(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、液晶ディスプレイは、中小型のサイズを中心に、製造・販売数量が増加している。また、中小型のサイズの液晶ディスプレイの需要の増加に伴い、ディスプレイの構造をより簡略化、及び光学部材を薄膜化させて、製造コストの低減、及びディスプレイパネルの厚みを薄型化することが求められている。
これらの課題に対して、粘着剤層を介して偏光板、位相差板などの光学部材を液晶セルなどの被着体に貼合するため、優れた粘着力を有する種々の粘着フィルムが提案されている(例えば、特許文献1〜2参照)。
特許文献1には、ブチルアクリレートなどを主成分のモノマーとし、アクリルアミド化合物などを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献2には、炭素数4〜8のアルキル基を有する(メタ)アクリレートを主成分のモノマーとし、カルボキシル基含有モノマー、及び窒素含有ビニルモノマーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
また、粘着剤層の屈折率を高めるために、種々の工夫をした粘着フィルムが提案されている(例えば、特許文献3〜9参照)。
特許文献3には、芳香族環を有し、屈折率1.51〜1.75のタッキファイヤーを含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献4には、芳香族環を含有するアクリル酸変性モノマーの共重合性ポリマーを含む粘着剤組成物を含有する粘着シートが記載されている。
特許文献5には、芳香族環を有する粘着付与樹脂と、芳香族リン酸エステル系可塑剤を含有する光学用粘着剤組成物が記載されている。
特許文献6には、アクリル系樹脂と、エチレン性不飽和基を1つ含有する芳香族化合物を含有する粘着剤組成物が硬化されてなる粘着剤が記載されている。
特許文献7には、芳香族モノマーを含有するアクリル系の粘着剤を介して、位相差フィルム及び複屈折板を互いに固着してなる光学部品が記載されている。
特許文献8には、芳香族ジイソシアネートと、芳香族ポリエステルジオールを反応させてなるウレタン樹脂を含む粘着剤組成物が記載されている。
特許文献9には、アクリル酸エステル共重合体等の粘着性樹脂中に、イソシアネート等の架橋剤と、ポリスチレン樹脂粒子等の樹脂粒子からなる光拡散剤が添加された光拡散性粘着剤組成物が記載されている。
特許文献10には、アクリル系共重合体からなるポリマー粒子を含む水系エマルジョンと、有機系微粒子(但し、前記ポリマー粒を除く)と、硬化剤と、4級アンモニウム化合物と、を含有する光拡散性粘着剤組成物が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年において、光学部材の層間を貼合するのに用いる粘着フィルムに対して要求されている事項は、光学部材の薄膜化を図るために、粘着剤層の厚さを20μm以下に薄くした粘着フィルムとすることである。
一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例していることから、粘着剤層の厚さを薄くすると、それに伴って粘着力が低下してしまう。
【0005】
しかし、近年求められている粘着フィルムは、粘着剤層の厚さを薄くしても、従来の粘着フィルム(粘着剤層の厚さが約30μmと厚い)と同等の粘着力を有しており、且つ、高温・高湿度の雰囲気下に長時間放置した後の耐久性についても、従来の粘着フィルムと同等以上の性能を有することが求められている。
また、粘着剤層の厚さを薄くできること、及び、エージング処理(恒温で養生を行うこと)を施す必要がない粘着剤層を形成できることから、粘着フィルムの基材を省いた粘着剤層のみからなる、「離型フィルム/粘着剤層/離型フィルム」の部材構成をした、NCF(Non Carrier Film)の形態とすることが求められている。
【0006】
また、従来の粘着フィルムでは、被着体に粘着フィルムを貼り合せた後に、エージング処理が施されるために、被着体と粘着剤層との密着性の向上を図ることができた。
しかしながら、NCFの形態をした粘着フィルムは、すでに粘着剤層のエージングを終了させていることから、被着体と粘着剤層との密着力が不足する。そのため、被着体の表面に対して、コロナ処理などの表面処理をする必要があるという問題があった。
これらの要求事項および問題を克服した粘着フィルムが、必要とされている。
【0007】
本発明は、従来の光拡散板の替わりに使用できる光学部材であって、光拡散シートの機能と帯電防止機能とを有し、ディスプレイの厚みの薄型化を図ることができる光拡散粘着剤層、及び光拡散粘着フィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、本発明の光拡散粘着剤層は、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、共重合可能な官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有共重合性モノマー、カルボキシル基含有共重合性モノマー、窒素含有ビニルモノマー、芳香族含有モノマーから選択した少なくとも1種以上とを含む共重合体と、架橋剤と、ケイ素微粒子と、融点が25〜50℃のイオン性化合物を含有させた粘着剤層にて光拡散粘着剤層を形成することを技術思想としている。
