(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記硬化物が、イソシアヌル環構造、トリシクロデカン環構造、トリアジン環、及び、シクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの環構造を有する樹脂を含む請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の積層シート。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本開示について詳細に説明する。
なお、本明細書中、「xx〜yy」の記載は、xx及びyyを含む数値範囲を表す。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルの両方を包含する概念で用いられる語であり、「(メタ)アクリロイル」は、アクリロイル及びメタクリロイルの両方を包含する概念として用いられる語である。
また、本明細書中の「工程」の用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であっても、その工程の所期の目的が達成されれば本用語に含まれる。
本開示におけるアルキル基、アリール基、アルキレン基及びアリーレン基等の炭化水素基は、特に断りのない限り、分岐を有していても、環構造を有していてもよい。
また、本開示において、「質量%」と「重量%」とは同義であり、「質量部」と「重量部」とは同義である。
また、本開示において、2以上の好ましい態様の組み合わせは、より好ましい態様である。
また、本開示における重量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)は、特に断りのない限り、TSKgel GMHxL、TSKgel G4000HxL、TSKgel G2000HxL(何れも東ソー(株)製の商品名)のカラムを使用したゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析装置により、溶媒THF(テトラヒドロフラン)、示差屈折計により検出し、標準物質としてポリスチレンを用いて換算した分子量である。
【0015】
(積層シート)
本開示に係る積層シートは、異なる2種以上の樹脂層からなる積層基材上に、100℃における破断伸度が、6%以上500%以下である硬化物を有する。
本開示に係る積層シートは、光学部材シートとして好適に用いられ、レンチキュラーシートとしてより好適に用いられる。
【0016】
本発明者らが詳細な検討を行った結果、上記積層シートとすることにより、耐摩耗性及びトリミング性に優れた積層シートが得られることを見出した。
詳細な機構は不明であるが、異なる2種以上の樹脂層からなる積層基材を用いることにより、積層基材における層の界面において、トリミング時の応力を緩和吸収することができ、また、上記硬化物の100℃における破断伸度が、6%以上500%以下であることにより、強度及び適度な変形性を有するため、これらが協奏的に作用し、耐摩耗性及びトリミング性に優れるものと推定している。
【0017】
<積層基材>
本開示に用いられる基材は、異なる2種以上の樹脂層からなる積層基材である。
本開示に用いられる積層基材は、支持材としての基材であり、任意の樹脂を目的等に応じて選択することができる。積層基材は、シート状又はフィルム状の基材を好適に用いることができる。
積層基材における各樹脂層を形成する樹脂としては、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂(PC)、塩化ビニル樹脂(PVC)、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)等が好ましく挙げられる。
積層基材の厚みは、特に制限はなく、50μm以上300μm以下の範囲が好ましく、高温で均一に成型(賦形)する観点から、50μm以上200μm以下の範囲がより好ましい。上記範囲であると、積層基材が破れにくく、成型加工時における取扱い中(例えば、運搬中)に割れが発生しにくく、3次元成型時にも割れにくい。
また、各樹脂層の厚みは、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、5μm以上200μm以下の範囲が好ましく、10μm以上150μm以下の範囲がより好ましい。
このような積層基材は、製膜中に溶融状態で積層してもよく(例えば、マルチマニホールドダイやフィードブロックダイを使用)、ダイ等から押出した樹脂を固化済みの樹脂膜上に積層してもよく、固化した樹脂膜同士を熱圧着してもよい。
【0018】
本開示に係る積層シートは、基材として、積層基材を用いることで一層立体成型性が改良される。これは以下の理由によると推察される。
種類の異なる複数の樹脂層を積層すると、各々ガラス転移温度(Tg)が異なる。このため、一方の樹脂のTg以上、他方の樹脂のTg以下で立体成型すると、一方の樹脂はTg以上のため成型変形するが流動性が大きく成型伸長時に穴が空き易い。しかし他方の層はTg以下のため大きな流動はなく穴の発生を抑えることができる。このため、積層する樹脂のTgの温度差は、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、10℃以上90℃以下が好ましく、20℃以上80℃以下がより好ましく、30℃以上50℃以下が更に好ましい。
なお、3層以上からなる場合は、上記Tgの温度差は、最も高いTgと最も低いTgとの差を指す。
【0019】
上記Tgの温度差を示す樹脂層の組み合わせとしては、下記の組み合わせが好ましく例示される。
ポリメチルメタクリレート(PMMA)Tg=100℃/ポリカーボネート(PC)Tg=150℃:Tg差=50℃
塩化ビニル(PVC)Tg=65℃/ポリカーボネート(PC)Tg=150℃:Tg差=85℃
アクリロニトリル−ブタジエン−スチレンゴム(ABS)Tg=80℃/ポリメチルメタクリレート(PMMA)Tg=100℃:Tg差=20℃
ABS Tg=80℃/ポリメチルアクリレート(PMA)Tg=90℃:Tg差=10℃
PMMA Tg=100℃/PVC Tg=65℃ :Tg差=35℃
ABS Tg=80℃/PC Tg=150℃:Tg差=70℃
ポリエチレンテレフタレート(PET) Tg=65℃/ABS Tg=80℃:Tg差=15℃
【0020】
積層基材における樹脂層の数は、立体成型性、耐摩耗性、トリミング性及びコストの観点から、2層以上8層以下が好ましく、2層以上5層以下がより好ましく、2層以上4層以下が更に好ましい。
中でも、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、少なくとも1層のアクリル樹脂層を有する積層基材が好ましい。
また、少なくとも1層のアクリル樹脂層を有する積層基材の場合、トリミング性の観点から、アクリル樹脂層に接するように硬化物を設けることがより好ましい。これは、硬化物に(メタ)アクリル系化合物を使うことが多く、両者素材の構造が類似した方が、両者の密着が良好となり、トリミング時の衝撃で両者が剥がれて薄くなったことで硬化層が割れ易くなる(クラックが入り易くなる)ことを抑性できるためと推定している。
また、積層基材としては、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、少なくとも1層のポリカーボネート樹脂層を有することが好ましい。
【0021】
積層基材における各樹脂層の厚み比は、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、最も厚い層が全層の51%以上95%以下の厚みであることが好ましく、55%以上90%以下の厚みであることがより好ましく、60%以上85%以下の厚みであることが更に好ましい。
【0022】
積層基材における各樹脂層は、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性の観点から、樹脂層における樹脂の含有量が、樹脂層の全質量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
これらの積層基材及び樹脂層中には、柔軟性付与のためのエラストマー(例えば特許第4720832号公報、特許第4692553号公報に記載のもの)、耐光性付与のためのUV剤(例えば特開2010−234640号公報、特開2011−31498号公報、特開2011−93258号公報、特開2011−110916号公報等に記載のもの)、滑り性付与のための粒子(例えばシリカ、アルミナ、架橋PMMA等の微粒子:例えば特許第469253号公報の段落0049に記載のもの)等を添加することも好ましい。
【0023】
積層基材、又は、積層基材の樹脂層としては、上市されている市販品を用いてもよく、例えば、三菱レイヨン(株)製のアクリル樹脂フィルム(アクリプレンHBS010P、厚み:125μm)、東レ(株)製のポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム(ルミラーS10、厚み:100μm)、帝人化成(株)製のポリカーボネート樹脂フィルム(ユーピロンH−3000、厚み125μm)、住化アクリル販売(株)製アクリル(PMMA)樹脂(テクノロイS001、厚み139μm)、住化アクリル販売(株)製ポリカーボネイト(PC)樹脂(テクノロイC000、厚み139μm)、住化アクリル販売(株)製PMMA/PC積層樹脂(テクノロイC001、厚み139μm)、東レ(株)製ABS樹脂(トヨラック 900−352:厚み125μm)、オカモト(株)製透明塩化ビニル樹脂(粉ふり透明グレード、厚み100μm)等を用いることができる。
【0024】
<硬化物>
本開示に係る積層シートは、上記積層基材上に、100℃における破断伸度が、6%以上500%以下である硬化物を有する。
上記硬化物の100℃における破断伸度は、6%以上500%以下であり、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、15%以上400%以下であることが好ましく、20%以上300%以下であることがより好ましい。
【0025】
本開示における破断伸度は、以下の方法により測定するものとする。
基材より硬化物を剥離する。例えば、基材と硬化層の両方の面に粘着テープを付けて両者を引張り剥離してもよく、あるいは、基材を溶解する溶剤に硬化膜の付いたシートを浸漬し硬化物層を単離する方法でもよい(硬化物層は架橋されており溶解しない。基材を溶かす溶剤の例としてアセトン、メチルエチルケトン(MEK)等が挙げられる。)。後者の場合、得られた硬化物を残留溶剤が1重量%以下になるまで乾燥した後、一方向(硬化物にレンズ等の構造が有る場合は、その長手方向)と、直交方向との両方に対し各々長さ50mm×幅10mmの大きさに加工してサンプル片を作製し、TENSILON RTC−1225A(エー・アンド・デイ社製)を用い、下記の条件にて引張試験を行って下記式で表される破断伸度を測定する。破断伸度を3回測定し、それらの平均値を破断伸度とする。長手方向、幅方向で平均値を比較し、大きな方の値を破断伸度とした。
破断伸度(%)=100×(延伸で破断した長さ−チャック間距離)/(チャック間距離)
−条件−
・チャック間距離:30mm
・サンプル片の温度:100℃
・引張速度:1mm/秒
【0026】
この測定において、下記の硬化物の好ましい厚みの範囲では、厚みの破断伸度への影響はない。
なお、硬化物(硬化膜)の厚みは、10μm以上100μm以下が好ましく、15μm以上80μm以下がより好ましく、20μm以上60μm以下が更に好ましい。上記範囲であると、取扱い性に優れるとともに、成型加工性に優れる。
【0027】
上記硬化物の架橋点間分子量は、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、20g/mol以上2,000g/mol以下であることが好ましく、50g/mol以上1,500g/mol以下であることがより好ましく、100g/mol以上1,200g/mol以下であることが更に好ましい。
なお、架橋点間分子量とは、架橋構造の網目の大きさを示す。
【0028】
本開示における架橋点間分子量は、以下の方法により測定するものとする。
上記破断伸度の測定に用いるサンプル片と同じものを作製し、ゴム領域となる温度(250℃)まで昇温し、DMA(Dynamic Mechanical Analyzer:(株)ユービーエム製Rheogel-E4000HP)を用い、10Hzで0.01%の歪みを与えて測定し貯蔵弾性率(E’)を求める。
続いて、下記式を用い、架橋点間分子量(Mc)を求める。
Mc=3×ρ×R×T/E’
Mc=g/mol、ρ(密度)=g/cm
3、R(ガス定数)=J/(mol・K)、T(測定温度)=K、E’=Pa
【0029】
また、上記硬化物の架橋点間分子量の分布が、1%以上30%以下であることが好ましく、2%以上25%以下であることがより好ましく、3%以上20%以下であることが更に好ましい。上記分布が1%以上であると、立体成型性により優れ、また、上記分布が30%以下であると、耐摩耗性により優れる。
