃焼器が注目を集めており、その中の一つに小型渦流燃焼器がある。
【0003】
この小型渦流燃焼器は、熱伝導率が高いアルミニウム等で形成された燃焼器本体内に、管状の燃焼部と、この燃焼部の一端に接線方向に向けて予混合気を導入する予混合気導入経路と、燃焼により生じた高温の燃焼ガスと熱交換する燃焼ガス熱交換経路とが形成されていて、予混合気導入経路から燃焼部内に接線方向に予混合気が導入されることで燃焼部内に高速の旋回流が発生して渦流火炎が形成され、この渦流火炎の高速な周方向回転速度によって火炎熱が燃焼部内壁を介して燃焼器本体部全体に素早く熱伝達されるとともに、燃焼により生じた高温の燃焼ガスが燃焼ガス熱交換経路を通過することで燃焼器本体部と熱交換を行ない、これにより、発生したほぼ全ての燃焼熱を燃焼器本体部全体に熱伝達するように構成されているものである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、熱伝導率の高いアルミニウムやアルミニウム合金(例えばジュラルミン)を燃焼器本体の構成部材として用いている従来の小型渦流燃焼器は、燃焼部内で発生した渦流火炎の熱が直ちに渦流火炎の周囲の燃焼部壁面に伝達し、この燃焼部壁面を通じて燃焼器本体全体に熱伝達されるため、燃焼室内の渦流火炎温度が断熱火炎温度に比べて大きく低下し、この火炎温度の低下により燃焼反応が促進されず不完全燃焼が生じて一酸化炭素が発生してしまう虞がある。そのため、従来の小型渦流燃焼器は、この対策を講じなければならない問題を抱えている。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みなされたもので、燃焼部内に形成される渦流火炎の火炎温度の低下を抑制し、火炎温度上昇(火炎温度の高温状態の維持)による燃焼反応の促進により不完全燃焼を可及的に低減し一酸化炭素の発生が可及的に抑制された安全性に優れた小型渦流燃焼器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0007】
内部に筒状の燃焼部1を有する燃焼器本体部2と、前記燃焼部1の内面の接線方向に向けて燃料ガスを導入する燃料ガス導入部3とから成り、前記燃料ガス導入部3から前記燃焼部1内に燃料ガスが導入されることで、この燃料ガスが前記燃焼部1内で旋回流になって該燃焼部1内に渦流火炎が形成され、この渦流火炎の熱若しくは前記渦流火炎の燃焼によって生じた燃焼ガスの熱により被加熱部4が加熱されるように構成された小型渦流燃焼器であって、前記燃焼部1内に形成される渦流火炎の火炎温度低下を抑制する断熱空隙部5が、前記燃焼部1の外側にして前記燃焼部1の前記渦流火炎を囲繞する位置に設けられていて、この断熱空隙部5は一端が閉塞され他端が前記燃焼部1から排出される燃焼ガスを前記燃焼器本体部2の外部に排出するための排気口13に連通するように構成されていることを特徴とする小型渦流燃焼器に係るものである。
【0008】
また、前記燃焼器本体部2が前記熱により加熱されるように構成されていて、この燃焼器本体部2が前記被加熱部4とされていること、または、前記燃焼器本体部2と別体で設けられている接続被加熱部4Aが前記熱により加熱されるように構成されていて、この接続被加熱部4Aが前記被加熱部4とされていることを特徴とする請求項1記載の小型渦流燃焼器に係るものである。
【0009】
また、前記燃焼部1は、前記燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6に、前記燃焼器本体部2と別体の筒状燃焼部形成部7が配設されて形成されていて、前記筒状燃焼部形成部7は、前記燃焼部形成孔6との間に前記断熱空隙部5を介して配設されていることを特徴とする請求項1,2のいずれか1記載の小型渦流燃焼器に係るものである。
【0010】
また、前記筒状燃焼部形成部7は、前記燃焼器本体部2より熱伝導率が低い部材からなることを特徴とする請求項3記載の小型渦流燃焼器に係るものである。
