(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6783796
(24)【登録日】2020年10月26日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】導電性コネクタを有するガラスパネル
(51)【国際特許分類】
H01R 4/02 20060101AFI20201102BHJP
B60J 1/00 20060101ALI20201102BHJP
C22C 13/00 20060101ALN20201102BHJP
C22C 13/02 20060101ALN20201102BHJP
C22C 12/00 20060101ALN20201102BHJP
C22C 38/00 20060101ALN20201102BHJP
C22C 19/03 20060101ALN20201102BHJP
B23K 35/26 20060101ALN20201102BHJP
【FI】
H01R4/02 Z
B60J1/00 B
!C22C13/00
!C22C13/02
!C22C12/00
!C22C38/00 302Z
!C22C19/03 M
!B23K35/26 310A
!B23K35/26 310C
【請求項の数】10
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2017-556950(P2017-556950)
(86)(22)【出願日】2016年4月29日
(65)【公表番号】特表2018-524760(P2018-524760A)
(43)【公表日】2018年8月30日
(86)【国際出願番号】EP2016059654
(87)【国際公開番号】WO2016174228
(87)【国際公開日】20161103
【審査請求日】2019年3月26日
(31)【優先権主張番号】15165685.7
(32)【優先日】2015年4月29日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】510191919
【氏名又は名称】エージーシー グラス ユーロップ
【氏名又は名称原語表記】AGC GLASS EUROPE
(73)【特許権者】
【識別番号】000000044
【氏名又は名称】AGC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505265539
【氏名又は名称】エージーシー オートモーティヴ アメリカズ アールアンドディー,インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】サルキス, レミ
(72)【発明者】
【氏名】スコエブレヒト, ポール
(72)【発明者】
【氏名】スクノールヒ, ピーター
(72)【発明者】
【氏名】竹内 彰一
(72)【発明者】
【氏名】橋本 直樹
【審査官】
高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2005−317298(JP,A)
【文献】
特表2014−514724(JP,A)
【文献】
実開平04−046323(JP,U)
【文献】
実開平04−005064(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 4/00−4/22
B60J 1/00
B23K35/26
C22C12/00
C22C13/00
C22C13/02
C22C19/03
C22C38/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
− ガラス板と、
− アンテナと、
− 鉛フリーはんだ材料によって前記アンテナに接合された導電性コネクタと、
− 誘電要素によって分離されかつ絶縁層によって保護される、少なくともピンおよびシールドを含む同軸ケーブルと
を含むガラスパネルにおいて、
前記導電性コネクタが、前記同軸ケーブルを前記導電性コネクタに保持するための少なくとも2つの機械的固定要素を含むこと、前記機械的固定要素の少なくとも2つが前記同軸ケーブルの前記シールドに電気的に接続されていること、前記導電性コネクタが、機械的固定要素を固定するための少なくとも拡張領域と、鉛フリーはんだ材料によって前記アンテナに接合するための、前記拡張領域に接続された少なくとも1つの足部とを含むこと、および前記機械的固定要素が前記導電性コネクタの前記拡張領域の対向する2つの縁部に固定されることを特徴とするガラスパネル。
