(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記リソースは、CPUの利用率、ストレージの容量、メモリの容量、ネットワーク帯域、または、同じ前記識別情報を用いて前記端末装置から同時にアクセス可能なアクセス数である請求項1記載の判別結果提供装置。
前記学習済判別器の性能向上の度合は、前記識別情報ごとに受信した前記画像正解データの正確率、または、前記識別情報ごとに受信した前記画像正解データの作成時の負荷に応じた重みの総和である請求項1または2記載の判別結果提供装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
医療分野においても、AI活用に期待が高まっており、AIを用いた診療支援が期待されている。しかし、AIの性能を向上させるためには、より多くの学習データを用意して学習させる必要がある。学習データには、正しい正解データを付与する必要があるが、正解データを付与する作業は負担が大きい。そのため、学習データを作成することに対して、ユーザにとっての直接的なメリットがないと学習データを作成するモチベーションを持つことは難しく、結果的に学習データを大量に集めるのは難しい。
【0007】
そこで、本発明では、上述のような問題を解決するために、医療分野においてディープラーニングに必要な大量かつ多様な学習データの学習を行って判別を行う判別結果提供装置、判別結果提供装置の作動方法、判別結果提供プログラム、および判別結果提供システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の判別結果提供装置は、複数の団体に属する複数の端末装置から、団体を識別する識別情報と画像に正解データを付与した画像正解データとをネットワークを介して受信する受信部と、受信した画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得る学習部と、識別情報ごとに、識別情報ごとに受信した画像正解データの数または識別情報ごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、学習済判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、学習済判別器が端末装置が属する団体の識別情報に対して決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行い、得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置に送信する判別結果送信部とを備える。
【0009】
本発明の判別結果提供装置の作動方法は、受信部と、学習部と、判別結果送信部とを備えた判別結果提供装置の作動方法であって、受信部が、複数の団体に属する複数の端末装置から、団体を識別する識別情報と画像に正解データを付与した画像正解データとをネットワークを介して受信し、学習部が、受信した画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得、判別結果送信部が、識別情報ごとに、識別情報ごとに受信した画像正解データの数または識別情報ごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、学習済判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、学習済判別器が端末装置が属する団体の識別情報に対して決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行い、得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置に送信する。
【0010】
本発明の判別結果提供プログラムは、コンピュータを、複数の団体に属する複数の端末装置から、団体を識別する識別情報と画像に正解データを付与した画像正解データとをネットワークを介して受信する受信部と、受信した画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得る学習部と、識別情報ごとに、識別情報ごとに受信した画像正解データの数または識別情報ごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、学習済判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、学習済判別器が端末装置が属する団体の識別情報に対して決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行い、得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置に送信する判別結果送信部として機能させる。
【0011】
「複数の団体に属する複数の端末」には、1つの団体に対して1以上の端末が属するこ場合が含まれるが、1つの端末が複数の団体に属する場合は存在しない。
【0012】