また、上記の課題を解決するため、本発明は、アクリル系ポリマーと、架橋剤と、ケイ素系粒子と、イオン性化合物とを含有する粘着剤組成物から形成されてなる光拡散粘着剤層であり、前記アクリル系ポリマーが、
前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計
を50〜99重量部の割合で含み、且つ、前記(A)アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上の合計の100重量部に対して、(B)ヒドロキシル基含有共重合性モノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1〜50重量部と、(C)ヒドロキシル基を含有しない窒素含有ビニルモノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1〜50重量部と、(D)芳香族含有モノマーの少なくとも1種以上の合計を0.1〜30重量部と、をカルボキシル基含有共重合性モノマーを含まないで共重合させた重量平均分子量20万〜250万の共重合体であり、前記粘着剤組成物が、前記アクリル系ポリマーの100重量部に対して、前記架橋剤としてイソシアネート化合物を0.01〜5重量部、前記ケイ素系粒子を0.1〜20重量部、前記イオン性化合物として融点が25〜50℃のイオン性化合物を0.1〜5重量部の割合で含有してなり、前記光拡散粘着剤層の厚みが20μmにおける透過率が90%以上、ヘイズ値が40%以上90%以下であり、表面抵抗率が1.0×10
12Ω/□以下であることを特徴とする光拡散粘着剤層を提供する。
【0009】
また、前記光拡散粘着剤層の厚みが20μmにおいて、ガラス板に対する粘着力が2.0N/25mm以上であることが好ましい。
【0010】
また、前記粘着剤組成物が、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、共重合可能な官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有共重合性モノマー、カルボキシル基含有共重合性モノマー、窒素含有ビニルモノマー、及び芳香族含有モノマーからなる群から選択した少なくとも1種以上とからなる重量平均分子量20〜250万の共重合体100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート化合物0.01〜5重量部、ケイ素系粒子を0.1〜20重量部、イオン性化合物を0.1〜5重量部を含有してなることが好ましい。
【0011】
また、前記光拡散粘着剤層のヘイズ値が、40%以上90%以下であることが好ましい。
【0012】
また、前記ケイ素系粒子が、シリカ粒子、シリカメラミンコアシェル粒子、シリコーン粒子からなる群から選ばれる1種以上であることが好ましい。
【0013】
また、本発明は、前記光拡散粘着剤層が、離型フィルムの片面に形成されてなり、離型フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルムの構成であることを特徴とする光拡散粘着フィルムを提供する。
【0014】
また、本発明は、基材の片面上に、前記光拡散粘着剤層が積層されてなることを特徴とする光拡散粘着フィルムを提供する。
【0015】
また、本発明は、前記光拡散粘着フィルムが用いられた、偏光板周辺部材用粘着フィルムを提供する。
【0016】
また、本発明は、前記光拡散粘着剤層が、偏光板と輝度向上フィルムとの層間に用いられた粘着フィルムを提供する。
【0017】
また、本発明は、光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記光拡散粘着剤層が積層されている粘着剤層付き光学フィルムを提供する。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、従来の要求事項および問題を克服して、従来の光拡散板の替わりに使用できる光学部材であって、光拡散シートの機能と帯電防止機能を有し、ディスプレイの厚みの薄型化を図ることができる光拡散粘着剤層、それを用いた光拡散粘着フィルムを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、好適な実施の形態に基づいて本発明を説明する。
本発明の光拡散粘着剤層は、光拡散機能を有する光拡散粘着剤層であり、前記光拡散粘着剤層が、アクリル系ポリマーと、ケイ素系粒子と、融点が25〜50℃のイオン性化合物とを含有する粘着剤組成物から形成されてなり、前記光拡散粘着剤層の透過率が90%以上、ヘイズ値が40%以上であり、屈折率が1.47以上で、表面抵抗率が1.0×10
12Ω/□以下であることを特徴とする。
また、前記光拡散粘着剤層のヘイズ値が、40%以上90%以下であることが好ましい。また、前記光拡散粘着剤層が、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、共重合可能な官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有共重合性モノマー、カルボキシル基含有共重合性モノマー、窒素含有ビニルモノマー、及び芳香族含有モノマーからなる群から選択した少なくとも1種以上と、を含む共重合体(アクリル系ポリマー)と、架橋剤と、ケイ素系粒子と、融点が25〜50℃のイオン性化合物を含有する粘着剤組成物から形成されてなることが好ましい。
