特許第6784069号(P6784069)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ JNC株式会社の特許一覧 ▶ JNC石油化学株式会社の特許一覧

特許6784069液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6784069
(24)【登録日】2020年10月27日
(45)【発行日】2020年11月11日
(54)【発明の名称】液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子
(51)【国際特許分類】
   C07C 22/08 20060101AFI20201102BHJP
   C07C 43/225 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/06 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/12 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/18 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/20 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/30 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/32 20060101ALI20201102BHJP
   C09K 19/34 20060101ALI20201102BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20201102BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20201102BHJP
【FI】
   C07C22/08CSP
   C07C43/225 C
   C09K19/06
   C09K19/12
   C09K19/18
   C09K19/20
   C09K19/30
   C09K19/32
   C09K19/34
   G02F1/13 500
   G02F1/1337 520
【請求項の数】11
【全頁数】68
(21)【出願番号】特願2016-118985(P2016-118985)
(22)【出願日】2016年6月15日
(65)【公開番号】特開2017-19767(P2017-19767A)
(43)【公開日】2017年1月26日
【審査請求日】2019年4月5日
(31)【優先権主張番号】特願2015-135918(P2015-135918)
(32)【優先日】2015年7月7日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】311002067
【氏名又は名称】JNC株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】596032100
【氏名又は名称】JNC石油化学株式会社
(72)【発明者】
【氏名】笹田 康幸
【審査官】 神谷 昌克
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−155757(JP,A)
【文献】 特開2006−307150(JP,A)
【文献】 特開2005−314385(JP,A)
【文献】 特開2004−075667(JP,A)
【文献】 特開2002−371026(JP,A)
【文献】 国際公開第2014/159054(WO,A1)
【文献】 特開2011−026301(JP,A)
【文献】 特表2004−513063(JP,A)
【文献】 特開2002−289195(JP,A)
【文献】 特開平06−329620(JP,A)
【文献】 米国特許第04960884(US,A)
【文献】 特表2013−518977(JP,A)
【文献】 特表2017−538756(JP,A)
【文献】 特許第6413790(JP,B2)
【文献】 特許第6413632(JP,B2)
【文献】 Bulletin of the Chemical Society of Japan,1986年,Vol.59, No.2,pp.447-452
【文献】 Journal of Materials Chemistry,2009年,Vol.19, No.39,pp.7208-7215
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C09K
G02F
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(1)で表される化合物。

式(1)において、
式(1a)において、
およびRは独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルコキシであり;
Xは−CF、またはフッ素であり、Yは−CF、−CFH、−CFH、またはフッ素であり、Xがフッ素であるときは、Yは−CF、−CFH、または−CFHである。
【請求項2】
式(1a)で表される、請求項1に記載の化合物。

式(1a)において、
およびRは独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数から10のアルコキシであり;Yは−CF、−CFH、−CFH、またはフッ素である。
【請求項3】
式(1a)において、Rが炭素数1から10のアルキルであり、Rが炭素数から10のアルコキシであり;Yが−CFである、請求項に記載の化合物。
【請求項4】
式(1b)で表される、請求項1に記載の化合物。

式(1b)において、
およびRは独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数から10のアルコキシであり;Yは−CF、−CFH、または−CFHである。
【請求項5】
式(1b)において、
およびRが炭素数から10のアルコキシであり;Yが−CFである、請求項に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1からのいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【請求項7】
式(2)から(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、請求項に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−COO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−である。
【請求項8】
式(5)から(11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項またはに記載の液晶組成物。


式(5)から(11)において、
13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよく;
環C、環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
14、Z15、Z16、およびZ17は独立して、単結合、−COO−、−CHO−、−OCF−、−CHCH−、または−OCFCHCH−であり;
11およびL12は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【請求項9】
式(12)から(14)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(12)から(14)において、
16は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−CF、−CHF、−CHF、−OCF、−OCHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFであり;
環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
18、Z19、およびZ20は独立して、単結合、−COO−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−(CH−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素である。
【請求項10】
式(15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、請求項からのいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(15)において、
17は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Eは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
21は、単結合、−COO−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−C≡C−であり;
15およびL16は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【請求項11】
請求項から10のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶性化合物、液晶組成物および液晶表示素子に関する。さらに詳しくは、1つのフェニレン環を有し、誘電率異方性が負の液晶性化合物、この化合物を含有する液晶組成物、およびこの組成物を含む液晶表示素子に関する。
【0002】
液晶表示素子は、パソコン、テレビなどのディスプレイに広く利用されている。この素子は、液晶性化合物の光学異方性、誘電率異方性などの物性を利用したものである。液晶表示素子の動作モードとしては、PC(phase change)、TN(twisted nematic)、STN(super twisted nematic)、BTN(bistable twisted nematic)、ECB(electrically controlled birefringence)、OCB(optically compensated bend)、IPS(in-plane switching)、VA(vertical alignment)、FFS(fringe field switching)、PSA(polymer sustained alignment)などのモードがある。PSAモードの素子では、重合体を含有する液晶組成物が用いられる。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になる。
【0003】
このような液晶表示素子では、適切な物性を有する液晶組成物が使われている。素子の特性をさらに向上させるには、この組成物に含まれる液晶性化合物が、次の(1)から(8)で示す物性を有するのが好ましい。(1)熱や光に対する高い安定性、(2)高い透明点、(3)液晶相の低い下限温度、(4)小さな粘度(η)、(5)適切な光学異方性(Δn)、(6)負に大きな誘電率異方性(Δε)、(7)適切な弾性定数、(8)他の液晶性化合物との優れた相溶性。
【0004】
液晶性化合物の物性が素子の特性に及ぼす効果は、次のとおりである。(1)のように、熱や光に対する高い安定性を有する化合物は、素子の電圧保持率を上げる。これによって、素子の寿命が長くなる。(2)のように、高い透明点を有する化合物は、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(3)のように、ネマチック相、スメクチック相などのような液晶相の低い下限温度、特にネマチック相の低い下限温度を有する化合物も、素子の使用可能な温度範囲を広げる。(4)のように、粘度の小さな化合物は、素子の応答時間を短くする。
【0005】
素子の設計に応じて、(5)のように適切な光学異方性、すなわち大きな光学異方性または小さな光学異方性、を有する化合物が必要である。素子のセルギャップを小さくすることにより応答時間を短くする場合には、大きな光学異方性を有する化合物が適している。(6)のように正または負に大きな誘電率異方性を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。これによって、素子の消費電力が小さくなる。一方、小さな誘電率異方性を有する化合物は、組成物の粘度を下げることによって、素子の応答時間を短くする。この化合物は、ネマチック相の上限温度を上げることによって素子の使用可能な温度範囲を広げる。
【0006】
(7)に関しては、大きな弾性定数を有する化合物は、素子の応答時間を短くする。小さな弾性定数を有する化合物は、素子のしきい値電圧を下げる。したがって、向上させたい特性に応じて適切な弾性定数が必要になる。(8)のように他の液晶性化合物との優れた相溶性を有する化合物が好ましい。これは、異なった物性を有する液晶性化合物を混合して、組成物の物性を調節するからである。
【0007】
これまでに、負に大きな誘電率異方性を有する液晶性化合物が種々合成されてきた。大きな光学異方性を有する液晶性化合物も種々合成されてきた。新規な化合物には、従来の化合物にはない優れた物性が期待されるからである。新規な化合物を液晶組成物に添加することによって、組成物において少なくとも2つの物性の間で適切なバランスが得られると期待されるからである。このような状況から、上記の物性(1)から(8)に関して優れた物性と適切なバランスを有する化合物が望まれている。
【0008】
特許文献1の実施例1には、下記の化合物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第2011/098224号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
第一の課題は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。類似の化合物と比較して、大きな誘電率異方性を有する化合物を提供することである。第二の課題は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この課題は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の課題は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、式(1)で表される化合物、この化合物を含有する液晶組成物、この組成物を含む液晶表示素子に関する。