「学習済判別器の性能向上の度合」は、学習済判別器の性能向上に寄与すると考えられる値または指標値であればよく(但し、画像正解データの数は除く)、実際に性能が向上したか否かを評価したものでなくてもよい。例えば、画像正解データとして用いるものの中には、一部に正解ではないデータも含まれている可能性がある。そこで、学習に用いた画像正解データの数ではなく、学習に用いた画像正解データの正解率を別途手動または自動で計測したものを用いることができる。
【0013】
「リソース」とは、コンピュータでCPU(Central Processing Unit)を用いてプログラムを実行する際に、プログラムが使用することができるハードウェアまたはハードウェアの環境をいう。
【0014】
また、リソースは、CPUの利用率、ストレージの容量、メモリの容量、ネットワーク帯域、または、同じ識別情報を用いて端末装置から同時にアクセス可能なアクセス数であってもよい。
【0015】
また、学習済判別器の性能向上の度合は、識別情報ごとに受信した画像正解データの正確率、または、識別情報ごとに受信した画像正解データの作成時の負荷に応じた重みの総和であってもよい。
【0016】
本発明の判別結果提供システムは、判別結果提供装置と複数の団体に属する複数の端末装置をネットワークを介して接続した判別結果提供システムであって、判別結果提供装置が、複数の端末装置から、団体を識別する識別情報と画像に正解データを付与した画像正解データとをネットワークを介して受信する受信部と、受信した画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得る学習部と、識別情報ごとに、識別情報ごとに受信した画像正解データの数または識別情報ごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、学習済判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、学習済判別器が端末装置が属する団体の識別情報に対して決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行い、得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置に送信する判別結果送信部とを備え、端末装置が、識別情報と画像正解データとを判別結果提供装置にネットワークを介して送信する画像正解データ送信部と、判別対象画像をネットワークを介して判別結果提供装置に送信して、判別結果提供装置から判別結果を受信する判別結果取得部とを備える。
【0017】
本発明の他の判別結果提供装置は、コンピュータに実行させるための命令を記憶するメモリと、記憶された命令を実行するよう構成されたプロセッサとを備え、プロセッサは、複数の団体に属する複数の端末装置から、団体を識別する識別情報と画像に正解データを付与した画像正解データとをネットワークを介して受信し、受信した画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得る学習部と、識別情報ごとに、識別情報ごとに受信した画像正解データの数または識別情報ごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、学習済判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、学習済判別器が端末装置が属する団体の識別情報に対して決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行い、得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置に送信する処理を実行する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複数の団体に属する複数の端末装置から画像正解データを受信し、画像正解データを用いて判別器に学習させた学習済判別器を得て、受信した画像正解データの数または画像正解データによる学習済判別器の性能向上の度合に応じて、判別器で利用可能なリソースの配分を決定し、決定された配分のリソースを用いて端末装置から受信した判別対象画像の判別を行って得られた判別結果を送信元の端末装置に送信するようにしたので、多くの団体から大量の画像正解データを用いて判別器の判別性能を向上させることが可能となる。また、各端末装置から提供された画像正解データの貢献度に応じて、配分されたリソースを用いて学習済判別器で判別を行うので、画像正解データを作成するモチベーションとなり、より多くの画像正解データを集めることが可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図を用いて本発明の実施の形態を説明する。本実施の形態では、団体が医療機関である場合を例に説明する。
図1に、本発明の実施の形態における判別結果提供システム1の概略構成を示す。判別結果提供システム1は、複数の医療機関A,B・・・Xに設置される複数の端末装置10とクラウド側に置かれる判別結果提供装置20がネットワーク30で接続されて構成される。なお、各医療機関には複数の端末装置10が設置されていてもよい。
【0021】