また、前記粘着剤組成物が、粘着剤組成物のアクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対して、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上を50〜99重量部と、共重合可能な官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有共重合性モノマー、カルボキシル基含有共重合性モノマー、窒素含有ビニルモノマー、及び芳香族含有モノマーからなる群から選択した少なくとも1種以上の官能基含有モノマーを1〜50重量部とを含み、且つ、前記官能基含有モノマーの配合割合は、主成分のアルキル(メタ)アクリレートモノマーであるアルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの100重量部に対して、ヒドロキシル基含有共重合性モノマーを0.1〜50重量部と、カルボキシル基含有共重合性モノマーを0〜5重量部(含有する場合は0.1〜5重量部)と、窒素含有ビニルモノマーを0〜50重量部(含有する場合は0.1〜50重量部)と、芳香族含有モノマーを0〜30重量部(含有する場合は0.1〜30重量部)となることが好ましい。
また、共重合体の100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート化合物0.01〜5重量部、ケイ素系粒子を0.1〜20重量部、イオン性化合物を0.1〜5重量部を含有してなることが好ましい。
【0020】
アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレートなどの少なくとも1種以上が挙げられる。アルキル(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基は、直鎖、分枝状、環状のいずれでもよい。アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーは、粘着剤組成物のアクリル系ポリマー(共重合体)100重量部に対する割合が、50〜99重量部であることが好ましい。
【0021】
芳香族基を含有する共重合性ビニルモノマー(芳香族含有モノマー)としては、ベンジル(メタ)アクリレート、ナフチル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシブチル(メタ)アクリレート、2−(1−ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、2−(2−ナフチルオキシ)エチル(メタ)アクリレート、6−(1−ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、6−(2−ナフチルオキシ)ヘキシル(メタ)アクリレート、8−(1−ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレート、8−(2−ナフチルオキシ)オクチル(メタ)アクリレートなどの芳香族含有アクリル系モノマー、スチレン等の芳香族含有ビニルモノマーが挙げられる。屈折率が高い粘着剤層を得るためには、芳香族含有モノマーの少なくとも1種以上を配合することが好ましい。
これらの芳香族含有モノマーを、主成分のモノマーであるアルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーと混合することにより、得られる光拡散粘着剤層の屈折率を上昇させて調整でき、光学部材間の屈折率差を少なくして、全反射を低減させることにより全光線透過率を向上させることができる。本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に芳香族含有モノマーを含有させる場合は、主成分のアルキル(メタ)アクリレートモノマー100重量部の内、0.1〜30重量部の割合で含有させるのが好ましく、5〜30重量部の割合で含有させるのがより好ましい。
【0022】
窒素含有ビニルモノマーとしては、例えばN−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタム、(メタ)アクリロイルモルホリンなどの環状窒素ビニル化合物、N−エチル−N−メチル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−エチル−N−メチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−プロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N−メチル−N−イソプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノブチル(メタ)アクリレート、N,N−ジプロピルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのジアルキルアミノ(メタ)アクリレート、N−エチル−N−メチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−プロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N−メチル−N−イソプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミドなどのジアルキル置換アミノアルキル(メタ)アクリルアミドなどの少なくとも1種以上が挙げられる。