【請求項2】
前記導電性コネクタが2つの足部を含むことを特徴とする、請求項1に記載のガラスパネル。
【請求項3】
少なくとも1つの足部が、丸みを帯びた形状を有することを特徴とする、請求項1または2に記載のガラスパネル。
【請求項4】
前記導電性コネクタが3つの機械的固定要素を含み、前記機械的固定要素のうちの2つが前記同軸ケーブルの前記シールドに電気的に接続され、かつ前記導電性コネクタの前記拡張領域の対向する2つの縁部に固定され、および前記機械的固定要素のうちの1つが前記同軸ケーブルの前記絶縁層に固定されることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか一項に記載のガラスパネル。
【請求項5】
機械的固定要素がかしめ要素であることを特徴とする、請求項1〜4のいずれか一項に記載のガラスパネル。
【請求項6】
前記同軸ケーブルの前記ピンが鉛フリーはんだ材料によって前記アンテナに接合されることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか一項に記載のガラスパネル。
【請求項7】
前記アンテナが広帯域のプリントされたアンテナであることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか一項に記載のガラスパネル。
【請求項8】
前記シールドが中間伝導性要素の近くに延長されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか一項に記載のガラスパネル。
【請求項9】
誘電要素によって分離されかつ絶縁層によって保護される、少なくともピンおよびシールドを含む同軸ケーブルを導電性コネクタに保持するための少なくとも2つの機械的固定要素を含むコネクタであって、前記機械的固定要素の少なくとも2つが前記同軸ケーブルの前記シールドに電気的に接続されることを意図されていること、前記導電性コネクタが、機械的固定要素を固定するための少なくとも拡張領域と、鉛フリーはんだ材料によってアンテナに接合するための、前記拡張領域に接続された少なくとも1つの足部とを含むこと、および前記機械的固定要素が前記導電性コネクタの前記拡張領域の対向する2つの縁部に固定されることを特徴とするコネクタ。
【請求項10】
2つの足部を含むことを特徴とする、請求項9に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コネクタ、特に導電性コネクタを含むガラスパネルに関する。より具体的には、本発明は、アンテナに接続された導電性コネクタ、例えば、導電性コネクタによってアンテナに接続された同軸ケーブルを含む車両のガラスに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、自動車のガラスパネルは、アンテナ、ガラスパネルヒータおよびそれらの類似物など、多数の追加的な電気装置を有する。
【0003】
ガラスパネルと結合された電気的機能部品または電気的機能層の導入により、自動車ガラスに様々な機能を付与することができる。電気的機能部品は、例えば、アンテナ素子、太陽電池またはエレクトロクロミックコーティングである。薄い金属ワイヤの挿入または電気的に加熱可能なコーティングの適用により、加熱機能を得ることができる。これらの電気的機能部品または層は、少なくとも導電性コネクタのために、例えば電源または増幅器に接続する必要がある。電気コネクタは、ガラスパネルが自動車に設置される前に取り付けられる。
【0004】
ガラスパネルへの取り付けは、はんだ材料を備えた導電性コネクタがガラスパネルの接触面上に配置され、次いで加熱されて、はんだ材料がガラスパネルの接触面と融解することで生じる。
【0005】
従来、コネクタは、鉛ベースのはんだ材料により電気的機能部品または電気的機能層にはんだ付けされる。なぜなら、鉛は変形可能な金属であり、温度の変化に起因するコネクタと基板との熱膨張の差によるコネクタと基板との間の機械的応力を最小にするためである。より具体的には、典型的に銅などの良好な伝導性材料で作られるコネクタと基板との間の熱膨張係数の差が機械的応力を引き起こす。ガラス基板の場合、このような応力は、典型的にガラスで作られる基板に亀裂または他の損傷をもたらす可能性がある。鉛ベースのはんだ材料は、典型的にはスズ(Sn)および鉛(Pb)を含む。鉛は、はんだ中のスズと、一般的に高い銀(Ag)含量から構成される電気的機能部品または電気的機能層との間のラジカル反応速度を低下させ、良好なはんだ付け性を可能にする。