(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0039】
<キャリア付銅箔>
本発明のキャリア付銅箔は、キャリアの一方の面、又は、両方の面に、中間層、極薄銅層をこの順に備える。キャリア付銅箔自体の使用方法は公知の使用方法を用いることができる。例えば極薄銅層の表面を紙基材フェノール樹脂、紙基材エポキシ樹脂、合成繊維布基材エポキシ樹脂、ガラス布・紙複合基材エポキシ樹脂、ガラス布・ガラス不織布複合基材エポキシ樹脂及びガラス布基材エポキシ樹脂、ポリエステルフィルム、ポリイミドフィルム等の絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングし、最終的にプリント配線板を製造することができる。
【0040】
本発明のキャリア付銅箔は、キャリア付銅箔を極薄銅層側から絶縁基板に圧力20kgf/cm
2で積層して220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠してキャリア付銅箔からキャリアを剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さSz及び表面粗さSaについて、Sz≦3.6μm、Sz/Sa≦14.00を満たし、且つ、前記極薄銅層の前記中間層側表面のMD方向の60度光沢度GMDについて、GMD≦150を満たすように制御されている。上記「220℃で2時間加熱」は、キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着する場合の典型的な加熱条件を示している。
【0041】
キャリア付銅箔を絶縁基板に貼り合わせて熱圧着後にキャリアを剥がし、絶縁基板に接着した極薄銅層を目的とする導体パターンにエッチングして回路を形成する。このようにして基板を多層構造にしてプリント配線板を作製している。ここで、このようなプリント配線板の集積回路密度を上昇させるためには、レーザー穴を形成し、当該穴を通じて内層と外層とを接続させる。このとき、極薄銅層にレーザー穴を開けるのが困難であると当然に問題であるし、レーザー穴は大きすぎても小さすぎても種々の問題を引き起こすため適度な大きさに形成する必要がある。このように、極薄銅層のレーザー穴開け性は、穴径精度並びにレーザー出力等の諸条件に関わるため集積回路の設計及び生産性に大きく影響を及ぼす重要な特性である。本発明では、この極薄銅層のレーザー穴開け性は、キャリア付銅箔を極薄銅層側から絶縁基板に圧力20kgf/cm
2で積層して220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠してキャリア付銅箔からキャリアを剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さSz及び表面粗さSaについて、Sz≦3.6μm、Sz/Sa≦14.00を満たし、且つ、前記極薄銅層の前記中間層側表面のMD方向の60度光沢度GMDについて、GMD≦150を満たすように制御することで良好となることを見出した。当該レーザー顕微鏡で測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さSzが3.6μmを超えると、極薄銅層の表面の粗さが大き過ぎて穴開け加工の際のレーザーの吸収性が過剰となり、穴が大きくなり過ぎてしまうという問題が生じる。また、表面粗さSz及び表面粗さSaについて、Sz/Saが14.00を超えると、局所的に表面の粗さ(山や谷)が大きい箇所が生じ、その結果、M−SAP回路形成性が不良となる原因となる。更に、MD方向の60度光沢度GMDが150を超えると、穴開け加工の際のレーザーの反射率が大きくなり、穴開け加工性が不良となる。
【0042】
キャリア付銅箔を前記極薄銅層側から絶縁基板に圧力20kgf/cm
2で積層して220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠してキャリア付銅箔からキャリアを剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さSzが、3.5μm以下であるのが好ましく、3.4μm以下であるのがより好ましい。また、当該表面粗さSzの下限としては0.01μm以上、0.1μm以上、0.2μm以上、0.3μm以上、または、0.4μm以上であってもよい。
【0043】
キャリア付銅箔を前記極薄銅層側から絶縁基板に圧力20kgf/cm
2で積層して220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠してキャリア付銅箔からキャリアを剥がしたとき、レーザー顕微鏡で測定される前記極薄銅層の前記中間層側の表面粗さSz及び表面粗さSaについて、Sz/Saが13.50以下であるのが好ましく、13.00以下であるのがより好ましく、12.50以下であるのが更により好ましく、12.00以下であるのが更により好ましく、11.50以下であるのが更により好ましく、11.00以下であるのが更により好ましく、10.50以下であるのが更により好ましく、10.00以下であるのが更により好ましく、9.50以下であるのが更により好ましい。また、当該Sz/Saの下限としては1.00以上、1.50以上、2.00以上、2.50以上、または、3.00以上であってもよい。
【0044】
キャリア付銅箔を前記極薄銅層側から絶縁基板に圧力20kgf/cm
2で積層して220℃で2時間加熱した後、JIS C 6471に準拠してキャリア付銅箔からキャリアを剥がしたとき、極薄銅層の前記中間層側表面のMD方向の60度光沢度GMDが140以下であるのが好ましく、130以下であるのがより好ましく、120以下であるのが更により好ましく、100以下であるのが更により好ましく、90以下であるのが更により好ましく、80以下であるのが更により好ましく、70以下であるのが更により好ましく、65以下であるのが更により好ましく、60以下であるのが更により好ましく、55以下であるのが更により好ましく、45以下であるのが更により好ましく、35以下であるのが更により好ましく、25以下であるのが更により好ましく、15以下であるのが更により好ましく、5以下であるのが更により好ましい。また、当該MD方向の60度光沢度GMDの下限としては、0以上、0.01以上、0.05以上、0.1以上、または、0.5以上であってもよい。
【0045】
<キャリア>
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には金属箔または樹脂フィルムであり、例えば銅箔、銅合金箔、ニッケル箔、ニッケル合金箔、鉄箔、鉄合金箔、ステンレス箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、絶縁樹脂フィルム、ポリイミドフィルム、LCP(液晶ポリマー)フィルム、フッ素樹脂フィルム、ポリアミドフィルム、PETフィルムの形態で提供される。
本発明に用いることのできるキャリアは典型的には圧延銅箔や電解銅箔の形態で提供される。一般的には、電解銅箔は硫酸銅めっき浴からチタンやステンレスのドラム上に銅を電解析出して製造され、圧延銅箔は圧延ロールによる塑性加工と熱処理を繰り返して製造される。銅箔の材料としてはタフピッチ銅(JIS H3100 合金番号C1100)や無酸素銅(JIS H3100 合金番号C1020またはJIS H3510 合金番号C1011)といった高純度の銅の他、例えばSn入り銅、Ag入り銅、Cr、Zr又はMg等を添加した銅合金、Ni及びSi等を添加したコルソン系銅合金のような銅合金も使用可能である。なお、本明細書において用語「銅箔」を単独で用いたときには銅合金箔も含むものとする。
【0046】
本発明に用いることのできるキャリアの厚さについても特に制限はないが、キャリアとしての役目を果たす上で適した厚さに適宜調節すればよく、例えば5μm以上とすることができる。但し、厚すぎると生産コストが高くなるので一般には35μm以下とするのが好ましい。従って、キャリアの厚みは典型的には8〜70μmであり、より典型的には12〜70μmであり、より典型的には18〜35μmである。また、原料コストを低減する観点からはキャリアの厚みは小さいことが好ましい。そのため、キャリアの厚みは、典型的には5μm以上35μm以下であり、好ましくは5μm以上18μm以下であり、好ましくは5μm以上12μm以下であり、好ましくは5μm以上11μm以下であり、好ましくは5μm以上10μm以下である。なお、キャリアの厚みが小さい場合には、キャリアの通箔の際に折れシワが発生しやすい。折れシワの発生を防止するため、例えばキャリア付銅箔製造装置の搬送ロールを平滑にすることや、搬送ロールと、その次の搬送ロールとの距離を短くすることが有効である。なお、プリント配線板の製造方法の一つである埋め込み工法(エンベッディド法(Enbedded Process))にキャリア付銅箔が用いられる場合には、キャリアの剛性が高いことが必要である。そのため、埋め込み工法に用いる場合には、キャリアの厚みは18μm以上300μm以下であることが好ましく、25μm以上150μm以下であることが好ましく、35μm以上100μm以下であることが好ましく、35μm以上70μm以下であることが更により好ましい。
なお、キャリアの極薄銅層を設ける側の表面とは反対側の表面に粗化処理層を設けてもよい。当該粗化処理層を公知の方法を用いて設けてもよく、後述の粗化処理により設けてもよい。キャリアの極薄銅層を設ける側の表面とは反対側の表面に粗化処理層を設けることは、キャリアを当該粗化処理層を有する表面側から樹脂基板などの支持体に積層する際、キャリアと樹脂基板が剥離し難くなるという利点を有する。
【0047】
本発明の上述のレーザー顕微鏡で測定される極薄銅層の中間層側の表面粗さSz、及び、表面粗さSzと表面粗さSaとの関係、更にMD方向の60度光沢度は、キャリアの極薄銅層側表面形態を調整することで制御することができる。以下に、本発明のキャリアの作製方法について説明する。
【0048】
キャリアとして電解銅箔を使用する場合の製造条件の一例は、以下に示される。
電解液中の塩素濃度が高い場合、電解液の線速が高い場合、電解液の温度が低い場合、電解液中の銅濃度が高い場合、電解液中の硫酸濃度が低い場合、Sz/Saの値が小さくなる傾向にある。一方で電解液中の塩素濃度が低い場合、電解液の線速が低い場合、電解液の温度が高い場合、電解液中の銅濃度が低い場合、電解液中の硫酸濃度が高い場合、Sz/Saの値が大きくなる傾向にある。
<電解液組成>
銅:70〜150g/L
硫酸:80〜120g/L