【0023】
前記窒素含有ビニルモノマーとしては、後述するヒドロキシル基含有共重合性モノマーと区別可能とするため、ヒドロキシル基を含有しないものが好ましく、ヒドロキシル基およびカルボキシル基を含有しないものがより好ましい。このようなモノマーとしては、上に例示したモノマー、例えば、N,N−ジアルキル置換アミノ基やN,N−ジアルキル置換アミド基を含有するアクリル系モノマー;N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどのN−ビニル置換ラクタム類;N−(メタ)アクリロイルモルホリンなどのN−(メタ)アクリロイル置換環状アミン類が好ましい。
【0024】
また、本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる窒素含有ビニルモノマーは、光拡散粘着剤層に対して必要な粘着力及び耐久性を付与させることができる。本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる窒素含有ビニルモノマーは、主成分のアルキル(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、4〜50重量部であることがより好ましい。
また、本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させる窒素含有ビニルモノマーとしては、N−ビニルピロリドン、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジブチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルカプロラクタムなどが特に好適に使用される。
【0025】
カルボキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー(カルボキシル基含有共重合性モノマー)としては、例えば、(メタ)アクリル酸、カルボキシエチル(メタ)アクリレート、カルボキシペンチル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシプロピルヘキサヒドロフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルフタル酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2−(メタ)アクリロイロキシエチルマレイン酸、カルボキシポリカプロラクトンモノ(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイロキシエチルテトラヒドロフタル酸などの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるカルボキシル基含有共重合性モノマーは、光拡散粘着剤層に対して必要な凝集力を付与させることができる。本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物にカルボキシル基含有共重合性モノマーを含有させなくてもよいが、含有させる場合、カルボキシル基含有共重合性モノマーの割合は、主成分のアルキル(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、0.1〜5重量部であることが好ましい。
【0026】
ヒドロキシル基を含有する共重合性ビニルモノマー(ヒドロキシル基含有共重合性モノマー)としては、例えば、8−ヒドロキシオクチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類や、N−ヒドロキシ(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリルアミド類などの少なくとも1種以上が挙げられる。
また、本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有共重合性モノマーは、得られる光拡散粘着剤層が透明導電性フィルムのITO表面などの腐食し易い被着体に対する腐食性に影響を与えるとされる、カルボキシル基含有共重合性モノマーの含有量を減らすための共重合性モノマーとして使用できる。そのため、ヒドロキシル基含有共重合性モノマーは、光拡散粘着剤層の粘着力を向上させ、且つ、腐食性を低減させることに役立てることができる。本発明に係わる光拡散粘着剤層において、粘着剤組成物に含有させるヒドロキシル基含有共重合性モノマーは、主成分のアルキル(メタ)アクリレートモノマー100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましい。
【0027】
