(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
本明細書では、用語「導電性透明層(electroconductive transparent layer)」は、(i)適切な電圧が印加された場合に電流を流すことを可能にする層であり、(ii)ASTM D1003に従って測定して、可視領域(400〜700nm)において80%以上の光透過率を有する層のことを称する(例えばUS8,049,333参照のこと)。通常、前記層は、基板の表面上に配置され、前記基板は、典型的には電気絶縁体(electrical isolator)である、そのような導電性透明層は、フラット液晶ディスプレイ、タッチパネル、エレクトロルミネッセンス装置(device)、薄膜光電池(thin film photovoltaic cell)において、帯電防止層(anti-static layer)として、及び電磁波シールド層(electromagnetic wave shield layer)として広く使用される。
【0003】
典型的には、そのような導電性透明層は、光学的に透明な連続的な固相(マトリックスとも称する)、及び(ii)前記マトリックスの全体にわたって延在する導電性ナノ物体(electroconductive nanoobject)の導電性ネットワーク(conductive network)を含む複合材料である。前記マトリックスは、1種以上の光学的に透明なポリマーから形成される。前記マトリックスは、前記層内の導電性ナノ物体と結合し、前記導電性ナノ物体間の隙間を埋め、前記層に、機械的完全性及び安定性を提供し、前記層を前記基板の表面に結合させる。前記導電性ナノ物体の導電性ネットワークは、前記層内の隣接し、重なり合った導電性ナノ物体間の電流の流れを可能にする。前記ナノ物体の小さい寸法のため、前記複合材料の光学的挙動における、それらの影響は非常に小さく、結果として、光学的に透明な複合材料、すなわち、ASTM D1003に従って測定して、可視領域(400〜700nm)において80%以上の光透過率を有する複合材料の形成を可能にする(例えばUS8,049,333参照のこと)。
【0004】
典型的にはそのような導電性透明層は、基板の表面に、
適切な液体中に溶解又は分散された、十分な量の
(i)1種以上のマトリックス形成結合剤、
(ii)導電性ナノ物体、及び
(iii)任意に、補助成分
を含む組成物を塗布し、前記基板の前記表面上に、25℃、且つ101.325kPaで固体である、塗布された組成物の成分(以下、固体成分と称する)を含む導電性透明層が形成されるまで、それらの25℃、且つ101.325kPaで液体である成分(以下、液体成分と称する)を、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物から除去することにより調製される。そのような導電性透明層の調製のための組成物は、一般に、インクと称される。
【0005】
US2008/0182090A1は、RFIDアンテナ等の電子回路を製造するための高速印刷用のインクとして使用するために適切である組成物であって、前記組成物は、以下の成分
(a)導電性粒子、好ましくは銀粒子、さらに好ましくは銀フレーク
(b)スチレン/(メタ)アクリル共重合体
(c)アニオン性湿潤剤
(d)消泡剤、及び
(e)水
並びに、任意に、アルコール、アミン、グリコール、アセテート、エーテル、ケトン、アルデヒド及びアミドからなる群から選択される少なくとも1種の溶媒を含む組成物を開示する。US2008/0182090A1によれば、前記アニオン性湿潤剤は、好ましくはアルカリ性スルホコハク酸塩(alkali sulfosuccinate)、及びアニオン性ポリアクリレート共重合体からなる群から選択される。
【0006】
US2008/0182090A1によれば、得られる導電性層は、3μm〜7μmの範囲の厚さを有する。好ましくは、US2008/0182090A1に従う前記インクにおいて、銀粒子(a)の濃度は、前記組成物の約10〜90%、及び前記共重合体(b)の濃度は、前記組成物の約2〜50%である。したがって、25℃、且つ101.325kPaで固体である成分(以下、固体成分と称する)の濃度は、前記インク中で際立って高い。US2008/0182090A1は、得られる導電性層の光学的特性に関しては語っていないが、前記インク中の大量の固体成分のため、光透過率はかなり低く、ヘイズ(haze)はかなり高いことが推測される。導電性層の調製のために基板の表面に塗布されたインクの所定の湿潤厚(wet thickness)で、前記厚さ、及びそれによる得られる導電性層の不透明性は、塗布されたインク中の固体成分の濃度の増加に伴って増加する。技術的な理由で、前記湿潤厚の下限値があり、導電性透明層を得るためには、前記湿潤厚は、できるだけ前記下限値に近づける必要があるので、前記湿潤厚を減少させることによって前記得られる導電性層の厚さ、及び不透明性を減少させることはほとんど不可能である。
【0007】
US2012/0097059A1は、複数の金属ナノ構造、1種以上の粘度調整剤、並びに水及び1種以上の水混和性共溶媒(water-miscible co-solvent)を含有する水性液体担体を含むインク組成物であって、前記水は、前記水性液体担体の約40〜60質量%であり、前記共溶媒は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、t−ブタノール、プロピレングリコール、プロピレングリコールメチルエーテル、又はエチレングリコールである、インク組成物を開示する。US2012/0097059A1によれば、混和性溶媒の系については、沸点が、それぞれの純粋な溶媒の沸点より低いので、印刷後に、前記インクを乾燥することを促進するために、前記共溶媒が適用される。US2012/0097059 A1によれば、前記インク組成物は、表面張力及び濡れ(wetting)を調整する役割を果たす1種以上の界面活性剤を含有することが好ましい。好ましい界面活性剤は、フルオロ界面活性剤、アルキルフェノールエトキシレートに基づく非イオン性界面活性剤、第2級アルコールエトキシレート、及びアセチレン系界面活性剤である。ある実施形態において、US2012/0097059A1のインク組成物は、接着促進剤(adhesion promoter)をさらに含み、前記接着促進剤は、有機シラン化合物(organosilane compound)である。
【0008】
