(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784005
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】MEMS素子およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
H04R 19/04 20060101AFI20201102BHJP
B81B 3/00 20060101ALI20201102BHJP
B81C 1/00 20060101ALI20201102BHJP
H04R 31/00 20060101ALI20201102BHJP
H01L 21/768 20060101ALI20201102BHJP
H01L 23/532 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
H04R19/04
B81B3/00
B81C1/00
H04R31/00 C
H01L21/90 N
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2017-43419(P2017-43419)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-148473(P2018-148473A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000191238
【氏名又は名称】新日本無線株式会社
(72)【発明者】
【氏名】荒木 新一
【審査官】
堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2016−066969(JP,A)
【文献】
特開昭55−115216(JP,A)
【文献】
特開2007−104641(JP,A)
【文献】
特開2016−185574(JP,A)
【文献】
特開2008−028513(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 19/04
B81B 3/00
B81C 1/00
H01L 21/768
H01L 23/532
H04R 31/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バックチャンバーを備えた基板と、該基板上に、スペーサーを挟んで固定電極と可動電極とを配置することでエアーギャップが形成されたMEMS素子において、
前記可動電極は、少なくとも第1のメンブレン層と第1のメンブレン層より薄い第2のメンブレン層とからなり、前記第1のメンブレン層と前記第2のメンブレン層を貫通する複数のスリットが形成されていることと、
前記スリットは、前記第1のメンブレン層に形成された第1のスリットと、前記第2のメンブレン層に形成された第2のスリットが重なるように配置されていることと、
前記第2のスリットの幅は、前記第1のスリットの幅よりも狭いことを特徴とするMEMS素子。
【請求項2】
バックチャンバーを備えた基板上に、スペーサーを挟んで固定電極と可動電極とを配置したMEMS素子の製造方法において、
前記基板表面に第1の絶縁膜を形成する工程と、
該第1の絶縁膜上に、第1のスリットを有する第1のメンブレン層あるいは前記第1のスリットの幅より狭い幅の第2のスリットを有する前記第1のメンブレン層より薄い第2のメンブレン層を形成する工程と、
前記第1のメンブレン層上に前記第2のメンブレン層を形成し、あるいは前記第2のメンブレン層上に前記第1のメンブレン層を形成し、前記第1のメンブレン層および前記第2のメンブレン層を含む可動電極を形成する工程と、
前記可動電極上に、第2の絶縁膜を形成する工程と、
該第2の絶縁膜上に、前記固定電極を形成する工程と、
前記固定電極に貫通孔を形成する工程と、
前記基板の一部をエッチング除去し、前記バックチャンバーを形成する工程と、
前記貫通孔から前記第2の絶縁膜の一部をエッチング除去し、前記スペーサーを形成し、前記固定電極と前記可動電極との間にエアーギャップを形成すると同時に、前記第1の絶縁膜の一部を除去し、前記第1のスリットと前記第2のスリットとが連通する前記可動電極を形成する工程と、を含むことを特徴とするMEMS素子の製造方法。
【請求項3】
請求項2記載のMEMS素子の製造方法において、
前記第1のメンブレン層上に前記第2のメンブレン層を含む可動電極を形成する工程は、前記第1のスリット内に第3の絶縁膜を充填した後、前記第2のメンブレン層を形成する工程を含み、
前記可動電極を形成する工程は、前記エアーギャップを形成すると同時に、前記第1の絶縁膜の一部と前記第3の絶縁膜を除去し、前記第1のスリットと前記第2のスリットとが連通する前記可動電極を形成する工程を含むことを特徴とするMEMS素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MEMS素子に関し、特にマイクロフォン、各種センサ、スイッチ等として用いられる容量型のMEMS素子およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、半導体プロセスを用いたMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)素子では、半導体基板上に可動電極、犠牲層及び固定電極を形成した後、犠牲層の一部を除去することで、スペーサーを介して固定された可動電極と固定電極との間にエアーギャップ(中空)構造が形成されている。