本発明の光拡散粘着剤層に用いる粘着剤組成物のアクリル系ポリマーは、アルキル基の炭素数がC1〜C14のアルキル(メタ)アクリレートモノマーの少なくとも1種以上と、共重合可能な官能基含有モノマーとしてヒドロキシル基含有共重合性モノマー、カルボキシル基含有共重合性モノマー、窒素含有ビニルモノマー、及び芳香族含有モノマーからなる群から選択した少なくとも1種以上とからなる重量平均分子量20〜250万の共重合体が好ましい。
【0028】
共重合体の重合方法は、特に限定されるものではなく、溶液重合法、乳化重合法等、適宜、公知の重合方法が使用可能である。共重合体の重量平均分子量は、20万〜250万であることが好ましい。
前記共重合体は、アクリル系ポリマーであることが好ましく、(メタ)アクリレートモノマーや(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリルアミド類などのアクリル系モノマーを50〜100重量%含むことが好ましい。
【0029】
前記粘着剤組成物は、上記の共重合体(アクリル系ポリマー)に、光拡散剤としてケイ素系粒子を配合することで、所望の光学特性(透過率、ヘイズ値)を付与することができる。さらに、架橋剤や、適宜任意の添加剤を配合することで、必要とされる物性値などの特性を調整することができる。
【0030】
ケイ素系粒子としては、珪素を含む化合物の単独粒子又は複合粒子から選択でき、具体的には、シリカ粒子、シリカメラミンコアシェル粒子、シリコーン粒子、シリケートガラス粒子等が挙げられる。シリカ粒子、シリカメラミンコアシェル粒子、シリコーン粒子からなる群から選ばれる1種以上が好ましい。シリカメラミンコアシェル粒子は、メラミンのコアとシリカのシェルを有する複合粒子である。この複合粒子は、メラミン粒子の表面にコロイダルシリカの微小粒子(ナノ粒子)を密に充填した構造を有する。シリコーン粒子としては、シリコーン樹脂粒子、シリコーンゴム粒子、架橋シリコーン粒子等が挙げられる。
本発明の光拡散粘着剤層に用いる粘着剤組成物は、アクリル系ポリマー100重量部に対し、ケイ素系粒子を0.1〜20重量部を含有することが好ましい。
【0031】
架橋剤としては、例えば、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート等のジイソシアネート類のビュレット変性体やイソシアヌレート変性体、トリメチロールプロパンや、グリセリン等の3価以上のポリオールとのアダクト体などのポリイソシアネート化合物、金属系キレート化合物、エポキシ化合物などの少なくとも1種以上が挙げられる。また、紫外線など光架橋により粘着剤を架橋しても良い。
架橋剤を用いて共重合体を架橋する場合、共重合体が、架橋剤と架橋反応可能な官能基(架橋剤の種類にもよるが、ヒドロキシル基やカルボキシル基など)を有することが好ましく、また、これらの官能基を側鎖に有するモノマーを含有することが好ましい。また、粘着剤組成物が、共重合体100重量部に対して、架橋剤としてイソシアネート化合物0.01〜5重量部を、含有することが好ましい。
【0032】
帯電防止剤としては、融点が25〜50℃のイオン性化合物であれば特に制限はないが、例えば、カチオンまたはアニオンに、置換基として炭素数がC6〜C14のアルキル基を有する、ピリジニウム塩、イミダゾリウム塩、ピリミジニウム塩、ピラゾリウム塩、ピロリジニウム塩、及びアンモニウム塩、ホスホニウム塩、スルホニウム塩などのイオン性化合物が好ましい。これらの帯電防止剤は、融点が低いため、また、長鎖のアルキル基を有するため、アクリル共重合体との親和性は高いと推測される。
【0033】
融点が25〜50℃のイオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、ピリジニウムカチオン、イミダゾリウムカチオン、ピリミジニウムカチオン、ピラゾリウムカチオン、ピロリジニウムカチオン、アンモニウムカチオン等の含窒素オニウムカチオンや、ホスホニウムカチオン、スルホニウムカチオン等であり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF
6−)、チオシアン酸塩(SCN
−)、アルキルベンゼンスルホン酸塩(RC
6H
4SO
3−)、過塩素酸塩(ClO
4−)、四フッ化ホウ酸塩(BF
4−)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。常温(例えば25℃)で固体であることが好ましく、アルキル基の鎖長や置換基の位置、個数等の選択により、融点が25〜50℃のものを得ることができる。カチオンは、好ましくは4級含窒素オニウムカチオンであり、1−アルキルピリジニウム(2〜6位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級ピリジニウムカチオン、1,3−ジアルキルイミダゾリウム(2,4,5位の炭素原子は置換基を有しても無置換でもよい。)等の4級イミダゾリウムカチオン、テトラアルキルアンモニウム等の4級アンモニウムカチオン等が挙げられる。
融点が25〜50℃のイオン性化合物は、共重合体の100重量部に対して0.1〜5.0重量部含まれることが好ましい。
【0034】