【0030】
本開示における架橋点間分子量の分布は、以下の方法により測定するものとする。
上記架橋点間分子量の測定に使用するサンプル片10個について上記架橋点間分子量の測定を行い、10個のサンプル片で測定した架橋点間分子量の各値において、最大値と最小値との差を平均値で割り、百分率で示した値を架橋点間分子量の分布とする。
【0031】
また、上記硬化物のガラス転移温度(Tg)は、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、90℃を超えることが好ましく、95℃以上200℃以下であることがより好ましく、100℃以上180℃以下であることが更に好ましい。
本開示における硬化物や樹脂等のガラス転移温度(Tg)は、ASTMD3418−8に準拠して、示差走査熱量計(パーキンエルマー社製:DSC−7)を用い、測定された主体極大ピークより求めることができる。この装置(DSC−7)の検出部の温度補正はインジウムと亜鉛との融点を用い、熱量の補正にはインジウムの融解熱を用いる。サンプルは、アルミニウム製パンを用い、対照用に空パンをセットする。昇温速度10℃/minで昇温し、200℃で5分間ホールドし、200℃から20℃まで液体窒素を用いて−10℃/分で降温し、20℃で5分間ホールドし、再度20℃から200まで10℃/分で昇温して得られた、2度目の昇温時の吸熱曲線から解析したオンセット温度をTgとした。
【0032】
上記硬化物は、膜状であることが好ましく、例えば、積層基材上に成型せずにフラットな膜を形成すると、ハードコート膜として使用できる。また、本開示に係る積層シートは、硬化物及び積層基材の伸長性に優れるため、フラット膜を立体成型することも好ましい。
更に、積層基材上に凹凸等の形状の硬化物を形成することも好ましい。例えば、半円柱状に賦型するとレンチキュラーレンズとして使用でき、三角柱状に賦型するとプリズムシート又は輝度向上膜として使用でき、半球状に多数賦型するとマイクロレンズシートとして使用でき、また、国際公開第2015/102100号の
図4Aのようなノコギリ刃状の形状を同心円状に形成するとプリズムシートとして利用できる。
【0033】
上記硬化物は、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、環構造を有する樹脂を含むことが好ましく、イソシアヌル環構造、トリシクロデカン環構造、トリアジン環、及び、シクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの環構造を有する樹脂を含むことがより好ましく、イソシアヌル環構造、及び、トリシクロデカン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの環構造を有する樹脂を含むことが更に好ましく、イソシアヌル環構造を有する樹脂を含むことが特に好ましい。
【0034】
更に、上記硬化物は、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、窒素原子を含む基を有する構成単位を有する樹脂を含むことが好ましい。
【0035】
上記「窒素原子を含む基」とは、窒素原子を有していれば特に制限はなく、例えば、アミノ基、アミド基、イミノ基、及び、シアノ基等、並びに、イミダゾール環基、イミダゾリン環基、ピロリジン環基、ピラゾール環基、モルホリン環基、及び、トリアジン環基等の複素環基などが挙げられる。
上記窒素原子を含む基を有する構成単位は、密着性及び立体成型性の観点から、下記式1で表される構成単位、下記式2で表される構成単位、下記式3で表される構成単位及び下記式4で表される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位であることが好ましく、下記式1で表される構成単位、下記式2で表される構成単位及び下記式3で表される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位であることがより好ましく、下記式1で表される構成単位及び下記式2で表される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位であることが特に好ましい。
【0037】
式3中、R
5及びR
6はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、R
7は、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、X
2は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を表し、R
5、R
6及びR
7の少なくとも一つは、炭化水素基の炭素原子と結合する窒素原子を含み、X
2、R
5、R
6及びR
7は、同一でも異なっていてもよく、互いに環を形成してもよい。
式4中、R
1及びR
2はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜6の炭化水素基を表し、R
3及びR
4はそれぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、X
1は、水素原子又は炭素数1〜5の炭化水素基を表し、R
1、R
2、R
3、R
4及びX
1は、同一でも異なっていてもよく、互いに環を形成してもよい。
【0038】
上述したように、上記式1で表される構成単位は、N−ビニルカプロラクタム(より詳しくは、N−ビニル−ε−カプロラクタム)を重合してなるモノマー単位であり、上記式2で表される構成単位は、N−ビニルピロリドン(より詳しくは、N−ビニル−2−ピロリドン)を重合してなるモノマー単位である。
また、上記式3で表される構成単位は、後述する式(II)で表される化合物を重合してなるモノマー単位であり、上記式4で表される構成単位は、後述する式(I)で表される化合物を重合してなるモノマー単位である。
上記式3におけるX
2、R
5、R
6及びR
7は、後述する式(II)で表される化合物におけるX
2、R
5、R
6及びR
7と同義であり、好ましい態様も同様である。
上記式4におけるR
1、R
2、R
3、R
4及びX
1は、後述する式(I)で表される化合物における、R
1、R
2、R
3、R
4及びX
1と同義であり、好ましい態様も同様である。
【0039】
また、上記窒素原子を含む基を有する構成単位は、後述する窒素原子を含む官能基及び重合性基を有する重合性化合物を重合してなる構成単位であることが好ましい。
上記樹脂は、上記窒素原子を含む基を有する構成単位を1種単独で有していても、2種以上を有していてもよい。
また、上記樹脂は、上記式1で表される構成単位及び上記式2で表される構成単位の両方を有していても、いずれか一方を有していてもよいが、上記式1で表される構成単位、又は、上記式2で表される構成単位を有していることが好ましい。
上記樹脂における上記窒素原子を含む基を有する構成単位の含有量は、耐熱性及び密着性の観点から、特定樹脂の全質量に対し、1質量%〜60質量%であることが好ましく、1.5質量%〜35質量%であることがより好ましく、2質量%〜30質量%であることが更に好ましく、2.5質量%〜9質量%であることが特に好ましい。
【0040】
また、上記硬化物は、立体成型性及び耐摩耗性の観点から、イソシアヌル環構造、トリシクロデカン環構造、トリアジン環、及び、シクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの環構造と、上記式1で表される構成単位、上記式2で表される構成単位及び上記式3で表される構成単位よりなる群から選ばれる少なくとも1種の構成単位とを有する樹脂を含むことが特に好ましい。
【0041】
また、上記硬化物は、耐熱性の観点から、架橋構造を有する樹脂を含むことが好ましい。
上記架橋構造は、後述する多官能(メタ)アクリレート化合物のような多官能重合性化合物を共重合することにより、容易に特定樹脂へ導入することができる。
更に、上記樹脂は、耐熱性及び密着性の観点から、アクリル樹脂鎖を有することが好ましく、ポリメチルメタクリレート鎖を有することがより好ましい。
また、上記樹脂は、耐熱性及び密着性の観点から、グラフト鎖を有することが好ましい。更に、上記グラフト鎖が、アクリル樹脂鎖であることが好ましく、ポリメチルメタクリレート鎖であることがより好ましい。
上記アクリル樹脂鎖の数平均分子量Mnは、1,000以上20,000以下であることが好ましく、2,000以上10,000以下であることがより好ましい。
【0042】
また、上記樹脂のガラス転移温度(Tg)は、耐擦傷性及び立体成型性の観点から、90℃を超えることが好ましく、95℃以上200℃以下であることがより好ましく、100℃以上180℃以下であることが更に好ましい。
【0043】
上記硬化物における上記樹脂の含有量は、透明性、耐熱性及び密着性の観点から、硬化物の全質量に対し、80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることがより好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。なお、含有量の上限値は100質量%である。
【0044】
本開示に係る積層シートは、上記硬化物を上記積層基材の一方の面のみに有していても、上記積層基材の両面に有していてもよいが、意匠性及び用途の広さの観点から、上記硬化物を上記積層基材の一方の面のみに有していることが好ましい。
上記硬化物は、上記積層基材の少なくとも一方の面の全面に有していても、その一部にのみ有していてもよい。
上記硬化物は、光学部材であることが好ましく、光学部材として好適に用いることができる所望の形状を有していることがより好ましい。
上記光学部材としては、凸状レンズとしてシリンドリカルレンズ、プリズムレンズ、半球状のマイクロレンズ、フレネルレンズ、複数の凸状レンズ(シリンドリカルレンズ)が一方向に並列したレンチキュラーレンズ等が挙げられる。
部材の形態は、点状(ドット状)、柱状(線状)のいずれでもよいが、積層基材との接触面積の大きな柱状であることが好ましい。
柱状における柱の断面は、多角形、半円形等特に制限はないが、上記部材内で発生した残留応力を均等に分散し易い半円形がより好ましい。
中でも、上記硬化物(光学部材)は、レンズであることが好ましく、シリンドリカルレンズであることがより好ましい。
【0045】
上記硬化物が、レンチキュラーレンズである場合、レンチキュラーレンズのサイズは、ピッチが、50μm以上1,000μm以下が好ましく、80μm以上600μm以下がより好ましく、100μm以上300μm以下が更に好ましい。
また、レンチキュラーレンズの高さは、10μm以上500μm以下が好ましく、15μm以上400μm以下がより好ましく、20μm以上300μm以下が更に好ましい。
レンチキュラーレンズの高さ、ピッチとも既述の範囲内であることで、レンチキュラーレンズのサイズが適性となり、ロール状に巻いたり、積層シートを切り出して枚葉シートして積み上げたりする際に、レンチキュラーレンズと接触することに起因する後述の印刷層の傷つき、印刷層の密着性の低下が抑制される。更に、ロール状に巻いたり、積層シートを切り出して枚葉シートして積み上げたりする際に、レンチキュラーレンズと印刷層の滑り性が良好となり、取り扱い性が良好となる。
【0046】
また、上記硬化物は、後述する硬化性組成物を硬化して形成されたものであることが好ましい。
【0047】
<印刷層>
本開示に係る積層シートは、意匠性の観点から、上記積層基材の上記硬化物が配置された側とは反対側に、印刷層を有していてもよい。
印刷層の形成は、積層シートの使用目的に応じて、常法により行われる。
印刷層を形成する印刷方法としては、オフセット印刷法、スクリーン印刷法、インクジェット印刷法、平版印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、印刷ロールを用いる印刷法、などが挙げられる。中でも、レンチキュラーのチェンジング印刷の細線の正確さの観点から、オフセット印刷法、インクジェット法等が好ましい。
【0048】
印刷方式としては、種々選択可能である。
印刷は、例えば、紫外線硬化性インク(UVインク)を、スクリーン印刷機、インクジェット記録装置等を用いて積層基材の面上に付与することで行うことができる。紫外線硬化性インクとしては、例えば、(メタ)アクリレート化合物を含有するUVインクを用いることができる。
また、例えば、オフセット印刷装置を用いて行うことができる。オフセット印刷では、複数の装置を用いることで、多色画像が形成される。オフセット印刷法を適用する場合には、印刷用インクとして、例えば、油性オフセットインク又は紫外線硬化型オフセットインクを用いることができる。
【0049】
積層基材上に印刷する場合、金属製ドクターブレードを備えた合成ゴム製の印刷ロールを用いて印刷することができる。この場合、印刷ロールとドクターブレードとの間には積層基材表面に適用されるインクが充填され、印刷ロールが回転することによって、印刷ロールと接する積層基材の表面に未硬化のインクが付着する。この方法によれば、積層基材が凹凸を有する場合、積層シートの凸状部へも印刷を行うことができる。