判別結果提供装置20は、CPU、メモリ、ストレージ、入出力インターフェース、通信インターフェース、および、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされ、さらに、サーバの機能を有した高性能なコンピュータである。また、必要に応じてGUP(Graphics Processing Unit)を設けるようにしてもよい。あるいは、複数のコンピュータを用いて提供されてもよい。本発明の判別結果提供プログラムがコンピュータにインストールされ、コンピュータのCPUによってプログラムの命令が実行されることにより判別結果提供装置として機能する。
【0022】
端末装置10は、各医療機関A,B・・・Xに設けられたコンピュータであり、CPU、メモリ、ストレージ、入出力インターフェース、通信インターフェース、入力装置、表示装置、および、データバス等の周知のハードウェア構成を備え、周知のオペレーションシステム等がインストールされ、表示装置としてディスプレイを有している。また、必要に応じてGUPを設けるようにしてもよい。
【0023】
ネットワーク30は、公衆回線網または専用回線網を介して複数の医療機関A,B・・・Xに置かれた端末装置10と判別結果提供装置20を広域的に結ぶワイドエリアネットワーク (広域通信網 WAN:Wide Area Network) である。
【0024】
また、端末装置10は、
図2に示すように、ローカルエリアネットワーク(LAN:Local Area Network)51を介して、各医療機関A,B・・・Xの医療情報システム50に接続されている。医療情報システム50は、モダリティ(撮影装置)52、画像データベース53を備え、ネットワーク51を介して互いに画像データの送受信が行われるように構成される。なお、ネットワーク51は、画像データを高速転送が可能なように光ファイバーなどの通信ケーブルを用いるのが望ましい。
【0025】
モダリティ52には、被写体の検査対象部位を撮影することにより、その部位を表す検査画像を生成し、その画像にDICOM規格で規定された付帯情報を付加して出力する装置が含まれる。具体例としては、CT装置(Computed Tomography:コンピュータ断層撮影装置)、MRI装置(magnetic resonance imaging:磁気共鳴画像撮影装置)、PET装置(Positron Emission Tomography:陽電子放射断層撮影装置)、超音波装置、または、平面X線検出器(FPD:flat panel detector)を用いたCR装置(Computed Radiography:コンピュータX線撮影装置)などが挙げられる。
【0026】
画像データベース53は、汎用のコンピュータにデータベース管理システム(Data Base Management System:DBMS)の機能を提供するソフトウェアプログラムが組み込まれ、大容量ストレージを備えている。このストレージは、大容量のハードディスク装置であってもよいし、ネットワーク51に接続されているNAS(Network Attached Storage)やSAN(Storage Area Network)に接続されたディスク装置であってもよい。また、モダリティ52で撮影された画像データは、DICOM規格に準拠した格納フォーマットおよび通信規格に従って、ネットワーク51を介して画像データベース53に送信されて格納される。
【0027】
本実施の形態では、判別結果提供装置20に、実運用判別器として機能する判別器が組み込まれた画像処理プログラムと、学習用判別器として機能する判別器が組み込まれた学習用プログラムがインストールされる場合を例に説明する。
【0028】
また、実運用判別器および学習用判別器は、複数種類の臓器領域および/または病変領域のいずれであるかを判別できるようにディープラーニングがなされた多層ニューラルネットワークである場合について説明する。多層ニューラルネットワークでは、入力されるデータに対する前段の階層により得られる異なる複数の演算結果データ、すなわち特徴量の抽出結果データに対して、各層において各種カーネルを用いて演算処理を行い、これにより得られる特徴量のデータを取得し、特徴量のデータに対して次段以降の処理層においてさらなる演算処理を行うことにより、特徴量の認識率を向上させて、入力された画像データを複数の種類の領域のいずれであるかを判別することができる。
【0029】
図3は多層ニューラルネットワークの一例を示す図である。
図3に示すように多層ニューラルネットワーク40は、入力層41および出力層42を含む複数の階層からなる。
図3では、出力層42の手前の階層には参照番号43を付与している。
【0030】
多層ニューラルネットワーク40は、入力層41に画像データを入力して、領域の判別結果を出力させる。学習を行う際には、出力された判別結果を正解データと比較し、正解か不正解かに応じて、出力側(出力層42)から入力側(入力層41)に向かって、多層ニューラルネットワーク40の各層に含まれるユニット(
図3に丸印で示す)の各階層間における結合の重みを修正する。そして、結合の重みの修正を、多数の正解データ付の画像データを用いて、予め定められた回数、または出力される判別結果の正解率が100%、または予め定められたしきい値以上になるまで繰り返し行い、学習を終了する。
