(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1及び特許文献2に示されているような、ロッドごとに駆動装置を備える装置においては、例えば特許文献1の
図1に示されるように、ロッドの数と同数の駆動装置を必要とするため、装置全体の大きさが大きく、重量も重くなり、さらにロッド間の距離も小さくできないという問題がある。
【0007】
特許文献3に示されているような、ロッドを下げるときにロックを解除して最下部まで落下させる方式の装置おいては、特定のロッドを少しだけ上げたり下げたりする操作はできないため、立体形状をわずかに変化させたい場合でも最初から作り直すことになり、リアルタイムな変化ができない。また、表現できる高低差はエレベータの可動長を超えられない。さらに、ロックには直交する流体チューブが用いられており、縦又は横の一列全体をロックすることになるため、ロックを任意のロッドの組み合わせについて解除することができず、これも更新に時間がかかる要因となる。加えて、ロックが解除されたロッドを下げるときには重力が利用されるため、装置を横向きに設置することができない。
【0008】
特許文献4に示されているような、ロッドを一列ごとに駆動する方式の装置においては、ロッド全体を一斉に動かすことができないため、リアルタイム性に欠けるという問題がある。
【0009】
以上に説明したように、従来の立体形状表現装置は、大掛かりなものであるか、さもなくばリアルタイム性に欠けるものであった。そこで、本発明においては、小型軽量で、かつリアルタイム性に優れた立体形状表現装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、その一態様において、立体表面形状を表現する立体形状表現装置を提供する。立体形状表現装置は、それぞれ長さ方向に変位可能な、先端部が立体形状を表現する、複数のロッドを備える。さらに、立体形状表現装置は、固定された位置に設けられた不動支持部材と、それぞれが個別にロッドの長さ方向に往復移動可能な1つ又は複数の可動支持部材とからなる、支持部材を備える。さらに、立体形状表現装置は、可動支持部材を移動させる、可動支持部材駆動部を備える。支持部材のそれぞれは、ロッドのそれぞれに対応する位置に、該ロッドを該支持部材に対して固定することが可能な、固定機構を備える。可動支持部材が移動しているときには、ロッドのそれぞれが、可動支持部材の1つが備える該ロッドに対応する前記固定機構によって該可動支持部材に対して固定されて該可動支持部材の移動に伴って変位するか、又は、前記不動支持部材が備える該ロッドに対応する前記固定機構によって前記不動支持部材に対して固定されて静止するように構成される。
【0011】
一実施形態においては、支持部材のそれぞれが備える前記固定機構は、対応するロッドを該支持部材に対して固定する固定状態と、対応するロッドを該支持部材から解放する解放状態とを切り替えることができる切換型固定機構である。
【0012】
一実施形態においては、いずれか1つの支持部材が備える固定機構は、対応するロッドに対して常に一定の抵抗力を及ぼす定常型固定機構であり、前記いずれか1つの支持部材以外の支持部材が備える固定機構は、対応するロッドを該支持部材に対して前記抵抗力より強い力で固定する固定状態と、対応するロッドを該支持部材から解放する解放状態とを切り替えることができる切換型固定機構であり、ロッドのそれぞれに対応する切換型固定機構のいずれかが固定状態であるときには、該ロッドは、固定状態の切換型固定機構を備える支持部材に対して固定され、ロッドのそれぞれに対応する切換型固定機構の全てが解放状態であるときには、該ロッドは、定常型固定機構を備える支持部材に対して固定されるように構成される。一実施形態においては、定常型固定機構を備える支持部材は、不動支持部材である。
【0013】
一実施形態においては、定常型固定機構は、ねじりばねの一端を支持部材に固定し、他端をロッドに当接させることによって、摺動するロッドに対して摩擦力を生ずることにより一定の抵抗力を有するように構成されたものである。また、一実施形態においては、切換型固定機構は、ロッドを把持することによって該ロッドを該支持部材に対して固定すること及び該ロッドの把持を解除することによって該ロッドを該支持部材から解放することができる把持機構である。
