(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783507
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】調理済みひき肉およびひき肉加工食品の製造方法
(51)【国際特許分類】
A23L 13/00 20160101AFI20201102BHJP
A23L 23/00 20160101ALI20201102BHJP
【FI】
A23L13/00 A
A23L23/00
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2015-185553(P2015-185553)
(22)【出願日】2015年9月18日
(65)【公開番号】特開2017-55738(P2017-55738A)
(43)【公開日】2017年3月23日
【審査請求日】2018年3月20日
【審判番号】不服2019-14855(P2019-14855/J1)
【審判請求日】2019年11月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】398012306
【氏名又は名称】日清フーズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】前田 竜郎
(72)【発明者】
【氏名】味谷 陽一郎
(72)【発明者】
【氏名】菅 洋平
(72)【発明者】
【氏名】川田 可南子
(72)【発明者】
【氏名】江口 由
【合議体】
【審判長】
瀬良 聡機
【審判官】
冨永 みどり
【審判官】
関 美祝
(56)【参考文献】
【文献】
特開2014−113076(JP,A)
【文献】
「基本のミートソース〜プロはなにが違う?〜」,[オンライン],食育通信online,2015年 2月16日,[検索日 2016.06.23], インターネット:<URL:http://magazine.shokuikuclub.jp/kitchen/20150216_050019/>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(Jdream3)
A23L 2/00-35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱後の牛ひき肉の溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸の構成比が、A:タウリンのモル数、B:セリン、グリシンおよびアラニンの合計モル数、C:バリン、システイン、メチオニン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびプロリンの合計モル数、D:アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミンの合計モル数としたときに、A/Cが0.25以上、B/Cが0.50以上、かつD/Cが0.25以上となるように、生の牛ひき肉を、240〜320℃の熱雰囲気中で加熱するか、または220〜360℃の熱風をあてることで加熱するか、または温度220〜2000℃の熱放射体から放射される赤外線をあてることで加熱することによって製造された、調理済み牛ひき肉。
【請求項2】
前記生の牛ひき肉が2度挽きした牛ひき肉である、請求項1記載の調理済み牛ひき肉。
【請求項3】
前記生の牛ひき肉が厚さ10〜25mmのシート状に成形されている、請求項1又は2記載の調理済み牛ひき肉。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項記載の調理済み牛ひき肉を含む、ひき肉含有食品。
【請求項5】
加熱後の牛ひき肉の溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸の構成比が、A:タウリンのモル数、B:セリン、グリシンおよびアラニンの合計モル数、C:バリン、システイン、メチオニン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびプロリンの合計モル数、D:アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミンの合計モル数としたときに、A/Cが0.25以上、B/Cが0.50以上、かつD/Cが0.25以上となるように、生の牛ひき肉を、240〜320℃の熱雰囲気中で加熱するか、または220〜360℃の熱風をあてることで加熱するか、または温度220〜2000℃の熱放射体から放射される赤外線をあてることで加熱することを含む、調理済み牛ひき肉の製造方法。