融点が25〜50℃のイオン性化合物の具体例としては、1−オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1−ノニルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、2−メチル−1−ドデシルピリジニウム 六フッ化リン酸塩、1−オクチルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、1−ドデシルピリジニウム チオシアン酸塩、1−ドデシルピリジニウム ドデシルベンゼンスルホン酸塩、4−メチル−1−オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩等が挙げられる。
【0035】
本発明の光拡散粘着剤層に用いる粘着剤組成物は、帯電防止剤として、融点が25〜50℃のイオン性化合物のみを含んでもよいが、他の帯電防止剤を併用してもよい。融点が25〜50℃のイオン性化合物と併用される、他の帯電防止剤としては、特に限定されないが、アクリロイル基含有イオン性化合物が好ましい。アクリロイル基含有イオン性化合物としては、カチオンとアニオンを有するイオン性化合物であって、カチオンが、(メタ)アクリロイルオキシアルキルトリアルキルアンモニウム〔R
3N
+−C
nH
2n−OCOCQ=CH
2、ただし、Q=HまたはCH
3、R=アルキル〕等の(メタ)アクリロイル基含有カチオンであり、アニオンが、六フッ化リン酸塩(PF
6−)、チオシアン酸塩(SCN
−)、有機スルホン酸塩(RSO
3−)、過塩素酸塩(ClO
4−)、四フッ化ホウ酸塩(BF
4−)、F含有イミド塩(R
F2N
−)等の無機もしくは有機アニオンである化合物が挙げられる。F含有イミド塩(R
F2N
−)のR
Fとしては、トリフルオロメタンスルホニル基、ペンタフルオロエタンスルホニル基等のパーフルオロアルカンスルホニル基やフルオロスルホニル基が挙げられる。F含有イミド塩としては、ビス(フルオロスルホニル)イミド塩〔(FSO
2)
2N
−〕、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド塩〔(CF
3SO
2)
2N
−〕、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド塩〔(C
2F
5SO
2)
2N
−〕等のビススルホニルイミド塩が挙げられる。
アクリロイル基含有イオン性化合物を併用する場合、共重合体に対して0.1〜5.0重量%程度の割合で共重合または添加することが好ましい。
【0036】
アクリロイル基含有イオン性化合物の具体例としては、ジメチルアミノメチル(メタ)アクリレート 六フッ化リン酸メチル塩〔(CH
3)
3N
+CH
2OCOCQ=CH
2・PF
6−、ただし、Q=HまたはCH
3〕、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドメチル塩〔(CH
3)
3N
+(CH
2)
2OCOCQ=CH
2・(CF
3SO
2)
2N
−、ただし、Q=HまたはCH
3〕、ジメチルアミノメチルメタクリレート ビス(フルオロスルホニル)イミドメチル塩〔(CH
3)
3N
+CH
2OCOCQ=CH
2・(FSO
2)
2N
−、ただし、Q=HまたはCH
3〕等が挙げられる。
【0037】
その他の任意の成分として、シランカップリング剤、酸化防止剤、界面活性剤、硬化促進剤、可塑剤、充填剤、架橋触媒、架橋遅延剤、硬化遅延剤、加工助剤、老化防止剤などの公知の添加剤を適宜に配合することができる。これらは、単独で、もしくは2種以上を併せて用いてもよい。
【0038】
本発明の光拡散粘着剤層は、前記粘着剤組成物を基材や離型フィルムに塗布した後、粘着剤組成物を架橋することで得ることができる。
【0039】
光学部材の層間の貼合などに用いる粘着剤層は、薄い粘着剤層であることが望ましく、前記光拡散粘着剤層の厚さが1μm〜20μmであることが好ましい。また、一般に、粘着剤層の粘着力は、粘着剤層の厚さに略比例しているが、光拡散粘着剤層の厚みが20μmにおいて、ガラス板に対する粘着力が2.0N/25mm以上であることが好ましい。なお、粘着剤層の厚さが20μmでない場合、「厚さが20μmの時の粘着力」(N/25mm)は、粘着剤層の厚さをT(μm)、粘着剤層の粘着力をF(N/25mm)として、数式「(厚さが20μmの時の粘着力)=20×F/T」により推定することができる。
【0040】
本発明に係わる光拡散粘着剤層を、光学部材の層間の貼合などに用いる場合、光拡散粘着剤層の透過率が90%以上、ヘイズ値が40%以上であり、屈折率が1.47以上であることが好ましい。ヘイズ値が、40%以上90%以下であることが好ましい。光拡散粘着剤層と光学部材との界面での光線の反射を低減させるため、屈折率の差がなるべく小さいことが望ましい。このため、前記光拡散粘着剤層の屈折率が1.47〜1.50であることが好ましい。
【0041】
本発明に係わる光拡散粘着剤層の表面抵抗率が、1.0×10
12Ω/□以下であることが好ましい。表面抵抗率が大きいと、剥離時に帯電で発生した静電気を逃がす性能に劣るため、表面抵抗率を十分に小さくすることにより、粘着剤層を被着体が剥がす時に発生する静電気に伴って生じる剥離帯電圧が低減され、被着体の電気制御回路等に影響することを抑制することができる。
【0042】
本発明の光拡散粘着フィルムは、本発明の光拡散粘着剤層を、基材又は離型フィルムの片面上に形成することで製造することができる。