塩素:10〜200ppm
【0049】
<製造条件>
電流密度:50〜150A/dm
2
電解液温度:40〜80℃
電解液線速:3〜7m/sec
電解時間:0.5〜10分間
なお、少量であれば電解液に光沢剤を添加しても良い。光沢剤としては以下の化合物や公知の化合物を用いることができる。
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):0.5〜3ppm
レべリング剤2(アミン化合物):0.5〜3ppm
上記のアミン化合物には以下の化学式のアミン化合物を用いることができる。
なお、本発明に用いられる電解、表面処理又はめっき等に用いられる処理液の残部は特に明記しない限り水である。
【0050】
【化1】
(上記化学式中、R
1及びR
2はヒドロキシアルキル基、エーテル基、アリール基、芳香族置換アルキル基、不飽和炭化水素基、アルキル基からなる一群から選ばれるものである。)
【0051】
キャリアの極薄銅層側表面形態の調整としては、以下の(1)または(2)の調整法が挙げられる。なお、キャリアの極薄銅層側表面の形態と、キャリア側極薄銅層表面の形態とは近い形態となる。そのため、キャリアの極薄銅層側表面の形態を調整することで、所望のキャリア側極薄銅層表面の形態を有するキャリア付極薄銅箔を得ることができる。
【0052】
(1)所定のSzおよびSaを有するキャリアに対して、トリアゾール系の有機化合物(トリアゾール化合物)を含むエッチング液を用いてソフトエッチング処理を行う。トリアゾール系の有機化合物はキャリアの所定の部分に多く吸着する。そして、トリアゾール系有機化合物が多く吸着した箇所では少なく吸着している箇所に比べてエッチングが進みにくい性質を利用して、キャリア表面の形状を制御する。ソフトエッチング処理に用いる処理液中のトリアゾール系有機化合物の濃度は0.5〜10g/Lとすることが好ましい。0.5g/L未満では、キャリア表面の形状を制御する効果が小さい。一方で、10g/L超では、キャリア表面のソフトエッチングの進行が遅くなる場合が有る。そして、キャリア表面の形状を制御することで、所望のキャリア側極薄銅層表面の形態を有するキャリア付極薄銅箔を得ることができる。
具体的には、表面粗さSzが0.8μm〜3.1μmであり、Saが0.05〜0.45μmであり、60度鏡面光沢度が30〜250(%)のキャリアに対して、ソフトエッチング処理(例えば、硫酸20〜100g/L、過酸化水素10〜20g/Lまたは過硫酸カリウム10〜50g/Lまたは過硫酸アンモニウム10〜50g/L、添加剤成分としてのトリアゾール系の有機化合物1〜5g/Lの水溶液で、25〜35℃にて5〜60秒間のエッチング処理)を行う。
なお、トリアゾール系の有機化合物として、1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾールからなる群から選択される1種以上を用いることができる。
【0053】
(2)表面の算術平均粗さRaを所定範囲に制御した圧延ロールを用いて、油膜当量を通常よりも大きくした条件下での圧延によりキャリアを製造する。
具体的には、キャリアとして圧延銅箔等の金属箔を用意し、当該圧延銅箔等の金属箔に対し、表面の算術平均粗さRaを所定範囲に制御した圧延ロールを用いて仕上げの冷間圧延を行う。このとき、圧延ロールの表面のJIS B0601 1994に定義される算術平均粗さRa=0.2〜0.3μm、油膜当量41000〜65000とすることができる。
ここで油膜当量は以下の式で表される。
油膜当量={(圧延油粘度[cSt])×(通板速度[mpm]+ロール周速度[mpm])}/{(ロールの噛み込み角[rad])×(材料の降伏応力[kg/mm
2])}
圧延油粘度[cSt]は40℃での動粘度である。
油膜当量を41000〜65000とするためには、高粘度の圧延油を用いたり、金属箔の通板速度を速くしたりする等、公知の方法を用いればよい。
【0054】
<中間層>
キャリアの片面又は両面上には中間層を設ける。キャリアと中間層との間には他の層を設けてもよい。本発明で用いる中間層は、キャリア付銅箔が絶縁基板への積層工程前にはキャリアから極薄銅層が剥離し難い一方で、絶縁基板への積層工程後にはキャリアから極薄銅層が剥離可能となるような構成であれば特に限定されない。例えば、本発明のキャリア付銅箔の中間層はCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Zn、これらの合金、これらの水和物、これらの酸化物、有機物からなる群から選択される一種又は二種以上を含んでも良い。また、中間層は複数の層であっても良い。
また、例えば、中間層はキャリア側からCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層、或いは、有機物層を形成し、その上にCr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素の水和物または酸化物からなる層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種の元素からなる単一金属層、或いは、Cr、Ni、Co、Fe、Mo、Ti、W、P、Cu、Al、Znで構成された元素群から選択された一種又は二種以上の元素からなる合金層を形成することで構成することができる。
中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。なお、中間層をクロメート処理や亜鉛クロメート処理やめっき処理で設けた場合には、クロムや亜鉛など、付着した金属の一部は水和物や酸化物となっている場合があると考えられる。
また、例えば、中間層は、キャリア上に、ニッケル、ニッケル−リン合金又はニッケル−コバルト合金と、クロムとがこの順で積層されて構成することができる。ニッケルと銅との接着力はクロムと銅の接着力よりも高いので、極薄銅層を剥離する際に、極薄銅層とクロムとの界面で剥離するようになる。また、中間層のニッケルにはキャリアから銅成分が極薄銅層へと拡散していくのを防ぐバリア効果が期待される。中間層におけるニッケルの付着量は好ましくは100μg/dm
2以上40000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上4000μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上2500μg/dm
2以下、より好ましくは100μg/dm
2以上1000μg/dm
2未満であり、中間層におけるクロムの付着量は5μg/dm
2以上100μg/dm
2以下であることが好ましい。中間層を片面にのみ設ける場合、キャリアの反対面にはNiめっき層などの防錆層を設けることが好ましい。
また、中間層が含む有機物は窒素含有有機化合物、硫黄含有有機化合物及びカルボン酸からなる群から選択される一種以上の有機物であることが好ましい。具体的な窒素含有有機化合物としては、置換基を有するトリアゾール化合物である1,2,3−ベンゾトリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、N’,N’−ビス(ベンゾトリアゾリルメチル)ユリア、1H−1,2,4−トリアゾール及び3−アミノ−1H−1,2,4−トリアゾール等を用いることが好ましい。
硫黄含有有機化合物には、メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム、チオシアヌル酸及び2−ベンズイミダゾールチオール等を用いることが好ましい。
カルボン酸としては、特にモノカルボン酸を用いることが好ましく、中でもオレイン酸、リノール酸及びリノレイン酸等を用いることが好ましい。
【0055】
<極薄銅層>
中間層の上には極薄銅層を設ける。中間層と極薄銅層との間には他の層を設けてもよい。極薄銅層は、硫酸銅、ピロリン酸銅、スルファミン酸銅、シアン化銅等の電解浴を利用した電気めっきにより形成することができ、一般的な電解銅箔で使用され、高電流密度での銅箔形成が可能であることから硫酸銅浴が好ましい。極薄銅層の厚みは特に制限はないが、一般的にはキャリアよりも薄く、例えば12μm以下である。典型的には0.5〜12μmであり、より典型的には1〜5μm、更に典型的には1.5〜5μm、更に典型的には2〜5μmである。なお、キャリアの両面に極薄銅層を設けてもよい。
【0056】
本発明のキャリア付銅箔を用いて積層体(銅張積層板等)を作製することができる。当該積層体としては、例えば、「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂又はプリプレグ」の順に積層された構成であってもよく、「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂又はプリプレグ」の順に積層された構成であってもよく、「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂又はプリプレグ/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成であってもよく、「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂又はプリプレグ/極薄銅層/中間層/キャリア」の順に積層された構成であってもよい。前記樹脂又はプリプレグは後述する樹脂層であってもよく、後述する樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、キャリア付銅箔は平面視したときに樹脂又はプリプレグより小さくてもよい。
【0057】
<粗化処理およびその他の表面処理>
極薄銅層の表面またはキャリアの表面のいずれか一方または両方には、例えば絶縁基板との密着性を良好にすること等のために粗化処理を施すことで粗化処理層を設けてもよい。粗化処理は、例えば、銅又は銅合金で粗化粒子を形成することにより行うことができる。粗化処理は微細なものであっても良い。粗化処理層は、銅、ニッケル、りん、タングステン、ヒ素、モリブデン、クロム、鉄、バナジウム、コバルト及び亜鉛からなる群から選択されたいずれかの単体又はいずれか1種以上を含む合金からなる層などであってもよい。また、銅又は銅合金で粗化粒子を形成した後、更にニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で二次粒子や三次粒子を設ける粗化処理を行うこともできる。その後に、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層または防錆層を形成しても良く、更にその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。または粗化処理を行わずに、ニッケル、コバルト、銅、亜鉛の単体または合金等で耐熱層又は防錆層を形成し、さらにその表面にクロメート処理、シランカップリング処理などの処理を施してもよい。すなわち、粗化処理層の表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよく、極薄銅層の表面またはキャリアの表面に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層及びシランカップリング処理層からなる群から選択された1種以上の層を形成してもよい。なお、上述の耐熱層、防錆層、クロメート処理層、シランカップリング処理層はそれぞれ複数の層で形成されてもよい(例えば2層以上、3層以上など)。
