(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来より、ポリビニルアルコール系フィルムは、透明性に優れたフィルムとして多くの用途に利用されており、その有用な用途の一つに偏光膜があげられる。かかる偏光膜は液晶ディスプレイの基本構成要素として用いられており、近年では高品位で高信頼性の要求される機器へとその使用が拡大されている。
【0003】
このような中、液晶テレビや多機能携帯端末等の画面の高輝度化、高精細化、大面積化、薄型化に伴い、偏光性能に優れた偏光膜が要求されている。具体的には、更なる偏光度の向上や色ムラの解消である。
【0004】
一般的に、偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液から連続キャスト法により製造される。具体的には、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、キャストドラムやエンドレスベルト等のキャスト型に流延して製膜し、その製膜されたフィルムをキャスト型から剥離後、ニップロール等を用いて流れ方向(MD方向)に搬送しながら、熱ロールやフローティングドライヤーを用いて乾燥することにより製造される。
【0005】
上述した搬送工程において、製膜されたフィルムは、流れ方向(MD方向)に引っ張られるため、一般的に、ポリビニルアルコール系高分子はMD方向に配向しやすく、フィルムの光学軸(遅相軸)はMD方向を向くことが多い。必然的に、流れ方向(MD方向、y軸方向)の屈折率Nyが大きく、幅方向(TD方向、x軸方向)の屈折率Nxが小さいポリビニルアルコール系フィルムが得られる。かかるポリビニルアルコール系フィルムの複屈折ΔNxy(Nx−Nyで定義される)は、負の値を有することになる。
【0006】
また、搬送工程において、製膜されたフィルムの幅方向(TD方向)には、ポアソン比に依存した収縮応力と脱水による収縮応力が発生するため、かかるTD方向への応力を利用すれば、ポリビニルアルコール系高分子をある程度TD方向に配向させることも可能である。この場合、光学軸はMD方向とTD方向の間を向くことになり、複屈折ΔNxyはゼロに近づく傾向がある。
【0007】
一方、一般的に、偏光膜は、その原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、ヨウ素等の二色性染料で染色し、延伸することにより製造される。かかる膨潤工程では、ポリビニルアルコール系フィルムを、厚み方向に速やかに膨潤させる必要がある。さらに、染色工程においてフィルム内部に染料がスムーズに侵入するように、均一に膨潤させる必要がある。
また、延伸工程は、染色後のフィルムを流れ方向(MD方向)に延伸して、フィルム中の二色性染料を高度に配向させる工程であるが、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、原反となるポリビニルアルコール系フィルムが流れ方向(MD方向)に良好な延伸性を有する必要がある。
【0008】
なお、偏光膜製造において、延伸工程と染色工程の順序が上記と逆のケースも実施されている。すなわち、原反であるポリビニルアルコール系フィルムを、水(温水を含む)で膨潤させた後、延伸し、ヨウ素等の二色性染料で染色するケースであるが、かかるケースにおいても、偏光膜の偏光性能を向上させるためには、ポリビニルアルコール系フィルムが、厚み方向に良好な膨潤性を有し、かつ流れ方向(MD方向)に良好な延伸性を有する必要がある。
【0009】
さらに、近年、偏光膜の薄型化のために、偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムも薄型化されており、厚み20μm以下のフィルムも散見される。かかる薄型フィルムは、偏光膜を製造する際の延伸によって破断してしまう等の生産性の問題があった。
【0010】
膨潤性を改良する手法として、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂に多価アルコールを水膨潤助剤として添加する手法(例えば、特許文献1参照)が提案されている。延伸性を改良する手法として、例えば、フィルムを製膜する時のキャストドラムの速度と最終的なフィルム巻き取り速度との比を特定する手法(例えば、特許文献2参照)、キャストドラムで製膜後にフィルムを浮遊させて乾燥する手法(例えば、特許文献3参照)、製膜されたフィルムの乾燥工程における引っ張り具合を制御する手法(例えば、特許文献4参照)が提案されている。また、面内位相差を低減したポリビニルアルコール系フィルムが提案されている(例えば、特許文献5、6参照)。また、面内位相差が70〜400nmであるポリビニルアルコール系位相差フィルムが提案されている(例えば、特許文献7参照)。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下に、本発明を詳細に説明する。
本発明のポリビニルアルコール系フィルム
の製造方法は
、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を連続キャスト法により製膜し、製膜されたフィルムをキャスト型からの剥離した後、流れ方向(MD方向、y軸方向)に搬送しながら、連続的に乾燥および幅方向(TD方向)に延伸して得られる
ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法である。
【0022】
本発明の最大の特徴は、上記方法により製造されたポリビニルアルコール系フィルムにおいて、幅方向(TD方向、x軸方向)の屈折率をNx、流れ方向(MD方向、y軸方向)の屈折率をNy、厚み方向(z軸方向)の屈折率をNzとした場合に、xy面の複屈折ΔNxy、xz面の複屈折ΔNxzが、下記式(1)および(2)を満足することである。
(1)ΔNxy=Nx−Ny≧0
(2)ΔNxz=Nx−Nz≧0.003
【0023】
上記式(1)および(2)は、例えば、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD方向)の延伸処理により達成することができるが、その場合の延伸倍率は、1.05〜1.5倍であることが好ましく、特に好ましくは1.1〜1.4倍、更に好ましくは1.2〜1.3倍である。幅方向(TD方向)の延伸倍率が低すぎても高すぎても、複屈折の制御が困難であり、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。
【0024】
複屈折ΔNxyは、下記式(1’)を満足することが好ましく、下記式(1’’)を満足することが特に好ましい。
(1’)ΔNxy=Nx−Ny≧0.001
(1’’)ΔNxy=Nx−Ny≧0.002
【0025】
複屈折ΔNxyが下限値未満の場合、偏光膜製造時の流れ方向(MD方向、y軸方向)への延伸性が低下し好ましくない。すなわち、複屈折ΔNxyが下限値未満の場合は(負の場合を含む)、ポリビニルアルコール系高分子が流れ方向(MD方向、y軸方向)にかなり配向しているため、かかる方向に分子鎖を引き伸ばして延伸するのが困難であり好ましくない。
【0026】
複屈折ΔNxzは、下記式(2’)を満足することが好ましく、下記式(2’’)を満足することが特に好ましい。
(2’)ΔNxz=Nx−Nz≧0.004
(2’’)ΔNxz=Nx−Nz≧0.005
【0027】
複屈折ΔNxzが下限値未満の場合、偏光膜製造時の膨潤性が低下し好ましくない。すなわち、複屈折ΔNxzが下限値未満の場合は(負の場合を含む)、ポリビニルアルコール系高分子が厚み方向(z軸方向)に配向しているため、かかる方向に膨潤させるのは困難であり好ましくない。
【0028】
本発明においては、幅方向(TD方向)における複屈折ΔNxyのふれ、複屈折ΔNxzのふれは、いずれも0.001以下であることが好ましく、特に好ましくは0.0007以下、更に好ましくは0.0005以下である。かかるふれが大きすぎると、偏光膜に色ムラが生じやすい傾向がある。
【0029】
なお、上記複屈折ΔNxy(nm)や複屈折ΔNxz(nm)を制御する手法としては、本発明のような、キャスト型から剥離されたフィルムを幅方向(TD方向)に延伸する手法以外にも、水溶液の乾燥条件を調節する手法、ポリビニルアルコール系樹脂の化学構造を調節する手法等があげられる。
【0030】
ここで、本発明の偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムの製造方法を、工程順に、より詳しく説明する。
【0031】
〔フィルム材料〕
まず、本発明で使用されるポリビニルアルコール樹脂、およびその水溶液に関して説明する。
本発明において、ポリビニルアルコール系フィルムを構成するポリビニルアルコール系樹脂としては、通常、未変性のポリビニルアルコール系樹脂、すなわち、酢酸ビニルを重合して得られるポリ酢酸ビニルをケン化して製造される樹脂が用いられる。必要に応じて、酢酸ビニルと、少量(通常、10モル%以下、好ましくは5モル%以下)の酢酸ビニルと共重合可能な成分との共重合体をケン化して得られる樹脂を用いることもできる。酢酸ビニルと共重合可能な成分としては、例えば、不飽和カルボン酸(例えば、塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、炭素数2〜30のオレフィン類(例えば、エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテン等)、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等があげられる。また、ケン化後の水酸基を化学修飾して得られる変性ポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0032】
また、ポリビニルアルコール系樹脂として、側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂を用いることもできる。かかる側鎖に1,2−ジオール構造を有するポリビニルアルコール系樹脂は、例えば、(i)酢酸ビニルと3,4−ジアセトキシ−1−ブテンとの共重合体をケン化する方法、(ii)酢酸ビニルとビニルエチレンカーボネートとの共重合体をケン化および脱炭酸する方法、(iii)酢酸ビニルと2,2−ジアルキル−4−ビニル−1,3−ジオキソランとの共重合体をケン化および脱ケタール化する方法、(iv)酢酸ビニルとグリセリンモノアリルエーテルとの共重合体をケン化する方法、等により得られる。