【請求項6】
前記生の牛ひき肉が2度挽きした牛ひき肉である、請求項5記載の方法。
【請求項7】
前記生の牛ひき肉が厚さ10〜25mmのシート状に成形されている、請求項5又は6記載の方法。
【請求項8】
前記加熱が、加熱空気による加熱、赤外線加熱、またはそれらの併用による加熱である、請求項5〜7のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
前記加熱が、前記生の牛ひき肉に水蒸気を噴霧しながら加熱処理することを含む、請求項5〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
前記生の牛ひき肉を単独でまたは調味料とともに加熱する、請求項5〜9のいずれか1項記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、そぼろ料理やひき肉ソース等のひき肉含有食品に好適に用いることができる調理済みひき肉に関し、さらにこの調理済みひき肉を用いるひき肉含有食品に関する。
【背景技術】
【0002】
ハンバーグ、ミートボール、メンチカツのようなひき肉を塊状に成形後、加熱調理する食品は、ジューシーな肉汁の旨みとひき肉独特の崩壊感のある食感を味わうことができる。その一方で、ひき肉をバラバラの粒状の状態に調理する食品、例えばそぼろ料理やソース、あんなどは、ひき肉の粒状感は得られるものの、肉の香りや味わいの点で、上記のような塊状に成形して加熱調理したひき肉食品に比べて劣る。
【0003】
特許文献1には、ひき肉、水、および水酸化カルシウムと酸化カルシウムと炭酸カルシウムからなる群から選択されたカルシウム化合物とクエン酸カルシウムとの反応生成物を含むひき肉製品が開示されている。特許文献2には、ひき肉とみじん切り玉ねぎを混練して成形した生地を、表面に焦げ目を付し、内部を生の状態で保持するように焦熱加工し、次いで冷凍する冷凍ハンバーグの製造方法が開示されている。特許文献3には、ひき肉に段階的にアルカリ剤と酸性剤を添加するひき肉加工食品の製造方法が開示されている。しかし、これらはいずれもひき肉を含む食品の食感や保形性の改良に関する技術であり、粒状の状態に調理されたひき肉の香りや味わいを改良するものではなかった。
【0004】
特許文献4には、挽肉を庫内温度200℃程度のオーブンで品温が70℃〜105℃になるまで焼成することを特徴とする、肉の臭みがなく好ましい香りを有する挽肉入りソースの製造方法が記載されている。しかし挽肉のどのような成分が臭みや香りをもたらしているのかは明らかにされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平6−153865号公報
【特許文献2】特開平9−47265号公報
【特許文献3】特開2013−176308号公報
【特許文献4】特開2014−113076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、ひき肉含有食品の材料として好適に用いることができる、肉のコクと甘味が引き立てられた調理済みひき肉に関する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討の結果、調理後のひき肉から得られる溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸の構成比率が特定の値になるように生ひき肉を加熱調理することにより、調理した塊肉のような良好な肉のコクと甘味を有し、かつひき肉独特の粒状感ある食感を有する調理済みひき肉が得られることを見出した。
【0008】
すなわち本発明は、溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸の構成比が、A:タウリンのモル数、B:セリン、グリシンおよびアラニンの合計モル数、C:バリン、システイン、メチオニン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、
トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびプロリンの合計モル数としたときに、A/Cが0.25以上かつB/Cが0.50以上である、調理済みひき肉を提供する。
また本発明は、加熱後のひき肉の溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸の構成比が、A:タウリンのモル数、B:セリン、グリシンおよびアラニンの合計モル数、C:バリン、システイン、メチオニン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、
トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびプロリンの合計モル数としたときに、A/Cが0.25以上かつB/Cが0.50以上となるように、生ひき肉を加熱することを含む、調理済みひき肉の製造方法を提供する。
さらに本発明は、上記調理済みひき肉を含むひき肉含有食品を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の調理済みひき肉は、バラバラの粒状の状態であっても、調理肉のコクと甘味を呈する良好な味を有し、しかも、ひき肉独特の粒状感のある食感を有する。本発明の調理済みひき肉は、特にそぼろ料理やひき肉ソースのようなひき肉含有食品の材料として好適である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の調理済みひき肉の原料となる肉の種類としては、特に限定がなく、牛、豚、羊、猪、鶏、鴨などの畜肉、家禽肉および鳥獣肉を挙げることができる。これらの肉は、いずれか1種を単独で用いてもよいが、2種以上を適宜組み合わせて用いてもよい。本発明の調理済みひき肉の製造においては、上記の原料肉をミンチした生ひき肉が用いられる。原料肉のミンチは、食肉をミンチ状に加工する公知のミンチ機を用いて通常の要領で行えばよい。原料肉のミンチの程度は特に限定されず、粗挽き、中挽き、細挽きなどのいずれも採用できる。
【0011】
好ましくは、本発明で用いられる生ひき肉は、牛ひき肉、豚ひき肉、またはそれらの組み合わせ(例えば牛豚合いびき肉)である。これらの生ひき肉を用いた場合、極めて香り高い調理済みひき肉を得ることができる。また、本発明で好ましく用いられる生ひき肉の一例として、原料肉をミンチ機で2回挽いた2度挽きの生ひき肉が挙げられ、さらに好ましい例は、原料肉を細挽きした後に粗挽きして得られる2度挽きの生ひき肉である。2度挽きの生ひき肉は、加熱しても硬くなりにくく、かつ加熱後の食感、味、香りがより向上するため、本発明で好ましく用いられる。よって好ましくは、本発明の調理済みひき肉は、2度挽きひき肉の調理品である。
【0012】
本発明の調理済みひき肉の製造においては、上記生ひき肉を加熱する。加熱手段としては、加熱空気による加熱、赤外線加熱、またはそれらを併用する方法が採用される。加熱空気による加熱の方法としては、例えば220〜400℃、好ましくは240〜320℃の熱雰囲気中でひき肉を1分30秒〜6分40秒、好ましくは2分〜4分30秒加熱する処理、および220〜360℃、好ましくは230〜300℃の熱風を1分30秒〜6分40秒、好ましくは2分〜4分30秒ひき肉に当ててひき肉を加熱する処理が挙げられる。赤外線加熱の方法としては、温度220〜2000℃の熱放射体(例えば、700〜3000Wのヒーター)から放射される赤外線を2分30秒〜8分、好ましくは3分〜8分当ててひき肉を加熱する処理が挙げられる。
【0013】
上記の加熱処理には、オーブントースター、ロースターオーブン、ジェットオーブン、コンベクションオーブン、石釜、ほうろくなどのオーブン(釜);ハロゲンヒーター、セラミックヒーター、石英管ヒーター、赤外線ヒーター、直火で加熱しないバーナーなどのヒーター;熱風炉などの炉を利用することができる。これらの中でも、オーブンの庫内に気流を発生させるジェットオーブンおよびコンベクションオーブンは、本発明の加熱手段として好ましい。
【0014】
さらに、上記加熱処理を水蒸気の存在下で行うと、得られた調理済みひき肉の味や食感がさらに向上するため好ましい。水蒸気の存在下で上記加熱処理を行うためには、水蒸気が導入されたオーブンの庫内で生ひき肉を加熱処理する方法や、水蒸気を生ひき肉に噴霧しながらヒーターで加熱処理する方法などを採用することができる。
【0015】
一方、生ひき肉を、上記以外の加熱手段、例えば、フライパンによるソテー、蒸煮(ボイル)、油ちょうなどの熱媒体(例えば鉄板、高温の水若しくは油等)に直接接触させる加熱手段や、マイクロ波加熱、ジュール加熱で加熱しても、調理済みひき肉の味の向上効果は得られない。
【0016】
本発明の調理済みひき肉の製造においては、生ひき肉全体を均一に加熱する観点から、加熱処理に付される生ひき肉はシート状に成形されていることが好ましい。シート状の生ひき肉の厚さは、一般的には3〜80mm、好ましくは5〜60mm、より好ましくは8〜40mm、さらに好ましくは10〜25mmである。該シート状生ひき肉の長さと幅は、上記加熱処理のための機器のサイズに合わせて適宜設定すればよい。
【0017】