【0058】
例えば、粗化処理としての銅−コバルト−ニッケル合金めっきは、電解めっきにより、付着量が15〜40mg/dm
2の銅−100〜3000μg/dm
2のコバルト−100〜1500μg/dm
2のニッケルであるような3元系合金層を形成するように実施することができる。Co付着量が100μg/dm
2未満では、耐熱性が悪化し、エッチング性が悪くなることがある。Co付着量が3000μg/dm
2 を超えると、磁性の影響を考慮せねばならない場合には好ましくなく、エッチングシミが生じ、また、耐酸性及び耐薬品性の悪化がすることがある。Ni付着量が100μg/dm
2未満であると、耐熱性が悪くなることがある。他方、Ni付着量が1500μg/dm
2を超えると、エッチング残が多くなることがある。好ましいCo付着量は1000〜2500μg/dm
2であり、好ましいニッケル付着量は500〜1200μg/dm
2である。ここで、エッチングシミとは、塩化銅でエッチングした場合、Coが溶解せずに残ってしまうことを意味しそしてエッチング残とは塩化アンモニウムでアルカリエッチングした場合、Niが溶解せずに残ってしまうことを意味するものである。
【0059】
このような3元系銅−コバルト−ニッケル合金めっきを形成するための一般的浴及びめっき条件の一例は次の通りである:
めっき浴組成:Cu10〜20g/L、Co1〜10g/L、Ni1〜10g/L
pH:1〜4
温度:30〜50℃
電流密度D
k:20〜30A/dm
2
めっき時間:1〜5秒
【0060】
耐熱層、防錆層としては公知の耐熱層、防錆層を用いることが出来る。例えば、耐熱層および/または防錆層はニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素を含む層であってもよく、ニッケル、亜鉛、錫、コバルト、モリブデン、銅、タングステン、リン、ヒ素、クロム、バナジウム、チタン、アルミニウム、金、銀、白金族元素、鉄、タンタルの群から選ばれる1種以上の元素からなる金属層または合金層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層は前述の元素を含む酸化物、窒化物、珪化物を含んでもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金を含む層であってもよい。また、耐熱層および/または防錆層はニッケル−亜鉛合金層であってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層は、不可避不純物を除き、ニッケルを50wt%〜99wt%、亜鉛を50wt%〜1wt%含有するものであってもよい。前記ニッケル−亜鉛合金層の亜鉛及びニッケルの合計付着量が5〜1000mg/m
2、好ましくは10〜500mg/m
2、好ましくは20〜100mg/m
2であってもよい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量と亜鉛の付着量との比(=ニッケルの付着量/亜鉛の付着量)が1.5〜10であることが好ましい。また、前記ニッケル−亜鉛合金を含む層または前記ニッケル−亜鉛合金層のニッケルの付着量は0.5mg/m
2〜500mg/m
2であることが好ましく、1mg/m
2〜50mg/m
2であることがより好ましい。耐熱層および/または防錆層がニッケル−亜鉛合金を含む層である場合、銅箔と樹脂基板との密着性が向上する。
【0061】
例えば耐熱層および/または防錆層は、付着量が1mg/m
2〜100mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜50mg/m
2のニッケルまたはニッケル合金層と、付着量が1mg/m
2〜80mg/m
2、好ましくは5mg/m
2〜40mg/m
2のスズ層とを順次積層したものであってもよく、前記ニッケル合金層はニッケル−モリブデン、ニッケル−亜鉛、ニッケル−モリブデン−コバルト、ニッケル−スズ合金のいずれか一種により構成されてもよい。また、前述の耐熱層および/または防錆層は、[ニッケルまたはニッケル合金中のニッケル付着量]/[スズ付着量]=0.25〜10であることが好ましく、0.33〜3であることがより好ましい。当該耐熱層および/または防錆層を用いるとキャリア付銅箔をプリント配線板に加工して以降の回路の引き剥がし強さ、当該引き剥がし強さの耐薬品性劣化率等が良好になる。
【0062】
クロメート処理層とは無水クロム酸、クロム酸、二クロム酸、クロム酸塩または二クロム酸塩を含む液で処理されることにより形成された層のことをいう。クロメート処理層はコバルト、鉄、ニッケル、モリブデン、亜鉛、タンタル、銅、アルミニウム、リン、タングステン、錫、砒素およびチタン等の元素(金属、合金、酸化物、窒化物、硫化物等どのような形態でもよい)を含んでもよい。クロメート処理層の具体例としては、無水クロム酸または二クロム酸カリウム水溶液で処理したクロメート処理層や、無水クロム酸または二クロム酸カリウムおよび亜鉛を含む処理液で処理したクロメート処理層等が挙げられる。
【0063】
前記シランカップリング処理層は、公知のシランカップリング剤を使用して形成してもよく、エポキシ系シラン、アミノ系シラン、メタクリロキシ系シラン、メルカプト系シラン、ビニル系シラン、イミダゾール系シラン、トリアジン系シランなどのシランカップリング剤などを使用して形成してもよい。なお、このようなシランカップリング剤は、2種以上混合して使用してもよい。中でも、アミノ系シランカップリング剤又はエポキシ系シランカップリング剤を用いて形成したものであることが好ましい。
【0064】
シランカップリング処理層は、ケイ素原子換算で、0.05mg/m
2〜200mg/m
2、好ましくは0.15mg/m
2〜20mg/m
2、好ましくは0.3mg/m
2〜2.0mg/m
2の範囲で設けられていることが望ましい。前述の範囲の場合、基材と表面処理銅箔との密着性をより向上させることが出来る。
【0065】
また、極薄銅層、粗化処理層、耐熱層、防錆層、シランカップリング処理層またはクロメート処理層の表面に、国際公開番号WO2008/053878、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、特開2013−19056号に記載の表面処理を行うことができる。
【0066】
また、キャリアと、キャリア上に中間層が積層され、中間層の上に積層された極薄銅層とを備えたキャリア付銅箔は、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層、クロメート処理層およびシランカップリング処理層からなる群のから選択された層を一つ以上備えても良い。
また、前記極薄銅層上に粗化処理層を備えても良く、前記粗化処理層上に、耐熱層、防錆層を備えてもよく、前記耐熱層、防錆層上にクロメート処理層を備えてもよく、前記クロメート処理層上にシランカップリング処理層を備えても良い。
また、前記キャリア付銅箔は前記極薄銅層上、あるいは前記粗化処理層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいはクロメート処理層、あるいはシランカップリング処理層の上に樹脂層を備えても良い。前記樹脂層は絶縁樹脂層であってもよい。
【0067】
前記樹脂層は接着剤であってもよく、接着用の半硬化状態(Bステージ)の絶縁樹脂層であってもよい。半硬化状態(Bステージ状態)とは、その表面に指で触れても粘着感はなく、該絶縁樹脂層を重ね合わせて保管することができ、更に加熱処理を受けると硬化反応が起こる状態のことを含む。
【0068】
また前記樹脂層は熱硬化性樹脂を含んでもよく、熱可塑性樹脂であってもよい。また、前記樹脂層は熱可塑性樹脂を含んでもよい。その種類は格別限定されるものではないが、例えば、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、多官能性シアン酸エステル化合物、マレイミド化合物、ポリビニルアセタール樹脂、ウレタン樹脂、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルスルホン樹脂、芳香族ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ゴム変成エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、カルボキシル基変性アクリロニトリル-ブタジエン樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ビスマレイミドトリアジン樹脂、熱硬化性ポリフェニレンオキサイド樹脂、シアネートエステル系樹脂、多価カルボン酸の無水物、架橋可能な官能基を有する線状ポリマー、ポリフェニレンエーテル樹脂、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、リン含有フェノール化合物、ナフテン酸マンガン、2,2−ビス(4−グリシジルフェニル)プロパン、ポリフェニレンエーテル−シアネート系樹脂、シロキサン変性ポリアミドイミド樹脂、シアノエステル樹脂、フォスファゼン系樹脂、ゴム変成ポリアミドイミド樹脂、イソプレン、水素添加型ポリブタジエン、ポリビニルブチラール、フェノキシ、高分子エポキシ、芳香族ポリアミド、フッ素樹脂、ビスフェノール、ブロック共重合ポリイミド樹脂およびシアノエステル樹脂の群から選択される一種以上などを含む樹脂を好適なものとしてあげることができる。
【0069】