式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1から30のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
XおよびYは独立して、炭素数1から5のフルオロアルキル、炭素数1から5のフルオロアルコキシ、またはペンタフルオロスルファニルであり、そしてXおよびYの一方はフッ素であってもよい。
【発明の効果】
【0012】
第一の長所は、熱や光に対する高い安定性、高い透明点(またはネマチック相の高い上限温度)、液晶相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、適切な弾性定数、他の液晶性化合物との優れた相溶性などの物性の少なくとも1つを充足する液晶性化合物を提供することである。類似の化合物と比較して、大きな誘電率異方性を有する化合物を提供することである(比較例1の表1を参照のこと)。第二の長所は、この化合物を含有し、熱や光に対する高い安定性、ネマチック相の高い上限温度、ネマチック相の低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、負に大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を提供することである。この長所は、少なくとも2つの物性に関して適切なバランスを有する液晶組成物を提供することである。第三の長所は、この組成物を含み、素子を使用できる広い温度範囲、短い応答時間、大きな電圧保持率、低いしきい値電圧、大きなコントラスト比、および長い寿命を有する液晶表示素子を提供することである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
この明細書における用語の使い方は、次のとおりである。「液晶性化合物」、「液晶組成物」、および「液晶表示素子」の用語をそれぞれ「化合物」、「組成物」、および「素子」と略すことがある。「液晶性化合物」は、ネマチック相、スメクチック相などの液晶相を有する化合物、および液晶相を有しないが、上限温度、下限温度、粘度、誘電率異方性のような、組成物の物性を調節する目的で添加する化合物の総称である。この化合物は、1,4−シクロヘキシレンや1,4−フェニレンのような六員環を有し、その分子構造は棒状(rod like)である。「液晶表示素子」は液晶表示パネルおよび液晶表示モジュールの総称である。「重合性化合物」は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加する化合物である。
【0014】
液晶組成物は、複数の液晶性化合物を混合することによって調製される。この組成物に、物性をさらに調整する目的で添加物が添加される。光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤のような添加物が必要に応じて添加される。液晶性化合物や添加物は、このような手順で混合される。液晶性化合物の割合(含有量)は、添加物を添加した場合であっても、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。添加物の割合(添加量)は、添加物を含まない液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)で表される。重量百万分率(ppm)が用いられることもある。重合開始剤および重合禁止剤の割合は、例外的に重合性化合物の重量に基づいて表される。
【0015】
「透明点」は、液晶性化合物における液晶相−等方相の転移温度である。「液晶相の下限温度」は、液晶性化合物における固体−液晶相(スメクチック相、ネマチック相など)の転移温度である。「ネマチック相の上限温度」は、液晶性化合物と母液晶との混合物または液晶組成物におけるネマチック相−等方相の転移温度であり、「上限温度」と略すことがある。「ネマチック相の下限温度」を「下限温度」と略すことがある。「誘電率異方性を大きくする」の表現は、誘電率異方性が正である組成物のときは、その値が正に増加することを意味し、誘電率異方性が負である組成物のときは、その値が負に増加することを意味する。
【0016】
式(1)で表される化合物を化合物(1)と略すことがある。式(1)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を化合物(1)と略すことがある。「化合物(1)」は、式(1)で表される1つの化合物、2つの化合物の混合物、または3つ以上の化合物の混合物を意味する。これらのルールは、他の式で表される化合物についても適用される。式(1)から(15)において、六角形で囲んだA、B、Cなどの記号はそれぞれ環A、環B、環Cなどの環に対応する。六角形は、シクロヘキサンやベンゼンのような六員環を表す。六角形がナフタレンのような縮合環や、アダマンタンのような架橋環を表すことがある。
【0017】
化学式において、末端基R11の記号を複数の化合物に用いた。これらの化合物において、任意の2つのR11が表す2つの基は同一であってもよく、または異なってもよい。例えば、化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がエチルであるケースがある。化合物(2)のR11がエチルであり、化合物(3)のR11がプロピルであるケースもある。このルールは、R12、R13、Z11などの記号にも適用される。化合物(15)において、iが2のとき、2つの環Eが存在する。この化合物において2つの環Eが表す2つの基は、同一であってもよく、または異なってもよい。iが2より大きいとき、任意の2つの環Eにも適用される。このルールは、他の記号にも適用される。
【0018】
「少なくとも1つの‘A’」の表現は、‘A’の数が任意であることを意味する。「少なくとも1つの‘A’は、‘B’で置き換えられてもよい」の表現は、‘A’の数が1つのとき、‘A’の位置は任意であり、‘A’の数が2つ以上のときも、それらの位置は制限なく選択できることを意味する。このルールは、「少なくとも1つの‘A’が、‘B’で置き換えられた」の表現にも適用される。「少なくとも1つの‘A’が、‘B’、‘C’、または‘D’で置き換えられてもよい」という表現は、任意の‘A’が‘B’で置き換えられた場合、任意の‘A’が‘C’で置き換えられた場合、および任意の‘A’が‘D’で置き換えられた場合、さらに複数の‘A’が‘B’、‘C’、および/または‘D’の少なくとも2つで置き換えられた場合を含むことを意味する。例えば、「少なくとも1つの−CH−が−O−または−CH=CH−で置き換えられてもよいアルキル」には、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、アルコキシアルケニル、アルケニルオキシアルキルが含まれる。なお、連続する2つの−CH−が−O−で置き換えられて、−O−O−のようになることは好ましくない。アルキルなどにおいて、メチル部分(−CH−H)の−CH−が−O−で置き換えられて−O−Hになることも好ましくない。
【0019】
「ハロゲン」はフッ素、塩素、臭素、およびヨウ素を意味する。好ましいハロゲンは、フッ素および塩素である。さらに好ましいハロゲンはフッ素である。アルキルは、直鎖状または分岐状であり、環状アルキルを含まない。直鎖状アルキルは、一般的に分岐状アルキルよりも好ましい。これらのことは、アルコキシ、アルケニルなどの末端基についても同様である。「フルオロアルキル」は、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたアルキルを意味する。このフルオロアルキルは、モノフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、およびペルフルオロアルキルの総称である。このルールは、フルオロアルコキシなどにも適用される。1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置は、一般的にシスよりもトランスが好ましい。2−フルオロ−1,4−フェニレンは、下記の2つの二価基を意味する。化学式において、フッ素は左向き(L)であってもよいし、右向き(R)であってもよい。このルールは、テトラヒドロピラン−2,5−ジイルのような、環から水素を2つ除くことによって誘導された非対称な二価基にも適用される。

【0020】
本発明は、下記の項などである。
【0021】
項1. 式(1)で表される化合物。

式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1から30のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
XおよびYは独立して、炭素数1から5のフルオロアルキル、炭素数1から5のフルオロアルコキシ、またはペンタフルオロスルファニルであり、そしてXおよびYの一方はフッ素であってもよい。
【0022】
項2. 式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1から20のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−または−S−で置き換えられてもよく、1つまたは2つの−CHCH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよく;
XおよびYは独立して、炭素数1から3のフルオロアルキル、炭素数1から3のフルオロアルコキシ、またはペンタフルオロスルファニルであり、そしてXおよびYの一方はフッ素であってもよい、項1に記載の化合物。
【0023】
項3. 式(1)において、
およびRは独立して、炭素数1から15のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つまたは2つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、1つの−CHCH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
Xは、フッ素、炭素数1から3のフルオロアルキル、炭素数1から3のフルオロアルコキシ、またはペンタフルオロスルファニルであり、Yは、炭素数1から3のフルオロアルキルである、項1に記載の化合物。
【0024】
項4. 式(1a)で表される、項1に記載の化合物。

式(1a)において、
およびRは独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数1から10のアルコキシであり;Yは−CF、−CFH、−CFH、またはフッ素である。
【0025】
項5. 式(1a)において、Rが炭素数1から10のアルキルであり、Rが炭素数1から10のアルコキシであり;Yが−CFである、項4に記載の化合物。
【0026】
項6. 式(1b)で表される、項1に記載の化合物。

式(1b)において、
およびRは独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数1から10のアルコキシであり;Yは−CF、−CFH、または−CFHである。
【0027】
項7. 式(1b)において、
およびRが炭素数1から10のアルコキシであり;Yが−CFである、項6に記載の化合物。
【0028】
項8. 項1から7のいずれか1項に記載の化合物の少なくとも1つを含有する液晶組成物。
【0029】
項9. 式(2)から(4)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物を含有する、項8に記載の液晶組成物。


式(2)から(4)において、
11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
環B、環B、環B、および環Bは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、2−フルオロ−1,4−フェニレン、2,5−ジフルオロ−1,4−フェニレン、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
11、Z12、およびZ13は独立して、単結合、−COO−、−CHCH−、−CH=CH−、または−C≡C−である。
【0030】
項10. 式(5)から(11)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8または9に記載の液晶組成物。


式(5)から(11)において、
13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよく;
環C、環C、環C、および環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
環Cおよび環Cは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−シクロヘキセニレン、1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、またはデカヒドロナフタレン−2,6−ジイルであり;
14、Z15、Z16、およびZ17は独立して、単結合、−COO−、−CHO−、−OCF−、−CHCH−、または−OCFCHCH−であり;
11およびL12は独立して、フッ素または塩素であり;
11は、水素またはメチルであり;
Xは、−CHF−または−CF−であり;
j、k、m、n、p、q、r、およびsは独立して、0または1であり、k、m、n、およびpの和は、1または2であり、q、r、およびsの和は、0、1、2、または3であり、tは、1、2、または3である。
【0031】
項11. 式(12)から(14)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から10のいずれか1項に記載の液晶組成物。


式(12)から(14)において、
16は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
11は、フッ素、塩素、−CF3、−CHF2、−CH2F、−OCF3、−OCHF2、−OCF2CHF2、または−OCF2CHFCF3であり;
環D、環D、および環Dは独立して、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
18、Z19、およびZ20は独立して、単結合、−COO−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、−CH=CH−、−C≡C−、または−(CH−であり;
13およびL14は独立して、水素またはフッ素である。
【0032】
項12. 式(15)で表される化合物の群から選択された少なくとも1つの化合物をさらに含有する、項8から11のいずれか1項に記載の液晶組成物。

式(15)において、
17は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;
12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nであり;
環Eは、1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレン、テトラヒドロピラン−2,5−ジイル、1,3−ジオキサン−2,5−ジイル、またはピリミジン−2,5−ジイルであり;
21は、単結合、−COO−、−CHO−、−CFO−、−OCF−、−CHCH−、または−C≡C−であり;
15およびL16は独立して、水素またはフッ素であり;
iは、1、2、3、または4である。
【0033】
項13. 項8から12のいずれか1項に記載の液晶組成物を含む液晶表示素子。
【0034】
本発明は、次の項をも含む。(a)重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、および消泡剤の群から選択された、1つ、2つ、または少なくとも3つの添加物をさらに含有する、上記の液晶組成物。(b)ネマチック相の上限温度が70℃以上であり、波長589nmにおける光学異方性(25℃で測定)が0.08以上であり、そして周波数1kHzにおける誘電率異方性(25℃で測定)が−2以下である、上記の液晶組成物。(c)液晶表示素子の動作モードが、TNモード、ECBモード、OCBモード、IPSモード、またはFPAモードであり、液晶表示素子の駆動方式がアクティブマトリックス(AM)方式である、上記の液晶表示素子。(d)重合性化合物をさらに含有する上記の液晶組成物を用いて作製した、PSAモードを有する液晶表示素子。
【0035】
化合物(1)の態様、化合物(1)の合成、液晶組成物、および液晶表示素子について順に説明する。
【0036】
1.化合物(1)の態様
化合物(1)は、1つのフェニレン環を有することを特徴とする。この化合物は、負の誘電率異方性を有する。この化合物は他の液晶性化合物との相溶性がよく、この化合物を含有する組成物は素子が通常使用される条件下で物理的または化学的に安定である。この組成物は、素子が通常使用される条件下で保管しても、この化合物が結晶(またはスメクチック相)として析出することがない。この化合物は、適切な光学異方性および適切な誘電率異方性を有する。
【0037】
化合物(1)における末端基RおよびR、および側方基XおよびYの好ましい例は、以下のとおりである。この例は化合物(1)の下位式にも適用される。化合物(1)において、これらの基を適切に組み合わせることによって、物性を任意に調整することが可能である。化合物の物性に大きな差異がないので、化合物(1)は、H(重水素)、13Cなどの同位体を天然存在比の量より多く含んでもよい。なお、化合物(1)の記号の定義は、項1に記載したとおりである。