公開されていない出願(出願番号62/037,630)において、導電性透明層の調製のために適切な組成物が記載され、前記組成物は、導電性ナノ物体、及び1種以上の溶解されたスチレン/(メタ)アクリル酸共重合体を含む。前記組成物が、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノールおよびt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコールを含むことは開示されていない。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に従う(上記で定義した)組成物の成分(A)は、
(A−1)水
(A−2)メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
を含む混合物である。
【0018】
前記混合物(A)は、単相(monophase)である(すなわち、単相(single phase)を形成する)。
【0019】
驚くべきことに、上記で定義した1種以上のアルコール(A−2)の存在は、本発明に従う(上記で定義した)組成物が塗布される基板
(基材)の前記表面の濡れを促進するだけでなく、前記インク中のナノ物体(B)(特に、銀ナノワイヤの形のナノ物体(B)の場合)の分散性も促進し、結果的に、前記組成物から得られる導電性層中に形成される導電性ネットワークの改善された接続性をもたらすことが見出された。
【0020】
好ましくは、前記混合物(A)は、
(A−1)水、及び
(A−2)メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
からなる。
【0021】
さらに好ましくは、前記混合物(A)は、
いずれの場合にも前記混合物(A)の総体積に基づいて、
(A−1)70%〜<100%の水、
(A−2)>0%〜30%の、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
からなる。
【0022】
さらに好ましくは。前記混合物(A)は、
いずれの場合にも前記混合物(A)の総体積に基づいて、
(A−1)70%〜98%の水
(A−2)2%〜30%の、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
からなる。
【0023】
前記混合物(A)中の、(A−2)メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択されるアルコールの比率が、前記混合物(A)の総体積に基づいて30%を超える場合は、場合によっては、前記スチレン/(メタ)アクリル共重合体の溶解度が低下し、前記共重合体(C)の軟凝集(flocculation)が発生し得る。さらに、前記アルコール(A−2)の比率が、前記混合物(A)の総体積に基づいて30%を超える場合は、前記インクの乾燥速度が速く、結果的に、前記インクがコーティングのプロセス中に通過する必要があるコーティング設備の流体通路の目詰まりをもたらし得る。
【0024】
前記混合物(A)中の、(A−2)メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択されるアルコールの比率が、前記混合物(A)の総体積に基づいて2%未満の場合は、1種以上の前記アルコールの存在の効果が、むしろ十分ではない場合がある。
【0025】
特に好ましくは、前記混合物(A)は、
いずれの場合にも前記混合物(A)の総体積に基づいて、
(A−1)75%〜85%の水
(A−2)15%〜25%の、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
からなる。
【0026】
好ましくは前記1種以上のアルコール(A−2)は、i−プロパノール、n−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される。これらの好ましいアルコールは、前記インク中のそれらの体積画分に応じて、前記コーティングプロセス中の泡低減(foam reduction)に、最も強い効果を示す。
【0027】
上記で定義したアルコール(A−2)の中で、i−ブタノールは、水中でのその低溶解性が原因で、より好ましくない。さらに、メタノール及びエタノールは、制限された法的規制のため、好ましくない場合もある。
【0028】
本発明に従う(上記で定義した)組成物の成分(B)は、導電性ナノ物体からなり、前記導電性ナノ物体(B)は、1nm〜100nmの範囲の2つの外形寸法、及び1μm〜100μmの範囲のそれらの第3の外形寸法を有する。
【0029】
ISO/TS 27687:2008(2008年発行された)に従って、用語「ナノ物体」は、ナノスケールの、すなわち約1nm〜100nmの範囲の大きさの、1、2、又は3つの外形寸法を有する物体のことを称する。本発明のために使用される導電性ナノ物体は、1nm〜100nmの範囲の2つの外形寸法、及び1μm〜100μmの範囲のそれらの第3の外形寸法を有する導電性ナノ物体である。典型的には、1nm〜100nmの範囲である前記2つの外形寸法は類似しており、すなわち、それらは3倍未満の大きさで異なる。前記導電性ナノ物体(B)の第3の外形寸法は、著しくより大きく、すなわち、それは、他の2つの外形寸法と3倍より大きく異なる。
【0030】
ISO/TS 27687:2008に従って、ナノスケールの2つの類似の外形寸法を有し、一方で第三の外形寸法は著しく大きいナノ物体は、一般に、ナノファイバーと称される。導電性ナノファイバーは、ナノワイヤとも称する。中空ナノファイバーは(それらの導電性に関わりなく)、ナノチューブとも称する。
【0031】
本発明に使用される上記で定義した導電性ナノ物体(B)は、典型的には円形に近い断面を有する。前記断面は、1μm〜100μmの前記外形寸法に垂直に延在する。したがって、ナノスケールである前記2つの外形寸法は、前記円形断面の直径によって定義される。前記直径に垂直に延在する前記第3の外形寸法は、長さと称される。
【0032】
好ましくは、本発明に従う組成物は、1μm〜100μm、好ましくは3μm〜50μm、さらに好ましくは10μm〜50μmの範囲の長さ、及び1nm〜100nm、好ましくは2nm〜50nm、さらに好ましくは3nm〜30nmの範囲の直径を有する導電性ナノ物体(B)を含む。
【0033】
用語「導電性ナノ物体」は、前記ナノ物体が、電子の流れを可能にする能力がある1種以上の材料を含むか、又はそれらの材料からなることを意味する。したがって、複数のそのような導電性ナノ物体は、隣接し、重なり合い、電流を搬送することを可能にする前記マトリックス全体に延在するナノ物体の導電性ネットワークを、前記ネットワーク内で、相互接続した導電性ナノ物体に沿って、電子の輸送を可能にするように、個々の導電性ナノ物体間で、十分な相互接続(相互接触(mutual contact))が存在するという条件で、形成し得る。
【0034】