【0011】
また、前記燃焼部1と前記燃料ガス導入部3との間に、この燃焼部1と燃料ガス導入部3との間の熱伝導を抑制する導入部断熱部8が設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の小型渦流燃焼器に係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明は上述のように構成したから、燃焼部内に形成される渦流火炎の火炎温度の低下が抑制されて火炎温度の高温状態が維持され、これにより燃焼部内に導入された燃焼ガスの燃焼反応が促進されることとなり、不完全燃焼が可及的に低減される。したがって、不完全燃焼に伴う一酸化炭素の発生が可及的に抑制される。
【0013】
また、本発明は、前述のように、渦流火炎の火炎温度が高温に維持されるので、この渦流火炎の燃焼によって生じる燃焼ガスも高温化されることとなり、例えば、この燃焼ガスの熱を被加熱部(燃焼器本体部、若しくは燃焼器本体部と別体に設けられ燃焼ガスを導出して加熱される接続被加熱部)と熱交換させることで、効率的に被加熱部を加熱することができる。
【0014】
このように、本発明は、一酸化炭素の発生が可及的に抑制されるとともに、高温の燃焼ガスの熱を有効利用することができる安全性且つ実用性に優れた画期的な小型渦流燃焼器となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】実施例1を示す説明斜視図である。
図2】実施例1を示す説明平断面図である。
図3】実施例1を示す説明分解斜視図である。
図4】実施例1の燃焼部構造の別例を示す概略図である。
図5】実施例1の一酸化炭素低減効果を示す図である。
図6】実施例2を示す説明平断面図である。
図7】実施例3を示す説明平断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0017】
燃料ガスは、燃料供給部から燃料ガス導入部3を介して燃焼部1へ導入される。燃焼部1に導入された燃料ガスは、燃焼部1の内周面の接線方向より燃焼部1内に導入されることで旋回流となり、この旋回流状態の燃料ガスに着火することで燃焼部1内に渦流火炎が形成され、この渦流火炎の燃焼によって生じる燃焼ガスが燃焼部1から排出され、この燃焼部1から排出された燃焼ガスが被加熱部4と熱交換して被加熱部4を加熱する。
【0018】
本発明は、この燃焼部1内に形成される渦流火炎が断熱空隙部5で囲繞されているから、この渦流火炎の熱が断熱空隙部5で断熱されて燃焼器本体部2等の燃焼部1の外部に伝熱されず、渦流火炎の火炎温度が低下しない。
【0019】
即ち、例えば、断熱空隙部5が燃焼部1の壁面の外周に設けられている場合、燃焼部1と燃焼器本体部2との間が断熱されるので、燃焼部1から燃焼器本体部2への熱伝達が抑制され、渦流火炎の熱による燃焼部1の高温状態が維持され、これにより、渦流火炎への燃焼部1の冷却作用が可及的に低減するため、渦流火炎は、火炎温度が低下することなく高温状態を維持することができる。
【0020】
これにより、渦流火炎の熱が燃焼反応に使用されることとなり、燃焼反応が促進され、燃焼部1内での不完全燃焼が可及的に低減されることで一酸化炭素の発生が可及的に抑制されることとなる。
【0021】
また、本発明は、前述したように、渦流火炎の熱は断熱空隙部5により外部に伝達されない。したがって、被加熱部4は渦流火炎の燃焼によって燃焼部1から排出される燃焼ガスの熱により積極的に加熱されることとなる。
【0022】
本発明は、前述の通り、渦流火炎の火炎温度が高温に維持されるので、この渦流火炎の燃焼によって生じる燃焼ガスも高温化されることとなり、よって、燃焼部1から排出される高温の燃焼ガスと熱交換することで効率的に加熱することができることとなる。
【実施例1】
【0023】
本発明の具体的な実施例1について図1図5に基づいて説明する。
【0024】