【0038】
式(1)において、RおよびRは独立して、炭素数1から30のアルキルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−、−S−、−CO−、または−SiH−で置き換えられてもよく、少なくとも1つの−CHCH−は−CH=CH−または−C≡C−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素または塩素で置き換えられてもよい。
【0039】
好ましいRまたはRは、水素、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルコキシアルコキシ、アルキルチオ、アルキルチオアルコキシ、アシル、アシルアルキル、アシルオキシ、アシルオキシアルキル、アルコキシカルボニル、アルコキシカルボニルアルキル、アルケニル、アルケニルオキシ、アルケニルオキシアルキル、アルコキシアルケニル、アルキニル、アルキニルオキシ、シラアルキル、およびジシラアルキルである。少なくとも1つの水素がフッ素および/または塩素で置き換えられたこれらの基も好ましい。少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられたこれらの基はさらに好ましい。これらの基においては、分岐鎖よりも直鎖の方が好ましい。RまたはRが分岐鎖であっても光学活性であるときは好ましい。さらに好ましいRまたはRはアルキル、アルコキシ、アルコキシアルキル、アルケニル、フルオロアルキル、およびフルオロアルコキシである。
【0040】
アルケニルにおける−CH=CH−の好ましい立体配置は、二重結合の位置に依存する。1−プロペニル、1−ブテニル、1−ペンテニル、1−ヘキセニル、3−ペンテニル、3−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはトランス配置が好ましい。2−ブテニル、2−ペンテニル、2−ヘキセニルのようなアルケニルにおいてはシス配置が好ましい。
【0041】
具体的なRまたはRは、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、ヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、メトキシメチル、メトキシエチル、メトキシプロピル、エトキシメチル、エトキシエチル、エトキシプロピル、プロポキシメチル、ブトキシメチル、ペントキシメチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、2−プロペニルオキシ、2−ブテニルオキシ、2−ペンテニルオキシ、1−プロピニル、または1−ペンテニルである。
【0042】
具体的なRまたはRは、2−フルオロエチル、3−フルオロプロピル、2,2,2−トリフルオロエチル、2−フルオロビニル、2,2−ジフルオロビニル,2−フルオロ−2−ビニル、3−フルオロ−1−プロペニル、3,3,3−トリフルオロ−1−プロペニル、4−フルオロ−1−プロペニル、または4,4−ジフルオロ−3−ブテニルでもある。
【0043】
さらに好ましいRまたはRは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペンチルオキシ、メトキシメチル、エトキシメチル、プロポキシメチル、ビニル、1−プロペニル、2−プロペニル、1−ブテニル、2−ブテニル、3−ブテニル、1−ペンテニル、2−ペンテニル、3−ペンテニル、4−ペンテニル、2−プロペニルオキシ、2−ブテニルオキシ、または2−ペンテニルオキシである。最も好ましいRまたはRは、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、またはメトキシメチルである。
【0044】
式(1)において、XおよびYは独立して、炭素数1から5のフルオロアルキル、炭素数1から5のフルオロアルコキシ、またはペンタフルオロスルファニル(−SF)であり、そしてXおよびYの一方はフッ素であってもよい。フルオロアルキルは、モノフルオロアルキル、ポリフルオロアルキル、およびペルフルオロアルキルを意味する。フルオロアルコキシは、モノフルオロアルコキシ、ポリフルオロアルコキシル、およびペルフルオロアルコキシを意味する。
【0045】
好ましいXまたはYは、フルオロアルキル、フルオロアルコキシ、またはフッ素である。さらに好ましいXまたはYは、フルオロアルコキシまたはフッ素である。好ましいフルオロアルキルは、ポリフルオロアルキルまたはペルフルオロアルキルである。さらに好ましいフルオロアルキルは、ペルフルオロアルキルである。好ましいフルオロアルコキシは、ポリフルオロアルコキシまたはペルフルオロアルコキシである。さらに好ましいフルオロアルコキシは、ペルフルオロアルコキシである。好ましい炭素数は、1から3である。さらに好ましい炭素数は、1または2である。最も好ましい炭素数は1である。
【0046】
好ましいXまたはYは、フッ素、−CF、−CHF、−CHF、−CFCF、−CFCHF、−CFCHF、−CHFCF、−CHCF、−CFCFCF、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−OCF、−OCHF、−OCHF、−OCFCF、−OCFCHF、−OCFCHF、−OCHFCF、−OCHCF、−OCFCFCF、−OCFCHFCF、または−OCHFCFCFである。
【0047】
さらに好ましいXまたはYは、フッ素、−CF、−CHF、−CHF、−CFCF、−CFCHF、−CHFCF、−CHCF、−CFCFCF、−CFCHFCF、−CHFCFCF、−OCF、−OCHF、または−OCHFである。特に好ましいXまたはYは、フッ素、−CF、−CHF、または−CHFである。最も好ましいXまたはYは、フッ素または−CFである。
【0048】
化合物(1)の末端基、および側方基XおよびYを適切に選択することによって、光学異方性、誘電率異方性などの物性を任意に調整することが可能である。これらの基が化合物(1)の物性に及ぼす効果を以下に説明する。
【0049】
化合物(1)において、RまたはRが直鎖であるときは液晶相の温度範囲が広く、そして粘度が小さい。RまたはRが分岐鎖であるとき、他の液晶性化合物との相溶性がよい。RまたはRが光学活性基である化合物は、キラルドーパントとして有用である。この化合物を組成物に添加することによって、素子に発生するリバース・ツイスト・ドメイン(Reverse twisted domain)を防止することができる。RまたはRが光学活性基でない化合物は、組成物の成分として有用である。RまたはRがアルケニルであるとき、好ましい立体配置は二重結合の位置に依存する。好ましい立体配置を有するアルケニル化合物は、高い上限温度または液晶相の広い温度範囲を有する。Mol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 109およびMol. Cryst. Liq. Cryst., 1985, 131, 327に詳細な説明がある。
【0050】
式(1)において、XまたはYがフッ素、−CF、−CHF、または−CHFであるとき、この化合物は好ましい。大きな誘電率異方性の観点からは、−CFが好ましい。小さな粘度の観点からは、フッ素が好ましい。
【0051】
化合物(1)の好ましい例は、化合物(1a)または化合物(1b)である。これらの化合物において、記号の定義は、上記の項に記載したとおりである。
【0052】
2.化合物(1)の合成
化合物(1)の合成法を説明する。化合物(1)は、有機合成化学の方法を適切に組み合わせることにより合成することができる。出発物質に目的の末端基、環、または結合基を導入する方法は、「フーベン−ヴァイル」(Houben-Wyle, Methoden der Organische Chemie, Georg-Thieme Verlag, Stuttgart)、「オーガニック・シンセシズ」(Organic Syntheses, John Wily & Sons, Inc.)、「オーガニック・リアクションズ」(Organic Reactions, John Wily & Sons Inc.)、「コンプリヘンシブ・オーガニック・シンセシス」(Comprehensive Organic Synthesis, Pergamon Press)、「新実験化学講座(丸善)」などの成書に記載されている。
【0053】
2,3−二置換−1,4−フェニレンの生成法を説明する。2−フルオロ−3−トリフルオロメチル−1,4−フェニレンなどの環に関しては出発物が市販されているか、または合成法がよく知られている。そこで下に示した化合物(1−1)、化合物(1−1’)、および化合物(1−2)から(1−6)について説明する。これら化合物は、通常の方法で化合物(1)に変換できる。
【0054】
(1)化合物(1−1)の合成

【0055】
2,3−(ビストリフルオロメチル)フェニレンは、Org. Lett., 2000, 2 (21), 3345 に記載された方法で生成させる。フラン(62)と1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンとを高温でディールズ・アルダー型の反応をさせることによってアニリン(63)を合成する。この化合物に、Org. Synth. Coll., Vol. 2, 1943, 355 に記載された方法にしたがい、サンド・マイヤー型反応を行ってヨウ化物(1−1)を得る。
【0056】
(2)化合物(1−1’)の合成

【0057】
同様な方法で、フラン(64)と1,1,1,4,4,4−ヘキサフルオロ−2−ブチンとを高温でディールズ・アルダー型の反応をさせることによってフェノール(65)を合成する。この化合物に、塩酸を反応させて脱保護することによってヒドロキノン(1−1’)を得る。
【0058】
(3)化合物(1−2)の合成

【0059】
化合物(66)のQは一価基を意味する。この化合物の水酸基を適切な保護基P(例えば、トリメチルシリル基)で保護して化合物(67)を得る。化合物(67)にt−BuOK存在下でs−ブチルリチウムを作用させ、続いてホウ酸トリメチルを反応させてホウ酸(68)を得る。この化合物を30%過酸化水素水で酸化してフェノール(1−2)を得る。
【0060】
(4)化合物(1−3)の合成

【0061】
化合物(69)のQは一価基を意味する。この化合物の水酸基を適切な保護基Pで保護して化合物(70)を得る。化合物(70)にs−ブチルリチウムを作用させ、続いてN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)を反応させてアルデヒド(71)を得る。この化合物をジエチルアミノサルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(1−3)を得る。
【0062】
(5)化合物(1−4)の合成

【0063】
化合物(72)のQは一価基を意味する。この化合物の水酸基を適切な保護基Pで保護して化合物(73)を得る。化合物(73)を水素化ジイソブチルアルミニウム(DIBAL−H)で還元してアルデヒド(74)を得る。この化合物をジエチルアミノサルファートリフルオリド(DAST)でフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(1−4)を得る。
【0064】
(6)化合物(1−5)の合成

【0065】
化合物(70)のQは一価基であり、Pは水酸基の保護基である。この化合物に、s−ブチルリチウムを作用させ、その後硫黄を反応させジスルフィドである化合物(75)を得る。この化合物は、フッ化カリウム存在下で塩素ガスを反応させることにより、化合物(76)へと導く。この化合物にフッ化水素ピリジン錯体を用いてフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(1−5)を得る。
【0066】
(7)化合物(1−6)の合成

【0067】
水酸基を適切な保護基Pで保護したチオール(77)にテトラメチルエチレンジアミン(TMEDA)の存在下、n−ブチルリチウムを作用させ、その後硫黄を反応させてジチオール(78)を得る。この化合物は、フッ化カリウム存在下、塩素ガスを反応させることにより、化合物(79)へと導く。この化合物にフッ化亜鉛を用いてフッ素化し、続いて脱保護してフェノール(1−6)を得る。
【0068】
3.液晶組成物
3−1.成分化合物
本発明の液晶組成物について説明をする。この組成物は、少なくとも1つの化合物(1)を成分(a)として含む。化合物(1)は、組成物の上限温度を上げるために有用である。化合物(1)は、組成物の誘電率異方性を大きくするために有用である。組成物は、2つまたは3つ以上の化合物(1)を含んでもよい。組成物の成分が化合物(1)のみであってもよい。組成物は、化合物(1)の少なくとも1つを1重量%から99重量%の範囲で含有することが、優良な物性を発現させるために好ましい。誘電率異方性が負である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は5重量%から60重量%の範囲である。誘電率異方性が正である組成物において、化合物(1)の好ましい含有量は30重量%以下である。
【0069】
本発明の液晶組成物は、化合物(1)を成分(a)として含み、下に示す成分(b)から(e)から選択された液晶性化合物をさらに含むことが好ましい。