また前記エポキシ樹脂は、分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであって、電気・電子材料用途に用いることのできるものであれば、特に問題なく使用できる。また、前記エポキシ樹脂は分子内に2個以上のグリシジル基を有する化合物を用いてエポキシ化したエポキシ樹脂が好ましい。また、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、ブロム化(臭素化)エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、臭素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ゴム変性ビスフェノールA型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、トリグリシジルイソシアヌレート、N,N-ジグリシジルアニリン等のグリシジルアミン化合物、テトラヒドロフタル酸ジグリシジルエステル等のグリシジルエステル化合物、リン含有エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、トリスヒドロキシフェニルメタン型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂、の群から選ばれる1種又は2種以上を混合して用いることができ、又は前記エポキシ樹脂の水素添加体やハロゲン化体を用いることができる。
前記リン含有エポキシ樹脂として公知のリンを含有するエポキシ樹脂を用いることができる。また、前記リン含有エポキシ樹脂は例えば、分子内に2以上のエポキシ基を備える9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイドからの誘導体として得られるエポキシ樹脂であることが好ましい。
【0070】
前記樹脂層は公知の樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体(無機化合物及び/または有機化合物を含む誘電体、金属酸化物を含む誘電体等どのような誘電体を用いてもよい)、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材、前述の樹脂、前述の化合物等を含んでよい。また、前記樹脂層は例えば国際公開番号WO2008/004399、国際公開番号WO2008/053878、国際公開番号WO2009/084533、特開平11−5828号、特開平11−140281号、特許第3184485号、国際公開番号WO97/02728、特許第3676375号、特開2000−43188号、特許第3612594号、特開2002−179772号、特開2002−359444号、特開2003−304068号、特許第3992225号、特開2003−249739号、特許第4136509号、特開2004−82687号、特許第4025177号、特開2004−349654号、特許第4286060号、特開2005−262506号、特許第4570070号、特開2005−53218号、特許第3949676号、特許第4178415号、国際公開番号WO2004/005588、特開2006−257153号、特開2007−326923号、特開2008−111169号、特許第5024930号、国際公開番号WO2006/028207、特許第4828427号、特開2009−67029号、国際公開番号WO2006/134868、特許第5046927号、特開2009−173017号、国際公開番号WO2007/105635、特許第5180815号、国際公開番号WO2008/114858、国際公開番号WO2009/008471、特開2011−14727号、国際公開番号WO2009/001850、国際公開番号WO2009/145179、国際公開番号WO2011/068157、特開2013−19056号に記載されている物質(樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等)および/または樹脂層の形成方法、形成装置を用いて形成してもよい。
【0071】
(樹脂層が誘電体(誘電体フィラー)を含む場合)
前記樹脂層は誘電体(誘電体フィラー)を含んでもよい。
上記いずれかの樹脂層または樹脂組成物に誘電体(誘電体フィラー)を含ませる場合には、キャパシタ層を形成する用途に用い、キャパシタ回路の電気容量を増大させることができるのである。この誘電体(誘電体フィラー)には、BaTiO
3、SrTiO
3、Pb(Zr−Ti)O
3(通称PZT)、PbLaTiO
3・PbLaZrO(通称PLZT)、SrBi
2Ta
2O
9(通称SBT)等のペブロスカイト構造を持つ複合酸化物の誘電体粉を用いる。
【0072】
前述の樹脂層に含まれる樹脂および/または樹脂組成物および/または化合物を例えばメチルエチルケトン(MEK)、トルエンなどの溶剤に溶解して樹脂液とし、これを前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート皮膜層、あるいは前記シランカップリング剤層の上に、例えばロールコータ法などによって塗布し、ついで必要に応じて加熱乾燥して溶剤を除去しBステージ状態にする。乾燥には例えば熱風乾燥炉を用いればよく、乾燥温度は100〜250℃、好ましくは130〜200℃であればよい。
【0073】
前記樹脂層を備えたキャリア付銅箔(樹脂付きキャリア付銅箔)は、その樹脂層を基材に重ね合わせたのち全体を熱圧着して該樹脂層を熱硬化せしめ、ついでキャリアを剥離して極薄銅層を表出せしめ(当然に表出するのは該極薄銅層の中間層側の表面である)、そこに所定の配線パターンを形成するという態様で使用される。
【0074】
この樹脂付きキャリア付銅箔を使用すると、多層プリント配線基板の製造時におけるプリプレグ材の使用枚数を減らすことができる。しかも、樹脂層の厚みを層間絶縁が確保できるような厚みにしたり、プリプレグ材を全く使用していなくても銅張積層板を製造することができる。またこのとき、基材の表面に絶縁樹脂をアンダーコートして表面の平滑性を更に改善することもできる。
【0075】
なお、プリプレグ材を使用しない場合には、プリプレグ材の材料コストが節約され、また積層工程も簡略になるので経済的に有利となり、しかも、プリプレグ材の厚み分だけ製造される多層プリント配線基板の厚みは薄くなり、1層の厚みが100μm以下である極薄の多層プリント配線基板を製造することができるという利点がある。
【0076】
この樹脂層の厚みは0.1〜80μmであることが好ましい。樹脂層の厚みが0.1μmより薄くなると、接着力が低下し、プリプレグ材を介在させることなくこの樹脂付きキャリア付銅箔を内層材を備えた基材に積層したときに、内層材の回路との間の層間絶縁を確保することが困難になる場合がある。
【0077】
一方、樹脂層の厚みを80μmより厚くすると、1回の塗布工程で目的厚みの樹脂層を形成することが困難となり、余分な材料費と工数がかかるため経済的に不利となる。更には、形成された樹脂層はその可撓性が劣るので、ハンドリング時にクラックなどが発生しやすくなり、また内層材との熱圧着時に過剰な樹脂流れが起こって円滑な積層が困難になる場合がある。
【0078】
更に、この樹脂付きキャリア付銅箔のもう一つの製品形態としては、前記極薄銅層上、あるいは前記耐熱層、防錆層、あるいは前記クロメート処理層、あるいは前記シランカップリング処理層の上を樹脂層で被覆し、半硬化状態とした後、ついでキャリアを剥離して、キャリアが存在しない樹脂付き銅箔の形で製造することも可能である。
【0079】
更に、プリント配線板に電子部品類を搭載することで、プリント回路板が完成する。本発明において、「プリント配線板」にはこのように電子部品類が搭載されたプリント配線板およびプリント回路板およびプリント基板も含まれることとする。
また、当該プリント配線板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント回路板を用いて電子機器を作製してもよく、当該電子部品類が搭載されたプリント基板を用いて電子機器を作製してもよい。以下に、本発明に係るキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造工程の例を幾つか示す。
【0080】
本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、前記キャリア付銅箔と絶縁基板を極薄銅層側が絶縁基板と対向するように積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程を経て銅張積層板を形成し、その後、セミアディティブ法、モディファイドセミアディティブ法、パートリーアディティブ法及びサブトラクティブ法の何れかの方法によって、回路を形成する工程を含む。絶縁基板は内層回路入りのものとすることも可能である。
【0081】
本発明において、セミアディティブ法とは、絶縁基板又は銅箔シード層上に薄い無電解めっきを行い、パターンを形成後、電気めっき及びエッチングを用いて導体パターンを形成する方法を指す。
【0082】
従って、セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0083】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0084】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と、前記絶縁樹脂基板とにスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記極薄銅層をエッチング等により除去することにより露出した前記樹脂および前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0085】
セミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法によりすべて除去する工程、
前記極薄銅層をエッチングにより除去することにより露出した前記樹脂の表面について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0086】
本発明において、モディファイドセミアディティブ法とは、絶縁層上に金属箔を積層し、めっきレジストにより非回路形成部を保護し、電解めっきにより回路形成部の銅厚付けを行った後、レジストを除去し、前記回路形成部以外の金属箔を(フラッシュ)エッチングで除去することにより、絶縁層上に回路を形成する方法を指す。
【0087】