しかしながら、鉛は環境汚染物質と考えられ得ることが知られている。従って、多くの産業、特に自動車産業において、車両における鉛のあらゆる使用から離れようとする動機がある。それに加えて、EU法、例えば現行の「廃」自動車指令(ELV指令)2000/53/ECは、鉛などの特定の有害物質を禁止している。自動車産業が鉛の使用から離れる主な推進力は、欧州連合(EU)が課したエレクトロニクスにおける鉛の禁止である。RoHS指令(有害物質の制限に関する指令)の下、2006年7月1日現在、鉛は、電子機器において他の物質に置き換えなければならない。(この指令では、水銀、カドミウム、および六価クロムも禁止されている。)欧州向けの電子部品はいずれも禁止対象である。
【0006】
鉛フリーはんだ材料の使用は、マイクロエレクトロニクス産業および配管産業で一般的である。そのような材料は、例えば、それぞれの産業の代表的な特許である欧州特許第0704727B1号明細書および米国特許第4758407B号明細書に記載されている。
【0007】
鉛フリーはんだ材料の使用は、自動車産業を含む他の産業にも広がっている。そのような使用は、例えば、米国特許出願公開第20070224842A1号明細書に記載されている。
【0008】
従来のはんだ材料は、はんだ材料中の鉛を置き換えるように提案されている。そのような材料は、一般に、少量の銀、銅、インジウムおよびビスマスと共に高レベルのスズを含む。しかしながら、このような材料は、スズリッチはんだ材料と、電気的機能部品または電気的機能層の銀またはそれに添加された銀との間のラジカル反応速度を増加させ、その結果、はんだ付け性が悪くなる。これらの従来の材料は、温度変化の結果であるコネクタと基板との熱膨張が原因のコネクタと基板との間の機械的応力を吸収せず、これにより基板に亀裂または他の損傷が生じやすくなる。さらに、コネクタの代替材料の多くは、はんだ付けが困難であり、コネクタを基板上のアンテナなどの電気的機能部品または電気的機能層に十分に接着させることが困難である。その結果、基板上のアンテナなどの電気的機能部品または電気的機能層に代替材料を十分に接着させるために、他の技術が必要となるであろう。
【0009】
例えば、米国特許第6253988号明細書は、低融点、展性、および電気的機能部品または電気的機能層に対する良好なはんだ付け性のために、高量(または大量)のインジウムを含むはんだ材料組成物を開示している。しかしながら、インジウムを含むはんだ材料組成物は、非常に柔らかい相を有し得、このはんだ材料組成物は、応力下で弱い凝集強度を示す。これらの他の従来の材料は不十分であるため、特に鉛フリーはんだ材料ではんだ付けされる導電性コネクタを見出す必要がある。
【0010】
本発明は、ガラスパネルに関し、より詳細には、導電性コネクタを介して連結された電気的機能部品または電気的機能層を含む車両のガラスに関する。そのような電気的機能部品または電気的機能層は、例えばアンテナである。
【0011】
アンテナとは、電力を電波に変換する電気機器であり、逆も同様である。これは、通常、無線送信機または無線受信機で使用される。送信時、無線送信機が無線周波数で振動する電流(すなわち、高周波交流(AC))をアンテナの端子に供給し、アンテナは電磁波(電波)として電流からエネルギーを放射する。受信時、アンテナは、増幅される受信機に印加されるわずかな電圧をその端子で生成するために、電磁波の出力の一部を傍受する。
【0012】
アンテナは、無線を使用するすべての機器の不可欠な構成要素である。これらは、ラジオ放送、テレビ放送、双方向ラジオ、通信レシーバ、レーダ、携帯電話、および衛星通信などのシステムで、ならびにガレージ開扉装置、ワイヤレスマイク、Bluetooth(登録商標)対応デバイス、ワイヤレスコンピュータネットワーク、ベビーモニター、および商品上のRFIDタグなどの他の装置で使用される。
【0013】
典型的には、アンテナは、受信機または送信機に(多くの場合に伝送線を介して)電気的に接続された金属導体の配列からなる。送信機によってアンテナを介して送られる電子の振動電流は、アンテナ素子の周りに振動磁界を生成し、その間、電子の電荷もその素子に沿って振動電界を生成する。
【0014】
自動車の分野では、アンテナは、ラジオ、テレビまたは携帯電話信号(GSM(登録商標))などの情報を送信および/または受信するために使用されるが、車両と通信するために、すなわちキーを挿入することなく車のドアを開けることができるように、または他の車両と通信するために、すなわち車両間の距離を保つように、または環境、すなわち料金所、信号機と通信するためにも使用される。