好ましくは、前記導電性ナノ物体(B)は、銀、銅、金、及び炭素からなる群から選択される1種以上の材料を含むか、又はそれらの材料からなる。
【0035】
好ましくは、前記導電性ナノ物体(B)は、1μm〜100μmの範囲の長さ、及び1nm〜100nmの範囲の直径を有し、前記導電性ナノ物体(B)が、銀、銅、金、及び炭素からなる群から選択される1種以上の材料を含む。
【0036】
好ましくは、前記導電性ナノ物体(B)は、ナノワイヤ、及びナノチューブからなる群から選択される。好ましいナノワイヤは、銀、銅、及び金からなる群から選択される1種以上の金属を含むか、又はそれらの金属からなる。好ましくは、前記ナノワイヤは、前記ナノワイヤの総質量に基づいて、それぞれ少なくとも50質量%の銀、銅、及び金からなる群から選択される1種以上の金属を含む。前記ナノワイヤの総質量に基づいて、それぞれ50質量%以上の銀を含むナノワイヤ(以下、「銀ナノワイヤ」とも称する)が、最も好ましい。
【0037】
好ましいナノチューブは、カーボンナノチューブである。
【0038】
ナノワイヤ、及びナノチューブの中では、ナノワイヤが好ましい。
【0039】
本発明に従う最も好ましい導電性ナノ物体(B)は、上述の寸法を有する銀ナノワイヤである。
【0040】
上記で定義した適切な導電性ナノ物体(B)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。
【0041】
銀ナノワイヤ(他の金属のナノワイヤと同様)は、典型的には、安定な分散の状態にするために、ポリビニルピロリドンが、前記銀ナノワイヤの表面上に吸着されている水分散液(aqueous dispersion)の形態で市販されている。前記ナノワイヤの表面上に吸着された如何なる物質も、上記で定義した、前記導電性ナノ物体(B)の寸法、及び組成には含まれない。
【0042】
好ましくは、前記銀ナノワイヤは、Adv.Mater 2002 14 No.11,June 5,833−837頁にYugang Sun、及びYounan Xiaによって記載された手順によって得られる。
【0043】
好ましい実施形態において、本発明に従う組成物は、カーボンナノチューブを含まない。
【0044】
好ましくは、本発明に従う(上記で定義した)組成物において、上記で定義した前記導電性ナノ物体の総質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、0.8質量%以下、好ましくは0.5質量%以下である。0.01質量%未満の導電性ナノ物体(B)の総質量画分は、導電性ネットワークを形成するために十分ではなく、そのような組成物は、導電性層を調製するために適切でない場合があるため、前記導電性ナノ物体(B)の総質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、0.01質量%以上である。さらに好ましくは、前記導電性ナノ物体(B)の総質量画分は、0.02質量%以上、好ましくは0.05質量%以上である。
【0045】
本発明に従う(上記で定義した)組成物の成分(C)は、混合物(A)中に溶解された、1種以上のスチレン/(メタ)アクリル共重合体からなり、前記溶解された共重合体(C)が、それぞれ500g/mol〜22000g/molの範囲の数平均分子量を有する。本明細書では、用語「(メタ)アクリル」は、「メタクリル」及び「アクリル」を含む。前記共重合体(C)もぽて。それぞれの分子は、共重合形態でモノアルケニル芳香族モノマーに由来する単位、及び(メタ)アクリルモノマーに由来する単位を含むか、又はそれらの単位からなる。そのような共重合体(C)は、1種以上のモノアルケニル芳香族モノマーと、1種以上の(メタ)アクリルモノマーとの共重合によって得られる。
【0046】
好ましい共重合体(C)において、それぞれの分子は、
共重合形態で、
・モノアルケニル芳香族モノマーMC1に由来する単位C1
及び、
・(メタ)アクリルモノマーMC2に由来する単位C2
を含むか、又はそれらからなり、
前記単位C1(モノアルケニル芳香族モノマーに由来する単位)が、化学構造
【化1】
[式中、R
1は、互いに単位C1のR
1から独立して、水素、及びアルキル(非分岐アルキル、好ましくはメチル、及び分岐アルキル、好ましくはtert−ブチルを含む)からなる群から選択され、
R
2は、互いに単位C1のR
2から独立して、ハロゲン(好ましくは塩素)、及びアルキル(好ましくはメチル)からなる群から選択され、且つR
2は、オルト、メタ、及びパラからなる群から選択される位置にある]
を有し、
前記単位C2((メタ)アクリルモノマーに由来する単位)が、化学構造
【化2】
[式中、R
3は、互いに単位C2のR
3から独立して、水素、メチル、ハロゲン(好ましくは塩素)、及びシアノからなる群から選択され、
R
4は、互いに単位C2のR
4から独立して、
−COOH、
−COOX(式中、Xは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、及び置換アンモニウムカチオンから選択される)、
−CN、
−COOR
5(式中、R
5は、分岐、及び非分岐のアルキル基、分岐、及び非分岐のアルケニル基、分岐、及び非分岐のアルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アラルケニル基、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、イソプロピリデングリセリル、グリシジル、並びにテトラヒドロピラニルからなる群から選択され、前記分岐、及び非分岐のアルキル基、アルケニル基、並びにアルキニル基は、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、スルホ、ニトロ、オキサゾリジニル、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノ基からなる群から選択される1個以上の基で置換された、分岐、及び非分岐のアルキル基、アルケニル基、並びにアルキニル基を含む)、
−CHO、
−NR
6R
7(式中、R
6、及びR
7は、独立して、水素、アルキル、及びフェニルからなる群から選択される)
からなる群から選択される。]
を有する。
【0047】
そのような共重合体(C)は、式
【化3】
[式中、R
1は、互いにモノマーMC1のR
1から独立して、水素、及びアルキル(非分岐アルキル、好ましくはメチル、及び分岐アルキル、好ましくはtert−ブチルを含む)からなる群から選択され、
R
2は、互いにモノマーMC1のR
2から独立して、ハロゲン(好ましくは塩素)、及びアルキル(好ましくはメチル)からなる群から選択され、且つR
2は、オルト、メタ、及びパラからなる群から選択される位置にある]