従って、モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストを設けた後に、電解めっきにより回路を形成する工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストを除去することにより露出した極薄銅層をフラッシュエッチングにより除去する工程、
を含む。
【0088】
モディファイドセミアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層の上にめっきレジストを設ける工程、
前記めっきレジストに対して露光し、その後、回路が形成される領域のめっきレジストを除去する工程、
前記めっきレジストが除去された前記回路が形成される領域に、電解めっき層を設ける工程、
前記めっきレジストを除去する工程、
前記回路が形成される領域以外の領域にある無電解めっき層及び極薄銅層をフラッシュエッチングなどにより除去する工程、
を含む。
【0089】
本発明において、パートリーアディティブ法とは、導体層を設けてなる基板、必要に応じてスルーホールやバイアホール用の孔を穿けてなる基板上に触媒核を付与し、エッチングして導体回路を形成し、必要に応じてソルダレジストまたはメッキレジストを設けた後に、前記導体回路上、スルーホールやバイアホールなどに無電解めっき処理によって厚付けを行うことにより、プリント配線板を製造する方法を指す。
【0090】
従って、パートリーアディティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について触媒核を付与する工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
前記極薄銅層および前記触媒核を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して露出した前記絶縁基板表面に、ソルダレジストまたはメッキレジストを設ける工程、
前記ソルダレジストまたはメッキレジストが設けられていない領域に無電解めっき層を設ける工程、
を含む。
【0091】
本発明において、サブトラクティブ法とは、銅張積層板上の銅箔の不要部分を、エッチングなどによって、選択的に除去して、導体パターンを形成する方法を指す。
【0092】
従って、サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面に、電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層および前記電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0093】
サブトラクティブ法を用いた本発明に係るプリント配線板の製造方法の別の一実施形態においては、本発明に係るキャリア付銅箔と絶縁基板とを準備する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層する工程、
前記キャリア付銅箔と絶縁基板を積層した後に、前記キャリア付銅箔のキャリアを剥がす工程、
前記キャリアを剥がして露出した極薄銅層と絶縁基板にスルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域についてデスミア処理を行う工程、
前記スルーホールまたは/およびブラインドビアを含む領域について無電解めっき層を設ける工程、
前記無電解めっき層の表面にマスクを形成する工程、
マスクが形成されいない前記無電解めっき層の表面に電解めっき層を設ける工程、
前記電解めっき層または/および前記極薄銅層の表面にエッチングレジストを設ける工程、
前記エッチングレジストに対して露光し、回路パターンを形成する工程、
前記極薄銅層および前記無電解めっき層を酸などの腐食溶液を用いたエッチングやプラズマなどの方法により除去して、回路を形成する工程、
前記エッチングレジストを除去する工程、
を含む。
【0094】
スルーホールまたは/およびブラインドビアを設ける工程、及びその後のデスミア工程は行わなくてもよい。
【0095】
ここで、本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板の製造方法の具体例を図面を用いて詳細に説明する。なお、ここでは粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔を例に説明するが、これに限られず、粗化処理層が形成されていない極薄銅層を有するキャリア付銅箔を用いても同様に下記のプリント配線板の製造方法を行うことができる。
まず、
図1−Aに示すように、表面に粗化処理層が形成された極薄銅層を有するキャリア付銅箔(1層目)を準備する。
次に、
図1−Bに示すように、極薄銅層の粗化処理層上にレジストを塗布し、露光・現像を行い、レジストを所定の形状にエッチングする。
次に、
図1−Cに示すように、回路用のめっきを形成した後、レジストを除去することで、所定の形状の回路めっきを形成する。
次に、
図2−Dに示すように、回路めっきを覆うように(回路めっきが埋没するように)極薄銅層上に埋め込み樹脂を設けて樹脂層を積層し、続いて別のキャリア付銅箔(2層目)を極薄銅層側から接着させる。
次に、
図2−Eに示すように、2層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図2−Fに示すように、樹脂層の所定位置にレーザー穴あけを行い、回路めっきを露出させてブラインドビアを形成する。
次に、
図3−Gに示すように、ブラインドビアに銅を埋め込みビアフィルを形成する。
次に、
図3−Hに示すように、ビアフィル上に、上記
図1−B及び
図1−Cのようにして回路めっきを形成する。
次に、
図3−Iに示すように、1層目のキャリア付銅箔からキャリアを剥がす。
次に、
図4−Jに示すように、フラッシュエッチングにより両表面の極薄銅層を除去し、樹脂層内の回路めっきの表面を露出させる。
次に、
図4−Kに示すように、樹脂層内の回路めっき上にバンプを形成し、当該はんだ上に銅ピラーを形成する。このようにして本発明のキャリア付銅箔を用いたプリント配線板を作製する。
なお、上述のプリント配線板の製造方法で、「極薄銅層」をキャリアに、「キャリア」を極薄銅層に読み替えて、キャリア付銅箔のキャリア側の表面に回路を形成して、樹脂で回路を埋め込み、プリント配線板を製造することも可能である。
【0096】
上記別のキャリア付銅箔(2層目)は、本発明のキャリア付銅箔を用いてもよく、従来のキャリア付銅箔を用いてもよく、さらに通常の銅箔を用いてもよい。また、
図3−Hに示される2層目の回路上に、さらに回路を1層或いは複数層形成してもよく、それらの回路形成をセミアディティブ法、サブトラクティブ法、パートリーアディティブ法又はモディファイドセミアディティブ法のいずれかの方法によって行ってもよい。
【0097】
上述のようなプリント配線板の製造方法によれば、回路めっきが樹脂層に埋め込まれた構成となっているため、例えば
図4−Jに示すようなフラッシュエッチングによる極薄銅層の除去の際に、回路めっきが樹脂層によって保護され、その形状が保たれ、これにより微細回路の形成が容易となる。また、回路めっきが樹脂層によって保護されるため、耐マイグレーション性が向上し、回路の配線の導通が良好に抑制される。このため、微細回路の形成が容易となる。また、
図4−J及び
図4−Kに示すようにフラッシュエッチングによって極薄銅層を除去したとき、回路めっきの露出面が樹脂層から凹んだ形状となるため、当該回路めっき上にバンプが、さらにその上に銅ピラーがそれぞれ形成しやすくなり、製造効率が向上する。
【0098】
なお、埋め込み樹脂(レジン)には公知の樹脂、プリプレグを用いることができる。例えば、BT(ビスマレイミドトリアジン)レジンやBTレジンを含浸させたガラス布であるプリプレグ、味の素ファインテクノ株式会社製ABFフィルムやABFを用いることができる。また、前記埋め込み樹脂(レジン)には本明細書に記載の樹脂層および/または樹脂および/またはプリプレグおよび/またはフィルムを使用することができる。
【0099】
また、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔は、当該キャリア付銅箔の表面に基板または樹脂層を有してもよい。当該基板または樹脂層を有することで一層目に用いられるキャリア付銅箔は支持され、しわが入りにくくなるため、生産性が向上するという利点がある。なお、前記基板または樹脂層には、前記一層目に用いられるキャリア付銅箔を支持する効果するものであれば、全ての基板または樹脂層を用いることが出来る。例えば前記基板または樹脂層として本願明細書に記載のキャリア、プリプレグ、樹脂層や公知のキャリア、プリプレグ、樹脂層、金属板、金属箔、無機化合物の板、無機化合物の箔、有機化合物の板、有機化合物の箔を用いることができる。
【0100】
また、本発明のプリント配線板の製造方法は、本発明のキャリア付銅箔の前記極薄銅層側表面または前記キャリア側表面と樹脂基板とを積層する工程、前記樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に、樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を形成した後に、前記キャリア付銅箔から前記キャリアまたは前記極薄銅層を剥離させる工程を含むプリント配線板の製造方法(コアレス工法)であってもよい。当該コアレス工法について、具体的な例としては、まず、本発明のキャリア付銅箔の極薄銅層側表面またはキャリア側表面と樹脂基板とを積層して積層体(銅張積層板、銅張積層体ともいう)を製造する。その後、樹脂基板と積層した極薄銅層側表面または前記キャリア側表面とは反対側のキャリア付銅箔の表面に樹脂層を形成する。キャリア側表面又は極薄銅層側表面に形成した樹脂層には、さらに別のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から積層してもよい。この場合、樹脂基板を中心として当該樹脂基板の両表面側に、キャリア/中間層/極薄銅層の順あるいは極薄銅層/中間層/キャリアの順でキャリア付銅箔が積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/極薄銅層/中間層/キャリア」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「キャリア/中間層/極薄銅層/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体あるいは「極薄銅層/中間層/キャリア/樹脂基板/キャリア/中間層/極薄銅層」の順に積層された構成を有する積層体を上述のプリント配線板の製造方法(コアレス工法)に用いてもよい。