【0015】
アンテナは、ガラス、すなわちフロントガラス、後部窓、側方窓もしくはサンルーフ内に組み付けられてもよく、またはルーフなどの車体内に固定されてもよい。車両内で使用される様々なアンテナシステムがある。
【0016】
アンテナのサイズは一般に動作周波数の波長(λ)の一部であり、通常、λ/2またはλ/4である。さらに、隣接する誘電体媒体の存在は、放射体の寸法を√ε
rだけ減少させる。ここで、ε
rは誘電体材料の比誘電率である。
【0017】
現代の車は、アナログ音声放送(振幅変調(AM − 0.5〜1.7MHz)および周波数変調(FM − 76〜108MHz))、グローバルポジショニングシステム(GPS − 1575MHz)データ、携帯電話通信、例えばglobal system for communication(GSM(登録商標) − 800/1800MHz)、long term evolution(LTE − 800/1800/2600MHz)、デジタル音声放送(DAB − 170〜240MHz)、リモートキーレスエントリー(RKE − 315/433MHz)、テレビ受信、タイヤ空気圧モニターシステム(TPMS − 315/433MHz)、自動車用レーダ(22〜26GHz/76〜77GHz)、車両間通信(C2C − 5.9GHz)等のための多数のアンテナを含む場合がある。
【0018】
第1のシステムは周知であり、米国特許第8519897B2号明細書に記載されている。低プロファイルアンテナアセンブリまたはシャークフィン型カーアンテナアセンブリが、AM/FMラジオ、衛星デジタル音声ラジオサービス(SDARS)、グローバルポジショニングシステム(GPS)、デジタル音声放送(DAB)−VHF−III、DAB−L、Wi−Fi、Wi−Max、および携帯電話で使用するために構成されている。いくつかの例示的な実施形態では、アンテナアセンブリは、アンテナアセンブリの共通カバーの下において、同じ場所、例えばアンテナアセンブリの共通シャーシ上に配置された少なくとも2つのアンテナを含む。このようなアンテナは、アンテナが頭上にまたは天頂に向かって障害物がない視界を確実に得ることを促すために、自動車のルーフ、フード、またはトランクに一般的に設置される。
【0019】
第2の周知のシステムは、AMおよびFM放送を受信するためのアンテナ素子として車両のバックウィンドウに予め封入されたデフォッガ素子を利用する後部窓アンテナシステムである。このような後部窓アンテナシステムの例は、米国特許第5293173号明細書または米国特許第5099250号明細書中に見出すことができる。車両のリアウィンドウに埋め込まれた既知の組合せのデフォッガ/アンテナ素子システムでは、素子を加熱する高電流信号からアンテナ信号を分離するために素子と車両DC電源との間に2つのバイファイラまたはトロイダルチョークを組み込むことが必要である。
【0020】
第3のシステムは周知であり、米国特許出願公開第2014104122A1号明細書に記載されている。このシステムは、ガラス内に配置されたワイヤまたは透明コーティングを含むアンテナ素子を有するウィンドウアセンブリから構成される。このタイプのアンテナは、一般に、直線状に偏波される無線周波数(RF)信号を受信するように構成される。具体的には、アンテナ素子が受信し得る直線状に偏波されるRF信号は、非限定的に、AM、FM、RKE、DAB、DTVおよび携帯電話信号である。
【0021】
テクノロジーの進化に伴い、車両には通信(情報の受信または発信)が可能な多くのアンテナが装備されている。車体に固定されるアンテナもあれば、ガラスのガラスパネルに配置されるアンテナもある。
【0022】
ガラス上に配置された従来の自動車放送低周波アンテナ(第2または第3のタイプのアンテナ)は、国際公開第2004068643号パンフレットに記載されているように、単一要素によって電気的に供給され、電力供給され、かつ接続される。
【0023】
従来、この要素は銀印刷の領域内にはんだ付けされた単一のクリンプによってアンテナに物理的および電気的に接続される。例えば、10mm×10mmの銀印刷領域が後部窓上に印刷され、ワイヤアンテナに連結される。要素は、能動型増幅器に接続されたワイヤ、ピグテール、銅線、またはMQSフラットケーブルとすることができる。
【0024】