本実施例は、図1,2に示すように、内部に筒状の燃焼部1を有する燃焼器本体部2と、前記燃焼部1の内面の接線方向に向けて燃料ガスを導入する燃料ガス導入部3とから成り、燃料ガス導入部3から燃焼部1内に燃料ガスが導入されることで、この燃料ガスが燃焼部1内で旋回流になって該燃焼部1内に渦流火炎が形成され、この渦流火炎の熱若しくは渦流火炎の燃焼によって生じた燃焼ガスの熱により被加熱部4としての燃焼器本体部2が加熱されるように構成され、また、燃焼部1内に形成される渦流火炎の火炎温度低下を抑制する火炎断熱部5が、燃焼部1の渦流火炎を囲繞する位置に設けられている小型渦流燃焼器であり、具体的には、図3に示すように、燃焼器本体部2、筒状燃焼部形成部7、燃料ガス導入部3、導入部断熱部8、本体部側閉塞板部9、及びガス導入部側閉塞板部10の各部により構成されている。
【0025】
また、本実施例は、燃焼部1が燃焼器本体部2内に形成された筒状部から成り、この筒状部から成る燃焼部1内で形成される渦流火炎を囲繞する位置の燃焼部1の外側に前記火炎断熱部5が形成されているものである。
【0026】
以下、本実施例に係る構成各部について詳細に説明する。
【0027】
本実施例の燃焼器本体部2は、前述したように、被加熱部4を兼用していることから、熱伝導率の高い金属部材(例えば、アルミニウムやアルミニウム合金等)で構成されている。
【0028】
また、本実施例の燃焼器本体部2は、筒状燃焼部形成部7を挿入配設する燃焼部形成孔6と、この燃焼部形成孔6と筒状燃焼部形成部7とで形成される燃焼部1から排出される燃焼ガスを燃焼器本体部2の外部へ排出するための排気経路部11とが形成されている。
【0029】
具体的には、燃焼部形成孔6は、燃焼器本体部2の前後方向に貫通する貫通孔であり、内径寸法がこの燃焼部形成孔6内に挿入配設する筒状燃焼部形成部7の外径寸法よりも稍大径に設定されていて、この燃焼部形成孔6に筒状燃焼部形成部7が挿入配設された状態において、筒状燃焼部形成部7との間に隙間が形成されるように構成されている。
【0030】
また、排気経路部11は、一端が燃焼部1の先端部側、具体的には、燃焼部1の先端部側(燃焼ガス排出口側)に設けられた燃焼ガス排出部12に接続され、他端が燃焼器本体部2の側面部に形成された排気口13に接続されていて、また、途中部は燃焼器本体部2全体を横断するように配設されている。尚、排気経路部11の配設状態および排気口13の配置は、本実施例に記載された構成に限定されるものでは無い。
【0031】
また、本実施例の筒状燃焼部形成部7は、前述した燃焼器本体部2とは別部材で構成されていて、具体的には、燃焼器本体部2より熱伝導率が低い低熱伝導部材(例えば耐熱性ステンレス鋼材)で構成されている。
【0032】
即ち、本実施例は、この筒状燃焼部形成部7を燃焼器本体部2よりも熱伝導率が低い低熱伝導部材を用いて構成することで、筒状燃焼部形成部7から燃焼器本体部2への熱の流出が抑制されるとともに、燃焼器本体部2から筒状燃焼部形成部7への冷熱の流入が抑制されるように構成されている。
【0033】
また、本実施例の筒状燃焼部形成部7について更に具体的に説明すると、本実施例の筒状燃焼部形成部7は、円筒状に形成されていて、基端部にこの筒状燃焼部形成部7を燃焼部形成孔6に対して所定位置に配設するための位置決め用基板部14が設けられた構成とされている。また、この位置決め用基板部14は、燃焼器本体部2の前面部と同形状に形成されていて、この位置決め用基板部14を燃焼器本体部2の前面部に重合配設することで、筒状燃焼部形成部7が燃焼部形成孔6の所定位置(燃焼部形成孔6の中心軸と筒状燃焼部形成部7の中心軸とが一致する状態)に配設されるように構成されている。尚、この位置決め用基板部14を燃焼器本体部2に重合配設させる際に、この位置決め用基板部14と燃焼器本体部2との間に、この位置決め用基板部14と燃焼器本体部2との間の熱伝導を抑制するための断熱部材を介在させても良い。
【0034】