【0003】
例えば、容量型MEMS素子であるコンデンサマイクロフォンでは、音圧を通過させる複数の貫通孔を備えた固定電極と、音圧を受けて振動する可動電極とを対向して配置し、音圧を受けて振動する可動電極の変位を電極間の容量変化として検出する構成となっている。
【0004】
ところで、コンデンサマイクロフォンの感度を上げるには、音圧による可動電極の変位を大きくする必要がある。そのため可動電極は、引っ張り応力が残留する膜を用いるのが一般的である。一方この残留応力が大きすぎると可動電極の破損の原因となってしまう。
【0005】
そこで、膜自体の残留応力を制御する方法や、構造上の工夫により残留応力の影響を緩和する方法が提案されている。具体的には、前者の場合、固定電極をLPCVD(Low Pressure Chemical Vapor Deposition)法により堆積させ、堆積後のアニール条件等を制御して残留応力を調整する方法が、後者の場合、スリットを形成する方法(特許文献1)により残留応力を調整する方法が提案されている。
【0006】
図14は、スリットが形成された従来のMEMS素子の説明図である。
図14に示すようにシリコン基板1上に熱酸化膜2を介して可動電極8が形成されている。可動電極8上には、スペーサー15を介して固定電極10と窒化膜12が形成され、固定電極10および窒化膜12からなるバックプレートには貫通孔13が形成されている。一方、可動電極8にはスリット20が形成され、残留応力が調整されている。可動電極8と固定電極10の間に形成されたエアーギャップ21は、スリット20を介してシリコン基板1に形成されたバックチャンバー14に連通する構造となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−210083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、可動電極にスリットを形成する場合、可動電極の厚さが厚くなると、スリットの微細加工が困難になるため、スリット幅が広くなってしまう。その結果、低域感度が低下するという問題があった。一方、可動電極を薄くすると、スリット幅を狭くすることが可能となり、低域感度の低下を抑制することができる。しかしながらその結果、可動電極自体の強度が低下してしまうという問題があった。本発明は、この様な問題を解決するため、MEMS素子の低域感度低下の抑制と、可動電極の強度を維持することができるMEMS素子およびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本願請求項1に係る発明は、バックチャンバーを備えた基板と、該基板上に、スペーサーを挟んで固定電極と可動電極とを配置することでエアーギャップが形成されたMEMS素子において、前記可動電極は、少なくとも第1のメンブレン層と第1のメンブレン層より薄い第2のメンブレン層とからなり、前記第1のメンブレン層と前記第2のメンブレン層を貫通する複数のスリットが形成されていることと、前記スリットは、前記第1のメンブレン層に形成された第1のスリットと、前記第2のメンブレン層に形成された第2のスリットか重なるように配置されていることと、前記第2のスリットの幅は、前記第1のスリットの幅よりも狭いことを特徴とする。
【0010】
本願請求項2に係る発明は、バックチャンバーを備えた基板上に、スペーサーを挟んで固定電極と可動電極とを配置したMEMS素子の製造方法において、前記基板表面に第1の絶縁膜を形成する工程と、該第1の絶縁膜上に、第1のスリットを有する第1のメンブレン層あるいは前記第1のスリットの幅より狭い幅の第2のスリットを有する第1のメンブレン層より薄い第2のメンブレン層を形成する工程と、前記第1のメンブレン層上に前記第2のメンブレン層を形成し、あるいは前記第2のメンブレン層上第1のメンブレン層を形成し、前記第1のメンブレン層および前記第2のメンブレン層を含む可動電極を形成する工程と、前記可動電極上に、第2の絶縁膜を形成する工程と、該第2の絶縁膜上に、前記固定電極を形成する工程と、前記固定電極に貫通孔を形成する工程と、前記基板の一部をエッチング除去し、前記バックチャンバーを形成する工程と、前記貫通孔から前記第2の絶縁膜の一部をエッチング除去し、前記スペーサーを形成し、前記固定電極と前記可動電極との間にエアーギャップを形成すると同時に、前記第1の絶縁膜の一部を除去し、前記第1のスリットと前記第2のスリットとが連通する前記可動電極を露出する工程と、を含むことを特徴とする。
【0011】