両端の極薄銅層あるいはキャリアの露出した表面には、別の樹脂層を設け、さらに銅層又は金属層を設けた後、当該銅層又は金属層を加工することで回路を形成してもよい。さらに、別の樹脂層を当該回路上に、当該回路を埋め込むように設けても良い。また、このような回路及び樹脂層の形成を1回以上行ってもよい(ビルドアップ工法)。そして、このようにして形成した積層体(以下、積層体Bとも言う)について、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。なお、前述のコアレス基板の作製には、2つのキャリア付銅箔を用いて、後述する極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/極薄銅層/中間層/キャリアの構成を有する積層体や、キャリア/中間層/極薄銅層/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有する積層体を作製し、当該積層体を中心に用いることもできる。これら積層体(以下、積層体Aとも言う)の両側の極薄銅層またはキャリアの表面に樹脂層及び回路の2層を1回以上設け、樹脂層及び回路の2層を1回以上設けた後に、それぞれのキャリア付銅箔の極薄銅層またはキャリアをキャリアまたは極薄銅層から剥離させてコアレス基板を作製することができる。前述の積層体は、極薄銅層の表面、キャリアの表面、キャリアとキャリアとの間、極薄銅層と極薄銅層との間、極薄銅層とキャリアとの間には他の層を有してもよい。他の層は樹脂層や樹脂基板であってもよい。なお、本明細書において「極薄銅層の表面」、「極薄銅層側表面」、「極薄銅層表面」、「キャリアの表面」、「キャリア側表面」、「キャリア表面」、「積層体の表面」、「積層体表面」は、極薄銅層、キャリア、積層体が、極薄銅層表面、キャリア表面、積層体表面に他の層を有する場合には、当該他の層の表面(最表面)を含む概念とする。また、積層体は極薄銅層/中間層/キャリア/キャリア/中間層/極薄銅層の構成を有することが好ましい。当該積層体を用いてコアレス基板を作製した際、コアレス基板側に極薄銅層が配置されるため、モディファイドセミアディティブ法を用いてコアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。また、極薄銅層の厚みは薄いため、当該極薄銅層の除去がしやすく、極薄銅層の除去後にセミアディティブ法を用いて、コアレス基板上に回路を形成しやすくなるためである。
なお、本明細書において、「積層体A」または「積層体B」と特に記載していない「積層体」は、少なくとも積層体A及び積層体Bを含む積層体を示す。
【0101】
なお、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体(積層体A)の端面の一部または全部を樹脂で覆うことにより、ビルドアップ工法でプリント配線板を製造する際に、中間層または積層体を構成する1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔の間のへの薬液の染み込みを防止することができ、薬液の染み込みによる極薄銅層とキャリアの分離やキャリア付銅箔の腐食を防止することができ、歩留りを向上させることができる。ここで用いる「キャリア付銅箔の端面の一部または全部を覆う樹脂」または「積層体の端面の一部または全部を覆う樹脂」としては、樹脂層に用いることができる樹脂を使用することができる。また、上述のコアレス基板の製造方法において、キャリア付銅箔または積層体において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の少なくとも一部が樹脂又はプリプレグで覆ってもよい。また、上述のコアレス基板の製造方法で形成する積層体(積層体A)は、一対のキャリア付銅箔を互いに分離可能に接触させて構成されていてもよい。また、当該キャリア付銅箔において平面視したときにキャリア付銅箔または積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)の外周の全体にわたって樹脂又はプリプレグで覆われてなるものであってもよい。また、平面視した場合に樹脂又はプリプレグはキャリア付銅箔または積層体または積層体の積層部分よりも大きい方が好ましく、当該樹脂又はプリプレグをキャリア付銅箔または積層体の両面に積層し、キャリア付銅箔または積層体が樹脂又はプリプレグにより袋とじ(包まれている)されている構成を有する積層体とすることが好ましい。このような構成とすることにより、キャリア付銅箔または積層体を平面視したときに、キャリア付銅箔または積層体の積層部分が樹脂又はプリプレグにより覆われ、他の部材がこの部分の側方向、すなわち積層方向に対して横からの方向から当たることを防ぐことができるようになり、結果としてハンドリング中のキャリアと極薄銅層またはキャリア付銅箔同士の剥がれを少なくすることができる。また、キャリア付銅箔または積層体の積層部分の外周を露出しないように樹脂又はプリプレグで覆うことにより、前述したような薬液処理工程におけるこの積層部分の界面への薬液の浸入を防ぐことができ、キャリア付銅箔の腐食や侵食を防ぐことができる。なお、積層体の一対のキャリア付銅箔から一つのキャリア付銅箔を分離する際、またはキャリア付銅箔のキャリアと銅箔(極薄銅層)を分離する際には、樹脂又はプリプレグで覆われているキャリア付銅箔又は積層体の積層部分(キャリアと極薄銅層との積層部分、または、1つのキャリア付銅箔ともう1つのキャリア付銅箔との積層部分)が樹脂又はプリプレグ等により強固に密着している場合には、当該積層部分等を切断等により除去する必要が生じる場合がある。
【0102】
本発明のキャリア付銅箔をキャリア側又は極薄銅層側から、もう一つの本発明のキャリア付銅箔のキャリア側または極薄銅層側に積層して積層体を構成してもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面と前記もう一つのキャリア付銅箔の前記キャリア側表面又は前記極薄銅層側表面とが、必要に応じて接着剤を介して、直接積層させて得られた積層体であってもよい。また、前記一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層と、前記もう一つのキャリア付銅箔のキャリア又は極薄銅層とが接合されていてもよい。ここで、当該「接合」は、キャリア又は極薄銅層が表面処理層を有する場合は、当該表面処理層を介して互いに接合されている態様も含む。また、当該積層体の端面の一部または全部が樹脂により覆われていてもよい。
【0103】
キャリア同士、極薄銅層同士、キャリアと極薄銅層、キャリア付銅箔同士の積層は、単に重ね合わせる他、例えば以下の方法で行うことができる。
(a)冶金的接合方法:融接(アーク溶接、TIG(タングステン・イナート・ガス)溶接、MIG(メタル・イナート・ガス)溶接、抵抗溶接、シーム溶接、スポット溶接)、圧接(超音波溶接、摩擦撹拌溶接)、ろう接;
(b)機械的接合方法:かしめ、リベットによる接合(セルフピアッシングリベットによる接合、リベットによる接合)、ステッチャー;
(c)物理的接合方法:接着剤、(両面)粘着テープ
【0104】
一方のキャリアの一部若しくは全部と他方のキャリアの一部若しくは全部若しくは極薄銅層の一部若しくは全部とを、上記接合方法を用いて接合することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を積層し、キャリア同士またはキャリアと極薄銅層を分離可能に接触させて構成される積層体を製造することができる。一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが弱く接合されて、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが積層されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層との接合部を除去しないでも、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とは分離可能である。また、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層とが強く接合されている場合には、一方のキャリアと他方のキャリアとが接合されている箇所を切断や化学研磨(エッチング等)、機械研磨等により除去することにより、一方のキャリアと他方のキャリアまたは極薄銅層を分離することができる。
【0105】
また、このように構成した積層体に樹脂層と回路との2層を、少なくとも1回設ける工程、及び、前記樹脂層及び回路の2層を少なくとも1回形成した後に、前記積層体のキャリア付銅箔から前記極薄銅層又はキャリアを剥離させる工程を実施することでプリント配線板を作製することができる。なお、当該積層体の一方または両方の表面に、樹脂層と回路との2層を設けてもよい。
前述した積層体に用いる樹脂基板、樹脂層、樹脂、プリプレグは、本明細書に記載した樹脂層であってもよく、本明細書に記載た樹脂層に用いる樹脂、樹脂硬化剤、化合物、硬化促進剤、誘電体、反応触媒、架橋剤、ポリマー、プリプレグ、骨格材等を含んでもよい。なお、キャリア付銅箔は平面視したときに樹脂又はプリプレグより小さくてもよい。
【実施例】
【0106】
以下に、本発明の実施例によって本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は、これらの実施例によってなんら限定されるものではない。
【0107】
まず、銅箔キャリアを以下のようにして作製した。
電解槽の中に、チタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に極間距離を置いて電極を配置した。次に、電解槽において電解を行い、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ18μmの電解銅箔を製造し、これを銅箔キャリアとした。ここで、SUSの表面にクロムメッキを行い、バフ研磨したものを回転ドラムとした。回転ドラムの表面形状は、そのまま製造される銅箔キャリアの表面形状となるため、回転ドラムの回転速度及び研磨ベルトの送り速度の調整と共に、バフ研磨に用いるバフの砥粒の番手を調整することで、銅箔キャリアの表面形状(表面粗さSz、Sa、60度鏡面光沢度)を制御した。
以下に、当該電解銅箔(銅箔キャリア)の形成条件を示す。
・実験No.1〜14、22〜53
<電解液組成>