【0014】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、前記可動支持部材を1つのみ備える。固定機構が、ロッドの変位すべき向きと同じ向きに該可動支持部材が移動しているときには該ロッドを該可動支持部材に対して固定し、それ以外のときにはロッドを該可動支持部材から解放することによって、前記ロッドを所望の位置に変位させる。
【0015】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、随時互いに逆向きに移動するように構成された2つの可動支持部材を備える。固定機構が、ロッドの変位すべき向きと同じ向きに移動している一方の可動支持部材においてロッドを固定し、他方の可動支持部材においてはロッドを解放することによって、ロッドを所望の位置に変位させる。
【0016】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、移動速度の異なる複数の前記可動支持部材を備える。
【0017】
一実施形態においては、可動支持部材のそれぞれは、1回の往復移動の移動距離が単位長の2のべき乗倍となるように構成される。
【0018】
一実施形態においては、可動支持部材のそれぞれは、移動と停止とを繰り返すように構成される。該可動支持部材が備える固定機構の固定状態及び解放状態の切替えは、該可動支持部材が停止しているときに、不動支持部材に固定されて静止した状態のロッドに対して行われるように構成される。
【0019】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、往復移動の位相が互いに異なる少なくとも3つの可動支持部材を備える。可動支持部材のそれぞれが備える固定機構の固定状態及び解放状態の切替えは、該可動支持部材が移動しているときに、同じ向きに移動している別の可動支持部材に固定されている状態の前記ロッドに対して行われるように構成される。さらに一実施形態においては、立体形状表現装置は、往復移動の位相が互いに3分の1周期分異なる、3つの可動支持部材を備える。
【0020】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、所与の形状データに基づいて、ロッドの先端部が形状データに従った立体形状を表現するようにロッドの変位を制御する、制御部をさらに備える。
【0021】
一実施形態においては、ロッドは、格子状に配置される。
【0022】
一実施形態においては、支持部材のそれぞれは、板状であり、ロッドを貫通させる孔を有し、法線の方向が前記ロッドの長さ方向に一致するように互いに平行に設けられる。
【0023】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、ロッドの先端部に追随して変形するシートをさらに備える。一実施形態においては、立体形状表現装置は、シートに画像を投影する投影部をさらに備える。
【0024】
一実施形態においては、立体形状表現装置は、メインのマイクロプロセッサと、それぞれが複数の切換型固定機構を制御するための複数の個別のマイクロプロセッサとを含む、制御機構をさらに備える。個別のマイクロプロセッサのそれぞれは、メインのマイクロプロセッサからの指令に基づき、該個別のマイクロプロセッサが制御する切換型固定機構の数に相当する数の信号を連続的に出力することによって、切換型固定機構のそれぞれをリアルタイムに制御する。
【発明の効果】
【0025】
本発明による立体形状表現装置は、ロッドは可動支持部材に備えられた固定機構によって固定され、可動支持部材の移動に伴って変位されるため、駆動装置をロッドごとに備える必要はない。そのため、特許文献1及び特許文献2に示されるような、ロッドごとに駆動装置を備える装置と比較して、大幅な小型化及び軽量化が達成される。また、特許文献3に示される装置とは異なり、本発明による立体形状表現装置は、ロッドを可動支持部材の複数回の往復に亘って変位させることができるため、表現可能な高低差は可動支持部材の可動域の長さによる制限を受けない。したがって、立体表現の能力を変えずに可動支持部材の可動域を短くするような設計も可能であり、この点においても小型化に優れる。