即ち、本実施例は、前述した燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6に、この燃焼器本体部2と別体に構成された筒状燃焼部形成部7が配設されることにより燃焼部1が形成される構成とされていて、この燃焼部1を形成する筒状燃焼部形成部7の外側に火炎断熱部5が設けられている構成とされている。詳細には、筒状燃焼部形成部7の位置決め用基板部14を燃焼器本体部2の前面部に重合配設することで、筒状燃焼部形成部7が燃焼部形成孔6と隙間をあけて配設されて燃焼部1を形成するとともに、この燃焼部形成孔6と筒状燃焼部形成部7との間の隙間が、燃焼部1、具体的には、筒状燃焼部形成部7内に形成される渦流火炎と燃焼器本体部2とを断熱する火炎断熱部5としての断熱空隙部5を形成する構成とされている。
【0035】
即ち、従来は、燃焼部と燃焼器本体部とが一体形成されていて、燃焼部内に形成された渦流火炎の熱が、燃焼部の壁面を介して直ぐに燃焼器本体部へ伝熱してしまい、渦流火炎の火炎温度が低下してしまう虞がある構成であったが、本実施例は、燃焼部1(筒状燃焼部形成部7)内に形成される渦流火炎の熱が燃焼部1(筒状燃焼部形成部7)の壁面に熱伝導しても、この燃焼部1(筒状燃焼部形成部7)の壁面を介して渦流火炎を囲繞する位置に形成されている断熱空隙部5(火炎断熱部5)により、この壁面から燃焼器本体部2への熱伝導が可及的に抑制されるので、渦流火炎の火炎温度が低下せず、高温状態を維持し、この渦流火炎の火炎温度の高温状態が維持されることより、従来の問題点であった不完全燃焼による一酸化炭素の発生が可及的に抑制される構成とされている。尚、本実施例では、筒状燃焼部形成部7の長さを燃焼器本体部2の長さ方向寸法とほぼ同じにして、この筒状燃焼部形成部7全体、即ち、燃焼部1全体が火炎断熱部5としての断熱空隙部5で囲繞されるように構成されているが、この筒状燃焼部形成部7は、少なくとも渦流火炎が形成される範囲の長さ寸法があれば良く、よって、筒状燃焼部形成部7の長さ寸法は適宜設定されるものである。
【0036】
また、本実施例の燃料ガス導入部3は、燃焼器本体部2と同じ部材(アルミニウムやアルミニウム合金等の熱伝導率の高い金属部材)から成り、燃焼器本体部2及び燃焼部1と別体で構成されている。
【0037】
具体的には、本実施例の燃料ガス導入部3は、前述した筒状燃焼部形成部7の位置決め用基板部14と同形状の板状に形成され、導入部断熱部8を介して筒状燃焼部形成部7(具体的には、筒状燃焼部形成部7の位置決め用基板部14)に重合配設される構成とされている。
【0038】
より具体的には、燃料ガス導入部3は、板面中央部に前後方向(板厚方向)に貫通する筒状燃焼部形成部7と連通する燃焼部連通孔15が形成されていて、また、この燃焼部連通孔15内に燃料ガスを導入するための燃料ガス導入経路部16がこの燃焼部連通孔15の左右両側に設けられている。
【0039】
この燃料ガス導入経路部16は、先端部に小径(数mm)の接線方向吹出口部17が設けられていて、この接線方向吹出口部17は、燃焼部連通孔15の内周面の接線方向に向けて燃料ガスを導入するように構成され、この燃料ガス導入経路部16に設けられた接線方向吹出口部17から燃焼部連通孔15内に導入された燃料ガスが、燃焼部連通孔15内及びこの燃焼部連通孔15と連通する燃焼部1内(具体的には、筒状燃焼部形成部7内)で旋回流を形成するように構成されている。尚、本実施例では燃料ガス導入部3に導入される燃料ガスは、予め空気と可燃性ガスとが混合された予混合気とされている。
【0040】
また、本実施例の本体部側閉塞板部9及びガス導入部側閉塞板部10は夫々、平板状に形成されており、本体部側閉塞板部9は、燃焼器本体部2の後面部に重合配設されてこの燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6の先端側開口部を閉塞するように構成され、また、ガス導入部側閉塞板部10は、燃料ガス導入部3に重合配設されてこの燃料ガス導入部3に形成された燃焼部連通孔15の基端側開口部を閉塞するように構成されている。