この組成物は、化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を含んでもよい。この組成物は、その他の液晶性化合物を含まなくてもよい。この組成物を調製するときには、誘電率異方性の正負と大きさを考慮して成分(b)から(e)の中から選択することが好ましい。成分を適切に選択した組成物は、熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性(すなわち、大きな光学異方性または小さな光学異方性)、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、および適切な弾性定数(すなわち、大きな弾性定数または小さな弾性定数)を有する。
【0070】
成分(b)は、2つの末端基がアルキルなどである化合物である。成分(b)の好ましい例として、化合物(2−1)から(2−11)、化合物(3−1)から(3−19)、および化合物(4−1)から(4−7)を挙げることができる。成分(b)の化合物において、R11およびR12は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよい。
【0071】
【0072】
成分(b)は、小さな誘電率異方性を有する。成分(b)は中性に近い。化合物(2)は、粘度の減少または光学異方性の調整に効果がある。化合物(3)および(4)は、上限温度を高くすることによってネマチック相の温度範囲を広げる効果、または光学異方性の調整に効果がある。
【0073】
成分(b)の含有量を増加させるにつれて組成物の粘度は小さくなるが誘電率異方性が小さくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は多いほうが好ましい。IPS、VAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分(b)の含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは40重量%以上である。
【0074】
成分(c)は、化合物(5)から(11)である。これらの化合物は、2,3−ジフルオロ−1,4−フェニレンのように、ラテラル位が2つのハロゲンで置換されたフェニレンを有する。成分(c)の好ましい例として、化合物(5−1)から(5−8)、化合物(6−1)から(6−17)、化合物(7−1)、化合物(8−1)から(8−3)、化合物(9−1)から(9−11)、化合物(10−1)から(10−3)、および化合物(11−1)から(11−3)を挙げることができる。これらの化合物において、R13、R14、およびR15は独立して、炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく、そしてR15は、水素またはフッ素であってもよい。
【0075】
【0076】
【0077】
成分(c)は、誘電率異方性が負に大きい。成分(c)は、IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分(c)の含有量を増加させるにつれて組成物の誘電率異方性が負に大きくなるが、粘度が大きくなる。そこで、素子のしきい値電圧の要求値を満たす限り、含有量は少ないほうが好ましい。誘電率異方性が−5程度であることを考慮すると、充分な電圧駆動をさせるには、含有量が40重量%以上であることが好ましい。
【0078】
成分(c)のうち、化合物(5)は二環化合物であるので、粘度の減少、光学異方性の調整、または誘電率異方性の増加に効果がある。化合物(6)および(7)は三環化合物であるので、上限温度を高くする、光学異方性を大きくする、または誘電率異方性を大きくするという効果がある。化合物(8)から(11)は、誘電率異方性を大きくするという効果がある。
【0079】
IPS、VA、PSAなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分(c)の含有量は、液晶組成物の重量に基づいて、好ましくは40重量%以上であり、さらに好ましくは50重量%から95重量%の範囲である。成分(c)を誘電率異方性が正である組成物に添加する場合は、成分(c)の含有量は30重量%以下が好ましい。成分(c)を添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0080】
成分(d)は、右末端にハロゲンまたはフッ素含有基を有する化合物である。成分(d)の好ましい例として、化合物(12−1)から(12−16)、化合物(13−1)から(13−113)、化合物(14−1)から(14−57)を挙げることができる。これらの化合物において、R16は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X11は、フッ素、塩素、−OCF、−OCHF、−CF、−CHF、−CHF、−OCFCHF、または−OCFCHFCFである。
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】
【0085】
【0086】
【0087】
成分(d)は、誘電率異方性が正であり、熱や光に対する安定性が非常に優れているので、IPS、FFS、OCBなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。成分(d)の含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分(d)を誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分(d)の含有量は30重量%以下が好ましい。成分(d)を添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0088】
成分(e)は、右末端基が−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである化合物(15)である。成分(e)の好ましい例として、化合物(15−1)から(15−64)を挙げることができる。これらの化合物において、R17は炭素数1から10のアルキルまたは炭素数2から10のアルケニルであり、これらの基において、少なくとも1つの−CH−は−O−で置き換えられてもよく、これらの一価基において、少なくとも1つの水素はフッ素で置き換えられてもよく;X12は−C≡Nまたは−C≡C−C≡Nである。
【0089】
【0090】
【0091】
成分(e)は、誘電率異方性が正であり、その値が大きいので、TNなどのモード用の組成物を調製する場合に用いられる。この成分(e)を添加することにより、組成物の誘電率異方性を大きくすることができる。成分(e)は、液晶相の温度範囲を広げる、粘度を調整する、または光学異方性を調整する、という効果がある。成分(e)は、素子の電圧−透過率曲線の調整にも有用である。
【0092】
TNなどのモード用の組成物を調製する場合には、成分(e)の含有量は、液晶組成物の重量に基づいて1重量%から99重量%の範囲が適しており、好ましくは10重量%から97重量%の範囲、さらに好ましくは40重量%から95重量%の範囲である。成分(e)を誘電率異方性が負である組成物に添加する場合、成分(e)の含有量は30重量%以下が好ましい。成分(e)を添加することにより、組成物の弾性定数を調整し、素子の電圧−透過率曲線を調整することが可能となる。
【0093】
化合物(1)と上記の成分(b)から(e)を適切に組み合わせることによって熱や光に対する高い安定性、高い上限温度、低い下限温度、小さな粘度、適切な光学異方性、大きな誘電率異方性、大きな比抵抗、大きな比抵抗、適切な弾性定数などの物性の少なくとも1つを充足する液晶組成物を調製することができる。必要に応じて、成分(b)から(e)とは異なる液晶性化合物を添加してもよい。
【0094】
3−2.添加物
液晶組成物は公知の方法によって調製される。例えば、成分化合物を混合し、そして加熱によって互いに溶解させる。用途に応じて、この組成物に添加物を添加してよい。添加物の例は、重合性化合物、重合開始剤、重合禁止剤、光学活性化合物、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、熱安定剤、色素、消泡剤などである。このような添加物は当業者によく知られており、文献に記載されている。
【0095】
PSA(polymer sustained alignment;高分子支持配向型)モードを有する液晶表示素子では、組成物が重合体を含有する。重合性化合物は、組成物中に重合体を生成させる目的で添加される。まず、少量の重合性化合物を添加した組成物を素子に注入する。次に、この素子の基板のあいだに電圧を印加しながら、組成物に紫外線を照射する。重合性化合物は重合して、組成物中に重合体の網目構造を生成する。この組成物では、重合体によって液晶分子の配向を制御することが可能になるので、素子の応答時間が短縮され、画像の焼き付きが改善される。
【0096】
重合性化合物の好ましい例は、アクリレート、メタクリレート、ビニル化合物、ビニルオキシ化合物、プロペニルエーテル、エポキシ化合物(オキシラン、オキセタン)、およびビニルケトンである。さらに好ましい例は、少なくとも1つのアクリロイルオキシを有する化合物および少なくとも1つのメタクリロイルオキシを有する化合物である。さらに好ましい例には、アクリロイルオキシとメタクリロイルオキシの両方を有する化合物も含まれる。
【0097】
さらに好ましい例は、化合物(M−1)から(M−18)である。これらの化合物において、R25からR31は独立して、水素またはメチルであり;R32、R33、およびR34は独立して、水素または炭素数1から5のアルキルであり、R32、R33、およびR34の少なくとも1つは炭素数1から5のアルキルであり;s、v、およびxは独立して、0または1であり;tおよびuは独立して、1から10の整数である。L21からL26は独立して、水素またはフッ素であり;L27およびL28は独立して、水素、フッ素、またはメチルである。
【0098】
【0099】
重合性化合物は、重合開始剤を添加することによって、速やかに重合させることができる。反応温度を最適化することによって、残存する重合性化合物の量を減少させることができる。光ラジカル重合開始剤の例は、BASF社のダロキュアシリーズからTPO、1173、および4265であり、イルガキュアシリーズから184、369、500、651、784、819、907、1300、1700、1800、1850、および2959である。
【0100】
光ラジカル重合開始剤の追加例は、4−メトキシフェニル−2,4−ビス(トリクロロメチル)トリアジン、2−(4−ブトキシスチリル)−5−トリクロロメチル−1,3,4−オキサジアゾール、9−フェニルアクリジン、9,10−ベンズフェナジン、ベンゾフェノン/ミヒラーズケトン混合物、ヘキサアリールビイミダゾール/メルカプトベンズイミダゾール混合物、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケタール、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルホリノプロパン−1−オン、2,4−ジエチルキサントン/p−ジメチルアミノ安息香酸メチル混合物、ベンゾフェノン/メチルトリエタノールアミン混合物である。
【0101】
液晶組成物に光ラジカル重合開始剤を添加したあと、電場を印加した状態で紫外線を照射することによって重合を行うことができる。しかし、未反応の重合開始剤または重合開始剤の分解生成物は、素子に画像の焼き付きなどの表示不良を引き起こすかもしれない。これを防ぐために重合開始剤を添加しないまま光重合を行ってもよい。照射する光の好ましい波長は150nmから500nmの範囲である。さらに好ましい波長は250nmから450nmの範囲であり、最も好ましい波長は300nmから400nmの範囲である。
【0102】
重合性化合物を保管するとき、重合を防止するために重合禁止剤を添加してもよい。重合性化合物は、通常は重合禁止剤を除去しないまま組成物に添加される。重合禁止剤の例は、ヒドロキノン、メチルヒドロキノンのようなヒドロキノン誘導体、4−t−ブチルカテコール、4−メトキシフェノール、フェノチアジンなどである。
【0103】
光学活性化合物は、液晶分子にらせん構造を誘起して必要なねじれ角を与えることによって逆ねじれを防ぐ、という効果を有する。光学活性化合物を添加することによって、らせんピッチを調整することができる。らせんピッチの温度依存性を調整する目的で2つ以上の光学活性化合物を添加してもよい。光学活性化合物の好ましい例として、下記の化合物(Op−1)から(Op−18)を挙げることができる。化合物(Op−18)において、環Jは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり、R28は炭素数1から10のアルキルである。
【0104】
【0105】
酸化防止剤は、大きな電圧保持率を維持するために有効である。酸化防止剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−1)および(AO−2);Irganox415、Irganox565、Irganox1010、Irganox1035、Irganox3114、およびIrganox1098(商品名;BASF社)を挙げることができる。紫外線吸収剤は、上限温度の低下を防ぐために有効である。紫外線吸収剤の好ましい例は、ベンゾフェノン誘導体、ベンゾエート誘導体、トリアゾール誘導体などであり、具体例として下記の化合物(AO−3)および(AO−4);Tinuvin329、TinuvinP、Tinuvin326、Tinuvin234、Tinuvin213、Tinuvin400、Tinuvin328、およびTinuvin99−2(商品名;BASF社);および1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(DABCO)を挙げることができる。
【0106】
立体障害のあるアミンのような光安定剤は、大きな電圧保持率を維持するために好ましい。光安定剤の好ましい例として、下記の化合物(AO−5)、(AO−6)、および(AO−7);Tinuvin144、Tinuvin765、およびTinuvin770df(商品名;BASF社);LA−77YおよびLA−77G(商品名;ADEKA社)を挙げることができる。熱安定剤も大きな電圧保持率を維持するために有効であり、好ましい例としてIrgafos168(商品名;BASF社)を挙げることができる。GH(guest host)モードの素子に適合させるために、アゾ系色素、アントラキノン系色素などのような二色性色素(dichroic dye)が組成物に添加される。消泡剤は、泡立ちを防ぐために有効である。消泡剤の好ましい例は、ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイルなどである。
【0107】
【0108】
化合物(AO−1)において、R40は炭素数1から20のアルキル、炭素数1から20のアルコキシ、−COOR41、または−CHCHCOOR41であり、ここでR41は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−2)および(AO−5)において、R42は炭素数1から20のアルキルである。化合物(AO−5)において、R43は水素、メチルまたはO(酸素ラジカル)であり;環Gは1,4−シクロヘキシレンまたは1,4−フェニレンであり;化合物(AO−7)において、環Gは1,4−シクロヘキシレン、1,4−フェニレン、または少なくとも1つの水素がフッ素で置き換えられた1,4−フェニレンであり;化合物(AO−5)および(AO−7)において、zは、1、2、または3である。
【0109】
4.液晶表示素子
液晶組成物は、PC、TN、STN、OCB、PSAなどの動作モードを有し、アクティブマトリックスで駆動する液晶表示素子に使用できる。この組成物は、PC、TN、STN、OCB、VA、IPSなどの動作モードを有し、パッシブマトリクス方式で駆動する液晶表示素子にも使用することができる。これらの素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【0110】
この組成物は、NCAP(nematic curvilinear aligned phase)素子にも適しており、ここでは組成物がマイクロカプセル化されている。この組成物は、ポリマー分散型液晶表示素子(PDLCD)や、ポリマーネットワーク液晶表示素子(PNLCD)にも使用できる。これらの組成物においては、多量の重合性化合物が添加される。一方、重合性化合物の添加量が液晶組成物の重量に基づいて10重量%以下であるとき、PSAモードの液晶表示素子が作製される。重合性化合物の好ましい割合は0.1重量%から2重量%の範囲である。さらに好ましい割合は、0.2重量%から1.0重量%の範囲である。PSAモードの素子は、アクティブマトリックス、パッシブマトリクスのような駆動方式で駆動させることができる。このような素子は、反射型、透過型、半透過型のいずれのタイプにも適用ができる。
【実施例】
【0111】
実施例(合成例、使用例を含む)により本発明をさらに詳しく説明する。本発明はこれらの実施例によっては制限されない。本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合することによって調製した組成物をも含む。
【0112】
1.化合物(1)の実施例
化合物(1)は、下記の手順により合成した。合成した化合物は、NMR分析などの方法により同定した。化合物や組成物の物性、および素子の特性は、下記の方法により測定した。
【0113】
NMR分析:測定には、ブルカーバイオスピン社製のDRX−500を用いた。H−NMRの測定では、試料をCDClなどの重水素化溶媒に溶解させ、室温、500MHz、積算回数16回の条件で測定した。テトラメチルシランを内部標準として用いた。19F−NMRの測定では、CFClを内部標準として用い、積算回数24回で行った。核磁気共鳴スペクトルの説明において、sはシングレット、dはダブレット、tはトリプレット、qはカルテット、quinはクインテット、sexはセクステット、mはマルチプレット、brはブロードであることを意味する。
【0114】
ガスクロマト分析:測定には、島津製作所製のGC−2010型ガスクロマトグラフを用いた。カラムは、Agilent Technologies Inc.製のキャピラリカラムDB−1(長さ60m、内径0.25mm、膜厚0.25μm)を用いた。キャリアーガスとしてはヘリウム(1ml/分)を用いた。試料気化室の温度を300℃、検出器(FID)部分の温度を300℃に設定した。試料はアセトンに溶解して、1重量%の溶液となるように調製し、得られた溶液1μlを試料気化室に注入した。記録計には島津製作所製のGCSolutionシステムなどを用いた。
【0115】