を有する1種以上のものアルケニル芳香族モノマーMC1と、式
【化4】
[式中、R
3は、互いにモノマーMC2のR
3から独立して、水素、メチル、ハロゲン(好ましくは塩素)、及びシアノからなる群から選択され、
R
4は、互いにモノマーMC2のR
4から独立して、
−COOH、
−COOX(式中、Xは、アルカリ金属カチオン、アンモニウムカチオン、及び置換アンモニウムカチオンから選択される)、
−CN、
−COOR
5(式中、R
5は、分岐、及び非分岐のアルキル基、分岐、及び非分岐のアルケニル基、分岐、及び非分岐のアルキニル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アラルケニル基、フルフリル、テトラヒドロフルフリル、イソプロピリデングリセリル、グリシジル、並びにテトラヒドロピラニルからなる群から選択され、前記分岐、及び非分岐のアルキル基、アルケニル基、並びにアルキニル基は、ヒドロキシ、アルコキシ、フェノキシ、ハロゲン、スルホ、ニトロ、オキサゾリジニル、モノアルキルアミノ、及びジアルキルアミノ基からなる群から選択される1個以上の基で置換された、分岐、及び非分岐のアルキル基、アルケニル基、並びにアルキニル基を含む)、
−CHO、
−NR
6R
7(式中、R
6、及びR
7は、独立して、水素、アルキル、及びフェニルからなる群から選択される)
からなる群から選択される。]
を有する1種以上の(メタ)アクリルモノマーMC2との共重合によって得られる。
【0048】
本明細書で使用される用語「(メタ)アクリルモノマー」MC2は、アクリル酸、並びにアクリル酸、アクリロニトリル、及びアクロレインの塩、エステル、及びアミド、同様にメタクリル酸、並びにメタクリル酸、メタクリロニトリル、及びメタクリロレインの塩、エステル、及びアミドを含む。
【0049】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、−COOHである(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクリル酸、又はメタクリル酸である。
【0050】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、上記で定義した−COOR
5である(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクリル酸のエステル、又はメタクリル酸のエステルである。
【0051】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、上記で定義した−COOXである(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクリル酸の塩、又はメタクリル酸の塩である。
【0052】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、−CNである(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクリロニトリル、又はメタクリロニトリルである。
【0053】
1種以上のモノアルケニル芳香族モノマーMC1と、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルからなり、他の(メタ)アクリルモノマーMC2を含まない群からの1種以上の(メタ)アクリルモノマーとの共重合によって得られる共重合体(C)は、好ましくない。この関連で、共重合体(C)の調製のためには、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリルからなる群から選択される(メタ)アクリルモノマーは、本明細書で定義した他の(メタ)アクリルモノマーMC2と組み合わせて使用されることが好ましい。
【0054】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、上記で定義した−NR
6R
7である(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクリル酸のアミド、又はメタクリル酸のアミドである。
【0055】
R
3が、それぞれ水素、又はメチルであり、且つR
4が、−CHOである(メタ)アクリルモノマーは、それぞれアクロレイン、又はメタクロレインである。
【0056】
好ましいモノアルキレン芳香族モノマーMC1は、α−メチルスチレン、スチレン、ビニルトルエン、tert−ブチルスチレン、及びオルト−クロロスチレンからなる群から選択される。
【0057】
適切な(メタ)アクリルモノマーの例は、以下のメタクリレートエステル(メタクリル酸エステル):メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−へキシルメタクリレート、イソアミルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルメタクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルメタクリレート、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、2−スルホエチルメタクリレート、トリフルオロエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、アリルメタクリレート、2−n−ブトキシエチルメタクリレート、2−クロロエチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、2−エチルブチルメタクリレート、シンナミルメタクリレート、クロチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、フルフリルメタクリレート、ヘキサフルオロイソプロピルメタクリレート、メタリルメタクリレート、3−メトキシブチルメタクリレート、2−メトキシブチルメタクリレート、2−ニトロ−2−メチルプロピルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、2−フェノキシエチルメタクリレート、2−フェニルエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、プロパ−2−イニルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、テトラヒドロピラニルメタクリレートを含む。使用される典型的なアクリレートエステルは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、及びn−デシルアクリレート、メチルα−クロロアクリレート、メチル2−シアノアクリレートを含む。他の適切な(メタ)アクリルモノマーは、メタクリロニトリル、メタクリルアミド、N−メチルメタクリルアミド、N−エチルメタクリルアミド、N,N−ジエチルメタクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミド、N−フェニルメタクリルアミド、及びメタクロレイン、アクリロニトリル、アクリルアミド、N−エチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、及びアクロレインを含む。