【0041】
また、この本体部側閉塞板部9及びガス導入部側閉塞板部10は夫々、板面中央部に耐熱ガラス等の耐熱性透明部材から成る渦流火炎視認部18が設けられていて、この渦流火炎視認部18から燃焼部1内に形成される渦流火炎の燃焼状態を目視にて確認できるように構成されている。尚、本体部側閉塞板部9及びガス導入部側閉塞板部10は、渦流火炎視認部18を設けない単なる板状部材としても良い。
【0042】
また、本実施例は、燃焼器本体部2の燃焼部形成孔6と、燃料ガス導入部3の燃焼部連通孔15とが夫々、貫通孔として形成されていることから、前述した本体部側閉塞板部9及びガス導入部側閉塞板部10を用いて夫々の開口部が閉塞される構成とされているが、燃焼部形成孔6及び燃焼部連通孔15の夫々を貫通孔とせずに有底孔として形成しても良い。即ち、本体部側閉塞板部9は燃焼器本体部2と一体で形成され、ガス導入部側閉塞板部10は燃料ガス導入部3と一体で形成されることとなり、これにより、本体部側閉塞板部9及びガス導入部側閉塞板部10を別体で設ける必要が無くなり、作業性の向上やコストを削減することができる。
【0043】
また、本実施例の燃焼部1は、前述したように、燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6に、燃焼器本体部2と別体の筒状燃焼部形成部7が配設されて形成されていて、筒状燃焼部形成部7は、燃焼部形成孔6との間に断熱空隙部5を介して配設されている構成とされているが、例えば、図4(a)に示すように、更に筒状燃焼部形成部7の内面にも断熱部材を付設して火炎断熱部5を形成した構成としても良い。また、図4(b)に示すように、燃焼部形成孔6と筒状燃焼部形成部7との間に隙間を設けず(火炎断熱部5としての断熱空隙部5を形成せず)、筒状燃焼部形成部7の内面に断熱部材を付設して火炎断熱部5を形成した構成としても良い。また更に、図4(c)に示すように、筒状燃焼部形成部7を断熱部材で構成して、この筒状燃焼部形成部7自体を火炎断熱部5とした構成としても良い。尚、この筒状燃焼部形成部7自体を火炎断熱部5とした場合でも、前述した筒状燃焼部形成部7の内面に火炎断熱部5を設ける構成や、筒状燃焼部形成部7の外側に断熱空隙部5を設ける構成を併用しても良い。
【0044】
また、燃焼部形成孔6と筒状燃焼部形成部7との間の隙間に断熱部材を配設し、断熱空隙部5の代わりに火炎断熱部5を形成した構成としても良い。
【0045】
上述のように構成した本実施例の作用・効果について以下に説明する。
【0046】
本実施例は、燃料供給部から供給される燃料ガス(予混合気)が燃料ガス導入部3を介して燃焼部1へ導入され、この燃焼部1に導入された燃料ガスは、旋回流状態で導入され、この旋回流状態の燃料ガスに着火することで燃焼部1内に渦流火炎が形成され、この燃焼部1内に形成された渦流火炎は、燃焼部1、具体的には、筒状燃焼部形成部7の外周に形成された断熱空隙部5と、位置決め用基板部14と燃料ガス導入部3との間に設けられた導入部断熱部8との断熱作用により、渦流火炎の熱の燃焼器本体部2及び燃料ガス導入部3への熱伝導が可及的に抑制され、これにより渦流火炎の熱の外部放出が抑制されて渦流火炎の火炎温度が低下せず高温状態が維持されることとなり、この渦流火炎の火炎温度の高温状態が維持されることにより、燃焼反応が促進されて従来の問題点であった不完全燃焼による一酸化炭素の発生が可及的に抑制される(図5参照)。
【0047】
また、この渦流火炎の火炎温度が高温状態を維持することで、この渦流火炎の燃焼によって生じる燃焼ガスも高温化され、よって、燃焼部1からは高温の燃焼ガスが排気されることとなり、この高温の燃焼ガスが排気経路部11を流通している間に、この排気経路部11の壁面を介して燃焼器本体部2と熱交換し、この燃焼ガスの熱により被加熱部4とされている燃焼器本体部2が効率的に加熱されて、この燃焼器本体部2自体を発熱体として用いることができる。