【0033】
ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、10万〜30万であることが好ましく、特に好ましくは11万〜28万、更に好ましくは12万〜26万である。かかる重量平均分子量が小さすぎるとポリビニルアルコール系樹脂を光学フィルムとする場合に充分な光学性能が得られにくい傾向があり、大きすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを用いて偏光膜を製造する際に、延伸が困難となる傾向がある。なお、上記ポリビニルアルコール系樹脂の重量平均分子量は、GPC−MALS法により測定される重量平均分子量である。
【0034】
本発明で用いるポリビニルアルコール系樹脂の平均ケン化度は、通常98モル%以上であることが好ましく、特に好ましくは99モル%以上、更に好ましくは99.5モル%以上、殊に好ましくは99.8モル%以上である。平均ケン化度が小さすぎるとポリビニルアルコール系フィルムを偏光膜とする場合に充分な光学性能が得られない傾向がある。
ここで、本発明における平均ケン化度は、JIS K 6726に準じて測定されるものである。
【0035】
本発明に用いるポリビニルアルコール系樹脂として、変性種、変性量、重量平均分子量、平均ケン化度等の異なる2種以上のものを併用してもよい。
【0036】
ポリビニルアルコール系樹脂水溶液には、ポリビニルアルコール系樹脂以外に、必要に応じて、グリセリン、ジグリセリン、トリグリセリン、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン等の一般的に使用される可塑剤や、ノニオン性、アニオン性、およびカチオン性の少なくとも一つの界面活性剤を含有させることが、製膜性の点から好ましい。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いることができる。
【0037】
このようにして得られるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂濃度は、15〜60重量%であることが好ましく、特に好ましくは17〜55重量%、更に好ましくは20〜50重量%である。かかる水溶液の樹脂濃度が低すぎると乾燥負荷が大きくなるため生産能力が低下する傾向があり、高すぎると粘度が高くなりすぎて均一な溶解ができにくくなる傾向がある。
【0038】
次に、得られたポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、脱泡処理される。脱泡方法としては、静置脱泡や多軸押出機による脱泡等の方法があげられる。多軸押出機としては、ベントを有した多軸押出機であればよく、通常はベントを有した2軸押出機が用いられる。
【0039】
〔製膜工程〕
脱泡処理ののち、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液は、一定量ずつT型スリットダイに導入され、回転するキャストドラム上に吐出および流延されて、連続キャスト法により製膜される。
【0040】
本発明における連続キャスト法とは、例えば、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を、T型スリットダイから、回転するキャストドラム、エンドレスベルト、樹脂フィルム等のキャスト型に吐出および流延して製膜する手法である。製膜されたフィルムは、キャスト型から剥離された後、流れ方向(MD方向、y軸方向)に搬送されながら、連続的に熱ロールで乾燥され、例えばフローティングドライヤーで熱処理されてもよい。
【0041】
T型スリットダイ出口のポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度は、80〜100℃であることが好ましく、特に好ましくは85〜98℃である。
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の樹脂温度が低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると発泡する傾向がある。
【0042】
かかるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の粘度は、吐出時に、50〜200Pa・sであることが好ましく、70〜150Pa・sであることが特に好ましい。
かかる水溶液の粘度が、低すぎると流動不良となる傾向があり、高すぎると流延が困難となる傾向がある。
【0043】
T型スリットダイからキャストドラムに吐出されるポリビニルアルコール系樹脂水溶液の吐出速度は、0.2〜5m/分であることが好ましく、特に好ましくは0.4〜4m/分、更に好ましくは0.6〜3m/分である。
かかる吐出速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると流延が困難となる傾向がある。
【0044】