【0058】
前記モノマーとして、適切な縮合可能な(condensable)架橋性(cross linkable)官能基を含有するメタクリル酸、又はアクリル酸のエステルが使用され得る。そのようなエステルには、t−ブチルアミノエチルメタクリレート、イソプロピリデングリセリルメタクリレート、及びオキサゾリジニルエチルメタクリレートがある。
【0059】
典型的な好ましい架橋性アクリレート、及びメタクリレートは、ヒドロキシアルキルアクリレート 、ヒドロキシルアルキルメタクリレート、及びグリシジルアクリレート、又はメタクリレートのヒドロキシエステルを含む。好ましいヒドロキシ官能性モノマーの例は、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、6−ヒドロキシヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、6−ヒドロキシヘキシルメタクリレート、5,6−ジヒドロキシヘキシルメタクリレート等を含む。
【0060】
本明細書で使用される用語「スチレン/(メタ)アクリル共重合体」は、2種以上の(メタ)アクリルモノマー、及び1種以上のモノアルケニル芳香族モノマーからなる混合物から得られる共重合体、同様に少なくとも1種の(メタ)アクリルモノマー、及び少なくとも1種の非アクリル系エチレン性モノマー、及び1種以上のモノアルケニル芳香族モノマーの混合物から得られる共重合体も含む。適切なエチレン性モノマーは、ビニルピリジン、ビニルピロリドン、クロトン酸ナトリウム、クロトン酸メチル、クロトン酸、及び無水マレイン酸を含む。
【0061】
上記で定義した共重合体(C)に関するさらなる詳細については、US2008/0182090、US4,414,370、US4,529,787、US4,546,160、US5,508,366、及びそれらに引用された先行技術が参照される。
【0062】
前記共重合体(C)の数平均分子量は、500g/mol〜22000g/mol、好ましくは1700g/mol〜15500g/mol、さらに好ましくは5000g/mol〜10000g/molの範囲である。
【0063】
典型的には、水溶性共重合体(C)は、それらの分子が、モノアルケニル芳香族モノマーに由来する非極性疎水性領域と、(メタ)アクリルモノマーに由来する極性親水性領域を含有するので、両親媒性である。したがって、所望の両親媒性挙動は、前記疎水性モノアルケニル芳香族モノマー、及び親水性(メタ)アクリルモノマーの適切な選択、並びにモノアルケニル芳香族モノマーと、(メタ)アクリルモノマーとの比の適切な調整によって得られ、これにより、モノアルケニル芳香族モノマーに由来する疎水性単位と、(メタ)アクリルモノマーに由来する親水性単位との適切な比を有する共重合体(C)が得られ、前記共重合体の両親媒性挙動を可能にさせる。水溶液において、前記水溶性共重合体(C)は、界面活性剤(界面活性剤(tenside))のように作用する、すなわち、それらはミセル(micelle)を形成する能力がある。ミセルは、溶解された両親媒性分子の会合によって形成される凝集体である。好ましくは、前記ミセルは、5nm以下の直径を有する。
【0064】
典型的な水溶性共重合体(C)は、当該技術分野において公知であり、市販されている。典型的にはそのような共重合体は、水溶液の形態で市販されている。
【0065】
好ましくは、本発明に従う(上記で定義した)組成物において、前記溶解された共重合体(C)の総質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、2質量%未満、さらに好ましくは1.8質量%以下、さらに好ましくは1.5質量%以下、特に好ましくは1質量%以下である。前記溶解された共重合体(C)の0.02質量%未満の総質量画分は、前記導電性ナノ物体(B)を結合するために十分でない場合があり、そのような組成物は、導電性層を調製するために適切ではないため、前記溶解された共重合体(C)の総質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、0.02質量%以上である。さらに好ましくは、前記溶解された共重合体(C)の総質量画分は、0.05質量%以上、好ましくは0.1質量%以上である。
【0066】
上記で定義した混合物(A)、及びそれに溶解された上記で定義した1種以上の共重合体(C)は、単相(monophase)である(すなわち、単相(single phase)を形成する)。
【0067】
好ましくは、上記で定義した本発明に従う組成物は、非溶解形態(non-dissolved form)で、如何なる共重合体(C)(上記で定義した)も含有しない。
【0068】
好ましくは、本発明に従う(上記で定義した)組成物において、前記導電性ナノ物体(B)の総質量と、前記溶解された共重合体(C)の総質量との比は、1:20〜20:1、好ましくは1:10〜5:1、さらに好ましくは1:5〜5:1の範囲である。
【0069】
本発明に従う組成物は、上記で定義した(A)〜(C)の他に、任意にさらなる成分、例えば消泡剤、レオロジー制御剤、腐食防止剤、及びその他の助剤を含む。典型的な消泡剤、レオロジー制御剤、及び腐食防止剤は、当該技術分野において公知であり、市販されている。しかしながら、驚くべきことに、上記で定義した成分(A−1)、(A−2)、(B)、及び(C)、及び任意にポリビニルピロリドン(典型的に、前記ポリビニルピロリドンの少なくとも一部は、銀ナノワイヤの表面上に吸着されている(上記参照))を超えて、任意のさらなる成分を含まない、本発明に従う(上記で定義した)組成物は、満足な電子伝導率だけでなく、優れた光学特性を有する導電性透明層の調製のために適切であることが見出された。したがって、任意の助剤の添加は必要ではなく、それにより、より複雑でない組成物にして、そのような組成物の調製を容易にする。したがって、好ましい実施形態において、本発明に従う組成物は、上記で定義した成分(A−1)、(A−2)、(B)、及び(C)、及び任意にポリビニルピロリドン(典型的に、前記ポリビニルピロリドンの少なくとも一部は、銀ナノワイヤの表面上に吸着されている)からなる。それにもかかわらず、特定の実施形態においては、本発明に従う(上記で定義した)組成物は、1種以上の助剤、特に上記で定義したものを含む。