上記加熱処理において、生ひき肉は、他の食材と組み合わせることなくそれ単独で加熱されることが好ましいが、加熱後のひき肉の溶出アミノ酸中のアミノ酸構成比が後述する特定範囲に保たれる限り、生ひき肉に下味をつけるための調味料とともに加熱されてもよい。当該調味料としては、塩、コショウなどが挙げられる。
【0018】
上記の手順で製造された本発明の調理済みひき肉は、その溶出アミノ酸中に含まれるアミノ酸が特定の構成比を有する。本明細書において、調理済みひき肉の溶出アミノ酸とは、調理済みひき肉を水にさらした際に水中に溶出したアミノ酸をいう。
【0019】
すなわち、本発明の調理済みひき肉の溶出アミノ酸中には、A:コク味、B:甘味、C:苦味およびD:旨みに関与するアミノ酸が、特定の構成比(モル比)で含まれている。上記A:コク味に関与するアミノ酸としては、タウリンが挙げられる。上記B:甘味に関与するアミノ酸としては、セリン、グリシンおよびアラニンが挙げられる。上記C:苦味に関与するアミノ酸としては、バリン、システイン、メチオニン、ロイシン、チロシン、フェニルアラニン、
トリプトファン、リジン、ヒスチジン、アルギニンおよびプロリンが挙げられる。上記D:旨味に関与するアミノ酸としては、アスパラギン酸、アスパラギン、グルタミン酸およびグルタミンが挙げられる。なお、ひき肉の原料肉の種類により、上記アミノ酸の含有量には多少の変動がある。
【0020】
より詳細には、本発明の調理済みひき肉の溶出アミノ酸において、上記A:コク味に関与するアミノ酸の合計モル数と、上記C:苦味に関与するアミノ酸の合計モル数との比(A/C)は、0.25以上、好ましくは0.255〜0.40、より好ましくは0.26〜0.32であり、上記B:甘味に関与するアミノ酸の合計モル数と、上記C:苦味に関与するアミノ酸の合計モル数との比(B/C)は、0.50以上、好ましくは0.53〜0.90、より好ましくは0.55〜0.70である。溶出アミノ酸中のアミノ酸構成比が上記範囲である調理済みひき肉は、肉のコクと甘味を十分に有するものとなる。さらに、該溶出アミノ酸中における上記D:旨みに関与するアミノ酸の合計モル数と、上記C:苦味に関与するアミノ酸の合計モル数との比(D/C)が0.25以上、好ましくは0.257〜0.40、より好ましくは0.26〜0.32である調理済みひき肉は、肉のコクと甘味に加えて熟成肉のような旨味が高められた深い味わいを有するためより好ましい。さらに、上記A、B、Dの各アミノ酸の合計モル数と、上記Cのアミノ酸の合計モル数との比([A+B+D]/C)が、1以上、好ましくは1.04以上、より好ましくは1.05以上であると、肉のコク、甘味および旨味のバランスが良い高品質な調理済みひき肉が得られる。
【0021】
本発明において、調理済みひき肉の溶出アミノ酸中の各アミノ酸のモル数は、該調理済みひき肉を室温の水にさらし、該水中に溶出したアミノ酸をアミノ酸分析装置で測定し、測定された各アミノ酸の量からそのモル数を算出することで決定することができる。次いで、上述したA:コク味、B:甘味、C:苦み、およびD:旨味の各群に分類されるアミノ酸の合計モル数を求め、それらの比率を計算することで、溶出アミノ酸中のアミノ酸構成比を得ることができる。なお、調理済みひき肉がひき肉含有食品に加工されている場合は、当該ひき肉含有食品から調理済みひき肉を取出し、必要に応じて付着した他の食材(例えば水分、たれ、ソースなど)を除去した後、上記の手順でアミノ酸分析にかけることによって、溶出アミノ酸中のアミノ酸構成比を求めることができる。
【0022】
本発明の調理済みひき肉は、そのまま単独で食することもでき、または各種ひき肉含有食品の材料とすることもできる。例えば、当該調理済みひき肉は、それ単独でもしくは他の食材と合わせてひき肉料理、ひき肉入ソース等の各種ひき肉含有食品の製造に使用することができる。また本発明の調理済みひき肉、およびそれを用いて製造したひき肉含有食品は、脱酸素包装またはレトルト滅菌した状態で保存したり、あるいは冷却または凍結した状態で冷蔵または冷凍保存することができる。
【0023】
本発明の調理済みひき肉を用いて製造することができるひき肉含有食品の例としては、通常ひき肉を用いて製造することができるあらゆる食品が挙げられる。そのような食品の例としては、ひき肉料理およびひき肉入ソースが挙げられ、より詳細な例としては、ハンバーグ、ミートボール、肉団子、肉コロッケ、メンチカツ、焼売、餃子、肉入りオムレツ、麻婆豆腐、ミートソース、ボロネーゼソース、ひき肉入あんかけ、そぼろ、そぼろ丼、キーマカレー、タコライスなどが挙げられるが、これらに限定されない。本発明の調理済みひき肉は、調理した塊肉のような良好な味と芳香を有しつつ、ひき肉独特の粒状感のある食感を有するものであるため、上記の中でも、肉入りオムレツ、麻婆豆腐、ミートソース、ボロネーゼソース、ひき肉入あんかけ、そぼろ、そぼろ丼、キーマカレー、タコライスのような、バラバラのひき肉の粒状感のある食感を味わうことができるひき肉含有食品に適用することが好ましい。