かかるキャストドラムの直径は、好ましくは2〜5m、特に好ましくは2.4〜4.5m、更に好ましくは2.8〜4mである。
かかる直径が小さすぎるとキャストドラム上での乾燥区間が短くなることから速度が上がりにくい傾向があり、大きすぎると輸送性が低下する傾向がある。
【0045】
かかるキャストドラムの幅は、好ましくは4m以上であり、特に好ましくは4.5m以上、更に好ましくは5m以上、殊に好ましくは5〜6mである。
キャストドラムの幅が小さすぎると生産性が低下する傾向がある。
【0046】
かかるキャストドラムの回転速度は、3〜50m/分であることが好ましく、特に好ましくは4〜40m/分、更に好ましくは5〜35m/分である。
かかる回転速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると乾燥が不充分となる傾向がある。
【0047】
かかるキャストドラムの表面温度は、40〜99℃であることが好ましく、特に好ましくは60〜95℃である。
かかる表面温度が低すぎると乾燥不良となる傾向があり、高すぎると発泡してしまう傾向がある。
【0048】
〔製膜されたフィルム〕
上記のようにして製膜されたフィルム〔幅方向(TD方向)の延伸前のフィルム〕の含水率は、0.5〜15重量%であ
り、特に好ましくは1〜13重量%、更に好ましくは2〜12重量%である。かかる含水率が低すぎても高すぎても、複屈折の制御が困難であり、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。
【0049】
かかる含水率を調整するために、幅方向(TD方向)の延伸前のフィルムの含水率が高すぎる場合は幅方向(TD方向)への延伸前に、フィルムを乾燥することが好ましく、逆に、幅方向(TD方向)の延伸前のフィルムの含水率が低すぎる場合は、幅方向(TD方向)へ延伸する前に調湿することが好ましい。より好ましくは、含水率が上記範囲となるように乾燥工程の条件を調整することである。
【0050】
かかる乾燥は、加熱ロールや赤外線ヒーター等を使用し公知の手法で行なうことができるが、本発明においては複数の加熱ロールで行なうことが好ましく、特に好ましくは、加熱ロールの温度が40〜150℃、更に好ましくは50〜140℃である。また、含水率の調整のため、幅方向(TD方向)への延伸前に、調湿エリアを設けてもよい。
【0051】
〔搬送・延伸工程〕
そして、上記のようにして製膜され、含水率が調製されたフィルムを流れ方向(MD方向)に搬送しながら、幅方向(TD方向)に連続的または断続的に延伸する。
【0052】
本発明において、製膜されたフィルムを流れ方向(MD方向)へは特段延伸する必要はなく、フィルムがたわまない程度の引っ張り張力で搬送すれば充分である。当然のことながら、幅方向(TD方向)への延伸により、流れ方向(MD方向)にはポアソン比に依存したネックインが起こるし、乾燥中は流れ方向(MD方向)にも脱水収縮が生じるため、フィルムは流れ方向(MD方向)に少し寸法収縮することになる。
【0053】
むしろ、流れ方向(MD方向)の寸法が伸びるほどの流れ方向(MD方向)への延伸は好ましくない。幅方向(TD方向)の延伸前後において、流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.8〜1.0であることが好ましく、特に好ましくは0.9〜1.0、更に好ましくは0.95〜1.0である。かかる寸法変化率が小さすぎても大きすぎても、複屈折の制御が困難であり、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。
【0054】
製膜されたフィルムの流れ方向(MD方向)への、搬送速度の好ましい範囲は5〜30m/分であり、特に好ましくは7〜25m/分、更に好ましくは8〜20m/分である。かかる搬送速度が遅すぎると生産性が低下する傾向があり、速すぎると偏光膜の色ムラが増大する傾向がある。
【0055】
製膜されたフィルムの流れ方向(MD方向)への搬送と、幅方向(TD方向)への延伸を同時に行なう手法は、特に限定されないが、例えば、フィルムの幅方向両端部を複数のクリップで挟持して、搬送および延伸を同時に行なうことが好ましい。かかる場合、それぞれの端部でのクリップの配置は、ピッチ200mm以下であることが好ましく、特に好ましくはピッチ100mm以下、更に好ましくはピッチ50mm以下である。
かかるクリップのピッチが広すぎると、延伸後のフィルムにたわみが生じたり、フィルムの幅方向両端部の厚みムラや位相差ムラが増大したりする傾向がある。また、クリップの挟持位置(クリップの先端部)は、製膜されたフィルムの幅方向両端から100mm以下が好ましい。クリップの挟持位置(先端部)が、フィルムの幅方向中心部に位置しすぎると、破棄するフィルム端部が増大し、製品幅が狭くなる傾向がある。
【0056】
本発明で特定するポリビニルアルコール系フィルムは、先に述べたように、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD方向)の延伸処理により達成することができるが、その場合の延伸倍率は、1.05〜1.5倍であることが好ましい。特に好ましくは1.1〜1.4倍、更に好ましくは1.2〜1.3倍である。幅方向(TD方向)の延伸倍率が低すぎても高すぎても、複屈折の制御が困難であり、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。