この種のアンテナのはんだ付けは、それが前記所定の領域の内側に取り付けられる限り重要ではなく、それらの低周波数アンテナの機能性および性能に影響を与えない。なぜなら、それは、それらの波長のごく一部だからである。
【0025】
より高い周波数システムの場合、波長がはるかに短くなるため、2つの問題が生じる。
【0026】
第1の問題は、単一ワイヤ線によるものである。単一ワイヤ線は、信号を伝送し、電力および波を受信するのに適していない。より高い周波数での効率的な電力伝達および伝送のためには、同軸ケーブルが必要である。前記同軸ケーブルは、円筒状の金属シールド、グランドプレーンとしての金属グリッドによって同様に被覆される円筒状の誘電性プラスチック材料の内側を通って伸びる中央金属細線または中央ピン、導体を含むアセンブリに一致する。このアセンブリは、最終的に絶縁層によって被覆される。信号、波、電圧、電流は、同軸ケーブルの中央ピンと金属シールドとの間を循環する。
【0027】
一般に、これらの高周波用のアンテナは、同軸ケーブルに接続された少なくとも2つの部分を含む。同軸ケーブルの金属シールドはアンテナの第1の部分(例えば、グランド)に接続され、中央ピンはアンテナの第2の部分に接続され、それによりアンテナのこれらの2つの部分間で電位差、電圧を受け取るまたは伝達する。
【0028】
第2の問題は、はんだ付けによるものである。より高い周波数のアンテナは、小さな波長を有する。従って、小さい揺らぎでさえ波長に相当するため、より高い周波数でのはんだ付けの精度は厳密であるかまたは厳密であり得る。
【0029】
これらの理由から、広帯域アンテナは、同軸ケーブルなどの特定のケーブルに接続する必要がある。この同軸ケーブルは、一方ではアンテナのグランドに、他方ではアンテナの第2部分に接続する必要がある。そのため、ケーブルは、同軸ケーブルの金属シールドをアンテナのグランドに接続し、また中央ピンをアンテナの他の部分に接続することも可能にするコネクタを介してアンテナに接続される。
【0030】
以下の説明は、自動車のガラスに関するが、本発明は、ガラス板と結合された電気的機能部品または電気的機能層を提供し得る建築用ガラスのような他の分野にも適用可能であり得ることが理解される。
【発明の概要】
【0031】
本発明は、ガラス板と、アンテナと、鉛フリーはんだ材料によってアンテナに接合された導電性コネクタと、誘電要素によって分離されかつ絶縁層によって保護される、少なくともピンおよびシールドを含む同軸ケーブルとを含むガラスパネルに関する。導電性コネクタは、同軸ケーブルを導電性コネクタに保持するための少なくとも2つの機械的固定要素を含む。
【0032】
より詳細には、本発明は、ガラス板と、アンテナに接続された導電性コネクタと、例えば、導電性コネクタによってアンテナに接続された同軸ケーブルとを含む車両用ガラスパネルに関する。
【0033】
ガラス板は、車の設計に適合するフラットパネルまたは湾曲パネルとすることができる。ガラス板は、セキュリティに関する仕様書を遵守するように調質することができる。加熱可能なシステム、例えばコーティングまたはワイヤ網をガラス板に適用して、例えば霜取り機能を付加することができる。また、ガラス板は、透明ガラスとするか、またはガラスの特定の組成を用いてもしくは例えばコーティングまたはプラスチック層を適用することによって薄い色を付けられた着色ガラスとすることができる。
【0034】
本発明によれば、ガラスパネルは少なくともアンテナを含み、このアンテナは、より高い周波数、例えばLTEネットワーク(4G)を介して情報を受信および/または送信するための広帯域アンテナであると好ましい。アンテナは、プリントされたアンテナであると好ましい。広帯域アンテナは、好ましくは、700MHz〜3GHzの周波数帯域で動作する。
【0035】
本発明によれば、ガラスパネルは、ガラスパネルにアンテナ機能を追加するために、AM、FM、RKE、DAB、DTVアンテナまたは他のタイプのアンテナのようないくつかの他のアンテナを含むことができる。
【0036】
本発明によれば、同軸ケーブルは、ガラス上に置かれた自動車用アンテナ用に使用されるケーブルよりも良好により高い周波数の信号を搬送することを可能にするように設計されたケーブルであり、誘電要素によって分離されかつ絶縁層によって保護される少なくともピンおよびシールドを含む。
【0037】
好ましくは、同軸ケーブルの金属シールドは、ケーブルがより高い周波数の信号を搬送することを可能にする、特定のインピーダンス(通常、高周波数用の伝送ケーブル/ラインとして50オームのインピーダンスの特定値)を維持するように設計された中央ピンにかしめられる中間伝導性要素の近くに延長される。従って、金属シールドは中間伝導性要素に近く、中央ピンを担持する中間伝導性要素と金属シールドとの間の距離を減少させる。