【実施例】
【0024】
以下、実施例を挙げて、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0025】
〔参考例1〕
下記実施例において、調理済みひき肉の溶出アミノ酸の分析方法は次のとおりである。
加熱処理後の調理済みひき肉をペーパータオル上に薄く広げ、余分な水分をペーパータオルに吸わせて除去した。該ひき肉をビーカーに移し、ひき肉質量の10倍量の水を加え、室温で3分間8,000rpmの高速撹拌(T25 digital uitra turrax IKA社)してアミノ酸を水に溶出させた。ひき肉を3,500rpmの遠心分離(GRX−220 TOMY社)により除去し、残った水中のアミノ酸をアミノ酸自動分析装置(日立ハイテクノロジーズ社製)を用いて定量し、各アミノ酸のモル数を算出した。次いで、アミノ酸を下記表1に示すとおり、コク味、甘み、苦味および旨みの4群に分類して各群の合計モル数(A〜D)を求め、コク味/苦味比(A/C)、甘味/苦味比(B/C)および旨味/苦味比(D/C)を計算した。
【0026】
【表1】
【0027】
〔製造例1〜4および比較例1〜2〕
牛肉をミンチ機により細挽きした後に粗挽きして、2度挽きの生ひき肉を得た。該ひき肉200gを厚さ20mmのシート状に成形した。市販のジェットオーブン(株式会社フジマック製)の庫内を予め270℃に加熱しておき、その予熱された庫内にシート状に成形した生ひき肉を投入し、表2記載の条件でオーブン加熱処理し、調理済みひき肉を製造した。
【0028】
〔製造例5〕
予熱されたオーブン庫内に生ひき肉を投入後、水蒸気を0.5MPaの導入圧力で導入しながらオーブン加熱した以外は、製造例2と同様の条件で調理済みひき肉を製造した。
【0029】
〔試験例1〕
製造例1〜5および比較例1〜2の調理済みひき肉の一部を採取し、参考例1の手順で溶出アミノ酸を分析した。別途、各調理済みひき肉を用いてミートソースを製造した。すなわち、炒めて味付けしたみじん切りタマネギと各調理済みひき肉を鍋に投入し、ここに具を含まない市販のミートソース(日清フーズ株式会社製)を加え、ひと煮立ちさせた。製造したミートソースを10名のパネラーに喫食させ、ひき肉部分の味と食感を下記評価基準にて評価させた。
【0030】
(味の評価基準)
5点:肉のコクと甘味が強く、旨味も十分にあり、極めて良好。
4点:肉のコクと甘味が強く良好。
3点:肉のコクと甘味があり雑味もなく、好ましい。
2点:肉のコクと甘味がやや足りず、雑味があり、不良。
1点:肉のコクと甘味に欠け、雑味が強く、極めて不良。
(食感の評価基準)
5点:十分な粒状感と弾力があり、噛み応えが十分あり極めて良好。
4点:適度な粒状感と弾力があり、噛み応えが感じられ良好。
3点:粒状感はあるが弾力がやや足りず、噛み応えはあまりない。
2点:粒状感はあるが弾力が弱く、噛み応えもなく不良。
1点:粒状感はあるがざらざらとした感触が強く、極めて不良。
【0031】
製造例1〜5および比較例1〜2で製造した調理済みひき肉について、溶出アミノ酸の分析結果および10名のパネラーによる肉の味と食感の評価結果の平均値を表2に示す。
【0032】
【表2】
【0033】
〔製造例6〜9〕
加熱手段として、ジェットオーブンに代えて石釜(約330℃)またはオーブントースター(1300W)を用い、表3記載の条件で生ひき肉の加熱を行った以外は、製造例1〜4と同様の手順で調理済みひき肉を製造した。
【0034】
〔比較例3〕
加熱時間を表3のとおり変更した以外は、製造例7〜9と同様の手順で調理済みひき肉を製造した。
【0035】
〔比較例4〕
加熱手段として市販のフライパンによるソテー(フライパンに少量の油を用いて加熱する調理方法)を用いた以外は、製造例1〜4と同様の手順で調理済みひき肉を製造した。
【0036】
〔比較例5〕
加熱手段としてニーダー(加熱撹拌機、株式会社カジワラ製)を用いた以外は、製造例1〜4と同様の手順で調理済みひき肉を製造した。
【0037】
〔比較例6〕
加熱手段として、ジェットオーブンに代えて沸騰水による蒸煮加熱(ボイル)を用いた以外は、製造例1〜4と同様の手順で調理済みひき肉を製造した。
【0038】
〔試験例2〕
製造例6〜9および比較例3〜6の調理済みひき肉の一部を採取して、参考例1の手順で溶出アミノ酸の分析を行った。また試験例1と同様の手順で、各調理済みひき肉を用いてミートソースを製造し、10名のパネラーによりひき肉の味と食感を評価した。結果を表3に示す。
【0039】
【表3】