【0026】
さらに、本発明による立体形状表現装置は、可動支持部材を用いて全てのロッドを一斉に変位させることが可能であり、任意に選択したロッドのみを一斉に変位させることも可能であるため、特許文献4に示されるような、一列ごとに駆動する装置と比較して、圧倒的に素早く所望の形状を表現することが可能であり、リアルタイム性に勝る。特に、可動支持部材を複数備える実施形態においては、ロッドごとに前進・後退・静止を任意に選択して同時に行うことや、可動支持部材の可動域長を超えて連続的にロッドを前進及び後退させることが可能となるため、リアルタイム性にさらに優れる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照しながら本発明の実施形態を詳細に説明する。本発明は、これらの実施形態に限定されるものではない。以下の説明においては、立体形状表現装置がロッドの先端側が真上を向くように設置された状態を想定し、ロッドの長さ方向を上下方向と表現し、上下方向におけるロッドの先端の向きを上向きと表現する。しかし、立体形状表現装置は必ずしもロッドの先端側が真上を向くように設置せずとも良い。
【0029】
図1は、本発明の一実施形態による立体形状表現装置1(以下、装置1)の全体構造の概念図である。
【0030】
装置1は、先端部において立体形状を表現するための、上下方向に延びる複数のロッド2を備える。ロッド2は格子状に規則的に配置することが好ましく、特に四角形格子を構成するように配置することが好ましいが、これに限らず、例えば三角形格子を構成するように配置しても良い。
【0031】
[可動支持部材及び不動支持部材]
装置1は、複数の支持部材を備える。それらのうち1つは、ロッド2の位置を一定に保ちながら支持するための不動支持部材3であり、装置1において固定された位置に設けられている。不動支持部材3以外の支持部材は、ロッド2を変位させながら支持するための可動支持部材4であり、それぞれが上下方向に往復移動することができる。
【0032】
本実施形態における支持部材のそれぞれは、概ね板形状をしており、ロッド2を貫通させるための孔を有する。孔にはそれぞれ固定機構5が備えられており、対応するロッド2を支持部材に固定することができる。固定機構5の詳細については後述する。これにより、ロッド2は、不動支持部材3に固定されているときには位置が保たれ、可動支持部材4に固定されているときには可動支持部材4の移動に伴って変位することになる。なお、装置1の小型化の観点からは、支持部材は概ね板形状であることが好ましいが、そうでなくとも、複数のロッド2を支持できる部材であれば良い。
【0033】
[可動支持部材の数及び移動様式]
装置1は、初期状態においては、全てのロッド2が最下部に変位されており、このときロッド2の先端部は一定の高さに揃い、平面形状を表現する。ロッド2の先端部21が表現する立体形状を変化させるときには、可動支持部材駆動部6を作動させ、それによって、装置1が備える1つ又は複数の可動支持部材4を、ロッド2の長さ方向に往復移動さる。その状態で、可動支持部材4が備える固定機構5を制御して、ロッド2を可動支持部材4に経時的に固定し又は解放することによって、ロッド2を所望の位置にまで変位させる。ロッド2を可動支持部材4に固定させるときには、その可動支持部材4に備えられたそのロッド2に対応する固定機構5を固定状態にする。ロッドを可動支持部材4から解放するときには、固定機構5を解放状態にする。ロッドを不動支持部材3に対して固定し又は解除するときも、不動支持部材3に備えられたそのロッド2に対応する固定機構5を同様に制御する。可動支持部材4の数及び移動の様式については様々な実施形態が考えられる。それらの実施形態のいくつかを以下に説明する。
【0034】