【0057】
かかる幅方向(TD方向)の連続的な延伸工程は、1段階(1回)でもよいし、総延伸倍率が上記延伸倍率の範囲になるように複数段階(複数回)でもよい(逐次延伸とも呼ばれる)。例えば、1段階目の延伸を行った後、幅方向(TD方向)を固定した単純な搬送を行い、2段階目以降の延伸を行ってもよい。特に薄型フィルムの場合は、かかる単純な搬送工程を挿入することにより、フィルムの応力緩和がなされ、破断を回避することが可能になる。幅方向(TD方向)の固定幅を、延伸後の幅よりも狭めることも可能である。
幅固定の搬送工程を挿入する場合、固定幅を、1段階目の延伸後の幅よりも狭めることも可能である。また、延伸直後のフィルムは応力緩和のために収縮しやすく、脱水に伴う収縮も起きるため、固定幅をこれらの収縮幅まで狭めることが可能である。ただし、収縮幅以上に狭めると、フィルムにたわみが生じるため好ましくない。
かかる延伸工程は、フィルムの乾燥工程後に行われることが好ましいが、フィルムの乾燥工程前および乾燥工程後の少なくとも一方にて単独で行われてもよいし、乾燥工程中に行われてもよい。
【0058】
本発明の好ましい一形態として、フィルムの幅方向(TD方向)に、一時的に1.3倍を超えて延伸した後、最終的な幅方向(TD方向)の延伸倍率が1.05〜1.5倍になるよう寸法収縮させる手法を用いてもよい。かかる場合、一時的に1.3倍を超えて延伸した後、延伸倍率1.05〜1.5の固定幅で、フィルムを単純に搬送すればよい。かかる手法により、フィルムの応力緩和がなされ、特に薄型フィルムの場合に破断を回避することが可能になる。
【0059】
本発明において、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD方向)の延伸は、50〜150℃で行なうことが好ましく、特に好ましくは80〜145℃、更に好ましくは100〜140℃である。延伸温度が低すぎても高すぎても、複屈折の制御が困難であり、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。逐次延伸や断続的な延伸を行なう場合、かかる延伸温度は、各延伸段階で変更してもよいし、延伸中に温度勾配を設けてもよい。
【0060】
本発明において、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD方向)の延伸時の延伸時間は2〜60秒間が好ましく、特に好ましくは5〜45秒間、更に好ましくは10〜30秒間である。延伸時間が短すぎると、フィルムに破断が生じやすい傾向があり、逆に、長すぎると、設備負荷が増大する傾向がある。逐次延伸を行なう場合、かかる延伸時間は、各延伸段階で変更してもよい。
【0061】
本発明においては、製膜されたフィルムに対する幅方向(TD方向)への延伸を施した後、フローティングドライヤー等で熱処理を行ってもよい。かかる熱処理の温度は、60〜200℃であることが好ましく、特に好ましくは70〜150℃であり、更に好ましくは100〜140℃である。
かかる熱処理温度が、低すぎると、寸法安定性が低下しやすい傾向があり、逆に、高すぎても、偏光膜製造時の延伸性が低下する傾向がある。
また、熱処理時間は1〜60秒間であることが好ましく、特に好ましくは5〜30秒間である。熱処理時間が、短すぎると、寸法安定性が低下する傾向があり、逆に、長すぎると、偏光膜製造時の膨潤性や延伸性が低下する傾向がある。
【0062】
〔偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルム〕
かくして本発明の偏光膜製造用ポリビニルアルコール系フィルムが得られ、最終的にロールに巻き取られて製品となる。かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、複屈折の点から5〜60μmであり、特に好ましくは、偏光膜の薄型化の点で5〜45μm、更に好ましくは5〜30μm、殊に好ましくは破断回避の点で10〜20μmである。かかるポリビニルアルコール系フィルムの厚みは、ポリビニルアルコール系樹脂水溶液中の樹脂濃度、キャスト型への吐出量(吐出速度)、延伸倍率等により調整される。
【0063】
かかるポリビニルアルコール系フィルムの幅は2m以上であり、大面積化の点から特に好ましくは3m以上、破断回避の点から更に好ましくは4〜6mである。
【0064】
かかるポリビニルアルコール系フィルムの長さは2km以上であり、大面積化の点で特に好ましくは3km以上、輸送重量の点で、更に好ましくは3〜50kmである。
【0065】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムは、偏光膜の原反フィルムとして非常に有用であり、以下、該ポリビニルアルコール系フィルムからなる偏光膜、および偏光板の製造方法について説明する。
【0066】
〔偏光膜の製造方法〕
本発明の偏光膜は、上記ポリビニルアルコール系フィルムを、ロールから巻き出して水平方向に移送し、膨潤、染色、ホウ酸架橋、延伸、洗浄、乾燥等の工程を経て製造される。