HPLC分析:測定には、島津製作所製のProminence(LC−20AD;SPD−20A)を用いた。カラムはワイエムシー製のYMC−Pack ODS−A(長さ150mm、内径4.6mm、粒子径5μm)を用いた。溶出液はアセトニトリルと水を適宜混合して用いた。検出器としてはUV検出器、RI検出器、CORONA検出器などを適宜用いた。UV検出器を用いた場合、検出波長は254nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.1重量%の溶液となるように調製し、この溶液1μLを試料室に導入した。記録計としては島津製作所製のC−R7Aplusを用いた。
【0116】
紫外可視分光分析:測定には、島津製作所製のPharmaSpec UV−1700用いた。検出波長は190nmから700nmとした。試料はアセトニトリルに溶解して、0.01mmol/Lの溶液となるように調製し、石英セル(光路長1cm)に入れて測定した。
【0117】
測定試料:相構造および転移温度(透明点、融点、重合開始温度など)を測定するときには、化合物そのものを試料として用いた。ネマチック相の上限温度、粘度、光学異方性、誘電率異方性などの物性を測定するときには、化合物と母液晶との混合物を試料として用いた。
【0118】
化合物を母液晶と混合した試料を用いた場合は、次のように測定した。化合物15重量%と母液晶85重量%とを混合して試料を調製した。この試料の測定値から、次の式で表される外挿法にしたがって、外挿値を計算し、この値を記載した。〈外挿値〉=(100×〈試料の測定値〉−〈母液晶の重量%〉×〈母液晶の測定値〉)/〈化合物の重量%〉
【0119】
化合物と母液晶との割合がこの割合であっても、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出する場合には、化合物と母液晶との割合を10重量%:90重量%、5重量%:95重量%、1重量%:99重量%の順に変更をしていき、結晶(または、スメクチック相)が25℃で析出しなくなった割合で試料の物性を測定した。なお、特に断りのない限り、化合物と母液晶との割合は、15重量%:85重量%である。
【0120】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは正であるときは、下記の母液晶(A)を用いた。各成分の割合を、重量%で表した。
【0121】
化合物の誘電率異方性がゼロまたは負であるときは、下記の母液晶(B)を用いた。各成分の割合を重量%で表した。
【0122】
測定方法:特性の測定は下記の方法で行った。これらの多くは、社団法人電子情報技術産業協会(JEITA;Japan Electronics and Information Technology Industries Association)で審議制定されるJEITA規格(JEITA・ED−2521B)に記載されている。これを修飾した方法も用いた。測定に用いたTN素子には、薄膜トランジスター(TFT)を取り付けなかった。
【0123】
(1)相構造:偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレート(メトラー社FP−52型ホットステージ)に試料を置いた。この試料を、3℃/分の速度で加熱しながら相状態とその変化を偏光顕微鏡で観察し、相の種類を特定した。
【0124】
(2)転移温度(℃):測定には、パーキンエルマー社製の走査熱量計、Diamond DSCシステムまたはエスアイアイ・ナノテクノロジー社製の高感度示差走査熱量計、X−DSC7000を用いた。試料は、3℃/分の速度で昇降温し、試料の相変化に伴う吸熱ピークまたは発熱ピークの開始点を外挿により求め、転移温度を決定した。化合物の融点、重合開始温度もこの装置を使って測定した。化合物が固体からスメクチック相、ネマチック相などの液晶相に転移する温度を「液晶相の下限温度」と略すことがある。化合物が液晶相から液体に転移する温度を「透明点」と略すことがある。
【0125】
結晶はCと表した。結晶の種類の区別がつく場合は、それぞれをCまたはCと表した。スメクチック相はS、ネマチック相はNと表した。スメクチック相の中で、スメクチックA相、スメクチックB相、スメクチックC相、またはスメクチックF相の区別がつく場合は、それぞれS、S、S、またはSと表した。液体(アイソトロピック)はIと表した。転移温度は、例えば、「C 50.0 N 100.0 I」のように表記した。これは、結晶からネマチック相への転移温度が50.0℃であり、ネマチック相から液体への転移温度が100.0℃であることを示す。
【0126】
(3)化合物の相溶性:類似の構造を有する幾つかの化合物を混合してネマチック相を有する母液晶を調製した。この母液晶に測定する化合物を添加した。混合する割合の一例は、15%の化合物と85%の母液晶である。この組成物を−20℃、−30℃のような低い温度で30日間保管した。この組成物の一部が結晶(またはスメクチック相)に変化したか否かを観察した。必要に応じて混合する割合と保管温度とを変更した。このようにして測定した結果から、結晶(またはスメクチック相)が析出する条件および結晶(またはスメクチック相)が析出しない条件を求めた。これらの条件が相溶性の尺度である。
【0127】
(4)ネマチック相の上限温度(TNIまたはNI;℃):偏光顕微鏡を備えた融点測定装置のホットプレートに試料を置き、1℃/分の速度で加熱した。試料の一部がネマチック相から等方性液体に変化したときの温度を測定した。試料が化合物(1)と母液晶との混合物であるときは、TNIの記号で示した。試料が化合物(1)と成分(b)、(c)、(d)のような化合物との混合物であるときは、NIの記号で示した。ネマチック相の上限温度を「上限温度」と略すことがある。
【0128】
(5)ネマチック相の下限温度(T;℃):ネマチック相を有する試料をガラス瓶に入れ、0℃、−10℃、−20℃、−30℃、および−40℃のフリーザー中に10日間保管したあと、液晶相を観察した。例えば、試料が−20℃ではネマチック相のままであり、−30℃では結晶またはスメクチック相に変化したとき、Tを<−20℃と記載した。ネマチック相の下限温度を「下限温度」と略すことがある。
【0129】
(6)粘度(バルク粘度;η;20℃で測定;mPa・s):測定には、東京計器株式会社製のE型回転粘度計を用いた。
【0130】
(7)光学異方性(屈折率異方性;25℃で測定;Δn):測定は、波長589nmの光を用い、接眼鏡に偏光板を取り付けたアッベ屈折計により行なった。主プリズムの表面を一方向にラビングしたあと、試料を主プリズムに滴下した。屈折率(n‖)は偏光の方向がラビングの方向と平行であるときに測定した。屈折率(n⊥)は偏光の方向がラビングの方向と垂直であるときに測定した。光学異方性(Δn)の値は、Δn=n‖−n⊥、の式から計算した。
【0131】
(8)比抵抗(ρ;25℃で測定;Ωcm):電極を備えた容器に試料1.0mLを注入した。この容器に直流電圧(10V)を印加し、10秒後の直流電流を測定した。比抵抗は次の式から算出した。(比抵抗)={(電圧)×(容器の電気容量)}/{(直流電流)×(真空の誘電率)}。
【0132】
(9)電圧保持率(VHR−1;25℃で測定;%):測定に用いたTN素子はポリイミド配向膜を有し、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)は5μmであった。この素子は試料を入れたあと紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にパルス電圧(5Vで60マイクロ秒)を印加して充電した。減衰する電圧を高速電圧計で16.7ミリ秒のあいだ測定し、単位周期における電圧曲線と横軸との間の面積Aを求めた。面積Bは減衰しなかったときの面積であった。電圧保持率は面積Bに対する面積Aの百分率で表した。
【0133】
(10)電圧保持率(VHR−2;80℃で測定;%):25℃の代わりに、80℃で測定した以外は、上記の方法で電圧保持率を測定した。得られた結果をVHR−2の記号で示した。
【0134】
誘電率異方性が正の試料と負の試料とでは、特性の測定法が異なることがある。誘電率異方性が正であるときの測定法は、測定(11a)から測定(15a)に記載した。誘電率異方性が負の場合は、測定(11b)から測定(15b)に記載した。
【0135】
(11a)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
正の誘電率異方性:測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。ツイスト角が0度であり、そして2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5μmであるTN素子に試料を入れた。この素子に16Vから19.5Vの範囲で0.5V毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算で必要な誘電率異方性の値は、この回転粘度を測定した素子を用い、下に記載した方法で求めた。
【0136】
(11b)粘度(回転粘度;γ1;25℃で測定;mPa・s)
負の誘電率異方性:測定は、M. Imai et al., Molecular Crystals and Liquid Crystals, Vol. 259, 37 (1995) に記載された方法に従った。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmのVA素子に試料を入れた。この素子に39ボルトから50ボルトの範囲で1ボルト毎に段階的に印加した。0.2秒の無印加のあと、ただ1つの矩形波(矩形パルス;0.2秒)と無印加(2秒)の条件で印加を繰り返した。この印加によって発生した過渡電流(transient current)のピーク電流(peak current)とピーク時間(peak time)を測定した。これらの測定値とM.Imaiらの論文、40頁の計算式(8)とから回転粘度の値を得た。この計算に必要な誘電率異方性は、下記の誘電率異方性の項で測定した値を用いた。
【0137】
(12a)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
正の誘電率異方性:2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、そしてツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(10V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。
【0138】
(12b)誘電率異方性(Δε;25℃で測定)
負の誘電率異方性:誘電率異方性の値は、Δε=ε‖−ε⊥、の式から計算した。誘電率(ε‖およびε⊥)は次のように測定した。
1)誘電率(ε‖)の測定:よく洗浄したガラス基板にオクタデシルトリエトキシシラン(0.16mL)のエタノール(20mL)溶液を塗布した。ガラス基板をスピンナーで回転させたあと、150℃で1時間加熱した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであるVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤で密閉した。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の長軸方向における誘電率(ε‖)を測定した。
2)誘電率(ε⊥)の測定:よく洗浄したガラス基板にポリイミド溶液を塗布した。このガラス基板を焼成した後、得られた配向膜にラビング処理をした。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が9μmであり、ツイスト角が80度であるTN素子に試料を入れた。この素子にサイン波(0.5V、1kHz)を印加し、2秒後に液晶分子の短軸方向における誘電率(ε⊥)を測定した。
【0139】
(13a)弾性定数(K;25℃で測定;pN)
正の誘電率異方性:測定には横河・ヒューレットパッカード株式会社製のHP4284A型LCRメータを用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである水平配向素子に試料を入れた。この素子に0ボルトから20ボルト電荷を印加し、静電容量(C)および印加電圧(V)を測定した。これらの値を「液晶デバイスハンドブックク」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.99)からK11およびK33の値を得た。次に171頁にある式(3.18)に、先ほど求めたK11およびK33の値を用いてK22を算出した。弾性定数Kは、このようにして求めたK11、K22、およびK33の平均値で表した。
【0140】
(13b)弾性定数(K11およびK33;25℃で測定;pN)
負の誘電率異方性:測定には株式会社東陽テクニカ製のEC−1型弾性定数測定器を用いた。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が20μmである垂直配向素子に試料を入れた。この素子に20ボルトから0ボルト電荷を印加し、静電容量および印加電圧を測定した。静電容量(C)と印加電圧(V)の値を、「液晶デバイスハンドブック」(日刊工業新聞社)、75頁にある式(2.98)、式(2.101)を用いてフィッティングし、式(2.100)から弾性定数の値を得た。
【0141】
(14a)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
正の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が0.45/Δn(μm)であり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に印加する電圧(32Hz、矩形波)は0Vから10Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が90%になったときの電圧で表した。
【0142】
(14b)しきい値電圧(Vth;25℃で測定;V)
負の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が4μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のVA素子に試料を入れ、この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子に印加する電圧(60Hz、矩形波)は0Vから20Vまで0.02Vずつ段階的に増加させた。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%である電圧−透過率曲線を作成した。しきい値電圧は透過率が10%になったときの電圧で表した。
【0143】
(15a)応答時間(τ;25℃で測定;ms)
正の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が5.0μmであり、ツイスト角が80度であるノーマリーホワイトモード(normally white mode)のTN素子に試料を入れた。この素子に矩形波(60Hz、5V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。立ち上がり時間(τr:rise time;ミリ秒)は、透過率が90%から10%に変化するのに要した時間である。立ち下がり時間(τf:fall time;ミリ秒)は透過率10%から90%に変化するのに要した時間である。応答時間は、このようにして求めた立ち上がり時間と立ち下がり時間との和で表した。
【0144】
(15b)応答時間(τ;25℃で測定;ms)
負の誘電率異方性:測定には大塚電子株式会社製のLCD5100型輝度計を用いた。光源はハロゲンランプであった。ローパス・フィルター(Low-pass filter)は5kHzに設定した。2枚のガラス基板の間隔(セルギャップ)が3.2μmであり、ラビング方向がアンチパラレルであるノーマリーブラックモード(normally black mode)のPVA素子に試料を入れた。この素子を紫外線で硬化する接着剤を用いて密閉した。この素子にしきい値電圧を若干超える程度の電圧を1分間印加し、次に5.6Vの電圧を印加しながら23.5mW/cmの紫外線を8分間照射した。この素子に矩形波(60Hz、10V、0.5秒)を印加した。この際に、素子に垂直方向から光を照射し、素子を透過した光量を測定した。この光量が最大になったときが透過率100%であり、この光量が最小であったときが透過率0%であるとみなした。応答時間は透過率90%から10%に変化するのに要した時間(立ち下がり時間;fall time;ミリ秒)で表した。
【0145】
[合成例1]化合物(1−1−1)
【0146】
化合物(r−1)(10.0g,26.9mmol)、エタノール(3.9g、85.3mmol)、トリフェニルホスフィン(25.6g、97.5mmol)をテトラヒドロフラン(THF;100mL)に溶解させ、氷浴上で冷却した。そこへ、アゾジカルボン酸エチル(DEAD;2.2mol/Lのトルエン溶液;44.3mL、97.5mmol)を滴下し、室温で終夜攪拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、さらにヘプタン/エタノール=1/3(体積比)から再結晶して1.2gの化合物(1−1−1)を得た。
【0147】
H−NMR(CDCl;δppm):7.16(s,2H),4.07(q,4H),1.41(t,6H).
【0148】
転移温度の測定には、化合物(1−1−1)をそのまま試料として用いた。上限温度(TNI)、誘電率異方性(Δε)および光学異方性の測定には、化合物(1−1−1)と母液晶Bの混合物を試料として用いた。この測定法は、以下で合成した化合物にも採用した。
転移温度:C 49.9 C 68.8 I.TNI=−116.1℃,Δε=−9.11,Δn=−0.017.
【0149】
[合成例2]化合物(1−1−3)
【0150】
化合物(r−1)(10.0g,26.9mmol)、1−ブタノール(6.3g、85.3mmol)、トリフェニルホスフィン(25.6g、97.5mmol)をTHF(100mL)に溶解させ、氷浴上で冷却した。そこへ、DEAD(2.2mol/Lのトルエン溶液;44.3mL、97.5mmol)を滴下し、室温で終夜攪拌した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン)で精製し、さらにエタノールから再結晶して2.38gの化合物(1−1−3)を得た。
【0151】
H−NMR(CDCl;δppm):7.15(s,2H),3.99(t,4H),1.78(quin,4H),1.50(sex,4H),0.97(t,6H).転移温度:C 17.7 I.TNI=−101.4℃,Δε=−10.1,Δn=−0.003.
【0152】
[合成例3]化合物(1−1−14)