【0031】
また、判別結果提供装置20には、各医療機関の端末装置10から接続可能な仮想サーバが、各医療機関ごとに複数設けられ、CPUの利用率、ストレージの容量、メモリの容量、ネットワーク帯域、または、同じ識別情報を用いて端末装置10から同時にアクセス可能なアクセス数などのリソースの割当が設定される。以下、各医療機関ごとに仮想サーバが設けられ、リソースの割当が各医療機関の仮想サーバごとに行われる場合について説明する。また、医療機関を識別する識別情報がユニークに割り当てられる。
【0032】
図4は、端末装置10と判別結果提供装置20の概略構成を示すブロック図である。
図4を用いて、端末装置10と判別結果提供装置20の機能について詳細に説明する。
【0033】
まず、判別結果提供装置20について説明する。
図4に示すように、判別結果提供装置20は、受信部21、画像正解データ記憶部22、学習部23、リソース割当部24、判別結果取得部25、および判別結果送信部26を備える。
【0034】
判別結果取得部25は、各医療機関に対する仮想サーバ上で画像処理プログラムを実行することで実運用判別器(学習済判別器)が機能し、各医療機関ごとに実運用判別器が判別結果提供装置20に設けられ、各医療機関の端末装置10からネットワークを介して受信した判別対象画像を実運用判別器に入力して判別結果を取得する。この画像処理プログラムは、各仮想サーバ上でそれぞれ設定されたリソースを用いて実行される。
【0035】
判別結果送信部26、判別結果取得部25で得られた判別結果をネットワークを介して判別対象画像の送信元の端末装置10に送信する。
【0036】
受信部21は、各端末装置10から各医療機関の識別情報IDと画像正解データTを受信する。受信した画像正解データTは送信元の医療機関の識別情報IDと対応付けて画像正解データ記憶部22に登録される。画像正解データTは、画像データとその画像データの正解データで構成される。なお、正解データは、画像データの臓器または異常陰影など領域を示すマスク画像と、そのマスク画像の領域が何であるか(例えば、肝臓、腎臓または肺野などの臓器の領域であるか、あるいは、肝臓がん、腎臓がんまたは肺結節などの異常陰影の領域であるかなど)を表す情報を合わせて有している。
【0037】
学習部23は、画像正解データ記憶部22に記憶されている画像正解データTを用いて、学習用プログラムに設けられた学習用判別器の多層ニューラルネットワーク40に学習させる。学習用判別器には、画像正解データ記憶部22に登録された全ての医療機関から受信した画像正解データTを学習させる。
【0038】
また、学習部23は、学習用判別器の学習がある程度が進んだ段階で学習済判別器とし、学習済判別器が組み込まれた新しいバージョンの画像処理プログラムを生成する。具体的には、画像正解データを所定の数に達するまで学習を繰り返す、または、所定の期間 画像正解データの学習を繰り返して、新しいバージョンの画像処理プログラムを生成する。定期的に、各医療機関用の仮想化サーバ上の画像処理プログラムを新らしいバージョンの画像処理プログラムに置き換える。これによって、実運用判別器が新しい学習済判別器に更新されて、新しい実運用判別器として機能する。医療用目的のソフトウェアに対しては、医薬品医療機器等法(改正薬事法)の対象となるため、医薬品医療機器等法で定められる基準をクリアしていることが求められる。そこで、医薬品医療機器等法で定められる基準が評価できる複数の画像の組み合わせで構成された評価用の画像セットを予め用意しておき、評価用の画像セットの正解率が所定の基準を越えた学習済判別器を実運用判別器として用いるのが好ましい。
【0039】
リソース割当部24は、学習部23で学習させた画像正解データTの数または学習済判別器の性能向上の度合を識別情報IDごとに求めて、識別情報IDごとに仮想サーバで利用可能なリソースの配分、つまり、実運用判別器(学習済判別器)で利用可能なリソースの配分を決定する。
【0040】
(a)例えば、画像正解データ記憶部22に記憶されている画像正解データTを識別情報ごとにカウントすることで、各医療機関ごとにその医療機関が登録した画像正解データTの数を求める。求めた数に応じて、リソースの配分を決定する。例えば、全ての医療機関が登録した画像正解データTが1000であったときに、医療機関Aが登録した画像正解データTが100であった場合には、医療機関Aに対する仮想サーバのリソースの配分は10(=100/1000)%である。
【0041】
(b)また、性能向上の度合として、各医療機関が登録した画像正解データTの正確率を求めて、リソースを割り当ててもよい。例えば、全ての医療機関が登録した画像正解データTを学習させた学習済判別器を用いて、各医療機関から登録された画像正解データTの正確性を判断する。ある医療機関の画像正解データTの画像データを学習済判別器に入力して得られた判別結果と、画像正解データTの正解データとが一致する場合には、その画像正解データTは正解であったと自動的に判断する。このように各医療機関ごとに登録した画像正解データTが正解であったか否かを判定し、各医療機関が登録した画像正解データTの正解率を算出する。医療機関Aの画像正解データTを学習済判別器で評価した正解率50%、医療機関Bの正解率が70%、医療機関Cの正解率が30%であるとき、医療機関Aの仮想サーバにリソースの配分は、33%(=50/(50+70+30))である。