【0038】
より好ましくは、金属シールドの延長領域は、アンテナの第2の部分と電気的に接続しないように、熱収縮チューブなどの絶縁層によって被覆される。
【0039】
従って、シールドの延長により、高周波の損失が低減され、アンテナの性能を向上させることができる。なぜなら、この延長がなければ、インピーダンスが変化する可能性があり、次いでインピーダンス変化の部分で何らかのリフェクション(refection)が起こり、これが伝送の損失につながり得るからである。
【0040】
本発明によれば、導電性コネクタは、アンテナをケーブルに接続し、EU規制を遵守するために鉛を使用しないはんだ付けによってアンテナに接合される。
【0041】
導電性コネクタ材料は、ガラスパネルと導電性コネクタ材料との熱膨張差が5×10−6/℃未満になるように選択される材料である。
【0042】
本発明によれば、コネクタは、銅、クロム合金、ステンレス鋼合金などの鋼合金、多量のクロムまたはニッケルを含む鋼合金、またはアンテナに接続される、ケーブルを固定できるなどのコネクタ機能の制約およびこの種の材料または合金の他の利点と一致する他のいずれかの材料または合金など、異なるタイプの材料で作製することができる。
【0043】
好ましくは、はんだ材料は、150℃を超える温度で改善された特性を有する。このようなはんだ材料は、独国特許出願公開第102006047764A1号明細書から知られている。このような鉛フリーはんだ材料は、88重量%〜98.5重量%のSn、0.5重量%〜5重量%のAgを含むSn、Agのはんだ合金またはビスマス−スズ−銀(Bi−Sn−Ag)合金をベースとする。好ましくは、はんだ材料は、以下の合金BixSnyAgz(x、y、zは成分の重量%を表す)(この命名法は周知である):Bi57Sn42Ag0、Bi57Sn40Ag3、SnAg3.8Cu0.7、Sn55Bi44Ag1、またはSAC合金(スズ−銀−銅(Sn−Ag−Cu)合金)を少なくともその成分として有する。より好ましくは、はんだ合金は、3重量%のAg、0.5重量%のCuおよび96.5重量%のSnからなるSAC305である。このはんだ材料は、それと共に使用されるコネクタのボンディング特性および高い疲労強度を改善した。
【0044】
本発明によれば、コネクタ要素は、好ましくは、鉄−ニッケル(FeNi)もしくは鉄−クロム(FeCr)合金、またはそれらの混合物からなる。より好ましくは、コネクタ要素は、好ましくはFeCr10、FeCr16、グレード430、FeNi42、FeNi48またはFeNi52からなる。
【0045】
高い周波数が使用されるため、アンテナとケーブルとの間の接続は信号の歪みを制限するために非常に正確でなければならない。この状態を達成するために、コネクタは少なくとも2つの機械的固定要素を含む。これらの機械的固定要素は、ケーブルの移動を回避しながら正しい場所にケーブルを維持することを可能にし、アンテナへの良好な電気的接続を確保する。これらの要素は、コネクタと異なる組成を有してもよい。好ましくは、シールドは、機械的固定要素の少なくとも1つを介してアンテナに接続され、アンテナへの非常に良好な電気的接続を有する。
【0046】
本発明によれば、好ましくは、中央ピンは、導電性コネクタとは別に鉛を使用しないはんだ付けによってアンテナに接続される。好ましくは、中央ピンは中間伝導性要素にかしめられてもよい。この場合、鉛フリーはんだ材料は、中間要素とアンテナとの間に提供される。
【0047】
本発明によれば、好ましくは、導電性コネクタは、機械的固定要素を固定するための少なくとも拡張領域と、鉛フリーはんだ材料によってアンテナに接合するための、拡張領域に接続された少なくとも1つの足部とを含む。これらの2つの部分、すなわち少なくとも1つの足部および拡張領域は、アンテナへのコネクタのはんだ付けおよびケーブルの固定を容易にする。本発明によれば、拡張領域は、アンテナと直接接触していないが、足部を介してアンテナに電気的に接続されている領域である。好ましくは、拡張領域の形状は、長方形部分(湾曲しているまたはしていない)、または他の任意の形状であってもよい。足部は、はんだ材料を介してアンテナと接触している。好ましくは、導電性コネクタは、丸みを帯びた形状を有する少なくとも1つの足部を含む。丸みを帯びた形状という用語は、非限定的に、楕円形、卵形、円形、半円形、クローバー形、多円形、多面体、例えば切断縁部のある円の一部のような全体的に丸みを帯びた形状、または丸みを帯びた角を有する長方形のような、丸みを帯びた縁部を有する長方形を有するいずれの形状も意味する。それは単一のリング形状であってもよい。