【0153】
〈第1工程〉化合物(r−2)の合成
化合物(r−1)(18.0g,73.1mmol)をピリジン(100mL)に溶解させ、氷浴上で冷却した。そこへトリフルオロメタンスルホン酸無水物(29.7mL、175.5mmol)を滴下し、室温で終夜攪拌した。溶媒を留去し、残渣をジエチルエーテルへ溶解させ、このエーテル溶液を2M塩酸、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル=9/1、体積比)で精製して34.9gの化合物(r−2)を得た。
【0154】
〈第2工程〉化合物(r−3)の合成
化合物(r−2)(15.1g,29.5mmol)、ジクロロビストリフェニルホスフィンパラジウム(II)(0.202g、0.29mmol)、ヨウ化銅(I)(0.067g、0.35mmol)をトリエチルアミン(60mL)に溶解させ、そこへ、ペント−1−イン(4.31g、63.3mmol)を滴下し、室温で7日間終夜攪拌した。溶媒を留去し、残渣をトルエンに溶解させ、このトルエン溶液を飽和塩化アンモニウム水溶液、水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して7.80gの化合物(r−3)を得た。
【0155】
〈第3工程〉化合物(1−1−14)の合成
化合物(r−3)(3.80g,11.0mmol)をTHF(50mL)へ溶解させ、そこへ水素化アルミニウムリチウム(1.25g、32.9mmol)を加え、21時間加熱還流した。反応混合物を室温まで冷却した後氷水へ注ぎ込み、酢酸エチルで抽出した。抽出液を1M塩酸、水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製した。これをアセトニトリル(8mL)に溶解させ、ベンゼンスルフィン酸ナトリウム二水和物(0.46g、2.28mmol)、6M塩酸(0.38mL)を加え、6時間加熱還流した。室温まで冷却した後、反応混合物をヘプタンにあけた。有機層を水、食塩水で洗浄後、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製し、さらにメタノールから再結晶して、化合物(1−1−14)を得た。
【0156】
H−NMR(CDCl;δppm):7.56(s,2H)、6.68(d,2H)、6.09(tt,2H)、2.22(q,4H)、1.52(sex,4H),0.95(t,6H).転移温度:C 17.8 I.TNI=−116.4℃,Δε=−4.37,Δn=0.014.
【0157】
[合成例4]化合物(1−1−27)