光拡散粘着剤層の形成に用いる基材フィルムや、粘着面を保護する離型フィルム(セパレーター)としては、ポリエステルフィルムなどの樹脂フィルム等を用いることができる。
基材フィルムには、樹脂フィルムの光拡散粘着剤層が形成された側とは反対面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤やコート剤、シリカ微粒子等による防汚処理、帯電防止剤の塗布や練り込み等による帯電防止処理を施すことができる。
【0043】
離型フィルムには、光拡散粘着剤層の粘着面と合わされる側の面に、シリコーン系、フッ素系の離型剤などにより離型処理が施される。
1つの光拡散粘着剤層の両面に、それぞれ離型フィルムの離型処理が施された面を合わせることで、「離型フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルム」の構成とすることもできる。この場合、両側の離型フィルムを、順次、あるいは同時に剥離して粘着面を表出することにより、光学フィルム等の光学部材と貼合可能になる。光学フィルムとしては、偏光フィルム、位相差フィルム、反射防止フィルム、防眩(アンチグレア)フィルム、紫外線吸収フィルム、赤外線吸収フィルム、光学補償フィルム、輝度向上フィルム等が挙げられる。例えば、偏光板と輝度向上フィルムとの層間に、光拡散粘着剤層を用いることが好ましい。
【0044】
本発明の光拡散粘着フィルムは、偏光板を主とする液晶ディスプレイの周辺部材用の各種光学フィルム、タッチパネル用の各種光学フィルム、電子ペーパー用の各種光学フィルム、有機EL用の各種光学フィルム等の貼り合せに用いることができる。
また、これらの光学フィルムの少なくとも一方の面に、前記光拡散粘着剤層が積層されてなる粘着剤層付き光学フィルムとすることができる。具体的には、「光学フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルム」、「光学フィルム/光拡散粘着剤層」、「光学フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム」、「光学フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルム」、「離型フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルム」等の構成が挙げられる。光学フィルムの両面に粘着剤層を設ける場合、その片面のみを光拡散粘着剤層とすることもできる。
例えば、「光学フィルム/光拡散粘着剤層/離型フィルム」のように、離型フィルムで保護された光拡散粘着剤層を有する場合、離型フィルムを剥がして、「光学フィルム/光拡散粘着剤層」のように光拡散粘着剤層を表出させ、他の光学フィルムと貼合することにより、光拡散粘着剤層が層間の貼合に用いられた「光学フィルム/光拡散粘着剤層/光学フィルム」のような構成が得られる。
【実施例】
【0045】
以下、実施例をもって本発明を具体的に説明する。
【0046】
<アクリル共重合体の製造>
[実施例1]
撹拌機、温度計、還流冷却器及び窒素導入管を備えた反応装置に、窒素ガスを導入して、反応装置内の空気を窒素ガスで置換した。その後、反応装置にブチルアクリレート90重量部、4−ヒドロキシブチルアクリレート1.0重量部、ジエチルアクリルアミド9重量部とともに溶剤(酢酸エチル)を60重量部加えた。その後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル0.1重量部を2時間かけて滴下させ、65℃で6時間反応させ、重量平均分子量70万の、実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1を得た。アクリル共重合体の一部を採取し、後述する酸価の測定試料として用いた。
[実施例2〜5及び比較例1〜3]
モノマーの組成を各々、表1の(A)、(B)、(C)、(D)の記載のようにする以外は、上記の実施例1に用いるアクリル共重合体溶液1と同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜3に用いるアクリル共重合体溶液を得た。
【0047】
<粘着剤組成物、光拡散粘着剤層及び光拡散粘着フィルムの製造>
[実施例1]
上記のとおり製造した実施例1のアクリル共重合体溶液1に対して、コロネートL−45(トリレンジイソシアネート(TDI)化合物のアダクト体)0.1重量部と、シリカメラミンコアシェル粒子(粒子径2μm)3.0重量部と、1−オクチルピリジニウム 六フッ化リン酸塩1.5重量部とを加えて撹拌混合して実施例1の粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物をシリコーン樹脂コートされたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムからなる離型フィルムの上に塗布後、90℃で乾燥することによって溶剤を除去した後、23℃、50%RHの雰囲気下で7日間エージングすることにより、粘着剤組成物を架橋してなる光拡散粘着剤層(厚み20μm)を、離型フィルムの片面上に有する、実施例1の光拡散粘着フィルムを得た。
[実施例2〜5及び比較例1〜3]