【0042】
あるいは、画像正解データTが本当に正解であるか否かを医師などが画像を観察して判定し、正解である印を手動で画像正解データTに記録して、正解率を求めてもよい。学習済判別器を用いた正解であるか否かの自動の判断と医師などによる手動の判断の両方を用いて正解率を求めてもよい。
【0043】
(c)また、性能向上の度合として、各医療機関が登録した画像正解データTの作成時の負荷に応じた重みの総和を求めて、リソースを割り当ててもよい。学習データの作成負荷に対して重み付けし、重み付けした係数に各医療機関が登録した学習データ数をかけた総和を求め、各医療機関の総和に応じてリソースの配分を決定する。例えば、(1)チェックマークだけつける、(2)画像上の領域を表すマスク画像に正しいラベルをつける、(3)画像上で正しい領域を塗りつぶしたマスク画像を生成する。この場合、(1)から(3)に向かって難易度が高く、(1)係数1.0、(2)係数1.5、(3)係数2.0とする。医療機関Aの(1)件数が50、(2)の件数が20、(3)の件数が10であった場合は、医療機関Aの重みの総和は、1.0*50+1.5*20+2.0*10=100となる。同様に、他の医療機関の重みの総和を求める。全体の医療機関の総和が1000であれば、医療機関Aに対する仮想サーバのリソースの配分は10(=100/1000)%である。
【0044】
(d)また、性能向上の度合として、学習データの希少性(たとえば、希少な症例であるか否か)に応じて重み付けし、その重みに各医療機関が登録した学習データ数をかけて、各医療機関の重みの総和を求め、各医療機関の総和に応じてリソースの配分を決定するようにしてもよい。重みの総和は(c)の場合と同様に計算して、リソースの配分を行う。
【0045】
(e)あるいは、学習した画像正解データTの学習用判別器の性能向上の度合いを求めて、リソースを割り当ててもよい。初期〜現在の学習用判別器の正解率の差を100としたときに、登録した画像正解データTを学習させたことによる学習用判別器の正解率の上昇の割合に基づいて決定する。正解率は評価用の画像セットを用いて行ってもよい。例えば、 初期の正解率が70%、全ての医療機関の画像正解データTを学習させた学習用判別器の現在の正解率が85%であったときに、医療機関Aが登録した画像正解データTを用いて学習させた学習済判別器の正解率が5%上昇した場合には、リソースの配分は、33(≒5/15)%とする。
【0046】
上述では、リソースの配分を単純に各医療機関にすべてのリソースを割り当てる割合として求める方法を例に説明したが、CPUの利用率、ストレージの容量、メモリの容量、ネットワーク帯域、または、同じ識別情報を用いて端末装置から同時にアクセス可能なアクセス数などを異なる割合で配分してもよい。また、各仮想マシンの負荷状況に応じて、リソースの配分を可変にしてもよい。リソース割当部24で得られたリソースの配分の割合に応じて、割合が高い医療機関ほど、仮想サーバ上で動作するプログラムの処理能力が高くなるように各リソースが配分されればよい。
【0047】
リソースの配分は、各端末装置10から正解画像データが登録される度に更新する。あるいは、所定のタイミングで、学習用判別器の正解率の上昇率を求めて、性能向上に応じたリソースの配分を更新してもよい。
【0048】
判別結果取得部25は、以上のようにして、識別情報IDごとに受信した画像正解データの数、または識別情報IDごとに受信した画像正解データを用いた学習による学習済判別器の性能向上の度合に応じて、随時更新されたリソースの配分の仮想サーバ上で画像処理プログラムを実行することで、実運用判別器の判別結果を取得する。
【0049】
次に、端末装置10について説明する。
図4に示すように端末装置10は、判別結果取得部11、画像正解データ記憶部12、および画像正解データ送信部13を備える。
【0050】
判別結果取得部11は、ネットワーク30を介して判別対象画像を判別結果提供装置20に送信し、得られた判別対象画像の判別結果をネットワークを30を介して受信する。各端末装置10から判別結果提供装置20に接続すると、各医療機関用に設けられた仮想サーバに接続され、各仮想サーバ上で実行している実運用判別器を利用することが可能になる。仮想サーバ上で判別対象画像を実運用判別器に入力して、出力された判別結果をネットワーク30を介して受信する。
【0051】
画像正解データ記憶部12は、画像正解データTを記憶する。正解データは、各医療機関A,B・・・Xの読影医などのユーザが画像データを観察して作成する。例えば、画像データベース53から画像データを取り出して、判別結果取得部11に画像データを入力して判別結果を取得し、判別結果に対して読影医が正解もしくは不正解であるという判定を行ない、正解の場合は、判別結果を正解データとして、入力した画像データと正解データを一緒に画像正解データTとして画像正解データ記憶部12に記憶する。不正解の場合は、ユーザが正解データのマスク画像を生成し、その正解データを画像データに付与して画像正解データTとして画像正解データ記憶部12に記憶する。