【0067】
膨潤工程は、染色工程の前に施される。膨潤工程により、ポリビニルアルコール系フィルム表面の汚れを洗浄することができるほかに、ポリビニルアルコール系フィルムを膨潤させることで染色ムラ等を防止する効果もある。膨潤工程において、処理液としては、通常、水が用いられる。当該処理液は、主成分が水であれば、ヨウ化化合物、界面活性剤等の添加物、アルコール等が少量入っていてもよい。膨潤浴の温度は、通常10〜45℃程度であり、膨潤浴への浸漬時間は、通常0.1〜10分間程度である。
【0068】
染色工程は、フィルムにヨウ素または二色性染料を含有する液体を接触させることによって行なわれる。通常は、ヨウ素−ヨウ化カリウムの水溶液が用いられ、ヨウ素の濃度は0.1〜2g/L、ヨウ化カリウムの濃度は1〜100g/Lが適当である。染色時間は30〜500秒間程度が実用的である。処理浴の温度は5〜50℃が好ましい。水溶液には、水溶媒以外に水と相溶性のある有機溶媒を少量含有させてもよい。
【0069】
ホウ酸架橋工程は、ホウ酸やホウ砂等のホウ素化合物を使用して行われる。ホウ素化合物は水溶液または水−有機溶媒混合液の形で濃度10〜100g/L程度で用いられ、液中にはヨウ化カリウムを共存させるのが、偏光性能の安定化の点で好ましい。処理時の温度は30〜70℃程度、処理時間は0.1〜20分間程度が好ましく、また必要に応じて処理中に延伸操作を行なってもよい。
【0070】
延伸工程は、フィルムを一軸方向に3〜10倍、好ましくは3.5〜6倍延伸することが好ましい。この際、延伸方向の直角方向にも若干の延伸(幅方向の収縮を防止する程度、またはそれ以上の延伸)を行なっても差し支えない。延伸時の温度は、40〜170℃が好ましい。さらに、延伸倍率は最終的に前記範囲に設定されればよく、延伸操作は1回のみならず、製造工程において複数回実施してもよい。
【0071】
洗浄工程は、例えば、水やヨウ化カリウム等のヨウ化物水溶液にポリビニルアルコール系フィルムを浸漬することにより行われ、フィルムの表面に発生する析出物を除去することができる。ヨウ化カリウム水溶液を用いる場合のヨウ化カリウム濃度は1〜80g/L程度でよい。洗浄処理時の温度は、通常、5〜50℃、好ましくは10〜45℃である。処理時間は、通常、1〜300秒間、好ましくは10〜240秒間である。なお、水洗浄とヨウ化カリウム水溶液による洗浄は、適宜組み合わせて行ってもよい。
【0072】
乾燥工程は、例えば、フィルムを大気中で40〜80℃で1〜10分間乾燥することが行われる。
【0073】
かくして偏光膜が得られるが、かかる偏光膜の偏光度は、好ましくは99.5%以上、特に好ましくは99.8%以上である。偏光度が低すぎると液晶ディスプレイにおけるコントラストが低下する傾向がある。なお、一般的に偏光度は、2枚の偏光膜を、その配向方向が同一方向になるように重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H
11)と、2枚の偏光フィルムを、配向方向が互いに直交する方向になる様に重ね合わせた状態で、波長λにおいて測定した光線透過率(H
1)より、下記式にしたがって算出される。
偏光度=〔(H
11−H
1)/(H
11+H
1)〕
1/2
【0074】
さらに、本発明の偏光膜の単体透過率は、好ましくは44%以上である。かかる単体透過率が低すぎると液晶ディスプレイの高輝度化を達成できなくなる傾向がある。
単体透過率は、分光光度計を用いて偏光膜単体の光線透過率を測定して得られる値である。
【0075】
次に、本発明の偏光膜を用いた、本発明の偏光板の製造方法について説明する。
本発明の偏光膜は、色ムラが少なく、偏光性能に優れた偏光板を製造するのに好適である。
【0076】
〔偏光板の製造方法〕
本発明の偏光板は、本発明の偏光膜の片面または両面に、接着剤を介して、光学的に等方性な樹脂フィルムを保護フィルムとして貼合することにより、作製される。保護フィルムとしては、例えば、セルローストリアセテート、セルロースジアセテート、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、シクロオレフィンポリマー、シクロオレフィンコポリマー、ポリスチレン、ポリエーテルスルホン、ポリアリーレンエステル、ポリ−4−メチルペンテン、ポリフェニレンオキサイド等のフィルムまたはシートがあげられる。
【0077】
貼合方法は、公知の手法で行われるが、例えば、液状の接着剤組成物を、偏光膜、保護フィルム、あるいはその両方に、均一に塗布した後、両者を貼り合わせて圧着し、加熱や活性エネルギー線を照射することで行われる。
【0078】
なお、偏光膜の片面または両面に、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレア樹脂等の硬化性樹脂を塗布し、硬化して硬化層を形成し偏光板とすることもできる。このようにすると、上記硬化層が上記保護フィルムの代わりとなり、薄膜化を図ることができる。
【0079】