本願請求項3に係る発明は、請求項2記載のMEMS素子の製造方法において、前記第1のメンブレン層上に前記第2のメンブレン層を含む可動電極を形成する工程は、前記第1のスリット内に第3の絶縁膜を充填した後、前記第2のメンブレン層を形成する工程を含み、前記可動電極を形成する工程は、前記エアーギャップを形成すると同時に、前記第1の絶縁膜の一部と前記第3の絶縁膜を除去し、前記第1のスリットと前記第2のスリットとが連通する前記可動電極を形成する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明のMEMS素子の製造方法により製造したMEMS素子は、可動電極を厚さの異なるメンブレン層からなる多層構造とし、可動電極に形成するスリットを、厚いメンブレン層に形成された幅の広いスリットと薄いメンブレン層に形成された幅の狭いスリットとで構成している。このため、幅の狭いスリットにより低域感度の低下を抑制することが可能となる。同時に、厚いメンブレン層により薄いメンブレン層を補強し、可動電極に強度を持たせることが可能となる。
【0013】
また本発明のMEMS素子の製造方法によれば、第1のメンブレン層上に第2のメンブレン層を含む可動電極を形成する際、下層の第1のメンブレン層の第1のスリットを第3の絶縁膜で埋めこむことで、上層に形成する第2のメンブレン層の第2のスリットの幅を狭く加工することが容易となり効果が大きい。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図2】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図3】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図4】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図5】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図6】本発明の第1の実施例に係るMEMS素子の説明図である。
【
図7】本発明の第2の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図8】本発明の第2の実施例に係るMEMS素子の説明図である。
【
図9】本発明の第3の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図10】本発明の第3の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図11】本発明の第3の実施例に係るMEMS素子の説明図である。
【
図12】本発明の第4の実施例に係るMEMS素子の製造工程の説明図である。
【
図13】本発明の第4の実施例に係るMEMS素子の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に係るMEMS素子は、可動電極を厚さの異なる複数のメンブレン層からなる多層構造とし、可動電極に形成するスリットを、厚いメンブレン層に形成された幅の広いスリットと薄いメンブレン層に形成された幅の狭いスリットとが重なり合うように配置することで、低域感度の低下を抑制し、かつ可動電極の強度を維持することが可能となる。以下、MEMS素子としてコンデンサマイクロフォンを例にとり、本発明のMEMS素子の製造方法に従い、本発明の実施例について説明する。
【実施例1】
【0016】
本発明の第1の実施例について説明する。まず、結晶方位(100)面の厚さ420μmのシリコン基板1上に、厚さ1μm程度の熱酸化膜2(第1の絶縁膜に相当)を形成し、熱酸化膜2上に、CVD(Chemical Vapor Deposition)法により厚さ1μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、幅1〜2μm程度の第1のスリット3を有する第1のメンブレン層4を形成する(
図1)。
【0017】
その後、第1のメンブレン層4上にCVD法により酸化膜を積層形成し、第1のスリット3内を酸化膜5(第3の絶縁膜に相当)で埋め込み、平坦化する。次に、第1のメンブレン層4上の酸化膜を除去し、第1のスリット3内に酸化膜5を残し、第1のメンブレン層4を露出する。その後、第1のメンブレン層4および酸化膜5上に、厚さ0.08μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、第1のスリット3に埋め込んだ酸化膜5上に幅0.1〜0.2μm程度の第2のスリット6が配置する第2のメンブレン層7を形成する(
図2)。
【0018】
以下、通常の製造工程に従い、第1のメンブレン層4と第2のメンブレン層7からなる可動電極8上に、厚さ2.0〜4.0μm程度のUSG(Undoped Silicate Glass)膜からなる犠牲層9(第2の絶縁膜に相当)を積層形成し、さらに犠牲層9上に、厚さ0.1〜1.0μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、固定電極10を積層形成する(
図3)。
【0019】