図2に示されるように、本発明の一実施形態である実施形態A1においては、装置1は、可動支持部材4を1つのみ備える。可動支持部材4は、その可動範囲を上下に往復移動するように構成される。ロッド2を上向きに変位させるときには、可動支持部材4が上向きに移動している間にロッド2を不動支持部材3から解放して可動支持部材4に固定する。これによって、ロッド2は、上向きに移動している可動支持部材4に伴って上向きに変位する。同様に、ロッドを下向きに変位させるときには、可動支持部材4が下向きに移動している間にロッドを不動支持部材3から解放して可動支持部材4に固定する。ロッドを変位させないときは、可動支持部材4がいずれの向きに移動している間も、ロッド2を可動支持部材4から解放して不動支持部材3に固定する。このとき、不動支持部材3は常に装置1に対して固定されているため、ロッド2は静止することになる。
【0035】
実施形態A1において、ロッド2が固定される支持部材の切り替えは、可動支持部材4を一時停止させ、その間に、固定機構5の固定状態と解放状態とを切り替えることによって行われる。より具体的には、不動支持部材3に固定され可動支持部材4から解放されているロッドを、不動支持部材3から解放し可動支持部材4に固定するときには、可動支持部材4が一時停止している状態において、まず、ロッド2を可動支持部材4に固定する。これにより、一時的に、ロッド2は不動支持部材3及び可動支持部材4の両方に固定された状態となる。次いで、ロッドを不動支持部材3から解放する。その後、可動支持部材4の移動を再開させる。このようにすれば、ロッド2が全ての支持部材から解放されてしまう瞬間がない。
【0036】
可動支持部材4の上下の移動は、後述する可動支持部材駆動部6によって駆動される。可動支持部材駆動部6は、例えば、ステッピングモータ602を備え、可動支持部材を任意の距離だけ上昇又は下降させることができる。
【0037】
実施形態A1において、初期状態にあるロッド2のそれぞれを所望の位置に変位させて、目的のパターンが形成された最終状態に到達するための、装置1の制御方法の具体例を、
図3の模式図を用いて説明する。この具体例においては、説明を簡潔にするため、ロッドは2本のみ示されている。
図3(A)に示されるように、初期状態においては、2本のロッド2(a)及び2(b)は最下位に位置している。この状態から、
図3(D)に示されるように、左側のロッド2(a)が初期状態から上に1cm変位し、右側のロッド202が初期状態から上に2cm変位した最終状態に到達させる。
【0038】
まず、工程1として、
図3(B)に示されるように、可動支持部材4が備える固定機構5(4a)及び5(4b)を固定状態に切り替えることによってロッド2(a)及び2(b)を可動支持部材4に固定し、固定機構5(3a)及び5(3b)を解放状態に切り替えることによってロッド2(a)及び2(b)を不動支持部材3から解放する。この状態で、可動支持部材4を1cm上昇させる。すると、ロッド2(a)及び2(b)は、可動支持部材4の上昇に伴って上昇し、最下位から上に1cmの位置に変位する。
【0039】
次に、工程2として、
図3(C)に示されるように、固定機構5(3a)を固定状態に切り替えることによってロッド2(a)を不動支持部材3に固定した上で、固定機構5(4a)を解放状態に切り替えることによってロッド2(a)を可動支持部材4から解放する。この状態で、可動支持部材4をさらに1cm上昇させる。すると、ロッド2(b)は、可動支持部材4の上昇に伴ってさらに上昇し、最下位から上に2cmの位置に変位するが、その間、ロッド2(a)は、最下位から上に1cmの位置に静止している。これにより、
図3(D)に示される最終状態に到達することができる。
【0040】
なお、上記工程1と上記工程2との間に、ロッド2(a)及び2(b)を制止させたまま可動支持部材4を下降させる工程を追加してもよい。具体的には、工程1の後、固定機構5(3a)及び5(3b)を固定状態に切り替えることによってロッド2(a)及び2(b)を不動支持部材3に固定し、固定機構5(4a)及び5(4b)を解放状態に切り替えることによってロッド2(a)及び2(b)を可動支持部材4から解放する。この状態で、可動支持部材4を最初の位置にまで下降させる。すると、ロッド2(a)及び2(b)は最下位から上に1cmの位置に静止したまま、可動支持部材4を下降させることができる。その後、工程2を行い、最終状態に到達することができる。このように、途中でロッド2を制止させたまま可動支持部材4を移動させることによって、可動支持部材4の可動域の長さに制約されることなく、ロッド2を変位させて立体形状を表現することができる。