印刷ロールを用いた印刷法では、積層シートの搬送装置によって積層シートを印刷ロールの回転方向と同じ方向に例えば、5m/分等の特定の速度で移動させ、印刷を行うことができる。
【0050】
印刷用インクは、印刷方法に好適なインクを選択して用いればよい。
印刷に用いるインクの粘度は、特に制限はなく、例えば、平版印刷用インクであれば15Pa・s〜30Pa・s、フレキソ印刷用インクであれば、1Pa・s〜5Pa・s、スクリーン印刷用インクであれば2Pa・s〜5Pa・s、グラビア印刷用インクであれば1Pa・s〜5Pa・sなどの範囲とすることができる。インクの粘度は、これらの範囲に限定されるものではない。
【0051】
なお、積層基材の印刷層を形成する側の表面には、印刷インクの受容性を向上させるため、公知のインク受容層を設けてもよい。インク受容層は、印刷層形成に用いられる印刷インクの特性に応じて形成すればよい。
基材と印刷層との接着力を高める観点から、基材の印刷層を形成する面には、表面処理(例えばコロナ放電処理等)が施されてもよい。
インク受容層としては、例えば、インク受容層を形成するための調製液を基材に付与することにより設けられてもよい。
【0052】
調製液の付与は、例えば、塗布により行うことができる。
調製液は、インク受容層を形成するための固形成分と溶媒とを含むことが好ましい。また、インク受容層は、樹脂を含むことが好ましく、樹脂の少なくとも一部は架橋剤で架橋されていることが好ましい。したがって、調製液に含まれる固形成分として樹脂及び架橋剤を含む態様が好ましい。
インク受容層の形成に用いる樹脂としては、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びウレタン樹脂よりなる群から選択された少なくとも1種の樹脂であることが好ましく、特にオフセット印刷により視差画像を形成する場合に有利である。
【0053】
<熱可塑性樹脂層(バッキング層)>
本開示に係る積層シートは、立体成型性、及び、後述する射出成形時の印刷層保護の観点から、上記印刷層上に、熱可塑性樹脂層(「バッキング層」ともいう。)を更に有することが好ましい。
上記熱可塑性樹脂層に用いる熱可塑性樹脂としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、ポリ(4−メチル−1−ペンテン)等のオレフィン系熱可塑性樹脂;塩化ビニル、塩素化ビニル樹脂等の含ハロゲン系熱可塑性樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系熱可塑性;ポリスチレン、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリロニトリル共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体等のスチレン系熱可塑性樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ナイロン6、ナイロン66、ナイロン610等のポリアミド;ポリアセタール;ポリカーボネート樹脂;ポリフェニレンオキシド;ポリフェニレンスルフィド;ポリエーテルエーテルケトン;ポリサルホン;ポリエーテルサルホン;ポリオキシベンジレン;ポリアミドイミド;アクリル樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、立体成型性、及び、射出成形時の印刷層保護の観点から、スチレン系熱可塑性樹脂が好ましく、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体(ABS樹脂)が特に好ましい。
【0054】
熱可塑性樹脂層の厚みは、熱成型時の追従性、及び、射出成形時の印刷層保護の観点から、0.10mm〜0.50mmであることが好ましく、0.20mm〜0.45mmであることがより好ましく、0.35mm〜0.45mmであることが特に好ましい。
【0055】
熱可塑性樹脂層の形成方法は、特に制限はないが、熱可塑性樹脂シートを熱融着又は接着剤により上記印刷層に貼り付ける方法が好適に挙げられる。
中でも、熱可塑性樹脂シートをホットメルト接着剤により上記印刷層に貼り付ける方法が好ましい。すなわち、本開示に係る積層シートは、上記印刷層と上記熱可塑性樹脂層との間にホットメルト接着剤からなるホットメルト層を有することが好ましい。
本開示に用いられる接着剤、特にホットメルト接着剤は、特に制限はなく、公知のものを用いることができるが、印刷層の耐熱性や、熱可塑性樹脂層の形成に用いる熱可塑性樹脂シートに応じ、適宜選択すればよい。
また、上記ホットメルト層の厚みは、特に制限はなく、十分な接着性が得られる厚さであればよい。
【0056】
<保護層>
本開示に係る積層シートは、光学部材等である硬化物を傷等より保護するため、上記硬化物上に保護層を更に有していてもよい。
保護層の材質としては、熱可塑性樹脂が好適に挙げられる。
保護層の形成には、上述した熱可塑性樹脂層に用いられる熱可塑性樹脂のシート又はフィルムを好適に用いることができ、上記シート又はフィルムを貼り付ければよい。
保護層の厚みは、30μm〜400μmの範囲であることが、シート取り扱いの観点から好ましい。
また、保護層の形状は、上記硬化物の形状に追従していても、追従していなくともよい。例えば、上記硬化物上に、シート状の保護層が、上記硬化物の形状に追従せず設けられている態様であってもよい。
【0057】
上記保護層は、硬化物の少なくとも一部に密着していればよい。
また、保護層の形成は、印刷層の形成よりも前であっても、後であってもよい。
【0058】
また、本開示に係る積層シートは、上述した構成以外に、その他の公知の構成を有していてもよい。
【0059】
<レンチキュラーシートの構成>
本開示に係る積層シートの一例として、レンチキュラーシートの構成について説明する。
レンチキュラーシートは、例えば
図1に示すように、インキ受容層を付設してレンチキュラー画像が付される構成のレンチキュラー加飾シートであってもよい。レンチキュラーシートは、レンチキュラー表示に適した画像上に、半円筒形の表面を有する凸状のシリンドリカルレンズが一方向に並列したレンチキュラーレンズを有することにより、見る角度によって異なる画像を表示する表示媒体(レンチキュラー表示体)である。
図1は、レンチキュラーシートの一例を示す概略図である。
【0060】
図1に示すレンチキュラーシート10は、半円筒形状の表面を有する複数の凸状レンズ(シリンドリカルレンズ)12Aが一方向に並列したレンチキュラーレンズ12と、レンチキュラーレンズ12の凸状レンズ12Aの半円筒形状の表面とは反対側に配置されたレンチキュラー画像14と、を有している。
なお、x方向は、レンズの幅方向を示し、y方向は、レンズの長手方向を示している。
【0061】
レンチキュラーシートは、半円筒形状の表面を有する複数のシリンドリカルレンズが並列したレンチキュラーレンズ層を有していることが好ましい。シリンドリカルレンズ1本当たりの幅は、特に限定されず、目的によってレンズのピッチ幅を選択すればよい。
シリンドリカルレンズ1本当たりの幅は、通常、1インチ(2.54cm)当たりのレンズ数を表すLPI(Line Per Inch)で表されることが多い。例えば100LPIは、1インチ当たり100本(100列)のシリンドリカルレンズが並列することを示しており、レンズのピッチは254μmである。1インチ当たりの線数(レンズの配列数)は、値が大きいほどレンズのピッチは小さくなり、精細度が向上する。
精細度の低いレンチキュラーシート(例えば60LPIなど)は、観察位置が比較的遠い図柄を表示するポスターなどに使うには適しているが、名刺など小さい文字情報を読ませることを目的とする場合は、レンチキュラーレンズ層を構成するレンズが、2.54cm(1インチ)当たり100列以上並列していることが好ましい。一方、レンチキュラー画像の解像度の観点から、レンチキュラーレンズ層を構成する凸状レンズの配列数は、2.54cm当たり200列(200LPI)以下であることがより好ましい。
【0062】
図1では、レンチキュラー画像14は、2つの表示用画像をそれぞれ別々に表示するための表示用画像列14A,14Bと、隣接する表示用画像列14A,14Bの間に挿入された補間画像列14Cと、を含む画像列群から構成されている。
具体的には、各表示用画像からストライプ状に抽出された表示用画像列14A,14Bが対応する位置の凸状レンズ12Aごとに隣接して配列されており、隣接する表示用画像列14A,14Bの間に、隣接する表示用画像列14A,14Bの色が互いに異なる位置において、隣接する表示用画像列14A,14Bの一方の色と他方の色との間にある色(補間色)を有する補間画像列14Cが挿入されている。
【0063】
〔硬化性組成物〕
以下に、上記硬化物の形成に好適に用いることができる硬化性組成物の一例を挙げて具体的に説明するが、本開示に用いることができる硬化性組成物は以下の例に限定されない。
以下、本開示に好適に用いることができる硬化性組成物に用いられる各成分について、詳述する。これら成分を適宜含有することにより、硬化物において上記破断伸度及び架橋点間分子量を満たす硬化性組成物が得られる。
【0064】
<重合性化合物>
本開示に用いられる硬化性組成物は、重合性化合物を含有することが好ましい。
重合性化合物としては、エチレン性不飽和化合物が好ましい。
エチレン性不飽和化合物としては、環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、及び、N−ビニル化合物が好ましく挙げられる。
また、本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物、及び、N−ビニル化合物を含むことが好ましい。
【0065】
<<環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物>>
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
上記環構造としては、特に制限はないが、ヘテロ原子を環員として一部有していてもよい脂肪族炭化水素環構造、及び、ヘテロ原子を環員として一部有していてもよい脂肪族炭化水素環を2以上縮環した縮合環構造が好ましく挙げられる。また、上記脂肪族炭化水素環は、5員環又は6員環であることが好ましい。
上記ヘテロ原子としては、窒素原子、酸素原子、及び、硫黄原子が挙げられ、窒素原子が特に好ましい。
中でも、上記環構造としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、イソシアヌル環構造、トリシクロデカン環構造、トリアジン環、及び、シクロヘキサン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1つの環構造が好ましく、イソシアヌル環構造、又は、トリシクロデカン環構造がより好ましく、イソシアヌル環構造が特に好ましい。
また、本開示における環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、イソシアヌル環構造以外のウレタン結合を含まないことが好ましい。
【0066】
上記環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物は、2官能以上であれば特に制限はないが、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、3官能〜6官能であることが好ましく、3官能又は4官能であることがより好ましく、3官能であることが特に好ましい。
【0067】
上記環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物として具体的には、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ジ(メタ)アクリロキシアルキル化イソシアヌレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド(以下、エチレンオキサイドを「EO」ともいう。)変性トリ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性ジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
中でも、イソシアヌル酸エチレンオキサイド変性トリ(メタ)アクリレートが特に好ましい。
【0068】
上記環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物の分子量は、200以上1,500以下であることが好ましい。
本開示に用いられる硬化性組成物は、環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物における環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物の含有量としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、硬化性組成物の全質量に対して、1質量%以上75質量%以下が好ましく、10質量%以上70質量%以下がより好ましく、15質量%以上40質量%以下が更に好ましい。