【0048】
より好ましくは、導電性コネクタは、コネクタをアンテナに取り付けるプロセス中に安定性を得るために、およびケーブルのいかなる移動も回避することによってガラスパネルの寿命までケーブルを安定させるために2つの足部を含む。
【0049】
本発明によれば、導電性コネクタは、足部間に設けられた拡張領域の少なくとも一部を含む。拡張領域の少なくとも一部が足部間に設けられている場合、拡張領域の形状はU字型またはT字型である。U字型とは、2つの足部を接続する一種のブリッジを意味する。T字型とは、実質的に垂直な部分を有する一種のブリッジを意味する。この種の形状の利点は、高い安定性を有する対称的なコネクタを有することである。
【0050】
本発明によれば、ケーブルをコネクタに保持するための機械的固定要素が設けられる。それらは、好ましくは拡張領域に固定される。好ましくは、機械的固定要素は、プロセス所要時間を短縮しかつかしめ工程後のケーブルの移動を回避するために、ケーブルをコネクタにかしめるためのかしめ要素である。
【0051】
機械的固定要素は拡張領域と同じ組成を有し、拡張領域と同一部品として製造されていると好ましい。
【0052】
より好ましくは、ケーブルの機械的固定による拡張領域の変形を回避するために、機械的固定要素は、導電性コネクタの拡張領域の少なくとも1つの縁部に固定される。
【0053】
より好ましくは、拡張領域との不安定な同軸ケーブルの接続による挙動の揺らぎを排除するために、機械的固定要素は、導電性コネクタの拡張領域の
対向する2つの縁部に固定される。
【0054】
本発明の一実施形態では、導電性コネクタは3つの機械的固定要素を含み、機械的固定要素のうちの2つが同軸ケーブルのシールドに電気的に接続され、かつ導電性コネクタの拡張領域の
対向する2つの縁部に固定され、および機械的固定要素のうちの1つが同軸の絶縁層に固定される。この特徴により、電気的接続を確保し、拡張領域との不安定な同軸ケーブルの接続による挙動の揺らぎを排除することができる。
【0055】
本発明はまた、同軸ケーブルを導電性コネクタに保持するための少なくとも2つの機械的固定要素を含むコネクタに関する。
【0056】
本発明によれば、コネクタは、好ましくは、機械的固定要素を固定するための少なくとも拡張領域と、鉛フリーはんだによってアンテナに接合するための、拡張領域に接続された少なくとも1つの足部とを含む。
【0057】
本発明によれば、コネクタは、好ましくは2つの足部を含む。
【0058】
本発明によれば、コネクタは、好ましくは、導電性コネクタの拡張領域の少なくとも1つの縁部に固定される機械的固定要素を含む。
【0059】
コネクタの利点は、このようなコネクタを含む本発明によるガラスパネルの利点と同じであり、より詳細には説明しない。
【0060】
ここで、限定ではなく例示として提供される図面および例示的な実施形態を参照して、本発明がより詳細に説明される。図面は概略的な表現であり、一定の縮尺比ではない。図面は決して本発明を限定するものではない。例を用いてさらなる利点が説明される。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【
図1】本発明によるガラスパネルの第1の実施形態の平面図である。
【
図2】本発明によるガラスパネルの第1の実施形態の側面図である。
【
図3】本発明による導電性コネクタの実施形態の平面図である。
【
図4】本発明による導電性コネクタの実施形態のA−A’からの側面図である。
【
図5】本発明による導電性コネクタの実施形態のB−B’からの側面図である。
【
図6】本発明による導電性コネクタの別の例の平面図である。
【
図7】本発明による導電性コネクタの別の例のC−C’からの側面図である。
【
図8】本発明による導電性コネクタの別の例のD−D’からの側面図である。
【
図9】本発明の一実施形態による金属シールドの延長部を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0062】
本発明の第1の実施形態による
図1および