【0052】
画像正解データ送信部13は、画像正解データ記憶部12に記憶されている画像正解データTをネットワーク30を介して判別結果提供装置20に送信する。
【0053】
次に、本実施の形態のディープラーニングの処理の流れについて、
図5の遷移図と
図6のフローチャートを用いて説明する。
【0054】
最初に、判別結果提供装置20に、実運用判別器NNoと学習用判別器NNtをそれぞれ実行する(S1、S2)。また、実運用判別器NNoは、各医療機関の仮想サーバ上で実行する。
【0055】
各端末装置10で、画像データに対する正解データを生成して、画像データと正解データとを対応付けた画像正解データTをストレージ(画像正解データ記憶部12)に記憶する(S3)。各端末装置10から、判別結果提供装置20にログインして各医療機関の識別情報IDを送信する(S4)。さらに、画像正解データ送信部13で判別結果提供装置20にストレージに記憶されている画像正解データTを送信する(S5)。
【0056】
判別結果提供装置20は、受信部21で各端末装置10から画像正解データTを受信する(S6)。受信した画像正解データTは送信元の医療機関の識別情報IDと対応付けて画像正解データ記憶部22に登録する。学習部23は、画像正解データ記憶部22に記憶されている画像正解データTを用いて、学習用判別器NNtに学習させる(S7)。
図5の(1)の破線を参照。
【0057】
また、リソース割当部24で学習させた画像正解データTの数または学習済判別器の性能向上の度合を識別情報IDごとに求めて、識別情報IDごとに仮想サーバ(
図5参照、実線の枠A,B・・・X)で利用可能なリソースの配分を決定する(S8)。判別結果取得部25は、仮想サーバA,B・・・X上で実行している実運用判別器NNoのリソースの配分を、リソース割当部24で決定した配分に更新する(S9)。学習した画像正解データTが所定の数になるまで、または、所定の期間S6〜S9を繰り返す(S10)。
【0058】
また、学習部23で学習用判別器NNtに画像正解データTを学習させた学習済判別器を新たな実運用判別器NNoとして(S11)、定期的に、各医療機関用の仮想化サーバ上の実運用判別器NNoを更新する(S12)。
図5の(2)の1点鎖線を参照。
【0059】
以上の通り、S2〜S12の処理を繰り返すことにより、様々な医療機関から提供された画像正解データTを学習して判別器の性能を向上させることができる。
【0060】
一方、端末装置10から判別結果提供装置20にログインして、各医療機関用の仮想サーバA,B・・・Xに接続して、判別結果取得部11で、判別対象画像Inputを判別結果提供装置20に送信して判別結果Outputを取得する。
図5の(3)の実線を参照。端末装置10では、定期的に更新された実運用判別器NNoを利用することができる。また、各医療機関が登録した画像正解データTの数または学習済判別器の性能を向上させた貢献度に応じたリソースの配分に応じて、端末装置10から実運用判別器NNoを利用することが可能になる。
【0061】
以上、詳細に説明したように、本願発明では、ユーザが画像正解データを生成して登録した数が多ければ多いほど、あるいは、ユーザが登録した画像正解データによる判別器の性能の向上の貢献度が高ければ高いほど、そのユーザの学習済判別器、つまり実運用判別器のリソースの配分を高くして快適な実行環境で画像の判別を行うことが可能になる。このように、ユーザが直接メリットを受けられるような構成にしたので、画像正解データを作成するモチベーションとなり結果的に画像正解データを大量に集めることが可能になる。
【0062】
上述では、医療機関ごとにリソースの配分を決める場合について説明したが、端末装置単位、または読影医などのユーザ単位に識別情報を割り当てて画像正解データの登録を管理して、端末装置単位、またはユーザ単位にリソースの配分を決めるようにしてもよい。このように構成すれば、より個人のモチベーションとなり、画像正解データを大量に集めることが可能になる。
【0063】
本実施の形態では、仮想サーバを例にリソースの配分について説明したが、仮想サーバが、ハードウェアとOSの間に位置するハイパーバイザーを設け、物理リソースを複数の仮想マシンに分割するものであってもよいし、物理サーバのOS上に仮想化ソフトウェアをインストールし、その上で複数の仮想化環境を稼働させるものであってもよい。
【0064】
上述では、判別結果提供装置および端末装置が汎用コンピュータ上で機能する場合について説明したが、一部の機能を実行するためのプログラムを永久的に記憶するASIC(Application Specific Integrated Circuit :特定用途向け集積回路)やFPGA(field programmable gate arrays)などの専用回路を設けるようにしてもよい。あるいは、専用回路に記憶されたプログラム命令と、専用回路のプログラムを利用するようにプログラムされた汎用のCPUによって実行されるプログラム命令と組み合わせるようにしてもよい。以上のように、コンピュータのハードウェア構成をどのように組み合わせてプログラム命令を実行してもよい。