【0041】
実施形態A1における、装置1の制御方法の別の例を説明する。この例においては、可動支持部材4の移動の往復距離が、適宜設定した単位長に対して2のべき乗倍(1倍、2倍、4倍、8倍、……)となるように制御される。倍率の上限も適宜設け、例えば32倍までとする。より具体的な制御方法は、次の通りである。最初、可動支持部材4を可動範囲の下端に位置させる。その後、単位長の1倍だけ上昇させてから、下端まで下降させる。次に、単位長の2倍だけ上昇させ、再び下端まで下降させる。これを同様に、倍率の上限の距離まで繰り返す。その間、各固定機構5の状態を適時制御することによって、各ロッド2を単位長の任意の倍数だけ上昇させることができる。例えば、単位長の10倍だけ上昇させたいロッド2は、可動支持部材4が単位長の2倍上昇するときと8倍上昇するときに可動支持部材4に固定して上昇させ、それ以外のときには不動支持部材3に固定して静止させておけば良い。より一般に、ロッド2をいつ可動支持部材4に固定して上昇させるべきかは、そのロッド2を単位長の何倍上昇させたいかを二進数で表現することにより自然に決定する。この制御方法によって、倍率の上限を32倍とした場合においては、ロッド2を単位長の63(=1+2+4+8+16+32)倍まで上昇させることができる。なお、単位長の63倍を超えてロッド2を上昇させたい場合には、可動支持部材4を単位長の32倍の距離移動させることを必要な回数だけ繰り返せば良い。また、倍率の上限となる距離を変えずに単位長を小さくすれば、移動回数をほとんど犠牲にせずに、高さの分解能を上げることができる。なお、上記の説明においては、可動支持部材4を小さい倍率から順に移動させるようにしたが、これに限らず、任意の順序で良い。
【0042】
別の実施形態(実施形態A2)においては、装置1は、2つの可動支持部材4を備える。各可動支持部材4は、その可動範囲を上下に往復移動するが、一方の可動支持部材41と他方の可動支持部材42とは随時互いに逆向きに移動するように構成されている。
図4は、本実施形態における可動支持部材41及び42の移動のタイミング図であり、横軸は時間を表し、縦軸は可動支持部材の位置を表す。本実施形態において、ロッド2を上向きに変位させるときには、ロッド2を2つの可動支持部材41、42のうち上向きに移動している一方に固定し、他方及び不動支持部材3からは解放する。これによって、ロッド2は、上向きに移動している可動支持部材4に伴って上向きに変位する。同様に、ロッド2を下向きに変位させるときには、ロッド2を2つの可動支持部材4のうち下向きに移動している一方に固定し、他方及び不動支持部材3からは解放する。ロッド2を変位させないときは、ロッドを両方の可動支持部材4から解放して不動支持部材3に固定する。このとき、不動支持部材3は常に装置1に対して固定されているため、ロッドは静止することになる。ロッド2が固定される支持部材の切り替えは、実施形態A1の場合と同様に、可動支持部材4が一時停止している間に行われる。本実施形態によれば、可動支持部材4が移動しているときには、必ずどちらかの可動支持部材4は各ロッド2にとって所望の向きに移動しているため、実施形態A1のように逆向きに移動している間待つ必要がなく、したがって、実施形態A1と比較すると半分程の時間で所望の形状を表現することができる。
【0043】
別の実施形態(実施形態A3)においては、装置1は、3つの可動支持部材4を備える。3つの可動支持部材4は、往復移動の位相が互いに3分の1周期分異なる(即ち、1往復にかかる時間の3分の1ずつ往復移動のタイミングがずれている)ように構成されている。
図5は、本実施形態における可動支持部材41、42及び43の移動のタイミング図であり、横軸は時間を表し、縦軸は可動支持部材の位置を表す。横軸におけるTは、往復移動の1周期を表す。この例においては、可動支持部材42は可動支持部材41から3分の1周期分遅延して動いており、可動支持部材43は可動支持部材42から3分の1周期分遅延して動いている。可動支持部材41は可動支持部材43から3分の1周期分遅延して動いていることになる。本実施形態においては、ロッド2が固定される支持部材の切り替えは、ロッド2の上昇中及び下降中にも行うことができる。例えば、