銅:100g/L
硫酸:100g/L
塩素:65ppm
<電解条件>
電流密度:80A/dm
2
電解液温度:55℃
電解液線速:4m/sec
電解時間:60秒
作製した銅箔キャリアの表面粗さSz、Sa、MD方向の60度鏡面光沢度は、表2〜4の通りであった。
【0108】
・実験No.54
<電解液組成>
銅:100g/L
硫酸:100g/L
塩素:120ppm
<電解条件>
電流密度:80A/dm
2
電解液温度:65℃
電解液線速:4m/sec
電解時間:60秒
【0109】
・実験No.55
<電解液組成>
銅:100g/L
硫酸:100g/L
塩素:100ppm
光沢剤:
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):1ppm
レべリング剤2(アミン化合物):1ppm
上記のアミン化合物として以下の化学式のアミン化合物を用いた。
【0110】
【化2】
(上記化学式中、R
1及びR
2はメチル基である。)
<電解条件>
電流密度:80A/dm
2
電解液温度:55℃
電解液線速:4m/sec
電解時間:60秒
【0111】
・実験No.56
<電解液組成>
銅:100g/L
硫酸:100g/L
塩素:65ppm
光沢剤:
レべリング剤1(ビス(3スルホプロピル)ジスルフィド):3ppm
レべリング剤2(アミン化合物):3ppm
上記のアミン化合物として以下の化学式のアミン化合物を用いた。
【0112】
【化3】
(上記化学式中、R
1及びR
2はメチル基である。)
<電解条件>
電流密度:80A/dm
2
電解液温度:55℃
電解液線速:4m/sec
電解時間:60秒
【0113】
・実験No.15〜20、57〜58、60〜61
電解槽の中に、チタン製の回転ドラムと、ドラムの周囲に極間距離を置いて電極を配置した。次に、電解槽において表1に記載のキャリア箔製造条件で電解を行い、回転ドラムの表面に銅を析出させ、回転ドラムの表面に析出した銅を剥ぎ取り、連続的に厚さ18μmの電解銅箔を製造し、これを銅箔キャリアとした。
【0114】
・実験No.59
表1に記載のキャリア箔製造条件で、圧延銅箔(タフピッチ銅、JIS H3100 C1100)を準備し、当該圧延銅箔に対し、サンドブラストにより表面を粗化した圧延ロールを用いて仕上げの冷間圧延を行った。このとき、圧延ロール粗さRa=0.39〜0.42μm、油膜当量35000とした。これにより銅箔キャリアを得た。
【0115】
【表1】
【0116】
次に、銅箔キャリアの表面処理を以下の条件にて行った。
・実験No.1〜2、22〜23、36〜37
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸500g/L、過酸化水素50g/L、添加剤成分としての1,2,3−ベンゾトリアゾール5g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.1、22、36:(35℃、30秒)
実験No.2、23、37:(25℃、30秒)
【0117】
・実験No.3、24、38、57〜60
形成した銅箔キャリアに表面処理を行わず、このまま後述の中間層処理を行った。
【0118】
・実験No.4〜7、21、25〜28、39〜42、50〜53
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)或いは圧延銅箔に、硫酸100g/L、過硫酸カリウム50g/L、添加剤成分としての1,2,3−ベンゾトリアゾール5g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.4、25、39、50:(35℃、10秒)
実験No.5、26、40、51:(35℃、60秒)
実験No.6、27、41、52:(25℃、10秒)
実験No.7、28、42、53:(25℃、60秒)
実験No.21:(35℃、45秒)
【0119】
・実験No.8、29、43
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸20g/L、過酸化水素10g/L、添加剤成分としての1,2,3−ベンゾトリアゾール1g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.8、29、43:(35℃、30秒)
【0120】
・実験No.9、30、44
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸20g/L、過硫酸カリウム10g/L、添加剤成分としてのカルボキシベンゾトリアゾール1g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.9、30、44:(35℃、30秒)
【0121】
・実験No.10、31、45
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸100g/L、過硫酸アンモニウム50g/L、添加剤成分としての1H−1,2,4−トリアゾール5g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.10、31、45:(25℃、5秒)
【0122】
・実験No.11〜14、32〜35、46〜49
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸100g/L、過酸化水素20g/L、添加剤成分としての1,2,3−ベンゾトリアゾール5g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.11、32、46:(35℃、10秒)
実験No.12、33、47:(35℃、60秒)
実験No.13、34、48:(25℃、10秒)
実験No.14、35、49:(25℃、60秒)
【0123】
・実験No.15
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の非光沢面(マット面またはM面ともいう)に、硫酸10vol%、過酸化水素2.0wt%の水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.15:(25℃、1分)
【0124】
・実験No.16
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)側にカソードを配置し、銅箔をアノードとして、直流による電解処理(処理液:硫酸100g/L)を施すことにより、銅箔の光沢面に逆電解研磨処理を行い、銅をキャリアの単位面積(1m
2)当たり5g(=5g/m
2)溶解させた。なお、逆電解研磨処理の電流密度は10A/dm
2とし、処理温度は30℃とした。
【0125】
・実験No.17
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)に表面処理を行わず、このまま後述の中間層処理を行った。
【0126】
・実験No.18
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の非光沢面(マット面またはM面ともいう)に、硫酸10vol%、過酸化水素1.5wt%の水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.18:(25℃、1分)
【0127】
・実験No.19
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)側にカソードを配置し、銅箔をアノードとして、直流による電解処理(処理液:硫酸100g/L)を施すことにより、銅箔の光沢面に逆電解研磨処理を行い、銅をキャリアの単位面積(1m
2)当たり12g(=12g/m
2)溶解させた。なお、逆電解研磨処理の電流密度は20A/dm
2とし、処理温度は30℃とした。
【0128】
・実験No.20
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の非光沢面(マット面またはM面ともいう)に、硫酸10vol%、過酸化水素2.0wt%の水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.20:(25℃、1分)
【0129】
・実験No.54〜56
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の光沢面(シャイニー面またはS面ともいう)に、硫酸20g/L、過酸化水素10g/L、添加剤成分としての1,2,3−ベンゾトリアゾール10g/Lの水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.54〜56:(25℃、1分)
【0130】
・実験No.61
形成した電解銅箔(銅箔キャリア)の非光沢面(マット面またはM面ともいう)に、硫酸10vol%、過酸化水素8.0wt%の水溶液で、下記温度及び時間のソフトエッチング処理を行った。
・エッチング処理条件(温度、時間)
実験No.61:(25℃、1分)
【0131】
続いて、実験No.1〜49、54〜61について以下の条件にて中間層を形成した。
以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより4000μg/dm
2の付着量のNi層を形成した。
【0132】
・Ni層
硫酸ニッケル:250〜300g/L
塩化ニッケル:35〜45g/L
酢酸ニッケル:10〜20g/L
クエン酸三ナトリウム:15〜30g/L
光沢剤:サッカリン、ブチンジオール等
ドデシル硫酸ナトリウム:30〜100ppm
pH:4〜6
液温:50〜70℃
電流密度:3〜15A/dm
2
【0133】
水洗及び酸洗後、引き続き、ロール・トウ・ロール型の連続めっきライン上で、Ni層の上に11μg/dm
2の付着量のCr層を以下の条件で電解クロメート処理することにより付着させた。
・電解クロメート処理
液組成:重クロム酸カリウム1〜10g/L、亜鉛0〜5g/L
pH:3〜4
液温:50〜60℃
電流密度:0.1〜2.6A/dm
2
クーロン量:0.5〜30As/dm
2
【0134】
また、実験No.50については以下の条件にて中間層を形成した。
以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより3000μg/dm
2の付着量のNi−Mo層を形成した。
・Ni−Mo層(ニッケルモリブデン合金めっき)
液組成:硫酸Ni六水和物:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