図2を参照すると、ガラスパネル1は、プリントされた広帯域アンテナ10、11を担持するガラス板2を含む。2つの足部101、102とU字形拡張領域103とを含む導電性コネクタ100が、はんだ材料9を介してアンテナの第1の部分10に電気的に接続されている。例えば、導電性コネクタ100は、GRADE430(Fe、<0.12%C、16〜18%Cr、<0.75%Ni、<1.0%Mn、<1.0%Si、<0.040%P、<0.030%S)材料から作製され、はんだ材料9はSAC305材料から作製される。
【0063】
3つの機械的固定要素110、111、112が拡張領域103に固定され、同軸ケーブル120を維持する。同軸ケーブル120は、中央ピン123と、同軸ケーブルを取り囲みかつプラスチック材料であり得る絶縁層121によって保護されたシールド122とを含み、3つの機械的固定要素110、111、112によってかしめられる。この実施形態では、機械的固定要素110はケーブル120をかしめ、絶縁層121と接触している。この機械的固定要素110は、張力および与えられる必要な剛性のほとんどすべてを担当する。2つの他の機械的固定要素111、112はケーブルをかしめ、シールド122と接触する。これらの2つの他の機械的固定要素111、112は、導電性コネクタ100の拡張領域103の両縁に固定される。拡張領域の後ろの第3の機械的固定要素112は、確実な電気的接続を可能にし、拡張領域との不安定な同軸ケーブル接続に起因する挙動の揺らぎを排除する。同軸ケーブル120の中央ピン123は、中間導電性要素6に対してかしめられる。この中間導電性要素6は、はんだ材料9によってアンテナの第2の部分11に電気的に接続される。中央ピン123および中間導電性要素6は、安定した性能を得るために、作動毎に同じ形状および特性を維持するようにかしめられ、はんだ付けされる。
【0064】
導電性コネクタ100および中央ピン123および中間導電性要素6のはんだ付けプロセスは、電気加熱はんだ付けのための、およびはんだフリー材料の場合には鉛フリー用途のためのはんだ付けヘッドと適合するはずである。
【0065】
本発明の他の1つの重要な点は、最小限の曲げで中央ピン123のはんだ付けを可能にするために、可能な限りガラスの近くに存在するように同軸ケーブル120が拡張領域103の下側領域にかしめられることである。従って、同じ位置、精度、電気的性能を有するはんだ付けのより良い再現性が得られる。そうでない場合、中央ピンの湾曲は同軸設計を変化させ、損失および非効率な伝送モードを追加する。
【0066】
下側に固定された同軸ケーブル120は、ガラス板の表面と直接接触してもしなくてもよい。しかしながら、工業上の理由から、はんだ付け後にガラスに生じる可能性のある応力点を回避し中央ピンの湾曲を制限するために、同軸ケーブルとガラス板の表面との間の距離は最小限であることが好ましい。
【0067】
図3〜
図5を参照すると、本発明による導電性コネクタの一実施形態によれば、導電性コネクタ100は、2つの足部101、102間にU字形の拡張領域103を含む。2つの機械的固定要素110、111は、拡張領域103に固定される。第1の機械的固定要素110は、拡張領域103の一端に固定され、同軸ケーブルの絶縁層をかしめることができる。第2の機械的固定要素111は、拡張領域103に、好ましくは拡張領域103の凹部105に固定され、同軸ケーブルのシールドをかしめることができる。
【0068】
図6〜
図8を参照すると、本発明による導電性コネクタの別の例によれば、導電性コネクタ100は、2つの足部101、102間にU字形の拡張領域103を含む。導電性コネクタ100は、拡張領域103の両側の縁に固定されかつ同軸ケーブルのシールドをかしめることができる2つの機械的固定要素111、112を含む。導電性コネクタ100はまた、2つの第1の機械的固定要素111、112のうちの1つの後ろに固定されかつ同軸ケーブルの絶縁層をかしめることができる第3の機械的固定要素110を含む。
【0069】
本発明の一実施形態によれば、および
図9に示すように、同軸ケーブルは、中央ピンをかしめる中間導電性要素により近付くように、金属シールド122の延長部を追加してもよい。このようにして、シールドの延長により高周波の損失が低減され、アンテナの性能を向上させることができる。なぜなら、この延長がなければ、インピーダンスが変化する可能性があり、次にリフェクションがインピーダンス変化の部分で起こり、これが伝送の損失につながり得るからである。
【0070】
より好ましくは、金属シールドの延長領域は、アンテナの第2の部分に電気的に接続されないように、熱収縮チューブなどの絶縁層によって被覆される。