【0069】
<<窒素原子を含む官能基及び重合性基を有する重合性化合物>>
本開示に用いられる硬化性組成物は、上記環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物以外の、窒素原子を含む基及び重合性基を有する重合性化合物(以下、「特定重合性化合物」ともいう。)を含有することが好ましい。
ここで、「重合性基」とは、エチレン性不飽和結合を有する基であることが好ましい。
中でも、特定重合性化合物としては、密着性及び熱成形性の観点から、N−ビニル化合物、及び、後述する式(I)又は式(II)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが好ましく、N−ビニル化合物、及び、後述する式(II)で表される化合物よりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることがより好ましく、N−ビニルピロリドン、及び、N−ビニルカプロラクタムよりなる群から選ばれた少なくとも1種の化合物であることが特に好ましい。
N−ビニルピロリドンの例としては、N−ビニル−2−ピロリドン等が挙げられる。また、N−ビニルカプロラクタムの例としては、N−ビニル−ε−カプロラクタム等が挙げられる。
【0070】
特定重合性化合物の分子量としては、密着性及び熱成形性の観点から、300以下が好ましく、250以下がより好ましく、150以下が更に好ましく、100以下が特に好ましい。なお、特定重合性化合物の分子量の下限値は、特に制限はないが、50以上であることが好ましい。
特定重合性化合物の分子量は、化学式から算術計算により求められる。
【0071】
特定重合性化合物は、SP値の極性項の成分(δp)が5MPa
(1/2)〜15MPa
(1/2)の範囲であることが好ましい。重合性化合物のδpが、基材のδpと近いと優れた密着性を示す。この場合、基材としては、δpが5MPa
(1/2)〜15MPa
(1/2)である樹脂基材が好ましい。樹脂基材の詳細については後述する。基材が例えばポリメチルメタクリレート(PMMA)の場合、PMMAのδpは10.5MPa
(1/2)であるため、特定重合性化合物を含むことによる、硬化物の基材への密着向上の効果が高い。
特定重合性化合物のδpとしては、7MPa
(1/2)〜13MPa
(1/2)が好ましく、10.5MPa
(1/2)〜11MPa
(1/2)が好ましい。
SP値の極性項の成分(δp)は、Hansen溶解度パラメーターにより算出される値である。Hansen溶解度パラメーターは、分子間の分散力エネルギー(δd)、分子間の極性エネルギー(δp)、及び分子間の水素結合性エネルギー(δh)により構成される。算出には、HSPiP(version 4.1.07)ソフトウェアを用いる。
【0072】
特定重合性化合物としては、熱成形性及び硬化性の観点から、以下の式(I)又は式(II)で表される化合物を好適に挙げることができる。
【0074】
式(I)において、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基を表す。R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X
1は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5の炭化水素基を表す。R
1、R
2、R
3、R
4及びX
1は、同一でも異なっていてもよく、互いに環を形成してもよい。
【0075】
R
1及びR
2における、置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜2の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
上記のうち、R
1及びR
2は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましく、水素原子がより好ましい。
また、R
3及びR
4における、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基、及びシクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基が挙げられる。R
3及びR
4は、互いに結合して環を形成していてもよい。R
3及びR
4が結合して形成される環としては、飽和複素環が好ましい。
【0076】
炭化水素基が有してもよい置換基としては、以下に示す置換基群Tにおける基が挙げられる。
(置換基群T)
アルキル基(好ましくは炭素数(「炭素原子数」ともいう。)1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6のものであり、例えばメチル基、エチル基、イソプロピル基、tert−ブチル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ヘキサデシル基、シクロプロピル基、シクロペンチル、シクロヘキシル基などが挙げられる。)、アルケニル基(好ましくは炭素原子数2〜10、より好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜6であり、例えばビニル基、アリル基、2−ブテニル基、3−ペンテニル基などが挙げられる。)、アルキニル基(好ましくは炭素原子数2〜10、より好ましくは2〜8、特に好ましくは2〜6であり、例えばプロパルギル基、3−ペンチニル基などが挙げられる。)、アリール基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基などが挙げられる。)、アミノ基(好ましくは炭素原子数0〜15、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜6であり、例えばアミノ基、メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジベンジルアミノ基などが挙げられる。)、アルコキシ基(好ましくは炭素原子数1〜10、より好ましくは1〜8、特に好ましくは1〜6であり、例えばメトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基などが挙げられる。)、アリールオキシ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルオキシ基、2−ナフチルオキシ基などが挙げられる。)、アシル基(好ましくは炭素原子数1〜15、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜8であり、例えばアセチル基、ベンゾイル基、ホルミル基、ピバロイル基などが挙げられる。)、アルコキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8であり、例えばメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは炭素原子数7〜20、より好ましくは7〜16、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニル基などが挙げられる。)、アシルオキシ基(好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8であり、例えばアセトキシ基、ベンゾイルオキシ基などが挙げられる。)、アシルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8であり、例えばアセチルアミノ基、ベンゾイルアミノ基などが挙げられる。)、
【0077】
アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数2〜15、より好ましくは2〜10、特に好ましくは2〜8であり、例えばメトキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素原子数7〜15、より好ましくは7〜13、特に好ましくは7〜10であり、例えばフェニルオキシカルボニルアミノ基などが挙げられる。)、スルホニルアミノ基(好ましくは炭素原子数1〜15、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜8であり、例えばメタンスルホニルアミノ基、ベンゼンスルホニルアミノ基などが挙げられる。)、スルファモイル基(好ましくは炭素原子数0〜15、より好ましくは0〜10、特に好ましくは0〜8であり、例えばスルファモイル基、メチルスルファモイル基、ジメチルスルファモイル基、フェニルスルファモイル基などが挙げられる。)、カルバモイル基(好ましくは炭素原子数1〜15、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜8であり、例えばカルバモイル基、メチルカルバモイル基、ジエチルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基などが挙げられる。)、アルキルチオ基(好ましくは炭素原子数1〜15、より好ましくは1〜10、特に好ましくは1〜8であり、例えばメチルチオ基、エチルチオ基などが挙げられる。)、アリールチオ基(好ましくは炭素原子数6〜20、より好ましくは6〜15、特に好ましくは6〜12であり、例えばフェニルチオ基などが挙げられる。)、スルホニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメシル基、トシル基などが挙げられる。)、スルフィニル基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばメタンスルフィニル基、ベンゼンスルフィニル基などが挙げられる。)、ウレイド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばウレイド基、メチルウレイド基、フェニルウレイド基などが挙げられる。)、リン酸アミド基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜16、特に好ましくは1〜12であり、例えばジエチルリン酸アミド、フェニルリン酸アミドなどが挙げられる。)、ヒドロキシ基、メルカプト基、ハロゲン原子(例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、シアノ基、スルホ基、カルボキシル基、ニトロ基、スルフィノ基、ヒドラジノ基、イミノ基、ヘテロ環基(好ましくは炭素原子数1〜20、より好ましくは1〜12であり、ヘテロ原子としては、例えば窒素原子、酸素原子、硫黄原子、具体的には例えばイミダゾリル基、ピリジル基、キノリル基、フリル基、ピペリジル基、モルホリノ基、ベンゾオキサゾリル基、ベンズイミダゾリル基、ベンズチアゾリル基などが挙げられる。)。
【0078】
R
3及びR
4は、炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基であり、更に好ましくは炭素数1〜6の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。飽和複素環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
上記のうち、R
3及びR
4は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、R
3及びR
4が互いに結合して形成されたモルホリン環も好ましい。
X
1における、置換基を有してもよい炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1又は2の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。炭化水素基が有してもよい置換基については、既述の置換基群Tにおける基が挙げられる。
上記のうち、X
1は、水素原子又は炭素数1若しくは2のアルキル基が好ましい。
【0080】
式(II)において、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基を表す。R
7は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基を表す。X
2は、水素原子又は置換基を有してもよい炭素数1〜5の炭化水素基を表す。R
5、R
6及びR
7の少なくとも一つは、炭化水素基の炭素原子と結合する窒素原子を含む。X
2、R
5、R
6及びR
7は、同一でも異なっていてもよく、互いに環を形成してもよい。
【0081】
R
5及びR