犠牲層9の一部をエッチング除去し、先に形成した可動電極8の一部を露出させる。露出した可動電極8および固定電極10にそれぞれ接続するアルミニウム等の導体膜からなる配線膜11を形成する(
図4)。
【0020】
全面に窒化膜12を堆積させた後、通常のフォトリソグラフ法により音圧を可動電極8に伝えるための貫通孔13を形成し、貫通孔13内に犠牲層9を露出させる。その後、シリコン基板1の裏面側から熱酸化膜2が露出するまでシリコン基板1を除去し、バックチャンバー14を形成する(
図5)。
【0021】
その後、窒化膜12および固定電極10に形成された貫通孔13を通して犠牲層9の一部を除去することで、スペーサー15により固定電極10と可動電極8が固定されたエアーギャップ構造が形成される。このエッチングにより、熱酸化膜2の一部および第1のスリット内の酸化膜5も除去される(
図6a)。その結果、第1のスリット3および第2のスリット6が開口する(
図6b)。
【0022】
このように形成する本実施例のMEMS素子のスリットは、
図6(b)に示すように幅の広い第1のスリット3と幅の狭い第2のスリット6で構成されており、この幅の狭い第2のスリット6により低域感度の低下を抑制することが可能となる。さらに、可動電極が厚い第1のメンブレン層4と薄い第2のメンブレン層7で構成することで、厚い第1のメンブレン層4により薄い第2のメンブレン層7を補強することができるため、可動電極8に強度を持たせることが可能となる。
【実施例2】
【0023】
次に、本発明の第2の実施例について説明する。まず、上記第1の実施例同様、結晶方位(100)面の厚さ420μmのシリコン基板1上に、厚さ1μm程度の熱酸化膜2を形成し、熱酸化膜2上に、CVD法により厚さ1μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、幅1〜2μm程度の第1のスリット3を有する第1のメンブレン層4を形成する(
図1)。
【0024】
その後、第1のスリット3内に酸化膜5を充填せず、第1のメンブレン層4上および第1のスリット3内に露出する熱酸化膜2上に、厚さ0.08μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、第1のスリット3内に幅0.1〜0.2μm程度の第2のスリット6が配置する第2のメンブレン層7を形成する(
図7)。
【0025】
このように第1のスリット3内を酸化膜5で充填せずに第2のスリット6を形成することで、製造工程の短縮が可能となる。
【0026】
次に上記第1の実施例同様、第1のメンブレン層4と第2のメンブレン層7からなる可動電極8上に厚さ2.0〜4.0μm程度のUSG膜からなる犠牲層9を積層する。このとき、第1のスリット3および第2のスリット6により形成される段差は、犠牲層9の厚さより十分に小さいため、犠牲層9の形成のみで平坦化することが可能である。以下、上記第1の実施例同様の製造工程に従い、
図8に示す構造のMEMS素子を形成することができる。
【0027】
このように形成する本実施例のスリットは、
図8(b)に示すように幅の広い第1のスリット3内に幅の狭い第2のスリット6が配置しており、この幅の狭い第2のスリット6により低域感度の低下を抑制することが可能となる。さらに、可動電極8が厚い第1のメンブレン層4と薄い第2のメンブレン層7で構成することで、この厚い第1のメンブレン層4により薄い第2のメンブレン層7を補強することができるため、可動電極8に強度を持たせることが可能となる。
【実施例3】
【0028】
次に、本発明の第3の実施例について説明する。まず、結晶方位(100)面の厚さ420μmのシリコン基板1上に、厚さ1μm程度の熱酸化膜2を形成し、熱酸化膜2上に、CVD法により厚さ0.08μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、幅0.1〜0.2μm程度の第2のスリット6を有する第2のメンブレン層7を形成する(
図9)。
【0029】
その後、第2のメンブレン層7上および第2のスリット6内に露出する熱酸化膜2上に、CVD法により厚さ0.01〜0.05μm程度の酸化膜16(第3の絶縁膜に相当)を積層形成する。ここで、酸化膜16は
図10(b)に示すように平坦化する必要はない。その後形成する第1のメンブレン層4のパターニングが微細化を要求するものはないからである。この酸化膜16は第1のメンブレン層4のエッチングストッパーとして機能している。次に、酸化膜16上にCVD法により厚さ1μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。その後、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、第2のスリット6の上部に幅1〜2μm程度の第1のスリット3を有する第1のメンブレン層4を形成する(
図10)。
【0030】