図6(A)に示されるように、ロッド2が上昇中の可動支持部材41に固定されて上昇している。可動支持部材42は、可動支持部材41から3分の1周期分遅延して動いているため、可動支持部材41の上昇中に上昇を開始する。即ち、可動支持部材42が上昇を開始してから可動支持部材41が上昇を終了するまでの間は、可動支持部材41及び42は共に上昇している状態にある。この状態において、まず、
図6(B)に示されるように、固定機構5(42)を固定状態にすることによって、ロッド2は一時的に可動支持部材41及び42の両方に固定されて上昇している状態となる。次いで、
図6(C)に示されるように、固定機構5(41)を解放状態とすることによって、ロッド2は可動支持部材41から解放されるが、可動支持部材42に固定されているため、上昇を続ける。このように、ロッド2が固定される支持部材の切り替えをロッドの上昇中に行うことによって、ロッド2を途中で静止させることなく、連続的に上昇させることができる。ロッド2を下降させる場合においても同様である。
【0044】
別の実施形態(実施形態A4)においては、装置1は、複数の可動支持部材4を備え、それぞれの可動支持部材4は、随時、同じ向きに異なる速度で移動する。
図7は、一例として4つの可動支持部材41〜44を備える装置1における、可動支持部材41〜44の移動のタイミング図であり、横軸は時間を表し、縦軸は可動支持部材の位置を表す。この例においては、可動支持部材41〜44は、それぞれ、単位速度の1倍、2倍、3倍、及び4倍で移動する。ロッド2を変位させるときには、ロッド2を、選択されたいずれか1つの可動支持部材4に固定し、可動支持部材4の移動に伴ってロッド2を変位させる。可動支持部材4の移動に伴ってロッド2を変位させる具体的な制御方法は、上述の実施形態A1における制御方法と同様である。変位させたい距離が小さいロッド2については、移動速度の遅い可動支持部材4を選択し、反対に、変位させたい距離が大きいロッド2については、移動速度の速い可動支持部材4を選択する。そうすることによって、一度の移動で様々な距離の変位を各ロッド2にもたらすことができ、その結果、所望の形状を表現するまでの時間を短縮することができる。
【0045】
[可動支持部材駆動部]
一実施形態としての装置1が備える可動支持部材駆動部6は、
図8に示されるように、次の機構から成る。可動支持部材4の4隅にはめねじ状の孔401が設けられ、それぞれに螺合するように、ロッド2と平行に設けられた4本のおねじ状の支柱601が貫通している。可動支持部材4は、支柱601によって支持されており、支柱601を同期して回転させることによって上下に移動する。支柱601は、下端部において1本のベルト603で連結されている。ベルト603をステッピングモータ602で駆動することによって、支柱601が同期して回転する。
図8に示される実施形態においては、装置1は、2つの可動支持部材4を備え、それぞれの可動支持部材4ごとに4本の支柱601が設けられているため、装置1全体では8本の支柱601(図の奥行方向に2本ずつ重なって示されている)を備える。可動支持部材駆動部6に関する別の実施形態においては、支柱601のうちのいくつかをおねじ状の支柱として孔401に螺合させて可動支持部材4を支持し、それ以外の支柱601はガイド用のただの棒状の支柱として可動支持部材4が昇降自在となるように構成しても良い。この場合には、ステッピングモータ602によっておねじ状の支柱のみを回転させるように構成すれば十分である。一実施形態においては、装置1が備える支柱601は可動支持部材4ごとに4本であることが望ましいが、これに限らず、装置の規模等に応じて適切な数の支柱601を備えるように設計すれば良い。
【0046】
[固定機構]
支持部材が備える固定機構5について説明する。
【0047】
固定機構5に関する一実施形態(実施形態B1)においては、固定機構5は、ロッド2を支持部材に対して固定する固定状態と、ロッド2を支持部材から解放する解放状態とを切り替えることができる、切換型固定機構であり、より具体的には、ロッド2を把持することによってロッド2を支持部材に対して固定すること及びロッド2の把持を解除することによってロッド2を支持部材から解放することができる、把持機構である。把持機構は、