【0070】
特に好ましくは、本発明に従う組成物は、上記で定義したスチレン/(メタ)アクリル共重合体(C)、及び上記で定義したアルコール(A−2)、及び任意にポリビニルピロリドン(典型的に、前記ポリビニルピロリドンの少なくとも一部は、銀ナノワイヤの表面上に吸着されている)以外の如何なる界面活性剤を含有しない。
【0071】
特に好ましくは、本発明に従う組成物は、如何なる有機シランを含有しない。
【0072】
特に好ましくは、本発明に従う組成物は、上記で定義したスチレン/(メタ)アクリル共重合体(C)、及び上記で定義したアルコール(A−2)以外の如何なる界面活性剤を含有せず、且つ、如何なる有機シランを含有しない。
【0073】
本発明に従う(上記で定義した)組成物の(上記で定義した(A)〜(C)の他の)任意のさらなる成分、及びそのようなさらなる成分の量は、前記組成物から得られる層の電子伝導率、及び光学特性が損なわれないように選択される必要があることが理解される。
【0074】
本発明に従う好ましい組成物は、2種以上の上記で定義した好ましい特徴が組み合わされているものである。
【0075】
本発明に従う組成物であって、前記組成物が、
(A)混合物であり、
いずれの場合にも、前記混合物(A)の総体積に基づいて、
(A−1)70%〜98%の水
(A−2)2%〜30%の、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、i−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択される1種以上のアルコール、
からなる混合物、
(B)銀ナノワイヤであり、
10μm〜50μmの範囲の長さ、及び3nm〜30nmの範囲の直径を有し、
前記銀ナノワイヤ(B)の総質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、0.5質量%以下である前記銀ナノワイヤ(B)、
(C)混合物(A)中に溶解された、スチレン/(メタ)アクリル共重合体であり、
1700g/mol〜15500g/molの範囲の数平均分子量を有し、
前記溶解された共重合体(C)の質量画分は、前記組成物の総質量に基づいて、2質量%未満、好ましくは1.5質量%以下である前記溶解された共重合体(C)、
を含むか、又はそれらからなり、
前記銀ナノワイヤ(B)の総質量と、
前記溶解された共重合体(C)の質量との比が、
1:5〜5:1の範囲である、
前記組成物が、特に好ましい。
【0076】
本発明に従う組成物は、例えば、適切な量の上記で定義した導電性ナノ物体(B)を水(A−1)中に懸濁する工程、適切な量の上記で定義した1種以上の共重合体(C)を水(A−1)中に溶解する工程、及び適切な量の上記で定義した1種以上のアルコール(A−2)を添加する工程によって、又は適切な量の予め製造された(pre-manufactured)前記導電性ナノ物体(B)の水分散液と、予め製造された前記1種以上の共重合体(C)の水溶液とを混合する工程、及び適切な量の上記で定義した1種以上のアルコール(A−2)を添加する工程によって、又は適切な量の前記導電性ナノ物体(B)を予め製造された前記1種以上の共重合体(C)の水溶液中に懸濁する工程、及び適切な量の上記で定義した1種以上のアルコール(A−2)を添加する工程によって、又は適切な量の前記1種以上の共重合体(C)を予め製造された前記導電性ナノ物体(B)の水分散液に溶解する工程、及び適切な量の上記で定義した1種以上のアルコール(A−2)を添加する工程によって調製される。好ましい実施形態において、上記で定義した成分(A−1)、(A−2)、(B)、及び(C)、及び任意にさらなる成分(上記で定義した)を混合した後、前記組成物の均質化を改善するために、前記組成物をボールミル粉砕する。特定の実施形態において、得られる層が低いヘイズを有することを確保するために、長時間の均質化処理が好ましい。
【0077】
本発明のさらなる態様は、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、80%以上の光透過率を有する導電性層を、基板上に調製する方法に関連する。本発明に従う方法は、
上記で定義した本発明に従う組成物を調製、又は供給する工程、
基板の表面に前記組成物を塗布する工程、
前記基板の前記表面上に、層が形成されるまで、25℃、且つ101.325kPaで液体である成分を、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物から除去する工程、
を含む。
【0078】
本発明の上記で定義した方法によって調製された層は、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、80%以上の光透過率を有する固体の導電性層であり、前記層は、上記で定義した本発明に従う組成物の前記固体成分を含むか、又はそれらの成分からなり、前記層は、任意に、架橋形態で前記1種以上の共重合体(C)を含む。さらに具体的には、基板の表面に塗布された前記組成物が、架橋性である1種以上の共重合体(C)を含む実施形態において、前記形成された層は、架橋形態で前記1種以上の共重合体を含む。
【0079】
本出願との関連で、前記基板の前記表面上に、層が形成されるまで、25℃、且つ101.325kPaで液体である成分を、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物から除去するプロセス工程は、乾燥とも称する。通常、前記液体成分は、蒸発によって除去される。
【0080】
一般に、前記液体成分は、少なくとも、前記基板の前記表面上に、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、80%以上の光透過率を有する導電性層が形成されるまで除去される必要があり、その中で、前記1種以上の共重合体(C)が、前記導電性ナノ物体(B)を結合する連続的な固相(マトリックスとも称する)を形成し、次いで、前記固体マトリックス全体に延在する導電性ネットワークを形成する。好ましくは、前記導電性層は、10nm〜1000nm、好ましくは50nm〜500nmの範囲の厚さを有する。一般に、前記導電性層の厚さの下限は、塗布された組成物のナノ物体の最小寸法によって決まる。
【0081】
好ましくは、25℃、且つ101.325kPaで液体である成分は、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物から完全に除去される。
【0082】