6における、置換基を有してもよい炭素数1〜6の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基等のアルキル基が挙げられる。中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜2の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
上記のうち、R
5及びR
6は、それぞれ独立に、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
また、R
7における、置換基を有してもよい炭素数1〜20の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、等のアルキル基が挙げられる。中でも、R
7は、炭素数1〜15の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜10の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
上記のうち、R
7は、水素原子又は炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
上記の炭化水素基が有してもよい置換基としては、既述の置換基群Tにおける基が挙げられる。
【0082】
ここで、R
5、R
6及びR
7の少なくとも一つは、窒素原子を含む基であり、すなわち、炭化水素基の炭素原子と結合する窒素原子を含み、R
5、R
6及びR
7の少なくとも一つは、窒素含有基で置換された炭化水素基、又はシアノ基が好ましい。窒素含有基で置換された炭化水素基としては、窒素含有基で置換された炭素数1〜10のアルキル基が好ましい。
R
5、R
6及びR
7における、窒素含有基で置換された炭化水素基は、−C
nH
2nNR
11R
12が好適に挙げられる。R
11及びR
12は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜4のアルキル基、又は−COOR
13を表し、R
13は炭素数1〜4のアルキル基を表す。R
11及びR
12は、互いに結合して環を形成していてもよい。R
11、R
12及びR
13における炭素数1〜4のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基が挙げられる。
窒素含有基で置換された炭素数1〜10のアルキル基としては、例えば、1−シアノエチル基、シアノメチル基、N,N−ジメチルアミノエチル基、メトキシカルボニルアミノエチル基等が挙げられる。
X
2における、置換基を有してもよい炭素数1〜5の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基が挙げられ、中でも、炭素数1〜4の炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数1〜2の炭化水素基である。炭化水素基としては、アルキル基が好ましい。
上記のうち、X
2は、水素原子又は炭素数1〜2のアルキル基が好ましい。
【0083】
本開示における特定重合性化合物の具体例を以下に示す。ただし、本開示における特定重合性化合物は、以下の具体例に制限されるものではない。
【0087】
特定重合性化合物の含有量は、耐熱性及び密着性の観点から、硬化性組成物の全質量に対し、1質量%〜60質量%であることが好ましく、5質量%〜50質量%であることがより好ましく、10質量%〜40質量%であることが特に好ましい。
【0088】
<<単官能(メタ)アクリレート化合物>>
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
単官能(メタ)アクリレート化合物としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物、及び、末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂が好ましく挙げられる。
【0089】
−脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物−
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を含むことが好ましい。
上記脂肪族炭化水素環構造としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、トリシクロデカン環構造、シクロヘキサン環構造、ノルボルネン環構造、及び、アダマンタン環構造よりなる群から選ばれた少なくとも1種の環構造が好ましく、トリシクロデカン環構造がより好ましい。
【0090】
脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物として、具体的には、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルオキシエチル(メタ)アクリレートなどのトリシクロデカン環構造を有する(メタ)アクリレート化合物、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどのシクロヘキサン環構造を有する(メタ)アクリレート化合物、イソボロニル(メタ)アクリレートなどのノルボルネン環構造を有する(メタ)アクリレート化合物、1−アダマンチル(メタ)アクリレートなどのアダマンタン環構造を有する(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
中でも、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、トリシクロデカン環構造を有する(メタ)アクリレート化合物が好ましく、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレートがより好ましい。
【0091】
本開示に用いられる硬化性組成物は、脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物における脂肪族炭化水素環構造を有する単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、硬化性組成物の全質量に対して、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上45質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0092】
−末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂−
本開示に用いられる硬化性組成物は、末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を含むことが好ましい。上記樹脂は、分子鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有しているため、他の重合性化合物、特に多官能(メタ)アクリレート化合物と併用することで、硬化性組成物全体における架橋密度を制御し、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性に優れる。
【0093】
上記樹脂としては、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリマーであればよく、例えば、(メタ)アクリル樹脂、ポリスチレン、ポリスチレン・メタクリレート(MS樹脂)、ポリスチレン・アクリロニトリル(AS樹脂)、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート、グリコール変性ポリエチレンテレフタレート、ポリ塩化ビニル(PVC)、熱可塑性エラストマー、又は、これらの共重合体、シクロオレフィンポリマー等の、主鎖構造の末端に(メタ)アクリロイル基を少なくとも1つ有するポリマーを挙げることができる。中でも、得られる硬化物の立体成型性及び耐磨耗性の観点から、末端に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂、又は、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリスチレンが好ましく、末端に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂がより好ましい。
また、末端に(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリル樹脂としては、耐摩耗性の観点から、末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリメチルメタクリレートが好ましい。
更に、末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂は、末端にメタクリロイル基を有することが好ましい。
また、末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂は、主鎖の末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であることが好ましく、主鎖の片末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂であることがより好ましい。
なお、本開示において、「主鎖」とは樹脂を構成する高分子化合物の分子中で相対的に最も長い結合鎖を表し、「側鎖」とは主鎖から枝分かれしている炭素鎖を表す。
【0094】
末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂としては、例えば、東亞合成(株)製のマクロモノマーシリーズ(例:マクロモノマーAA−6(メタクリロイル基を有するポリメチルメタクリレート)、マクロモノマーAS−6又はAS−6S(メタクリロイル基を有するポリスチレン)、マクロモノマーAN−6S(メタクリロイル基を有するポリスチレン・アクリロニトリル)、マクロモノマーAB−6(メタクリロイル基を有するポリブチルメタクリレート)等を用いることができる。
【0095】
末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の数平均分子量としては、得られる硬化物の立体成型性の観点から、1,000以上10,000以下が好ましく、3,000以上10,000以下がより好ましく、5,000以上10,000以下が更に好ましい。
なお、本開示における樹脂は、数平均分子量1,000以上のものであることが好ましい。
【0096】
末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂のガラス転移温度(Tg)としては、得られる硬化物の耐摩耗性の観点から、50℃以上が好ましく、80℃以上がより好ましい。また、得られる硬化物の樹脂基材への密着性及び立体成型性の観点から、Tgは250℃未満が好ましく、200℃以下がより好ましい。
【0097】
本開示に用いられる硬化性組成物は、末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物における末端に(メタ)アクリロイル基を有する樹脂の含有量としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、硬化性組成物の全質量に対して、0.5質量%以上50質量%以下が好ましく、5質量%以上45質量%以下がより好ましく、10質量%以上40質量%以下が特に好ましい。
【0098】
−他の単官能(メタ)アクリレート化合物−
本開示に用いられる硬化性組成物は、上述した以外かつ後述するウレタン(メタ)アクリレート以外の単官能(メタ)アクリレート化合物(他の単官能(メタ)アクリレート化合物)を含んでいてもよい。
他の単官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、2−エチル−2−ブチルプロパンジオール(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシルカルビトール(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、1−ナフチル(メタ)アクリレート、2−ナフチル(メタ)アクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ブトキシエチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、EO変性クレゾール(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシ化フェニル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、メトキシジプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシトリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールベンゾエート(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、パラクミルフェノキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、エピクロロヒドリン(以下、「ECH」ともいう。)変性フェノキシ(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシヘキサエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシテトラエチレングリコール(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、EO変性コハク酸(メタ)アクリレート、tert−ブチル(メタ)アクリレート、トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、EO変性トリブロモフェニル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0099】