図9に示されるように、複数の把持機構で共有されるアーム520と、把持機構ごとのソレノイド511及びねじりばね512で構成されるラチェット機構510とを備える。
【0048】
ねじりばね512は、ループ5121の中にロッド2を貫通させるように配置されており、一端5122が支持部材に固定されている。ねじりばね512を締めると、ループ5121の内径が狭まり、ロッド2の外周面を締め付けて把持することによって、ロッド2を支持部材に固定する。反対に、ねじりばね512を緩めると、ループ5121の内径が広がり、ロッド2との間に隙間ができることによって、ロッド2を支持部材から解放する。
【0049】
ソレノイド511は、通電されていない状態においてはプランジャ5111が突出しており、
図10(E)に示されるように、プランジャ5111がねじりばねの他端5123に当接することによって、締まった状態のねじりばね512が緩むのを妨げる。ソレノイド511に通電された状態においては、プランジャ5111は退避し、
図10(B)及び(C)に示されるように、ねじりばねの他端5123がソレノイド511の傍を通過することができる。
【0050】
アーム520は、
図9に示されるように、一端がクランク機構521を介して回転機構522に接続されており、
図9における左右方向に往復移動するようになっている。アーム520に設けられた孔523には、ねじりばねの他端5123の先端が係合しており、アーム520が右に移動したときには、アーム520は、ねじりばねの他端5123を右に引くことによって、ねじりばね512を締める
【0051】
把持機構の解放状態と固定状態とを切り替える方法について、
図10を参照しながら説明する。まず、把持機構を解放状態から固定状態に切り替える方法について説明する。
図10(A)は、解放状態の把持機構を表す。アーム520は
図10における左側に移動しており、ソレノイド511のプランジャ5111は突出している。最初に、
図10(B)に示されるように、ソレノイド511に通電し、プランジャ5111を退避させる(
図10(B)及び(C)において破線で示されるプランジャ5111は、退避した状態であることを表す)。次に、
図10(C)に示されるように、アーム520を右側に移動させる。すると、ねじりばねの他端5123がアーム520に引かれて、プランジャ5111の位置を越える。この状態で、
図10(D)に示されるように、ソレノイド511への通電を停止し、プランジャ5111を突出させる。最後に、
図10(E)に示されるように、アーム520を左側へ戻す。すると、ねじりばねの他端5123は、突出したプランジャ5111に当接するため、当初の位置にまで戻ることがない。このとき、ねじりばねのループ5121の内径は狭まった状態となっており、ロッド2(
図10において省略されている)を締め付けて固定する。以上の工程により、把持機構を解放状態から固定状態に切り替えることができる。
【0052】
反対に、把持機構を固定状態から解放状態に切り替える方法について説明する。これは、
図10(A)〜(E)の状態を逆向きに辿れば良い。
図10(E)は、固定状態の把持機構を表す。アーム520は図における左側に移動しており、ソレノイド511のプランジャ5111は突出している。最初に、
図10(D)に示されるように、アーム520を右側に移動させる。すると、ねじりばねの他端5123がアーム520に引かれて、プランジャ5111から離間し、プランジャ5111が移動可能となる。この状態で、
図10(C)に示されるように、ソレノイド511に通電し、プランジャ5111を退避させる。次に、
図10(B)に示されるように、アーム520を左側へ戻す。すると、ねじりばねの他端5123がプランジャ5111の位置を越えて、解放状態の位置にまで戻る。このとき、ねじりばねのループ5121の内径は広がった状態となり、ロッド2との間に隙間ができ、ロッド2を解放する。
図9(A)に示されるように、最後に、ソレノイド511への通電を停止し、プランジャ5111を突出させる。以上の工程により、把持機構を固定状態から解放状態に切り替えることができる。