【0048】
また更に、本実施例は、燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6に筒状燃焼部形成部7を挿入配設するという簡易な構成で、渦流火炎の火炎温度を低下させない燃焼部構造を容易に設計実現可能とすることができる。
【0049】
このように、本実施例は、従来の問題点であった不完全燃焼による一酸化炭素の発生が可及的に抑制されるとともに、高温の燃焼ガスの熱を有効利用することができる安全性且つ実用性に優れた画期的な小型渦流燃焼器となる。
【実施例2】
【0050】
本発明の具体的な実施例2について図6に基づいて説明する。
【0051】
本実施例は、実施例1において、燃焼器本体部2と別体で設けられている接続被加熱部4Aが渦流火炎の熱若しくは燃焼ガスの熱により加熱されるように構成されていて、この接続被加熱部4Aが被加熱部4とされている場合である。
【0052】
具体的には、本実施例の被加熱部4(接続被加熱部4A)は、箱状に形成され、燃焼器本体部2に形成されている燃焼ガス排出部12と連通する燃焼器本体部接続連通孔19と、導入した燃焼ガスが排出される排気口13が設けられた構成とされている。
【0053】
より具体的には、本実施例の被加熱部4(接続被加熱部4A)は、燃焼器本体部2の後面部側に付設されており、燃焼部1から排出された燃焼ガスが、燃焼ガス排出部12を介して燃焼器本体部接続連通孔19から被加熱部4(接続被加熱部4A)内に導入され、この導入された高温の燃焼ガスが被加熱部4(接続被加熱部4A)と熱交換した後、排気口13から排出される構成とされている。尚、本実施例では、燃焼器本体部2は被加熱部4とされていないので、燃焼器本体部2に排気経路部11は形成されていない構成となっていて、その余の構成は実施例1と同様である。
【実施例3】
【0054】
本発明の具体的な実施例3について図7に基づいて説明する。
【0055】
本実施例は、実施例1において、燃焼部1と燃料ガス導入部3とが燃焼器本体部2と一体形成されている場合である。即ち、実施例1の燃焼部1は、燃焼器本体部2に形成された燃焼部形成孔6に、燃焼器本体部2と別体で構成される筒状燃焼部形成部7が挿入配設されて形成されているが、本実施例の燃焼部1は、前記燃焼部形成孔6及び前記筒状燃焼部形成部7がなく、燃焼部1が燃焼器本体部2内に一体に形成されている場合である。
【0056】
具体的には、本実施例の燃焼部1は、図7に示すように、燃焼器本体部2の前後方向に貫通形成された燃焼部形成用貫通孔20の外周に、燃焼部1の先端部側から基端部側に向けて深溝部を形成することにより形成される筒状部からなる構成とされている。
【0057】
そして、この筒状部からなる燃焼部1の外周に形成された前記深溝部が実施例1における断熱空隙部5(火炎断熱部5)に相当する構成とされている。
【0058】
また、燃料ガス導入部3は、従来と同様の構成とされており、具体的には、図示するように、燃焼器本体部2の左右側面部から内側に向けて燃料ガス導入経路部16が形成され、この燃料ガス導入経路部16の先端部には、燃料ガスを燃焼部1の内面の接線方向に向けて導入するための小径(数mm)の接線方向吹出口部17が形成されている。
【0059】
また、本実施例は、燃焼部1、燃焼器本体部2、燃料ガス導入部3が一体で構成されているため、実施例1における導入部断熱部8は設けられていない構成であり、その余の構成は実施例1と同様である。
【0060】
尚、本発明は、実施例1〜3に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0061】
1 燃焼部
2 燃焼器本体部
3 燃料ガス導入部
4 被加熱部
4A 接続被加熱部
5 断熱空隙部
6 燃焼部形成孔
7 筒状燃焼部形成部
8 導入部断熱部
13 排気口
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7