前記基板の前記表面に、本発明に従う組成物を塗布する工程は、好ましくは、スピンコーティング、ドローダウンコーティング(draw down coating)、ロールツーロールコーティング(roll-to-roll coating)、グラビア印刷、マイクログラビア印刷、スクリーン印刷、フレキソ印刷、及びスロットダイコーティング(slot-die coating)からなる群から選択される技術によって実施される。
【0083】
好ましくは、前記組成物は、1μm〜200μm、好ましくは2μm〜60μmの範囲の厚さで、前記基板の前記表面に塗布される。前記厚さは、「湿潤厚」とも称し、上記で説明した組成物の液体成分を除去する前の状態に関連する。所定の目標厚さ(上記で説明した組成物の液体成分を除去した後)、その結果、調製される前記導電性層の所定の目標シート抵抗(sheet resistance)及び光透過率で、前記湿潤厚は、前記インク中の前記組成物の固体成分の濃度が低いほど、高くなり得る。前記インクを塗布するプロセスは、特に低い湿潤厚で、前記インクを塗布するための制約がない場合、容易になる。
【0084】
本発明に従う(上記で定義した)組成物が塗布される前記基板は、典型的には電気絶縁体である。好ましくは、前記基板は、ガラス、及び有機ポリマーからなる群から選択される材料を含むか、又はそれらの材料からなる。好ましい有機ポリマーは、ポリカーボネート(PC)、環状オレフィン共重合体(COP)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリイミド(PI)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)からなる群から選択される。好ましくは、前記基板は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【0085】
好ましくは、前記基板は、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、80%以上の光透過率を有する。
【0086】
25℃、且つ101.325kPaで液体である前記成分の、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物からの除去工程は、好ましくは、前記基板の前記表面に塗布された前記組成物を、100℃〜150℃の範囲の温度に、15分以下の時間さらすことによって達成される。この関連で、当業者は、前記温度は、前記基板の熱安定性を考慮して選択される必要があることを分かっている。
【0087】
本発明に従う好ましい方法は、上記で定義した2種以上の特徴が組み合わされたものである。
【0088】
「光透過率」は、媒体を透過した入射光の百分率のことを称する。好ましくは本発明に従う導電性層の光透過率は、いずれの場合にも2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、85%以上であり、さらに好ましくは90%以上であり、さらに好ましくは95%以上である。
【0089】
上記で定義した本発明の方法によって調製された、好ましい導電性層は、いずれの場合にも2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、2%以下のヘイズ、及び/又は4探針プローブで測定して、1000オーム/スクエア以下のシート抵抗を示す。
【0090】
好ましくは、前記導電性層の前記ヘイズは、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、1.8%以下であり、さらに好ましくは1.5%以下であり、さらに好ましくは1.2%以下である。
【0091】
好ましくは、前記導電性層の前記シート抵抗は、いずれの場合にも4探針プローブで測定して、800オーム/スクエア以下であり、さらに好ましくは500オーム/スクエア以下であり、さらに好ましくは200オーム/スクエアである。
【0092】
ヘイズメーターによる、ヘイズ、及び光透過率(2013年11月に発行されたASTM D1003において、本体を透過した光束の、その上に入射した光束に対する比である、視感透過率(luminous transmittance)と称される)の測定は、2013年11月に発行されたASTM D1003において、「手順A−ヘイズメーター」として定義される。本発明との関連で示されるヘイズ、及び光透過率(2013年11月に発行されたASTM D1003において定義された視感透過率に相当する)の値は、この手順を参照する。
【0093】
一般に、ヘイズは、光拡散の指標である。それは、入射光から分離し、透過中に散乱した光の量の百分率のことを称する。主に媒体の特性である光透過率と異なり、ヘイズは、製造の問題(production concern)であることが多く、典型的には、表面粗さ、及び媒体中に内蔵される粒子、又は成分不均質に起因する。
【0094】
2013年11月に発行されたASTM D1003によれば、透過率において、ヘイズは、試料(specimen)(前記試料を通して見られる物体の対比における低下に関与する)による光の散乱、すなわち、その方向が、入射ビームの方向から特定の角度(2.5°)より大きく逸脱するように分散する透過光の百分率である。
【0095】
前記シート抵抗は、薄体、すなわち厚さが均一な(シート)の抵抗の基準である。用語「シート抵抗」は、電流フローが前記シートの平面に沿っており、それと垂直ではないことを意味する。厚さt、長さL、及び幅Wを有するシートについて、前記抵抗Rは、
【数1】
[式中、R
shは、シート抵抗である。]
である。したがって、シート抵抗R
shは、
【数2】
である。
【0096】
上記の式において、体積抵抗(bulk resistance)Rは、無次元量(W/L)を乗ぜられ、シート抵抗R
shが得られるため、シート抵抗の単位はオームである。正方形シートの特定の場合、W=L、且つR=R
shであるので、前記体積抵抗Rとの混同を避ける目的で、前記シート抵抗の値は、通常、「オーム/スクエア」として示される。前記シート抵抗は、4探針プローブを用いて測定される。
【0097】
前記シート抵抗、及び前記ヘイズの測定のさらなる詳細は、以下の実施例の節に記載される。
【0098】
さらに好ましくは、上記で定義した本発明の方法によって調製された導電性層は、以下の特徴:
・2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、1%以下のヘイズ、
・4探針プローブで測定して、100オーム/スクエア以下のシート抵抗、
・2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、90%以上の光透過率、