次に、上記第1の実施例同様、第2のメンブレン層7および第1のメンブレン層4からなる可動電極8上に厚さ0.2〜4.0μm程度のUSGからなる犠牲層9を積層する。このとき、第2のスリット6および第1のスリット3により形成される段差は、犠牲層9の厚さより十分小さいため、犠牲層9の形成のみで平坦化することが可能である。以下、上記第1および第2の実施例同様、貫通孔13を形成し、貫通孔13内に犠牲層9を露出させる。その後、シリコン基板1の裏面側から熱酸化膜2を露出するまでシリコン基板1を除去し、バックチャンバー14を形成する(
図5に相当)。
【0031】
その後、窒化膜12および固定電極10に形成された貫通孔13を通して犠牲層9の一部を除去することで、スペーサー15により固定電極10と可動電極8が固定されたエアーギャップ構造が形成される。このエッチングにより、熱酸化膜2の一部および第1のスリット3内に露出する酸化膜16も除去される(
図11b)。その結果、第2のスリット6および第1のスリット3が開口する(
図11a)。
【0032】
このように第2のスリット6内を酸化物16で充填せずに第1のスリット6を形成することで、製造工程の短縮が可能となる。
【0033】
また、本実施例のスリットも、
図11(b)に示すように幅の狭い第2のスリット6の上に幅の広い第1のスリット3が配置しており、実施例1に示したスリットと配置が逆としても、幅の狭い第2のスリット6により低域感度の低下を抑制することが可能となり、厚い第1のメンブレン層4により薄い第2のメンブレン層7を補強することも可能となる。
【実施例4】
【0034】
次に、本発明の第4の実施例について説明する。まず、上記第3の実施例同様、結晶方位(100)面の厚さ420μmのシリコン基板1上に、厚さ1μm程度の熱酸化膜2を形成し、熱酸化膜2上に、CVD法により厚さ0.08μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、幅0.1〜0.2μm程度の第2のスリット6を有する第2のメンブレン層7を形成する(
図9)。
【0035】
その後、第2のメンブレン層7上および第2のスリット6内に露出する熱酸化膜2上に、CVD法により厚さ0.01〜0.05μm程度の酸化膜16(第3の絶縁膜に相当)を積層形成する。次に、酸化膜16上にCVD法により厚さ1μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。その後、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、第2のスリット6の上部に幅1〜2μm程度の第1のスリット3を有する第1のメンブレン層4を形成する(
図10)。
【0036】
次に、第1のメンブレン層4上にCVD法により酸化膜を積層形成し、第1のスリット3内を酸化膜17(これも第3の絶縁膜に相当)で埋め込み、平坦化する。次に、第1のメンブレン層4上の酸化膜17を除去し、第2のスリット6および第1のスリット3内に酸化膜17を残し、第1のメンブレン層4を露出する。その後、平坦化された第1のメンブレン層4上に、厚さ0.08μm程度の導電性ポリシリコン膜を積層形成する。次に、通常のフォトリソグラフ法によりパターニングし、第1のスリット3に埋め込んだ酸化膜17上に幅0.1〜0.2μm程度の第3のスリット18(第2のスリットに相当)を有する第3のメンブレン層19(第2のメンブレン層に相当)を形成する(
図12)。
【0037】
以下、上記第1の実施例同様、第2のメンブレン層7、第1のメンブレン層4および第3のメンブレン層19からなる可動電極8上に厚さ2.0〜4.0μm程度のUSG膜からなる犠牲層9を積層する。その後、シリコン基板1の裏面側から熱酸化膜2を露出するまでシリコン基板1を除去し、バックチャンバー14形成する。
【0038】
その後、窒化膜12および固定電極10に形成された貫通孔13を通して犠牲層9の一部を除去することで、スペーサー15により固定電極10と可動電極8が固定されたエアーギャップ構造が形成される。このエッチングにより、熱酸化膜2の一部および第3のスリット18内に露出する酸化膜17と、酸化膜17の除去により露出する酸化膜16を除去される(
図13a)。その結果、第3のスリット18、第1のスリット3および第2のスリット6が開口する(
図13b)。
【0039】
このように本実施例のスリットも、
図13(b)に示すように幅の狭い第2のスリット6の上に幅の広い第1のスリット3が配置され、さらに幅の狭い第3のスリット18が配置されており、幅の狭い第2のスリット6と第3のスリット18により低域感度の低下を抑制することが可能となる。さらに、厚い第1のメンブレン層4により、薄い第2のメンブレン層7および第3のメンブレン層19を補強することができるため、可動電極8に強度を持たせることが可能となる。
【0040】
1:シリコン基板、2:熱酸化膜、3:第1のスリット、4:第1のメンブレン層、5:酸化膜、6:第2のスリット、7:第2のメンブレン層、8:可動電極、9:犠牲層、10:固定電極、11:配線膜、12:窒化膜、13:貫通孔、14:バックチャンバー、15:スペーサー、16:酸化膜、17:酸化膜、18:第3のスリット、19:第3のメンブレン層、20:スリット、21:エアーギャップ