本開示に用いられる硬化性組成物は、他の単官能(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の耐摩耗性の観点から、他の単官能(メタ)アクリレート化合物を、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、10質量%以下であることがより好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが更に好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0100】
本開示に用いられる硬化性組成物は、単官能(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物における単官能(メタ)アクリレート化合物の含有量としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、硬化性組成物の全質量に対して、1質量%以上80質量%以下が好ましく、15質量%以上75質量%以下がより好ましく、30質量%以上70質量%以下が特に好ましい。
【0101】
<<ウレタン(メタ)アクリレート化合物>>
本開示に用いられる硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含んでいてもよい。
本開示におけるウレタン(メタ)アクリレート化合物は、1以上のウレタン結合及び1以上の(メタ)アクリロイル基を有する化合物であるものとする。ただし、本開示におけるウレタン(メタ)アクリレート化合物のウレタン結合には、イソシアヌル環構造を含まないものとする。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物は、単官能であっても、多官能であってもよいが、2官能〜15官能のものが好ましく挙げられる。
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の重量平均分子量は、1,000以上100,000以下であることが好ましい。
【0102】
ウレタン(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチルグリコール等のポリエーテルポリオール;コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、フタル酸、テトラヒドロ(無水)フタル酸、ヘキサヒドロ(無水)フタル酸等の二塩基酸とエチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のジオールの反応によって得られるポリエステルポリオール;ポリε−カプロラクトン変性ポリオール;ポリメチルバレロラクトン変性ポリオール;エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のアルキルポリオール;エチレンオキシド付加ビスフェノールA、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA等のビスフェノールA骨格アルキレンオキシド変性ポリオール;エチレンオキシド付加ビスフェノールF、プロピレンオキシド付加ビスフェノールF等のビスフェノールF骨格アルキレンオキシド変性ポリオール、又はそれらの混合物とトリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等の有機ポリイソシアネートと2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレートから製造されるウレタン(メタ)アクリレート化合物、1,5,5−トリメチル−1−[(1−メタクリロイルオキシプロパン−2−イル)カルバモイルメチル]−3−(1−メタクリロイルオキシプロパン−2−イル)カルバモイルシクロヘキサン、1,5,5−トリメチル−1−[(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルメチル]−3−(2−メタクリロイルオキシエチル)カルバモイルシクロヘキサン等が挙げられる。
【0103】
また、ウレタン(メタ)アクリレート化合物の市販品としては、日本合成化学工業(株)製の紫光シリーズ、新中村化学工業(株)製のU−2PPA、U−4HA、U−6HA、U−6LPA、U−15HA、U−324A、UA−122P、UA5201、UA−512等;サートマー・ジャパン(株)製のCN964A85、CN964、CN959、CN962、CN963J85、CN965、CN982B88、CN981、CN983、CN996、CN9002、CN9007、CN9009、CN9010、CN9011、CN9178、CN9788、CN9893、ダイセル・サイテック(株)製のEB204、EB230、EB244、EB245、EB270、EB284、EB285、EB810、EB4830、EB4835、EB4858、EB1290、EB210、EB215、EB4827、EB4830、EB4849、EB6700、EB204、EB8402、EB8804、EB8800−20R等が挙げられる。
【0104】
本開示に用いられる硬化性組成物は、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性の観点から、ウレタン(メタ)アクリレート化合物を、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、4質量%未満であることが好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、2質量%以下であることがより好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、1質量%以下であることが更に好ましく、含有しないことが特に好ましい。
ウレタン(メタ)アクリレート化合物を含有すると、架橋点間分子量が大きくなりやすい。
【0105】
<<他の多官能(メタ)アクリレート化合物>>
本開示に用いられる硬化性組成物は、環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物及びウレタン(メタ)アクリレート化合物以外の多官能(メタ)アクリレート化合物(他の多官能(メタ)アクリレート化合物)を含んでいてもよい。
【0106】
他の多官能(メタ)アクリレート化合物の具体例としては、ジエチレングリコールモノエチルエーテルジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、アリロキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ECH変性ヘキサヒドロフタル酸ジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド(以下、「PO」ともいう。)変性ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ECH変性フタル酸ジ(メタ)アクリレート、ECH変性プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、シリコーンジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、EO変性トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ECH変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、EO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、PO変性グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、EO変性リン酸トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、PO変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジグリセリンエチレンオキサイド(EO)変性(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0107】
本開示に用いられる硬化性組成物は、他の多官能(メタ)アクリレート化合物を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物は、得られる硬化物の立体成型性の観点から、他の多官能(メタ)アクリレート化合物を、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、20質量%以下であることが好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、10質量%以下であることがより好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、5質量%以下であることが更に好ましく、含有しないか、又は、その含有量が、硬化性組成物の全質量に対して、1質量%以下であることが特に好ましい。
【0108】
また、本開示に用いられる硬化性組成物は、上述した以外のその他のエチレン性不飽和化合物を含んでいてもよい。
その他のエチレン性不飽和化合物としては、公知の重合性化合物、特に公知のエチレン性不飽和化合物を用いることができる。
【0109】
<重合開始剤>
本開示に用いられる硬化性組成物は、硬化性の観点から、重合開始剤を含むことが好ましい。
重合開始剤としては、公知の光重合開始剤、及び、公知の熱重合開始剤を用いることができる。
中でも、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、光重合開始剤が好ましく、光ラジカル重合開始剤がより好ましい。
【0110】
光ラジカル重合開始剤としては、構造上の制限は特になく、例えば、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フェニルフォスフィンオキサイド、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)ベンジル]フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)−2−モルフォリノプロパン−1−オン等を挙げることができる。
【0111】
光ラジカル重合開始剤は、上市されている市販品を用いてもよく、市販品の具体例として、BASF社製のイルガキュアシリーズ(例:IRGACURE TPO、IRGACURE 819、IRGACURE 651、IRGACURE 184、IRGACURE 1173、IRGACURE 2959、IRGACURE 127、IRGACURE 907等)が挙げられる。
【0112】
熱重合開始剤としては、公知のアゾ系化合物、公知の過酸化物系化合物等が挙げられる。上記アゾ系化合物としては、アゾビス系化合物を挙げることができる。また、上記過酸化物系化合物としては、ケトンパーオキサイド、パーオキシケタール、ハイドロパーオキサイド、ジアルキルパーオキサイド、ジアシルパーオキサイド、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート等を挙げることができる。
【0113】
本開示に用いられる硬化性組成物は、重合開始剤を、1種単独で含んでいても、2種以上を含んでいてもよい。
本開示に用いられる硬化性組成物における重合開始剤の含有量としては、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性の観点から、硬化性組成物の全質量に対して、0.05質量%以上10質量%以下が好ましく、0.1質量%以上10質量%以下がより好ましく、0.1質量%以上5質量%以下が更に好ましく、0.5質量%以上3質量%以下が特に好ましい。