の1種以上を示す。
【0099】
好ましい導電性層は、上記で定義した2種以上の好ましい特徴が組み合わされているものである。
【0100】
上記で定義した本発明の方法によって調製された特に好ましい導電性層は、以下の特徴:
・2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、1%以下のヘイズ、及び
・4探針プローブで測定して、100オーム/スクエア以下のシート抵抗、及び
・2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、90%以上の光透過率、
を示す。
【0101】
如何なる理論にもとらわれることは望まないが、現在、上記で定義した本発明の方法によって調製された導電性層においては、前記導電性ナノ物体のネットワークが、前記マトリックス上に強化効果(reinforcing effect)を発揮し、それにより、前記導電性層に、機械的完全性(mechanical integrity)だけでなく、環境影響に対する安定性も付与するものと考えられている。さらに、特に、基板が有機ポリマーからなる群から選択される材料を含む場合、前記1種以上の共重合体(C)の疎水性領域が、基板への強力な接着を可能とするものと考えられる。
【0102】
上記で定義した本発明の方法によって調製された導電性層の典型的な用途は、透明電極、タッチパネル、ワイヤ偏光子(wire polarizer)、容量性及び抵抗性タッチセンサー、EMI遮蔽、透明ヒーター(例えば、自動車及び他の用途のため)、フレキシブルディスプレイ、プラズマディスプレイ、電気泳動ディスプレイ、液晶ディスプレイ、透明アンテナ、エレクトロクロミックデバイス(例えば、スマートウィンドウ)、光起電装置(photovoltaic device)(特に、薄膜光電池)、エレクトロルミネセント素子、発光素子(LED)、及び有機発光素子(OLED)、フレキシブルウォッチ等の身に着けられる(いわゆる、ウェラブル)フレキシブル素子、又は折り畳み式スクリーン、同様に防曇(anti-fogging)、防氷(anti-icing)、又は帯電防止特性を付与する機能性コーティング、並びに誘電体及び強誘電体触覚膜からなる群から選択される。しかしながら、本発明は、これらの用途に制限されず、多くの他の電気光学装置において、当業者によって使用され得る。
【0103】
本発明のさらなる態様は、2013年11月に発行されたASTM D1003(手順A)に従って測定して、80%以上の光透過率を有する導電性層の、基板上への調製のための本発明に従う(上記で定義した)組成物の使用方法に関連する。好ましくは、前記基板は、ポリエチレンテレフタレートを含む。
【実施例】
【0104】
本発明は、以下に実施例を用いて、さらに説明される。
【0105】
[アルコール(A−2)及び水(A−1)を、1/9の体積比で含むインク]
銀ナノワイヤ(上記で定義したナノ物体(B))の水分散液、及び上記で定義したスチレン/アクリル共重合体(C)の水溶液(Joncryl60、BASFから市販されている)を、選択された脂肪族アルコール(A−2)(後述の表1参照)と、30分間の分散時間で混合し、3.6mg/mlの銀ナノワイヤの濃度、及び表1に示した銀ナノワイヤ(B)の、共重合体(C)に対する質量比を有するインクを得る。選択された脂肪族アルコール(A−2)の、水(A−1)に対する体積比は、1/9に設定する。
【0106】
前記インクを、ドローダウンバー(Erichsen K303)を用いてポリマー基板に塗布し(湿潤厚t=6μm、コーティング速度v=2インチ/秒)、前記基板上の層を得る。その後、前記層を135℃で5分間乾燥する。実施例1〜7において、前記基板は、光学ポリカーボネート箔(例えば、製品規格Makrofol DE1−1 175μmで、Bayer Material Scienceから市販されている)である。実施例8〜14において、前記基板は光学ポリエチレンテレフタレート箔(例えば、製品規格Melinex506で、Dupontから市販されている)である。
【0107】
前記乾燥層のオーム/スクエア(OPS)で示された前記シート抵抗Rshは、4探針プローブステーション(Lucas lab pro−4)で測定し、前記光学特性(上記で定義した)は、haze−gard plus hazemeter(BYK Gardner)によって、ASTM D1003手順A−ヘイズメーター(2013年11月に発行された)に従って測定する。結果を表1にまとめる。全ての得られた層は、満足なシート抵抗、透明性、及びヘイズの値を有する。コーティングプロセスにおける発泡の最も著しい抑制は、i−プロパノール、n−ブタノール、及びt−ブタノールからなる群から選択されるアルコール(A−2)によって達成された。
【0108】
【表1】
【0109】
[アルコール(A−2)及び水(A−1)を、3/7の体積比で含むインク]
銀ナノワイヤ(上記で定義したナノ物体(B))の水分散液、及び上記で定義したスチレン/アクリル共重合体(C)の水溶液(Joncryl60、BASFから市販されている)を、(A−2)イソプロパノールと、30分間の分散時間で混合し、5mg/mlの銀ナノワイヤ(B)の濃度、及び後述の表2に示した銀ナノワイヤ(B)の、共重合体(C)に対する質量比を有するインクを得る。イソプロパノール(A−2)の、水(A−1)に対する体積比は、3/7に設定する。
【0110】
前記インクを、ドローダウンバー(Erichsen K303)を用いてポリマー基板に塗布し(湿潤厚t=6μm、コーティング速度v=2インチ/秒)、前記基板上の層を得る。その後、前記層を135℃で5分間乾燥する。実施例15〜17において、前記基板は、光学ポリカーボネート箔(例えば、製品規格Makrofol DE1−1 175μmで、Bayer Material Scienceから市販されている)である。実施例18〜20において、前記基板は光学ポリエチレンテレフタレート箔(例えば、製品規格Melinex506で、Dupontから市販されている)である。
【0111】
前記乾燥層のオーム/スクエア(OPS)で示された前記シート抵抗Rshは、4探針プローブステーション(Lucas lab pro−4)で測定し、前記光学特性(上記で定義した)は、haze−gard plus hazemeter(BYK Gardner)によって、ASTM D1003手順A−ヘイズメーター(2013年11月に発行された)に従って測定する。結果を表2にまとめる。全ての得られた層は、満足なシート抵抗、透明性、及びヘイズの値を有していた。実施例1〜14と比較して、アルコール(A−2)のより高い体積画分(10体積%の代わりに30体積%)に起因して、前記発泡は、さらに抑制される。
【0112】
【表2】