本発明のポリビニルアルコール系フィルムを用いる偏光膜および偏光板は、偏光性能に優れており、携帯情報端末機、パソコン、テレビ、プロジェクター、サイネージ、電子卓上計算機、電子時計、ワープロ、電子ペーパー、ゲーム機、ビデオ、カメラ、フォトアルバム、温度計、オーディオ、自動車や機械類の計器類等の液晶表示装置、サングラス、防眩メガネ、立体メガネ、ウェアラブルディスプレイ、表示素子(CRT、LCD、有機EL、電子ペーパー等)用反射防止層、光通信機器、医療機器、建築材料、玩具等に好ましく用いられる。
【実施例】
【0080】
以下、実施例をあげて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、例中「部」とあるのは、重量基準を意味する。
【0081】
そして、以下の実施例および比較例におけるポリビニルアルコール系フィルムの特性(複屈折、寸法変化率)と偏光膜の特性(偏光度、単体透過率、色ムラ)の測定および評価を以下のようにして行った。
<測定条件>
〔複屈折ΔNxy(nm)、複屈折ΔNxz(nm)〕
得られたポリビニルアルコール系フィルムの幅方向の中央部と左右両端部(フィルム端から10cm内側とする)から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、リターデーション測定装置(「KOBRA−WR」王子計測機器社製)を用いて、複屈折ΔNxy(nm)と複屈折ΔNxz(nm)を測定した。
【0082】
〔寸法変化率〕
幅方向(TD方向)の延伸前に、マジックインキで流れ方向(MD方向)に距離1mの印を付けた(2点)。幅方向(TD方向)の延伸後に、ノギスでかかる2点間の距離L(m)を測定し、下記式に従い寸法変化率を算出した。
寸法変化率=L(m)/1(m)
【0083】
〔偏光度(%)、単体透過率(%)〕
得られた偏光膜の幅方向の中央部から、長さ4cm×幅4cmの試験片を切り出し、自動偏光フィルム測定装置(日本分光社製:VAP7070)を用いて、偏光度(%)と単体透過率(%)を測定した。
【0084】
〔色ムラ〕
得られた偏光膜から、長さ30cm×幅30cmの試験片を切り出し、クロスニコル状態の2枚の偏光板(単体透過率43.5%、偏光度99.9%)の間に45°の角度で挟んだのちに、表面照度14,000lxのライトボックスを用いて、透過モードで光学的な色ムラを観察し、以下の基準で評価した。
(評価基準)
○・・・色ムラなし
△・・・かすかに色ムラあり
×・・・色ムラあり
【0085】
<実施例1>
(ポリビニルアルコール系フィルムの作製)
5,000Lの溶解缶に、重量平均分子量142,000、ケン化度99.8モル%のポリビニルアルコール系樹脂1,000kg、水2,500kg、可塑剤としてグリセリン105kg、および界面活性剤としてポリオキシエチレンラウリルアミン0.25kgを入れ、撹拌しながら150℃まで昇温して加圧溶解を行い、濃度調整により樹脂濃度25重量%のポリビニルアルコール系樹脂の水溶液を得た。次に、該ポリビニルアルコール系樹脂水溶液を、2軸押出機に供給して脱泡した後、水溶液温度を95℃にし、T型スリットダイ吐出口より、回転するキャストドラムに吐出(吐出速度2.5m/分)および流延して製膜した。その製膜したフィルムをキャストドラムから剥離し、フィルムの表面と裏面とを合計10本の熱ロールに交互に接触させながら乾燥を行った。それにより、含水率10重量%のフィルム(幅2m、厚み60μm)を得た。次に、フィルムの左右両端部をクリップピッチ45mmで挟持し、フィルムを流れ方向(MD方向)に速度8m/分で搬送しながら、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸し、最後に120℃で10秒間熱処理を行い、ポリビニルアルコール系フィルム(幅2.2m、厚み55μm、長さ2km)を得た。幅方向(TD方向)の延伸前後における流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.98であった。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
【0086】
(偏光膜および偏光板の作製)
得られたポリビニルアルコール系フィルムをロールから繰り出し、水平方向に搬送しながら、水温30℃の水槽に浸漬して膨潤させながら流れ方向(MD方向)に1.7倍に延伸した。次に、ヨウ素0.5g/L、ヨウ化カリウム30g/Lよりなる30℃の水溶液中に浸漬して染色しながら流れ方向(MD方向)に1.6倍に延伸し、ついでホウ酸40g/L、ヨウ化カリウム30g/Lの組成の水溶液(50℃)に浸漬してホウ酸架橋しながら流れ方向(MD方向)に2.1倍に一軸延伸した。最後に、ヨウ化カリウム水溶液で洗浄を行い、50℃で2分間乾燥して総延伸倍率5.8倍の偏光膜を得た。かかる製造中に破断は起きず、得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
上記で得られた偏光膜の両面に、ポリビニルアルコール水溶液を接着剤として用いて、膜厚40μmのトリアセチルセルロースフィルムを貼合し、70℃で乾燥して偏光板を得た。
【0087】
<実施例2>