【0114】
−他の成分−
本開示に用いられる硬化性組成物は、上記の成分以外に、必要に応じて、有機溶剤、無機粒子等の他の成分が含まれていてもよい。
有機溶剤としては、トルエン、メチルエチルケトン等が挙げられる。本開示に用いられる硬化性組成物は、上記の(メタ)アクリル化合物等の重合性化合物を含むため、重合性化合物が溶剤としての機能を兼ね、別途有機溶剤を含有していなくてもよい。
無機粒子としては、二酸化珪素(シリカ)等のいわゆるフィラーと称される粒子が挙げられる。無機粒子の例として、上市されている市販品として日産化学工業(株)製のオルガノシリカゾルMEK−STシリーズ(例:MEK−ST−40、MEK−ST−L等)が挙げられる。
【0115】
本開示に用いられる硬化性組成物は、活性放射線により硬化可能な組成物であることが好ましい。「活性放射線」とは、その照射により硬化性組成物中に重合開始種を発生させるエネルギーを付与できる放射線であり、α線、γ線、X線、紫外線、可視光線、電子線などを包含する。中でも、硬化感度及び装置の入手容易性の観点から、紫外線及び電子線が好ましく、紫外線がより好ましい。
また、本開示に用いられる硬化性組成物は、活性放射線硬化型の硬化性組成物であることが好ましく、油性硬化性組成物であることがより好ましい。本開示に用いられる硬化性組成物は、水及び揮発性溶剤をできるだけ含有しないことが好ましく、含有していたとしても、硬化性組成物の全質量に対し、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.5質量%以下であることが特に好ましい。
【0116】
(積層シートの製造方法)
本開示に係る積層シートの製造方法は、特に制限はないが、異なる2種以上の樹脂層からなる積層基材上に硬化性組成物を付与する工程と、活性放射線を照射して前記硬化性組成物を硬化させて硬化物を形成する工程とを含むことが好ましい。
本開示に係る積層シートの製造方法における積層基材及び硬化性組成物は、上述したものを好適に用いることができる。
上記硬化性組成物を付与する工程における硬化性組成物の付与量は、特に制限はなく、所望の部材を形成可能な量であればよい。
上記硬化性組成物を付与する方法としては、特に制限はなく、スピンコーティング法、グラビア印刷法、フレキソ印刷法、インクジェット法、ダイコーティング法、スリットダイコーティング法、キャップコーティング法、ディッピング法等、公知慣用の方法を用いることができる。
【0117】
上記硬化物を形成する工程では、硬化前にまず、硬化性組成物を、目的とする硬化物の形状に成型することが好ましい。成型は、目的とする形状が得られる方法であれば特に制限されないが、成型効率及び成型精度の観点から、金型又は木型等の型を用いた成型が好ましい。
具体的には、例えば、積層基材に硬化性組成物を塗布し、必要に応じて乾燥させた後、所望とするレンズ形状に加工された金型で型をつけながら基材側から活性放射線を照射し、硬化性組成物を硬化させてもよい。これにより、目的とする形状に成型された硬化物が安定的に得られる。
【0118】
活性放射線を発生させるための光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、蛍光灯、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。また、光源として半導体紫外発光デバイスを適用してもよく、小型、高寿命、高効率、及び低コストの点で、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)も好適である。
光源としては、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED又は青紫レーザーが好ましい。中でも、波長365nm、405nm若しくは436nmの光照射が可能な超高圧水銀ランプ、波長365nm、405nm若しくは436nmの光照射が可能な高圧水銀ランプ、又は、波長355nm、365nm、385nm、395nm若しくは405nmの光照射が可能なLEDがより好ましく、波長355nm、365nm、385nm、395nm又は405nmの光照射が可能なLEDが特に好ましい。
【0119】
活性放射線の照射量は、硬化性組成物の組成及び使用量により適宜選択すればよく、0.3J/cm
2以上5J/cm
2以下とすることが好ましい。
【0120】
活性放射線の照射には、上記の活性放射線を照射可能な光源を備えた公知の装置を選択して行うことができる。例えば、HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製のEXECURE 3000等の紫外線(UV)照射装置を用いてもよい。
【0121】
また、本開示に係る積層シートの製造方法は、上記各工程に加え、任意の他の工程を含むことができる。
例えば、本開示に係る積層シートの製造方法は、上記積層基材の硬化物を有する面とは反対側の面上に印刷を行って印刷層を形成する工程、上記印刷層上に熱可塑性樹脂層を形成する工程、上記硬化物上に保護層を設ける工程等が挙げられる。
上記印刷層を形成する工程における印刷方法としては、上述した印刷方法が好適に挙げられる。また、印刷に用いるインクとしては、上述したインクが好適に用いられる。また、上記印刷層を形成する工程は、活性放射線の照射前に行っても、照射後に行ってもよいが、照射後であることが好ましい。
上記熱可塑性樹脂層を形成する工程における熱可塑性樹脂層の形成方法は、上述した熱可塑性樹脂層の形成方法が好適に挙げられる。また、本開示に係る積層シートの製造方法は、上記印刷層上にホットメルト接着剤を付与する工程を更に含んでいてもよい。
上記保護層を設ける工程における保護層の形成方法は、上述した保護層の形成方法が好適に挙げられる。また、上記保護層を設ける工程は、活性放射線の照射前に行っても、照射後に行ってもよいが、照射後であることが好ましい。
【0122】
また、上記硬化物を形成する工程において、上記硬化性組成物を0.5℃以上10℃以下の範囲の温度ムラを有する状態で硬化することが好ましい。
上記範囲の温度ムラを有する状態で硬化することにより、硬化物において、架橋点間分子量の分布を容易に1%以上30%以下とすることができる。
上記温度ムラを有する状態で硬化する際における温度ムラの温度範囲は、得られる硬化物の立体成型性及び耐摩耗性、並びに、架橋点間分子量の分布を容易に調整する観点から、0.7℃以上8℃以下であることが好ましく、1℃以上6℃以下であることがより好ましい。
上記温度ムラの温度範囲は、硬化性組成物を硬化する際、硬化性組成物が付与された部分の基材表面を3×3の9等分し、各中央部の温度を測り、最高温度と最低温度との差で示す。
温度ムラの形成方法としては、例えば、積層基材表面における硬化性組成物への温風の吹き出し風量を幅方向に変える方法や、表面を複数の温度区分に分けて温度調節することが可能な基材を用いて温度分布を付与する方法や温度の異なる複数の放射熱源を用いる方法等が挙げられる。
1:風量を幅方向に変える方法としては、例えば吹き出しノズルを分割し、これに複数の温度に設定した熱風発生機から送風することで達成できる。
2:基材の温度を変える方法としては、複数のパネルヒーターを用意しこれらの設定温度を変えることで達成できる。また基材に熱媒を通し、この流路に邪魔板を設ける事で温度分布を付与することもできる。
3:複数の放射熱源としては、サンプルの上部や下部に複数設けた輻射熱源(例えばハロゲンランプ、赤外線(IR)ヒーターやニクロム線等)の温度を変えることによっても達成できる。
また、上記温度ムラを有する状態で硬化する工程における硬化は、光硬化(活性放射線の照射による硬化)であっても、熱硬化であってもよいが、光硬化であることが好ましい。
【0123】
本開示に係る積層シートの製造方法は、得られた積層シートをトリミングする工程を含むことが好ましい。
得られた積層シートを、所望の形状とするため不要な部分を除去する、打ち抜き加工や穴あけ加工、切断加工等のトリミング加工を好適に行うことができる。
トリミング方法としては、特に制限はなく、公知の方法により行うことができる。
【0124】
(3次元構造物)
本開示に係る3次元構造物は、本開示に係る積層シートの(好ましくは、熱成型又は真空成型などの手法により立体成型した)立体成型物である。
また、本開示に係る3次元構造物は、本開示に係るレンチキュラーシートの立体成型物であることが好ましい。
本開示に係る3次元構造物は、本開示に係る積層シートを用いて製造されたものであれば、成型方法に特に制限されるものではない。
本開示に係るレンチキュラーシートを用いる3次元構造物の製造方法としては、例えば、本開示に用いられる硬化性組成物を成型し、活性放射線を照射して硬化させ、樹脂基材上にシリンドリカルレンズを有するレンチキュラーシートを作製する工程(以下、「レンチキュラーシート作製工程」ともいう。)と、作製されたレンチキュラーシートを立体成型(好ましくは真空成型或いは加圧成型)することでレンチキュラーの立体成型体を得る工程(以下、「立体成型工程」ともいう。)とを含む方法が好ましく挙げられる。
また、上記レンチキュラーシート作製工程において、上述した温度ムラを有する状態で硬化する工程を含むことが好ましい。
【0125】
比較的高い温度に曝される成型に際して、立体成型性に優れる本開示に係るレンチキュラーシートが用いられるので、成型の際の熱で溶融して形状変形を生じにくく、かつ、成型時に延ばされた際に生じやすい亀裂(クラック)等の発生も抑えられる。
【0126】
−レンチキュラーシート作製工程−
上記レンチキュラーシート作製工程では、本開示に用いられる硬化性組成物を成型し、活性放射線を照射して硬化させ、積層基材上にシリンドリカルレンズを有するレンチキュラーシートを作製する。
本開示に用いられる硬化性組成物の詳細については、既述の通りであり、好ましい態様も同様である。
【0127】
また、本開示に用いられる硬化性組成物は、光ラジカル重合開始剤を含有することが好ましい。活性放射線が照射されることでラジカルが発生し、重合性化合物の重合反応が進行することによって硬化する。これにより、本開示に用いられる硬化性組成物の硬化物であるシリンドリカルレンズが形成される。
シリンドリカルレンズの成型に当たり、硬化性組成物を硬化させる前にあらかじめ積層基材を硬化性組成物と接触させた後、硬化性組成物の硬化を行うようにしてもよい。積層基材と硬化性組成物とを接触させた状態で硬化させることで、硬化収縮による密着性の向上がより期待でき、組成に由来する密着効果に加え、積層基材に対する密着性の向上がより効果的に図られる。
シリンドリカルレンズの積層基材に対する密着の観点から、積層基材に接触された硬化性組成物を硬化させることで、密着性により優れたシリンドリカルレンズを有するレンチキュラーシートが得られる。
【0128】
本工程では、硬化前にまず、硬化性組成物を、目的とするシリンドリカルレンズの形状に成型する。成型は、目的とする形状が得られる方法であれば特に制限されないが、成型効率及び成型精度の観点から、金型又は木型等の型を用いた成型が好ましい。
具体的には、例えば、所望とするレンズ形状に加工された金型を用意し、金型に硬化性組成物を流し込み、必要に応じて乾燥させた後、硬化性組成物を硬化させてもよい。これにより、目的とする形状に成型された成型物が安定的に得られる。
【0129】
活性放射線を発生させるための光源としては、水銀ランプ、メタルハライドランプ、UV蛍光灯、ガスレーザー、固体レーザー等が広く知られている。また、光源として半導体紫外発光デバイスを適用してもよく、小型、高寿命、高効率、及び低コストの点で、LED(Light Emitting Diode)及びLD(Laser Diode)も好適である。
光源としては、メタルハライドランプ、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、LED又は青紫レーザーが好ましい。中でも、波長365nm、405nm若しくは436nmの光照射が可能な超高圧水銀ランプ、波長365nm、405nm若しくは436nmの光照射が可能な高圧水銀ランプ、又は、波長355nm、365nm、385nm、395nm若しくは405nmの光照射が可能なLEDがより好ましく、波長355nm、365nm、385nm、395nm又は405nmの光照射が可能なLEDが特に好ましい。
【0130】
活性放射線の照射量は、レンチキュラーレンズ用硬化性組成物の組成及び使用量により適宜選択すればよく、0.3J/cm
2以上5J/cm
2以下とすることが好ましい。
【0131】
活性放射線の照射には、上記の活性放射線を照射可能な光源を備えた公知の装置を選択して行うことができる。例えば、HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製のEXECURE 3000等の紫外線(UV)照射装置を用いてもよい。
【0132】
−立体成型工程−
上記立体成型工程では、レンチキュラーシート作製工程で作製されたレンチキュラーシートを立体成型する。本工程では、レンチキュラーシートを成型できればよく、金型等の型を用いた成型加工に供されてもよい。
【0133】