【0053】
固定機構5に関する別の実施形態(実施形態B2)においては、支持部材のうちの1つが備える固定機構5は定常型固定機構であり、それ以外の支持部材が備える固定機構5は、実施形態B1と同様の切換型固定機構である。定常型固定機構は、常に、切換型固定機構がロッド2を固定する力より弱い一定の抵抗力をもって、ロッド2を支持部材に固定しようとする機構である。ロッド2が切換型固定機構によって他の支持部材に固定されていない状態においては、ロッド2は、定常型固定機構の抵抗力によって、定常型固定機構を備える支持部材に固定される。一方、ロッド2が切換型固定機構によって他の支持部材に固定されている状態においては、ロッド2は、定常型固定機構の抵抗力に逆らって、定常型固定機構を備える支持部材に対して相対的に移動することになる。
【0054】
より具体的には、定常型固定機構は、ねじりばねの一端を支持部材に固定し、他端をロッド2に当接させることによって、摺動するロッド2に対して摩擦力を生ずることにより一定の抵抗力を有するように構成されたものである。
【0055】
実施形態B2においては、不動支持部材3が定常型固定機構を備え、可動支持部材4が切換型固定機構を備えるように構成することが好ましい。
【0056】
なお、本発明の実施形態としては、これらに限られるものではないが、可動支持部材4に関する実施形態A1〜A4と、固定機構5に関する実施形態B1〜B2とを任意に組み合わせたものとすることができる。
【0057】
[制御機構]
装置1は、入力された形状データに基づいて、装置1が表現する立体形状を制御する、マイクロプロセッサを含む制御機構を備える。具体的には、制御機構は、形状データを処理して、各ロッド2が変位すべき位置を求め、現在の位置から移動すべき量を計算する。さらに、制御機構は、可動支持部材駆動部6を作動させ、切換型固定機構の状態を適時切り替えることによって、各ロッド2を所望の位置に変位させ、立体形状を表現する。さらに、制御機構は、装置1の使用者からの入力その他の外部からの入力信号に基づいて、形状データのうち装置1が表現する部分を拡大又は縮小させたり、平行移動させたり、回転させたりといった処理を施した結果に応じて、各ロッド2の変位すべき位置を再計算し、それに基づいて、表現する立体形状をリアルタイムに変更することができる。さらに、装置1は、各ロッド2の位置を検測する高さセンサを備えることができ、その場合には、制御機構は、高さセンサからの入力に応じて各ロッド2の位置を補正するように移動させることができる。さらに、装置1は、触覚フィードバック機構を備えることができ、その場合には、制御機構は、触覚フィードバック機構の制御を行うことができる。
【0058】
一実施形態においては、制御機構は、装置全体を制御するためのメインのマイクロプロセッサの他に、複数(例えば、4つ又は8つ)の切換型固定機構ごとに、その状態を制御するための個別のマイクロプロセッサを備える。この実施形態においては、個別のマイクロプロセッサのそれぞれは、制御する切換型固定機構の数に相当する数の信号を連続的に出力することによって、切換型固定機構のそれぞれをリアルタイムに制御するように構成される。さらに、一実施形態においては、メインのマイクロプロセッサと個別のマイクロプロセッサとの間はシリアル通信によって接続することができ、メインのプロセッサは、個別のマイクロプロセッサのそれぞれに付与された固有の識別子(即ち、アドレス)を指定することによって個別のプロセッサの1つを特定してデータを送信することにより、個別のプロセッサに指令を送ることができる。
【0059】
[立体形状の表現]
装置1は、ロッド2の先端部に追随して変形する、立体の表面形状を表現するシート8をさらに備えることができる。装置1は、シート8の上方に、シート8に映像を投写することができるプロジェクタ9を含む投影部さらに備えることができる。別の実施形態においては、立体形状表現装置は、シート8を備えないものとすることができる。この場合には、変位したロッド2自体が立体形状を表現する。この実施形態においては、ロッド2の先端を発光するようにしても良く、又は、プロジェクタ9からロッド2に映像を投写するようにしても良い。