実施例1において、製膜したフィルムを、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.2倍延伸する以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み50μm、長さ2km)を得た。幅方向(TD方向)の延伸前後における流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.96であった。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。かかる製造中に破断は起きず、得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0088】
<実施例3>
実施例1において、製膜したフィルムを、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.4倍延伸した後、固定幅2.4m(1.2倍延伸相当)まで応力緩和で収縮させる以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み50μm、長さ2km)を得た。幅方向(TD方向)の延伸前後における流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.96であった。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。かかる製造中に破断は起きず、得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0089】
<実施例4>
実施例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5重量%のフィルム(幅2m、厚み20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.2倍延伸する以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.4m、厚み17μm、長さ2km)を得た。幅方向(TD方向)の延伸前後における流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.98であった。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0090】
<実施例5>
実施例1において、製膜時の吐出速度を0.8m/分とし、含水率5重量%のフィルム(幅2m、厚み20μm)を、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.4倍延伸した後、固定幅2.6m(1.3倍延伸相当)まで応力緩和で収縮させる以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2.6m、厚み15μm、長さ2km)を得た。幅方向(TD方向)の延伸前後における流れ方向(MD方向)の寸法変化率は0.98であった。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。原反のポリビニルアルコール系フィルムが薄型であるにもかかわらず、偏光膜製造時の延伸工程で破断は生じなかった。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0091】
<比較例1>
実施例1において、製膜したフィルムを、延伸機を用いて幅方向(TD方向)に延伸しなかったこと以外は、実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚み60μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0092】
<比較例2>
実施例1において、製膜したフィルムを、延伸機を用いて120℃で幅方向(TD方向)に1.1倍延伸する代わりに、120℃で幅方向(TD方向)を2mに固定する以外は実施例1と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚み60μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0093】
<比較例3>
実施例4において、製膜したフィルムを、延伸機を用いて幅方向(TD方向)に延伸しなかったこと以外は、実施例4と同様にしてポリビニルアルコール系フィルム(幅2m、厚み20μm、長さ2km)を得た。得られたポリビニルアルコール系フィルムの特性は表1に示される通りであった。
さらに、該ポリビニルアルコール系フィルムを用いて、実施例1と同様にして、偏光膜および偏光板を得た。得られた偏光膜の特性は表2に示される通りであった。
【0094】
【表1】
【0095】
【表2】
【0096】
上記実施例および比較例の結果から、xy面の複屈折ΔNxyおよびxz面の複屈折ΔNxzが前記式(1)および(2)で特定する範囲を満足するポリビニルアルコール系フィルムから得られる実施例1〜5の偏光膜は、高度な偏光度を有し、かつ色ムラのないものであるのに対し、xy面の複屈折ΔNxyおよびxz面の複屈折ΔNxzが前記式(1)および(2)で特定する範囲外であるポリビニルアルコール系フィルムから得られる比較例1〜3の偏光膜は、偏光度が劣り、色ムラも観察されるものであることがわかる。