立体成型は、熱成型又は真空成型などが好適に挙げられる。
真空成型する方法としては、特に制限されるものではないが、立体成型を、真空下の加熱した状態で行う方法が好ましい。
真空とは、室内を真空引きし、100Pa以下の真空度とした状態を指す。
立体成型する際の温度は、60℃以上の温度域が好ましく、80℃以上の温度域がより好ましく、100℃以上の温度域が更に好ましい。立体成型する際の温度の上限は、200℃が好ましい。
立体成型する際の温度とは、立体成型に供されるレンチキュラーシートの温度を指し、レンチキュラーシートの表面に熱電対を付すことで測定される。
【0134】
上記の真空成型は、成型分野で広く知られている真空成型技術を利用して行うことができ、例えば、日本製図器工業(株)製のFormech508FSを用いて真空成型してもよい。
【実施例】
【0135】
以下、本発明の実施形態を実施例により更に具体的に説明するが、本開示はその主旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は質量基準である。
【0136】
以下に本実施例で使用した化合物を示す。
【0137】
(1)環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物
・A−DCP(新中村化学工業(株)製:トリシクロデカンジメタノールジアクリレート・M−315(東亞合成(株)製:イソシアヌル酸EO変性トリアクリレート(イソシアヌル環構造を有する3官能アクリレート化合物)
・KUA−4I(ケーエスエム(株)製:4官能ウレタン(メタ)アクリレート(シクロヘキシル環を有する4官能ウレタンアクリレート)
・KUA−6I(ケーエスエム(株)製:シクロヘキシル環を含む6官能ウレタンアクリレート)
【0138】
(2)単官能(メタ)アクリレート化合物
・AA6(東亞合成(株)製AA−6:末端にメタクリロイル基を有するメタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート))
・ファンクリルFA513AS(FA513AS、日立化成(株)製:ジシクロペンタニルアクリレート)
・MMm(三井化学(株)製MMA:メチルメタクリレート)
【0139】
(3)N−ビニル化合物
・N−ビニルピロリドン(NVP、和光純薬工業(株)製)
・N−ビニル−ε−カプロラクタム(NVC、東京化成工業(株)製)
【0140】
(4)重合開始剤
<光重合開始剤>
・イルガキュア184(BASF社製:1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)・イルガキュアTPO(BASF社製:2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキサイド)
・イルガキュア819(BASF社製:ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド)
・イルガキュア651(BASF社製:2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン)
【0141】
(実施例1〜24、及び、比較例1〜3)
1.硬化性組成物の調製
表1又は表2に示す各成分を混合し、各硬化性組成物をそれぞれ調製した。
【0142】
2.硬化膜の作製
上記の硬化性組成物を、疎水化処理された2枚のガラス板間に挟み込み、下記条件にて紫外線(UV)照射を行い、ガラス板から剥がして膜厚50μmの樹脂硬化膜(単膜)を作製した。
UV照射は、紫外線(UV)照射装置(EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製)を用い、酸素を遮断して、25℃においてUV照射量1.0J/cm
2の条件にて硬化するまで照射した。
熱硬化は、酸素を遮断して、70℃に加熱した。
また、硬化時における温度ムラは、上記ガラス板を設置する基材に9分割したホットプレートを用い、これに温度差を設けることで表1又は表2に記載の温度分布(温度ムラ)を達成した。
【0143】
<100℃における破断伸度の測定>
得られた樹脂硬化膜(単膜)を、長手方向、幅方向に各々長さ50mm×幅10mmの大きさに打ち抜いてサンプル片を作製し、TENSILON RTC−1225A((株)エー・アンド・デイ製)を用い、下記の条件にて引張試験を行って下記式で表される破断伸度を測定した。破断伸度を3回測定し、それらの平均値を長手方向、幅方向で比較し大きい方を破断伸度とした。測定結果を表1及び表2に示す。
破断伸度(%)=100×(延伸で破断した長さ−チャック間距離)/(チャック間距離)
−条件−
・チャック間距離:30mm
・サンプル片の温度:100℃
・引張速度:1mm/秒
【0144】
<架橋点間分子量の測定、及び、架橋点間分子量の分布の測定>
硬化性組成物がゴム領域となる温度(250℃)まで昇温し、DMA(Dynamic Mechanikal Analyzer:ユービーエム社製Rheogel−E4000HP)を用い10Hzで0.01%の歪みを与えて測定し貯蔵弾性率(E’)を求めた。
求めた貯蔵弾性率(E’)より、下記式を用い、架橋点間分子量(Mc)を求めた。
Mc=3×ρ×R×T/E’
Mc=g/mol、ρ(密度)=g/cm
3、R(ガス定数)=J/(mol・K)、
T(測定温度)=K、E’=Pa
この測定を長手方向、幅方向に対し各々10本のサンプルについて上記測定を行い、最大値と最小値との差を10点の平均値で割り百分率で示した値を、架橋点間分子量の分布とした。長手方向10点、幅方向10点の架橋点間分子量の平均値を「架橋点間分子量」とした。また長手方向の架橋点間分子量の分布と、幅方向の架橋点間分子量の分布の平均値を「架橋点間分子量の分布」とした。
各算出値を表1及び表2に示す。
【0145】
3.積層シートの作製
(1)レンチキュラーシートの作製(半円柱の賦型、実施例1〜9及び11〜24、及び、比較例1〜3)
基材であるアクリル樹脂フィルム(アクリプレンHBS010P、フィルム厚125μm、三菱レイヨン(株)製:表1又は表2における基材に「単層1」と記載した。)上に上記硬化性組成物を下記レンズ高さになるように塗布した後、
図1に示すように半円筒形状の表面を有する複数本の凸レンズ部12Aを持つシリンドリカルレンズ12が並列したレンチキュラーレンズの形状〔高さ33μm、長手方向yの長さ80mm、1本のレンズ幅(レンズのピッチ)200LPI(Line Per Inch)〕に加工された金型(幅100mm×奥行100mm)を押し付け、塗布された上記硬化性組成物を成型しながら、アクリル樹脂フィルムを通して紫外線(UV)を、UV照射装置(EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製)を用いて、UV照射量1.0J/cm
2にて照射した(表1又は表2中に「1回露光」と記載した。)。照射後、脱型して、レンチキュラーシートを作製した。
なお、一部の実施例においては、下記に示すような多段露光を実施した。
レンズの反対面からメタルハライドランプ(GSユア(株)製MAL型)で表1又は表2に記載の照射量にて露光(プレ露光)した後、レンズ面側から、UV照射装置(EXECURE 3000、HOYA CANDEO OPTRONICS(株)製)を用いて、表1又は表2に記載の照射量にて露光(ポスト露光)した。これらは、表1又は表2中に「2回露光」と記載した。各回の露光量は実施例の表1又は表2中に記載した。
また、上記以外に下記基材シートも用いた。硬化層の塗布面は表1又は表2中に記載した。
【0146】
−積層1−
住化アクリル販売(株)製のテクノロイC001(PCとPMMAとの積層体、全厚み=139μm、厚み比=65%/35%)。:表1又は表2中に「積層1」と記載した。
【0147】
−積層2−
特許第4720832号公報の実施例1に準じて調製した。ただし、PC層は100μm、PMMA層は39μmとし、370nm以下の透過率<1%、420nm以上の透過率>90%となるように特開2010−234640号公報の実施例1のUV吸収剤を、アクリル層中に添加した。:表1又は表2中に「積層2」と記載。
【0148】
−積層3−
PMMA層及びPC層の厚みをそれぞれ7μm及び132μmとしたこと以外は、積層2と同様に製膜した。
【0149】
−積層4−
PMMA層及びPC層の厚みをそれぞれ68μm及び71μmとしたこと以外は、積層2と同様に製膜した。
【0150】
−積層5−
PMMA層及びPC層の厚みをそれぞれ56μm及び144μmとしたこと以外は、積層2と同様に製膜した。
【0151】
−積層6−
PMMA層及びPC層の厚みをそれぞれ14μm及び36μmとしたこと以外は、積層2と同様に製膜した。
【0152】
−積層7−
ポリカーボネート樹脂として、住友ダウ(株)製のカリバー301−10を使用し、塩化ビニル樹脂としてサンプラテック(株)製実験室用硬質塩化ビニル樹脂(SAN11034)を使用し、それぞれ275℃で溶融しフィードブロックダイを用いて積層した後、50℃のタッチロールで冷却固化し巻きとった。PC層及び塩化ビニル樹脂(PVC)層の厚みはそれぞれ49μm、90μmであった。
【0153】
−積層8−
ABS樹脂としてサンプラテック(株)製実験室用ABS樹脂(WEB11029)を使用し、塩化ビニル樹脂としてサンプラテック(株)製実験室用硬質塩化ビニル樹脂(SAN11034)を使用し、それぞれ220℃で溶融しフィードブロックダイを用いて積層した後、50℃のタッチロールで冷却固化し巻きとった。ABS樹脂層及び塩化ビニル樹脂層の厚みはそれぞれ49μm、90μmであった。
【0154】
−単層膜2(PC単層)−
ポリカーボネート樹脂として、住友ダウ(株)製のカリバー301−10を使用し単軸押出し機を用い275℃で溶融し、50℃のタッチロールで冷却固化し巻きとった。
【0155】
(2)平板状の積層シートの作製(賦型せず、実施例10)
上記(1)において、レンズ幅に加工された金型を用いず、平滑なロールを押し当てて作製した。これ以外は上記(1)と同様に実施し、平板状の積層シートを作製した。
【0156】
<立体成型性の評価>
5mm〜200mmの間で5mm間隔の直径を有する半球をそれぞれ用意した。
これらを用いて、硬化性組成物の硬化物のガラス転移温度において、得られた積層シートを上記半球形に真空成型し、表面に割れが発生した最小直径を、立体成型性の指標とした。なお、小さな直径まで割れが生じないほど立体成型性が高い。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0157】
<耐摩耗性の評価>
JIS K5600−5−10:1999(耐摩擦性)に準じ、得られたレンチキュラーシートの表面をシリコンカーバイド研磨紙で擦り、1往復あたりの摩耗量(mg/DS)で評価した。ただし、シリコンカーバイド研磨紙は、p180に代えて#1500を使用した。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0158】
<トリミング性の評価>
下記の方法でトリミング性を評価した。
一辺5cmの正方形の形に打ち抜くビク刃(トムソン刃)であって、各コーナー部に直径3mmの円形を付与したビク刃(刃角42度)を用いて、得られた積層シートの上記レンズ層又は硬化層が形成された面から打ち抜いた。
これをレンズ層又は硬化層側から光学顕微鏡で観察し、レンズ層に入ったクラックの本数を観察した。
評価結果を表1及び表2に示す。
【0159】
【表1】
【0160】
【表2】
【0161】
表1及び表2の結果から明らかなように、本開示に係る積層シートは、比較例の単層の基材を使用した積層シートに比べ、耐摩耗性及びトリミング性に優れていることが分かる。
また、実施例1〜実施例4に示すように、3〜6官能の上記環構造を有する多官能(メタ)アクリレート化合物を使用した場合、耐摩耗性により優れる。
実施例1及び実施例5〜実施例9に示すように、架橋点間分子量の分布が、0.5%以上10%以下である場合、立体成型性及び耐摩耗性により優れる。
実施例11、実施例12、比較例1及び比較例2に示すように、本開示に係る積層シートは、比較例の単層の基材を使用した積層シートに比べ、立体成型性及び耐摩耗性にもより優れる。
実施例12〜実施例14に示すように、多段露光を行うことにより、立体成型性により優れ、また、多段露光において、プレ露光量<ポスト露光量とすることにより、破断伸度が向上し、トリミング性がより優れる。
実施例14及び実施例19に示すように、積層基材のPMMA(アクリル樹脂)側に硬化物を形成する場合、破断伸度が向上し、トリミング性がより優れる。
実施例14、実施例20及び実施例21に示すように、積層される樹脂のTg差が20℃〜80℃であると、立体成型性、耐摩耗性及びトリミング性により優れる。
【0162】
2017年7月11日に出願された日本国特許出願第2017−135774号の開示は、その全体が参照により本明細書に取り込まれる。
本明細書に記載された全ての文献、特許出願、及び、技術規格は、個々の文献、特許出願、及び、技術規格が参照により取り込まれることが具体的かつ個々に記された場合と同程度に、本明細書中に参照により取り込まれる。