添加剤の組成を各々、表1の(E)、(F)、(G)の記載のようにする以外は、上記の実施例1の光拡散粘着フィルムと同様にして、実施例2〜5及び比較例1〜3の光拡散粘着フィルムを得た。
【0048】
【表1】
【0049】
表1では、各成分の配合比を示す重量部の数値を括弧で囲んで示す。重量部は、モノマーの合計量、すなわち(A)〜(D)群の合計が約100重量部となるように求めた。ただし、モノマーの合計量は、実施例2で105重量部、実施例3で92重量部、比較例2で110.5重量部、比較例3で110重量部である。
また、表1に用いた各成分の略記号の化合物名を、表2に示す。なお、コロネート(登録商標)L−45は日本ポリウレタン工業株式会社の商品名であり、D−110Nは三井化学株式会社の商品名である。TDIはトリレンジイソシアネートを意味し、XDIはキシリレンジイソシアネートを意味する。
【0050】
【表2】
【0051】
<試験方法及び評価>
実施例1〜5及び比較例1〜3における光拡散粘着フィルムから、離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして、光拡散粘着剤層を表出させ、偏光板(フィルム)の片面に光拡散粘着剤層を転写した。
【0052】
<粘着力の測定方法>
厚さ180μmの偏光板(フィルム)の片面に光拡散粘着剤層を転写して、試料となる光拡散粘着フィルム(粘着剤層付き光学フィルム)を得た。
光拡散粘着フィルムを、ソーダライムガラスのアセトンで洗浄した非錫面に圧着ロールで貼り合わせ、50℃、0.5MPa×20分間の条件でオートクレーブ処理した。その後、23℃×50%RHの雰囲気下に戻し、1時間経過後の光拡散粘着フィルムの剥離強度を引張試験機によって、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠して測定し、180°方向に300mm/minの速度で剥離した時の剥離強度を、光拡散粘着フィルムの光拡散粘着剤層の粘着力とした。
【0053】
<屈折率の測定方法>
23℃の光拡散粘着剤層の屈折率を、アッベ式屈折計(メーカ名:ERMA、型式:ER−2S)で測定する。
【0054】
<透過率の測定方法>
光透過率の測定方法:JIS K7105、「プラスチックの光学的特性試験方法」により、光拡散粘着剤層の透過率を測定する。
【0055】
<表面抵抗率の測定方法>
離型フィルム(シリコーン樹脂コートされたPETフィルム)を剥がして光拡散粘着剤層を表出し、抵抗率計ハイレスタUP−HT450(三菱化学アナリテック製)を用いて光拡散粘着剤層の表面抵抗率を測定する。
【0056】
<ヘイズ値の測定方法>
ヘイズ値の測定方法:JIS K7136、「プラスチック−透明材料のヘーズの求め方」により、光拡散粘着剤層のヘイズ値を測定する。
【0057】
<耐久性の試験方法>
粘着力の測定時と同様の方法で、作成した10cm角の光拡散粘着フィルムを、ソーダライムガラスの非錫面に貼り合わせて作成した試料を、60℃×90%RHの雰囲気下に250時間放置後、23℃×50%RH雰囲気下に取り出し、1時間後に光拡散粘着フィルムの状態を目視で観察して耐久性を判断した。
○・・光拡散粘着フィルムの剥がれ及び発泡が全くない。
△・・光拡散粘着フィルムの一部に剥がれ及び発泡が発生している。
×・・光拡散粘着フィルムの全体に剥がれ及び発泡が発生している。
【0058】
表3に、実施例1〜5、及び比較例1〜3の測定結果を示す。なお、表面抵抗率は、「m×10
+n」を「mE+n」とする方式(ただし、mは任意の実数値、nは正の整数)により表記した。
【0059】
【表3】
【0060】
実施例1〜5の光拡散粘着フィルムは、光拡散粘着剤層の厚みが20μmにおいて、ガラス板に対する粘着力が2.0N/25mm以上であった。また、光拡散粘着剤層の屈折率が1.47以上であり、透過率が90%以上、表面抵抗率が1.0×10
12Ω/□以下、且つヘイズ値が40%以上であり、耐久性にも優れていた。すなわち、実施例1〜5の光拡散粘着フィルムでは、要求事項および問題を克服することができた。
【0061】
参考として、表4に、実施例1〜5と同様の光拡散粘着剤組成物を用いて、同様の方法で製造した、光拡散粘着剤層の厚みがそれぞれ10μm、13μm、15μm、20μmの光拡散粘着フィルムについて、光拡散粘着剤層の透過率及びヘイズ値を測定した結果を示す。光拡散粘着剤組成物を用いた光拡散粘着剤層の透過率は、粘着剤層の膜厚に依存しないが、ヘイズ値は、粘着剤層の膜厚が薄くなれば低下することが分かる。
【0062】
【表4】
【0063】
比較例1の粘着フィルムは、アクリル系ポリマーのモノマー組成が2EHA単独であるため屈折率が低く、珪素系粒子を含まないため、ヘイズ値が低い。また、イオン性化合物を含まないため、表面抵抗率が高い。しかも、耐久性にも劣っていた。
比較例2の粘着フィルムは、珪素系粒子の含有量が多いためか、粘着力が低く、透過率が低い。また、イオン性化合物の含有量が少ないため、表面抵抗率が高い。しかも、耐久性にも劣っていた。
比較例3の粘着フィルムは、珪素系粒子の含有量が少ないため、屈折率が低く、ヘイズ値が低い。また、イオン性化合物の含有量が少ないため、表面抵抗率が高い。しかも、粘着剤組成物が架橋されていないため、密着性、及び耐久性にも劣っていた。
このように、比較例1〜3の粘着フィルムでは、従来の要求事項および問題を克服することができなかった。