【0158】
化合物(r−3)(3.00g,8.66mmol)をトルエン(25mL)と2−プロパノール(25mL)に溶解させ、そこへPd/C(0.17g)を加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで撹拌した。Pd/Cをろ別した後、溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製し、さらにメタノールから再結晶して化合物(1−1−27)を得た。
【0159】
H−NMR(CDCl;δppm):7.36(s,2H),2.75(t,4H)、1.62(quin,4H)、2.22(q,4H)、1.40−1.31(m,8H)、0.91(t,6H).転移温度:C 21.0 I.TNI=−154.1℃,Δε=−2.36,Δn=−0.053.
【0160】
[合成例5]化合物(1−2−20)

【0161】
〈第1工程〉化合物(r−5)の合成
化合物(r−4)(10.0g,35.7mmol)、t−BuOK(4.50g、40.1mmol)をTHF(10mL)へ溶解させ、−78℃に冷却した後、n−BuLi(1.6M/Lのヘキサン溶液;25.0mL、38.8mmol)を滴下し、同温で2時間撹拌した。そこへTHF(5mL)に溶解させた1−ブタナール(3.37g、40.1mmol)を滴下し、−78℃で3時間撹拌した。反応混合物を室温まで戻した後、水へ注ぎ込んだ。塩化アンモニウム水溶液で中和し、酢酸エチルで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/酢酸エチル=9/1、体積比)で精製して8.62gの化合物(r−5)を得た。
【0162】
〈第2工程〉化合物(r−6)の合成
化合物(r−5)(8.62g,23.5mmol)をトルエン(80mL)に溶解させ、そこへp-トルエンスルホン酸一水和物(0.23g、1.21mmol)を加え、発生する水を留去しながら5時間加熱還流をした。冷却後反応混合物を飽和重曹水へ注ぎ込んだ。有機層を水、飽和食塩水で洗浄した後、無水硫酸マグネシウムで乾燥させた。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製して6.37gの化合物(r−6)を得た。
【0163】
〈第3工程〉化合物(1−2−20)の合成
化合物(r−6)(6.37g,18.2mmol)をTHF(50mL)へ溶解させ、そこへテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.0M/LのTHF溶液;19mL,19.0mmol)を10℃以下の温度で滴下し、室温にて1時間撹拌した。反応混合物を水へ注ぎ込み、トルエンで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製し、さらにメタノールから再結晶して、4.78gの化合物(1−2−20)を得た。
【0164】
H−NMR(CDCl;δppm):7.17(d,1H),7.03(t,1H),6.63(d,1H)、5.97(tt,1H),4.11(q,2H),2.18(q,2H)、1.49(sex,2H)、1.45(t,3H)、0.95(t,3H).転移温度:C 11.7 I.TNI=−144.1℃,Δε=−4.05,Δn=−0.013.
【0165】
[合成例6]化合物(1−2−27)

【0166】
化合物(1−2−20)(3.61g,13.1mmol)をトルエン(25mL)、2−プロパノール(25mL)に溶解させ、そこへPd/C(0.14g)を加え、水素雰囲気下、水素を吸収しなくなるまで撹拌した。Pd/Cをろ別した後、溶媒を留去した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン=9/1、体積比)で精製し、さらにメタノールから再結晶して2.47gの化合物(1−2−27)を得た。
【0167】
H−NMR(CDCl;δppm):7.02(t,1H),6.94(d,1H),4.08(q,2H),2.69(td,2H),1.55(quin,2H),1.44(t,3H),1.35−1.29(m,4H)、0.89(t,3H).
転移温度:C 8.9 I.TNI=−166.1℃,Δε=−2.78,Δn=−0.066.
【0168】
[合成例7]化合物(1−2−9)
【0169】
〈第1工程〉化合物(r−8)の合成
化合物(r−7)(6.64g,22.4mmol)、1−ブタノール(1.84g、24.8mmol)、トリフェニルホスフィン(6.52g、24.9mmol)をTHF(70mL)へ溶解させ、氷冷下でDEAD(2.2M/Lのヘキサン溶液;11.2mL、24.6mmol)を滴下し、さらに室温で2時間撹拌した。溶媒を留去した後、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン=4/1、体積比)で精製して6.27gの化合物(r−8)を得た。
【0170】
〈第3工程〉化合物(1−2−9)の合成
化合物(r−8)(6.27g,17.8mmol)をTHF(50mL)へ溶解させ、そこへテトラブチルアンモニウムフルオリド(1.0M/LのTHF溶液;18mL,18.0mmol)を10℃以下の温度で滴下し、室温にて1時間撹拌した。反応混合物を水へ注ぎ込み、トルエンで抽出した。抽出液を水、飽和食塩水で洗浄し、無水硫酸マグネシウムで乾燥した。溶媒を留去し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン/トルエン=2/1、体積比)で精製し、さらにメタノールから再結晶して2.17gの化合物(1−2−9)を得た。
【0171】
H−NMR(CDCl;δppm):7.04(t,1H),6.64(d,1H),4.05(q,2H)、3.96(t,2H),1.77(q,2H)、1.49(sex,2H),1.42(t,3H),0.96(t,3H).転移温度:C 9.2 I.TNI=−137.4℃,Δε=−6.58,Δn=−0.026.
【0172】
[合成例8]化合物(1−4−1)

【0173】
化合物(r−9)(5.00g,22.5mmol)をジクロロメタン(20mL)に溶解させ、そこへ氷冷下ジエチルアミノサルファトリフルオリド(DAST)(6.2mL;7.6g)を加え、室温で終夜撹拌した。飽和炭酸ナトリウム水溶液へ反応溶液を注ぎ込みジクロロメタンで抽出後、油層を飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄後無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を留去し残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(ヘプタン)で精製し、さらにメタノールから再結晶して化合物(1−4−1)を得た。
【0174】
H−NMR(CDCl;δppm):7.02(s,2H),6.44(t,2H),4.07(q,4H),1.41(t,6H).Δε=−8.55.
【0175】
[比較例1]
比較のために、国際公開第2011/098224号の実施例1に開示された化合物(Ex−1)を選んで合成した。
【0176】
H−NMR(CDCl;δppm):6.62(dd,2H),3.98(t,4H),1.77(quin,4H),1.49(sex,4H),0.97(t,6H).転移温度:C −8.2 I.TNI=−124.1℃,Δε=−5.88,Δn=−0.014.
【0177】
ベンゼン環上における2位と3位の置換基以外同一構造を有する比較化合物(Ex−1)と化合物(1−1−3)の物性を、「測定方法」の項で記載したように、同一の条件下で測定した。結果を下の表1にまとめた。2つの化合物は融点を有したが、ネマチック相を示さなかった。化合物(1−1−3)の誘電率異方性は、比較化合物(Ex−1)の約1.7倍であり、上限温度は23度高いことが分かった。したがって、化合物(1−1−3)は、比較化合物(Ex−1)に比べ、上限温度や誘電率異方性の観点から有用であると結論できる。
【0178】

注)光学異方性は、マイナスの値であった。これは、外挿法に起因する。
【0179】
合成例1などに記載された方法や、「2.化合物(1)の合成」の項を参考にしながら、以下に示す化合物を合成することが可能である。
【0180】
【0181】
【0182】
【0183】
【0184】
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
【0192】
2.液晶組成物の実施例
本発明は、使用例1の組成物と使用例2の組成物との混合物を含む。本発明は、使用例の組成物の少なくとも2つを混合した混合物をも含む。使用例における化合物は、下記の表2の定義に基づいて記号により表した。表2において、1,4−シクロヘキシレンに関する立体配置はトランスである。使用例において記号の後にあるかっこ内の番号は、化合物が属する化学式を表す。(−)の記号は化合物(2)から(15)とは異なる、その他の液晶性化合物を意味する。液晶性化合物の割合(百分率)は、液晶組成物の重量に基づいた重量百分率(重量%)である。最後に、組成物の物性値をまとめた。物性は、先に記載した方法にしたがって測定し、測定値を(外挿することなく)そのまま記載した。
【0193】