液温:30℃
電流密度:1〜4A/dm
2
通電時間:3〜25秒
【0135】
また、実験No.51については以下の条件にて中間層を形成した。
・Ni層
実験No.1〜49、54〜61と同じ条件でNi層を形成した。
・有機物層(有機物層形成処理)
次に、形成したNi層表面を水洗及び酸洗後、引き続き、下記の条件でNi層表面に対して濃度1〜30g/Lのカルボキシベンゾトリアゾール(CBTA)を含む、液温40℃、pH5の水溶液を、20〜120秒間シャワーリングして噴霧することにより有機物層を形成した。
【0136】
また、実験No.52については以下の条件にて中間層を形成した。
以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで表面処理をすることにより有機物層を形成した。
・有機物層(有機物層形成処理)
実験No.51と同じ条件で形成した。
・Ni層
次に、形成した有機物層の表面に、実験No.1〜49、54〜61と同じ条件でNi層を形成した。
【0137】
また、実験No.53については以下の条件にて中間層を形成した。
以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続めっきラインで電気めっきすることにより4000μg/dm
2の付着量のCo-Mo層を形成した。
・Co-Mo層(コバルトモリブデン合金めっき)
キャリアに対して、以下の条件でロール・トウ・ロール型の連続メッキラインで電気メッキすることにより4000μg/dm
2の付着量のCo-Mo層を形成した。具体的なメッキ条件を以下に記す。
液組成:硫酸Co:50g/dm
3、モリブデン酸ナトリウム二水和物:60g/dm
3、クエン酸ナトリウム:90g/dm
3
液温:30℃
電流密度:1〜4A/dm
2
通電時間:3〜25秒
【0138】
中間層の形成後、中間層の上に厚み1、2、3μmの極薄銅層を以下の条件で電気めっきすることにより形成し、キャリア付銅箔とした。
・極薄銅層
銅濃度:30〜120g/L
H
2SO
4濃度:20〜120g/L
電解液温度:20〜80℃
電流密度:10〜100A/dm
2
なお、実験No.6、26、45には極薄銅層の上に更に、粗化処理層、耐熱処理層、クロメート層、シランカップリング処理層を設けた。
・粗化処理
Cu:10〜20g/L
Co:1〜10g/L
Ni:1〜10g/L
pH:1〜4
温度:40〜50℃
電流密度Dk:20〜30A/dm
2
時間:1〜5秒
Cu付着量:15〜40mg/dm
2
Co付着量:100〜3000μg/dm
2
Ni付着量:100〜1000μg/dm
2
・耐熱処理
Zn:0〜20g/L
Ni:0〜5g/L
pH:3.5
温度:40℃
電流密度Dk:0〜1.7A/dm
2
時間:1秒
Zn付着量:5〜250μg/dm
2
Ni付着量:5〜300μg/dm
2
・クロメート処理
K
2Cr
2O
7
(Na
2Cr
2O
7或いはCrO
3):2〜10g/L
NaOH或いはKOH:10〜50g/L
ZnO或いはZnSO
47H
2O:0.05〜10g/L
pH:7〜13
浴温:20〜80℃
電流密度0.05〜5A/dm
2
時間:5〜30秒
Cr付着量:10〜150μg/dm
2
・シランカップリング処理
ビニルトリエトキシシラン水溶液
(ビニルトリエトキシシラン濃度:0.1〜1.4wt%)
pH:4〜5
時間:5〜30秒
【0139】
(実験No.21)
圧延銅箔(タフピッチ銅、JIS H3100 C1100)を準備し、当該圧延銅箔に対し、サンドブラストにより表面を粗化した圧延ロールを用いて仕上げの冷間圧延を行った。このとき、圧延ロール粗さRa=0.45〜0.48μm、油膜当量41000とした。これにより銅箔キャリアを得た。
続いて、実験No.6と同様の条件で銅箔キャリア表面に中間層及び極薄銅層を形成することでキャリア付銅箔を作製した。
【0140】
上記のようにして得られた実験No.1〜61のキャリア付銅箔について、以下の方法で各評価を実施した。
【0141】
<極薄銅層の厚み>
極薄銅層の厚みは以下の重量法により測定した。
キャリア付銅箔の重量を測定した後、極薄銅層を引き剥がし、キャリアの重量を測定し、前者と後者との差を極薄銅層の重量と定義する。
・試料の大きさ:10cm角シート(プレス機で打ち抜いた10cm角シート)
・試料の採取:任意の3箇所
・以下の式により各試料の重量法による極薄銅層の厚みを算出した。
重量法による極薄銅層の厚み(μm)={(10cm角シートのキャリア付銅箔の重量(g/100cm
2))−(前記10cm角シートのキャリア付銅箔から極薄銅層を引き剥がした後の、キャリアの重量(g/100cm
2))}/銅の密度(8.96g/cm
3)×0.01(100cm
2/cm
2)×10000μm/cm
なお、試料の重量測定には、小数点以下4桁まで測定可能な精密天秤を使用した。そして、得られた重量の測定値をそのまま上記計算に使用した。
・3箇所の重量法による極薄銅層の厚みの算術平均値を、重量法による極薄銅層の厚みとした。
また、精密天秤にはアズワン株式会社製IBA−200を用い、プレス機は、野口プレス株式会社製HAP−12を用いた。
なお、極薄銅層の上に粗化処理層等の表面処理層を形成した場合には、当該表面処理層を形成した後に上記測定を行った。
この結果、実験No.1〜61の全てについて、極薄銅層の厚みが1〜3μmであることを確認した。
【0142】
<極薄銅層の表面粗さ>
キャリア付極薄銅層と基材(三菱ガス化学(株)製:GHPL−832NX−A)に対して、圧力20kgf/cm
2で220℃で2時間加熱の積層プレスを行った後、銅箔キャリアをJIS C 6471(1995、なお、銅箔を引き剥がす方法は、8.1 銅箔の引き剥がし強さ 8.1.1試験方法の種類(1)方法A(銅箔を銅箔除去面に対して90°方向に引き剥がす方法)とした。)に準拠して引き剥がし、極薄銅層を露出させた。次に、以下の手順により、極薄銅層の露出面の各種粗さを測定した。
ISO25178に準拠して、オリンパス社製レーザー顕微鏡OLS4000(LEXT OLS 4000)にて、極薄銅層の露出面のSz(最大高さ)、Sa(算術平均高さ)を測定した。また、表面処理前と表面処理後のキャリアの極薄銅層を設ける側の表面についても同様にSz、Saを測定した。レーザー顕微鏡における対物レンズ50倍を使用して約200μm×200μm面積(具体的には40106μm
2)の測定を行い、Sz、Saを算出した。なおレーザー顕微鏡測定において、測定結果の測定面が平面でない、曲面になった場合は、平面補正を行った後に、Sz、Saを算出した。なお、レーザー顕微鏡によるSz、Saの測定環境温度は23〜25℃とした。
【0143】
<光沢度>
キャリア付極薄銅層と基材(三菱ガス化学(株)製:GHPL−832NX−A)に対して、圧力20kgf/cm
2で220℃で2時間加熱の積層プレスを行った後、銅箔キャリアをJIS C 6471(1995、なお、銅箔を引き剥がす方法は、8.1 銅箔の引き剥がし強さ 8.1.1試験方法の種類(1)方法A(銅箔を銅箔除去面に対して90°方向に引き剥がす方法)とした。)に準拠して引き剥がし、極薄銅層を露出させた。次に、JIS Z8741に準拠した日本電色工業株式会社製光沢度計ハンディーグロスメーターPG−1を使用し、入射角60度で、極薄銅層の露出面のMD方向(極薄銅層のスジ方向)の60度光沢度GMDを測定した。
【0144】
<レーザー穴開け性>
次に、極薄銅層の未処理表面に、レーザーを下記条件にて照射し、照射後の穴形状を顕微鏡にて観察し、計測を実施した。レーザー穴開け時のエネルギーは、極薄銅層の厚みが2μmの場合は、穴径φ60μmを狙って、サンプル毎に3〜7mJの範囲で適宜調整し、極薄銅層の厚みが1μmの場合は、穴径φ50μmを狙って、サンプル毎に1〜5mJの範囲で適宜調整し、極薄銅層の厚みが3μmの場合は、穴径φ70μmを狙って、サンプル毎に3〜10mJの範囲で適宜調整した。穴開けしたビアの測定点は100点であり、穴の径は、穴を取り囲む最小円の直径とした。そして、当該穴の径を測定し、標準偏差を求め、下記の基準によりレーザー穴開け性を評価した。なお、レーザー加工機には三菱電機株式会社製のレーザー加工機ML605GTW4を用いた。
(レーザー照射条件)
・レーザー波長:9.4μm
・出力:250W
・パルスエネルギー:3〜7mJの範囲で適宜調整
・パルス幅:10μ秒
・加工方式:バーストモード
・ショット数:1ショット
(レーザー穴開け性の評価基準)
標準偏差6.0μm超:×
標準偏差4.0μm超6.0μm以下:△
標準偏差2.5μm超4.0μm以下:〇
標準偏差2.5μm以下:〇〇
【0145】
<回路形成性:M−SAP回路を形成した後の回路の裾引き部の評価>
キャリア付銅箔(極薄銅層への表面処理を施されたキャリア付銅箔は、当該表面処理後のキャリア付銅箔)を極薄銅層側からビスマレイミドトリアジン樹脂基板に貼り合わせた後、キャリアを剥がし、続いて、M−SAP回路として、露出した極薄銅層表面に、極薄銅層の厚みが2μmの場合は15μm幅のパターン銅めっき層をL/S=15μm/15μmとなるように形成し、極薄銅層の厚みが1μmの場合は12μm幅のパターン銅めっき層をL/S=12μm/12μmとなるように形成し、極薄銅層の厚みが3μmの場合は20μm幅のパターン銅めっき層をL/S=20μm/20μmとなるように形成し、その後エッチングを行って回路を形成した。このときのエッチング条件を以下に示す。そして、当該回路について1mmの線長さの箇所を100個(すなわち、1mmの線長さの回路を100本)平面観察して、裾引き部の長さを測定した。当該測定によって得られた回路の裾引き部の最大長さに関して、以下の基準により回路形成性を評価した。
図5に、当該裾引き部を示した回路の平面観察写真を示す。裾引き部は、
図5に示すように、回路のボトムに薄く生じるエッチング残りである。
(エッチング条件)
・エッチング形式:スプレーエッチング
・スプレーノズル:フルコーン型
・スプレー圧:0.10MPa
・エッチング液温:30℃
・エッチング液組成:
H
2O
2:18g/L
H
2SO
4:92g/L
Cu:8g/L
添加剤:株式会社JCU製 FE−830IIW3C 適量
(回路形成性の評価基準)
配線間ショート多発または断線多発などの回路形成不良状態:××
裾引き部の最大長さが5μm以上であるが配線間ショートまでは至ってない:×
裾引き部の最大長さが2μm以上5μm未満:○
裾引き部の最大長さが2μm未満:○○
試験条件及び試験結果を表2〜4に示す。
【0146】
【表2】
【0147】
【表3】
【0148】
【表4】