【0194】
[使用例1]
4O−B(2CF3,3CF3)−O4 (1−1−3) 3%
3−GB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−57) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 7%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 3%
3−HH−V (2−1) 40%
3−HH−V1 (2−1) 7%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 4%
V−HHB−1 (3−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (12−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (13−97) 5%
3−GB(F,F)XB(F,F)−F (13−113) 4%
3−HHBB(F,F)−F (14−6) 3%
NI=77.9℃;η=14.0mPa・s;Δn=0.101;Δε=6.8.
【0195】
[使用例2]
2O−B(2CF3,3CF3)−O2 (1−1−1) 3%
5−HB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−41) 5%
3−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 3%
4−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 6%
5−BB(F)B(F,F)XB(F,F)−F (14−47) 3%
3−HH−V (2−1) 40%
3−HH−V1 (2−1) 7%
3−HHEH−5 (3−13) 3%
3−HHB−1 (3−1) 4%
V−HHB−1 (3−1) 5%
V2−BB(F)B−1 (3−6) 5%
1V2−BB―F (12−1) 3%
3−BB(F,F)XB(F,F)−F (13−97) 10%
3−HHBB(F,F)−F (14−6) 3%
NI=77.1℃;η=12.7mPa・s;Δn=0.101;Δε=5.7.
【0196】
[使用例3]
3V−B(2CF3,3CF3)−V3 (1−1−14) 5%
1V2−BEB(F,F)−C (15−15) 5%
3−HB−C (15−1) 17%
2−BTB−1 (2−10) 10%
5−HH−VFF (2−1) 29%
3−HHB−1 (3−1) 4%
VFF−HHB−1 (3−1) 8%
VFF2−HHB−1 (3−1) 10%
3−H2BTB−2 (3−17) 5%
3−H2BTB−3 (3−17) 4%
3−H2BTB−4 (3−17) 3%
NI=71.5℃;Δn=0.124;Δε=5.6.
【0197】
[使用例4]
5−B(2CF3,3CF3)−5 (1−1−27) 4%
2−HH−3 (2−1) 5%
3−HH−V1 (2−1) 10%
1V2−HH−1 (2−1) 8%
1V2−HH−3 (2−1) 7%
3−BB(2F,3F)−O2 (5−3) 7%
5−BB(2F,3F)−O2 (5−3) 3%
3−H1OB(2F,3F)−O2 (5−5) 6%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 8%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 19%
3−HDhB(2F,3F)−O2 (−) 7%
3−HHB−1 (3−1) 3%
3−HHB−3 (3−1) 2%
2−BB(2F,3F)B−3 (5−3) 11%
NI=78.3℃;η=22.5mPa・s;Δn=0.102;Δε=−4.3.
【0198】
[使用例5]
4O−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−9) 3%
1−BB−3 (2−6) 9%
3−HH−V (2−1) 29%
3−BB(2F,3F)−O2 (5−3) 11%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 20%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 14%
3−HHB−1 (3−1) 8%
5−B(F)BB−2 (3−8) 6%
NI=70.5℃;η=15.4mPa・s;Δn=0.100;Δε=−3.1.
【0199】
[使用例6]
3V−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−20) 4%
2−HH−3 (2−1) 16%
7−HB−1 (2−5) 9%
5−HB−O2 (2−5) 8%
3−HB(2F,3F)−O2 (5−1) 15%
5−HB(2F,3F)−O2 (5−1) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (6−12) 3%
4−HHB(2F,3CL)−O2 (6−12) 3%
5−HHB(2F,3CL)−O2 (6−12) 2%
3−HH1OCro(7F,8F)−5 (9−6) 5%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 10%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 10%
NI=70.2℃;η=23.8mPa・s;Δn=0.101;Δε=−2.5.
【0200】
[使用例7]
5−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−27) 3%
2−HH−3 (2−1) 20%
3−HH−4 (2−1) 9%
1−BB−3 (2−8) 8%
3−HB−O2 (2−5) 2%
3−BB(2F,3F)−O2 (5−3) 8%
5−BB(2F,3F)−O2 (5−3) 5%
2−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 13%
3−HH1OB(2F,3F)−O2 (6−5) 21%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB−O1 (3−1) 3%
5−B(F)BB−2 (3−8) 3%
NI=70.3℃;η=16.2mPa・s;Δn=0.093;Δε=−3.2.
【0201】
[使用例8]
2O−B(2F,3SF5)−O2 (1−5−1) 3%
2−HH−5 (2−1) 3%
3−HH−4 (2−1) 15%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HB−O2 (2−5) 12%
3−H2B(2F,3F)−O2 (5−4) 12%
5−H2B(2F,3F)−O2 (5−4) 15%
3−HHB(2F,3CL)−O2 (6−12) 5%
2−HBB(2F,3F)−O2 (6−7) 3%
3−HBB(2F,3F)−O2 (6−7) 9%
5−HBB(2F,3F)−O2 (6−7) 9%
3−HHB−1 (3−1) 3%
3−HHB−3 (3−1) 4%
3−HHB−O1 (3−1) 3%
【0202】
[使用例9]
2O−B(2SF5,3SF5)−O2 (1−6−1) 3%
3−HB−O1 (2−5) 15%
3−HH−4 (2−1) 5%
3−HB(2F,3F)−O2 (5−1) 12%
5−HB(2F,3F)−O2 (5−1) 12%
2−HHB(2F,3F)−1 (6−1) 11%
3−HHB(2F,3F)−1 (6−1) 12%
3−HHB(2F,3F)−O2 (6−1) 11%
5−HHB(2F,3F)−O2 (6−1) 13%
3−HHB−1 (3−1) 6%
【0203】
[使用例10]
5−B(2SF5,3SF5)−5 (1−6−27) 3%
5−HB−CL (12−2) 3%
7−HB(F)−F (12−3) 7%
3−HH−4 (2−1) 9%
3−HH−5 (2−1) 10%
3−HB−O2 (2−5) 13%
3−HHEB−F (13−10) 8%
5−HHEB−F (13−10) 8%
3−HHEB(F,F)−F (13−12) 9%
4−HHEB(F,F)−F (13−12) 5%
3−GHB(F,F)−F (13−109) 4%
4−GHB(F,F)−F (13−109) 5%
5−GHB(F,F)−F (13−109) 7%
2−HHB(F,F)−F (13−3) 4%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 5%
【0204】
[使用例11]
2O−B(2CF2H,3CF2H)−O2 (1−4−1) 3%
5−HB−CL (12−2) 14%
7−HB(F,F)−F (12−4) 3%
3−HH−4 (2−1) 10%
3−HH−5 (2−1) 5%
3−HB−O2 (2−5) 15%
3−HHB−1 (3−1) 8%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
2−HHB(F)−F (13−2) 7%
3−HHB(F)−F (13−2) 7%
5−HHB(F)−F (13−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 6%
3−H2HB(F,F)−F (13−15) 5%
4−H2HB(F,F)−F (13−15) 5%
【0205】
[使用例12]
2O−B(2CF3,3CF3)−O2 (1−1−1) 2%
4O−B(2CF3,3CF3)−O4 (1−1−3) 2%
3−HB−CL (12−2) 5%
5−HB−CL (12−2) 3%
3−HHB−OCF3 (13−1) 5%
3−H2HB−OCF3 (13−13) 5%
5−H4HB−OCF3 (13−19) 15%
V−HHB(F)−F (13−2) 4%
3−HHB(F)−F (13−2) 4%
5−HHB(F)−F (13−2) 7%
3−H4HB(F,F)−CF3 (13−21) 8%
5−H4HB(F,F)−CF3 (13−21) 10%
5−H2HB(F,F)−F (13−15) 5%
5−H4HB(F,F)−F (13−21) 7%
2−H2BB(F)−F (13−26) 5%
3−H2BB(F)−F (13−26) 8%
3−HBEB(F,F)−F (13−39) 5%
NI=64.3℃;η=27.1mPa・s;Δn=0.092;Δε=8.0.
【0206】
[使用例13]
3V−B(2CF3,3CF3)−V3 (1−1−14) 3%
5−B(2CF3,3CF3)−5 (1−1−27) 3%
5−HB−CL (12−2) 10%
3−HH−4 (2−1) 7%
3−HHB−1 (3−1) 5%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 7%
3−HBB(F,F)−F (13−24) 18%
5−HBB(F,F)−F (13−24) 15%
3−HHEB(F,F)−F (13−12) 10%
4−HHEB(F,F)−F (13−12) 3%
5−HHEB(F,F)−F (13−12) 3%
2−HBEB(F,F)−F (13−39) 3%
3−HBEB(F,F)−F (13−39) 5%
5−HBEB(F,F)−F (13−39) 3%
3−HHBB(F,F)−F (14−6) 5%
NI=67.8℃;Δn=0.096;Δε=8.2.
【0207】
[使用例14]
4O−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−9) 5%
5−HB−F (12−2) 12%
6−HB−F (12−2) 9%
7−HB−F (12−2) 7%
2−HHB−OCF3 (13−1) 6%
3−HHB−OCF3 (13−1) 7%
4−HHB−OCF3 (13−1) 7%
5−HHB−OCF3 (13−1) 5%
3−HH2B−OCF3 (13−4) 4%
5−HH2B−OCF3 (13−4) 4%
3−HHB(F,F)−OCF2H (13−3) 3%
3−HHB(F,F)−OCF3 (13−3) 4%
3−HH2B(F)−F (13−5) 3%
3−HBB(F)−F (13−23) 8%
5−HBB(F)−F (13−23)10%
5−HBBH−3 (4−1) 3%
3−HB(F)BH−3 (4−2) 3%
NI=74.2℃;η=15.2mPa・s;Δn=0.085;Δε=4.0.
【0208】
[使用例15]
3V−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−20) 6%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 9%
3−H2HB(F,F)−F (13−15) 7%
4−H2HB(F,F)−F (13−15) 8%
5−H2HB(F,F)−F (13−15) 7%
3−HBB(F,F)−F (13−24) 20%
5−HBB(F,F)−F (13−24) 18%
3−H2BB(F,F)−F (13−27) 8%
5−HHBB(F,F)−F (14−6) 3%
5−HHEBB−F (14−17) 2%
3−HH2BB(F,F)−F (14−15) 4%
1O1−HBBH−4 (4−1) 4%
1O1−HBBH−5 (4−1) 4%
NI=86.7℃;η=35.7mPa・s;Δn=0.110;Δε=8.4.
上記の組成物に化合物(Op−05)を0.25重量%の割合で添加したときのピッチは65.3μmであった。
【0209】
[使用例16]
5−B(2CF3,3F)−O2 (1−2−27) 5%
5−HB−CL (12−2) 15%
3−HH−4 (2−1) 11%
3−HH−5 (2−1) 4%
3−HHB−F (13−1) 4%
3−HHB−CL (13−1) 3%
4−HHB−CL (13−1) 4%
3−HHB(F)−F (13−2) 9%
4−HHB(F)−F (13−2) 8%
5−HHB(F)−F (13−2) 8%
7−HHB(F)−F (13−2) 7%
5−HBB(F)−F (13−23) 3%
1O1−HBBH−5 (4−1) 3%
3−HHBB(F,F)−F (14−6) 3%
4−HHBB(F,F)−F (14−6) 3%
5−HHBB(F,F)−F (14−6) 4%
3−HH2BB(F,F)−F (14−15) 3%
4−HH2BB(F,F)−F (14−15) 3%
NI=103.7℃;η=21.0mPa・s;Δn=0.085;Δε=3.6.
【0210】
[使用例17]
2O−B(2F,3SF5)−O2 (1−5−1) 3%
7−HB(F,F)−F (12−4) 3%
3−HB−O2 (2−5) 7%
2−HHB(F)−F (13−2) 10%
3−HHB(F)−F (13−2) 10%
5−HHB(F)−F (13−2) 8%
2−HBB(F)−F (13−23) 9%
3−HBB(F)−F (13−23) 9%
5−HBB(F)−F (13−23) 15%
2−HBB−F (13−22) 4%
3−HBB−F (13−22) 4%
5−HBB−F (13−22) 3%
3−HBB(F,F)−F (13−24) 5%
5−HBB(F,F)−F (13−24) 10%
【0211】
[使用例18]
2O−B(2SF5,3SF5)−O2 (1−6−1) 3%
3−HB−CL (12−2) 12%
3−HH−4 (2−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 8%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 3%
3−HBB(F,F)−F (13−3) 28%
5−HBB(F,F)−F (13−3) 24%
5−HBB(F)B−2 (4−5) 5%
5−HBB(F)B−3 (4−5) 5%
【0212】
[使用例19]
5−B(2SF5,3SF5)−5 (1−6−27) 3%
2−HB−C (15−1) 5%
3−HB−C (15−1) 12%
3−HB−O2 (2−5) 15%
2−BTB−1 (2−10) 3%
3−HHB−F (13−1) 3%
3−HHB−1 (3−1) 7%
3−HHB−O1 (3−1) 5%
3−HHB−3 (3−1) 13%
3−HHEB−F (13−10) 4%
5−HHEB−F (13−10) 4%
2−HHB(F)−F (13−2) 7%
3−HHB(F)−F (13−2) 7%
5−HHB(F)−F (13−2) 7%
3−HHB(F,F)−F (13−3) 5%
【産業上の利用可能性】
【0213】
本発明の液晶性化合物は、優れた物性を有する。この化合物を含有する液晶組成物は、パソコン、テレビなどに用いる液晶表示素子に広く利用できる。